モバP「情愛と」穂乃香「小さな反抗心をあなたへ」 (33)

二月某日の夜、日中に積もった雪を足でかき分け帰路につく。

東京では見たことのない風景に、私の心は少しだけ浮かれていた。


P「積もったなあ…」

穂乃香「事務所から寮までの道は会社の敷地内ですからね…除雪車も入らないですよね」

P「事務所が大きいことでこんなデメリットが生まれるとは思ってなかっただろうな…あと、そもそも東京に本格的な除雪車ってあるんだろうか」

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寮に帰れなくなるくらい…とは言いませんが、もっと積もってくれても良かったと思ってしまう私はわがままな子でしょうか?


穂乃香「ほら、息が真っ白。Pさんもやってみて下さい」

P「ホントだ…白いな」ハァー


こんな他愛もないやりとりが、いつもより長くできたかも…そう考えると少し残念な気持ちです。

穂乃香「東京でもこんなに冷えるんですね」ハァー

P「雪見ると実家を思い出すなあ」

そうですよね、育った街を思い出してしまいますよね。

穂乃香「この前、忍ちゃんとあずきちゃんとも話したんですけど…」

P「うん」

穂乃香「雪国出身だからといって寒さに強い訳ではないですよね」

P「防寒対策完璧な環境で育った分、むしろこっちでは弱いと思う」

穂乃香「ふふっ…そうですよね」

P「あ、でもアレは今考えると凄いと思う」

穂乃香「アレ?」

P「吹雪の中、普通にスカートで登校してくる女子」

穂乃香「なるほど」

P「積もった雪を膝でかき分けて進むのとか、今考えると物凄いことやってたんだなと思う」

P「冷えて身体に悪いだろうに…」

穂乃香「でも意外とタイツだけでも温かいんですよ」

P「そんなもんか…まあ、でも皆にはあまりそういう格好して欲しくn…」

P「って…うおぉ…」


今、気づいたんですか?


P「どうした…こんなん寒かろうに」オロオロ


口調が変になってますよ。


P「いや、だってこんなうっすい布?一枚でそんなん…えぇ…」アワアワ

P「…あ、この前のマフラー完成したのか」

穂乃香「そこも今ですか」ムーッ

心配してくれるのは嬉しいですけど、もうちょっと見てほしいものです。


P「ちゃんみおとか姉ヶ崎もそうだったけど、見てるこっちが凍える…」ブツブツ

私も年頃の女の子なんですよ。


穂乃香「…Pさん」

反抗心なんて無いように見えるのかもしれませんけど…




穂乃香「あの、その…可愛く…ないですか…?」

P「」

ほら、こういう意地悪な質問をしたくなります。

P「いや、そりゃあ…その」

まあ、答えはわかってます。
ウチの事務所には積極的で可愛い子が沢山います。この手の質問も、幾度となくかわしてきたのかもしれません。

P「………」

私の知らないところで。

P「……………」

アイドルとして、自信をつけさせる為の褒め言葉は惜しみなく掛けてくれます。
でも、そんな姿はどこへ行くのか…プライベートな雰囲気が混じる場では、
いつも躊躇いが混じります。

この人はアイドルとプロデューサーという境界を崩さないよう、最大限努力している。




だからこそ、私はそれに抗いたくなる。

穂乃香「なんて…柚ちゃんとかあずきちゃんなら、こんな感じに返しそうですよね」フフッ


ああ、ここでこう言ってしまうのが、私の不器用さなのかもしれません。

小さな反抗心が小さいままで終わります。


楽しい世界を見せてくれた貴方や仲間が横にいる…それだけで良いのかもしれない。


そう自分に言い聞かせます。

こんな幸せな時間が有限であることも、ずっと隣に居たいというわかりきった気持ちも全部見ないようにします。

P「…可愛いと思う」ボソッ

穂乃香「……っ」

ああ、この人はもう…何で諦めた直後に期待してた言葉を聞かせるんですか。

穂乃香「……………」ドキドキ


ここまできたら、欲張ります。

穂乃香「……嫌です」

P「えっ!?」

穂乃香「あっ…いや、そのPさんにそう言われることが嫌なんじゃなくて…その」

確信させて下さい。

穂乃香「よ、横向きながら、小さい声で言うんじゃなく」

穂乃香「わ、わかりますよね」ジー

P「お、おう…」

しっかり目を見てってことか。

穂乃香「……………」ジッ

そんなにジッと見られると辛い…

自分がどれだけ魅力的なのか、未だにわかってない節あるからな。

何十回ドキッっとさせられたと思ってんだ

P「す、す…」バクバク

穂乃香(……えっ?)

