花陽「人生逆転ゲーム」 (266)

第1章 サンライズのぞみ編
第1話 サンライズのぞみ

花陽「お金ないや」

花陽は借金の保証人になった上、不況の煽りで就職できず、毎日引きこもり。
生活に困っていた。

そんなとき

老人「う・・・」

老人「お、お腹が・・・」

花陽「大丈夫ですか?」

花陽「救急車呼びましょうか?」

老人「すぐそこの家に連れて行ってくれればいい。」

そうしてその男の人を家まで運んで行くと。

老人「ありがとうございました。お礼にお茶でもどうですか?」

花陽「いえ、結構です。」

老人「いや、お礼くらいさせて下さいよ。ワシには金もないから礼金とか与えられないんで、せめてお茶をごちそうするくらいは。」

花陽「じゃあ、喜んで。」

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その家の入り

老人「それではしばらくお待ちください。」

リビングで待っていると

ほむら「ようこそ。粕壁学会へ。」

花陽「粕壁学会?」

ほむら「私はここに勤める暁美ほむらです。」

ほむら「お茶をどうぞ。」

ほむら「小泉花陽さんでしょ。」

花陽「私のこと知ってるんですか?」

ほむら「有名よ。」

ほむら「スクールアイドル界の伝説。」

ほむら「廃校寸前の弱小校でありながら、強豪校が一目置いていたという幻のアイドル、μ's。」

ほむら「学校存続のために結成し、わずか1年でラブライブの頂点に登りつめた。」

ほむら「そして優勝後すぐに解散し、今は伝説として語り継がれている。」

花陽「そこまで大げさじゃないですよ。」

ほむら「まあ小泉さんは別のスクールアイドルで2年後に再びラブライブで優勝したので知らない人はいないくらいよ。」

ほむら「でも最近はお金に困ってるのよね?」

花陽「はい。不況でどこにも就職できなくて、さらに借金の保証人になってせいで借金取りに追われてる身です。」

ほむら「そうですか。2度のラブライブ覇者がまさかこんな状況になるなんて、あのとき誰が思ったでしょうね。」

ほむら「あなたが保証人を受け持った天ヶ瀬冬馬さん、逃亡しちゃったのよ。」

花陽「逃亡?」

ほむら「そう行方不明。」

ほむら「ということであなたに借金を返してもらうことになりました。」

ほむら「その上、鳩山光司さんの借金もあるのよね。」

ほむら「どうやらあなたの親戚なんだっけ。」

花陽「鳩山光司って今どこにいるんですか?」

ほむら「それは私には知らされてないわ。」

ほむら「とにかく、これが今のあなたの借金」

そこには利子を含めて300万ほどの額が。

花陽「む、無理です。こんな額。」

ほむら「そう。でもご安心を。」

ほむら「部長を助けれくれた心優しいあなたに特別にチャンスを与えましょう。」

ほむら「来月15日、東京駅東海道新幹線ホームから列車が出る」

ほむら「その車内であるゲーム大会を開催する。」

ほむら「そのイベントの参加者を募っている。」

ほむら「あなたみたいな負債者を集めて一夜限りのギャンブル大会よ。」

ほむら「そのゲームに勝利すればあなたの借金は全てチャラよ。」

ほむら「その上、大金を手にするかもしれないわ。」

ほむら「ただし負ければさらに借金を背負い、異国に連れていかれ強制労働。この世界には戻れない。」

ほむら「列車の名は、サンライズのぞみ。」

ほむら「これに参加してみない?」

ざわっ ざわっ

花陽「2つ質問していいですか?」

ほむら「何?」

花陽「ゲーム大会って言ってましたけど、なんのゲームをやるんですか?」

花陽「それと負けたら強制労働って、何をやらされるんですか?」

ほむら「残念ながらどちらも答えられないわ。」

ほむら「何をやるか教えちゃったら、早い段階で参加を決めた人が有利になるでしょ?」

ほむら「まあ言えることは、ゲームってのはゲームセンターとかネットゲームではなく、参加者同士の対戦形式よ。」

ほむら「そして負けたときどうなるかは、私も知らないのよ。」

花陽「知らない?」

ほむら「負けた時に連れていかれるのは地下の理、って言うんだけど、それ以上のことは私にもわからない。」

ほむら「だが心配いらないわ。この大会の目的は、負債者の救済だからね。」

花陽「救済?」

ほむら「毎回参加者半分は勝利して借金はチャラ。」

ほむら「しかし負けても長い間ニートで借金をかかえて暮らすより、働いて集中的に返して借金から解放されたほうが、楽だと思わない?」

花陽「そうですね。」

ほむら「まあ小泉さんは別のスクールアイドルで2年後に再びラブライブで優勝したので知らない人はいないくらいよ。」

ほむら「でも最近はお金に困ってるのよね?」

花陽「はい。不況でどこにも就職できなくて、さらに借金の保証人になってせいで借金取りに追われてる身です。」

ほむら「そうですか。2度のラブライブ覇者がまさかこんな状況になるなんて、あのとき誰が思ったでしょうね。」

ほむら「あなたが保証人を受け持った天ヶ瀬冬馬さん、逃亡しちゃったのよ。」

花陽「逃亡?」

ほむら「そう行方不明。」

ほむら「ということであなたに借金を返してもらうことになりました。」

ほむら「その上、鳩山晋司さんの借金もあるのよね。」

ほむら「どうやらあなたの親戚なんだっけ。」

花陽「鳩山晋司って今どこにいるんですか?」

ほむら「それは私には知らされてないわ。」

ほむら「とにかく、これが今のあなたの借金」

そこには利子を含めて300万ほどの額が。

花陽「む、無理です。こんな額。」

ほむら「そう。でもご安心を。」

ほむら「部長を助けれくれた心優しいあなたに特別にチャンスを与えましょう。」

ほむら「来月15日、東京駅東海道新幹線ホームから列車が出る」

ほむら「その車内であるゲーム大会を開催する。」

ほむら「そのイベントの参加者を募っている。」

ほむら「あなたみたいな負債者を集めて一夜限りのギャンブル大会よ。」

ほむら「そのゲームに勝利すればあなたの借金は全てチャラよ。」

ほむら「その上、大金を手にするかもしれないわ。」

ほむら「ただし負ければさらに借金を背負い、異国に連れていかれ強制労働。この世界には戻れない。」

ほむら「列車の名は、サンライズのぞみ。」

ほむら「これに参加してみない?」

ざわっ ざわっ

花陽「2つ質問していいですか?」

ほむら「何?」

花陽「ゲーム大会って言ってましたけど、なんのゲームをやるんですか?」

花陽「それと負けたら強制労働って、何をやらされるんですか?」

ほむら「残念ながらどちらも答えられないわ。」

ほむら「何をやるか教えちゃったら、早い段階で参加を決めた人が有利になるでしょ?」

ほむら「まあ言えることは、ゲームってのはゲームセンターとかネットゲームではなく、参加者同士の対戦形式よ。」

ほむら「そして負けたときどうなるかは、私も知らないのよ。」

花陽「知らない?」

ほむら「負けた時に連れていかれるのは地下の理、って言うんだけど、それ以上のことは私にもわからない。」

ほむら「だが心配いらないわ。この大会の目的は、負債者の救済だからね。」

花陽「救済?」

ほむら「毎回参加者半分は勝利して借金はチャラ。」

ほむら「しかし負けても長い間ニートで借金をかかえて暮らすより、働いて集中的に返して借金から解放されたほうが、楽だと思わない?」

花陽「そうですね。」

ほむら「あなたはこの大会に参加する権利をもらって、ものすごくラッキーなのよ。」

ほむら「それも老人への小さな親切のご褒美かもね。」

ほむら「あなたはこのまま過ごせばどこにも就職できず、借金も返せず、一生ニートのまま死んでいくでしょうね。」

ほむら「こんな救済チャンスが与えられても関心を示さないのは、勝つ自信がないんでしょうね。」

ほむら「長年負け癖がついてる証拠ね。何をやっても勝てる気がしない。何をやっても成功する気がしない。」

ほむら「でもあなた、高校生のころ、スクールアイドルだったときはこうだったかしら?」

花陽「スクールアイドルのとき?」

ほむら「ラブライブで優勝し、廃校寸前の学校を救ったじゃない。そのころはなんでも自信をもてたでしょ?」

花陽「そう言われてみれば」

ほむら「今回この大会は、あなたの負け癖を一掃し、μ'sだったころの自信を取り戻すいいチャンスなのよ。」

ほむら「このゲームに勝って、人生を変えるのよ。」

花陽「人生を・・・変える・・・」

ほむら「実は列車の席、残り3つしかないのよ。」

花陽「え?」

ざわっ ざわっ

花陽「3つ?・・・あと3つ・・・」

電話が鳴り

ほむら「はい、暁美です。」

ほむら「はい。」

ほむら「残り1つになったわ。」

花陽「え?」

花陽「あ、あの・・・」

花陽「参加します。」

ほむら「そう。わかったわ。」

ほむら「じゃあこの契約書にサインして。」

ほむら「契約成立ね」

間違いがあったので一部書き直しました

老人「本当暁美さんは勧誘がうまいですね。」

ほむら「迷ってる客を追い込む基本の手段。こんなのチョロいわ。」

ほむら「こんな不気味な列車が満席寸前なわけないのにね。」

老人「彼女は多分ゲームに負けるタイプでしょう。」

ほむら「そりゃ全然無理よ。だって彼女、私をいい人だと思ってたから」

ほむら「私がいい人なわけないじゃない。」

ほむら「だって私、悪魔よ。」

ほむら「戦いの世界において、ああいうタイプはいの一番にやられるでしょうね。」

ほむら「まあラブライブとか、高校生の部活なら、仲間を信頼してるのはいいことだけど、このゲームでは最大の敗因になるわね。」

某月15日

身体検査を受けた上、東京駅の東海道新幹線ホームへ。

黒服「どうぞ」

花陽「なんだ。この人たちみんな人生の底辺って感じの人たちばかり。」

花陽「まあ私もそうなんだけど。」


上条「ただいまから、粕壁学会主催、粕壁オリンピックを開幕します。」

上条「最初に軍資金の貸付を行います。」

上条「貸付は100万円以上、1000万円以下です。」

上条「つまり全ての方に最低100万円は借りていただきます。」

上条「金利は10分につき2%の複利、大会は3時間、180分なので借りた額を4割3分ほど上乗せして返していただければ結構です。」

花陽「4割3分?」

出場者「これ以上俺たちから金取ろうっていうのか?」

出場者「そうだよ。どこの世界に10分複利なんてあるんだよ!」

出場者「あんまり無茶言うと俺たちはみんな帰るぞ」

上条「どうぞご自由に。引き止めはしません。」

某月15日

身体検査を受けた上、東京駅の東海道新幹線ホームへ。

黒服「どうぞ」

花陽「なんだ。この人たちみんな人生の底辺って感じの人たちばかり。」

花陽「まあ私もそうなんだけど。」


上条「ただいまから、粕壁学会主催、粕壁オリンピックを開幕します。」

上条「最初に軍資金の貸付を行います。」

上条「貸付は100万円以上、1000万円以下です。」

上条「つまり全ての方に最低100万円は借りていただきます。」

上条「金利は10分につき2%の複利、大会は3時間、180分なので借りた額を4割3分ほど上乗せして返していただければ結構です。」

花陽「4割3分?」

出場者「これ以上俺たちから金取ろうっていうのか?」

出場者「そうだよ。どこの世界に10分複利なんてあるんだよ!」

出場者「あんまり無茶言うと俺たちはみんな帰るぞ」

上条「どうぞご自由に。引き止めはしません。」

某月15日

身体検査を受けた上、東京駅の東海道新幹線ホームへ。

黒服「どうぞ」

花陽「なんだ。この人たちみんな人生の底辺って感じの人たちばかり。」

花陽「まあ私もそうなんだけど。」


上条「ただいまから、粕壁学会主催、粕壁オリンピックを開幕します。」

上条「わたくしは主催の上条恭介です。」

上条「最初に軍資金の貸付を行います。」

上条「貸付は100万円以上、1000万円以下です。」

上条「つまり全ての方に最低100万円は借りていただきます。」

上条「金利は10分につき2%の複利、大会は3時間、180分なので借りた額を4割3分ほど上乗せして返していただければ結構です。」

花陽「4割3分?」

出場者「これ以上俺たちから金取ろうっていうのか?」

出場者「そうだよ。どこの世界に10分複利なんてあるんだよ!」

出場者「あんまり無茶言うと俺たちはみんな帰るぞ」

上条「どうぞご自由に。引き止めはしません。」

上条「我々は借金一括返済というチャンスを与えているのです。」

上条「君たちの借金の額を思えば、これは非常に良心的。」

上条「10年20年かけて借金を返すというのならご自由に。」

花陽(なんて嫌な奴だ)

上条「どうしますか?」

出場者「・・・100万円だ。」

上条「ありがとうございます。」

上条「次の方どうぞ。」

出場者「100万」

出場者「100万」

花陽(みんな下限を借りるに決まってる)

あずさ「まだ何をやるか知らされてないのに、何言ってるのよね。」

あずさ「三浦あずさ。上限の1000万で。」

花陽(え?)

花陽(そうか。まだ何をやるか知らされてない。ギャンブルはお金を多く持ってる人が有利に決まってる。じゃあ資金は多いほうが。)

花陽「小泉花陽です。1000万円で。」

その後封筒が配られる。

上条「それではルールを説明します。説明は一度きり。繰り返しません。」

上条「Aの袋を開封してください。それが今夜のゲームの種目です。」

花陽(え?これは・・・)

グー、チョキ、パーの絵の描いたカードが4枚ずつ、12枚。

上条「そのカードを見れば言うまでもないでしょう。じゃんけんです。」

上条「ただし使えるのはグー、チョキ、パーのカード4枚ずつ、12枚のみ。」

上条「言うなら、限定ジャンケン。」

花陽(じゃんけんか。秋葉原の国民的アイドルのセンターはじゃんけんで決めるんだよね。)

花陽(元アイドルの私にぴったりのゲームだ。)

上条「次にBの袋を開封してください。」

花陽「星?」

上条「このような星が3つ出てきたはずです。それを左胸のプレートにつけてください。」

上条「じゃんけんでこの星を奪い合うゲームです。」

上条「後方にあるボックス前で一対一で対峙していただく。」

上条「互いに戦う意志を確認したら、チェック、続いてセット、そしてオープン、これだけだ。」

上条「勝負があったなら、勝者は敗者の星を1つ受け取り、自分の胸に貼る。あいこなら星の移動はなし。」

上条「使ったカードはここの投入口に入れる。ボックスに入れられたカードは天候掲示板に表示される。」

上条「ここにいるメンバーで自由に相手を決め対戦を繰り返す。」

上条「制限時間は3時間。最終的に12枚のカード全てを使い尽くし、星を3つ以上確保していれば勝ち。」

上条「カードの破棄は禁止だ。」

上条「ゲーム終了時に星が2つ以下の者、星が3つ以上あっても時間内にカードを使い切れなかった者、カードがあっても星を全てなくしたものは負け、失格です。」

上条「負けた者は地下の理に導かれる。」

上条「なお星を4つ以上獲得した場合は、ゲーム終了後、余った星を1つ500万で我々が購入する。」

上条「説明は以上だ。」

なんかどっかで見た事ある面々が…

出場者「それだけ?」

出場者「負けたらどうなるんだ? 地下の理ってなんだよ。」

上条「残念ながらその質問には答えられません。」

出場者「ふざけんな。負けたらどうなるかくらい話すの当然だろ。俺たちには知る権利がある。」

上条「黙れ。」

上条「負けたときのことを聞いてどうすんだ?」

上条「仮にそれを話したところで、それが本当かどうか確かめる方法はないんだぞ。」

上条「それでも聞きたいのかい?」

上条「勝てばいいんだよ。勝てば何も問題ない。」

花陽「あの、軍資金は何に使うんですですか?」

上条「ご自由に」

花陽「え?」

上条「それではゲームスタート。」

花陽(元アイドルの私にぴったりのゲームだ。)

こんなことを意気込んでおきながら、何も動けずにいた。

花陽(こんなじゃんけんに、お金の使い道なんてないよね・・・)

花陽(いきなりやっちゃったかな・・・)

勝負が開始されて5分で、最初の敗者が出た。
一度も勝てずに3連敗、星を全て失ったのだ。

失格となった者は黒服に連れて行かれ、地下の理に導かれる。

第1話 終わり

第2話 黒の剣士

あずさ「そこにいるのは小泉花陽さんね。」

花陽「私のこと知ってるの?」

あずさ「確かμ'sにいた娘よね。」

あずさ「私も元アイドルだからラブライブの会場に何回か見に行ったことがあるの。」

花陽「そうなんですか。」

あずさ「あとここでも目立ってたからね。1000万も借りた人そういないし。」

あずさ「まだ動けないんだ。」

花陽「はい。」

あずさ「この勝負は負けて地下の理に導かれたら、永遠に重労働を強いられて廃人になるらしいよ。」

花陽「そうなの・・・」

あずさ「でも必勝法がある。私と組まない?」

花陽「組む?」

・・・
キリト「そこにいるのは、シリカじゃないか。」

シリカ「キリトさん。」

キリト「お前がこんな大会に出てるとは意外だな。」

シリカ「仕方ないんですよ。生活が苦しくて。」

キリト「まだ誰とも勝負してないのか?」

シリカ「はい。アインクラッドのときと同じですね。あたしは自分では何もできない。」

キリト「実は俺もなんだ。」

シリカ「キリトさんがですか?意外ですね。アインクラッドでは最前線で攻略組だったのに。」

キリト「そうなんだけど、今回は誰かを潰さなきゃいけないと思うと、思いとどまっちゃって。」

シリカ「このゲーム、うまくやれば確実に生き残れるんじゃないかと思うんですよ。」

キリト「勝ちの条件は星3つ、つまり現状維持でいいわけですから、カードだけでも使い切れば・・・。」

キリト「現状維持・・・」

キリト「そうだ!談合試合だ。」

シリカ「談合?」

キリト「談合試合はオリンピックなら失格だろうが、このゲームでは問題ないだろう。」

キリト「誰かと示し合わせて、12回連続あいこにすればいいんだ。」

シリカ「そんな手が!」

キリト「俺と組もう。」

キリト「あそこのボックスで。」


シリカ「グー、チョキ、パーの順ですよ。」

キリト「わかった。グー、チョキ、パーだな。」

キリト「チェック、セット、オープン。」

2人はともにグー

キリト「ふふふ、奇遇だな。」

そして12回連続あいこで、2人は生き残った。

キリト「まだゲーム始まって10分くらいしか経ってない。今金を返せば4%の利子ですむぞ。」

キリト「さあいこう。」

シリカ「これでよかったんでしょうか?」

キリト「確かにあまりに呆気なかったな。」

キリト「まあこのSSでの俺たちの出番はこれだけだ」

・・・
あずさ「このゲームを生き残るにはパートナーが必要なのよ。」

あずさ「パートナーがいれば100%生き残れるのよ。」

花陽「100%?」

あずさ「最初の説明でなんて言ってた? 勝つ条件。」

花陽「カードを全部使い切って、星3つだよね?」

あずさ「そこよ。」

あずさ「星3つよ。4つにする必要はない。現状維持でいいの。」

あずさ「誰かと示し合わせて、12回連続あいこにするのよ。」

あずさ「それで星3つのままで、カードを使いきれる。」

花陽「そうか!」

あずさ「これで100%生き残れるよ。」

あずさ「私は三浦あずさ。」

花陽「三浦さん、よろしくお願いします。」

花陽「でも私は1000万円借りたし、4割増しで返さないといけないから」

あずさ「いや、10分複利でしょ。まだ10分くらいしか経ってないから、今なら2%、20万円くらいで済むわよ。」

花陽「そうか。」

あずさ「ちなみに後で星が足りない人が余ってる人から星を買うことがあるの。星売買、これはそのためのお金。」

花陽「そうなんですか。」

花陽「よく知ってますね」

あずさ「実は私リピーターなのよ」

花陽「リピーター?」

あずさ「他にも何人かいるわ、前回のじゃんけん大会でも見かけた人。」

花陽「何それ、不公平じゃないですか。」

あずさ「今はそんなこと気にしてる場合じゃないでしょ」

そしてボックスに行き。

あずさ「チェック、セット、オープン。」

2人はともにグー

花陽(助かった。三浦さんに巡り会えて、私は救われた。)

こうして9回連続あいこ。このまま終わると思った。
しかし10回目・・・

あずさ「セット、オープン。」

花陽はグー、あずさはパー。

花陽「え?」

あずさ「あー、やっちゃった。」

あずさ「ごめんね。間違えちゃった。」

あずさ「仕方ない。次で帳尻合わせよう。」

あずさ「私はグーを出すから、あなたはパーを出して。」

花陽「わかった。」

あずさ「形だけ、星を1つもらっておくね。」

そして11回目

あずさ「チェック、セット、オープン。」

花陽はパー、あずさは・・・チョキ!?

花陽「え?なんで?」

あずさはまた1つ星を持っていった。

あずさ「さんざん練習したのよ。」

あずさ「カードをぴったり2枚重ねて相手に見せ、置いてくるのは見せてない裏のカード。」

あずさ「そしてこっそり表のカードを抜いた。」

あずさ「見事な戦略でしょ?」

あずさ「それでは、ごきげんよう!」

花陽「待ってよ!どういうことなの?」

あずさ「この星、余ったら1つ500万で売れるの。」

あずさ「パートナーなんかいるわけないでしょ。自分以外全員敵。」

あずさ「そんなこともわからなかったの?あんたバカね。」

あずさ(μ'sの花陽ちゃんもちょろいわね。これがスクールアイドルの頂点なの?)

あずさ(前回のじゃんけん大会ではA-RISEの綺羅ツバサちゃんに同じ手を使って勝ったことは内緒にしておこう。)

私はいつのまにか星を2つも失った。

花陽「・・・」

花陽「待ってよ!返せ!私の星を返してよ!」

あずさ「なにするの!?離して」

黒服「なにやってんだ!離れろ!」

花陽「この人が、あいこの約束を裏切って、星を2つも持ってったんだよ」

黒服「何も問題ない。」

黒服「ここはお前らの人生をかけた戦場だ。自分以外全員敵なんだよ。」

黒服「お前は戦場で突っ立ってるところを後ろから撃たれただけだ。」

花陽「う・・・」



花陽「なんであんな知らない人を信じちゃったんだろう。」

花陽「大事な勝負なのになんで自分で考えなかったの?」

花陽「なんで他人の判断に任せちゃったの?」

花陽「私はいつもそうだ。いつもこうやって他人の判断に揺さぶられて生きてきたんだ。」

花陽「私って、ほんとバカ・・・。」

花陽「この大会ではバカは散っていくんだ・・・」

月宮林檎「私の言うとおりにしてよ。これは必勝法だよ。」

音無小鳥「わかりました」

花陽(必勝法?何言ってんの?そんなのあるわけないでしょ。)


凛「あ、花陽ちゃん」

花陽「凛ちゃん。」

凛「久しぶり。まさかこんなとこで会えるなんて。」

花陽「そうだね。よりにもよってこんなとこで会いたくなかったよ。」

凛「花陽ちゃん、もう星1つしか残ってないの?」

花陽「うん。12回連続あいこにしようって言った人に騙されちゃって。」

花陽「もうどうすればいいのかわかんない・・・」

凛「力を貸してあげたいけど、凛も自分が生き残るのに必死なんだにゃ。」

花陽「そうだよね。今好調の凛ちゃんには頼れない。」

凛「じゃあ無事生き残れるのを信じて待ってる。」

花陽「うん。ありがとう。」

花陽「あ、あの人・・・」

それは1年前、借金の保証人にした元ジュピター、天ヶ瀬冬馬。
私が人生をどん底に落とすきっかけとなった男。

花陽(あいつもこの大会に出てたんだ。逃がすもんか。)

冬馬が逃げたのは休憩室だった。しかし今そこは敗色濃厚の人間が頭を抱えているところだった。
もはや敗者の部屋。
冬馬もそうだった。カード残り4枚、星1つ。

花陽「冬馬君」

冬馬「花陽さん・・・。すいません、俺・・・」

花陽「今はそんなことはいい。こっちきて。」

花陽「まだ諦めちゃダメだよ。あの人たちはもう諦めてる人ばっか。」

冬馬「無理ないよ。次負けたら失格、地下の理行きだ。」

花陽「協力しない?2人で星を6つにしよう。」

花陽「冬馬君はさっきいくら借りた?」

冬馬「200万」

花陽「私は1000万円。これだけあれば星も買えるし、カードも買える。」

花陽「あ、そうだ。」

冬馬「さっきの部屋で探そう。星2つで、カードがない人を。」

そしていた。星2つで、カードゼロ。花陽たちとは別の形で絶望的な男。
彼の名は四ノ宮那月。

花陽「いい。これから3人で協力するんだよ。」

花陽「3人で星9つ取るんだよ。」

残ったカードは4枚。
冬馬が持ってたカードは3枚ともチョキだった。花陽の残り1枚もチョキ。
だから全部チョキだ。

冬馬「チョキしかないとは。あまりにバランスが悪い。これで勝負になるんだろうか?」

花陽「バランス? バランスか・・・」

花陽「勝てる!勝てるかもしれない。」

花陽「冬馬君、那月君、今から2人である条件の人を探して。」

冬馬「条件?」

その条件とは、手持ちのカードが9枚の人を見つけて、そのあとの2回の勝負のカードをチェックする。
順番はどうであれ、グーとチョキを使っていること。
グーとチョキを使って、残り7枚になった人を。

花陽(バランスを考えればグーとチョキの次はパーを出すはず。)

花陽(そこでチョキを出せば勝てる。)

花陽(もちろん確実じゃないけど。)

そしてその間また1人、星を全て失って地下の理に導かれた。

雪穂(よし、また1勝)

出場者「やだ、やめてくれ。助けてくれ。やだー!」

冬馬「黒服、本当鬼畜だな。」

花陽「今勝ったのは、穂乃果ちゃんの妹の雪穂ちゃんだよね。雪穂ちゃんも出てたんだ。」


那月「花陽さん、見つけました。グーとチョキを使って、今7枚になった人を。」

花陽「そう。じゃあ勝負だ。」

冬馬「四ノ宮君、誰?」

那月「あいつです。ソファーに座ってる女。」

花陽「雪穂ちゃん!」

那月「知り合いですか?」

花陽「高校のときのスクールアイドルの後輩。先輩の妹でもある。」

花陽「雪穂ちゃんなら好都合かも。」

花陽「あの人は星の多い相手を避けてよね?」

那月「確かに。2回とも星が1つの相手でした。」

冬馬「どうしてわかったんですか?」

花陽「雪穂ちゃんが星1つの相手と勝負してたのをさっき見たの。」

花陽「普通星1つの相手とは戦いたくない。自分の手で破滅させるなんて可哀想で気が引けるから。」

花陽「でも彼女が星1つの人に勝った時の顔はとても嬉しそうだった。」

花陽「星が1つか2つ、弱ってる相手ばかりを狙うハンターってとこかな。」

花陽「星1つの私があの人の近くで泣いてたりしたら、きっとあの人から声をかけてくるだろうね。」

冬馬「そんな奴相手にして大丈夫か?」

花陽「いや、あの人こそ理想の相手。カードを見ながら余裕の表情をしてるのもわかる。」

花陽「彼女は間違いなくバランス派だ。」

冬馬「バランス派って?」

那月「カードのことだろ。次に何を出すか選択できるっていう。」

冬馬「確かに。」

那月「じゃあ天ヶ瀬さんはなんでチョキばかり残したんですか?」

冬馬「そんなの考えてもしょうがないから、適当に出してただけだよ。」

那月「え?普通バランスを考えるだろ。」

冬馬「バランス?」

那月「ほら、今でいうチョキしかないって状態を避けるっていうか。」

那月「普通カードをギリギリまで選択することができるように、あまり偏った残し方はしないっていうか・・・」

那月「もし自分のカードがチョキしかないことを相手に知られたら絶対勝てないぞ」

冬馬「そうか!」

冬馬「花陽さんは彼女の手持ちカード7枚のうち、グーチョキパーそれぞれ2枚ずつはあると読んだんだ。」

冬馬「問題は1枚だけど・・・。」

冬馬「これもわかりきったこと、パーだ。」

冬馬「さっきグーとチョキを使ったから、次はパーが出てくると読んだんだ。」

もちろん100%ではない。相手の気まぐれでたやすく破綻する。

花陽「チェック、セット。」

雪穂「オープン」

冬馬「どうなった?」

雪穂のカードはパーだった。

那月「やった!勝った!」

雪穂「星1つで何を喜んでるのかな。」

花陽「ちょっと待って」

雪穂「ん?」

花陽「戻って。もうひと勝負だ!」

冬馬「花陽さん、ちょっと深呼吸深呼吸。」

那月「ダメだよ熱くなっちゃ。勝ったから勢いに乗りたいってのはわかるけど。」

花陽「なんだ、わかってるんじゃん。わかってるならあなたたちが深呼吸してみな。」

花陽「私たちはまだまだ星を取らなきゃいけない。」

冬馬「でも花陽さん、こいつは次出すかもう。」

花陽「わかってる。いいから任せておいて。」

雪穂(こいつら緊急避難のように集まった弱者か)

雪穂「いいよ。受けてあげるよ。」

花陽「チェック、セット」

雪穂「オープン」

雪穂のカードはグーだった。

冬馬「負けた・・・」

雪穂(へへ。2度続けて同じカードで勝てるわけないでしょ。)

雪穂(2回続けてチョキ、ってことは・・・)

雪穂「待って!もうひと勝負だ!」

花陽「え?」

雪穂「さっきはあなたの望みを聞いてやったんだ。今度はそっちが私の望みを聞く番だよ。」

冬馬「相手にすることないよ。行こう。」

雪穂「だからあんたらはダメなんだよ。1人じゃ何も決められない軟弱男が!」

冬馬「挑発かよ感じ悪い。行こう。」

雪穂「こいよ!弱気になって座り込んでも星は増えないよ。」

花陽「いいよ。もうひと勝負。」

冬馬「え?なんて・・・」

花陽「雪穂ちゃんの言うとおり。下がっても星は増えない。」

冬馬「何言ってるの?今度負けたら・・・」

花陽「これは演技だよ。」小声

冬馬「演技?」

花陽「2戦目の負けは想定内。今あの子は魚の餌に食いついた。」

花陽「ここから2連勝だよ。」

那月「そうか!」

那月「これは勝つよ。あいつは2度続けてパーを出す。」

冬馬「どういうこと?」

那月「あいつのバランス理論だ。2回続けてチョキを出した花陽さんの、残りのカードが2枚ともチョキだなんて、奴がそんな想像すると思うか?」

那月「あいつは花陽さんのカードは、グーとパーが1枚ずつ、あるいはどちらか2枚と思ってる。」

那月「だから3戦目以降はパーさえ出せば勝てる、悪くてもあいこ、負けはないと確信したんだ。」

冬馬「そうか。」

花陽「チェック、セット。」

雪穂(かつての先輩だけどここでは敵。私が引導を渡す!)

