【ミリマス】風花「聖夜の誓い」 (81)

アイドルマスターミリオンライブの豊川風花さんとそのプロデューサーのお話です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418809173

・・・・・・


ピピッピピッと目覚ましが鳴る音がします。

最初はあまり気にならなかったけど、だんだん音が大きくなっているような気がして少しずつ煩わしくなってきました。

カチッっと目覚まし時計の頭を押して音を止め、ゆっくりと上半身を起こします。

しばらくその状態でボーっとします、子供のころから寝起きは悪い方でした。

そういえば今日は燃えるゴミの日だったっけ・・・

一度大きく伸びをした後、毛布をどけてベットから降ります。

寒い・・・最近めっきり冷え込んできました、特に朝方はツライです。

こんな時に家にネコが居れば抱いて暖を取れるかな?・・・なんて。

洗面台で顔を洗い、歯を磨き、寝癖を整えます、自分の髪は嫌いではないですけど
髪を十分に乾かさずに寝た次の日は寝癖を直すのが大変です。

ある程度身支度を整えたら前日にまとめておいたゴミをゴミ置き場まで持っていきます。

部屋に戻るときに管理人さんを見かけたのでご挨拶、今年のお孫さんへのクリスマスプレゼントに何を送ろうか悩んでるそうです。

部屋に戻って朝ご飯の準備、食パンをトーストしてる間に目玉焼きを作ってインスタントのココアを淹れて完成!

