死柄木弔「俺のヴィランアカデミア」(21)

チュンチュン…

死柄木「……」

死柄木「寝坊した……」

死柄木「あ―――……」

死柄木「学校行きたくねえええええええええ」ガリガリ

死柄木「……」

死柄木「分かってますよ……お父さん……」ボリボリ

死柄木「黒霧!」

黒霧「急ぎましょう。今なら間に合います」ズズズ

死柄木「はぁ――……」

キーンコーンカーンコーン

死柄木「遅刻遅刻――っと」ズズズ

取り巻き「死柄木さんおはよっす!」

取り巻き「今日もイカしてるっすね!」

死柄木「うるせ――……」

不良「来たぞ! 手マンだ」ヒソヒソ

死柄木「は?」ギロッ

不良「うお怖えっ」

担任「みんな揃ってるな!」ガラッ

担任「わが美蘭高校は、表向きは普通の不良学校だが――」

担任「歴代に名を残す優秀な敵たちを多数輩出している、いわば敵学園だ!」

担任「みんなも先輩たちに恥じないよう、ここで学んだことを将来に生かしてほしい!」

担任「今日も狡く! 賢く! 力を合わせてアンチヒーローといこうじゃないか!」

生徒「それ完全にヒーローのノリだろ!」アハハ

死柄木「だり――……」

教師「まずは我々が倒すべきヒーローについて学ぶ必要がある」

教師「なかでも特に有名なのは――」

教師「事件解決数ナンバーワン! 燃焼系ヒーロー、エンデヴァー!」

生徒「色々あくどい噂も聞くけどな」

教師「ベストジーニスト賞3年連続受賞! ベストジーニスト!」

生徒「こいつなら俺でも倒せそうだぞ」

教師「そして、こいつが最もやっかいだ……」

教師「平和の象徴、オールマイト!」

生徒「マジでやべーよな……どうやって倒すんだよ」

教師「こいつが存在し続ける限り、我らヴィランに自由はない……!!」

死柄木「……」

教師「――次に、正しい人質の選び方について……」

死柄木「はぁ……」ポチポチ

死柄木「詰んだ。おしまい」ポイッ

死柄木「動画でも見るか」スッ


リポーター「今日もオールマイトが大活躍です! ヴィラン達を次々と蹴散らし――」

オールマイト「私が来た!」


死柄木「……」

取り巻き「死柄木さん! オールマイトの野郎の動画見てるんすか?」

取り巻き「もしかして、実はヒーローに憧れてるとか!?」

死柄木「声がでけえよ……」

死柄木「……社会のごみが……」

教師A「死柄木弔ですか?」

教師B「ええ。授業態度はあまりよくない不良生徒ですが――」

教師C「ここではむしろ優等生だな」

教師B「妙な人望というか、カリスマ性もあるようです。今後に期待大ですね」

教師A「でも彼、よくオールマイトの動画を見てるんですよ」

教師A「家にはヒーローのフィギュアなんかもあったりして」

教師C「なんだと! ヒーロー堕ちの可能性もあるわけか」

教師B「それは心配ですね……」

担任「……」

黒霧「残念なお知らせがあります」

死柄木「言ってみろ」

黒霧「購買の焼きそばパンが、売り切れていました……」

死柄木「……は?」

死柄木「はぁぁぁぁ~~~~~~……」ガリガリガリガリ

死柄木「黒霧おまえ……」

死柄木「お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ……」

黒霧「すみません」

死柄木「その個性で後れを取るとかどんだけだよ……」

取り巻き「死柄木さん! 食堂行きましょう!」

ワイワイ ガヤガヤ

取り巻き「俺が買ってきますね!」

死柄木「……なあ黒霧」

黒霧「なんでしょう」

死柄木「この中で本物のヴィランになるやつがどれだけいると思う?」

黒霧「そうですね……おそらく大体はチンピラ崩れのようなものかと」

黒霧「平和の象徴を殺すなどと大それた考えを持つ人はいないでしょう」

死柄木「だろうな。つまんねぇ……まるでヌルゲーだここは……」

死柄木「何か面白いこと起きねーかな……」

死柄木「おい黒霧、なんか面白いことやれ」

黒霧「かつてない無茶振りですね……」

黒霧「適当なヒーローを捕まえて引き裂いてみせましょうか」

死柄木「食事中だろうが……使えねーな」

取り巻き「雑魚ヒーローの一人や二人、俺がボコッてみせますよ!」

死柄木「黙ってろ。あ―――つまんね……」

担任「最近ヒーローによってヴィランが捕まえられる事件が多発している!」

担任「みんなも気を付けて帰るように! 解散!」

ガタッ ザワザワ

黒霧「送りましょうか」

死柄木「いい。太るしな……」

黒霧「あなたはもっと食べたほうがよろしいかと」

死柄木「じゃあマック寄って帰ろう」

担任「ああ死柄木! ちょっと来てくれ」

死柄木「?」

死柄木「雄英高校?」

担任「ああ。そこにスパイとして潜り込むんだ」

担任「あそこは多くのプロヒーローと、金の卵である生徒たちが集結している」