雪穂「オープン」

雪穂のカードはパー。そして遅れてチョキのカードを裏返す。

雪穂(え?なんで?)

雪穂(バカな!どうして?)

花陽「じゃあね」

雪穂「待って!もうひと勝負だ!」

花陽(必死になってきたね)

花陽「いいよ。もうひと勝負。」

バランス理論の足。一度深くはまればたやすく抜けない。

花陽「チェック、セット」

雪穂(4回連続でチョキは出ない。だからこれで・・・)

花陽「オープン」

相手はパーだ。

花陽(3連続で同じ手が来たから、もう同じ手はない。ギャンブルでその考え方は危険だよ。)

チョキ

雪穂「どうして?どうして4枚ともチョキなの?」

花陽「偶然だよ。偶然チョキしか持ってなかったんだ。」

花陽「あなたの読み、理論は間違ってないけどね。」

花陽「人間は理論というものを1度正しいと信じ込んじゃうと、なかなか疑わなくなる。それで勝ってきた人ならなおさらね。」

花陽、理論を逆手に2連勝。

第2話 終わり

これは某小学生アイドルや山登り等をするアイドルが出そうな予感

そろそろ名前ありキャラがやられるかな...

第3話 必勝法

花陽「これで星は6個。2個ずつ分けよう。」

冬馬「いいのか?」

花陽「誰がつけても同じなの。言ったでしょ。3人で星を9個にするって。」

花陽「残り星3つ。どうやって手に入れるか。」

冬馬「もうカードはないから、星は買うしか・・・」

那月「手持ちの金じゃ星3個も買えない。」

冬馬「じゃあどうにもならないじゃないか。星は買えない、カードもなしじゃ。」

花陽「カードはどうにでもなるよ。誰かからもらえばいいんだよ。」

冬馬「そんなのできるのか?」


カード破棄男「もうしないから」

花陽「ん?なんだろう?」

カード破棄男「嫌だ、見逃してくれ!頼む!」

黒服「ちゅうもーく!」

黒服「この男は今余分なカードをトイレに捨て流した。」

黒服「最初に言ったはずだ。カードの破棄は禁止だと。」

黒服「禁制を犯した者は無条件で地下の理だ。不正行為は厳罰に処す。」

カード破棄男「許してくれ!悪かった!謝るから!」

冬馬「花陽さん、やっぱりまずいだろ。」

冬馬「カードは自分で使い切らなきゃダメなんだ。誰かからもらうだなんて。」

花陽「冬馬君本気で言ってるの?」

花陽「私たちの間でカードも星も行き来してるじゃない。」

冬馬「あ!」

花陽「黒服の人が私たちの行為に気づいてないと思う?」

花陽「つまり認めてるの。破棄はダメだけど、譲渡はいいんだよ。」

花陽「このジャンケン大会は一見運否天賦だけど、実際は戦略がある。」

花陽「いわゆる気づきのゲーム。そのことに気づかなければ、さっきの人みたいに自ら奈落の底に落ちることになる。」

花陽「このゲームに試されるのは思考力。運否天賦に任せるのではなく、勝てる方法を考えるんだよ。」

ゲーム中盤。じゃんけん大会に参加した100人のうち、32人の決着がついた。
余った星を主催者側に売り、星3つで勝利を確定した者が24人。
星を全て失い、敗退した者が8人。
今体育館に残っているのは68人だ。


花陽「あそこに電光掲示板がある。あれにはグーチョキパーの残り枚数が・・・」

冬馬「チョキが多くて、パーが少ない。」

花陽「そうだ!」

花陽「勝てる。見つけた!究極の必勝法を!」

冬馬「え?」

花陽「例えば私たちがグーのカードをいっぱい手に入れたとする。」

花陽「このカードバランスのまま残り30分になったら、チョキだらけで、パーはほとんどない。」

花陽「そのとき私たちがグーを10枚持っていたら、どう思う?」

冬馬「圧勝じゃないか。」

那月「本当だ。」

花陽「まあ現実的にはそこまで偏らないでしょ。」

花陽「逆に1時間後にはパーだらけになってるかもしれない。」

花陽「そのときはチョキで勝負にいけばいい。」

花陽「電光掲示板を見て勝負にいけばいい。」

花陽「グー、チョキ、パーをそれぞれ12枚ずつ集めよう。」

冬馬「合計36枚か。それだけの数どうやって。」

花陽「この軍資金で。カード1枚で10万円使っても、それがのちに星に化けると考えれば安い。」

那月「異論はありません。じゃあ行こう。」

花陽「待って。」

花陽「私たちが動いたら気づかれちゃうよ。」

花陽「バレたら最後、誰とも勝負してくれなくなるよ。」

冬馬「でもカードを手に入れないと」

花陽「資金はあるんだ。誰かを使おう。」

花陽「星が多い人は余裕があるし、もっと稼ぐつもりでいるだろうからカードをもらうのは難しい。」

花陽「生き残りギリギリの星3つの人はこれ以上星を減らしたくないでしょう。」

花陽「星3つの人を探して、工作員にしよう。」

花陽「ねえ、そこの人」

虎太郎「あー、・・・って花陽さん!?」

花陽「・・・にこ先輩の弟の虎太郎君!」

虎太郎「まさか花陽さんもこの大会に出てたとは。勝負に夢中で気付かなかった。」

花陽「今星3つだよね。」

虎太郎「はい。勝ったり負けたりで今最初と同じ星3つ。」

虎太郎「残りのカードは2枚あるけど、これで残り2連勝できたらいいけど、もし2連敗したらと思うと・・・」

花陽「あるお願いがあって来たんだけど」

虎太郎「お願い、ですか」

花陽「今持ってるカードって何と何」

虎太郎「グーとパーです。」

花陽「そのカードを譲ってもらおうと思うんだけど」

虎太郎「本当ですか?」

花陽「他の人が持ってるグーのカードを11枚集めてきてほしいの」

花陽「その代わりに今手持ちのカードを私が引き取って、報酬として100万円あげる。」

花陽「あなたはこれ以上星を減らすことなくゲームを終えられる。悪くないよね。」

虎太郎「それは助かる。大会の勝利を確定させて、さらに100万円ももらえるなんて。」

虎太郎「わかりました。グー11枚ですね。」

これは大ヒット。相手にしてみればリスク抜きでカードを始末でき、さらに100万円を手にして勝利を確定できる、おいしい話だ。
工作員は勝利してフロアを出ていくため、他の参加者に花陽たちがカード集めが漏れることはない。
使用した資金は800万円。

続いてチョキ12枚、そしてパー12枚。
そしてついに手に入れた。勝負のグー、チョキ、パーのカード36枚。

別室に隠れて。

花陽「私たちはこのジャンケン大会を攻略した。この世界を支配した。」

花陽「これで私たちで星10個も夢じゃない。12個くらいいけるかも。」

花陽「ここで借りたお金とその金利をきれいにしても黒字。大勝だ。」

花陽「みんな大金を持って帰れる。」

花陽「このゲームに勝ったら、人生をやり直そう。私も、あなたたちも。」

花陽「じゃあグー、チョキ、パーを4枚ずつ持とう。」

花陽「じゃあ四ノ宮君、チェックに行ってきて。」

5分おきに交代して、残り枚数を確認する。

しかし・・・

那月「チョキがかなり減ってる・・・」

那月「同じくらいの枚数になった。」

冬馬「これじゃ勝負にいけないじゃないか。」

雨宮春希「イカサマだ!」

雨宮春希「今聞こえたんだ!この中から合図を送る音が!」

月宮林檎「言いがかりはよしなさい。」

雨宮春希「星を返せ!」

雨宮春希「地下の理はいやだー・・・」

また1人、星を3つなくして地下の理に導かれる。
あのオカマっぽい人は確か・・・

・・・
月宮林檎「私の言うとおりにしてよ。これは必勝法だよ。」

音無小鳥「わかりました」

・・・
花陽「ていうことは、今騒いでいたイカサマ、本当にあったかもしれない。」

花陽「もし敗者が連れて行かれる部屋が鏡の裏で、あれがマジックミラーだったら。」

花陽「星1つの人を説得して別室に送り込んで合図をもらう。」

花陽「その見返りとして最後の星売買のときに星を3つ与えて救済する。」

花陽「ありえなくない。じゃああの人もリピーターってこと?」

あずさ「なかなかやるわね、花陽さん」

花陽「あなたは、三浦あずささん!」

ゲーム序盤で花陽を騙して星2つを奪って、この窮地に花陽を追い込むきっかけになった人。

花陽「何の用なのよ」

あずさ「あなたを救いに来たのよ」

あずさ「あれを見なさい。体育館の片隅に集まってる人。」

あずさ「彼らは星1つ2つでカードなしの人たち、通称乞食集団ね。さっき大会委員がこの人たちに教えたそうよ。」

あずさ「ゲーム終了後に星売買の時間があるって」

あずさ「となったら、命をかけて勝負するより、お金で星を買う方を選ぶ。」

あずさ「カードを買って勝負しても、カードの情報が第三者に漏れたら負けるしね。」

あずさ「この状況こそ大会側にとって好都合。」

あずさ「借りた金が星に注ぎ込むってことは、大会に勝利して今までの借金をチャラにしても、列車での新たな借金を生む。」

あずさ「花陽さん、あんた買い占めたのよね?」

花陽「そ、そんなことしてないよ・・・」

あずさ「いや、隠さなくていい。そのカードを譲ってもらおうと思って。」

あずさ「中盤からマークしてる獲物が数人いる。最後のカード1枚が何かもわかってる。」

あずさ「それに勝つカードを回してくれたらあと5勝くらいいける。」

あずさ「星1つあげるから。これで花陽さんは勝利決定よ。」

花陽「一度騙したあんたを信用しろって言うの?」

あずさ「そのときはそのときよ」

あずさ「花陽さんの戦略は確実ではないわよ。最悪さらに星を失う可能性もある。」

あずさ「それより今星1つもらえば確実よ。」

花陽「冬馬君と那月君はどうするのよ?」

あずさ「あんな男裏切ればいいじゃない。」

あずさ「この場だけの仲間なんて助ける義務はないのよ。」

あずさ「しかもあなたは1000万円借りたからまだ500万円以上持ってるはず。星売買であなただけ救われるのよね。」

あずさ「どうせ裏切るつもりなんでしょ?」

花陽「裏切ったりなんかしないよ。」

あずさ「何よ。せっかく救いの糸を差し出したのに。あとで後悔するわよ。」

花陽「冬馬君、那月君。絶対裏切らないでよ。」

花陽「初戦に勝って星3つになったからって、勝手にカードを売ったり、誰かの誘いに乗ったりしないでよ。」

冬馬「するわけないだろ。」

那月「そうだよ。」

花陽「さっき私にもそういう話を持ちかける人がいたんだ。」

花陽「残りのお金は均等に分けよう。これで勝手に星を買うこともできない。」

花陽「私はあなたたちを信じる。あなたたちは私を信じて。」


100人でスタートしたじゃんけん大会。40人は勝利してゲームを終え、24人は失格となって地下の理に導かれた。
現在体育館にいるの36人。そのうち20人はゲーム終了後の星売買に望みを託す。
残り16人。13人から星を奪うしかない。

花陽「パーは残り17枚だけど、私たちが持ってる2枚を除くと残り5枚。」

花陽「パーが残り3枚になったら行こう。」

そして残り3枚に

花陽「行こう」

戦えば勝てる。しかし戦えない。

花陽「どうしよう誰とも勝負してくれないよ。」

お互いに疑念を抱いて、勝負を避けている。

冬馬「買い占めがバレたのか?」

花陽「そうかもしれないけど、それだけじゃないと思うよ。不信感だよ。」

花陽「勝負してくれないのは私たちだけじゃないみたいだよ。」

花陽「疑念と疑惑。ここに至るまで騙したり騙されたりするのを見てきたからね。」

花陽「声をかけてくる人なんて信用できないんだよ。」

花陽「とはいえカードを残したままじゃ終われないのはみんな同じ。いつかは戦わなければならない。」

花陽「その決断のときまで、待つしかない。」

あずさ「みんな聞いて。提案があるの。」

あずさ「シェッフルよ!」

レオナ・ウェスト「その声は三浦さん!?」

あずさ「自分のカードが相手に知られてるかもしれないって疑念で互いに警戒して動かないなんてバカみたい。」

あずさ「それじゃ始まらないわよ」

あずさ「だから一度ゼロに戻すの。みんなのカードを集めて、シャッフルして配りなおすのよ。」

あずさ「そうしたら自分のカードが知られてても関係ない。最初と同じまっさらな状態に戻るから、疑念は晴れる。」

花陽「あの人、なんてことを」

冬馬「そんなことしたら買い占めが確実にバレる。」


凛「何勝手なこと言ってるの!」

あずさ「星空凛とか言ったっけ。あんたも3人ほど標的にしてたでしょ。」

あずさ「あんたはその3人のカードが何かを知っている。」

あずさ「わかるわ。お互い1枚のカードに命かけてるから。」

あずさ「でもこの終盤、そんなことには構ってられないわよ。」

あずさ「みんなよく聞いて」

あずさ「残り0秒になってゲームが終わった瞬間、カードを1枚でも持っていたらアウト、地下の理に導かれるのよ。」

あずさ「でもカードを使い切っていれば生き残りの可能性はある。」

あずさ「ゲーム終了後、星の売買タイムがあるからね。あそこの人たちは星の売買待ち。」

あずさ「あんたは今星3つ、たとえ2つに減らしてもまだ生き残りの可能性はある。」

あずさ「でもこのままカードを持っていたら100%負けなのよ。」

凛「・・・わかった。」

あずさ「まあ私も何を持ってるか知ってる人が何人かいて、機会を待ってたんだけど。」

あずさ「あんたたちが持ってるカードも知ってるのよ。」

あずさ「本田未央さんとレオナ・ウェストさんはパー、高坂雪穂さんはチョキだったわね。」

レオナ「なんで知ってるの?」

あずさ「あんたらにカードを売った人は、カードと情報を売り、そのお金で星を仕入れる詐欺師よ。」

あずさ「だから他の人にも知られてるでしょうね。」

あずさ「でもシャッフルすれば何を持ってるかわからなくなる。一度ゼロに戻すのよ。」

あずさ「さあシャッフルよ。」

こうして7人が三浦の元に

花陽「戦う相手が次々失われる・・・」

冬馬「あいつなんてことを・・・」

第3話 終わり

カイジの登場人物を変えただけのパクリじゃねえか

花陽と雪穂は会話もないのかよwwwwwwww

花陽と雪穂は再会した時の会話とかないのね
何のためにキャラ変えてるのか不明なんだけど

まあいいんじゃないの

第4話 謎の乞食X

凛「ちょっとカードが少なすぎない?電光掲示板にはまだ60枚カードがあるのに。」

あずさ「向こうに30枚以上持ってる人がいるようね。まあそんなの関係ないわ。」

あずさ「私たちはカードシャッフルに参加した、この場だけのクラブみたいなものね。」

あずさ「勝負は部員の中だけである。部外者は締め出すのよ。」

出場者「いれてください。俺も!」

あずさ「そう。」

あずさ「これで13人。一部の頑固者を除いてほぼ全員ね。」

あずさ「じゃあクラブ規則。部員以外との勝負は禁止。」

花陽「・・・」

花陽「待って!私たちも加わる。」

あずさ「ずいぶん遅い決断ね。でもいいわ。」

あずさ「小泉花陽さん。であんたはカード何枚」

花陽「36枚」

あずさ「ずいぶん多いわね。」

あずさ「まあこれで全員、電光掲示板とカードの枚数が合うはずね。」

しかし

あずさ「あれ?チョキが3枚足りない」

雪穂「じゃあこの中に数をごまかしてる奴がいるの?」

あずさ「いや、申告したカードの枚数以上は戦わないって取り決めがあったら、3枚隠すことは自分の首を絞めることになる。」

あずさ「おそらく、向こうね。」

あずさ「星売買待ちのあの乞食集団にチョキ3枚を隠してる者、謎の乞食Xがいるってことね。」

あずさ「まあ、今は関係ない。そいつとは戦わない決まりよ。」

あずさ「じゃあ全員に回してカードを切るのよ。」

花陽(まだ勝機はある。圧倒的多数のカードが36枚あれば、何を出せば勝てるか知ることができる。)

花陽(問題は配り直されたあと、いかに早くカードをチェックできるか。)

あずさ「じゃあ配りなおすよ。自分が持ってたカードの枚数を指で示して。」

あずさ「配り終わったら勝負再開よ。」

あずさ「私は3枚、凛さんは2枚、雪穂さんが1枚、レオナさんは1枚、未央さんは2枚・・・」

あずさ「そして・・・」

あずさ「花陽さんたちは36枚ね」

あずさは投げてバラバラにするようにして花陽たちに手渡した

あずさ「ゲーム再開!」


最終決戦の幕が上がった。
しかし花陽たちはあずさにバラバラにされたカードを拾った上、チェックするのに時間がかかった。
その上誰とも勝負してくれなかった。

過半数のカードをもってる花陽たちは誰も勝負してくれないのは当然だった。

シャッフル後わずか1分で、残り16人の参加者が7人に減った。
高坂雪穂は運良く最後の戦いに勝利し、星4つで生き残りが決まった。
しかしその1分が命取り。痛恨の出遅れだった。

花陽「グー12枚、チョキ10枚、パー14枚。合計36枚。」

花陽「電光掲示板は・・・」

冬馬「グー14、チョキ15、パー14・・・。」

冬馬「俺たちのパーも14。」

花陽「パーは尽きたってことか。」

花陽「謎の乞食X(命名三浦あずさ)のチョキ3枚と、私たちのカードを除けば、今この部屋にあるのは、グー2枚、チョキ2枚。」

花陽「つまりグーで勝負にいけば悪くても2勝2分、あるいは4連勝もできる。」

花陽「1勝目2勝目でチョキを完全に[ピーーー]ことができれば、残りのグーをパーで[ピーーー]。」

花陽「今残っているのは、三浦あずさ、凛ちゃん、レオナさん、本田さん。」

花陽「4人とも1枚ずつのようね。連中同士で決着をつけられる前に行くしかない。」

あずさ「勝負しようよ。」

花陽「あずささん、嫌がってる相手を無理に誘うのはよくないよ。」

花陽「やるなら私と勝負しようよ」

あずさ「お断りよ。」

花陽「ねえ、私と勝負しようよ。」

レオナ・ウェスト「え?」

花陽「座り込んでても終わらない。いつかは勝負するしかない。」

あずさ「やめときなさい。この人はカードを買い占めたのよ。」

あずさ「手持ちのカードから何が勝てるかわかるのよ。こんな人と戦ったら自殺行為よ。」

花陽「三浦あずさ・・・、どこまで私たちを邪魔するのよ・・・」


あずさ「ふふふ。買い占め戦略なんて知られたらアウト。あとはせいぜい3人仲良く地下の理ね。」

あずさ「だいたい後からのこのこ出てきて人のえ・・・、相手にちょっかい出すからよ。」

花陽「・・・!?」

花陽「口を滑らせたね、三浦あずさ。」

あずさ「何?」

花陽「人のえって言ったね。人の獲物って言おうとしたんでしょ。」

花陽「ということはあんたには確信がある。この人との勝負に勝つという。」

花陽「三浦あずさが持ってるカードはグーで、この人の持ってるカードはチョキってことかな。」

花陽「そうだよね?」

レオナ「!?」

花陽「さっき三浦あずさと手持ちのカード1枚で勝負して、負けた人いる?」

参加者「はい、俺です。」

花陽「何を出した?」

参加者「チョキ」

花陽「これが偶然かな?」

花陽「あんたが戦った相手、今戦おうとしてる相手はともに手持ちのカードが残り1枚でカードはチョキ。」

花陽「シャッフルのとき、こっそり自分の必勝パターンを作り上げたでしょ?」

あずさ「何を根拠にそんなこと言ってるの?」

花陽「このシャッフルを提案したのはあんただし、自分だけが得するってわかってたんでしょ。」

花陽「あんたが黒であることは明白だよ」

あずさ「それだけ?」

花陽「他にも疑問点が3つある」

花陽「1つ目は、全員のカードを集めるとグーチョキパーそれぞれの数を確認し始めた。」

花陽「残り時間が少ないのに、こんなことする必要あるの?グーチョキパー関係なく、カードの枚数だけ確認すればよかったはず。」

花陽「あんたがわざわざカードの種類ごとに数を確認したのは、自分だけの都合があった。」

花陽「自分の目当てのカードに印でもつけたんでしょ?」

あずさ「そんなの考えすぎよ」

参加者「あります。引っ掻いたようなあと。」

あずさ「いろんな人が触ったんだから、傷くらいつくわよ。」

花陽「カードを切った後は適当に配ったふりをして、自分にはグー、目当ての相手にはチョキを渡した。」

あずさ「シャッフルしたのは私だけじゃないのよ。不正が入る余地は」

花陽「みんなにカードを切らせることで、疑いの目を消したってことね。」

花陽「最後にカードをまとめたのも配ったのもあんただったから、途中で誰が何回切ろうと関係ない。」

花陽「疑惑の2つ目は、なぜ最後にカードを床に置いて、手で混ぜるようにしたか。」

あずさ「そのほうが誰が見たって公正でしょ」

花陽「違うね。混ぜるふりをして、目印のカードを選んでいた。」

あずさ「そんなこと言ったら全部が疑惑になるじゃない。」

花陽「そうだね。でもまだある。」

花陽「疑惑の3つ目は、カードを順不同に配ったこと。右回りでも、左回りでもなく、バラバラに。」

花陽「あんな配り方をする理由は、目印のついたチョキを目当ての人、手持ちカード1枚の人に振り当てるため」

あずさ「この人はカードを買い占める詐欺師よ。こんな戯言信じちゃダメよ。」

花陽「私が詐欺師であっても、事実は事実。」

レオナ「三浦、あんたそんな奴だったの?」

参加者「俺はわかってたよ。シャッフルを思いついたこいつがなにか企んでないわけがないって。」

参加者「裏切り者!」

これで誰も三浦あずさとは戦わなくなった。
破綻、孤立した。

冬馬「なんとか一矢報いたけど、状況は変わらず。」

花陽「あの人たちも動けないみたいだ。」

花陽「戦えないんだよ。パーが全部私たちのもとにあるって公言したから、チョキ1枚じゃどうやっても勝てない。」

花陽「チョキが動けなきゃ、グーも動けない。凍りついたってことだね。」

花陽「ここから勝つには、あの3人と・・・」

花陽「または星を8つ持つ三浦あずさから、一気に星3つを賭ける大勝負を仕掛け、星を9つにする。」

那月「でも今はその両方ができないから苦労してるんじゃないか。」

花陽「他にもチョキ3枚を持つ謎の乞食X(命名三浦あずさ)って存在も。」

花陽「謎の乞食Xって誰なんだろうな。」

花陽「ん・・・」

冬馬「花陽さん?」

花陽「思いついた。必勝法。」

花陽「でも一度地獄を見ることになる。かなり危ない戦略。」

冬馬「何?」

花陽「今は言えないけど・・・」

花陽「あと謎の乞食Xの正体は誰かもわかったよ。」

花陽「みんな聞いて」

花陽「このまま勝負しないで時間切れになったら、星は2つのまま。」

花陽「それにさっき三浦あずさが言ったとおり、カードが余ったら星の数に関係なく負け、地下の理に導かれるんだよ。」

花陽「私と勝負しよう。」

凛「でも、かよちゃんたちはカードを大量に持ってるよね。」

レオナ「あなたはカードを選べるが、私たちは1枚、選択権がないんだ。」

未央「私が持ってるカードが何かも知ってるんでしょ?」

花陽「だからもう一度シャッフルするんだよ。好きなカードを選んでいいよ。」

レオナ「そうしたってカードの枚数を数えればどのカードを選んだかわかるだろ。」

花陽「もうそんなことしてる時間はないよ。まあその可能性もあるから・・・。」

花陽「グー、チョキ、パーをこうやって3枚並べて、そこから先、私のカードの選択もあなたたちに任せる。」

花陽「3枚とも見せる。勝負がついたあと、残り2枚を見せて確認する。これならイカサマが入る余地はない。」

花陽「今はたとえどんなに低い確率でも、私たちは3連勝、あなたたちは最後のカードで1勝するしかない。」

花陽「今戦わずにどんな勝算がある?」

花陽「もしこれからあの三浦あずさと2回、あとの誰かと戦って3連勝したら、もうあなたたちとは戦わない。」

花陽「そしたらあなたは生き残れない。それでいいの?」

レオナ「わかった」


カードをシャッフルしたあと、花陽はグー、チョキ、パーを3枚並べて、相手に選ばせる。

花陽「セット」

花陽「オープン」

花陽はグー、相手はチョキだった。

レオナ「う・・・」

冬馬「やった!」

彼は残りの2枚を見て不正がなかったことを確認する

花陽「悪く思わないでね」

花陽「次、凛ちゃん、いこう。」

凛「え?」

花陽「迷ってる時間はないよ。」


花陽「チェック」

この2人にはわからなかった。なぜ花陽が勝てるのか。

花陽「セット」

でも花陽が必勝法と明言した以上、何かトリックが隠されている。そう思った。

花陽「オープン」

冬馬(これで2勝目!)

冬馬(え?)