朝ごはんを食べてる間にテレビでニュース番組を見ます、今年の冬は例年より冷え込むみたいです
特に今日と明日のクリスマスイブは関東でも結構な量の雪が降るみたい。

使った食器を片づけて身支度。

チラッと時計を見ると7時50分、ちょうどいい時間です。

「行ってきます」

誰に言うわけでもなくそう告げて家を出ます、今日はセクシー系の仕事じゃないといいなぁ・・・


・・・・・・


ジリリリリリと目覚ましが鳴る音がする、朝っぱらから元気なやつだ、どうやったら早朝からそんなに喧しい音が出せるのか。

いい加減鬱陶しいので目覚ましの頭を叩いて音を止める、これでおとなしくなった・・・

そのままもう一度布団を被り二度寝を計る。

しばらくすると再びジリジリと目覚ましが鳴り始めた、もう一度黙らせてやろうと目覚ましを置いている場所に手を伸ばす。

ない、どうやらさっき叩いた拍子に何処かへ行ったようだ。


目を瞑ったまま手さぐりで目覚ましを探す、見つからない、その間にも目覚ましは鳴り続けている。

諦めて目を開け、毛布を蹴飛ばし、目覚ましを探す、見つけた、意外と近くにあったことに腹が立つ。

ジリジリと鳴り続ける目覚ましの電源を切って黙らせる、しかし寒過ぎる、寝ていた布団を適当に畳んで寝室代わりのロフトからリビングに降りる。

部屋の隅に置いてあるヒーターの電源を入れ暖を取る、フローリングの床は冷たいがしばらくの我慢だ。

部屋全体が温まるのを待つ間に顔でも洗っておくかと、洗面台に向かう。


洗面台で歯を磨き、顔を洗い、髭を剃る、寝癖が多少ついていたが元々ボサボサな髪だ大して変わらんだろう。

リビングに戻るとすっかり暖かくなっていた、狭い部屋だから温まるのも早かったのだろう。

朝食は何かなかったかと適当に台所を漁る、スティックパンが出てきた、これでいいか。

パンを齧ってる間にスーツを引っ張り出し、着替えながら今日の予定を確認する。

今日は午前は風花の雑誌グラビアの撮影の付き添い、午後からはお子様方のレッスン指導だ。


時計を確認すると7時30分、そろそろ行くか。

アパートを出ると大家の爺さんが掃き掃除をしていた、ゴミを捨てるついでに適当に挨拶をする、世間話には付き合ってられないのでさっさと逃げるのが吉だ。

「行ってくる!」

最後に大きな声で爺さんにそう言って劇場に向かった。


・・・・・・


劇場の事務所に着くとプロデューサーさんが自分のデスクに座ってノートパソコンを見ていました。

「おはようございます」

私がそう挨拶をすると、プロデューサーさんはこちらを見ずに軽く手をあげて返事をしました。

真剣にノートパソコンの画面を見ている姿が気になります、何を見てるのかな…?気になります。

そんなことを考えていると自然とパソコンの画面を覗き見るような姿勢になっていました、あともう少し・・・


「なにやってる」

あ痛っ。

画面を覗く前にノートパソコンを閉じられデコピンされました。

「いいじゃないですか少しくらい・・・」

おでこがヒリヒリします、手加減なしです、くすん・・・

「そんなどうでもいいことはいい、仕事まで時間あるだろ、暇なら少し書類を整理するのを手伝え」

少し不機嫌そうにプロデューサーさんはそう言いました、そんなに覗かれたくなかったのかな?

