僕「ただいま」(27)

初投稿。



いつもの日常で、いつものように僕は家に着いた。

今日の学校は疲れたなぁ、などと思いつつ、リビングの扉を開けると、僕の両親がテーブルを挟んで座っており

テーブルの上に、離婚届が置いてあった

ー1ヶ月後

僕は、ベッドの上で寝転がっていた。

雨が雨漏りのように降る中、窓を全開にしておいたが、部屋内の蒸し暑さが中々抜けない。

このままではいけないと思い、一応、扇風機のスイッチを強にしてつけたが、温い空気が循環するだけだった。

残念なことに、僕の部屋にはクーラーがない。一瞬、近くの図書館に涼みに行こうかと考えたが、今日は生憎日曜日。図書館は定休日だった。

このままでいるのはよくない。そう思った僕は、机の上に放り投げてある参考書を手に取り、即座に床に放り投げた。やる気になる気がなかった。

高校三年生となり、「立場上」受験生となった僕は、受験生になれずにいた。

二年生後半から通っていた塾も、三年生となってからサボりにサボって辞めた。家で勉強すると決意してからもう3ヶ月近く経っている。

そんなこんなでダラダラな生活を過ごす内に、いつの間にか学校で夏休みの話題で埋め尽くされるようになる時期になってしまった。僕にとっては、どうでもよかった。

一応言っておくと、別に友達がいない訳じゃない。

さて、なにをしようかな。と思いつつ、僕は、ベッドの下の引き出しからお気に入りの本を取り出した。が、なにもできなかった。なにをする気にもなれなかった。

だが、他に何かすることもないので、とりあえず適当にページを開いていくことにした。まだ見てないページなどがあったのが幸いだった。

これはイイナ。ここは次するときに使うか。そんなことを考えていたら。枕元に置いてあった携帯から、「paper moon」が流れ出した。

「全く、こんな暑い中なんでこんなに渋滞していやがるんだ。」

ふと気がついた時には、僕はいかついオジサンに拉致されていた。大人しく助手席に座り、行き先も伝えられぬまま車がゆっくり進んでいくのを黙って見ていた。

「なあ、お前もそう思わないか。」

オジサンが困った素振りをみせながら話を振ってくるので、仕方なく、そうですね。と返しておいた。オジサンは「そうだよなぁ」と言いつつ、ハンドルを握り返した。

ことの発端は、「papermoon」だった。

いや、正確には「papermoon」は悪くない。それを言い出したら僕の携帯の着信音全てが悪い事になってしまう。

電話出た僕は、すぐに全開の窓から身を少し乗り出した。通話相手は伯父さん。電話の内容はこうだった。

「今お前の家の前にいるんだけど。俺の車にこないか?」

最後の文が「ワンナイトカーニバル」の出だしに似せてたのが気になったが、生温い感覚を吹き飛ばしたかった僕は、適当に身支度をすませ、家から出た。

という訳で、僕は今オジサンの車に乗せられている。クーラー超涼しい。

すると伯父さんが思い出したように「そういや、お前昼飯食べたか?」と聞いてきた。

いえ、まだですね。クーラー超涼しい。

オジサンはそうか、と言いながら少し笑いつつ「じゃあマックへ行くか」と言った。クーラー超涼しい。

ーマックの店内

「いやぁ、こうも暑いとジュースもlサイズをたのみたくなるなぁ。」

オジサンはlサイズのポテトを貪り食いながらジュースをストローとふたを外し飲んでいた。僕は、静かに照り焼きバーガーを口に運んだ。

外が蒸し暑いためか、今日のマックは少し混んでいた。予想に難くはなく、クーラーが同一の目的なのだろうが、客層は様々で家族連れは勿論、スーツを来た男性、お年寄り、中には、テキストを開く学生達などが居た。僕は少し、居心地が悪くなった。