花陽はチョキ、凛はグーだった。

凛「やった!生き残ったにゃ!」

星を1つ失う。

花陽「次、本田さん」

冬馬「花陽さん」

花陽「いいの。ここまでは予定通り。」

冬馬「予定通りって・・・」

花陽「オープン」

未央「やった!」

3戦目にも負け、星を1つ失い、星は5つに。

冬馬「1勝2敗、最悪じゃないか。」

那月「もうダメだ・・・」

花陽「次、三浦あずさ」

あずさ「ん?」

冬馬(そうか。今までの3人の勝ち負けはどうでもよかったんだ。全てはあの三浦あずさに勝負を仕掛けるために。)

花陽「決着をつけよう。」

花陽「ここまで煮え湯を飲まされた雪辱だよ」

第4話 終わり

これ以降のカイジ流れ

破棄された3枚が電光掲示板にカウントされてない
最後に☆5個の強制勝負
余った☆と金を仲間に託して別室へ
別室から☆3個で戻して貰おうとするが仲間が裏切る
別室に居た奴からどさくさに紛れて宝石類を強奪
別室から出て仲間にだった奴から☆と金を奪う
分け前を寄越せと言う仲間にウンザリ
☆と金を全部使って別室のただ一人優しかった人間を救う


どうせ何のひねりも無いままパクリで終わるんだろうな

第5話 逆境無頼あずさ

花陽「2戦で星4つ、合計星8つの大勝負!」

あずさ「何?」

あずさ「そんなことしていいの?」

花陽「大会委員が黙ってる。問題ないんだよ。」

あずさ「さっきみたいにカードをシャッフルするんだよね?」

花陽「今回はそれは認めない。」

あずさ「何?負けるとわかっててなんで勝負しなきゃいけないのよ。」

花陽「もう勝負する相手は私しかいないんだよ?」

あずさ「何言ってるの?さっき言ったでしょ。チョキ3枚隠してる人がいるの。」

あずさ「勝負はその人とするわ」

電光掲示板とチョキ3枚分の計算が合わないのだ。

つまり隠し持っている謎の乞食X(命名三浦あずさ)がいる。

あずさ「誰よ?出てきなさい! もう時間切れよ。隠してる場合じゃないのよ。」

あずさ「出てきなさい、謎の乞食X!」

「・・・」

しかし誰も名乗り出ない

あずさ「まああんたが持ってるのは戦えば負けるとわかってるチョキだから、簡単に勝負できないのはわかるけどね。」

あずさ「だけどもう時間がないのよ。だからあんたに有利な条件をあげる。」

あずさ「グーとチョキでも、あいこってことにしておいてあげる。」

あずさ「それから、あんたが生き残れるだけの星をあげるわ。」

あずさ「どう?これで100%生き残れるわよ。さあ出てきなさい、謎の乞食X!」

それでも誰も名乗り出ない

あずさ「な、なんで?」

あずさ「カードを残したら失格ってルールを知らないわけないよね?」

花陽「あずささん、残念ながら謎の乞食Xとやらはもう失格になって地下の理に導かれたよ。」

あずさ「そんなわけないでしょ。地下の理に導かれたら、その人の持ってたカードは黒服が回収して電光掲示板の枚数が減るんだから。」

花陽「まだ気づいてなかったの?」

花陽「この大会、ゲーム中盤にあるハプニングがあったじゃない。」

あずさ「ハプニング?」

花陽「特殊な事情で地下の理に導かれた人がいたじゃない」

あずさ「地下の理に導かれたってことは星3つを失ったってことでしょ。特殊な事情って・・・」

・・・
黒服「この男は今余分なカードをトイレに捨て流した。」

黒服「最初に言ったはずだ。カードの破棄は禁止だ。」

カード破棄男「許してくれ!悪かった!謝るから!」

・・・
あずさ「あ!」

ざわざわざわ

花陽「そう。カードをトイレに破棄した人がどのカードを持ってたのかは不明だけど、おそらくチョキ3枚だったんだろうね。」

花陽「あのときトイレに破棄されたチョキ3枚は、電光掲示板にカウントされていないの。」

花陽「つまり謎の乞食Xなんていないんだよ」

花陽「これであんたは負けると分かっていても、カードを使い切るため私と戦うしかない。」

花陽「さあ来て、三浦あずさ。文字通り最終戦。」

花陽「あんたは私との戦いで、詐欺と卑劣で蓄えたその星を全て吐き出す。」

花陽「そしてあんたは地下の理に落ちてもらう。」

花陽「さあ、ここから2回、星4つの勝負だ。」

あずさ「何調子に乗ってるのよ!危ないのはあんたたちも同じでしょ。何主導権握ってるのよ。」

あずさ「強欲すぎるわよ。星2つでいいでしょ。それで2連勝すれば9個になる。」

あずさ「それであんたたちは生き残れる。」

あずさ「それ以上は望むべきじゃない。星2つ、それでいいでしょ。」

花陽「4つだよ。それ以外は認めない。」

あずさ「何言ってんの?」

花陽「当然だよ。100%勝てる勝負に、限界まで張るのは当たり前。」

あずさ「状況考えなさいよ。もたもたしてたら時間切れ、全員地下の理行きよ。」

あずさ「ここはお互い譲り合って」

花陽「譲り合い?この大会にそんな言葉は通用しないよ。」

花陽「私たちはここまで徹底的に奪い合ってきたじゃないの。」

花陽「それが最後の最後で譲り合い?バカなこと言ってるんじゃないよ。」

花陽「悪党なら最後まで悪党でいなよ」

あずさ「いいの?そこの2人。花陽に任せていたら時間切れになって全員地下の理行きよ。」

冬馬「え?」

花陽「安心して。いざとなったら私の星と、600万円で星6個には到達する。あなたたちはそれで上がればいい。」

冬馬「でもそれじゃあ花陽さんは?」

花陽「そのときは、私はこの人と心中する。」

あずさ「何強がってるのよ」

花陽「強がりじゃないよ。あんたから星8つ取ろうと、取れずに沈むことになろうと、結果は同じなんだよ。」

あずさ(どういうことよ。残り3分よ。こんなときに何揉めてるのよ。残り3分・・・)

あずさ「あんたたち、残り3分で残ったカードを消費できるの?」

花陽「それはあいこで消費すればいい。だけど1つ問題があるんだよ。」

あずさ「問題って?」

花陽「今私たちが持ってるカードは33枚なの。つまりあと2回勝負すると・・・」

あずさ「あー!」

花陽「あんたと2戦したら31枚。仲間同士で消費しても1枚余っちゃうの。」

花陽「チョキ3枚破棄というハプニングで本来偶数だったカードの枚数が奇数になって、割り切れなくなった。」

花陽「いや、破棄がなくてもこの可能性はあった。」

花陽「途中で星3つ失って地下の理に落ちた人。その人達が残したカードの合計が奇数だったら、必然的に星3つ以上持ってる人のカードの合計も奇数になって、1人カードを余らせるy人が出てしまう。」

冬馬「花陽さん、じゃあどうすれば・・・」

花陽「私が落ちる。私が三浦あずさを抱いて落ちる。」

あずさ「う!」

あずさ(ダメだ。死ぬと決めた者にどんな説得をしたって無駄・・・)

苦渋の選択。あずさは星4つの勝負2回を受ける。

あずさ「チェック、セット、オープン。」

あずさのカードは当然グー。花陽はパー。

花陽たちは星4つから8つに。一方あずさは星8つから4つに。

そして本当の最終戦

あずさの近くに黒服が。もうあずさを地下の理に連れて行く準備をしている。

あずさ「チェック・・・、セット・・・」

あずさ「オープン」

残りカードがグーだと知られているあずさは当然敗北
三浦あずさ、星を全て吐き出し、地下の理に導かれる。

あずさ「嫌だー!やめてー!」

あずさ「小泉花陽!覚えてなさいよー!」

土壇場で2戦合計星8個を獲得。
ついに星9個、正確には13個を得た。これで終えられれば奇跡。
しかし花陽たちの手持ちのカードは奇数。3人のうち誰か1人は落ざるえない。

花陽「私が落ちる。でもただ落ちるわけじゃない。」

花陽「私はあなたたちに託して落ちるの。」

冬馬「託す?」

花陽「そう。私は復活する。」

花陽「私はあなたたちに星を全て託して。ゲーム終了後の星売買の時間で、その星をつかって私を引き上げてくれればいい。」

冬馬「そんなのできるのか?」

冬馬「あいつらが星売買で救済されることは大会側も認めているけど、それで地下に落ちた者も救われるかどうかは・・・」

花陽「大丈夫。救われるはずだよ。」

冬馬「でももし救われなったら?売買は前回までで、今回はなしとかになったら・・・」

花陽「冬馬君、他に手はないんだよ。」

冬馬「花陽さん・・・」

花陽「怪しいのは私もわかっているけど、今は大会側を信用するしかないんだよ。」

花陽「じゃあ冬馬君、このチョキで私の星1つを受け取って。」

花陽「そして私は多量のカードとともに、一旦地下の理に導かれる。」

冬馬「花陽さん・・・」

花陽「怪しいのは私もわかっているけど、今は大会側を信用するしかないんだよ。」

花陽「じゃあ冬馬君、このチョキで私の星1つを受け取って。」

花陽「そして私は多量のカードとともに、一旦地下の理に導かれる。」

冬馬「花陽さん・・・」

花陽「さあ最後の勝負」

花陽「チェック、セット」

花陽「オープン」

花陽はゲーム終了後の星売買に全てを託す。
冬馬と那月に全てを託した。

そしてじゃんけん大会が終了した。

冬馬「花陽さん、ありがとうございます。」

那月「必ず救い出します。」

そのとき花陽は何か感じた。2人が遠くに居いるような。

別室、そこでは敗者が泣き崩れていた。その中には先ほど花陽に敗れた三浦あずさの姿も。
まさに人生の底辺。

真斗「君は助かる見込みがあるようだね。」

真斗「別室と客室がマジックミラーで仕切られていると知るリピーターが、仲間を一人別室に送り込み、対戦相手のカードを盗み見させる。」

真斗「そしてミラーをノックする回数で仲間に教える。」

今回その作戦を使った者は2組、ともに成功した。
1組は聖川真斗と一十木音也。もう1組は音無小鳥。
月宮林檎に説得されてこの戦略を受け入れた。

小鳥「あなたは1000万円借りた小泉花陽ちゃんね。助けてもらえるのよね?」

花陽「はい。」

小鳥「それはよかったね。」

小鳥「私は月宮さんのおかげで生き残ることができる。星を7つ稼いで、私を引き上げてくれるって。」

小鳥「余った星1つ分の500万円は分け合おうって。」

小鳥「私たちは救われたんだ。」

真斗「まだわからないぞ。大会側が裏切るかもしれないし。」

真斗「今回に限り星売買はなし、とか。」

小鳥「そんなこと・・・」

花陽「し!」

上条「3時間が経過し、じゃんけん大会は終了。」

上条「だが見たところ星1つ2つの者がこのフロアに溢れている。」

上条「お前たちを全員地下の理に導くのは少し気の毒だ。数名でも救いたい。」

上条「そこで星売買の機会を設けることにした。」

上条「売買で星3つになれば救済する。」

小鳥「よかった。助かる。」

そして別室にあかりが灯り、体育館から指名できるように。

小鳥「本当は不安だったの。大会側に裏切られるんじゃないかと不安だった。」

小鳥「あとは月宮さんが救ってくれるだけ。」

真斗「ははは・・・」

花陽「何笑ってるの?」

真斗「すまん。あまりにおかしくてね。」

真斗「なあ、知ってるか?リピーターは星4つ必要なんだぜ?」

花陽「え?そうなの?」

真斗「そうだ。リピーターは有利になるからハンデがあるんだ。」

花陽「知らなかった。でもそれがどうかしたの?」

真斗「その月宮林檎って奴はどこにいるんだ?」

小鳥「どこって・・・、あれ?いない・・・」

真斗「その月宮林檎って奴は今、勝者の部屋で美味しいビールでも飲んでるんじゃね?」

小鳥「え?そんなバカな・・・」

小鳥「あー!」

聖川真斗の言葉通り、月宮林檎は勝者の部屋にいた。音無小鳥を裏切ったのだ。

小鳥「酷いよ~・・・うわーん。」

真斗「最後に裏切るのは何も列車側だけじゃない。」

真斗「君、最初星を7つ稼いで余った星の賞金は山分けって言ったよね?その時点で救われない。」

真斗「月宮はリピーターなんだろ?さっき言ったようにリピーターは星は4つ必要なんだ。」

真斗「つまりこいつの分の3つと合わせたら7つでギリギリ。余らないし、大会側での借金しか残らない。」

真斗「誰がそんなことするか。裏切られるのは当たり前。」

真斗「まあ月宮が星を8つか9つ稼いでいたとしても裏切られることに変わりはない。あいつからみたら、こいつはただの捨て駒。」

花陽「ちょっと、そんな言い方ないでしょ!」

花陽「確かに月宮林檎って人の言いなりで、本当の人間関係を築かなかった音無さんにも落ち度はあるけど・・・」

真斗「本当の人間関係?なんだそれは?」

花陽「何って、一緒にこのじゃんけん大会を乗り越えてきて、信頼しあう、本当の絆・・・。」

真斗「なにそれ?」

真斗「死ぬな、お前。」

花陽「!?」

真斗「ここから救ってもらおうと思ったら、僕みたいに金を抱いて落ちるとか、助けざるえないって状態にしなきゃ。」

真斗「なのにお前は絆とか信頼とか、寝ぼけたこといって。」

花陽「あんたは何も知らないんだ!私と冬馬君と那月君がここまで乗り越えてきた試練を、絆を、信頼を。」

上条「制限時間は10分。10分で星3つに届かなければ、今度こそ地下の理行きだ。」

冬馬「あの、星3つで地下の人を復活させたいんですけど」

上条「どうぞご自由に。」

花陽「ほら見なさい、これが信頼だよ。あの人たちは裏切るわけがない。」

真斗「まだわからないぞ。」

花陽「なんだって!」

参加者「500万だ! 1つ売ってくれ!」

冬馬「四ノ宮、4つまではいいんだ。3つあれば、花陽さんは救われる。」

ここで冬馬、那月ともに星を1つずつ売ってしまう。

冬馬「この人です、この人を・・・」

冬馬「う・・・!」

冬馬が那月に捕まった。

那月「ダメだ。」

那月「この星も、金も、手放さない!」

冬馬「何言ってんだよ。それじゃ花陽さんが救えないじゃないか。」

那月「構わない。」

花陽「四ノ宮君!」

花陽「何をバカなこと言ってるの!」

冬馬「そうだよ。そんなのあんまりだよ。」

那月「でもそうしなきゃ俺たちだって救われない。」

那月「冷静になって考えろよ。もしここで花陽さんを助けたら、俺たちに残るのは3人の金合わせて600万と、星4つを売って得る2000万の、合計2600万。」

那月「だけど大会から借りた軍資金が俺と天ヶ瀬が200万ずつ、花陽さんが1000万の合計1600万。さらに4割3分の金利がついくんだ。」

那月「1600万の4割は・・・、大体700万だから、2300万。」

那月「たったの300万円しか残らない。1人100万円。」

那月「俺には娑婆にまだ150万ほど借金があるから赤字なんだ。」

那月「天ヶ瀬さんも娑婆に他に借金あるんでしょ?」

冬馬「まあ、少し。」

那月「だったらわかってよ」

那月「あの人を切って星を売ればあと1500万は入る。合計4100万。」

那月「その上1000万の借金は返さなくていい。400万とその金利で約600万。」

那月「3500万から3600万円も浮く。1人で1800万円くらい持って列車を降りられるんだ。」

冬馬「でもこれから花陽さんに会わせる顔がないよ」

那月「ここで負けた者は噂では廃人になって、外に出ても人の顔なんか覚えてないみたいだよ。」

那月「もう二度と会うこともないだろう。さらば、小泉花陽。お前の分まで生きてやるよ。」

冬馬(俺1人で助けようにも俺の星は5つ。助けられない・・・)

花陽「冬馬君だけでも助けてよ。」

花陽「花陽さん、ごめん。」

最後の最後、命を託した仲間に裏切られた。

那月「いいな。」

那月「星だ!500万円出せる奴!」

花陽「やめてよ・・・」

こうして星3つを売り、1500万円獲得。

花陽「ぐすっ・・・そんな・・・。こんなのってないよ・・・。あんまりだよ・・・。」

花陽「あなたたち、これでも人間なの?」

花陽(遠かったはずだ。あのとき、冬馬君と四ノ宮君の姿が遠く感じた。)

花陽(あの時点でもう2人は私を裏切る準備をしてたんだ。四ノ宮君は間違いなく、おそらく冬馬君も少しは。)

真斗「ほらみろ。手ぶらで救われるわけねえだろ、花陽。」

真斗「友情や口約束でもらえるのは旅先からの土産や思い出くらいなものだ。」

そして金を持っていた真斗は音也に助けられた。

真斗「あばよ。僕がお前たちの分まで生きてやるよ!」

こうして私は、このじゃんけん大会に負け、地下の理に導かれた。

第1章終わり


次回 地下帝国編に続く

>>70
ちょっと違ったね

モロパクりじゃあダメだな、別作品キャラクターを使ってる意味がないし
それ以前に「創作」が無いものはSSとして失格だ

別SS

にこ・花陽「沈まぬ太陽~天国にいる兄と弟へ~」
にこ・花陽「沈まぬ太陽~天国にいる兄と弟へ~」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427652555/)

>>89
ここから創作の話も出てくる

まあなぞるだけでも配役で楽しめたりするはずなんだけど、これに関してはガバガバすぎる呼称やキャラ崩壊をなんとかしろって思うわ

単純に酷い文章だな
元ネタを知ってるからついていけるけど知らずに読んだら意味不明でしょ

第2章 過去回想編
第6話 突然の癌宣告

じゃんけん大会で敗れた花陽は、地下の世界、文字通り地獄にいた。

かつてラブライブに出場したスクールアイドルは、今でも地下アイドルとして活動してる人もいる。
しかし花陽は、地下は地下でも地下アイドルではない。
地下で重労働を課されていた。

この地下の世界にいるのは皆多額の負債を背負った劣悪債務者。
及び粕壁学会主催のあの新幹線車内でのじゃんけん大会に負けた者たち。

1日10時間の地下労働。作業の後はシャワー。
食事の時間。おかずは目刺しとたくあんだけ。貧しい食事。

暮らすのは5班の15人の部屋。
部屋にあるのは古雑誌と古新聞、将棋、トランプなどの遊具。
朝から晩まで仲間と一緒。

花陽はこの地上と隔離された地下の社会で、借金を返済するまで約15年働き続けなければならない。

花陽「これが地下の理。」

花陽「地上で借金をかかえて暮らすより、働いて集中的に返したほうが楽だとかあの人は言ってたけど、全然楽じゃないよ。」

地下の世界で過ごす1人の青年がいた。その名は鳩山晋司。

晋司「結局花陽もここに来ちゃったのか。」

晋司「全部俺のせいだ。本当に悪かった。」

花陽「そんなことないよ。晋司君は私のために借金をしたんだから。」

晋司「だが最後に実の妹に尻拭いをさせることになってしまったんだ。」

花陽「これはある意味私自身の尻拭いなんじゃないかな。」

晋司「もう前みたいにお兄ちゃんとは呼んでくれないんだな。」

花陽「そうだね。でもたまには呼んでもいいかな。」

花陽「お兄ちゃん。」

鳩山晋司、花陽のあに、彼もまたゲームに負け、この地下で強制労働をしていた。
家庭の都合で苗字が花陽とは違うのだ。しかし実の兄である。


花陽「あの日、私はじゃんけん大会に勝った。」

花陽「勝ってたのに・・・」

花陽「最後の最後で裏切られて・・・」

あずさ「あの日、私はあんたに負けて地下送りにされた。」

あずさ「しかしあんたも仲間の男に裏切られて地下送りなんて残念ね。」

あずさ「男なんて信用しちゃダメってことよ。」

花陽「そんなわけないよ。誰かを信用しなくちゃ・・・」

あずさ「でも裏切られたじゃない。」

地下の世界で過ごす1人の青年がいた。その名は鳩山晋司。

晋司「結局花陽もここに来ちゃったのか。」

晋司「全部俺のせいだ。本当に悪かった。」

花陽「そんなことないよ。晋司君は私のために借金をしたんだから。」

晋司「だが最後に実の妹に尻拭いをさせることになってしまったんだ。」

花陽「これはある意味私自身の尻拭いなんじゃないかな。」

晋司「もう前みたいにお兄ちゃんとは呼んでくれないんだな。」

花陽「そうだね。でもたまには呼んでもいいかな。」

花陽「お兄ちゃん。」

鳩山晋司、花陽の兄、彼もまたゲームに負け、この地下で強制労働をしていた。
家庭の都合で苗字が花陽とは違うのだ。しかし実の兄である。


花陽「あの日、私はじゃんけん大会に勝った。」

花陽「勝ってたのに・・・」

花陽「最後の最後で裏切られて・・・」

あずさ「あの日、私はあんたに負けて地下送りにされた。」

あずさ「しかしあんたも仲間の男に裏切られて地下送りなんて残念ね。」

あずさ「男なんて信用しちゃダメってことよ。」

花陽「そんなわけないよ。誰かを信用しなくちゃ・・・」

あずさ「でも裏切られたじゃない。」

花陽のいる5班にはかつて会ったことがある人がもう1人。

ツバサ「μ'sの小泉花陽ちゃんだよね?」

花陽「A-RISEの綺羅ツバサさん!」

ツバサ「もしかして花陽ちゃんもじゃんけん大会に負けてここで働くことになったの?」

花陽「はい。」

ツバサ「私もなの。あの三浦あずさって人に『12回連続あいこにすれば生き残れる』って言われてその通りにしたら騙されて、序盤に星を2つも取られたの。」

ツバサ「最後に一か八かで勝負したんだけど結局負け、開始から10分くらいで星を3つとも失って失格。」

ツバサ「で、この地下の理に導かれることになった。」

花陽「私も三浦あずさに全く同じ方法でやられました。」

花陽「あの人、ツバサさんにまであんな卑怯な手を使ったんですね。」

ツバサ「でも花陽ちゃんは一度はあずささんに勝ったみたいだけど?」

花陽「はい。でもカードが1枚余ってしまい、私1人が落ちて仲間に救ってもらう約束をしたのですが、裏切られて・・・」

花陽「結局仲間を信じちゃいけないってことを思い知らされました。」

ツバサ「私も。仲間を大切にしていた人ほど騙されやすいのかもね。」

花陽「それにしても、ラブライブ第1回と第2回の優勝メンバーの1人がこんなところで再会するなんて、誰が予想したでしょう?」

花陽「世の中はわからないですね。」

ツバサ「そういうものよ。東大やハーバード大出身の人がその後人生で失敗することもあるし、高卒やFランク大出身の人がその後一流企業に就職することもある。」

ツバサ「人生には大逆転が付き物。」

花陽「そういえば一緒に来た音無小鳥さんもかつてはアイドルで、アイドル事務所に勤めていたこともあるみたいです。」

ツバサ「聞いたことある。」

ツバサ「彼女も仲間を信じてしまった、それが敗因だったみたいね。」

・・・
別の日

小鳥「ゲホ、ゲホ」

花陽「どうしたの?」

彼女は花陽と同じじゃんけん大会に参加し、月宮林檎の必勝法に協力するも裏切られて地下に落ちた音無小鳥。

ツバサ「花陽さん、手伝って。」

小鳥を担架で運んだ

小鳥「大丈夫、まだ働けるから!」

花陽(こんな部屋があったんだ。初めて見た)

ツバサ「先生!急患です!」

花陽「!?」

その部屋は体を壊した病人が寝ている部屋。
まさに地獄の中の地獄。人生の行き止まり。

ツバサ「これが地獄絵図ってものなのね」


花陽「あの人たち、治るの?まともな治療を受けてるようには見えないけど」

晋司「薬は高いからな。あいつらには金がないし。」

晋司「だからあいつらは終わり。一度病気になったら二度と回復できないのさ。」

花陽「そんな・・・」

・・・
次の物語に行く前に、今回はどうしてこんなことになってしまったかを話そうと思う。

それは高3の夏のこと。

体調が悪くなって、病院に来たとき。
兄とともに病院に来ていた。

医師「検査の結果ですが・・・」

医師「おそらく食べ過ぎだと思われます。」

晋司「そうですか。ありがとうございました。」


晋司「食べ過ぎだってさ」

花陽「なんだ。お兄ちゃん騒ぎすぎだよ。」

晋司「すまんな」

花陽「でもよかった。」

花陽「多分私も大したことないと思う」


医師「娘さんについてですが」

医師「もう少し調べてみる必要があります。」

医師「後日また来院して下さいますか」

母「わかりました。」

嫌な予感がした。

にこ「おーい、かよちん」

花陽「にこちゃん。久しぶり。」

花陽「こんなところで会えるなんて奇遇だね。」

にこ「実は弟がこの近くの病院に入院してて、お見舞い。」

花陽「そうなんだ。」

にこ「隣にいるのはかよちんのお兄さん?」

花陽「そうだよ。」

晋司「初めまして。」

花陽「お兄ちゃんがお腹痛いっていうから病院に来たの。」

花陽「まるで死にそうな声出してたけど、ただの食べ過ぎだったんだよ。」

花陽「笑っちゃうよね。」

にこ「へー。」

晋司「花陽も体調悪かったから検査受けて、結果はまだわからないんだけど多分大したことないと思う。」

にこ「そうなんだ。」

花陽「今度ラブライブの予選もあるんだし、ヘタれてなんかいられないよ。」

にこ「そういえばもうすぐだったね。がんばって。」

晋司「まあラブライブもいいけど、俺はもっと楽しみにしてることがあるんだ。」

晋司「このアニメのエンディングテーマで俺たちはどんな歌を歌うのか。」

花陽「お兄ちゃんが歌うの?っていうかこのSSはアニメじゃないし。」

晋司「そうだな。花陽は踊り担当。」

晋司「ようかい体操第一の4番なんてどうだ?」

花陽「あんな下品で恥ずかしい歌と踊り嫌だよ!」

晋司「一応小学校の運動会や町内会で踊ることもあるそうだぞ。」

花陽「4番は恥ずかしすぎてカットしてるらしいよ。知恵袋によると女の子は嫌なんだって。」

晋司「ようかい体操は嫌かー。」

晋司「だったら金太の大冒険とか、セーラー服を脱がせないでとかは?」

花陽「もっと嫌だよ。ていうかそんな古い曲よく知ってるね。」

晋司「後者は昭和の有名なアイドルのデビュー曲なんだが。」

晋司「古いっていうなら21世紀に入ってからの歌でもいいぞ。」

晋司「ちんこ音頭とか。」

花陽「それもう放送できないから。しかも2000年代前半のネットを知る人じゃないと知らないかと。」

晋司「バスト占いのうたなんか」

花陽「下ネタばっかりじゃん。」

花陽「あとそのうたBカップの人が聞いたら激怒しそうだよね。」

晋司「激怒しそうといったら、日本全国酒飲み音頭。」

花陽「ああ、あれも11月生まれと12月生まれと沖縄の人が聞いたら激怒しそうだよね。」


晋司「エンディングテーマの話はこの辺にして、次回予告の話でもするか。」

晋司「やっぱ次回予告も面白くないとね。『次回のラブライブ、○○』みたいにサブタイトルを言うだけじゃダメだ。」

花陽「ラブライブ批判ですか。」

晋司「ガルパンもそうだったな。まあラブライブやガルパンはまだマシ。」

晋司「俺妹やSAOのようなサブタイトルの文字が出て読み上げるだけの次回予告など論外。」

花陽「まあ確かにそうだね。」

晋司「今回の次回予告はこの際、矢澤さんちのこころちゃんとここあちゃんに任せよう。」

花陽「へえ、こころちゃんとここあちゃんか。」

晋司「こんな感じだ。」

・・・
ここあ「ここあだぜ。」

こころ「こころだよ。」

こころあ「2人合わせてこころあシスターズ。」

こころ「私たち、普通の女の子に戻りたい。でもμ'sは永久に不滅です。」

ここあ「そもそもこころちゃんμ'sじゃないし。」

こころ「A-RISEはいやだ!A-RISEはいやだ!」

ここあ「いやA-RISE優秀だし。」

こころ「そうそう、ここあちゃん、お使いに行ってきてよ。ここから6つ目の駅まで。」

ここあ「この近くでいいでしょ。」

こころ「昨日までは戻りの電車もあったけど、今日からは行きっぱなしなんだ。」

ここあ「そんな電車いやだー!」

ここあ「こころちゃん、終わろう。」

こころ「ただいま入りました情報によりますと、次回のラブライブ方面は・・・。」

ここあ「違う、人生逆転ゲームは、第7話傷物語。」

こころ「フィンランド語でお送りします。」

ここあ「いや日本語で、せめて英語にして。」

こころ「粕壁学会で待ってます。必ず見るらん!」

こころ「じゃんけんぽん、うふふ。」

ここあ「楽しみに待っててね。」

・・・
花陽「いくつかのネタはわかったけど、『必ず見るらん』だけ元ネタわかんない。」

晋司「NHK Eテレで夕方やってる某忍者アニメの次回予告。」

花陽「あれ次回予告ないでしょ?」

晋司「昔はあった。1年目、総合テレビで30分枠だったころ。」

花陽「そんなのよく知ってるね。」

晋司「作者は小学校のとき、合宿のバスの中でビデオで見たんだって。」

花陽「そう。」

1週間後、検査の結果が出た。

医師「悪性の腫瘍が見つかりました。」

花陽「え?」

医師「癌だと思われます」

花陽「・・・」

医師「すぐに入院が必要です。」

私はそんなこと想像もしてなかった。
兄が大げさなアクションが結果ただの食べ過ぎと知って安心してたのに、
まさか危なかったのは自分だったなんて。


凛「入院?」

花陽「うん。だからラブライブには出られないかもしれない。」

真姫「かよちゃんがいないと、その穴を埋めるのは容易じゃないわね。」

花陽「うん。でも真姫ちゃん、凛ちゃん、それから雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんたちもいるし大丈夫だよ。」

凛「そうだね。かよちゃんは今は病気のことに専念してほしいにゃあ」

凛「入院?」

花陽「うん。だからラブライブには出られないかもしれない。」

真姫「かよちゃんがいないと、その穴を埋めるのは容易じゃないわね。」

花陽「うん。でも真姫ちゃん、凛ちゃん、それから雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんたちもいるし大丈夫だよ。」

凛「そうだね。かよちゃんは今は病気のことに専念してほしいにゃあ」


入院して2日目のこと。
私は病院の広場である少年にあった。

私がその人と出会ったのは2年前、例の先輩の家と高校の卒業式、2度だけのことだ。
だから彼は私と再会したとき、私が誰なのかすぐにはわからなかったようだ。

でも私はすぐに気づいた。なぜならアイドル研究部元部長の先輩の面影があったからだ。
もし私が彼にすぐ気づいていなければ、この物語はあんな結末にはならなかったのかもしれない。

花陽「誰かと遊ばないの?みんなそうしてるみたいだけど。」

虎太郎「人と仲良くするのが苦手なんだ。」

虎太郎「1人で遊ぶのが一番。」

花陽「だったら病室にいるほうが静かなんじゃない?」

虎太郎「静かだと逆に落ち着かないんだよ。」

虎太郎「っていうかお姉さん誰?」

花陽「私は小泉花陽。昨日からここに入院してるの。」

花陽「覚えてないかな?2年くらい前に会ってるんだけど。」

虎太郎「覚えてないな。」

花陽「まあ仕方ないか。2回しか会ってないんだから。」

花陽「確か・・・虎太郎、君は矢澤虎太郎君だよね?」

虎太郎「・・・え?」

虎太郎「違うよ。名前はあってるけど苗字が違う。」

虎太郎「僕の名前は藤浪虎太郎です。」

花陽「え、そうなの?」

虎太郎「矢澤というのはお母さんと一番上のお姉ちゃんの苗字だ。なんでそっちの名前を知ってるのかわからないけど。」

虎太郎「もしかしてお姉ちゃんの知り合い?」

花陽「そうなの。μ'sって覚えてるかな?」

虎太郎「ああ。そんなのもあったな。」

にこ「あれ?かよちん。」

花陽「にこちゃん。」

にこ「なんでかよちんがここにいるの?」

にこ「ってまさかここに入院したの?」

花陽「うん、実はそうなんだ。」

にこ「この病院でかなりの難病の患者が入院してるから、かよちんも難病ってことだよね。」

花陽「そういうことになるね。」

花陽「まあ隠しても意味ないし、正直に話す。」

花陽「私、ガンなの。」

にこ「そうなんだ・・・」

にこ「これって治る確率ってどれくらい?」

花陽「まだわかんない。」

花陽「でもなんとかなる気がするんだよね。」

花陽「そうでも思わないと生き延びれないよ。」

にこ「かよちんがいつも通りでよかった。」

花陽「にこちゃんは弟さんのお見舞いだよね。」

花陽「実は昨日弟さんに会ったんだよ。」

にこ「へえ、会ったんだ。」

にこ「ずっと1人でいて大丈夫なのかな、と思った。」

にこ「まあ1人がいいんじゃないかな、あいつは。」

花陽「あとその子の名前って、藤浪虎太郎っていうんだってね。」

にこ「うん」

花陽「にこちゃんの苗字は矢澤なのに、なんでなのかなって。」

にこ「それは家庭の事情だよ。こころとここあも苗字違うしね.」

花陽「そうか。それ以上は聞かない。」

花陽(お兄ちゃんも家庭の事情で私と苗字違うし)

第6話 終わり

キャラ使うなら呼び方くらい合わせてくれ
違和感しかない

第7話 10人に1人

先生によると、癌はかなり進行してるらしい。
若いから進行は早いのだと。
完全に手遅れになるところまではなんとか免れた。

晋司「手術の成功率は40%。」

晋司「だが、最終的にこの状態から助かる10%くらい。」

晋司「そう言われた。」

花陽「だったら大丈夫だよ。10人に1人ってことでしょ?」

花陽「100人に1人とかじゃなくてよかった」

晋司「手術を受けるかどうかは花陽に決めさせようと思う」

花陽「もちろん受けるよ。助かる可能性があるんだから。」

その日は凛ちゃんがお見舞いに来た

花陽「ラブライブの予選には出られそうもないみたい。」

花陽「でも本戦には間に合うかも。そのことをみんなに伝えてほしいんだけど。」

花陽「うん、じゃあかよちんのために絶対予選は通過しないとね。」

私は何度か虎太郎君に会った

花陽「いつも一人で寂しくない?」

「別に。気の合う人いないし。」

花陽「私は一人だと寂しいよ。」

花陽「ねえトランプがあるんだけど、これで一緒に遊ばない?」

「なんで僕と?」

花陽「にこちゃんから頼まれたんだよね。」

・・・
「あいつ友達いないし、誰とも仲良くしようとしないし、それがそれで不安なんだよね。」

「だからかよちんに虎太郎の面倒みてほしいなあって」

・・・
花陽「それとなにか気が合いそうなんだよね。」

花陽(ババ抜きは心理戦。相手の表情でどれがババか想像する。)

花陽(これかな?)