「は~い・・・」

ここはおとなしくいうことを聞いておきます。


・・・・・・


書類を片づけてる間に仕事の時間になったので風花を連れて撮影スタジオに向かう。

風花は最初グラビア撮影だと聞いて

「また水着ですかぁ・・・」

と露骨にしょげていたがペットの飼い主向け雑誌のグラビアで猫と一緒に撮影すると教えたら逆にウザいぐらい上機嫌になった。

その結果、車での移動中ずっとやたらと猫の話題で話しかけてくるので散々だ。

今度、ネコミミ付けて撮影する水着グラビアの仕事を取ってきてやる・・・


・・・・・・


グラビアの撮影終了後、劇場まで送ってもらいプロデューサーさんとお別れしました
ロコちゃんたちを迎えに行ってレッスンにそのまま行くそうです。

私は午後は特にお仕事はありませんが劇場に居ることにしました、レッスンが終わった後にプロデューサーさんにお話があるので。

別れる間際にそのことをプロデューサーさんに伝えると少しの間何かを考えるように黙っていましたが、了承してくれました。

事務所に向かうとこのみさんが書類仕事をしてました、眼鏡をかけて真剣な顔で書類と向き合ってます
コーヒーでも淹れてあげましょう。

劇場にはコーヒーメーカーもありますけど、やり方がわからないのでインスタントのコーヒーです
自分の分と合わせて二杯淹れて持っていきます。


「このみさんお疲れ様です、一杯どうぞ」

砂糖とミルクを付けて書類とにらめっこしているこのみさんのところにもっていきます。

「あら、ありがとう風花ちゃん、気が利くわね」

そういうとこのみさんはコーヒーにミルクをたっぷりと入れ、そのまま一口飲み少し苦い顔をした後また書類に目を移しました。

私も苦いのが苦手なので角砂糖を2個入れて飲みます。

ずずっ・・・それでも苦い・・・


・・・・・・


「ロコ!少し遅れてるぞ!桃子!お前はもう少し振りを大きく見せろ!」

風花を事務所に置いてきた後、学校終わりのロコと桃子を拾ってそのままレッスンスタジオに向かった。

劇場ではボイストレーナーやダンストレーナーも雇っているが、何せアイドルが50人も居るからこうしてプロデューサーがレッスンの指導をすることも多い。

「よし、今日のレッスンは終わり!二人とも水分補給して着替えとけ!」

明後日放送されるクリスマス特番のメインステージを今年はこいつらが歌うことになっている。


レッスン中は厳しめに指導してるが、出来栄えとしちゃ上々だ、今のこいつらなら明日の撮影は心配しないでいいだろう。

後片付けをして車に向かう、まだそこまで遅い時間ではないが冬は日が沈むのが早い
外は日がとっくに沈んでいたがビル街の明かりが煌々と輝いていた。

しかし、それとは対照的に空は透き通ったような漆黒に塗りつぶされている、なぜ冬の夜空はこんな冷たいのだろうか。

不意に言い知れぬ孤独感に襲われる、たまらず内ポケットの中のタバコとライターに手を伸ばす。

良かった、湿気てはないようだ、空を見上げながらタバコを咥え火をつける。


久しぶりに吸いこむ煙草の煙は思いのほか体になじんだ。

風花の担当になってからしばらくして風花の前でタバコを吸おうとした時
身体に悪いからと言って止められそれ以来できる限り吸わないようにしている。

風花に言われたからというわけではなくもともと禁煙を考えていたのと偶然被ったのだ
それでもこうしてどうしようもなく吸いたくなる時があり、いつも内ポケットに忍ばせている。