そんな気分を払拭するために、今日は客が多いですね。とオジサンに振ってみることにした。自分から話を振らないのは悪いかな、と思ってでの行動でもあった。

「そういやぁ、何かここのマックは客の対応が早かったと思ったんだが、そのためなんかねぇ。」

などと言い出した。僕は、心の中で否定した。

前文の通り、オジサンはいかつい顔をしており、色付きサングラスを常に掛けている。

さらにガタイもいいものだから、よくヤクザに見られずとも、恐いオッチャンととられることが多い。おまけにこの口調である。

さっきのマックの件が良い例だろう。きっと、オジサンの対応をしていた店員は、オジサンをそういう人だと見なして、すぐに終わらそうとしたのだろう。

しかし、正確にはオジサンは別に恐いオッチャンではなければヤクザでもない。

オジサンは、僕の母の弟である。

さらに言うとこう見えてもオジサンはペットショップの店員であり、二児の父である。

しかもオジサンはペットショップ内では対応が良いことで有名で、口調は悪いが、すごく丁寧にペットとの付き合い方を教えてくれることは勿論のことペットに関係ない相談事にも応じたりして、お客様の中では評判が良いらしい。

そして、そういう僕も、色々と相談させてもらっている。

僕がバーガーを食べ終えた時、オジサンはナフキンで手を拭いていた。ポテトはまだ残っている。

そして、急にyシャツのポケットをまさぐり、タバコを取り出した。僕は身構えた。

オジサンは相談事や何かを話す時、タバコを吸い始める癖がある。

オジサンはタバコに火を点け、一服した。

「俺はどちらの味方でもないからな」

オジサンは、灰煙を撒くと、言った。何の話だか、分かっていた。

「姉貴から話を聞いたんだが」

僕は頷いた。

「ありゃあ、どう考えても姉貴がわりぃ。最初は黙って話を聞いていたんだが、途中から説教しちまった。」

小さい頃はされる側だったんだけどな。とオジサンは付け加え、タバコの灰を灰皿へ落とした。

これ需要あるんかな?
ないんなら落とすけど

母は、浮気をしていた。

僕がそれを知ったのは、一ヶ月前のあの時だった。母は青ざめており、父は赤熱していた。

テーブル上の離婚届を見たとき、とりあえず僕は、必死に状況を把握しようとした。

お互いが黙っているこの場で把握できるはずもないのだが、その時の僕には、それしかできなかった。

先に動いたのは父だった。

テーブルに叩くように写真を置いた。

「今度これを先生に提出するから。」

先生というのが弁護士ということに気づくのに時間がかかった。

「出ていってくれ。」

最初は静かに、だが徐々に、その声は大きくなり、やがて繰り返し怒鳴るようになった。母も最初は黙っていたが、やがて壊れたように

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

書き込んでないだけで誰かしらは見てる
それにスレ立てたんなら最後まで書いて欲しい

もう、我慢できなかった。

「なぁ、何があったんだ。」

怒鳴りを止めるように、父の肩を掴み僕は聞いた。愚問だったが、何か言わずにいられなかった。

父は怒鳴るのをやめ、抑えるように語りだした。

それからは想像に難くない答えが返ってきた。

最近の母の挙動がおかしかったこと。

父が怪しいと思い、探偵を利用したこと。

そして、探偵がこの写真をとってきたこと。

まるで、下手な泥沼話を聞いてるような話。

そして、それが現実になっているということ。

僕は何も言えず、ただ突っ立っていることしかできなかった。

それからのことは、よく覚えていない。

つっ立っていたことまでは覚えているのだが、気がついたら翌日の朝になり、母が消えていた。

学校を休み、心当たりのある電話番号へ片っ端から電話し、母の実家へ電話した時、母が実家に居ることを知った。

もう、何もかもがどうでもよくなった。

そして、今に至る。

「だがな」

オジサンが灰煙を撒く。

「こんなこと言っておきながら俺、どちらの味方でもないって言ったよな。なんでだか分かるか。」

考えてみたが、しっくりくる答えがでてこない。身内贔屓ですか、と言ってみることにした。

オジサンは少し笑って「それも少しあるな」と言い、一服した後タバコの火を消し、顔を近づけてきた。

「姉貴と話をした時、最初は姉貴は自分が悪いと言っていたんだ」

僕は頷き、続きを促した。

「だが、話を聞いてる内に姉貴が旦那に対する不満を言い出してよ」

不満?もしかしてそれですか?