花陽(いやこれだね)

花陽「やった! 上がり!」

虎太郎「花陽さん強いな」

花陽「まあ心理戦には慣れてるからね。」


とはいえ虎太郎は運否天賦で適当にカードを引いてる上、表情を表に出さないためにそれが花陽にとっては仇に。

花陽(どうもこれがババみたいだね。じゃあこれで・・・)

花陽(ババだった。でもそんな表情なかったし。)

花陽(虎太郎君って表情がなくてわかりにくいよ)

虎太郎「やった、初めて勝った!」

その日は5回勝負で花陽の4勝1敗という結果に


花陽「ババ抜きって2人だとあまりおもしろくないね。」

花陽「少なくとも3人以上いればお互い誰がババを持ってるかわからないから盛り上がるけど」

虎太郎「そうですね。」

虎太郎「僕はお姉ちゃんたちと4人でやったことがあります。」

私は何度か虎太郎君に会った

花陽「いつも一人で寂しくない?」

虎太郎「別に。気の合う人いないし。」

花陽「私は一人だと寂しいよ。」

花陽「ねえトランプがあるんだけど、これで一緒に遊ばない?」

虎太郎「なんで僕と?」

花陽「にこちゃんから頼まれたんだよね。」

・・・
にこ「あいつ友達いないし、誰とも仲良くしようとしないし、それがそれで不安なんだよね。」

にこ「だからかよちんに虎太郎の面倒みてほしいなあって」

・・・
花陽「それとなにか気が合いそうなんだよね。」

別の日には七並べ

花陽(七並べの戦略は4・5・6など連続してるカードがあったら5と6をまず出す。)

花陽(次に7から遠い1や13を早めに出す)

花陽(7に近いカードは最後までとっておく)

この戦略で花陽は100%勝てた。
虎太郎は無策の運否天賦だったから。

花陽「虎太郎君、私と遊んでて楽しいかな?」

虎太郎「・・・うん、まあ。」

花陽「他になにかやりたいゲームある?」

虎太郎「じゃあ花陽さん、王様ゲームしよう」

花陽「ねえ、王様ゲームって何か知ってるの?トランプのキングは何も関係ないんだよ。」

虎太郎「知ってるよ。お姉ちゃんたちとやったことあるから。」

虎太郎「総理大臣みたいなもんでしょ。王様の命令は絶対なんだよね。」

虎太郎(総理大臣って、政治的すぎる・・・)

花陽「私もやったことないからよくわからないけど、王様ゲームって2人でやるような遊びじゃないよ。」

虎太郎「なんで?僕は別に平気だよ。命令するのも、されるのも。」

花陽「2人じゃ勝負つかないと思う。王様ゲームはやめておこう。」

虎太郎「そう。」

虎太郎「じゃあ人生ゲームしよう。」

花陽「人生ゲームって何か知ってる?」

虎太郎「人生の言うことは絶対。」

花陽(深い・・・)

花陽「まあ、それは2人でもできないことはないけど、道具がいるんだよね。」

花陽「まあここ病院だし、できるゲームは限られてくるな。」

花陽「退院したら虎太郎君の家で遊びたいな。」

花陽「まあにこちゃんによんでもらわなきゃいけないけど」

・・・


にこ「虎太郎、行ってくるね。」

こころ「私たちも行こう。ここあ。」

ここあ「うん」

僕は今年、小学校に入学しました。
でも生まれつきの病気で、毎日学校に通えません。
だから僕には友達があまりいません。

学校をお休みした日はにこ姉ちゃんと、こころ姉ちゃんと、ここあ姉ちゃんのお見送りをしたあと、1人で留守番しています。

僕もいつか毎日学校に通えるようになりたいです。

・・・
虎太郎「あと何回こうやって過ごせるかな。」

虎太郎「あと何日こうやって過ごせるかな。」

虎太郎「これ以上花陽さんと遊ぶの不安になってきた。」

虎太郎「友達を作ると、人間強度が下がる。花陽さんと友達になっちゃったりしたら、花陽さんが傷ついちゃう。」

花陽「なんで?」

虎太郎「友達がいたら、友達のことを気にしなくちゃいけないし、友達が傷ついたら自分も傷ついちゃうし、友達が悲しいと自分も悲しい。」

虎太郎「しかも僕はこのように病弱な状態。あと何年生きられるかもわからない。」

虎太郎「自分が死んで友達を傷つけたくないって思って、ずっと誰とも仲良くしなかったんだ。」

花陽「そうなんだ。」

花陽「でもそれはそれで寂しいよ。誰にも愛されずに死んでいくなんてね。」

虎太郎「そうなのかな。」

花陽「なんていうかもう仕方ないじゃない。友達できちゃったんだし。」

花陽「え?」

花陽「私からみたら虎太郎君はもう友達だよ」

虎太郎「いやです。僕はもう長くないのに、いまさら友達だなんて・・・」

花陽「へえ、死ぬと思ってるんだ。」

虎太郎「はい。」

花陽「あきらめたらそこで人生終了だよ。」

虎太郎「・・・!?」

花陽「起きる奇跡も起きない。」

虎太郎「奇跡も何も無理だ。医師に完治する確率は30%だとか言われたんだ。あとは余命1年だと。」

花陽「だったら大丈夫じゃん。3~4人に1人も可能性あるんだから。」

花陽「私なんて10人に1人の確率なんだよ。でも生き残れると信じてる。」

虎太郎「なんていうかその明るいっていうか、前向きな性格が怖いです。」

虎太郎「どうしたらそんな低い確率で助かると思えるんですかね。」

花陽「虎太郎君は後ろ向きすぎて悲しくなってくるよ。」

花陽「じゃあこうしよう。」

花陽「もし手術に成功して私が生きることができたら、虎太郎君は私と友達になる。」

花陽「そして虎太郎君もちゃんと病気治すんだよ。」

・・・
晋司「手術は明日か」

花陽「私、本当は不安なんだ。死んじゃうんじゃないかって。」

晋司「俺も不安だ。手術の成功率は40%。だが成功したとしても助かるのは10%。」

花陽「仕方ないよ。なんとしてもそれにかけるしかない。」

花陽「私、お兄ちゃんのこと大好きだよ。」

花陽「これからも元気でね。」

晋司「お前何言ってんだよ。生きて、スクールアイドルに戻ってくるんだろ。」

花陽「もちろんそのつもりだよ。」

花陽「でもどうしてもこれで最後かもと思っちゃうんだよ」

晋司「俺もだ・・・」

晋司「神頼みしかないのか・・・」

・・・
その頃真姫と凛ら、アイドルメンバーは

凛「かよちん、どうなったんだろう?」

真姫「きっと大丈夫だよね・・・」

凛「真姫ちゃん震えてるにゃ。雪穂ちゃんも・・・」

真姫「不安なんだよ。」

凛「凛も不安。でもきっとかよちんは大丈夫。信じてる。」

凛「今回はかよちんはいないけど、本戦には間に合うみたいだから。」

凛「今日の最終予選に絶対勝って、かよちんをラブライブに連れて行く!」

・・・
花陽「私は」

花陽「生きれるのかな。」


花陽の家族はその日病院で祈りながら待っていた。

そして

医師「手術は成功です。」

お兄ちゃんは安心しきった表情に

母「ありがとうございます。」

とはいえ、まだ余談は許さない。
抗がん剤の治療が続く。

真姫「お見舞いです。」

凛「今日はかよちんに朗報。」

花陽「ということはもしかして」

真姫「ラブライブの出場が決まりました」

花陽「じゃあこれで私、出れるんだね。」

凛「今回はかよちんもためにも、って思いがあったからね。」


花陽「虎太郎君、私は手術に成功して生き残れたよ。」

花陽「これで虎太郎君もちゃんと病気を治せるよね」

虎太郎「花陽さんにはできても、僕には無理です。」

花陽「って、そこまで弱気なの?」

虎太郎「でも花陽さんのおかげでなんか生きる希望が出てきたような気がします。」

虎太郎「いつか退院して毎日学校に通えるようになったらいいな」

花陽「そう。それはよかった。」

花陽「私は虎太郎君にもう1つ、お手本を見せたいな、って思うの。」

花陽「今度のラブライブで優勝するから」

花陽「そしたら虎太郎君も病気を治せる」

虎太郎「じゃあ楽しみにしてます。」

私は一時退院し、その1週間後

凛「かよちんもそろって、これでみんな一緒だね。」

凛「今回はかよちんに捧げるライブだから」

花陽「実は私はもう1人、今回のラブライブ優勝を約束した仲間がいるの。」

花陽「病院で知り合った小学生の男の子がいるの。」

花陽「その子を勇気づけたいと思って。」

凛「そうなんだ。じゃあ絶対勝たなきゃだにゃ」

そうして私たちは、μ'sの先輩以来の2度目のラブライブ優勝を果たした。


虎太郎「えーと・・・。優勝おめでとうございます。」

虎太郎「昨日テレビで見ました。すごくよかったです。」

花陽「ありがとう。」

虎太郎「まあ本音を言うと、録画放送で、花陽さんがネタバレしちゃったんでドキドキはしなかったですけど。」

花陽「そうか・・・」

虎太郎「なんていうか、花陽さんのおかげで自分も生きていこうって思えるようになりました。」

花陽「そう。それはよかった。」

花陽「これからもお見舞いにきていいかな?」

虎太郎「はい。」

こうして私は虎太郎君の病室に何度かお見舞いに来た。
そして・・・

虎太郎「花陽さん、僕退院できることになりました。」

花陽「本当?」

虎太郎「はい。これからは毎日学校にも通えるかもしれないって。」

虎太郎「本当すごく嬉しいです。でもこれも花陽さんのおかげです。」

虎太郎「本当にありがとうございました。」

花陽「私は何もしてないよ。虎太郎君が頑張ったんだよ。」

虎太郎「でも花陽さんがお手本を見せてくれなかったら、きっと自分は何もかもに負けていた。」

虎太郎「なんていうか、花陽さんは僕の命の恩人ですね。」

花陽「そんなの、照れるよ。」

しかしガンを克服した代償はあまりに大きかった。
このときの治療費で莫大な借金を背負うことになってしまったのだ。

そしてそれによって、このゲームとギャンブルの世界に足を踏み入れることになったのだ。

じゃんけん大会の前、久々に虎太郎君に会った。元気そうだった。
じゃんけん大会でもたまたま会ってしまう。
虎太郎君もこのときの治療費で借金をすることになり、あのじゃんけん大会に出場することになったのだろう。
虎太郎君は私の戦略のおかげで列車から生還できたけど、今どうしてるのだろう。

いつかまた、虎太郎君のところに遊びに行きたい。

・・・
過去の回想はここまで。いよいよ地下の理からの脱出を賭けた、次の戦いが始まる。

第2章 終わり

そろそろ第3章

現在別のプロジェクトをやってるんで

第3章 地下帝国編
第8話 紙フトタッチダウン

1ヶ月が過ぎ、25日。

梓「今日はお待ちかねの給料日です。名前を呼ばれたら取りに来てください。」

5班の班長、中野梓が給料を配る。

梓「綺羅さん」

梓「鈴木さん」

梓「鳩山さん」

梓「ウェストさん」

梓「小泉さん」

花陽「はい。」

梓「小泉花陽さん、レオナ・ウェストさんは初給料です。皆さんにも覚えがあるとおりこれは大変嬉しいことです。」

梓「はい拍手!」

花陽「それにしても見たことがないお札だね」

梓「それはペリカ。この地下帝国だけの通貨単位で、10ペリカで1円。」

給料は1ヶ月9万ペリカ。

花陽「ということは、9000円・・・」

花陽「あれだけ過酷な仕事でたったの9000円なんて・・・」

実際は労働で支払われる金額は日本円で1日3600円。そのうち2000円が借金の返済に当てられ、さらに1300円が食費や施設利用費などの名目で消える。
手にするのは3600円の12分の1、1日たった300円。

梓「少ないなんて思っちゃいけないよ。地下帝国で働いてる間は温情として借金の金利はゼロですから、少しずつ返していくのです。」

梓「逃げようとは思うなよ。」

梓「監視カメラで24時間監視している。」

花陽「まあ監視カメラを破壊してもここから脱出するのは不可能なんだろうな。」

花陽「迷路みたいで出口がどこにあるのかわからない。」

花陽「でも勤労奨励オプションってのがある。」

花陽「そこに1日外出券ってのがある。」

花陽「でも50万ペリカか。」

梓「今日のお楽しみ」

梓「お菓子3000ペリカ、焼き鳥8000ペリカ、ビール5000ペリカだよ。」

花陽「しかしこの人たち目の前の欲に流されて夢も追えないの?」

花陽「ビール1本5000ペリカって500円でしょ。地上の倍以上。」

花陽「こんな感じで使ったらあっという間にこのお金は消える」

花陽「私はこのペリカをためてやる」

花陽「早く借金を返してここから出るんだ」


梓「ビール1本どう?」

梓「借金を早く返済するために貯めたいんでしょ?あたしも最初はそうだったな。」

梓「でも無理はよくないよ。」

花陽「・・・」

結局私も欲に流されていろいろ購入していた。

梓「まあここにはこの食以外大した快楽ないからね。その誘惑は強烈。貯めるなんてできないだろうね。」

地下生活が始まり1年ほど経過

花陽「結局私は節約に向いてないのかな。」

花陽「こんなんじゃいつまでたっても貯められない。借金も返せないし、外出券にも届かない。」

そんなとき、ある大会の知らせが入ってくる。

上条「地下帝国主催、地下オリンピックを開催する。」

上条「簡単に言うと球技大会だ。」

花陽「球技大会?そんなのあるの?学校みたい。」

上条「上位3チームには、賞金とともに外に出る権利を与える。」

花陽「本当?」

上条「集合!」

上条「僕はこの大会を主催する、上条恭介だ。」

上条「本日開催する競技は、紙フトタッチダウンだ。」

晋司「何!?」

花陽「紙フトタッチダウン?」

上条「紙飛行機とアメリカンフットボール、そして少々野球を合体したスポーツ、それが紙フトタッチダウンです。」

上条「1チームにつきクォーターバック(QB)1人とレシーバー(WR)2人の3人。」

上条「クォーターバックがスタートラインから紙飛行機を投げ、味方のレシーバーがそれをネットでキャッチする。見事キャッチできればその地点まで進むことができる。」

上条「それを繰り返し、15メートル先のゴールゾーンを目指す。相手チームはディフェンスとしてうちわを使って防ぐ。」

上条「ただし紙飛行機がうちわ、またはディフェンスの体にあたったらファウル、攻撃側はその時点まで前進できる。」

上条「紙飛行機をゴールゾーンでキャッチするとタッチダウンとなり20点、フィールドのポストの上に紙飛行機を通すことができればフィールドゴールとなり10点。」

上条「さらにフィールドゴールの支柱の上の小さなネット、ここに紙飛行機を通せたらスーパーゴールとなり、60点だ。」

上条「紙飛行機を落とすかフィールドの外に出すとミス。ミス3回で攻守交替だ。」

上条「攻撃は先攻と後攻に分かれ、前後半の2回ずつ行う。」

上条「同点の場合はフリースロー対決で勝敗を決める。」

上条「チーム分け、及び組み合わせは抽選で決定する。」

上条「優勝チームは3人それぞれに2000万円、準優勝チームに1000万円、3位チームに800万円獲得だ。」

花陽「紙フトタッチダウンってNHKのあの番組の名物コーナーだね。」

晋司「しかも5年も続いたっていう、番組の中ではかなりの長寿コーナー。」

花陽「私のチームは、しなやかパンサーズか。」

小鳥「あなたはμ'sにいた小泉花陽ちゃんだよね?」

花陽「はい。」

小鳥「私は音無小鳥。765プロの事務員をやってたんだけど。」

花陽「ああ、知ってます。私、アイドルには詳しいですから。」

花陽「そして1年前、私と同じ列車のじゃんけん大会に出てた人ですね。でも確か病室に・・・」

花陽「大丈夫なんですか?」

小鳥「大丈夫よ。無理でも出る。だってこれに勝てば外に出られるんだから。」

小鳥「今日は同じチームみたいだから、一緒に頑張りましょう。」

花陽「そうですね。」

(私は四ノ宮君に裏切られ、音無さんもあの月宮林檎という人に裏切られた、じゃんけん大会で、同じ裏切られた人。)

しなやかパンサーズ、メンバーは音無小鳥、小泉花陽、レオナ・ウェストの3人。

組み合わせ抽選の結果、兄の鳩山晋司がいるサイキョウ・ゴリオッシュとは1回戦で対戦

花陽「なんてこと。決勝まで当たらなければ晋司君と一緒に外に出られたのに・・・」

晋司「仕方ない。別々のチームになった以上敵なんだ。」

花陽「わかってるよ。」


しなやかパンサーズvsサイキョウ・ゴリオッシュ

先攻サイキョウ・ドリームは先制のタッチダウン、そしてフィールドゴールで30点を取る。
後攻しなやかパンサーズ。QBののタッチダウン2回で40点を取り逆転。
40-30で前半終了。

後半、サイキョウ・ドリームはタッチダウンで逆転、さらにフィールドゴール2回で40点、70-30とリードする。
しなやかパンサーズ最後の攻撃。フィールドゴールで70-40とするも連続ミスで2アウトと追い込まれる。
しかしそこから2度の前進の末のタッチダウンで60点目、ついに10点差。
そして2度の前進後タッチダウンで80-70、逆転サヨナラ勝ち。
両チーム合わせてタッチサウン7回の激戦を制した。

そのまま花陽のしなやかパンサーズは決勝に進出した。

花陽「これで外に出られることは確定したね。」

小鳥「できれば優勝して終わりましょう。」

決勝の相手はサガミ・ジョウネッツ。そのメンバーの1人は。

花陽「A-RISEのツバサさん。」

ツバサ「μ'sの花陽ちゃんね。」

ツバサ「かつてラブライブの頂点を争った私たちが、今はこんな地下の底で争うことになろうとはね。」

花陽「でも私たちは外に出られるんです。絶対にやり直しましょう。」

ツバサ「そうね。」

先攻のしなやかパンサーズは2アウトから前進するも、痛恨のミスで無得点。
後攻のサガミ・ジョウネッツ。先制タッチダウンと追加点のタッチダウンで40点をリードする。

後半、後がないしなやかパンサーズは大きな賭けに出る。

花陽「身長の低いツバサさんの守備に隙があるとしたら、あそこしかない。」

花陽「アウトは3つある。やってみよう。」

小鳥「大丈夫かな・・・」

花陽「私は音無さんを信じてますから。」

レオナ「やってみよう。」

小鳥「あと私のことは小鳥ちゃんと呼んで。」

花陽「・・・じゃあ」

花陽「頑張ってね、小鳥ちゃん。」

花陽(私にとってことりちゃんは別にいるんだけどな。)

QB音無小鳥の紙飛行機は綺羅ツバサの頭上を越え、フィールドゴールの上空へ。

この大会初のスーパーゴールで60点を獲得。60-40と一気に逆転する。
20点リードで最後の守りへ。

しかしサガミ・ジョウネッツも粘る。タッチダウンを決め60-60の同点。
その後ゴール直前まで前進するもサヨナラはならず。同点で試合はフィールドゴール対決へ。

1人目はともに成功するも、パンサーズの2人目レオナが痛恨の失敗。
失敗すれば負けとなるパンサーズの3人目は花陽。見事に決める。
しかしサガミ・ジョウネッツの3人目ツバサも成功し、フィールドゴール対決は3-2でサガミ・ジョウネッツの勝利。

サガミ・ジョウネッツが優勝した。

花陽「小鳥ちゃん、あと少しで負けちゃったけど、これで1000万円もらえるんだ。」

花陽「外に出たら、やり直せる!」


花陽「やっぱり強いなツバサさんは。さすが運動神経抜群だね。」

ツバサ「花陽ちゃんもなかなかじゃない。」

ツバサ「楽しかったわ。高校のころを思い出せて。」

花陽「私もツバサさんも、外に出たら絶対にやり直そうね。」

ツバサは2000万円を獲得、花陽も1000万円を獲得。

花陽「晋司君も、今回私が出れたら、きっと救うから。」

晋司「待ってる」

上条「見事賞金と外に出る権利を獲得した者、おめでとう。」

上条「諸君らは勇敢に戦い、貴重な権利を勝ち取った。」

上条「諸君らは勝者、誇り高き勝者だ。実に素晴らしい。」

花陽「話はいいから早く外に出してよ。」

レオナ「そうだ。金くれ。」

上条「賞金の受け渡しは別の会場で行う。」

上条「なお実はチケットは合計10枚、800万円のチケットが1枚残っている。4位以下のチームの者にもまだチャンスはあるかもしれない。ついてこい。」


花陽「まだ何かあるの?」

上条「サンライズビルの22階に会場はある。しかしそのビルはエレベーターが故障中、階段もすべて閉ざされている。」

上条「その部屋に入る道はないんだ。」

花陽「じゃあどうやって?」

上条「だから我々が道を通した。これだ!」

花陽「え?」

上条「見ての通りだ!」

ざわ ざわ

それは地上75mにある長く、細い一本橋だった。

花陽「なにこれ?」

ツバサ「まさかこれを渡るんじゃ?」

上条「ちょっと長い平均台と思えばいい。みんなも小学校の頃渡ったことあるだろう?」

上条「向こうの会場まで、制限時間は2時間だ。」

レオナ「落ちたら死ぬだろ」

花陽「どういうこと? 競技はもう終わったんじゃないの?」

上条「紙フトタッチダウンなんてただのお遊び。あんなのに勝ったくらいで金を渡して外に出せるか。」

ツバサ「そんなのひどい。頑張って優勝したのに。」

上条「安くないんだ。2000万、1000万、800万という金は。」

上条「わかってないだろ。金は命より重いんだ!」

花陽「・・・」

上条「人は金を得るために人生の多くを使っている。命を削っているんだ。」

上条「サラリーマンだろうと公務員だろうとスポーツ選手だろうと、みんな命を賭けて金を得てるんだ。」

上条「小学、中学と塾通いをし、有名中学、有名進学校、一流大学と受験戦争に勝って、やっと一流企業に入ってもさらに出世競争。」

上条「上司にへつらい、取引先に頭を下げ、毎日満員電車で会社に通い、そんな生活を10年以上続けて、30代半ば、40近くでようやく蓄えられるのが1000万、2000万という金なんだ。」

上条「2000万、1000万、800万は大金。」

上条「それに比べてお前らは必死に勉強したわけでもなく、懸命に働いたわけでもない。」

上条「何も耐えず、何も乗り越えず、やったことは紙フトというただの余興。」

上条「あんなもんで1000万という金が手に入るか!」

上条「それでも手に入れたいと言うなら、命をはる以外にない。」

上条「さあ渡れ!渡るんだ!」

上条「この機会を逃したら2000万、1000万、800万なんて金はお前らには生涯手にできない。」

上条「渡れば今度こそなんの条件もなく渡してやる。」

上条「それと・・・」

上条「電流だ。鉄骨に手をついて渡るなどという無様な姿を、お客様に見せないためだ。」

花陽「お客様って・・・、これ見てるの?」

ふと見下ろすと、別のところで粕壁学会の会員が観覧していた。

上条「感電はしないだろうが、落下は必至。手を付いたら死ぬのだ」

上条「行け!未来をつかむんだ!」

上条「今回は2時間以内に渡れば順位は関係ない。全員に賞金をやる。」

花陽「私、行きます!」

ツバサ「花陽ちゃん・・・」

小鳥「これ失敗したら、間違いなく死ぬんですよ?」

花陽「今回はただ渡ればいいんだよ。誰かに勝たなくていい。」

花陽「さっきの紙フトに限らず、受験も、スポーツも、かつてA-RISEをはじめとしたスクールアイドルと戦ったラブライブだって、誰かと競争して、誰かを押しのけなければならない。」

花陽「でも今回は競争じゃない。渡りきればみんな賞金をもらえるんだ。」

花陽「みんなで渡りきって、こいつらを見返してやろうよ。」

上条「ほほう、面白い見方もするな。」

上条「どうだ、やるのか?やらないのか?」

レオナ「やります。」

男A「俺もやる!」

上条「お前らは不参加か?」

上条「やらない者が持っていても仕方ない。この金券は4位以下に譲ろう。」」

女A「もう少し待ってください!」

上条「クズが!もう少し待ってくれ?お前らは生まれてから何度そのセリフを吐いた?」

上条「世間はお前らの決心をいつまでも待てないんだ。」

上条「一生迷ってろ!そしてチャンスを失いつづけろ!」

上条は3人からチケットを取り上げる

上条「2000万が1枚と1000万が2枚、合計3枚余った。参加したい者いるか?」

男B「俺、やります!」

第8話 終わり

花陽「私、行きます!」

ツバサ「花陽ちゃん・・・」

小鳥「これ失敗したら、間違いなく死ぬんですよ?」

花陽「今回はただ渡ればいいんだよ。誰かに勝たなくていい。」

花陽「さっきの紙フトに限らず、受験も、スポーツも、かつてA-RISEをはじめとしたスクールアイドルと戦ったラブライブだって、誰かと競争して、誰かを押しのけなければならない。」

花陽「でも今回は競争じゃない。渡りきればみんな賞金をもらえるんだ。」

花陽「みんなで渡りきって、こいつらを見返してやろうよ。」

上条「ほほう、面白い見方もするな。」

上条「どうだ、やるのか?やらないのか?」

レオナ「やります。」

男A「俺もやる!」

上条「お前らは不参加か?」

上条「やらない者が持っていても仕方ない。この金券は4位以下に譲ろう。」」

女A「もう少し待ってください!」

上条「クズが!もう少し待ってくれ?お前らは生まれてから何度そのセリフを吐いた?」

上条「世間はお前らの決心をいつまでも待てないんだ。」

上条「一生迷ってろ!そしてチャンスを失いつづけろ!」

上条は3人からチケットを取り上げる

上条「2000万が1枚と800万が2枚、合計3枚余った。参加したい者いるか?」

男B「俺、やります!」

第8話 終わり

第9話 鉄骨渡り

結局2人がギブアップし、鉄骨渡りの参加人数は7人になった。

花陽「信じよう。」

花陽「あの上条恭介って人じゃないけど、みんな一度は渡った橋。」

花陽「必ず渡れる。」

花陽「私たちはみんなで人生を変えるチームなんだよ。」

花陽「みんなの靴の真ん中の線にボールペンで印をつけよう。」

花陽「この線と、鉄骨の中心線を合わせて歩くんだ。」

花陽「まあ本当の中心とはずれてるかもしれない。その辺は微調整して。」

ツバサ「わかった。」

花陽「一歩つづ渡れば、気づいたら向こう側についてるはず。」

花陽「体の中心をずらさなければ、100%落ちない」

花陽「絶対渡れる。渡れないはずがない。」

花陽「渡るんだよ!」

全員「おー!」

花陽「本当は9人いたはずなのに、2人減っちゃうなんて、まるであのときみたい。μ'sのとき。」

花陽「もっともそのときのライバルが1人いるのが複雑だけど。」

第1回のラブライブを辞退した上にことりちゃんが留学を発表し、穂乃果ちゃんがやめそうになったできごとを思い出した。
あわや9人のうち2人が脱落しそうになったときだった。
今度は本当に9人が7人に減ったのだ。とはいえあんな死ぬかもしれない恐怖、無理もないだろう。
本来なら全員ギブアップしてもおかしくない。

ツバサ「でも今回は他の人を蹴落とさなくていい。みんなで勝者になる。」

花陽「ツバサちゃん、スクールアイドルのころのラブライブでも、さっきの紙フトでも、ずっと敵同士だったけど、今回は味方だよ。」

花陽「絶対この橋を渡って、人生をやり直そうね。」


黒服「あいつら強気だな。」

上条「単なる強がりだ。あんなの渡って5mで吹っ飛ぶ。」

上条「本当は怖くて仕方ないのを隠しているんだな。」

勝てば大金、負ければ死、生死を賭けた戦いが今始まる。

橋は2本、4人と3人に分かれて渡る。

最初の挑戦者2人、綺羅ツバサとレオナ・ウェストが渡り始める。

花陽「さあ行って!」

花陽「行ってむこうのゴールで待っててね!」

上条(多分強気なんていっときの気の迷いなんだろうな。実際は渡り始めたら・・・)

2人目は花陽。レオナの後ろ、ツバサとは逆の橋を行く。

3人目、花陽の後ろを音無小鳥が渡る。

そして最後の4人目が出動して、全員が渡り始めた。

スタートまでの騒ぎとはうってかわり、橋に踏み出してからは無言、静寂に包まれた。


花陽(こんなにも違うんだ。ラブライブや、さっきの紙フトとは。)

花陽(そうか、あんなみんなでワイワイ楽しくやってるのはただの遊びだった。)

花陽(これが命懸けの戦い。失敗したら死ぬって感覚。)

花陽(やだ・・・落ちちゃう・・・)

花陽(落ちたくない・・・死にたくない・・・)

花陽(お金はいらない!何もいらないから!地下に戻るから!)