しかし寒い、真っ黒な夜空からチラチラと降り注ぐ白いものまで見え始めた。

「ふーん、お兄ちゃんってタバコ吸ってたんだ」


そんなことをぐらぐらと考えていると桃子がやってきた。

「ロコはどうした?」

タバコの火を消し携帯灰皿に入れながらそう聞くと桃子は肩をすくめながら言った。

「着替えた後、レッスン場に忘れ物したって言って何か探しに行ったよ」

使った携帯灰皿を内ポケットに入れると桃子が物珍しげにそれをじっと見ていた。

「そんなに珍しいか?」


「お兄ちゃんとは結構長い付き合いのつもりだったけど、初めてみた」

そういえば風花の担当になってからもたまにタバコを吸っては居たが、アイドルにタバコを吸っているのを見られるのは初めてだった。

「俺は隠し事がうまいんだよ」

冗談めかしてそういうと

「隠し事がうまい?お兄ちゃんが?ふふっ」

鼻で笑われた、このガキデコピンしてやろうか。


桃子にデコピンをしようすると必死に抵抗され、熱い攻防を繰り広げている内にロコがやってきた。

お子様との格闘にも疲れたし劇場に戻るか。

最後に額をこちらに向けまいと必死に抵抗する桃子の頭をくしゃくしゃに撫でて解放してやる。

そのまま車に向かおうとすると背後からドロップキックを食らった、そのままバランスを崩ししたたかに車に額をぶつける

痛む額を抑え桃子の方を振り向くと勝ち誇った顔でこちらを見ている、このガキ・・・今度必ず仕返ししてやる。


・・・・・・


「風花ちゃん!風花ちゃん!」

ゆさゆさと肩をゆする感触と私の名前を呼ぶ声で目を覚まします、どうやら少しだけ眠っちゃってたみたいです。

「ふぁ・・・すいませんこのみさん・・・眠ちゃってました・・・」

「別にいいわよ、それより私はもう帰るけど風花ちゃんはどうするの?」

どうやらお仕事が終わったようです、時計を見るともう夕食にも少し遅いぐらいの時間でした。


「私はもう少し待ってます、このみさんお先にどうぞ」

「そう、じゃあ事務所のカギは預けておくからあとはお願いね」

そういってカギを机の上に置くと、このみさんは事務所を出ていきました。

劇場のどこかにはまだスタッフさんや他の子たちも居ると思いますがこれで事務所に居るのは私だけです。

・・・このみさんが帰ってから10分ほどが経ってだんだん一人で居るのが寂しくなってきました、楽屋に行けば誰かいるかな・・・

そんなことを考えてると事務所の扉が開いてプロデューサーさんが帰ってきました、全く・・・待たせすぎです。


・・・・・・


雪が強くなってきたので、直接ロコと桃子を自宅に送り届けてから劇場に戻り、事務所に行くと風花だけが居た。

「おかえりなさい、プロデューサーさん」

なんだか妙に機嫌が悪そうに見える。

「なんだ風花、まだいたのか」

軽く冗談のつもりでそう聞くと風花の顔はみるみる真っ赤になり

「まだいたのかって何ですかぁ!ずっと待ってたんですからねぇ!」

怒られた、しかしちょっと泣きそうな顔で怒っているのを見るともう少しぐらいからかいたくなる、でもここは我慢しよう。


「悪い悪い・・・で、話があるんだって?」

「もう、ちゃんと覚えてるじゃないですか・・・また私をからかったんですね・・・プロデューサーさんのイジワル・・・」

そういって風花は涙目でこちらを上目使いで睨みながらぶつくさ愚痴を言う。

そういう姿が余計に嗜虐心をそそるのだということに気づかないのだろうか。

まあ、そんなことをいつまでもしていても仕方ないので本題に入らせる。

「それで話ってのは?」


もう一度そう聞くと風花は何かを思い出したかのように動きを止め、1拍置いた後に露骨に挙動が落ち着かなくなった。

「え、えーとですね・・・その・・・」

とても歯切れが悪い、実は今日、話があると言われてからある予感はしていた。

「早く言わないと帰るぞ」

できるだけいつも通りな風を装ってそうやいって風花の言葉を急かす。

「あわわ・・・!ま、待ってください!」


「なら早くしろ」

そんな口を叩きながらも風花の言葉に期待を抱いている自分に気付いていた、全く、我ながら思春期のガキと変わらないな。

「プロデューサーさん、あ、明日のクリスマスイブの夜、一緒にお食事・・・しませんか?」

どうやら予感は当たっていたらしい。

おうふ・・・
>>25誤字った・・・

もう一度そう聞くと風花は何かを思い出したかのように動きを止め、1拍置いた後に露骨に挙動が落ち着かなくなった。

「え、えーとですね・・・その・・・」

とても歯切れが悪い、実は今日、話があると言われてからある予感はしていた。

「早く言わないと帰るぞ」

できるだけいつも通りな風を装いそういって風花の言葉を急かす。

「あわわ・・・!ま、待ってください!


・・・・・・


言っちゃった!言っちゃいました!わー恥ずかしくてプロデューサーさんの顔をまともに見れません!

前にも何かと理由を付けて猫カフェに誘ったり、お買い物に付き合ってもらったりしていましたが今回は言い訳不可能です!

クリスマスイブにしかも夕方までロコちゃんたちのお仕事の付き添いがあるってわかってるのに誘っちゃいました!

もうどうしたらいいんでしょう!?プロデューサーさんはじっと黙ったままです、やっぱり迷惑だったのかなぁ・・・

うぅ・・・だったらどうしよう・・・プロデューサーさんの顔が見れません・・・さっきから見れてませんけど・・・

「・・・仕事が終わったらな」


「へ?」

い、今なんて言いました!?仕事が終わったらいいってことですか!?

「あ、あのそれって・・・?」

「仕事が終わったあと気が向いたら付き合ってやる!自分で誘ったんだから店はもう決めてあるんだろ!」

プロデューサーさんは一息でそう言い切ると早足で自分の机に向かいどっかりと椅子に腰を下ろしました
プロデューサーさん、もしかして・・・?

自分でも驚くくらいはしゃいでるのがわかります、さっきまでの緊張はどこかに行っちゃったみたいです。


「は、はい!とってもいい雰囲気のお店があるんです!プロデューサーさんも気に入ると思います!そ、それとプロデューサーさん・・・」

多分、うれしくて調子に乗ってたんだと思います、その前にからかわれた仕返しがしたくなったのもあるのかもしれません。

だから思わず言っちゃいました。

「顔、赤くなってますよ?もしかして照れてます?」

そう言った直後、プロデューサーさんは椅子から転げ落ち、声をかける間もなく走って事務所から出て行っちゃいました。


ポカーンとしてプロデューサーさんが出て行った出口を見ていると携帯電話が震えてメールの着信を知らせます。

メールを開いてみると差出人はプロデューサーさんでした、件名はなく本文にただ一言

『待ち合わせ場所はメールで送れ、あと別に照れてない』

とだけ書かれてましたすぐにお店の名前と場所をメールで送ります。

ふふっ・・・可愛い人です。


・・・・・・


思わず事務所を飛び出した後、火照る顔を冷やすためにトイレに向かった。

まさかここまで動揺させられるとは思わなかった・・・未だに心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。