「いや、それを踏まえても俺は姉貴の方が悪いと思う。これは多分、皆が聞いてもそう思うだろうな。」

というか、不満があるなら直接言えってんだ。と、オジサンは二本目のタバコに火を点けながらくわえた。

「話変わるけどよ」

オジサンは、タバコを灰皿に置いた。

見てるけど区切りで一言ないと
途中で書き込んでいいのやらやや躊躇う

「人の苦労ってのは、直接味わってみんと分からんよな」

僕は、黙っていた。

「俺な、色んなやつから相談受けるんだけどよ、そいつらの悩みを解決する手伝いはできるてるつもりなんだが」

言葉を選んでいるのが、一目でわかった。

「ほら、ドラマやら小説やらであるじゃねえか。『あんたに私の何がわかるの』やら『お前の気持ちは分かる』みたいな台詞がさ。」

何が言いたいんだろうか。

「うん、まあつまりあれだ。てめぇの悩みや苦労を和らげたりすることはできるが、その悩みとかによって与えらる苦痛まではわかりっこないってんだ。」

言いたいことが、わかった気がした。

「結局はさ、『お前の気持ちが分かる』云々の台詞はただの同情であってホントは分かっちゃいないわけだ。だってそうだろ?その悩みを体験してる訳じゃないんだから。」

そういうもの、ですかね。

「そういうもんさぁ。結局は想像なんだよ。想像でしか、苦痛を計れない。悩みや苦労話を聞いて『あらそれは大変ねぇ』なんてしか返さないなんて最たる例じゃねえか。聞いてる側からしたら、ただの喜劇悲劇でしかないのさ。」

僕は、何も言えずにいた。

思い当たる節があった。

あの日以来、離婚の件にやら浮気やらで考え、僕自身傷ついて悩まされると思っていたのだが、案外傷ついた感じがしなかった。

もっとも、考えた所でどうしようもないのもあるのだろうが、僕にとっては予想外のことで、オジサンが言ったことに当てはまるんじゃないかと思った。

これもやっぱり、お互いの苦痛を想像でしか分からないからなのだろうか。

そんなことを考えていると、オジサンが三本目のタバコを灰皿に置いた。

「だからさ」

オジサンが続ける。

「俺にとっちゃあそれほどでもない不満なのだろうが、姉貴にとっちゃあそれがどうしようもない程の苦痛だったのかもしれねぇと考えると、俺的には、一方的に悪者扱いはしたくねぇんだ。それに」

オジサン、は少し恥ずかしそうに笑い

あんなでも、俺の姉貴なんだ。

僕には、なぜだか少し哀しげに見えた。

「まあ、だからと言って許してやれとは言わんがな。」

オジサンは僕の肩を叩きながら、あんなウルサイ女から解放されてるんだから、今の内に楽しめよ。と大笑いした。

流石の僕も色々考えさせられたせいか、はい、目一杯楽しみます。と笑って答えてしまった。

じゃあ帰るか。と言うと、オジサンは勢い良く立ち上がり、トレーをテーブルに置いたまま出口に行ってしまった。仕方なく僕は急いでトレーを片付け、オジサンに付いていく。

結局、外に出た意味が大してなかった気がするが、そんなものはどうでもよくなっていた。

>>13
需要あるよ
続きが気になる

ー自宅前

父の車が家に停まっていた。もう仕事から帰ってきていたらしい。

車から降り、オジサンに今日はありがとうございました。と言うと、オジサンは「いいとこ連れてけなくて悪いな。」

次はイイ店連れてくぜ。と言い別れをつげた。「イイ」が強調されていた気がするが、気にしたら負けなのだろう。

さて、我が家に着いたわけだが、そう言えばあることを最近言ってないのを思い出した。まあ原因は例の件なんだが。

まあでも

「今日くらいは忘れるか。」

そう思い、僕は一ヶ月振りの言葉を扉を開けて言った。


「ただいま」

一応第一部は終了です。

まだ続きあるけど明日早いんで寝ます。

スレがまだ残ってて需要あったらまた書きます。

1乙

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