速水奏の場合【R-18】 (18)

地の文あり
けっこう蒼い
CoP×奏(CuP×フレデリカの要素あり)

エロだけでいいんだよという方は●07まで読み飛ばし推奨

※速水奏
http://i.imgur.com/fakSbzB.jpg
http://i.imgur.com/IxMpgQm.jpg

※宮本フレデリカ
http://i.imgur.com/SHoY2AA.jpg
http://i.imgur.com/E31aEz8.jpg


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429456490


●01

「……“白雪姫ごっこ”?」
「うん♪ そーだよカナデちゃん! 白雪姫ごっこ!」



「最近ねー、CuPさんの帰りが遅いからさー、フレちゃん待ちくたびれちゃって。
 シンデレラって12時過ぎたら魔法が解けちゃうでしょ? だから、白雪姫になるの♪」
「ガラスの靴を履くシンデレラから、ガラスの棺で眠る白雪姫に鞍替えするの?」

「それはそれとして。フレちゃん、アイドルが……男の人の帰りを家で待ってるとか、
 おおっぴらに言うものじゃないわ」
「あ、ごめんね? あたし、何も考えないで喋るからさー」



「で、白雪姫ごっこってのはね……まず、一口かじったリンゴを用意します!」
「毒リンゴ、かしら」
「まー、あたしは紙にリンゴの絵を描いてテーブルに置いといただけだったけどねー」

「で、あとは薔薇色のルージュをひいて、白雪姫の気持ちになって、ベッドで狸寝入りします!
 あとはキス――それもあっついベーゼをくれるまで、意地でも目覚めないのがポイントだよ♪」
「へぇ、フレちゃんが白雪姫なら、CuPさんはさながら王子様、ってところかしら?
 キスで目覚めるってのは、原典には無くて、ディズニーの創作だけど」
「そうなんだ! さっすが、現代の魔法使いだね♪」



「で、まぁ。さながら、っていうか、まさしく白雪姫! ……ってのを目指してたんだけど」
「……その口ぶりだと、フレちゃんの思うとおりには行かなかったみたいだけど」
「フレちゃんはねー。CuPさんの帰りが遅くなったら、いつも待たないで寝ちゃうんだー。
 でも毎度それだとお互い寂しいから、たまには何かしようと思って……」

「フレちゃんの理想ならね、ベール取っ払ってちゅーっと目覚まししてくれるハズだったんだ。
 でもCuPさんは、リンゴの意味に気づいたのはイイんだけど、ニヤニヤしながら焦らしてくるんだよー」
「寝たフリをしてたのに、CuPさんがニヤニヤしてるって分かったの?」
「そこはホラ、心の目で分かるんだよ! 何の修行もしてないけど」



「CuPさん、いつまでもそんなノリだったから、フレちゃんシビレを切らしちゃって、
 手を握られたときに、ぎゅーって握り返しちゃった。目だけは開けなかったけど」
「乙女心としては、もう少し何とかして欲しかったわね……」
「そーでしょ? まったく、遅刻してくることといい、ホントぐだぐだな王子様で困っちゃうな♪」


●02

「で、この話をカナデちゃんにした理由はね、カナデちゃんに、
 ぐだぐだになっちゃったフレちゃんプランのリベンジして欲しいんだ。
 あたしの白雪姫ごっこ、アイデアはいいと思うんだよー」
「ベタな気はするけどね」
「白雪姫にはさ、カナデちゃんのがふさわしいんじゃないかなーって。
 ほら、雪よりも白い肌、黒檀よりも黒い髪があるし! ルージュ引いたらカンペキ!」

「それって、私が“世界で一番美しい”って褒めてくれてるのかしら?」
「そーそー、フレちゃんミラー嘘つかない。寝たフリはしたけどー。
 だから、今度はカナデちゃんがCoPさんに仕掛けて、戦果を報告して!」



「フレちゃんのアイデア、私もいいと思うんだけど……でも、私がCoPさんに試すとなると、ね」
「んんっ? 前に“キスされたら目覚めるかも”とかカナデちゃん言ったって聞いたよ。
 あ、もしかしたらもう試しちゃってた? がーんだね。フレちゃんミラー節穴だわー」