穂乃香「ちょっと待って下さい、もしかしt…」ドキドキ




P「好きだ」



よーし、案外照れたけどちゃんと目を見て言い切れた…

P「……ん?あれっ?」

何かおかしい気がする。

穂乃香「その…あの…」シュウゥゥ

P「………あ」

P「」←質問内容思い出した




P「あああああぁァァァ!!」

P「なし!今のなし!!」

穂乃香「ええっ!?」

P「い、今のは言葉のわやで…」

穂乃香「それを言うなら言葉の文です!わやなのはPさんの言動じゃないですか」

※わや(方言)=めちゃくちゃ、ダメ

P「わああぁァァァボボボボボボ」ズボッ

穂乃香「Pさん!?雪に顔突っ込まないでください!風邪引きますよ!」

P「あああああぁぁぁぁ!!」ユキドゲザ

穂乃香「そ、その…私も…嫌じゃ…」ボソッ

P「あああああぁぁぁぁ!!!あああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ!!!」

穂乃香「と、とにかく顔上げて落ち着いて下さい」ガバッ

穂乃香「だっ、大丈夫です!そ、そのいっ『今は』聞かなかったことにします…」

P「えっ?」

穂乃香「でも…その、今はダメでももう少し経てば…」




穂乃香「…ダメ?ですか?」ジッ

P「…………………」バクバク

穂乃香「………………」ドキドキ




???「うわあぁぁぁ!!」

P&穂乃香「!?」バッ

忍「大丈夫?何回目?」

あずき「10回目くらいだね」

柚「いったあ…もー、雪の上の歩き方わかんないよー」

忍「あ、Pさんと穂乃香ちゃん」

P「お、おう…終わるの早かったんだな」

忍「うん、ライブの衣装合わせって聞いたから30分くらいかかると思ってたけど、ほんのちょっとヒールの高さ確認しただけで終わったよ」

あずき「だから穂乃香ちゃんだけ呼ばれなかったんだね~いいなー背高くて」

穂乃香「そんなこと…」

P「気にするな、小ささがあずきの売りでもあるんだから」

忍「…ところで二人とも顔赤いけど、風邪引いた?」

P&穂乃香「そんなことないよ!」

忍「う、うん…ならいいけど」

忍(なんでPさんの頭びしょびしょなんだろ)

あずき「終わったあと、プロデューサーさんに送ってもらう約束してたけど、ちひろさんに聞いたら『さっき出たばっかりですよ~』って言ってたからすぐ追いつくかなって」

P「にしては遅かったな」

P(結果的に遅くて助かったけど)

あずき「ごらんの通り柚ちゃんが」

忍「こんな感じで」

柚「何で皆、普通に歩けるの!?」

忍「何でって言われても…」

あずき「…慣れ?」

柚「慣れって、どうあがいても柚には無理じゃん…何でパンプス履いてきた日に限ってこんな大雪なのさ」

あずき「あずきもパンプスだよ~」

柚「転ばないように足に力入れて歩いてたから足しんどい…絶対明日筋肉痛になる。Pサンおぶって~」

穂乃香「ダメですよ、この機会に雪に慣れましょう」ムッ

柚「あれっ?思わぬ方向から試練が」

P「あとちょっとで寮着くからレッスンだと思って耐えて」

忍「寮着くまでにあと、何回転ぶのかな…」

あずき「うーん、3回くらいかな」

柚「雪国出身者め~」

柚「こうなったら意地でも一番に寮着いてやるもんね、じゃあねフリルドユキグニども!」タッ

穂乃香「フリルドユキグニ?」

あずき「Pさん含めて4人ってのが変わらない部分だから、ユキグニスクエアの方がいいと思う」

P「俺、フリル似合うかな…」

忍「気にするとこおかしい」

柚「…うわあああぁぁぁ!」ズザー

あずき「あ、また転んだ」

P(ここまでくるとオイシイなあ)

穂乃香「…Pさん」ボソッ

P「ん?」ボソッ

穂乃香「こんな楽しい仲間に出会わせてくれてありがとうございます」

P「………自然と集まっただけだよ」

P「それより、そんな仲間の一人が雪の中で倒れてるから助けに行くか」

穂乃香「そうですね」フフッ

やっぱり、今はこれでいいのかもしれない

急がず焦らず、一つ一つの出来事を噛み締めながらゆっくり進んで行けば良いのだろう

そして、辿り着いたその時に満面の笑みを浮かべよう…

そんな未来を迎えるために

前だけを見つめ、時には厳しく自分を律する彼女に


私をわがままにさせるあなただけに


楽しいを知れば知るほど、出会いを重ねれば重ねるほど輝く彼女に




情愛と小さな反抗心を

END

終わりです。
見てくださった方がいるかわかりませんが、稚拙なSSでのお目汚し失礼しました。

乙だす

おつ
初々しさがたまらんな

乙。
穂乃香と聞いてあの人かと思って見たけど、これはこれでいいモン見れた。

心が豊かになるな

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