花陽(一生地下生活でもいいから・・・、生きたい・・・、私は生きたい!)

ツバサ「花陽ちゃん・・・。やる前の、やり始めてからじゃ全然違ったよ。」

ツバサ「なんであんなに強気だったんだろう・・・」

花陽「それを言っちゃいけないよ。黙って渡ることに集中するんだよ!」

ツバサ「でも・・・」

花陽「やめてよ。ツバサちゃんはいつも強気だったでしょ。」

花陽「私の憧れだったA-RISEのツバサちゃんがそんな弱気じゃ、私まで弱気になっちゃうよ・・・」

そのとき・・・

ツバサ「風・・・」

小鳥「風だー!」

花陽「なんてこと、今風に飛ばされたりしたら・・・」

花陽「いや、吹いてないよ。」

ツバサ「本当だ。」

ツバサ「風なんか吹いてない!気のせいだよ。」

小鳥「いや、やっぱり吹いてる・・・。飛ばされる・・・」

花陽「手を付いたらダメだよ!電流が流れてるんだよ!」

1人がバランスを崩して落ちてしまった

「わー!」

花陽「みんな落ち着いて!落ち着くんだよ!」

レオナ(知りませんでした。全部私が悪かった!)

男B(きっと心を入れ替えますから、俺を救って下さい!)

ツバサ「上条さん、電流を切って。」

ツバサ「お金はいらない、外に出れなくていい。中止だ!中止にして」

花陽「ツバサちゃん、なんてことを!」

ツバサ「みんな、それでいいよね?」

男B「はい。」

小鳥「お願いします!上条さん、中止にして下さい!」

花陽「ツバサちゃんが言うなら仕方ない。」

レオナ「切ってください。金はいらないから!」

男B「参りました!」

小鳥「ギブアップです。」

1人が落ちると連鎖として次々と落ちる。落ちそうな人を支えようとして一緒に落ちた人もいた。
気づけばレオナの他、7人中4人が落ちた。残るは小泉花陽、綺羅ツバサ、音無小鳥の3人だけ。

ツバサ「無理だ。こんな橋で支え合うことなんかできない。」

ツバサ「やっぱり1人なんだ。助かりたかったら、1人きりで渡らなきゃいけないんだ。」

ツバサ「そうだよね?花陽ちゃん、小鳥ちゃん。」

花陽「うん。」

ツバサ「私は1人でも行くよ!」

花陽「そうだよ。1人きり。でもこの3人で、絶対に渡りきろう。」

小鳥「花陽ちゃん、私はもうダメ。落ちる・・・。」

花陽「何言ってんの、小鳥ちゃん!」

小鳥「落ちていった人たちの残像が焼きついて、足の震えが止まらない・・・。」

花陽「何言ってんの。諦めちゃダメだよ。一緒に渡りきって外に出ようよ。」

小鳥「私がバカだった。あの月宮林檎さんの手に乗ってなかったらこんなことには・・・」

小鳥「でも今更そんなこと言ったって仕方ないし。」

小鳥「今までありがとう。短い間だったけど、楽しかったよ。」

小鳥「これ受け取って。これは花陽ちゃんに託す。」

花陽「そのチケット・・・」

小鳥「悪いけど、私の代わりにこのチケットをお金に変えて私の両親に渡してよ。」

小鳥「今までいいことなんて何もなかった。私、独身で処女のまま死ぬのはすごく辛いけど・・・」

花陽「だったら尚更渡りきって、外に出ようよ。」

小鳥「わかったんだよ。人間には2種類いる。土壇場で這い上がれる方と、散っていく方。」

小鳥「私は散っていく方だ。でも花陽ちゃんならできる。」

小鳥「だから花陽ちゃんに託す。」

小鳥「大田区の羽田2丁目に住んでる音無という家に、この1000万円を渡して。」

小鳥「これで借金から解放されるはず。お願い、花陽ちゃん。」

小鳥「早く!」

私は音無さんの1000万円のチケットを受け取った。

小鳥「さあ行って、私のことは気にせず。」

小鳥「後ろを振り返らないでね。私が落ちるところを見たら、花陽ちゃんは動揺するはずだから。」

小鳥「花陽ちゃんは勝ってね。私は負けた。負けて、無駄な一生を過ごした。」

小鳥「でも花陽ちゃんは勝てる人間なんだよ。」

花陽「いや音無さんは、小鳥ちゃんは無駄な人生じゃない。最後に祈れたじゃない。」

花陽「自分以外の人間のことを祈れた音無さんは、どれだけ人間として素晴らしいか。」

花陽「小鳥ちゃんは負け組なんかじゃない。勝ったんだ。」

花陽「音無さん・・・。いない・・・」

花陽「落ちちゃったんだ・・・。」

花陽「小鳥ちゃん、無言で落ちた。怖がりで、臆病者の小鳥ちゃんが、私に動揺させないために、黙って落ちた・・・」

花陽「悲鳴も絶叫もせず、声を押し殺して・・・。」

花陽「小鳥ちゃんは最後の最後で、意地を見せた。人間としての強さを見せたんだ。」

花陽「私も負けてられない。絶対に渡る。そして小鳥ちゃんに託してもらったお金を渡す。」

花陽「仮に死ぬことになっても、小鳥ちゃんのように強く死ぬ。」


気づけばツバサはゴール目前にいた。

花陽「ツバサちゃん。頑張って、あと少しでゴールだよ。」

花陽「ツバサちゃんならできる。私の憧れだった、A-RISEの綺羅ツバサなんだから。」

ツバサ「行ってやる。渡りきってやる!渡りきって、あの上条って奴をギャフンと言わせてやる。」

そのとき、私の目の前に四ノ宮那月の亡霊が。

ツバサ「どうしたの?花陽ちゃん。」

花陽「目の前に四ノ宮那月が立ってる。じゃんけん大会で、私を裏切った四ノ宮君が。」

花陽「なんてことしてくれたのよ。あなたが裏切ったせいで、私は地下帝国に落ちて、こんな橋を渡る羽目になって・・・」

花陽「こんなところでまた私の行く手を邪魔しようとするの!」

ツバサ「落ち着いて、それは幻よ。前へ行け。あなたが行けば、亡霊が下がる。」

花陽「ふ・・・」

ツバサ「そうよ。攻めるの!ここが正念場よ!」

花陽「うおー!」

花陽「倒す、私はあなたを倒す!」

私は前に進んだ。

ツバサ「花陽ちゃん?」

花陽「消えた!亡霊が消えた!」

花陽「さあツバサちゃん、渡ろう。渡りきれば1000万円、ツバサちゃんは2000万円。」

ツバサ「そうだ。私たちは、かつてスクールアイドルだったころの自信と輝きを取り戻すんだ!」

ツバサ「あと少し、あとひとつ・・・」

そしてついに、ツバサが・・・

花陽「ツバサちゃん・・・」

ツバサ「やった!やった!渡りきったー!」

ツバサ「渡りきった。私はゴールした!私は生き残った!」

ツバサ「この窓の向こうが、私の未来・・・」

ツバサ「これで外に出られる。長かった地下生活から解放されて、人生をやり直せる。」

ツバサ「またあのときのように、全国1位のスクールアイドルだったときのように、私は生きれる!」

花陽「おめでとうツバサちゃん。ツバサちゃんは最高だよ・・・」

ツバサ「あれ?取っ手がない。どうやって開けるの?」

ツバサ「あ、指が引っかかるところがある。これを使って開けられる。」

花陽「ツバサちゃん、よく頑張ったね。」

ツバサ「花陽ちゃんも着いてきてね。私が先陣を切って・・・」

そのとき、花陽は異常を感じた。
窓の向こうに待ってる人が、今中に入ろうとするツバサを嘲笑っている。
彼らはこの鉄骨渡りを見物していた粕壁学会の者たち。
その笑いは、見事この鉄骨渡りを完走したツバサを祝福し、向かい入れようとする笑いではない。
もっと別の何か、別の何かを期待してる。

花陽「やめて。あの人たちおかしいよ。」

花陽「開けないで。」

ツバサ「何言ってるの?せっかくあともう少しで・・・」

花陽「ツバサちゃん、まだ罠がある!」

花陽「やめて!」

ツバサが窓を開けて、中に入ろうとした、そのとき・・・

風が吹いた。中から突風が吹いた。

ツバサ「あー!」

ツバサはその風に吹き飛ばされて、落ちてしまった。

花陽「ツバサちゃん!」


花陽「どういうこと?なんで風が・・・」

花陽「・・・そうか。東京ドームとかでよくある、空気圧。内と外との気圧差による突風。」

花陽「ツバサちゃん・・・。」

花陽「酷い、酷すぎるよ。ツバサちゃん、せっかく頑張って、恐怖に耐えて渡りきったのに・・・」

花陽「突風、あの風がツバサちゃんの未来・希望を奪っていった。」

花陽「ってことは私も・・・」

花陽「私も死ぬの?ツバサちゃんみたいに、あの突風で・・・」

花陽「それとも、向こうに引き返すか・・・。いや、こんなところまできて、引き返せるわけ無い。」

花陽「どうすればいいの?」

そして花陽は、また粕壁学会の見物人の異様な表情に気づく。

花陽「あの人たちの笑い、好奇心は、人が死んでいくのを見ている笑いじゃない。」

花陽「もっと別の何か、もっと別の方法を考えさせようとしてるんじゃ・・・」

花陽「それを選ぶことができないことを嘲笑ってる笑い・・・」

花陽「ということはまだあるんだ。生き残りの方法、抜け道が・・・」

花陽「・・・あ、上にも人がいる。あれは上条恭介。」

花陽「上で見ている人がいてもおかしくはないが、なんで上条1人だけ上に?」

そのとき、花陽に見えた。鉄骨の右側に、光るガラスの道が。

花陽「こ、これは・・・」

花陽「橋の左に、上の窓に向かうガラスの道と階段。」

花陽「そうか。これがあの突風を避け、ゴールにつながる道なんだ。」

花陽「こんな別ルートがあるなんて・・・」

花陽「見えてしまえば明らかだ。明らかにある。」

花陽「確かにある。右のツバサちゃんの方の鉄骨にも、そのガラスの道はある。」

花陽「ツバサちゃんの方は右か。」

花陽「なんでこんな物が見えなかったんだろう?」

花陽「そうか。思えば気が付くような状況じゃなかった。」

花陽「スタート地点からは遠すぎて見えないし、途中はこんな道に目が行くわけがない。目の前の橋を一歩ずつ渡ることに精一杯。」

花陽「心理的に死角なんだ。」

花陽「そしてツバサちゃんのように窓までたどり着いてしまえば、今度は位置的に死角。窓を開ければゴールだと思っていれば、後ろを振り向いたりしない。」

花陽「唯一気が付けるのは、ここ。ゴール手前3メートルくらいのところ。」

花陽「でもあともう少しでゴール。そんなときに右や左を見たりしない。ここでも心理的に死角。」

花陽「つまり私のように突風の現象に気づき、窓を開けてのゴールがダメであることに気づき、立ち往生して途方に暮れなければ、気がつかない。」

花陽「一度失望した者にしか見えない大逆転の道・・・」

ざわ ざわ

花陽「でも、これも安全とは言えないよね・・・。」

花陽「罠かもしれない。もし私が足を踏み込んだ瞬間、このガラスの道が割れたら・・・」

花陽「死んじゃう・・・」

花陽「だけど、行くしかない。私には他に選択肢はない。」

花陽は恐る恐るガラスの道に一歩二歩と踏み出した。

花陽「割れない・・・外れない・・・」

花陽「ということは・・・」

花陽はゆっくりとガラスの道を進む。

花陽「上の階の窓が開いた」

階段を登っていく。そして上の開いている窓から中に入った。

花陽「ゴールだ・・・」

花陽「やった、勝った!」

花陽「やった!私は生き残った!」

とはいえ喜びまくる気力は残ってなかった。

第9話 終わり

これ面白いと思って書いてるんならある意味すごいわ

第10話 地のエンペラー

花陽「ゴールした・・・」

そのとき、粕壁学会の幹部の拍手した。

黒服「おめでとう。」

上条「完走おめでとう。」

上条「この橋を渡りきったのは、お前が初めてだ。」

花陽「ありがとう・・・」

花陽「でもめでたくなんかない!6人も死んだっていうのに!」

花陽「さあ、約束だよ。早くお金を出して。」

上条「残念ながらそのチケットは無効だ。」

花陽「え?」

上条「橋の途中で、その効力を失った。」

花陽「なんで?制限時間は2時間、まだ時間は経ってないはず!」

上条「確かに時間は問題ない。だが忘れたのか?」

上条「あの綺羅ツバサとやらが言ったことを。」

上条「電流を切ってくれと。」

・・・
ツバサ「上条さん、電流を切って。」

ツバサ「お金はいらない、外に出れなくていい。中止だ!中止にして」

・・・
上条「お前もそれに承諾しただろ。我々はお前たちの願いを聞き入れ、あのあと電流を切った。」

上条「もっとも、多少電流を切るのが遅れて、犠牲者が何人かでたけどな。」

上条「ということだ。つまりお前たちが自ら権利を放棄したのだ。」

上条「もうそのチケットはただの紙切れ。乗り遅れた指定席特急券や航空券と同じだ。」

上条「せっかく橋を渡りきったのに残念だが、金は渡さない。借金も返せないから、お前は地下に戻ってもらう。」

ざわ ざわ

花陽「う・・・」

私は怒り抑えることができなかった。上条に襲いかかろうとしたが、黒服にそれを止められた。

花陽「ふざけないでよ!だったらすぐに電流を切ってよ!」

花陽「このチケットがただの紙切れなら、私たちは何のために・・・」

花陽「レオナちゃんや、音無さんや、ツバサちゃんは何のために死んだって言うの・・・」

花陽「許さない!あなたを絶対許さない!」

上条「やれやれ。」

高木「上条、この女の言い分も一理あるのではないか?」

高木「確かに電流はすぐに切るべきだったし、それが遅れて死者が何人が出てしまったわけだ。」

高木「我々にも幾分の責任がある。彼女にもう一度チャンスを与えようではないか。」

高木「それに、君はなかなか面白い人だ。花陽と言ったっけな。」

高木「一度戦ってみたくなった。」

高木「我々のご好意で、君に特別に大金のチャンスを与えよう。」

高木「種目は、Eカードがいいだろう。」

花陽「Eカード?」

花陽(Eカードって何?)

高木「最近の若者はどうしようもないクズばかりだが、君は少しはマシなようだ。」

高木「実に興味深い。是非測りたい、心の瞬発力を。持久力を。」

高木「その計りとして最も効果的なのがEカード。」

高木「もしこのEカードでワシの推薦した相手を上回ることになれば、100、1000万円の金を得ることが出来る。」

高木「もちろんそれ相応のハイリスクをくぐってもらうことになるわけだが。」

高木「そんなリスクが嫌なら、ノーリスクで4~5万拾うこともできる。」

高木「これは擁するにクズたちを救わなければならない君への慈悲。」

高木「だが強要はせん。君の自由だ。」

高木「このまま地下に戻るのも良し。外に出る権利を賭けてもうひと勝負するのもよし。」

高木「もしやるというのなら案内しよう。プレールームへ。」

そして花陽の、新たな戦いが始まる。

プレールームの近くで

花陽(このまま地下に帰ったらツバサさんたちが報われない。絶対に勝つんだ。)

モブ「花陽さん」

晋司「花陽」

花陽「みんな」

高木「君たちにも見せてやろう。こいつの戦いを。」

高木「俺は高木順一朗。粕壁学会の会長だ。」

高木「この世の中は苦しみのたうつ怨嗟の声に溢れている。」

高木「10人100人のうめきが、一人の豊かな生活を支えている。」

高木「それがこの世の仕組み。」

高木「俺は王だ。王には金がある。湯水のようにある。」

高木「人は金のためなら相当なことに耐えられるのだ。」

高木「その特性を金持ちの王は利用し、生涯安楽に暮らす。」

高木「だが金などいらぬと貧しき者どもが結束して反抗すれば、王もまた消える。」

高木「だが貧乏人は金を求め王の地位をより盤石にする。」

高木「その不毛なパラドックスから出られない。」

高木「金を欲している以上、王は倒せぬ。縛られ続ける。」

高木「王も暴動が起きぬよう、そこそこ豊かな生活が送れるよう注意している。実際はどんなにこき使っていてもな。」

高木「これからやるゲームはそういう社会の縮図だ。」

高木「上条、あとは任せた。」

上条「はい」

花陽「あんたは、上条恭介。」

上条「また会ったな。」

上条「Eカード、使うカードは2人で10枚。」

上条「その内訳はこの3種類。市民、皇帝、奴隷だ。」

上条「市民が8枚、皇帝と奴隷が1枚ずつ。カードは10枚を5枚ずつ分けて戦う。」

上条「陣営は皇帝側と奴隷側。ともに3回ずつ交互に行う。」

上条「戦い方はいたって簡単。1枚のカードを選び、テーブルに置く。」

上条「次にそちら側がカードを選び、置く。」

上条「互いのカードが出たらあとは開く。」

上条「勝敗は図案で連想される通りに考えればいい。」

上条「皇帝は市民より強い。市民は奴隷より強い。市民と市民なら引き分け。」

上条「今回のEカードという名前の由来は皇帝のEmperoe、その頭文字から来ている。」

上条「そして奴隷。奴隷は持たざる者、猶予のない虐げられし最低のもの。」

上条「だが何も持たず、失うものがない。だから王を撃つのだ。」

上条「持たざる者の捨て身の怒りは一番怖いという。」

上条「このEカードでは奴隷は皇帝を撃つ。そういう設定。三すくみの関係だ。」

上条「もちろん実際は皇帝を撃つ勇気のある奴隷など存在しないだろうけどな。」

上条「このEカードの戦略は、皇帝のカードを持った者は市民に紛れていかに皇帝を通すかというゲーム。」

上条「奴隷のカードを持った者は相手がいつ皇帝を通してくるかを読み、奴隷で[ピーーー]ゲーム。」

上条「今回このEカードはお前があるものを失えうリスクを背負えば1億だって得られるように設定してある。」

花陽「リスクって何なの?」

上条「命懸けの労働をした花陽ちゃんからしたら微々たるリスク。」

上条「目か耳だ」

花陽「え?」

上条「安心しろ。これはあくまで大金を得ようとした場合だ。」

出されたのは針付き装置

上条「花陽ちゃんには猶予がある。その猶予、器官を破壊に至るまでの猶予。」

上条「リモコンを操作すると眼球や鼓膜に・・・」

上条「目、耳どちらを選んでも結構。」

上条「猶予は3cm。針が3cm進んだ時に器官を破壊するように設定してある。」

花陽(なんてことを!)

上条「花陽ちゃんはこれを1mm賭けることができ、1mm賭けて勝てば10万円をやろう。」

上条「もちろん負ければ針は1mm進む。」

上条「10mm賭けて勝てば100万円を得られるが、負ければ針は10mm近づく。」

上条「だが賭けの下限は1mm。1mmしか賭けなければ10連敗しても針は1cmしか進まない。」

上条「このEカードは12回勝負だ。仮に2mm賭けて全敗しても24mm、破壊には届かない。」

上条「つまり花陽ちゃんの安全は最初から保証されている。」

上条「だからこの針もまるで絵のようなものだ。」

上条「それともう1つ。1mm賭けて勝ったら1万を払うと言ったが、それは皇帝側で勝った場合。」

上条「もし奴隷側で勝ったときはその4倍、1mmにつき40万円をやろう。」

花陽「え?」

上条「理由は簡単。勝ち難いからだ。皇帝側と比べて奴隷側のほうが圧倒的に不利なのだ。」

上条「1回目で皇帝側が勝つ可能性は5分の4、一方奴隷側が勝つ可能性は5分の1。」

上条「もし1cmで勝てば400万円。」

上条「それに4倍払いはあくまで花陽ちゃんが勝ったときだけ。もし僕が奴隷側で勝っても針が4倍進むことはない。」

上条「初心者の花陽ちゃんへのハンデだ。」

上条「ノーリスクで金を得られるギャンブルなんて、おいしい話なかなかないぞ。」

花陽「私は少額のお金を拾うために戦うんじゃない。借金は1700万円あるし、それ音無さんに預けられた額もある。

花陽「2000万か3000万円は勝たないと。」

上条「100万200万ならともかく、3000万勝とうと思ったらそれ相応のリスクを背負う。」

上条「つまり失うかも知れないのだ。目か耳を。」

花陽「そんなの覚悟の上。」

上条「無理だ。やめとけ。2000万、3000万得るにはかなり勝たなければならない。」

上条「このEカードは心理戦。君のような初心者が勝てるゲームではない。」

花陽「私は心理戦のじゃんけん大会の最後まで生き残った。この手のゲームにはなれてるよ。」

上条「上級者の僕相手だぞ。その程度では勝てるわけない。」

上条「このゲーム、運否天賦に適当にカードを出すのは認めていない。」

上条「カードを見ないで出すのはダメだ。必ず確認してもらう。」

上条「たまにいるのだがね。カードの読み合いを早々と放棄し、無作為にカードを出してくるものが。」

上条「しかしそれではゲームとして面白くない。」

上条「だから必ずカードを出す前に見てもらう。」

上条「互いにカードを確認するいきさつがEカードの魅力なのだ。」

上条「裏のかきあい、思考が相手をねじ伏せる。人を見抜く能力だ。」

上条「となると花陽ちゃんに勝ち目はない。僕は長年人を洞察してきた者だからだ。」

上条「君は皇帝側で3勝するのが精一杯だろう。それでは100万にも届かないだろうな。」

上条「忠告しておく。無謀な賭けはよせ。」

花陽「見返してやるから」

上条「そうか。」

花陽「さあ君はどっちを賭ける?目か耳」

花陽は耳を選択。そして皇帝側から始まる。


上条「戦績表だ。勝敗、賭けた距離、進んだ針の合計、賞金の合計、全てを記す。」

上条「あまり時間をかけるとだれるのでカードの選択は5分までとする。」

上条「花陽ちゃんも僕が選択に迷っていたらその時計でチェックしてくれ。」

上条「もっともそんな事態はないだろうけどな。」

上条「まず賭け距離の決定。最初は何ミリ賭ける?」

花陽(2ミリずつなら全敗でも24ミリ。3ミリなら10敗目に破滅、5ミリなら6敗目・・・)

花陽(いや。負けた時のことを考えてどうする。勝ったときのことだけ。)

花陽「10ミリで。」

上条「いいのか?10ミリなら3敗目で・・・」

花陽「いいの!10ミリ!」

上条「まあそれくらい張らないと大金は得られないからな。」

上条「このEカードは片方が出し、それを受けてもう一方があとから出す。」

上条「1枚目は皇帝側から出す。2枚目は奴隷側から、3枚目は皇帝側と交互だ。」

上条「さあ置きたまえ」

花陽「・・・」

1枚目は互いに様子見の市民、引き分け。

2枚目は奴隷側の上条から。続いて花陽。
オープン。
上条市民、花陽皇帝。花陽の勝ち。

花陽(やった!まず1勝)

上条「ふふふ」

10ミリを賭けて100万を得た。

花陽(100万円、こんな大金は初めて。)

花陽(でもそんなこと言ってられない。聴力がかかってるんだから。)

上条「さあ続けよう。第2戦の賭け距離は?」

花陽「変わらない。10ミリ!」

上条「そうか。どーんといこうや。勝ち続ければ1000万、2000万にも届くぞ。」

第2戦、1枚目は双方ともに市民で引き分け。
2枚目、花陽は初戦と同じく皇帝を選択。
カードオープン

花陽皇帝、上条市民。花陽2連勝。

花陽(なんだ、私でも勝てるじゃない。このまま行ける!)

さらに100万、200万円をゲット。
だが上条はまだ余裕の表情だ。

上条(第2戦までの負けは想定内。むしろ自信を付けさせるために負けてやったんだ。次は手加減しないぞ。)


第3戦、賭け距離は当然10ミリ。

最初の2戦と同じく、1枚目はともに市民。

花陽(この第3戦が終わると、次の第4戦からは私が奴隷側。勝ちにくくなる。)

花陽(ここは絶対勝たないと。)

花陽(どうしよう?今回も2枚目で皇帝にしようか。まさか3回連続とは思わないよね。)

上条(感じる感じる。心の波動・・・)

2枚目、今回は市民。しかし結局上条も市民。
勝負は初めて3枚目。

花陽(どうする・・・。3枚目も市民にしようか・・・)

花陽(しかしここでまた引き分けだったら4枚目は五分五分、確率的に私が不利。)

花陽(ここで勝負の皇帝!)

花陽(来い、市民、皇帝でねじ伏せる)

上条「そんなに念じられては聞こえてしまう。はっきりと聞こえたぞ。来い、市民!と」

花陽(え・・・)

上条「つまり花陽ちゃんのカードは皇帝だな」

上条奴隷、花陽皇帝。上条の勝利。

花陽(まさかこのひと、本当に私の心の声が聞こえたの?)

上条「では10ミリだな。スタート!」

花陽「・・・、う・・・」

花陽「うわー!」

嫌な轟音が耳に鳴り響く。

上条「外に漏れる音は僅かだが、君には轟音。」

上条「しばらくは残響で顔もあげられまい」

高木「上条、ほどほどにな。相手を困惑させる話術も面白いが、度が過ぎると花陽ちゃんが戦意喪失したらつまらなくなる。」

上条「会長、ご安心を。花陽はこの程度で戦意喪失するような奴じゃないでしょう。」

花陽(話術? この人たち、私を惑わしてるの?)

花陽「上条、あんたは私の心を読めたわけじゃないでしょ。言い当てた振り。」

花陽「私のカードは2種類しかない。適当に『来い、市民』と念じたのだと言った。」

花陽「私の動揺を見て図星とわかったところで、自分のカードを選択した。」

花陽「本当に私の心を読めたなら最初に自分のカードを出せたはずだよ!」

上条「さすがだな。」

上条「お願い、頼む、来てくれ、来い。あの状況で相手に出してほしいカードを念じるときに使う言葉としては一般的。」

上条「ましてや連勝してるあの場面では最も積極的な言葉、来いを使う。」

上条「その点は君の想像通りだ。」

上条「ただ念じたカードを市民と言い当てたのは適当じゃない。僕は本当に君の心が読めるんだよ。」

上条「どのカードを出そうとしてるのか。」

花陽「何それ?超能力者?」

上条「そんな非科学的なものじゃないよ。経験だ。」

上条「30年近く生きてきた経験だ。」

花陽「あの・・・」

花陽「ちょっとトイレ」

第10話 終わり

第11話 皇帝と奴隷

花陽(人の心を読むなんてできっこない!)

花陽(カードに何か仕組んだんじゃ・・・)

花陽(ダメか。何も見つからない・・・。)

上条「どうだ。カードに印などついてないだろ?」

上条「そんなことしないよ。バレたら逆に利用されるもんな。」

花陽(何?本当に私の考えてることわかってるの?)