「……試したことはないよ。だって、あの人……ときどき鈍感だから」
「もし伝わらなかったら悲しすぎる? ベタだから通じるよー」
「……ベタだから、恥ずかしくて照れ笑いで誤魔化しちゃうかもしれないわ」

「恥ずかしい! わっはー、それもそれでテンション上がって楽しいじゃない♪」
「……なんか、私はまだ、背伸びしなきゃフレちゃんに届かないみたいね」
「そうだっけ? プロフではカナデちゃんのが背高かった気がするよ? 2センチぐらいだけど」



「というわけでカナデちゃん! あたしのリベンジ、お願い致します!」
「……まだやるとは言ってないけど」
「でも試してくれるよね。カナデちゃんって思わせぶりなのがお好き、でしょ?
 だってカナデちゃんは、気持ちストレートに言わないもんねー」
「……うっ」



「あたし、次はね、ベッドの前にイバラを敷き詰めて寝たフリするんだ。
 白雪姫ならぬ、眠れる森の美女だよ♪ あたしみたいなフランス帰りにはぴったりでしょ☆
 じゃあ、今度またお互い報告しよーねー!」

「……そのうち、ラプンツェルみたいに髪を伸ばしたりするのかしら」
「おお、フレちゃんルームならぬフレちゃんタワー? 面白いけど、それは遠慮しとこうかなー。
 ロングヘアーは背中に敷いちゃったりして困っちゃうもん」

「……っ、もうフレちゃんったら……!」
「アハハ、カオが真っ赤だよカナデちゃん!」





●03

(ねぇ、CoPさん。あなたは、私をシンデレラにしてくれる、って約束してくれたよね)

奏の手中にある携帯電話のディスプレイでは、
時計の表示がp.m.からa.m.へ切り替わろうとしていた。

(私に“明日にならない場所へ行こうよ”とも、歌わせたよね)

待ち人は、部屋の扉を開くどころか、声の一つも届けてこない。
鳴りだした予感のベルは、虚しいまま。



ほどなく日付が変わる。
待ち人は、まだ帰ってこない。

(それで、この仕打ちは、ちょっとないんじゃないの?)



奏は赤いペンと便箋を手に取ると、
丸と直線だけの単純なリンゴを描き殴った。

(……あ。これ、かじった跡を描かないといけないんだっけ)

描き直すのも億劫で、そのまま歯型の模様をリンゴに刻んで、塗り潰していく。

(半分くらいかじってやろうかしら。エデンのリンゴは、善悪の知識を教えてくれたらしい。
 それなら、この絵に描いたリンゴは、私に何を教えてくれるのかしら?)



奏はリンゴを置き去りにして、寝室の化粧台でくちびるにルージュをあてる。
いつもより、ルージュの感触が冷たい気がした。



●04

明かりを落とした寝室で、ベッドに横たわる。
白雪姫に扮する陶酔と、それを他人事扱いする自嘲が、奏のなかで行ったり来たり。

2つの感情が何往復かしたころ、遅ればせながらベルが鳴る。

(……帰って、来た)



(気づいてくれるかな、あの人は……メッセージ、ちゃんと残したつもりだけど)

荷物を片付けたり、着替えを行っている気配を壁越しに感じながら、
奏は眠るどころか死んだように身体を横たえ、寝返りさえうたずにいる。

(私、CoPさんを信じてるから。女の期待、応えてみせてよ)



身体を動かさないように気を張っているため、かえって心が落ち着かない。

(白雪姫の真似……やっぱり、ちょっと恥ずかしいかも知れない)

静寂に沈む寝室で、奏の吐息だけがわずかに空気をざわめかす。

(でも、悪くはないわね。ふふっ!)