そういえば肝心の店の場所を聞いてなかったことに気付き風花にメールを送る。

メールを送ったあと、ふとあることを思い出して後輩に電話を掛ける。

『はいはいもしもし~!先輩どうしたんすか~?』


よう、実は明日ホテル○○のディナーのペアチケットがあるんだがな、無駄になりそうなんだお前にやるから彼女でも誘って行ってこい」

『は!?ホテル○○って高級ホテルじゃないっすか!?先輩どうやってそんなところのチケットを!?』

「うるせぇな!急に大声出すんじゃねぇよ!とりあえず明日チケットやるから食ってこい!」

相手の答えは聞かずに一方的に電話を切る。

あんな奴にでも誰かにやったほうが無駄にして捨てるよりかは何億倍もマシだろう。

しかし、予約までして先に誘われるとは・・・なんたる不覚・・・。


・・・・・・


プロデューサーさんにメールを送ってからしばらくしても帰ってくる気配がなかったのでそのまま劇場を出ます。

まあ、時間がたって自分が行ったことを思い出した結果、あまりの恥ずかしさにプロデューサーさんが帰ってきてもまともに顔は見れなかったと思いますけど・・・

家に帰る途中にプレゼント用のラッピングを探します、クリスマスシーズンだけあって色んなラッピングがあって目移りしちゃいます。

最終的に黒ネコと白ネコが交互に並んだ可愛らしいラッピングと青色のリボンを買いました。

これで明日の準備はばっちりです。


・・・・・・


「はい!リハ終わりです!お疲れ様でしたー!」

リハーサルでもロコと桃子のステージは見事なものだった、最後にレッスンした時よりも格段に良くなっている。

「お兄ちゃんどうだった?桃子たちのステージ」

スタッフに渡されたドリンクを片手にロコを引き連れやってきた桃子が自信満々にそう聞いてきた、本人もよっぽど手ごたえがあったのだろう。

「文句のつけようがなかった、よくここまで仕上げたな」

素直にそういってやると桃子は当然だと言いたげに満足げな表情になり、ロコは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。


「プロデューサーがロコたちを褒めるなんて・・・モモコ!今日はスノーが降りますよ!」

全く失礼な奴だ、人を天邪鬼みたいに言いやがって。

本番前に髪を崩すのは忍びないのでロコの両頬をつまんで引っ張ってやる。

「らにふるんへすかぷろりゅーさー!!」

何か言ってるような気がするが無視する。

しかし、見たところ二人ともコンディションも完璧のようだしテンションも上々だ。

この分なら何かアクシデントがない限り本番も大丈夫だ、順調に撮影が進めば夕方過ぎには終われるだろう。


・・・・・・


うぅ・・・寒い!予報通り今日は朝から雪が降っていてとても寒いです・・・しかも

今日の私のお仕事は劇場のクリスマス公演の準備のお手伝いだけなのでお昼過ぎには終わってしまいました。

一度家に帰って少しゆっくりした後身支度をして家を出ます。

家から電車に乗って30分ほど、そこから徒歩でしばらく歩いた所にひっそりとある小さなレストランが私のお気に入りのお店です。

「こんばんわ!」

「いらっしゃい・・・おや、風花ちゃんか、久しぶりだね」


このお店には子供のころからおねえちゃんと一緒にお父さんに連れられてよく来ていました。

大人になって一人暮らしを始めてからもたまに来てマスターのおじいさんに仕事の愚痴を聞いてもらったりしてます。

席も3人掛け用のテーブル席が一つだけあるだけであとはカウンター席しかないのでレストランっていうよりバーみたいなお店です。

「今日は予約だったね、奥の席にどうぞ」

マスターにそう促され奥のテーブル席に座ります。店内にはカウンター席にカップルらしき人たちが1組と1人でお酒を飲んでいるスーツ姿の男性が一人だけです。


家を出る前にきたプロデューサーさんからのメールによるとお店につけるのは20時ごろになるそうです。

腕時計を確認すると今の時間は19時、少し早く来すぎたかな?

