「誰も知らない鎮守府」 (25)
この戦いはどうして始まったのだろう
私たちはどうやって生まれたんだろう
戦いはいつまで続くのだろう
戦いが終わったら私たちはどうなるんだろう
……解体《バラ》された私たちってなんなんだろう
…………
沈んだ私たちって
…………
私たちって
私たちは
私たちの
幸せって
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「……」
「ぅ……」
「!」
「ここ、は?」
「……」
「……ぁ」
「手鏡……」
「……うん」
満潮「私、よね」
満潮「ここ、どこかしら」
満潮(こんな部屋、見たことない)
満潮「窓……ない」
満潮「……」
コンコン
満潮「ひゃっ」
「入っても、よろしいですか?」
満潮「ひ、ぁ……は、はい」
「失礼します」ガチャ
「お目覚めになられたようですね」
満潮「え、う、とぉ……」
「普段からノックをしてから入っていた、しかし声が聞こえたため、声をかけました」
満潮「そ、そう……あの、ここは?」
「鎮守府です」
満潮「鎮……守府……」
「そうです、深海棲艦と戦う最前線、提督として指揮するものと、貴方方が住まう場所です」
満潮「ま、まぁ、はい、知ってます」
「それはよかった」
満潮「……あの、貴方はだれですか?私、なんでここに……」
「私は、提督です」
満潮「え?」
提督?「提督です。制服は来てませんが、提督です」
満潮「提督……」
提督?「いかがしましたか?」
満潮「い、いえ……」
提督「そして、貴方がここにいる理由ですが」
満潮「は、はい」
提督「言いません」
満潮「は?」
提督「覚えておらっしゃられないのなら、申しません」
満潮「な、な、なにそれ!?」
満潮「貴方私を騙してるんじゃないでしょうね!?」
提督「なぜです?」
満潮「私の所属する鎮守府の提督はあんたじゃない!つまりここは、私の所属する鎮守府とは別の鎮守府ってことよ!」
満潮「ていうか、あんた本当に、提督なの!?そもそも制服も着てなくてこんな窓もない部屋に閉じ込めて!騙してるんでしょう!ここは本当はどこなの!?貴方はなんなの!?」
提督「……貴方の所属する鎮守府、ですか」
提督「それはなんという鎮守府ですか」
満潮「なんというって……」
満潮「あ、あれ?」
提督「わからないですか」
満潮「ぇ、ぁ……」
提督「此処は、 鎮守府です」
満潮「は……?」
提督「υ◎kΓ鎮守府です」
満潮「な、なんていってるかわからないわよ……」
提督「骸戯φ天鎮守府です」
満潮「だからわからないって!!」
提督「分かりやすく言うならば、だれも知らない鎮守府です」
満潮「だれも知らない鎮守府」
満潮「って……なに、それ」
提督「ここは、だれも知りません、もちろん私と貴方、そして所属する艦娘は知っていますが、それ以外はだーれも」
満潮「い……言ってることがわからないって言ってるの!確かに、情報統制はされてるけど、軍の施設である以上だれも知らないはず!」
提督「知りません、絶対に」
満潮「くっ……」
提督「そして、私は本当はなんなのか、というしつもん」
提督「提督です。だれがなんと言おうとも」
満潮「……」
満潮「じゃ……じゃあ……私は、なんで……」
グウゥゥ……
満潮「!」
提督「……お腹、減っているでしょう」
満潮「そ、それが、なによ」
提督「……立てますか?食堂にご案内しますよ」
満潮「……」
コツ……コツ……
満潮「……」キョロキョロ
提督「申し訳ありませんが窓はありません。立地の関係上どうしてもつけられなくて」
満潮「……なんで言いたいことがわかるのよ」
提督「顔に出ています」
満潮「……」
提督「ここですよ」ガラッ
ガヤガヤ
満潮「……結構いるのね」
提督「お昼時ですからね。貴方もいい時に目覚めたものです。この調子なら私の手料理を食べずに済みそうだ」
満潮「なんであんたの手料理なのよ……」
提督「ここには調理師あるいは補給艦はいませんからね」
満潮「……」
「お、提督~」
提督「おや、今日は、貴方もお昼ですか」
「そりゃそうでしょ」
満潮「……」
「お、新入りさん?」
満潮「……えと、どちら様?」
「え?私北上」
満潮「……え?」
北上?「どしたの?」
期待
でももしかしてこれ……
満潮「私の知ってる北上って……こう、三つ編みで、セーラー服で、魚雷で……」
北上?「そりゃ、それが正装だけどね~。今の私は私服だから」
満潮「私服……」
北上「……あぁ、なるほどね」
満潮「な、なに」
北上「……まぁいいか。二人はご飯?私の分と一緒に作る?」
提督「私は大丈夫、彼女には作ってあげてください」
北上「提督は?」
提督「私はホットケーキの練習も兼ねて自分で」
北上「やめときなって、癌で死んじゃうよ」
提督「そういうわけにも参りません、負けるわけにはいかないのです」
北上「提督って意地っ張りだね~。まぁいいか。ほら、おいで。簡単なやつだけどいい?」
満潮「う、うん……」
北上「ほいどうぞ」コトッ