寝室の扉を開ける手つきは、ひどく遠慮がちだった。

(……もう、寝ちゃってるって思われてるのかな。
 起こしたら悪い、って思って、だからあんなにそっと……)

眠っているような姿勢に対して、音のない部屋で心拍がうるさく響く。

(なに、浮ついて……私、そんなに期待してるのかしら)

そろそろとした足取りが、床の上を滑る。

(目を開けられないと、私のそばに歩いてくる人が、
 もしかしたらCoPさんじゃないかも知れない、なんて思ってしまう)

奏の指先から肩口へ、一瞬の緊張が波打つ。

(私に、早く教えてよ。CoPさんのこと)


●05

奏の横たわるダブルベッドに、新たな重みがかかったのが伝わる。

(すぐそばで、手を伸ばせば触れられるのに、あなたの顔も見られない)

奏の呼吸は、寝息にしては静か過ぎる。
それにつられてか、もう一人の息遣いも微か。
部屋の空気に呼吸が押さえつけられている。

(焦らしてるの? あまりいじめないで欲しいわ。私だって、緊張ぐらいする)

シーツの衣擦れが迫る。

(今まで、思わせぶりなことしてCoPさんをからかってきたけど、
 いざ自分がやられると、なかなかどうして……)



白雪姫らしく、行儀よく胸の下で組んだ奏の両手。
暗闇のなかの白い肌に、すぐそばから指が下ろされて、触れる。

奏は身体をびくつかせる反射を、かろうじて押さえ込んだ。

(手が……手首を、なぞられ、てっ……)

むずむずと落ち着かない痺れが、奏の手から肘辺りまで広がって、
ゾクゾクと鳥肌に似たざわめきに表面が覆われる。

(そんな、指先だけで……ねぇ、意地悪してるの?
 手首を縛られてる気分がするわ)

手首に感触が塗り重ねられる。何度か繰り返されると、奏もそれに慣れていく。
もう指先がつつと移動しても、指を妙にびくつかせたりはしない。

(――君がもしその手を離したら、すぐにいなくなるから)

動揺の収束は、拘束に慣らされているようにも映る。

(――手錠に鍵をかけて、今夜、今夜――白雪姫は、ガラスの棺に縛られてしまうの?)

奏の組まれた両手の下で、心臓がひときわうるさく跳ねた。


●06

奏の耳に、何事か囁かれる。

(やっぱり気づいてたか……気づいてないフリされても、困るけどね)

――永遠にこのままでいい?

(……貴方、ふざけたこと言わないで。遅参したくせに)

CoPの指が、奏の肌を撫でて、首からおとがいに移り、くちびるの寸前で止まる。

(なぁに、そこには触れないの? いいけどね。
 そこに貴方のくちびるで触れてくれるまで、目を開けてあげない)



細い肩に腕が回される。

(貴方と私の息遣いが、すぐそばに)

時が少しずつ緩慢になり、ついには止まる――そんな錯覚がする。
凍りついた夜の色のなか、奏はフレデリカの言っていた感覚が理解できた。

(ステージと一緒……貴方の視線は、すぐに分かる)

閉じた目蓋の裏に、お互いの顔を描く。

(だって私はアイドルだもの。そして貴方が、私をアイドルにしたんだもの)



沈黙のあとに、くちびるが重ねられる。

「くちびるが乾いちゃったでしょ……ねぇ」

熱いベーゼとは程遠い軽めのバードキスに、奏は目を開ける。

「いつキスしてくれるか待ってたの。いじわるな人。想像より、もっと焦らされちゃった」



●07

(目を開ければ、もうはっきりしてしまう。誰も来ない空の果て、CoPさんと二人っきり)

肩に回された腕の中で、奏はもう一対の瞳を見返す。

(もっと目を凝らして見つめて)

最後のバスは行ってしまった。

(ちょうだい最高のダンス――ずっとここで踊り明かそうよ)



さっきよりも深いディープキス。

(ミント――貴方のそれは、私と同じハミガキの味。気にしてるの?)

舌を擦りあい、つっつきあい、歯を撫で回しあい、近すぎて鼻息まで混ざってしまう。

(まぁ、いいわ。貴方の無防備なときのそれは、不意打ちで朝にでもいただくから)

身体の、ほんの一部分の粘膜を触れ合わせているだけで、絡め合う腕に力が入る。
CoPに触れられた肌のすべてに、戒めがかけられたような気がして、奏は身を震わせる。

(白雪姫が横たわるのは、ガラスの棺――この棺は、いささか独占欲が強いようで)

もし私が目覚めても、繋がれたまま離してくれなかったとしたら。
その想像が、くちびるから流し込まれる熱と昂ぶりを盛りたてる。

(乾いたくちびるを、声を抑えていた喉を、貴方を待ちわびた私の心を、潤して)