傍にある窓から外を見ると激しく雪が降っていました、まるで吹雪です。

こんなにたくさんの雪を見るのは学生時代に友達と行ったスキー場で猛吹雪にあった時以来です。

プロデューサーさんが来たら体があったまるものをマスターに出してもらわなきゃ・・・


・・・・・・


見通しが甘かった。

夕方ごろから急激に勢いが強くなりだした雪のせいで都心の交通機関がマヒし別の番組の撮影から梯子してきた共演予定の大御所アーティストの到着が大幅に遅れたのだ。

到着と同時に急いで撮影がはじめられたが終わるころには21時を過ぎていた。

撮影が終わると同時にロコと桃子を乗せTV局を出て劇場に向かう、しかしすぐに渋滞につかまり身動きが取れなくなった。

止まった車の中から風花に電話を掛ける。


『もしもし・・・』

「風花悪い!いろいろあって撮影が今終わった!!」

『プロデューサーさん!?良かった・・・プロデューサーさんに何かあったんじゃないかと思って・・・私、心配で・・・』

「俺なら大丈夫だ、ロコたちを劇場に送ったら必ず行くだから待っててくれ」

『雪が酷いみたいですね、プロデューサーさん気を付けてくださいね・・・』

「ああ、大丈夫、だから待っててくれ」


最後にそういって電話を切る。

電話を切った直後、桃子が不意に口を開いた。

「今の電話の相手風花さんだよね?」

「・・・ああそうだ」

「今日待ち合わせしてたんでしょ、大丈夫なの・・・?もうだいぶ遅れてるみたいだけど・・・」

「お前たちは心配しなくていい、大丈夫だ」


そういいながら、不敵に笑って見せる、強がりなのはバレてるだろうが。

しかし、この渋滞はどうすればいい・・・渋滞は電話している間にもピクリとも動かない。

「どうすればいい・・・」

思わずそうつぶやきハンドルに突っ伏したその時、車のサイドガラスを叩く音が聞こえた。

顔をあげそちらを見ると見知った顔が3人居た、サイドガラスを開ける。

「わー!見てみてジュリアちゃん!千早ちゃん!やっぱりプロデューサーさんだったよ!」

「お!ほんとだこんなところで何してんだプロデューサー?」

「こんばんはプロデューサー、何かお困りですか?」

聖夜の奇跡ってのは本当にあるらしい。


「麗花、お前に頼みがあるんだが」

「あれ~?プロデューサーさんが私に頼みなんて珍しいですね!あ!だから雪も降ってるのかな♪」

いつもはこいつの気ままさと独特な感性にはついていけなくてできるだけかかわらないようにしてるが
今日に限っては女神に見える。


・・・・・・


どうしてこうなった・・・

レイとチハと一緒に教会に行って聖歌隊の讃美歌を聞いて帰りに電車が使えなくなってたから三人でぶらぶら歩いてた時、レイが何か見つけたって言って走って行き。

渋滞に巻き込まれてるプロデューサーを見つけた後、レイがプロデューサーに話しかけて。

そのあとプロデューサーは急ぎの用事があるみたいでレイに車とモモとロコを劇場まで送るように頼んで自分は走ってどこかに行ったことまでは覚えてる・・・

それがなんで・・・


「ロコさん!?ロコさん!?大変ジュリアさん!ロコさんが気絶してる!」

「大変よジュリア!パトカーが追いかけてくるわ!」

「みんなでドライブなんて初めてで楽しいね♪」

外は真っ暗だから何処かはわからないけど、他に車が一台も見当たらないから相当都心から離れたところだろう。

「大変よジュリア!パトカーが増えてる!」

「う~ん、これ劇場の車だから捕まったら律子ちゃん達に怒られちゃうよね・・・」

「ロコさん!!ロコさん!!しっかりして!!」

何だこの地獄絵図・・・


「よ~し!おまわりさんにつかまらないように張り切って逃げちゃお~!お~!」

レイがそういうとさらに車が加速した。