担任「情報を盗むことで奴らを袋叩きに――」

死柄木「……それは、あんたの意向か?」

担任「え?」

死柄木「それとも……あんたを雇ってるヒーロー事務所の意向か?」ガシッ

担任「!!」

ボロボロッ

死柄木「あ」

死柄木「あ――やっちまった……どうすんだよくそ……」ボリボリ

黒霧「死体は私が始末しましょう」ズズズ

死柄木「尋問するつもりだったのに……」

黒霧「何故彼がヒーロー側のスパイだと分かったのですか?」

死柄木「気づかないとでも思ったのか……? こいつの偽善臭さは癇に障るんだよ……」

黒霧「しかしここの存在を知っているのに、奴らは何故乗り込んでこないのでしょう」

死柄木「スカウトだよ」

死柄木「俺がヒーローに興味ある素振りしてたからな……」

死柄木「雄英に取り込んでなし崩しに更生させるつもりだったんだろ」

死柄木「平和的交渉か……反吐が出る」

死柄木「ああいう大人にはなりたくないね……」

黒霧「勧誘ですか。考えることはヴィランもヒーローも同じですね」

死柄木「思ってたより簡単に釣れたのに……くそっ!」ガリガリ

死柄木「……あ。そうだ……」

死柄木「黒霧、そいつの死体を貸せ」

―翌日―

ザワザワ…

死柄木「今日も遅刻ギリ……」ズズズ

取り巻き「あ! 昨日先生と最後に会ったのって死柄木さんっすよね!?」

死柄木「知らねーよ……」

教師「静かに!」ガラッ

教師「みんなも知っていると思うが、昨日このクラスの担任が殺された」

教師「死体のそばには『悪党ヴィランに死を!』という血文字が残されていたそうだ……」

教師「我々はこれをヒーロー共からの挑戦状であると受け取る!」

教師「したがって今晩! 各地のヒーロー事務所に襲撃をかける!」

教師「未来ある若きヴィランの命を無残に奪ったヒーローを許すな!!」

一同「オー!!!」

死柄木「へえ……そう来るか……」ニヤ

ザワザワ…

取り巻き「先生を殺すなんて許せないっすね! ボコボコにしてやりましょう!」

黒霧「どうするつもりですか?」

死柄木「さあ……」ポチポチ

死柄木「どっちにしろこの学校はもう詰んだ」ポイッ

黒霧「スパイが殺されたとあっては、向こうも黙ってはいないでしょうね」

死柄木「……スパイは死んだと思うか?」

黒霧「はい?」

死柄木「教師だけで得られる情報には限りがある」

死柄木「生徒側にもスパイを送り込むはずだ。俺ならそうする」

黒霧「つまり……スパイはもう一人いると」

ドゴォォォン

一同「!?」

生徒「な、何だ!?」

ヒーロー連合「ここが悪名高いヴィラン学園か」

生徒「なんでヒーローがここに!?」

生徒「襲撃はさっき決まったばっかりだ……誰かが情報を漏らしたんだ!!」

死柄木「ほらな」

生徒「畜生! やっちまえ――」

死柄木「あーあ、開始即ゲームオーバーだ」

黒霧「どういうことです……?」

死柄木「奴が来る」

オールマイト「私が来た!」SMASH!!!

一同「うわああああああ―――!!!!」

死柄木「はは、全然相手にもならない……無理ゲーだこんなの」

黒霧「早く逃げましょう! 今の私たちでは相手にもなりません」ズズズ

死柄木「ああ……また会いたいな……」ズズズ

オールマイト「?」

オールマイト「今、誰かがいたような……」

ヒーロー連合「……もう全部オールマイトだけでいいんじゃないかな?」

黒霧「間一髪でした」

死柄木「ああ……結構楽しめたな。間近でオールマイトも見れたし」

黒霧「何故、通報したのですか?」

死柄木「あ……バレてた?」

死柄木「どうせもう詰んでるし、最後に面白いものを見せてもらおうと思って」

死柄木「あいつら、やっぱり全然だめだった……」

死柄木「俺が従えるのは、もっと……オールマイトにも負けないくらいの……」ガリガリ

黒霧「そうですか、それなら私にも教えてくださればよかったのに。本気で焦りましたよ」

死柄木「敵を騙すにはまず味方からって言葉があるだろ?」

黒霧「自分が楽しみたいだけでは?」

死柄木「バレるの早……」ニヤ

黒霧「しかし、行くところがなくなってしまいましたね」

死柄木「あー、そこまでは考えてなかった……」

死柄木「名簿なんかは全部処分したが、近所にはいられないだろうな……どうする?」

黒霧「どこへでも付いて行きますよ」

死柄木「ヴィラン事務所でも開くか……」

黒霧「最後に、ひとつ聞きたいことがあります」

黒霧「あの担任は本当にスパイだったのですか?」

死柄木「……」

死柄木「さあ?」ニヤ

死柄木「次は何して遊ぼうかな……」


おしまい
五年前マイトが怪我負う前くらいの設定

こういうの好きよ、乙

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