呼吸が途切れ途切れになって、肺腑がきりきりと苦しみだす。
脳裏から目眩がこぼれ落ちる。

(目を閉じていれば、目眩もさざなみみたいなもの。素敵ね)

奏はくちびるを離さない。むしろ勢いを増して、CoPの手管を押し返す。
雪のように白かった肌は、汗が乗り、夜の帳ごしにも透けて見える紅潮へ染まる。

(これ、好き。初対面で冗談飛ばした時から、意識しちゃってたけど、本当にすごい)


●08

奏がキスに憧れたのは、映画のシーンがきっかけだった。
初めて見たラブロマンスの、じわじわと話を盛り上げた末のクライマックスで、キスシーン。
幼心へ鮮烈に焼き付いた疑似体験は、思い出すたびに彼女の頬を赤らめさせる。

昔はただの憧れだったから、目をきらめかせてどきどきしながらスクリーンを見ていた。
奏が成長して、キスという行為が現実味を持った途端、
恥ずかしさを覚えて、恋愛映画すら避けるようになった。

(その私が、今じゃこれまで見た女優の誰よりも、激しくはしたなくキスを求めちゃう)

遊び半分で、仮眠中のCoPのくちびるを一度盗んだこともある。
そのときは、いけないいたずらをしてしまった、興奮混じりの罪悪感が、
心中でごろごろとしていただけだったのに。

(ダメ、どんなに息苦しくても、離さない。キス、こんなに、待たせたんだから。
 白雪姫を、目覚めさせてしまったんだから)

歯をぶつけずにくちびるを合わせる位置取りから、
口をふさがれながら誤魔化し誤魔化し息を継ぐやり方に、
音を殺したり、逆に出したりする技倆まで、CoPとの経験で覚えてしまった。

(映画じゃ教えてくれない深さまで、もっと、教えて――)



意識をくらくら揺るがしながら、口内を貪り合うスプロール。
ついにCoPが根負けする。張り付いていた粘膜が引き剥がされる。
二人の半開きの口から、銀の糸が2本か3本つながっていて、
それも荒い呼吸に吹き飛ばされてすぐ消えた。

「……ふふっ! お望みなら、まだまだ続けても良いよ、CoPさん♪」


●09

奏は、ベッドに仰向けで横たわるPを、一糸まとわぬ姿で見下ろしていた。

「すっかり盛り上がっちゃって……そんなに興奮してたの?」

普段は、背広のスラックスに押し込められた欲望を、
奏は夜陰に乗じて自分の前に引きずり出す。その達成感だけで、既に彼女は陶酔している。

「私が上になるから……手、握って。下から支えて。そうしたら、安心でしょ」

もう期待に綻んでいる女性器は、くちびるの名を借りるにはグロテスクで、
でも人に晒せないその分だけ、肌の下で渦巻くモノに似ている――と、奏は思っている。

「行くよ……ねぇ、踊らせて、貴方を愛させて」

CoPのモノを受け入れる瞬間は、なかが苦しいほど満たされる。
沸騰した脳漿さえ静かな水面になる。

「ん――ふ、ふふっ、たまらないの……さっきから、ずっと見てるでしょ?
 私たちが、つながるところ。つながってるところ」

裸身で、両足を広げて、男の前に恥部を晒している。
そんないやらしい動作を命じた脳が、脳自身の理性を壊していく。
さくさくとかけらになっていく理性は、新雪のように癖になる感触を残す。



「見てよ、欲しいの……貴方の、視線、特別、だから……っ」

CoPの目のために奏は踊り、なかを掻き回される感覚のために奏は踊らされる。
随意の媚態と不随意の反射が、奏のなかで葛藤して、それにさえ彼女は歓びを感じている。

(貴方のギラつく視線は、夜色の向こう側からでも、私の肌を貫いてなかまで見透かしてくる)

手のひらを合わせて、指と指をしっかりと絡ませる。
指の骨と関節がきしむのに合わせて、粘膜の締め付けにも緊張が走る。
一挙手一投足にCoPを感じてしまう。

(このまま神経を糸でつながれて、ぐるぐる巻きにされて、
 二人一緒のミイラにでもなる?)