満潮「わ……すごい魚」
北上「石鯛。今日の朝釣れたんだよ」
満潮「……釣った?」
北上「うん」
満潮「……釣るって、なんで?買ったものじゃないの?」
北上「趣味で釣ったんだよね」
満潮「趣……味……?出撃任務は?」
北上「そんなものないよ」
満潮「!?」
北上「深く考えないほうがいいよ~。いや、考えたほうが……まぁ兎も角、ね。この鎮守府は、時間が両手両足じゃ数え切れないほどあるからね。いや~前の鎮守府じゃこんなに趣味に時間費やせなかったよ」
満潮「前の鎮守府った……貴方も別の鎮守府から攫われたの!?」
北上「攫われてはいないよ、あはは~、人聞き悪いねぇ」
満潮「だ、だって……じゃ、前の鎮守府の記憶は!?」
北上「曖昧かなぁ」
満潮「……私と、同じ」
満潮「……ねぇ、ここで長い?」
北上「それなり。ここはね、入ってあっという間にいなくなる子もいれば、10年、20年といる人だっている……そんな鎮守府なんだよ」
満潮「じゃ、じゃあ教えて、ここって、なんなの!?」
北上「だれも知らない鎮守府」
満潮「そ、そういうのじゃなくて!ちゃんとした名前とか!」
北上「質問タイム終わり~。また今度お昼一緒の時に教えてあげるから。冷める前に食べな」
満潮「そ、そんなの!」
北上「……」モグモグ
満潮「……うぅ」
満潮「……」モグモグ
満潮「……美味しい」
北上「えへへ、そう?ありがとね」
満潮「ごちそうさまでした」
北上「お粗末様でした~」
満潮「……なんか焦げ臭い」
北上「ありゃ、提督またやっちゃった」
<うわぁー、助けてください
<きゃあー!提督のお洋服がー!
満潮「……いいの?」
北上「いつものこと」
満潮「……そう」
満潮「……」
提督「お待たせしてすいません」
満潮「……焦げ臭い」
提督「申し訳ありません、少々失敗しました……お腹は膨らみましたか?」
満潮「まぁ……」
提督「よかった。では良ければ、鎮守府の中を案内致しましょう」
満潮「……」
コツコツ……
提督「ここが、主港です。ほとんど使われませんが、整備は行き届いています。いつでも出撃できます」
満潮「ほとんど使われないって……」
シーン……
提督「おや、今日はだれもいませんね……普段は釣りをしている子が何人かいますが」
満潮「なんなのよ……この鎮守府はなんなのよ」
提督「なんなの、とは?」
満潮「だって、鎮守府は深海棲艦と戦う本拠地で、たくさんの艦娘が戦うためにせわしなくここで動き回ってて……それなのにこの鎮守府は静かすぎる!」
満潮「本営からの任務が伝達されたりするでしょう!?なんでここはこんなに!」
提督「ここでは、そんなことは起きません」
満潮「っ!」
提督「あなたがたが、海へ出たいと思わない限り出撃はあり得ません、絶対に」
満潮「……」
提督「ここは、娯楽室です」
満潮「ごらく、しつ……?」
提督「今も賑わっていますね、ご自由にお使いください。ゲーム機から、室内競技、他にも、カラオケとか……まぁいろいろあります。みんなと仲良く交代で」
満潮「なんでそんなものがあるの……」
提督「いけませんか?」
満潮「鎮守府は……戦うための施設で……」
提督「知りません、そんな道義は」
満潮「……」
コツコツ……
満潮「……窓がないせいで、わからない……この鎮守府は何階建てなの?さっきから階段を降りたり登ったり……」
提督「うーん……少し前は地下38階まででしたか」
満潮「地、地下!?」
提督「少し前までは593階までありましたが、最近は減ってきまして、地図の作成も楽になりました」
満潮「……」
提督「つきました、ここは中庭です」
満潮「は……?あんた、ここ、地下20階でしょう?」
提督「どうぞ」ガチャ
満潮「ーーー」
ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ ,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.: ヾ:ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ ` ``
,,ゞ.ヾ\\ ゞヾ:ゞヾ ノノ ゞヾ . ゞヾ ゞヾ .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ `
ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ノヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞ;ゞゞヾゞ; `
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満潮「……桜、が」
提督「ここは一年中桜が咲いています。私もお気に入りです」
満潮「……あ、れ?なんで、空が見えるの?ここ、地下でしょう!?」
提督「ええ、地下20階……おや失礼、いまは21階ですね」