上条「むしろ君が印をつけたりしないか逆にこちらが警戒しなければならない。」

上条「では再開、第4戦から君が奴隷側だ。」

上条「賭け距離は何ミリだ? 変わらず10ミリかい?」

花陽「そんなわけないでしょ。勝つ確率の低い奴隷側で10ミリも張れるわけない。」

上条「さすが花陽ちゃんだ。素晴らしい。」

花陽「なんだって?」

上条「さっき高木会長と今度君がどれくらい賭けるか話になってな。互いに意見が一致した。」

上条「ここで10ミリ張る奴はただの怖いもの知らずの無謀なバカだ。」

上条「怖いもの知らずなだけが勇気ではない。ときには引き下がることも勇者、強者として必要なことだ。」

上条「とあるホームページの『度胸試し』の『最後の度胸試し side F』にもこれが書かれてる」

花陽「さりげなくネタバレしないほうがいいですよ。」

上条「花陽ちゃんそういう人で安心したよ。」

上条「ではいくら張る?」

花陽「2ミリで。」

上条「なるほど。10から2か。」

花陽「5ミリか8ミリくらい賭けろって言いたいんでしょ?」

上条「逆だ。」

花陽「え?」

上条「誠の強者ならここは1ミリまで落とす。相手が流れに傾いてる状況なら限界まで落とす。」

上条「なのに2ミリか。見栄を張りたいんだろうが、死ぬぞ、その見栄は。」

上条「どうする? 今なら変更可能だが。」

花陽「変えないよ、2ミリ。」

上条「まあ花陽ちゃんならそうだろうな。俺の予想通り。」

上条「さっき会長と花陽ちゃんが次何ミリ賭けるか予想したが、会長は1ミリ、俺は2ミリという予想だった。」

上条「1ミリ見栄を張るだろうという俺の予想が当たった。」

第4戦、奴隷側となっての初戦。

花陽の心には拭いきれない思いが。
はったりだと思いながら、もしかしたら上条は本当に自分の心が読めるのではないかと。

花陽(そう思わせるのがあいつの手)

花陽(私が勝てば全部嘘だとわかる。)

花陽(ということは負けられないのは私よりむしろ上条。)

花陽(有利な皇帝側で、しかもあの会長の前で私のような小物相手に負けたりしたらとんだ醜態。)

花陽(私以上に上条は勝ちたいはず。)

花陽(多分上条は1枚目はリスクを避けて市民だろう)

1枚目、ともに市民

花陽(思ったとおり。上条はもしここで皇帝を出していたら勝ちだった。)

花陽(それができなかったということはカードを読み切ってなんかいない)

2枚目は花陽が先に出す
基本的に皇帝側も奴隷側も自分が先にカードを提出するとき、勝敗の鍵となる皇帝や奴隷は出しにくい。
先に出す方は心理的に不利。顔色でカードを察知される可能性もある。
その状況で勝負カードを出すことは避ける。

特に皇帝側は市民だけ出していれば相手が奴隷を出して自滅する可能性もあるので、無理に勝負には行かない。

花陽(先出しの1枚目と3枚目は皇帝を出したくない)

花陽(ってことは逆に考えれば・・・)

上条「どうした?こんな序盤でもう迷ってるのか?」

上条「こんな調子では先は思いやられるな」

花陽が2枚目のカードを提出

上条「さて花陽ちゃんは何を選んだか。」

上条「これは難しい・・・。」

花陽(上条が皇帝を出すとしたら2枚目。皇帝側からしたら後出しの2枚目か4枚目に、勝負のカードを出す。)

花陽(しかし4枚目まで行くと勝率は5割、それは避けたいはず。)

花陽(ならば2枚目に出してくるはず。)

上条「難しいがこれか」

カードオープン

上条「ふふふ」

花陽奴隷、上条市民、上条の勝ち。

上条「まさかこちらが仕掛ける前にそっちが転んでくれるとはな」

そして針が2mm進む

花陽「う、うわー・・・!」

上条「クズたちは黙って見てるだけか」

そこにいるのは紙フト大会に出場した選手たち

上条「さあ次の張りは?」

花陽「2ミリで」

上条「本当にいいのか?」

花陽「勝てばいいの!2ミリ!」

上条「とんだ頑固者だな。」

第5戦、皇帝側の上条が1枚目を出す。

花陽(皇帝側からしたら先出しの1枚目でまず勝負には来ない、なら市民・・・)

花陽(いや、さっきは絶対来ると思った2枚目で皇帝を出さなかった)

花陽(奴隷か・・・、いや出せない!)

カードオープン
ともに市民

花陽(よかった・・・)

上条「面白いだろ。ここまで人の心、真実を知ろうとしたゲームはないだろ。」

上条「これこそEカードの魅力だ。これが会話だ。」

花陽「会話?」

上条「普段の何気ない会話は所詮その場だけの魂もないもの。」

上条「しかし今君は真剣に俺の心を計ろうとしている。無論俺もだ。」

上条「こんな会話、日常生活では味わえないんだよ。」

上条「ましてや聴力をかけてるとなれば必死にならざるえないだろう。」

花陽(確かにこのEカードには隠されていた相手の本心、真実が何のカードを出したかによって見えてくる。)

花陽(躊躇、勇気、欲望、恐れ・・・)

花陽(恐れ・・・、そうだ、恐れ、これだ!)

花陽(恐れ、それだけは上条にもあるはず。)

花陽(これはギャンブル、私もそうだけど、いよいよとなれば上条も恐れないはずがない。)

花陽(この心理戦、Eカードでつきつめるのは相手の恐れ)

花陽(それを見つければそこが勝利の鍵)

花陽、2枚目を提出

上条「やっと決めたか。待つ方の3分は長いな。君のとってはあっという間でも。」

上条、あっさり2枚目を提出。

オープン。
花陽奴隷、上条市民、上条の勝ち。

上条「それでは2ミリだな、スタート」

上条「う・・・」

これで3連敗、通算勝利数で逆転された。

晋司(花陽でも勝てないのか。この上条には・・・)

高木「上条、もう少し希望を持たせ続けながら勝つことはできないのか。」

高木「あまり圧倒的な勝ち方をすると花陽ちゃんが安全に行って、勝負を捨ててしまう。」

高木「俺はそれだけが心配でな」

上条「この娘に限ってそういうことはないと思いますが」

花陽(正直この負けは想定内。勝負は次・・・)

上条「花陽ちゃん、次の賭け距離は?」

花陽「10ミリで」

上条「は?」

花陽「10ミリ、次は10ミリ行く!」

上条「なんだと、いいのか?」

高木「いいではないか。花陽ちゃん言ってるのだから。」

高木「わっはっは、愉快、愉快。面白い!」

高木「そういう勝負をしてこそのEカード。夜ふかしした甲斐があった。」

高木「上条、次は絶対勝ちなさい。」

高木「有利な皇帝側だ、お前が負けるはずがない。」

上条「わかりました。」

モブ「バカか、勝つ見込みが少ない奴隷側でなんで10ミリなんだ。」

晋司「勇気がなかったんだ。ここで行かないと、もう10ミリ賭けられない。」

晋司「このEカードで大勝ちするには4倍返しの奴隷側で熱く張って勝たなければならない。」

晋司「花陽はラスト3戦は奴隷側だが、そのころには熱く張る距離が残ってないかもしれない。」

晋司「となると、この第6戦が奴隷側で熱く張れるラストチャンス。ここで行くしかない!」

モブ「無茶承知でか。」

第6戦、1枚目。

先出しの上条が初めて熟考、動きが止まった。
花陽の希薄に高木会長の叱咤。

花陽(思った通り・・・)

花陽(どうだ上条、動揺したでしょ? 緊張してるでしょ? )

花陽(まさか私が奴隷側で10ミリ張るなんて思わなかっただろうからね。間違いなく動揺してる。私を怖がってる。)

花陽(有利な皇帝側とはいえ、初めて負けられない勝負だ。)

花陽(もし負けてしまえば10万×10×4で一気に400万円を失う。負けることを許されない勝負。)

花陽(あんたは負けることの恐れを初めて感じてるんだ。)

上条、提出。花陽も提出。
両者市民、引き分け。

花陽(そうだ。こうなる。恐れば恐るほど人は無理をしない。堅い戦略になる。)

花陽(先出しで表情を観察される1枚目、そして3枚目に勝負カード、皇帝は出してこない。)

花陽(出すとしたら私が先にカードを出す2枚目か4枚目)

花陽(しかし2枚目はもう出せない。第4戦、第5戦とも2枚目に奴隷。2枚目奴隷という印象を上条に植えつけたからね。)

花陽(これはじゃんけん大会での雪穂ちゃんのときの作戦だったけど、2度続けて同じ手が来たら3度目はない。雪穂ちゃんのようなバランス理論の人ならそう考えるだろうね。)

花陽(でも上条は違う。上条は雪穂ちゃんのようなバランス理論じゃないし、それに私のまさかの奴隷側10ミリの勝負で恐れてる。)

花陽(3度続けてはないと思いながらも、もしかしたらという気持ちは拭えない。)

花陽(ひたすら考え、上条の出すのは保留、もう一度市民を出し様子見。)

花陽(イチカバチカなどしない。)

花陽(そうすると3枚目は先出しで皇帝は出しにくいから、勝負は4枚目。)

上条、考え続け4分経過してやっと選択。提出。

晋司(これで勝てば、ほぼ勝てる皇帝を3戦残し、勝ち金の合計は600万。)

晋司(1000万は完全に視野に!)

晋司(勝て!勝って道を示せ!)

花陽は市民

花陽(どうだ、市民でしょ?あんたも。)

上条「ふふふ」

上条「俺にはわかるよ。君が何を考え、その市民に至ったか。」

上条「そしてそれはほぼ正しい。」

上条「このEカードにおける乗積にような考え方だ。」

上条「しかし残念ながら乗積というのはギャンブルでは最も浅はかなのだ。」

上条はまさかの皇帝、上条の勝ち。

花陽(そんなバカな、なんで、どうして?)

花陽(2枚目に皇帝は出せない、出せないはずなのに。)

上条「では10ミリ、スタート!」

花陽「う、うわー!」

上条「このEカードに必勝法などない。」

上条「あるとすれば勝つ確率を高めるなにかだが、それは一晩で身につけられるものではない。」

上条「それは長年の経験だけだ。」

上条「初心者はすぐにそれを手にした気分になる。」


6戦終わり、針の距離は24mm、鼓膜まであと6mm。

花陽(残り6戦、1ミリずつ張っても全敗すれば鼓膜に届き、聴力を失う・・・。)

花陽(う・・・)

花陽(この事態を考えてなかったわけじゃないけど、まだ有利な皇帝側が3戦ある。1つでも勝てば・・・)

上条「花陽ちゃん、次の賭け距離は?」

花陽「・・・」

上条「花陽ちゃん、どうした?」

花陽「1ミリ」

上条「おいおいよせよ。花陽ちゃんの最低賭け距離は2ミリだろ。」

上条「もう降参ってことか。」

ざわっざわっ
晋司(なんてことだ!完全に上条のペースになってしまった・・・。)

上条「第7戦、今度は花陽ちゃんが皇帝側だな。」

上条「最初に言っただろ?初心者の花陽ちゃんには勝てないのだ。」

上条「このEカードは心理戦と言ったが、実際は見る力。相手が動揺してるかどうかを観察する能力だ。」

上条「つまり皇帝側は皇帝、奴隷側は奴隷を提出した時の相手の心の動揺を観察する力が問われている。」

上条「バカか、それができれば苦労しないって思うだろ?でも経験を積めばできるのだよ。」

上条「たとえば花陽ちゃんの場合、勝負カードを出したとき若干前傾が深くなる。」

花陽「え?」

上条「さらに出したあとの目線の動き、残したカードの持ち方、口元、眉の表情、肩、肘など。」

上条「つまり言っているのだ。口に出さなくても、体中で。」

上条「隠しきれない。感情は決して隠しきれるものではない。」

上条「経験が必要なのだ。一晩で感情は隠せぬ。よって花陽ちゃんは勝てない!」

花陽(なんてこと・・・。それじゃあ私が先にカードを出すときは全滅なの?)

上条「・・・」

第7戦

花陽(1枚目に皇帝を出そう。どうだ、見抜けるもんなら見抜いて・・・)

花陽(・・・いや、乗っちゃダメだ。これは興奮させて私に1枚目に皇帝を出させる上条の作戦だ。)

花陽(それに万が一でも上条が見抜いていたとしても、それは私が先出しのとこだけ。後出しの2枚目と4枚目ならそんなこともできない。)

1枚目は両者市民。

2枚目、上条、30秒ほど考えた末提出。それを見て花陽は皇帝を提出

花陽皇帝、上条奴隷。 上条の勝ち。

花陽(なんで?私の後出しなのに・・・)

花陽(見抜いてるどころか予言者ってこと?)

花陽(有利な皇帝側でも勝てないなんて・・・)

再び1ミリ張っての第8戦

花陽(なんてこと。相手に見抜かれてるんじゃもう皇帝は出せないよ・・・。)

これで簡単に皇帝を出せなくなった。。
1枚目、2枚目、3枚目、両者市民で引き分け。

4枚目
追い詰められた花陽

花陽(なんでこうなるの・・・)

花陽(こういう状況は私が上条にしてやりたかったのに)

花陽(私がされるなんて・・・)

結局市民を選択。
上条も市民、引き分け。

この時点で残ったカードは花陽皇帝、上条市民のため、カードを出すまでもなく上条の勝ち。

花陽、本来圧倒的に有利なはずの皇帝側でも負け。泥沼の6連敗。

上条「念のため言っておくが、もしそれを外そうとしても特殊な金具でできていてな。」

上条「特別な工具がなきゃ外せない。」

上条「それでも強引に外そうとしたらこのリモコンにアラームが鳴る。」

上条「こちらからしたらその耳は人質。勝手はさせん。」

残り4戦。鼓膜までの猶予も4mm。

花陽(ダメだ。もう疑いようがない。)

花陽(この人は本当にわかるんだ。私のカードが勝負カードが否か。)

花陽(まるで悪魔だ。人の心、動揺を見抜く天才。)

花陽(勝てない・・・。勝てるわけない・・・)

花陽(私が唯一勝てる可能性があるのは皇帝側最後の第9戦)

花陽(これに負けたら多分最後の3戦は全敗、これで針は合計30ミリ、鼓膜に届く。)

高木「わかってるな。次さえば勝てばあとは問題ない。」

高木「気を緩めるなよ。」

上条「わかってます。」

高木「せっかく夜更かししたんだ。ここまで来たら花陽ちゃんの絶叫を聞きたい!」

高木「もっともその声は花陽ちゃんの耳には半分しか届かないけどな。」

第11話 終わり

第12話 絶体絶命

第9戦、花陽最後の皇帝側。
あとは勝ちがたい奴隷側だけが残る。
勝てば生き残り、負ければ破滅。

賭け距離は1ミリ

晋司(花陽、勝て! 勝てば出ていける!何も失うことなく・・・)

1枚目、花陽は市民。
上条も市民。引き分け

花陽(出したあとの態度でカードを知られてしまう私は、後出しのときに勝負にいくしかない。)

花陽(でも7戦目は後出しの2枚目でも見抜かれたし)

花陽(でも後出しのときしか勝負には行けそうもない。後出しの2枚目か4枚目に勝負するしかない)

花陽(どっちで勝負に行くか・・・)

花陽(本来皇帝側はノーリスクで相手の自滅を待てる。)

花陽(市民を出しておけば100%安全な上、もし上条が奴隷を出したらあっさり勝ち。)

花陽(イチカバチカはその権利を行使してからでも遅くない)

花陽(でも上条がそんな自滅するわけない。)

花陽(今わかったことじゃないの。この人は私のカードを見抜いてる。)

花陽(つまり、だからこそ皇帝なんじゃ・・・)

花陽(私が恐れてることを上条は感じてる)

花陽(だから私が安全策の市民を出してくると考えるだろう)

花陽(まさか皇帝が来るとは思わないはず・・・)

花陽(でも2枚目皇帝は初戦、2戦目、そして7戦目と3回も使ってるし・・・)

花陽(まだ4枚目に皇帝を出したことはない。勝負は4枚目だ。)

2枚目、花陽は市民を提出。上条も市民。
3枚目もともに市民。
そして勝負が決まる4枚目。

花陽(ここだ、ここで皇帝だ!行こう!)

花陽(いや、やっぱり市民か・・・)

花陽(私は第8戦から合わせて7枚連続市民、そろそろ皇帝が来ると考えるかもしれない。)

花陽(それに、今まで使ってない4枚目に皇帝という作戦を初めて使ったと上条が読んでくるかもしれない・・・。)

迷った末、皇帝のカードに手をかける

花陽(私、震えてる・・・)

花陽(行け! 行くんだ、勝負・・・)

カードを出した。しかし結局花陽が出したのは市民。

花陽(なんで出せなかったの・・・。皇帝を出せば勝てるのに・・・)

花陽(終わった、これで上条も市民なら私の負け・・・)

上条「うふふ」

上条「オープン」

上条は奴隷

花陽「え? ということは・・・」

花陽は市民

上条「なんだと?」

晋司「やった!花陽、勝った!」

「やった、勝った!」

気の迷いが幸い、花陽、7試合ぶりの勝利。
生き残った。10万円を獲得。

花陽「よかった・・・」

花陽「そうか。私、1人じゃなかったんだね。」

今見てる晋司たちも震えている。
花陽とともにこの生き残りを喜んでくれてる仲間がいた。

花陽「ありがとう。ありがとう、みんな。」

ピタ

花陽「え?」

高木「なぜだ。なぜ負ける!」

高木「お前は勝って当たり前だろ。」

上条「すいません。この娘、カードを出す前に心変わりしまして。」

高木「勝負がいよいよという場面なら、安全な方に行ってしまうのが素人の真理だろ!」

ビタ

高木「お前はそんなこともわからないのか!人の見る目のない男、とんだ大馬鹿野郎だ!」

高木「これでその女が安全に逃げれば面白くもない終局、興を失う!」

高木「クズが!」

ビタン
高木は上条を何発も殴った

花陽も、見てる仲間が静まり返る。

花陽(興を失った会長の怒りもわからなくない。)

花陽(でもそんなに怒って殴ることなの?)

花陽(このEカードに必勝法なんかない。なのに上条は6連勝してたんだ。)

花陽(それに、今のだって99%看破してた。)

花陽(最後の最後に自分でもわけのわからないビビリで市民を出して外すことになったけおd、そこまで読めというのはあまりに酷。)

花陽(殴るなんてあまりに理不尽)

花陽(そういえば上条は私がカードを出したあとの態度で何を出したかわかるって言った。)

花陽(なんで勝負の最中に言ったんだろう?そんなの上条にとって不利益しかないはず。)

花陽(あの発言があったからこそ私は勝負を後出しのときにしようと決めた。)

花陽(あの発言がなければ私は先出しのときに言ったかもしれない。)

花陽(それに自分の作戦を相手に話すなんて勝負事では最もやってはいけないこと)

花陽(変だ。負けたことくらいで激怒して殴った会長が、この本当のミスはまるで無視。)

花陽(これもおかしい。)

花陽(ってことはウソか。あの発言は全部ウソ、別の何かで勝ってきたんだ。)

花陽(つまりあいつは私の態度でカードを察したのではなく、別の何かで知っていた。)

花陽(そして会長のあの怒りは、勝って当たり前という何か。)

花陽(イカサマをしてるってことなの?)

高木「花陽ちゃん、次の賭け距離は?」

花陽「1ミリ」

花陽(でもどうやって?)

花陽(後ろには何もない。上にもカメラらしきものはない。)

花陽(どうやって?)

花陽(私のカードを覗いている人間はいない。)

花陽(カードを見れるのは、私だけ・・・。)

花陽(ひょっとして私自身がサインを送ってる?)

花陽(態度のような曖昧なものじゃなく、もっと明白な何かを。)

花陽(それを上条が受け取っている)

・・・
私には心当たりが合った。それはμ'sの先輩、希ちゃん。

希ちゃんは人の心が読めると言っていた。だからトランプでは絶対に負けないんだと。
でもある日、それは嘘だったことが発覚する。

にこ「希、私とじゃんけんで勝負よ!」

希「うん、ええよ。」

にこ「10回勝負ね」

希「え?」

にこ「希、本当に人の心が読めるなら、じゃんけんでも相手が今から何が出すかわかるはずだよね?」

希「ん、まあね・・・。」

にこ「ならば10連勝できるだずだよね。じゃんけんで10回勝負、10連勝できる確率は・・・、いくつだっけ」

海未「2分の1の10乗で、1024分の1です。」

希「そう、1024分の1。極めて難しい。でも希ならそれができるってことだよね?」

にこ「・・・。」

・・・
私には心当たりが合った。それはμ'sの先輩、希ちゃん。

希ちゃんは人の心が読めると言っていた。だからトランプでは絶対に負けないんだと。
でもある日、それは嘘だったことが発覚する。

にこ「希、私とじゃんけんで勝負よ!」

希「うん、ええよ。」

にこ「10回勝負ね」

希「え?」

にこ「希、本当に人の心が読めるなら、じゃんけんでも相手が今から何が出すかわかるはずだよね?」

希「ん、まあね・・・。」

にこ「ならば10連勝できるだずだよね。じゃんけんで10回勝負、10連勝できる確率は・・・、いくつだっけ?」

海未「2分の1の10乗で、1024分の1です。」

にこ「そう、1024分の1。極めて難しい。でも希ならそれができるってことだよね?」

希「・・・。」

にこ「じゃんけん、ポン」

1回目は当然のように希ちゃんの勝ちだった。しかし2回目

希「じゃんけん、ポン」

花陽「え?」

穂乃果「希ちゃんが負けた?」

希「いや、1回くらいわざと負けてやったんや。勝負はこれからや!」

しかし、3戦目もにこちゃんの勝ち。
結局10戦やって、6勝4敗で辛うじて希ちゃんが勝ち越したものの、10連勝はできず確率通りの普通の戦績になった。


ことり「どういうこと?やっぱり人の心が読めるなんて嘘だったってこと?」

希「いや・・・」

希「じゃんけんなんて人の心が読めるだけじゃ勝てないや・・・」

にこ「琴浦さんは人の心が読めるからじゃんけんで1度も負けたことがないんだよ。」

にこ「それに人の心が読めたら、色んな人の希に対する心の悪口もわかるはずだから、耐え切れないはず。琴浦さんはそれに苦しんだ。」

にこ「しかし希にはそれがない。転校が多かった希が、人の心が読める能力で苦しまないなんてありえないはず。」

にこ「ってことは・・・」

花陽「ねえ、琴浦さんって何?」

真姫「漫画よ。」

凛「あと2013年の冬にアニメもやってたにゃ」


にこ「よくも私たちを騙してくれたわね!」 ワシワシ

希「え・・・・」

穂乃果「にこちゃんが希ちゃんをワシワシしてる・・・」

海未「いつもの逆ですね」


実は希ちゃんの能力は、人の心が読めるのではなく、人の心の波動、脈拍や血圧、体温の変化がわかる能力であった。
カードゲームに強いのはそのため。相手に心の波動を読み取って勝ってきたのだった。
しかしじゃんけんではその能力は通用しないため当然必ず勝てるわけではない。

・・・
第10戦、1枚目は皇帝側の上条が先に出す。
続けて花陽が提出。

オープン 両者市民で引き分け。

2枚目は花陽の先出し。

花陽(もしかして希ちゃんと同じ、上条には人の心の波動を読み取る能力があるのかも・・・)

花陽(・・・ん?上条、今カードを見てるように見えない。)

花陽(その下、時計を見てる。)

花陽(そういえばやたらと時計を見てた)

花陽(ってことはあの時計か!)

花陽(あの時計は受信機、私の心の動揺を受信する機械。)

花陽(なら送信機もある。何を出したか送信する機械も。)

花陽(これだ!この耳の装置が感知器に違いない!)

花陽(この装置で私の脈拍や血圧、体温の変化を送ってるんだ。)

2枚目
上条皇帝、花陽市民。 上条の勝ち。
花陽のカードはまたも見破られた。
これで上条の7勝3敗。

上条「スタート!」

花陽「う・・・」

花陽(そろそろ慣れてきたけど・・・)

花陽(そうか。最初の選択。目か耳かを選ばせる行為で疑いを消した。)

花陽(あの時計。5分という時間を設けることで時計を見るという不自然さを消す。)

花陽(あとは上条の巧みなウソで後出しの時に必ず不自然さを消した)

花陽(汚いやり方を・・・。絶対に許さない!)

花陽(だからってどうすればいいの?)

花陽(このイカサマを言い当ててもどうせあいつは知らんぷりだろう。)

花陽(あの時計を見せろと言ってもどこかのスイッチを押せば受信機としての機能が解除、普通の時計に戻ることもありうる。)

花陽(そうだ!)

花陽はひらめく

上条「花陽ちゃん、次の賭け距離は?」

花陽「ねえ、この耳の装置、針はどこまで伸びるようになってるの?」

上条「50ミリだ。」

花陽「ということは今27ミリだから、あと23ミリは針を伸ばすことができるってことだね。」

花陽「ならばこの23ミリ全てを賭けることはできるかな?」

上条「なんだって?」

上条「・・・」

上条「自分が今何を言ってるのかわかってるのか?」

上条「30ミリなら鼓膜までで、それ以上失うことはない。しかも再生することもある。」

上条「しかし50ミリなら鼓膜の上、中耳や内耳の領域を破壊したら、再生は不可能。」

上条「というより最悪の場合、死だ。」

高木「上条、よいではないか。」

高木「花陽ちゃんが勝負してくれればこんなに喜ばしいことはない!」

高木「是非受け入れるべき。」

高木「50ミリのリミットいっぱい、23ミリの張りをな。」

高木「23ミリなら奴隷サイドだから4倍の収入。23×4で920万か。」

高木「ということは2連勝すれば1940万。既に花陽ちゃんが得た210万を合わせると2150万。」

高木「最初の目標だった2000万に届くのだ。」

高木「なんという偶然だ。喜ばしい。」

高木「なら迷うことない。」

花陽「待って!」

花陽「ちょっと考えさせて」


花陽「晋司君、ちょっと来てくれるかな。」

晋司「わかった。」

そこは男女共用のだれでもトイレ

晋司「23ミリなんて張るなよ。命まで賭けることないだろ。」

晋司「兄としてそんな無茶は見過ごせない。」

花陽「勝てる方法を思いついたの。」

花陽「今は大きく賭けて勝つしかない。」

花陽「それにはお兄ちゃんの協力が必要なんだけど・・・。」

花陽「実はこの耳の装置が、私の脈拍や血圧、体温の変化を示す送信機になってるようなの。」

晋司「そうなのか?」

花陽「多分。お兄ちゃん、魔法少年だとか言ってたよね?」

晋司「そうだぞ。」

花陽「だったらお願いがあるんだけど・・・」


・・・
上条「ついに気がついたか。そうだそのとおり。」

上条「その装置は単に鼓膜を破るための機械ではない。」

上条「君の脈拍、血圧、発汗を感知し、この時計に送信する感知器。」

上条「今も送ってくれてる。どうやら暴れてるようだな。」

上条「気づいてもこの装置を外すことは不可能。特殊な金具で設置している。」

・・・
モブ「・・・花陽さん!」

モブ「血を流して・・・大丈夫か?」

モブ「一体何があったんだ?」

花陽「大丈夫。これは作戦だから。」

花陽は耳を抑えている。

花陽「23ミリだ。次は23ミリで勝負。」

高木「すばらしい!」

高木「上条、言うまでもなく絶対に勝ちなさい。」

高木「俺は実にいろいろな死に様を見てきたが、耳から針を刺し込み、その針で鼓膜から脳を破り死んでいく死に方は初めてじゃ。」

高木「正直想像もつかない。どうのたうつか」

高木「ふふふふ」

高木「苦しみは一瞬か。長時間に及ぶのか。」

高木「わっはっは」

第12話 終わり

第13話 生死の戦い

第11戦、張りはリミットいっぱい、鼓膜の遥か先までつらぬく23ミリ。

花陽の命を賭けた勝負。

上条(悪いな花陽。お前はこの回で死ぬ事になる。)

上条(のたうちながらな。)

1枚目、提出は上条から。

上条(あれ?血圧が作動していない。故障か?)

上条(相当派手にぶつけたな。)

上条(でも他は正常。脈拍と発汗がわかれば十分。)

上条(いくら暴れても脈と発汗の乱れはいつまでも続かない。)

上条(となれば待てばいい。)

5分経過、上条ようやく提出。
受けて花陽。

オープン。両者市民で引き分け。

花陽の脈拍で何を出したかわかる上条が1枚目に勝負カードを出すわけがない。

問題は2枚目。先出しは奴隷側の花陽。
受けて上条。

再び長考

上条(下がってきた。いつわりの興奮が避け、脈も体温も発汗もやや高いが正常。)

上条(見かけほど興奮していない。)

上条(ということは奴のカードは市民。)

上条(勝負カードの奴隷を出しているならもう少し興奮しているはず。)

上条(もう少し高い数値を示している。体も反応している。)

上条(間違いなく奴のカードは市民。だが一応念を押すか。)

上条が市民のカードを見せる

上条「ふふふ。次は無難に市民で行くか。」

花陽(え?) ガクガクブルブル

上条(やっぱり反応なし、変化なし。一見困った顔をしているが、脈拍の数値は正直だ。)

上条(あいつはこの市民を恐れていない。つまり奴のカードは市民に殺される奴隷ではない。)

上条(もし奴隷ならこんな稚拙な誘導にも体は反応する)

上条(ならば・・・こっちだ!)