CoPが下肢を身震いさせ、それに奥を不意打ちされ、
奏は思わず背中を波打たせて、CoPの上にへたり込む。

「……あんまり、いじめないでね。まだまだ、今夜は踊っていたいから……」

奏は膝立ちになり、CoPに握られた両手を頼りに上体を起こし、胸を張る。

「私を見つけてくれた目……その網膜に、今の私を焼き付けてっ」


●10

燃える血潮に溶かされた白雪姫の肌が、夜陰を背景に揺れ動く。
手を握り合い、息を合わせて、リズムを刻む。

「そう……もっとっ……私、貴方が見ててくれれば……っ」

ふらふらとしたよろめきが、ようやくダンスらしくなる。
神経を駆け巡る衝動が、奏の背筋を無理矢理伸ばす。
奏は嬌声をこぼしながら、天井の平面に無いはずの星がちらつくのを見る。

「CoPさん……CoP、さんっ……! だめ、声、漏れちゃう、から……っ」

肌の打つパーカッションが湿って、音がねばつく。
奏のそこには、玉の雫がいくつも筋をつくって、わずかな光に反射している。

「っ、んっ、は、あっ……もっと、見て……その目が、やれって、言うから、私……っ」

BPMが上がっていく。奏の歌声が勝手に転調する。
おかしなエフェクターで響きが曇る。
ステージのボルテージが、最高潮目指してどんどん駆け上がる。

「は、うぁ、あっ……CoP、さん、もうすぐ、でしょ……
 ねぇ……つながってると、分かっちゃうの……」

奏を下から貫くモノは、ただ奏のパフォーマンスを終わらせないために、
CoPのなけなしの理性で押さえつけられているが、その堪え性も払底していた。

「……いいよ、貴方が、満足したら……終わらせても!
 幕引きのタイミングは、お任せ……だって、私のプロデューサー、だからねっ」

上擦った声で、奏が笑う。
脳裏がしびれるキスのあとの、身体に響く抽送で、彼女の意識も跳ねまわっている。
最高の加速で頂点まで駆け上がっていく。



「ねぇ、CoPさん……!」

完成されたステージは、そのクライマックスとフィナーレが重なるもので、

「……大好き、よ!」

奏とCoPのステージは、ほとんど同時にその二つを迎えた。



●11

「……ふふっ、イッちゃったんだ……CoPさんも、我慢し切れないことがあるんだね……」

絶頂の余韻をたゆたうCoPに、奏が苦笑しながら話しかける。

「普段は、私をしっかり見守ってくれて、あんなに頼りになるのに……あーあ。
 こんなとこ、ほかの子には見せられないね。見せちゃダメよ。乙女の夢を壊しちゃうから」

興奮の余熱を吐息に混じらせながら、奏はご機嫌な様子で歌う。

「私? 私は、見たっていいのよ。壊れやしない。もう、ただの夢じゃないから」



「……え? 私が、まだ満足してないだろう――って」

奏は前にかがんで、CoPの肩にしなだれかかる。

「イッてはいないかな。惜しかったわ。けど、それが?
 まだこの余韻を破らないで。ライブの後みたいに、しばらくそっとしてて、ね」

(だって私、実は……貴方をイかせる方が、好みだから。満たされるもの)



「……アンコールですって? 貴方、意地になってないかしら。まぁ、付き合うけど」



●12

(やがて貴方は、私の肩を抱き寄せて、べたつくくちびるを重ねてくる。
 私のなかにねじ込んだまま)

CoPは背中を起こし、ベッドの上に座る体勢をとる。

「もう、こんなに腕で抑えられたら、踊れないわね……」

(こんなに近い距離では、視線を押しのけて、匂いと、体温と、息遣いが感覚に入り込む。
 貴方の視線がなくなったら、私はアイドル・速水奏から、ただの女の子になる)

ステージはガラスの棺に変わり、身を起こそうとした白雪姫を引き戻す。

(でも、もうキスをもらっちゃってるから、眠り姫には戻れない)

「あっ、は――そこは、手前、はっ」

CoPのモノが、奏を悶えさせる場所を、ずりずりと遠慮なしに探しまわる。
さっきリズムを刻んでいた奏の下肢が、びくんと引き攣って、CoPの腰にしがみつく。

(私の強がりを、引っ剥がしにかかるつもり……?)