満潮「は、はぁ!?いや、いきなり変わるのもおかしいけど……ここ、おかしすぎるわよ!!この庭を囲ってる壁も、とてもそんな高いとは思えないわ!!」
提督「失礼、質問にお答えはしたいのですが、新任の方の様子も見に行かなければなりませんので」クルッ
満潮「ちょっ!?」
提督「失礼いたします」パタン
満潮「ま、まって……!」ガチャ
満潮「……いない」
「あら、新入りの方かしら」
満潮「!」バッ
「こんにちは」
満潮「あなた、は?」
「五航戦、翔鶴です、初めまして」
満潮「……あなたも、私服、なの」
翔鶴「ええ。過ごしやすくていいから」
満潮「……」
翔鶴「素敵な庭でしょう?私もよく来るの。深くなっちゃうのが難点ですけれど」クスクス
満潮「あの……ここは、なんなの?もうわけがわからなさすぎて頭が……」
翔鶴「ここは、誰も知らない鎮守府です」
満潮「っーー」
翔鶴「だと、納得しないでしょう?私もそうでした。なので、他にも教えてあげます」
満潮「! こ、ここはいったいどうなってるの!?こんな地下なのにそんな高くもない塀に囲まれて空が見えるし、階層はすぐ深くなるし、誰も出撃しないし、みんな私服だし!!」
翔鶴「そうね、不思議ですね。私も、すべてのことは知りませんけど……でも、満潮さん?」
翔鶴「私服でいることって、そんな不思議なことかしら」
満潮「え?だ、だって私たちは戦うための艦娘で……」
翔鶴「艦娘は自分の好きな服を着てはだめかしら?」
満潮「……でも、だって、私の知ってる鎮守府は……」
満潮「あれ……?私、の、鎮守府……は……」
満潮「あ……れ?」
満潮「……ぁ……へ……へん、なの、よ……」
満潮「違う、こんな、私の知ってる鎮守府じゃ……私の、私の知ってる鎮守府、それは……」
翔鶴「おちついて、満潮さん」スッ
満潮「さ、さわらないで!!」バシッ
翔鶴「あっ……!!」
満潮「……ぁ、ご、ごめんなさ」
翔鶴「ぁ……ぐ……が……」
満潮「しょ、翔鶴さん?」
翔鶴「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、打たないで……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ガクガク
満潮「ひっ……」
翔鶴「や、やだ、やだ、やめてやめて、提督やめてください……いや、いやぁ……あ、あああああああいやあああああああああああ!!!」ガバッ
満潮「うわっ……!」
ガシッ
満潮「……!」
提督「大丈夫、落ち着いてください翔鶴」
翔鶴「あ、がぐ、ああ……」
提督「翔鶴、ここにあの糞袋はおりません、わかりますか?私の声が聞こえていますか?」
翔鶴「さ、さわら、さわるなぁぁぁぁあ!!!」
ガゴッ!!
提督「ぐぶっ……」
満潮「ひゃあっ!?」
満潮「ぇ……あ、く、くび、が……」
翔鶴「はぁっ、はあっ……ぁ」
翔鶴「て、提督?提督!?」ユサユサ
提督「……」
翔鶴「提督!!提督!!返事をしてください!」
満潮「ゆ、揺らしたらだめ!首の骨がおかしな方を向いてるわ!救護班を!」
提督「ひづようありまぜん」グリンッ
満潮「うわわわっ!?」
翔鶴「あぁ、提督、提督……ごめんなさい、私、私また……!!」ポロポロ
提督「大丈夫です、あなたは私を殴ってもいい。何度でも殴りつけていい。踏みにじっていい」
提督「その衝動を私で発散なさい。他の子に向けないでください」
翔鶴「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」ポロポロ
満潮「……」
翔鶴「……」
提督「気を失いましたか。彼女を部屋まで運びます。満潮、手を貸してください」
満潮「う、うん……」
提督「……」
満潮「……」
コツン、コツン……
満潮「あの」
提督「はい」
満潮「……なんでも、ない」
提督「そうですか」
コツン、コツン……
提督「ここの扉です」
満潮「……」ガチャ
満潮「ぬいぐるみがいっぱい」
提督「また買い足さねばなりませんね。」
満潮「……そう」
提督「ここがあなたの部屋。地下二階です。深くなるも、浅くなるもありえます。見当たらないときは上下何階かを探してください」
満潮「……わかった」
提督「それでは、職務と買い出しがあるので、これで」
満潮「……あ、と……うん」
満潮(……私の、部屋)
ガチャ
満潮「……広いな」
満潮「テレビ、クローゼット、本棚、キッチン、トイレにお風呂まで……」
満潮「ベッドは、私一人ぶんか……」
満潮「……あれ?窓が……」
満潮「……海かな?地下なのに海見えるんだ。一階の主港は……なんかもういいや」
満潮「……なんか……眠くなってきたな」
満潮「すこし……ねる……」
満潮「……」
ここまでです。長くなると思うし胸糞な話もあると思うので今更ですがご注意ください。あと万一のためにコテをつけときます。お願いします。
乙
おつ
面白い
乙
乙
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