上条「ふふふ」

上条「花陽ちゃん、終わりだ。今君は死んだ。」

上条、皇帝。

上条「ふふふ」

上条「わっはっは」

上条「わっはっはっは」

上条「いっひっひっひ」

晋司「花陽・・・」

モブ「花陽さん・・・」

上条「さあ開けろ。せめてもの慈悲だ。開けた瞬間に殺してやる。苦しまぬようにな。」

花陽「う・・・」

花陽「グス、グス」

涙を流す花陽

上条「開けられぬか。自分からは。無理もないもんな。」

花陽「あんた言ってたよね。奴隷は持たざる者。猶予のない虐げられしもの。」

花陽「だが何も持たない、失うもののない奴隷だからこそ、皇帝を撃つと!」

花陽「これ私たちの最後の声、死の淵での最後の意地だ!」

花陽がカードを開く。

上条「何?」

晋司「おー!」

そのカードは奴隷だった。

晋司「勝った!」

モブ「やった、勝った!」

花陽の涙はただの演技

上条(なぜだ、どうして?)

上条(大量出血で身体反応そのものが弱まったのか)

上条(いやそうだとしても何らかの反応があるはずだ。)

上条(ということは誤作動か?)

上条(ん・・・、なぜ耳を抑えているのだ?)

上条「ま、まさか!」

上条「だれでもトイレだ。そこに人がいるはずだ!」

上条「お前、まさか・・・」

上条「み、み・・・、耳がない!」

黒服「上条さん、いました!こいつの手に装置と・・・耳が!」

つまり、上条が追っていた脈拍、体温は花陽のものではなく、ギャラリーにいた別人のものだった。

魔法少年である晋司が花陽から耳ごと装置を取り外し、ギャラリーにいた別人が持っていることで偽りの情報を上条に送っていたのだ。
幸いだったのが、この装置が生体に触れてさえいれば反応する方式だったことである。
血圧だけは別の方式で感知していたので耳を外したことで反応しなかったが、そのことに上条は気づかなかった。

そういう意味では上条のミスに助けられた甘い戦略だった。

とにかく花陽はもぎ取った。痛みと引き換えに、悪魔から貴重な1勝を。
23×4で92、920万円を獲得!210万を加えて計1130万。

花陽(私にとっては目もくらむような大金。)

高木「つまらん!まったくおもしろくない!使えぬ男!愛想が尽きたわ!」

上条「会長・・・」

高木「せっかく新しい死に方が見れると思ったのに、お前のくだらんミスで見逃したじゃないか!」

高木「どうやらワシはお前をかいかぶっていたようだ。こんなザマでは今あるポストからの降格も考えねばならぬ。」

高木「戻るか?社会の藻屑、地下の底に・・・」

高木会長の罵倒

花陽にも追い詰められた思いが

花陽(この耳を外した戦略で第12戦も行けると思ったけど、第11戦でバレちゃった。)

花陽(もうこの作戦は使えない。)

花陽(じゃあどうすれば・・・)

それとともに激痛が走り、血が垂れる。

花陽「タオルを!」

晋司「わかった!」

花陽(そうだ、これ使えるかも・・・)

花陽(あいつの人間性、観察力、この出血、うまく使えれば勝てる・・・)

花陽(でも100%じゃない。思惑通り上条がこっちの罠にはまってくれればいいけど、うまくいかなかったら死ぬ・・・)

花陽(どうしよう・・・)

花陽(これで終われば、もうこんな大金はつかめないかもしれない・・・)

花陽(私はチャンスを自ら捨ててるんだ。)

花陽(勝手にこれが自分の限界だと思い込んでる。)

花陽(それじゃダメだ!逃げちゃいけないんだ。)

花陽(勝つ、もう一度勝つ!)

花陽(そのためには、まずこの3枚を・・・)

膝へ。一枚を手に取って。
上条を見ながら。

次に第11戦で使った2枚を裏返す。そこにさっきの1枚を置き・・・。
血を垂らす

次に第11戦で使った2枚を裏返す。そこにさっきの1枚を置き・・・。
血を垂らす

上条(なんてことだ。こいつの捨て身の執念で不覚を取った)

花陽「上条、私はこのままじゃ終われない。あんたもそうだよね?名誉挽回のためにも・・・」

上条「何?」

花陽「もう一度23ミリの勝負だ!」

花陽「もう一度生き死にの勝負!」

高木「ふふふ」


晋司「何を言い出すんだ花陽、今の勝ちだって十分奇跡的なのに。」

モブ「もう十分だよ。」

晋司「ここで下がろうぜ。俺はお前が死ぬとこは見たくない。」

花陽「大丈夫。勝運に乗ってるここで逃げちゃいけない!」

「作戦があるの、晋司君、耳貸して」 ヒソヒソ

上条(こいつ調子に乗りやがって。もう一度生き死にの勝負だと・・・)

高木「素晴らしいではないか」

高木「命は1つしかない。だから大切にしろと国王から一般市民まで」

高木「アイドルもスポーツ選手も言っている。」

高木「だからダメなのだ。命はもっと粗末に扱うべき。」

高木「花陽ちゃんは素晴らしい!何事にも命を懸けるべきだ!」

高木「君は元スクールアイドルだったな。他のアイドルを見習うべきだ!」

高木「受けよう、花陽ちゃんの生き死にの勝負。」

花陽のもう一方の耳に、27ミリ進んだ状態で耳の装置をつける。

高木「これはワシの提案なんだが、次は両者ともに生き死にの勝負にするのはどうだ?」

花陽「何それ?」

高木「黒服、もう1つ装置が余っていたはずだ。それを上条の耳に装着してくれ。」

上条「なぬ?」

高木「上条、お前も生き死にの勝負だ!」

高木「お前もリミットいっぱい、50ミリ賭けてもらう。」

高木「負けたらお前が死ぬのだ!」

上条「そんな・・・嫌です。」

高木「何?お前は命を賭けられないというのか。こんな小娘が命をかけているというのに!」

高木「バカモン!」

会長は上条を殴る

高木「皇帝側で2度もお前が負けることはないだろうが、万が一負けたら今度こそ花陽ちゃんの死に様を見られなくなるではないか。」

高木「だからお前が負けたらお前の死に様を見せるしかないだろ。」

上条「わ・・・わかりました・・・」

高木「では花陽ちゃん、安心して挑みたまえ。」

高木「勝てば2000万、負ければ死だ。」

・・・
晋司「嫌だ。なんでお前は命まで賭けようとするんだ。」

花陽「今日の鉄骨渡で何人も死んでいったんだ。あの人たちを無駄死ににしちゃいけない。」

花陽「そのためにも、私は勝たなきゃいけないんだよ。」

花陽「それこそ命を賭けたりしないと、あいつらを見返せない。」

花陽「お兄ちゃん、もし私がダメになったら、外の世界にはお兄ちゃんが行ってよ。」

花陽「お兄ちゃんが変わりに音無さんを助けて」

・・・
花陽「上条、時計を外しなさい。」

上条「わかった。」

高木「では始めたまえ」

第13話 終わり

第14話 奴隷は二度刺す

Eカード、最終第12戦。
両者ともに生死をかけた戦い!

1枚目は皇帝側の上条の先出し。

花陽(上条にとってこのEカード、初めての真剣勝負だね)。

花陽(あんた、今までは腕時計の計器を使って勝負してきた。イカサマで勝ってきたからね。)

花陽(しかしこの最終戦ではもう計器は使えない。あくまであんた自身の読み、勘、運だけで勝つしかないんだよ。)

皇帝側の上条が圧倒的有利。しかしだからこそ花陽以上に負けられない。
負ければただでは済まない。自分が死ぬのだ。

上条(負けられない。僕は負けられないんだ・・・。)

上条(お前はいい。お前は失うものがない。でも僕は・・・)

・・・
天才ヴァイオリニストだった上条恭介。
しかし事故に遭い、右手の指を動かせなくなった。


医師「残念だが、演奏は諦めるしかない。」

医師「現代の医学じゃ無理だ」

上条「そんな・・・」

ヴァイオリンを失った上条に、もはや何も残されていなかった。

そんな中、粕壁学会から入信の誘いが

学会員「この会に入会すれば、お前の人生はすべてうまく行く。」

上条「本当ですか?」

こうして上条は粕壁学会で再び生きていくことができた。

・・・
上条(僕は幾多の苦境を勝つことで乗り越えてきた。)

勝てばいいだけのこと。
勝てば会長の信頼を回復できる。勝ってこの娘を殺し、生き残るのだ!

恐れることはない。この女の感情の振れ、隙を見れば勝てる。
後出しの2枚目か4枚目に勝負をかけて皇帝を出すか、市民を出し続けて相手が奴隷を出して自滅するのを待つ。
何も1枚目で勝負に行くことはない。市民だ!

・・・いや、だからこそ1枚目に不意打ちで、皇帝ではないか?
まさか1枚目に皇帝を出すとは思わないだろ
うーん・・・
1枚目に皇帝を出して勝てればどんなに博打は楽か・・・

もし僕が考えた不意打ちをこいつに読まれたとしたら・・・、逆をついて奴隷を出してくるかもしれん。

花陽「いつまで迷ってるの?もうすぐ制限時間の5分だよ?」

花陽「頼みの時計がなくなっただけでびくびくしちゃって。」

花陽「それでも経験で勝ってきた人なの?」

花陽「そんなんだから会長に見捨てられるんだよ。」

上条「なんだと!」

花陽「はははははは」

上条(こいつ、この女、[ピーーー]! ぶっ[ピーーー]!)

上条は皇帝を出そうとする

・・・
上条(僕は幾多の苦境を勝つことで乗り越えてきた。)

勝てばいいだけのこと。
勝てば会長の信頼を回復できる。勝ってこの娘を殺し、生き残るのだ!

恐れることはない。この女の感情の振れ、隙を見れば勝てる。
後出しの2枚目か4枚目に勝負をかけて皇帝を出すか、市民を出し続けて相手が奴隷を出して自滅するのを待つ。
何も1枚目で勝負に行くことはない。市民だ!

・・・いや、だからこそ1枚目に不意打ちで、皇帝ではないか?
まさか1枚目に皇帝を出すとは思わないだろ
うーん・・・
1枚目に皇帝を出して勝てればどんなに博打は楽か・・・

もし僕が考えた不意打ちをこいつに読まれたとしたら・・・、逆をついて奴隷を出してくるかもしれん。

花陽「いつまで迷ってるの?もうすぐ制限時間の5分だよ?」

花陽「頼みの時計がなくなっただけでびくびくしちゃって。」

花陽「それでも経験で勝ってきた人なの?」

花陽「そんなんだから会長に見捨てられるんだよ。」

上条「なんだと!」

花陽「はははははは」

上条(こいつ、この女、ころす! ぶっころす!)

上条は皇帝を出そうとする

・・・いや、落ち着け、早まっちゃダメだ。
これこそ奴の手かもしれん。煽って僕に勝負させる気だな。
挑発に乗ってはいかん

上条、ようやく1枚目を提出。受けて花陽も1枚目を提出
オープン
市民と市民で引き分け。しかし花陽は一歩上条を追い詰めた。

花陽「出せないでしょ?わかっていても、やっぱり1枚目に皇帝は出せるわけない。」

花陽「皇帝側は有利だと考えるあげく、結局保険をうってくる。」

花陽「あんたはその程度の人間なんだね」

上条(開き直りやがって。)

お前みたいなクズと違って、僕には何年も積み上げてきたものがある。
勝たなければいけないんだ!

2枚目、花陽が先にカードを出す。

上条(・・・ん? あれは、血痕?)

そうか、カードに血がついた。拭いたあとの拭き残しか。
ということはあのとき血がかかったのは第11戦で使った2枚。
使わなかった3枚は奴の膝の上にあって、血はかからなかった。
つまりあのカードは市民か奴隷か。2分の1の確率で奴隷。

上条(来い!奴隷!)

上条、迷わず市民を選択。

オープン
しかし2枚目も両者市民、引き分け。

ギャラリー「おー!」

上条(違ったか。)

だが、ということは次に血のついたカードが来たら、必然的にそれが奴隷だな。
生き残った!血のついたカードを待って、そのときに市民を出せば勝てる!

いや、待てよ。いくらカードに血がついていたとは言え、奴隷にもついているとは限らない。
血はあくまで拭き残し、奴隷カードの血は綺麗に吹いていたかもしれん。
もし奴隷カードに血が残ってなかったら・・・

3枚目、両者カードを提出。
オープン
市民と市民、三度引き分け。

運命の4枚目、これですべてが決まる。

4枚目は花陽の先出し、生死をわける二者択一。天国か地獄。

花陽(死んでもいい。自分を捨て、運命の1枚!)

上条(お!)

上条(来たー、血だ!やっぱり奴隷カードにも血の拭き残しがあった!)

これは奴隷だ!
やった、勝った! この市民で奴隷を殺して勝ちだ!
わっはっはっは
バカでよかった。死ぬ、お前は死ぬのだ!
耳を削ぎ落とした気迫はすごかった、褒めてやる。
しかし結局はその大量出血が仇、墓穴を掘ることになったな。
しね!・・・


カードを提出する直前、上条の脳裏に浮かんだ疑念

いや、こいつは大量出血で自滅するようなバカだろうか?
この血の拭き残しに、こいつが気づかないなんて、あり得るか?
ましてやこの血、花陽自身が撒き散らし、自分で拭き取ったもの。
その上で残った血痕を見逃しているというのか?
ありえん、こいつほどの女が、血に拭き残しに気づかず、こんな凡ミスをするわけがない。
この勝負は命がかかってるんだ。負ければ死が待っている。
それこそ血の拭き残しなど、慎重にチェックするはずだ。

この僕をここまで追い詰めた女が、あっけなくこんな凡ミスで自滅するなど、絶対にありえない。
例えれば、高校野球で強豪を次々破り決勝まで来た学校が、決勝でも優勝候補と接戦を演じながら最後に振り逃げ満塁ホームランで負けるようなものだ。

そう考えると血痕のついたカードが僕が後出しの2枚目、4枚目で出てくるというのも出来すぎ。
奴隷側で何の勝算もなく23ミリもかけた勝負をするとは思えん
そうか、盛ったな。この勝負に毒を盛った。間違いなく罠を仕掛けた。

この女、何か策をうち、僕の失策を待っている。
なかなかやるじゃないか。この女は人を騙す悪魔だったか。
ということはあの血痕は故意に残したもの。奴の戦略、罠。

血を垂らしたところを僕が見逃すわけがない。
そうか、あのとき既にカードが入れ替わっていたのか。
僕が会長の話に気を取られてる隙に、奴は手の中に市民カードを仕込み、テーブルの奴隷カードとすり替えた。
出血はその後。あのとき血がついたのは市民と奴隷ではなく、2枚とも市民。

こいつ、こんなとんでもないトリックを、この土壇場で・・・
危なかった。ここで市民を出したら4枚連続引き分けで、僕の負けになるとこだった。

上条は皇帝を提出

上条「ふふふ」

上条「惜しいな花陽ちゃん。君はよくやったよ。」

上条「さすがはじゃんけん大会の終盤まで生き残り、鉄骨渡りを生き残っただけのことはある。」

上条「しかし残念ながら僕には一歩及ばなかったな。」

上条「お前の盛った毒は漏れた。なかなか見事な盛り方だったが、服毒には至らなかった。」

上条「え?」

上条「しね、悪魔が!」

上条は皇帝カード

上条「わっはっは」

花陽「・・・」

花陽「上条、私が悪魔に見えたの?」

上条「悪魔だろ!」

花陽「そう、だったらあんたが悪魔なんだよ。」

上条「なんだと?」

花陽「この心理戦は鏡を覗き込むようなもの。」

花陽「相手の心を読んでいるつもりが、自分ならどうするかという自己への問いかけになり、気づけば自分自身を見てるだけ。」

花陽「つまり私が悪魔に見えたなら、あんたこそ悪魔なんだよ。」

上条「それがお前の最期の言葉か? そんなことどうでもいい。」

上条「もうしね。聞きたくもない。醜い泣き言など。」

上条は23ミリ進める準備をする

花陽「いや、これはお礼だよ。」

上条「は?」

花陽「悪魔でいてくれてありがとう。」

上条「ん?」

花陽「疑ってくれてありがとう」

奴隷は二度刺す!
花陽がカードを開く。それは奴隷!

上条「な、なななな・・・」

上条「なんだって!」

ギャラリー「・・・やったー!」

晋司「花陽、やったなー!」

ギャラリー「本当すごい。まさか勝てるなんて・・・」

ギャラリー「花陽さん!」

上条「そんなバカな!」

上条「どうして奴隷?すり替えたんじゃないのか?」

上条「血が飛び散る前に・・・」

花陽「残念だけどそうじゃない。」

花陽「私がしたのは第11戦で使った市民と奴隷のカードを手元に置き、その横に市民を置き、そのまま膝に戻した。」

花陽「つまりすり替えてなんかいない!」

上条「そんなバカなことがあるか!」

上条「僕が血に気づいただけで、その後疑わなかったらどうしたんだ?」

上条「僕がカードを血をただのミスだと思っていたら、お前はただ僕に奴隷の目印だけを与えて負け、死んでたじゃないか!」

花陽「簡単だよ。私は信頼したんだよ。」

上条「え?」

花陽「あの高木って会長がなんと言おうと、私はあんたを優秀だと思ってる。それも飛びっきり。」

花陽「そんな男が、まずこの血に気づかないはずがない。」

花陽「絶対に気づく。優秀なんだから。」

花陽「そしてその血をそのまま信じたりしない。必ず洞察する。見抜く。こちらの作為を。優秀なんだから。」

花陽「優秀だから気づいたのちに疑うんだ。」

花陽「そしてあんたが私を優秀だと思ってくれると信頼したんだよ。」

花陽「だから私が単なるミスをするはずがないと信じると、私は信頼してたよ。。」

花陽「私にカードを入れ替えるチャンスがあったことに気づく。そこにたどりつけば、私の疑わしい動きにも気づき、ほくそ笑む。」

花陽「そうなればもう勝ちを疑わない。」

花陽「だって私のことを一応優秀だと思っても、所詮自分自身よりは格下だと思ったんだからね。」

花陽「優秀な自分がまさか負けるなんて思うわけない。」

こうして12戦に及ぶEカードが終わった。
通算では5勝7敗で負け越したが、ラスト2戦奴隷側で23ミリの勝負で連勝し、実質花陽の勝利。
花陽は生き残る。そして2150万円を得る。

高木「素晴らしい!花陽ちゃんは実に素晴らしい。」

高木「それに引き換えこの男は、とんだ恥さらし。とんだ醜態だ。」

高木「約束通り50ミリだ。お前は今から鼓膜の先、内耳や脳まで破って死ぬのだ。」

高木「最期に何か言い残すことはあるか?」

上条「死ぬのは嫌だー」

高木「ほほう、あんなに他人の死を見てきていながら、自分が死ぬのは嫌だとな。」

高木「それでは行くか、50ミリ。」

上条「待ってくれ、頼む、やめてくれ!僕を殺さないでくれ!」

高木「殺さないでくれ?お前に殺された人間が聞いたらどう思うかな?」

上条「お願いだ、何でもするから!一生地下で強制労働でもいいから、殺さないでくれ!」

高木「しかしがっかりだな。お前も命乞いをするのだな。」

高木「さようなら!」

会長のリモコンのボタンで50ミリの針がスタートした

上条「うわー!」

さっきまで花陽の耳に鳴り響いていた嫌な轟音が上条の耳に鳴り響く。
あっという間に30ミリに達し、鼓膜を破った。

上条「きゃー!」

耳から血が溢れる

そして内耳、中耳を破って脳に達し、50ミリの針は止まった。

悶絶し、のたうち回る上条
そして針が動き出してからわずか数分で、上条恭介は死んだ。


高木「わっはっはっは」

高木「いっひっひっひ」

高木「実に素晴らしい死に方だった!」

高木「今日は俺の人生最良の日だ!」

花陽「上条・・・」

花陽「私、泣いてる・・・」

花陽「バカな。なんで私泣いてるの・・・」

花陽「こんな男、死んで当然のはずなのに・・・」

そして花陽は2150万円をもらって外の世界に帰ることにした。
帰ろうとしたのだが・・・

花陽「この人、この後どうするの?」

高木「警察には自殺として処理してもらう。」

花陽「そんな勝手な!あんたが殺したんでしょ?」

花陽「現行犯だよ!私が証人なんだから。」

高木「もしこのことを警察に言ったらお前が強盗に入ったと警察に言うぞ。」

高木「こんな大金を持っていたら疑われるのはお前だろう」

・・・
晋司「外に行く前に、地下帝国の医療施設に行っておこう。」

晋司「今なら耳もくっつくかもしれない。」

花陽「いろいろありがとう。」

晋司「いいんだよ。むしろ感謝するのは俺たちだ。」

モブ「本当に嬉しかったんだよ。花陽さんが一矢報いてくれて。」

モブ「そうです」

モブ「ありがとうございます。」

モブ「俺たちもいつか地下を脱出して外に出るから、そのときはまた会いましょう。」

モブ「お元気で」


花陽(私は間違っていた。)

花陽(上条、あいつも私たちと同じ被害者なんだ)

第14話 終わり

第4章 会長編
第14話 最終決戦

花陽「私は間違っていた。」

花陽「上条は本当の敵じゃない。」

花陽「倒すべき相手は、上条じゃなかった。」

花陽「あいつも私たちと同じように、虐げられてきたんだ。」

花陽「あの男、高木順一朗に。」

花陽「本当は上条恭介も被害者。真の敵は高木順一朗なんだ。」

花陽「高木を倒さなければ、ツバサちゃんや音無さんたちの仇をとったことにならない。」

晋司「わからなくもないけど」

花陽「私はまだ勝ってない!」

晋司「何言ってるんだよ。十分勝ってるだろ。2000万円もの大金を手にしたんだし。」

花陽「こんなの高木を楽しませるためのショーを演じた出演料にしかならないよ。」

晋司「出演料でいいじゃないか。金は金だろ。」

花陽「お金の問題じゃない。名誉はお金じゃ買えない。」

花陽「私は最強の相手を倒したかったんだ。死んだツバサちゃんや音無さんのためにも。」

花陽「だからそのお金で、もう一度あの男と、全てを賭けて・・・」

晋司「やめとけよ。これだけの大金、奇跡的じゃないか。」

晋司「だいたい、高木と勝負して勝算でもあるのか?」

花陽「それは・・・」

花陽(私も、晋司君も、ツバサちゃんも、音無さんも、あの上条って男も含めていい。)

花陽(みんなあの高木順一朗に虐げられた被害者だ。なんとしてもあいつを倒したい。)

花陽(でも勝算も何もない・・・)

花陽(一体どうすれば・・・)

虚しい感情によって溢れ出る血。

晋司「花陽、大丈夫か?」

花陽「タオル・・・」

晋司「もうないんだ。上条の遺体処理に使っちゃったからな。」

花陽「じゃあ何か代わりになるもの・・・。仕方ない。ティッシュを大量に・・・」

花陽「一箱丸ごとでいい。」

晋司はティッシュの横を開けて一箱分のティッシュを取り出す。

晋司「これを・・・」

晋司「魔法少年の力でとりあえず止血はできる」

そのとき、花陽はひらめいた。高木順一朗を倒す方法を。

花陽「私、さっきから考えてたの。このティッシュの箱、うまく使えるんじゃないかって。」

花陽「ティッシュの箱の横がこんな風に開くの知ってた?」

晋司「まあ、なんとなく。」

花陽「晋司君はなんで知ってたの?」

晋司「一度ティッシュを一気に配らなきゃならないときがあって」

花陽「そうだよね。そういう稀なことでもない限り、こんな風に開けたりしない。」

花陽「つまり気が付きにくい。ここ、うまく使える気がしたの。」

花陽「で、ティッシュの横の入口、下半分を押すと少し隙間ができる。小さい紙を落ちないように挟むこともできる。」

花陽「その小さい紙を、ティッシュの上の入り口から、取ることもできる。」

横の隙間から入れたものを上の穴から取り出せる。これは願ってもない構造だった。

花陽(でもまだ・・・。このフロアにあって、ここにもある、紙のようなもの・・・)

花陽(そうだ。ペーパータオル。)

花陽(あった。)

花陽「ねえ、何か書くものを持ってないかな?」

モブ「ボールペンならある。」

花陽「これで道具が揃った。」

花陽「見つけた。高木を倒す方法を。」

花陽「向こうのフロアで、高木にゲームを申し込もうと思う。そのゲームとは・・・」

花陽「くじ引きだよ。」

花陽「くじ引きってのはさっきから考えてたことなんだけどね。」

花陽「くじはペーパータオルの細かい紙切れ、くじ箱はティッシュ箱。」

花陽「ティッシュ箱は、未使用のものを使う。未使用のものは黒服の人に持ってきてもらう。」

花陽「そしてフロアで衆人環視の中、開封してもらう。」

花陽「そこにこのくじを100枚ほど入れ、その中にこんな印をつけた当たりくじを1枚だけ入れる。」

花陽「2人で交互にくじを引き、この当たりクジを先に引いたほうが勝ちっていう単純なゲーム。」

花陽「商店街の福引でもお馴染みだけど、通常こういうのは運否天賦だよね。」

花陽「当たりくじが1枚しかないんじゃ、最初はハズレくじを引き合うことになるだろう。」

花陽「でも私は当たりを、一発で引こうと思う。」

花陽「その訳は、最初に仕込んでおくんだ。さっき言った、横の隙間からね。」

花陽「この渡り廊下にあるティッシュ箱全てに、偽の当たりくじをね。」

花陽「誰も気づかないだろうこの横の隙間に前もって当たりくじを入れておき、私が最初にこれを引く。」

花陽「必勝だよ。」

晋司「それってイカサマだろ。花陽だって嫌いなはず。」

花陽「それがどうしたの。相手は大ボス、イカサマもクソもないよ。」

花陽「だいいち、相手だってやってたんだよ。私も1回くらいやったってバチは当たらない。」

花陽「何としてもツバサちゃん、音無さんたちの仇は取る!」

モブ「うまくいくのか?」

晋司「絶対じゃないだろ。偽の当たりクジの他に、正規の当たりくじも入れるんだよな?」

花陽「そうだよ」

晋司「それが高木が先攻、つまり先に引くことになって、もし高木が正規の当たりくじを一発で引いてしまったら・・・」

花陽「そんなの100分の1だよ」

晋司「でもゼロじゃない」

花陽「リスクはどうやったってあるんだよ。そんな小さいリスクにビビって、こんな大チャンス、逃す訳にはいかない。」

花陽「行くしかない!」

モブ「それはいいが、さっき偽のくじをすべてのティッシュ箱に入れるって言いましたよね?」

花陽「うん。疑われないように、ティッシュ箱は黒服に選ばせたいからね。」

モブ「それだと証拠が残りますよね。すべてのティッシュ箱に当たりくじが残るって、やばいんじゃ。」

モブ「それはどうするんですか?」

花陽「・・・」

花陽「1人個室に残ってもらう。」

花陽「黒服がティッシュ箱を持っていったあと、残ったティッシュ箱の当たりくじを抜いて、トイレに流す。」

花陽「これで証拠は残らない」

晋司「本当の当たりくじはどうするんですか?」

晋司「花陽さんが偽の当たりくじを引いたあと、箱を確認されたらもう1枚の当たりクジが出てきてしまうじゃないですか。」

花陽「それは・・・」

晋司「やっぱダメだよ。」

花陽「・・・」

花陽「大丈夫、誤魔化せる。」

晋司「ごまかす?」

花陽「耳を貸して」

花陽「うん。大丈夫。」

花陽「さあ急ごう。まずは当たりクジの準備。」

しかしここで問題発生。高さの低い小さいティッシュ箱はメーカーによってはぴったりとのりづけがされていて、隙間ができない。

花陽「そっちはいい。入り口から遠いティッシュ箱を持ってくる可能性は低い。」

こうしてティッシュ箱に次々当たりくじを仕込む。そして残る当たりくじを処分する係を個室に残して、プレールームに戻る。

あの高木順一朗のいる部屋へ。いざ決戦の場へ。


高木「治療は大変だっただろうな。」

高木「でも金があればすべてよし。何しろ2100万だもんな。」

高木「目もくらむような大金。苦しかった分、喜びも大きいだろう。」

高木「こんなときに野暮用を言うのもなんだけどな。」

黒服「これが花陽さんの借金の額です」

もともとの借金にじゃんけん大会での列車での借金1430万円をあわせ、1730万円になる。

高木「あるときに返してもらわないと取りぱぐれるのでな」

高木「いっひっひっひ」

花陽「2000万円といっても、そのうちの半分は私のお金じゃないんだ。」

花陽「1000万円は音無小鳥さんの家族に届けないといけない。」

花陽「私の取り分は1000万円。これだと730万円の赤字だね。」

花陽「これじゃあ私はまた地下に戻らないといけなくなるかもしれない。」

高木「それで?」

高木「何が言いたい?」

花陽「もう一度。もうひと勝負だ!」

花陽「今度はあんたに挑戦する」

黒服「何を言ってるんだ!この御方は会長だぞ。無礼なことを言うな!」

高木「まあまあ。大目に見てやれ。この娘は何もわかってないんだ。」

高木「俺がその気になればお前なんか一瞬で魚の餌だ。」

高木「上条を倒して調子に乗りたくなる気持ちもわかるが、わからないか?俺は少し強運で勝てるほど甘くはない。」

高木「俺に運否天賦で勝てるほどではないぞ」

高木「悪いことは言わん。もうやめとけ。」

高木「1730万払っても、270万残ればいいじゃないか。十分大金。」

花陽「聞いてなかったの?だから音無さんに1000万円を渡す約束が」

高木「そんなの破ればいい。そんな口約束、守る義務はない。」

高木「人は裏切って生きていくもの。お前もじゃんけん大会で感じたことだろ?」

花陽「そんなことない!私は約束はきっちり守る!」

高木「今は興奮状態だからそう言ってるんだよ。普通の暮らしに戻れば、普通の感覚に戻る。そしたらお前も簡単に裏切る。」

花陽「私はそんなことしない!」

高木「まあ勝負を受け付けないわけでもないけどな。どっちでもかまわん。」

花陽「怖いんでしょ。私に負けて恥かくのが。」

花陽「どっかの高校野球の監督が言ってたっけ。格下に負けたら、末代までの恥だとか。」

高木「なんで俺がお前に負けたら恥なんだ?」

高木「強者は相対的な意味で強者だが、すべてに勝てるわけじゃない。」

高木「プロゴルファーがアマチュアとやって全ホール勝てるか? 1ホールくらい負けることだってある。」

高木「たかが1度の負けを恥とか言うのは、お前ら貧乏人の意地の張り合い。悪い癖だ。」

高木「さっき言った高校野球の監督みたいにな」

高木「そんなの恥でもなんでもない。」

花陽(ダブルスタンダードだ。だったらさっきの上条はどうなる?)