また、CoPは奏のくちびるを抉じ開け、舌でなかに入り込む。
上から下から、奏の内側に押し入ろうとする。

(あ……はぁあっ、CoPさん、そんなに、私を……)

嬌声を空気にさえ渡したくない、と言わんばかりに、
奏の感覚が高ぶらせるとともに、CoPはいっそう執拗に奏のくちびるを塞ぐ。

(だめ……このまま腰を使われたら、歯がぶつかってカチカチいっちゃう)

それでも、奏はキスを続ける。
ゆるゆると小幅なストロークで再開した抽送を、手と足でサポートする。

(このまま、キスされながらぎゅうぎゅうとしつこく責められたら、私は音をあげちゃう。
 まずは頭が紅に火照って、それから身体の内側が、むずかるように震えるの)

やがて奏も、自分のいいところを、CoPの身体に擦りつけ始める。
くちびるよりも目よりも雄弁な身体で、CoPに、そこ、そことねだる。

(そうしてイかされるのが続くと、私が空っぽにされてしまう。
 忘れたいことも、忘れられない夜も、茫漠の彼方へ散ってしまう)

奏は、自分をつんざく暴力的な快楽を予期しながら、それを受け入れようとしている。

(貴方は誰にでも優しい王子様、無自覚に人を傷つける罪な王子様)






(だから、私にだけは、少しぐらいいじわるしてくれなきゃ、いや)




●13

「あ、うぐっ……んぐ、う、ううー……!」

奏の体は、ベッドにうつ伏せで押し付けられ、
後背からCoPの侵入のために、シーツに呻きをこぼしていた。
CoPの出入りのたびに、奏の引き締められたスタイルの尻が叩かれる。

(これ……もう、ぜんぶ、バレバレ……いいとこに、あたったら、きゅって、しちゃう)

奏は奥を突かれるたびに、手の指でシーツを掴んでシワを広げ、
足先は宙を虚しく引っかき、喉から飛び出てくる声を、ベッドに突っ伏して殺そうとする。

「あ、んあぅうっ、う、んんんっ……!」

部屋を出れば、今をときめくアイドル・速水奏が、ベッドに組み敷かれている。
磨き抜かれた曲線美は虚しくもがくだけ。
人を魅了する瞳もくちびるも、まったく見てもらえないまま。



「ふ――うっ、んんぅううっ!」

細い方が縮こまり、背中が緊張と弛緩をめまぐるしく切り替える。

「あ……う、だめ、う……あ――っ」

奏が首を横に振っていやいやするが、腰より下はもうCoPに抵抗できない。
ぴちゃぴちゃと粗相の音がして、シーツのシミを直前よりもう少し大きくする。

CoPが上体を伏せて、奏に何か話しかける。
奏はそれが、CoPの声だということしか分からない。
その認識だけで、余白が埋め尽くされて、奏の心は飽和してしまう。

(も、もうイってる、イッちゃってる……イッちゃってる、のっ)

「んんうっ、ふ、ううっ――んあおおおっ、おおっ!」

奏の薄い反応が気に食わなかったのか、
CoPは唐突に自分の手の指3本を、奏のくちびるの間にねじ込んだ。

(ら、あっ、らめっ……かん、じゃう、からっ)

上の歯と下の歯の間に、関節2つ分を挿入され、奏はもう声を噛み殺せない。
ベッドに押し付けて声を潰すこともできない。

「あおっ、んあっ、あ、おおっ」

とてもアイドルとは思えない不格好な呻きを漏らし、
幼児でもここまでは汚さないだろうというほど涎を垂れ流し、奏は夜色のなかで溺れていく。

(もう、なにもわからなく、なる――)



それから、奏の記憶に残っているのは、腰に打ち付けられるモノの感触と、
舌でかすかに広がる鉄の味までだった。




●14

「ねーカナデちゃん! CoPさん、手を怪我でもしたの? あんなにいっぱいバンソーコー貼っててさ!」
「……さぁね。火傷でもしちゃったんじゃないかしら」
「わーお☆ ヤケドね、そりゃタイヘンだー」





「地味な本音、楽しい嘘。どっちも悪くないよね。カナデちゃん♪」





(おしまい)


読んでくれた人どうも

乙です
奏のエロはCoolらしくて素晴らしい。

ありがとう……素晴らしい……ありがとう…………

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