花陽(あのとき、1度の負けを許さず、あんな酷いことをして・・・)

花陽(なんて酷い奴なんだ。この人は、部下の失態や敗北には苛烈、あんな拷問も強いるのに、それが自分の番になると、巧妙に手のひらを返して、ごまかしてるだけなんだ。)

花陽(許さない。今まで生きてきた中で一番卑劣な人間だ。)

花陽(こいつに比べたら上条のほうが10倍マシだ。)

花陽(死んでいったツバサちゃんや、音無さんたちも、最後に意地を見せた上条も、高木に比べたら遥かに上だ。)

花陽「離さない。もうひと勝負!」

花陽「仕方ない。わかったよ。」

高木「おい、あれを、Eカードを」

花陽「ダメだよ。それはもう懲り懲り。断る。」

高木「じゃあ将棋か麻雀で」

花陽「ダメ。もうあんたたちが用意するものはお断り。どんな仕掛けがしてあるかわからないからね。」

黒服「なんだと!」

花陽「覚えがないとは言わせないよ。さっきのEカードだって・・・」

高木「なるほど」

高木「じゃあどうするんだ?」

花陽「私に考えさせて」

すぐにティッシュ箱を使ったくじ引きを提案しては、こちら側が用意していたと思われて相手に疑念を抱かせる。
言い出すタイミング、場面、表情がすべて自然に流れなくては破綻。

花陽「ペーパータオル。さっき上条が血を拭くのにつかったペーパータオルを。」

花陽「それと・・・定規。この2つを持ってきて。」

そしてついに花陽のくじ作りが始まる

晋司(うまくいったな。良いタイミングだった。)

晋司(賭け金については言わなかったか。)

これはこの後、黒服が当たりくじが仕掛けられていない、小さいティッシュ箱を持ってきた場合に備えてのこと。
仕掛けのない、運否天賦の勝負になれば、花陽は賭け金の額を低く設定する。

晋司(何で勝負するかを言わなかったのもうまい。先にくじ引きだと言ったら、くじは向こうが用意すると言って、レポート用紙とかノートの紙を出してきたかもしれない。)

晋司(そうなったらティッシュ箱の仕掛けは無意味になる。)

晋司(当たりくじも、相手が星だの×だのにすると言われたら万事休す、破綻だ。)

晋司(だから何も言わずまずくじ作りなんだ。)

花陽は丸印を書き損なったふりをして床にばらまいている。正規の当たりくじをごまかすために

・・・
花陽「当たりくじを何枚か床に巻いておく。書き損なったふりをして。」

花陽「そして私は当たりくじを引いた瞬間に派手に箱を掲げて振り回す。」

花陽「当然くじは部屋中に散乱する」

花陽「その中に正規の当たりくじがあるでしょう。見つかったらまずいけど、元々床に何枚か当たりクジがあったとなれば、ごまかせる。」

花陽「それが2枚だったか、3枚だったかなんて相手も覚えてない。言い逃れられる。」

・・・
そしてくじが完成した。

花陽「1枚の当たりくじと、大量のハズレくじ。これをまず、交互に引く。」

花陽「当たりを先に引いたほうが勝ち。至ってシンプルだ。」

花陽「あとは何にくじを入れるか。」

高木「何か袋を用意してやれ」

持ってきたのはビニール袋

花陽「ビニール袋はダメ。中身が透ける。」

高木「じゃあ鞄で」

花陽「それはあんたの持ち物だから、仕掛けがあるかもしれない。」

黒服「貴様・・・」

花陽「もっと別の・・・」

花陽「・・・あれだ。」

花陽「あのティッシュ箱を使おう。」

高木「ほう。」

花陽「でもそれじゃなくて、まだ開封されてない新品のヤツを。」

黒服「会長」

高木「持ってきてやれ」

黒服「はい。」

晋司(ここまでは花陽の思惑通りだ。問題はあの黒服が、くじを仕込んだ大きい方のティッシュ箱を持ってくるかどうか・・・)

晋司(こればっかりは運に頼るしかない・・・。もし小さい方だったら・・・)

箱は大きい方だった

花陽(よかった。)

花陽「待って。開ける前に見せてよ。」

花陽「まさかとは思うけど、細工してる可能性だってある。」

黒服「お前どこまで・・・」

高木「見せてやれ」

花陽が箱をチェックし

花陽「じゃあ、あんたも確認しなさいよ」

晋司(どうしてそんなことを・・・。それで仕掛けを見破られたら・・・)

高木「問題ない」

高木「それでは開封する。」

晋司(これも作戦か。花陽だけが調べればあまりにも不自然だが、高木にも調べさせて双方が確認することで、自然に思える。)

晋司(そして重要なのは開封前に確認したこと。高木が開封後の空のティッシュ箱を覗くと言い出したらくじのし掛けが簡単にバレてしまう。)

晋司(確認するのは開封前しかない。)

晋司(そして高木にも確認させて、問題ないと言わせた。)

黒服がティッシュの上の入り口を開け、ティッシュを1枚ずつとって開封した。

晋司(完璧だ。さすが花陽だ。)

そして開封が完了し

花陽「用意はできたよ。会長さん」

花陽(思えば私にとって、くじ引きにはいい思い出がない。)

花陽(商店街の福引ではいつも残念賞だし、宝くじでは1万円すら当たったことがない。)

花陽(高1のときの学園祭で講堂使用権をかけたくじ引き。にこちゃんが外して講堂を使えなかった。)

花陽(2年生、3年生のときも私がくじを失敗して学園祭では一度も講堂でライブをしたことがない。)

花陽(いつもくじ引きで泣いてきたんだ)

花陽(でも今日は勝てる。くじ引きとの嫌な思い出ともおさらばできるんだ。)


第15話に続く

第15話 執行

高木「ダメだな。これは。」

高木「おもしろくない。ただのくじ引きなんて。単純すぎる。」

花陽「え・・・」

高木「とはいえここまで楽しませてくれた花陽ちゃんの頼みだから、条件付きで勝負を受け付けよう。」

高木「条件は3つある。」

高木「条件の1つ目、団子の禁止。こんなくじは丸めてしまえば指の間や爪の間にも隠せる。」

高木「よってこんな丸まった状態の当たりくじは認めないことにする。」

高木「これを認めてしまうと引いたふりをしてあらかじめ髪の毛とかに仕組んでおいたものを当たりくじとして持ち出すこともできる」

高木「分かるよな?」

花陽「はい」

花陽「認めます。団子は禁止で。」

高木「あとくじを引くときは当然腕をまくり、手のひらを広げてチェック。」

高木「文句ないよな?」

花陽「はい」

高木「条件の2つ目。先手は俺に譲ってくれないか?」

花陽「え?」

高木「最初にくじを引くのは俺にしてほしい。」

晋司「何言ってるんだ。そういうことは普通公平にじゃんけんとかで決めるものだ。」

高木「そうなんだが、ここまで俺は花陽ちゃんの要望を受け入れてきたんだ。」

高木「そちらが用意したくじでの勝負を受け入れた。」

高木「それなのにもし少ない確率とはいえ初っ端に花陽ちゃんが当たりくじをひいてしまったら、俺は1度もくじを引かずに終わってしまう。」

高木「あんまりじゃないか。それだけは避けたいんだ。何としても。」

花陽「・・・」

高木「嫌なら俺は降りる」

花陽「え?」

花陽(私が先攻を取れると決まってたわけじゃないし、1度くらいなら・・・)

花陽(一発で当たりくじを引ける確率は100分の1。)

花陽「わかった。先手はあんたに譲る。」

高木「ほほう。理解してくれてありがたい。」

高木「最後に3つ目、これは賭け金についてだが。」

高木「花陽ちゃんの持ち金、2100万。」

花陽「うん、これを全額賭ける。」

高木「足りないな。」

花陽「足りない?」

高木「足りない分は俺が調整する」

高木「ずばり、1億はどうだ?」

花陽「1億!?」

高木「端金じゃ燃えん。こんなくじ引きに1億というのも釣り合わんが、燃えぬギャンブルよりはマシじゃ。」

高木「あれを持ってこい」

黒服「はい。」

晋司「でも花陽の持ち金は2100万円しかない」

高木「そう、金はない。差額7900万、約8000万、花陽ちゃんには金以外のものを賭けてもらう。」

高木「普通1本につきここまでの額はつかないのだが、花陽ちゃんはここまで勝ち残ってきた勇者、クズとは格が違う。」

高木「そこに敬意を表して、破格の値をつけよう。指1本につき約1600万だ。」

高木「もし負ければ差額の8000万、その指5本で精算してもらおう。」

花陽「・・・」

ざわっ ざわっ

花陽も、見てる全員も愕然とした。それは指の切断マシンだった。

高木「悪くないよな。」

高木「もし花陽ちゃんが勝てばさっきの紙フトタッチダウンのようなチケットでの支払いなどケチなことはせず、その場で支払う。」

高木「現金でな。」

黒服が1億円の現金の束を持ってきた

高木「余程のエリートか幸運な人間か、人生何十年者月日を費やしての労働、そのいずれかを注ぎ込まねば手にできない金、1億だ。」

高木「これが一瞬で花陽ちゃんのものになる。勝てばな。」

高木「無論、負けたら無一文の花陽ちゃんは地下に戻ってもらうからな。」

花陽(1億円・・・。これだけあれば借金を返して、音無さんへの1000万円を払っても、8000万円以上。)

花陽(私だけでなく、晋司君、お兄ちゃんも地下から出してあげられる。)

花陽(私が何十年働いても手にできないようなお金。これだけあれば、やり直せる。)

花陽(最初からやり直して、私の夢だった人生を生きれる。)

花陽(でも負けたら、指5本を失う。根本から5本・・・)

花陽(指をなくす上に2100万円を取られ、また地下に戻る。残るのは借金と痛み、そして重労働。)

花陽(いや、行くしかない。)

花陽(怖いのは、高木が1回で当たりくじを引いてしまうこと。ゼロじゃないけど、でも限りなくゼロに近い。)

花陽(そんな不運さえなければ、勝てる。)

花陽「大丈夫。私は勝てる。」

晋司「でももし負けたら・・・」

花陽「それはわかってる。負ける不運を考えないわけじゃない。」

花陽「でも1億円だよ。これだけの金額を目の前にして引き下がれるわけない」

花陽「この勝負、受けるよ。」

花陽「私は指を賭ける。」

花陽「そして負けたら地下に戻る。」

高木「わっはっはっは」

高木「そうでなくちゃな。」

高木「花陽ちゃんは最高だ。俺は今日一番燃えている。」

花陽(高校のとき、学園祭の講堂使用権のくじ引きを3年連続で外した。)

花陽(生まれてから一度も勝ったことがないこのくじ引きというゲームに、今日こそは勝つ!)

高木「さあ用意だ。花陽ちゃんの左手の指に・・・」

花陽の左手に装置をセット。これで動かせなくなった。

高木「おもしろいな。常軌を逸している。たかだか即席の小さい紙切れのくじ引きに、片や1億、片や2100万と指5本を賭けようというのだ。」

残った右手で花陽がくじとティッシュ箱に入れ始める。

高木「なあ、この当たりくじだけは2人で入れようじゃないか。」

高木「入れたふりをしてどこかに忍ばせるかもしれん。」

晋司「な、何を言ってるんだ」

花陽「その通りだね。2人で入れよう。」

花陽「くじを入れる前に手のひらを見せ合う約束だよ」

高木「そうだな」

こうして2人が手のひらを広げる

高木「では問題ない」

当たりくじを箱に投入。ハズレくじも全て入れた。

黒服「混ぜます。」

黒服がティッシュ箱を揺らす

花陽(大丈夫。これくらいなら落ちないはず。落ちなければ勝てる。)

花陽(あとは高木が一発で引かなければ・・・)

花陽(それを祈るのみ)

高木「それでは1回目、先手の俺から引く。」

高木「わっはっはっは」

高木「いっひっひっひ」

高木がくじを引く

花陽(引くな、お願い、引かないで・・・)

花陽(何でもいい。ここ1回を回避すれば、勝てるんだ・・・)

花陽(神よ!)


花陽(勝てばすべてをやり直せる。そして夢の様な人生が待ってる・・・)

花陽(神に慈悲があるなら、こんな悪党より私を救うべきだよ。)

花陽(引かないで、引けない・・・、いや引いちゃダメなんだよ・・・)

花陽(外せ・・・)

こうして高木が引き終わった。

高木「おや・・・。」

高木「おやおやおや・・・」

花陽(外れだ。外れに決まってる。)

高木「花陽ちゃん、これだから勝負は恐ろしいな。」

花陽(え?)

高木「1回目に当たりを引く確率は何十分の1だ。だが俺みたいな王が引くとそれが起こりえるんだよな。」

高木(う・・・・やだ・・・・いやだ・・・)

高木「残念だな、花陽ちゃん。君は1回も引けなくて。」

高木「1回の表でゲームセットだ」

高木がくじを見せる。丸印があった・・・
高木は1回で当たりを引いた。

花陽(わーーーー・・・・)

花陽「ウソでしょ・・・。ウソだよ・・・。これは夢だ・・・。悪い夢だ・・・。」

高木「現実だよ。」

高木「ありうりゅもっとも可能性の小さい、そんなシーンが現実でーす!」

花陽「なんで当たっちゃったの・・・」

高木「小泉花陽、鼻摘むー!」

晋司(本当に引いた、一発で。)

晋司(何十分の1、100分の1という確率なのに、それをモノともしなかった。本当にいるんだ、こんな人間。)

晋司(絶対的強運の持ち主、怪物が・・・)

高木「ティッシュ箱を胴上げだ」

高木「いっかーい、にかーい」

高木「なあ、持って来なさい。せめて止血の用意だけは万全に。」

晋司「花陽・・・」

高木「さあ、執行だ・・・」

黒服がナイフのロックを外す

モブ「嘘だろ」

モブ「本気かよ」

花陽(ダメだ。失う・・・。失ってしまう・・・。この指を・・・)

花陽(動く・・・今は動くけど・・・それもあと少し・・・)

花陽(嫌だ・・・。本当は助かりたい・・・。)

花陽(これが死刑執行直前の死刑囚の気持ちなのかな。)

花陽「嫌だ・・・待って・・・」

花陽は大粒の涙を流して黒服の腕を止めようとするが・・・

花陽(ダメだ、やっちゃいけない。)

花陽(この男は間違っても許してくれない。わかりきったこと。なら命乞いなどしちゃいけない。)

花陽(耐えるんだ。)

花陽「やって。」

晋司「花陽・・・、どうして・・・」

花陽「いいんだよ。私は負けた。」

花陽「受け入れる。負けを。」

高木「さすが花陽ちゃん、俺の見込んだ女だ。」

高木「おい、花陽ちゃんの右手を抑えろ。」

黒服「はい。」

花陽(受け止めるんだ。この痛み、この恐ろしさを。)

花陽(目はつぶらない・・・)

黒服がナイフを下ろす。

花陽「わーーー」

ギャラリーたちが目を覆う中・・・

(ガチン!)

勢い良くナイフを下ろし、花陽の左手の指5本を切断。
こうして悪夢の夜に終止符が打たれた。花陽の血によって。

朝が来た。傷を追った花陽と、敗者たちの朝が。しかし地下帝国は一日中真夜中だ。
花陽は地下に戻った。

・・・
高木「ティッシュ箱を胴上げだ」

高木「いっかーい、にかーい」

・・・
花陽「胴上げなんて、なんて嫌がらせ・・・」

花陽「でもなんで・・・」

花陽(当たりくじをばらまいて、証拠を有耶無耶にするのは私だったはずなのに・・・)

花陽(・・・まさか)

晋司「なんであの会長は1回目に当たりを引けたんだ。」

花陽「気づいてたんだよ。私の仕掛けに。」

花陽「気づいてしまえば、高木が引くこともできる。簡単な事じゃない。」

花陽「そして私と同じように、正規の当たりくじが見つからないようにあの胴上げで床にばら撒いた。」

花陽ちゃん、お前はまだまだ甘いな、という高木の声が聞こえてくるかのようだった。


晋司「高木は一体いつから気づいてたんだ。花陽の仕掛けに。」

花陽「私の方から勝負を持ちかけてきた時に勘付いて、私が2100万円を賭けると言ってきた時にそれが強まり、あいつが賭け金を1億円に上げ、私がそれを受けた時、確信に変わった。」

花陽「私と上条のEカードを見て、高木はここ一番で私が運否天賦で戦ってないこと、重い勝負では策を練って勝算を作る傾向に気づいてたんだよ。」

花陽「だから高木は賭け金を1億円に釣り上げた。」

花陽「私がそれを受けた時、これはもう間違いなく私が何か策を打って、勝算を持っていることに気づいた。」

花陽「そしたらこの手の仕掛けの方法は2種類しかない。」

花陽「箱に仕掛けるか、抜いたふりをして別のどこかから当たりくじを持ってくる。」

花陽「高木は最初に条件としてくじを丸めるを禁止して、私がどこかから当たりくじをでっち上げる作戦を封じた。」

花陽「そのとき私があまり動揺していないのを見て、作戦は前者、箱に仕掛ける方だと確信。」

花陽「そして箱の何処かに当たりくじを仕込むとしたら、未開封のティッシュ箱なら、底か、左右横の3面しかない。」

晋司「なんて恐ろしい奴だ。全てお見通しだったってことか.」

花陽「これは敵わないよ。私は負けるべくして負けた。」

花陽「バカだった。調子に乗りすぎた。上条に勝利したところでやめるべきだった。」

花陽「やめていれば私は生還することができた。2000万円は借金で消えても、外に出ることができた。」

花陽「なのに、限度を知らずに、身の程知らずに、調子に乗ってしまった。」

晋司「今さらそんなこと言っても仕方ないだろ。気づくのが遅かった。」

晋司「耳はともかく、指はくっ付くかどうか。仮についても、まともに動くかどうか・・・」

花陽「私って・・・ほんとバカ。」


花陽、絶望の城、地下帝国から脱出の夢、叶わず。
報われぬ終止符、バッドエンドで幕を閉じた。

ファーストシーズン(第1期) 終わり

第2期

元ネタは知らなかったんですがめっちゃ面白かったです!
第2期がどうなるのか気になります!

そろそろ書くかな

セカンドシーズン
第5章 続・地下帝国編
第16話 チンチロリン

こうして耳と指の治療はなんとか終えたものの、再び地下に落ちた小泉花陽。

借金は最初の借金と列車の借金の1730万円、それに加え耳や指の治療で2000万円以上になっていた。

あの新幹線車内でのじゃんけん大会から1年、つまり地下に落ちてから1年になる。
あれ以来まともな食事をとってない。

花陽「でもご飯が、白米があってよかった・・・」

花陽「白米がなかったら私、3日も持たなかったです。」

晋司「そうだよな。白米がなかったら花陽死んじゃいそうだな」

晋司「ニューヨークに行ったとき、3日くらい白米を食べなかっただけで泣いちゃったってお前の友人が言ってたし。」


毎月9万ペリカの給料を少しずつためて借金を返そうと思っても、給料日の食べ物の誘惑でつい使ってしまい、貯められない。

花陽「1ヶ月9万ペリカ、9000円、2000万円貯めようと思ったら・・・」

花陽「でも確か1日2000円ずつ借金を返済してるから、1ヶ月6万円。だから合計1ヶ月69000円。」

花陽「20,000,000を69,000で割ると・・・」

私の計算能力では暗算できないが、答えは約290ヶ月。24年になる。

とても24年も毎日重労働、ぜいたくなしで耐えられるわけがなかった。

そこに班長の中野梓

梓「給料の前借りってのはどうかな?」

梓「6万ペリカまでなら貸せるよ。」

花陽「そんなことしたら来月もっと減る」

梓「そんなの補えばいいよ。」

梓「花陽ちゃんって勝負事に強いんでしょ?だったら今夜あたり、ゲームで勝負ってのはどう?」

梓「地下で繰り広げられる、サイコロギャンブルゲーム、チンチロリン。」

花陽「私はやらないよ。勝負事に弱いからこんなところに来たんだよ。」

梓「自信ないの?」

梓「花陽ちゃんはすごい人なんでしょ?噂じゃ名門の音ノ木坂学院出身で、高校生のとき、スクールアイドルの全国大会、ラブライブで優勝したとか。」

花陽「そんな昔の話関係ない。」

花陽「それに音ノ木坂学院は私の学年は1クラスで定員割れしてて、廃校になりそうなほどだったんだよ。」

梓「その廃校の危機を救ったのも花陽ちゃんたちスクールアイドルだったんでしょ?」

花陽「今の私にあのときの輝きはないよ。」

梓「それに、こないだは粕壁学会の大幹部を倒したとか、会長相手に1億円張ったんだってね。」

花陽「関係ないよ。結局高木会長に負けて、こんなところにいるようじゃ、負け組もいいところだよ。」

梓「ここは負け組中の負け組、人生の底辺、滑り台の最下層の人ばかりだよ。」

梓「あたしも高校生のときはお茶飲んだりお菓子食べたりばかりしてる先輩とだらだら過ごしてたしね。ギターが得意だったけど結局その才能も生かせなかったの。」

梓「それに比べたらラブライブで優勝した花陽ちゃんってここではナンバー1なんじゃないかな。」

梓「ここの連中ときたらスケールの小さい甲斐性なしばっか。」

梓「せっかく勝負してもちまちま100ペリカとか、小さい金額しか張らないから盛り上がらないし、つまんない。」

梓「班長としてはみんなが楽しんでくれればそれでいいけど、あたしはもっと熱い勝負がしたい。」

梓「その点花陽ちゃんみたいな人は理想だね。もちろんあたしとしては花陽ちゃんに胸を借りるつもりなんだけ」

梓「生活苦しいんでしょ?6万ペリカ借りて、ゲームに勝って今夜中に返したら金利はなしにするから。」

梓「花陽ちゃんの高校生のころの自信を取り戻すいいゲームだと思うよ。」

花陽(確かにそうかも。このまま貧乏生活続けてたら、給料日にまた無駄使いしそう。)

花陽(それより6万ペリカ借りて、今日のゲームで少しでも返せば・・・)

花陽(もちろん負けたらさらに最悪な状況だけど、私は高木や上条を相手にしてきた。じゃんけん大会でも最後の最後まで勝ってた。四ノ宮君に裏切られてここに来たわけだけど。)

花陽(今回の相手は高木や上条はおろか、じゃんけん大会の面子とも程遠い人ばかり。こんな人に私が負けるわけない。)

梓「あ、そうだ。今日から鳩山晋司君もこのゲームに参加するんだよ。」

花陽「へー、晋司君も出てるんだ。」

梓「どうやらあなたのお兄ちゃんみたいだけど、あなたと苗字が違うのよね。」

梓「なんで苗字が違うのか不思議だけど、そこは難しい事情がありそうだから聞いちゃいけないのかな。」

花陽「そうだね。」

花陽「今夜中に返したら金利なしなんだね?」

花陽「その話乗った」

梓「そう来なくっちゃ」

梓「ねえ、三浦、如月、大和、準備よ。」

そうして

梓「本日のゲーム大会、開幕!」

チンチロリン大会は、隣の6班の男子のほうが多く参加してるようだ。

花陽「三浦あずささん、ここに参加してたんですか。」

あずさ「1年ほど前、ここに来た直後からね。またあんたと勝負できて嬉しいわ。」

あずさ「ここでは通称ダブルあずさって呼ばれてるよ。」

梓「本日の初参加は小泉花陽ちゃん。チンチロリンの経験はあるの?」

花陽「初めてです。」

梓「じゃあルールを説明しよう。」

梓「チンチロリンはサイコロを3つ丼に投げ込んで、出た目で勝ち負けが決まる。」

梓「サイコロを振るのは1人3回まで。」

梓「一番最初に親が振る。そして左から順に子が振る。」

梓「親と子、どちらの目が強いかで金が行き来する。親対子の勝負。」

チンチロリンは2つが同じ目を出して初めて目として成立する。
2つの目が3、1つの目が4なら出目は4だ。
出目は6が最も強く、1が最も弱い。
強い目を出したほうが勝ち。張った分の金額を得る。

3つの目がバラバラなら目なし。目なしは3回振って目なしなら負けが確定。張った金を失う。
しかし3つバラバラの目にも特例がある。

1つは目が4と5と6。この状態をシゴロと呼び、2倍付け。張った金額の2倍を得る。
もう1つは1と2と3。この状態をヒフミと呼び、倍払い。張った金額の2倍を払うことになる。

梓「3つの目がすべて同じならゾロ目。2から6のゾロ目は3倍。」

梓「最も強いのが1のゾロ目、ピンゾロで5倍付けだよ。」

花陽「5倍・・・」

梓「まあ滅多に出ないよ。」

梓「そして最後に、サイコロが丼から溢れたらションベンと言って、無条件で負けとなる。」

梓「ションベンを出したらサイコロは振れない。最初にこぼしたら、あとの2回は振れないの。」

梓「あと公式ルールでは親が6の目かシゴロ、ゾロ目なら親は総取り、子はサイコロを振ることはできないってことになってるけど、ここではそれはなし。」

梓「親がどんな目を出しても子はサイコロを振ることができる。」

梓「それから親はパスできる。」

梓「親は基本的に左回りだけど、パスすることも可能。パスは何回でもできる。」

梓「そして親を続けられるのは2回まで。ただし親が1回目で一の目か、ヒフミか、目なしか、ションベンを出したら即交代。1回で交代もある。」

梓「それと賭けの上限は2万ペリカまで。ただし親が受けるというなら上限なし。」

梓「大きく張りたくなったら私が親のときは受ける。」

花陽「まあ、そんな額賭けられないよ。」

梓「それでは私の親から始めるよ。さあ張って」

毎回班長中野梓の親から始まる

花陽の張り、最初は100ペリカ。

中野梓の一投目、出目は5。

梓「いきなり強い目で悪いね」

続いて子の一番手、三浦あずさ。出目は4。

梓「あー、惜しい!」

子の二番手は晋司。ヒフミ、倍払い。

晋司「あー、倍払いかよ」

梓「ついてないね。」

次々回して、そしてついに花陽、初振り。
その一投目!

初っ端でいきなり出目は6

花陽「やった!」

梓「さすが花陽ちゃんだね。張りが100ペリカで助かったよ。」

花陽(確かにせっかく勝っても張りが100ペリカじゃね。)

花陽(まあ私初心者だしまだあまり賭けられない)

花陽(というよりこれは親対子の勝負だから、むしろ子より、親でいかに勝つか。)

花陽(逆に言えば、親のときいかに負けないか。)

その後一進一退の攻防が続く。
何人かは親をパスする。
しかし張りが少額では勝っても嬉しくない。逆に負けてもホッとしてしまう。

花陽(こんなの私じゃない。)

花陽(私はもっと強気にならないと。)

そして晋司の親で。

周りは皆100。しかし花陽は・・・

花陽「3000ペリカ?」

晋司「な、なんでだよ? 今まで100だったのに。」

花陽「勝負になんではない。張るときは張るの!」

梓「まあいいじゃん。案外大儲けするかもよ。」

そして親、晋司の目は・・・

あずさ「よりにもよって1なんてついてないわね」

結局晋司はほとんどの人に負け。とはいえここまではみんな張りが小さい。

問題は3000ペリカを張った花陽。

花陽(悪いね、誰かは泣かなきゃいけないのが勝負の世界なんだよ)

しかし

二投続けて目が出ず

花陽(なんで・・・、よりにもよってここで目が出ないなんて・・・)

運命の三投目・・・

梓「ハハハハ、花陽ちゃん、この目はなかなか出ないのに・・・」

花陽の三投目はヒフミ、倍払い。

晋司「やった!」

大張で最悪の目。花陽、6000ペリカの払い。

花陽(悔しい・・・、悔しい・・・)

花陽(でもこれだ、この感覚を味わってこその私!)

花陽、次の張りも3000ペリカ。
勝っても負けても3000ペリカを張り続ける。


次の親は3回目の班長、中野梓。

梓「やった、6の目。3000ペリカ張った花陽ちゃんピンチかも。」

花陽の運命の一投目

「おー!」

梓「うわー、さすが花陽ちゃん!」

なんとシゴロ。倍付。
さっきの6000ペリカを取り戻した。

花陽がんばれ!
高木をぶっ倒してくれ!

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