「すごいわジュリア!追いかけてきてたパトカーがもうあんな後ろに!」

「・・・・・・」

「おい!モモ!?モモ!?しっかりしろ!?」

レイがハンドルを回した次の瞬間、ガコンッ!!という衝撃があり車が宙を舞った感覚がした。

全く・・・恨むよプロデューサー・・・


・・・・・・

麗花に桃子たちと車を任せて別れた後、風花が指定した店の方角に向かって走りながら風花にもう一度電話を掛ける。

『もしもし!』

「風花!ロコたちは麗花が引き受けてくれた!今走ってそっちに向かってる!だからもう少し待っててくれ!」

『はい・・・!』

電話を切った後下り階段に差し掛かった、早足で降りようと一歩目を踏み出した瞬間、足が空を切る。

元々走るのに適していない革靴の上に路面が凍っていたためすべりやすくなっていたのだろう、そのまま階段を転げ落ちる。


一番下まで落ちた後すぐに体を起こす、節々が痛いが大したケガではないだろう。

真っ先にコートの内ポケットに入れていた箱を取り出す。

・・・よかったへこみもなければ汚れもない、再び走り始める。

場所を確認するためにポケットに入れていた携帯を取り出すが、電源がつかない。

さっき落ちた時に壊れてしまったのだろう、舌打ちを一つしてそのまま走り続ける。

大丈夫、店の周辺の地図なら何度も見たはずだ。

待っててくれ、風花・・・!


・・・・・・


プロデューサーさんから最後に電話があってからかなり経ちました。

心配になって電話をかけてみますが、電源が入ってないみたいです、何かあったんでしょうか・・・余計に心配になります。

お客さんも私を除いてもうみんな帰りました、マスターが看板もしまいそろそろお店も終わりみたいです。

「すいません・・・マスター、もう出ますね・・・」

「いいんだよ風花ちゃん、もう少し待ってても」

そういいながらマスターは暖かいコーヒーを出してくれました。


私が苦いコーヒーが苦手なのを知ってるのでミルクをたっぷり入れてくれています。

「ありがとうございます、マスター・・・でもいいんです、もしかしたら場所がどこかわからなくてこの近くをうろうろしてるのかもしれませんし・・・私、探してきます」

出されたコーヒーをすぐに飲み、荷物をもってそういいます。

「そうかい、気をつけなよ」

「ありがとうございます・・・お代、ここに置いときますね」

店を出るととんでもない冷気に襲われました。


吹雪は止んでこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいい程度になっていたもののあまりの寒さに気持ちが萎え、店の中に逆戻りしそうになります。

けど、プロデューサーさんもこの寒さの中に居ると考えたらなんてことありません。

気持ちを奮い立たせて駅の方に歩き出そうとしたとき、前から人影がやってくるのがみえました。

その人はどれだけの距離を走ってきたのか、遠目にもわかるほど大きく呼吸が乱れて肩で息をしていました。

私もその人のほうに向かって歩き出します。


顔が見えるほど近くにきて気づきましたが、その人はこの寒さにもかかわらず汗が額から垂れていました

何処かで転んだのかコートも雪だらけでボロボロです。

顔がはっきり見えたことで私の足は徒歩からだんだん早足になり手を振って走り出します。

そしてその勢いのまま人の胸に飛び込みました。

私が飛び込んだことでその人は少しよろめきましたが、すぐに優しく肩を抱きしめてくれました。

抱き合うことでその人の呼吸の音から胸の鼓動まで鮮明に聞こえます。

ちょい待てなんだこなぁぁぁぁぁぁゆきぃぃぃぃぃって!?

>>52がなんかおかしなことになってました・・・


吹雪は止んでパラパラと降る程度になっていたもののあまりの寒さに気持ちが萎え、店の中に逆戻りしそうになります。

けど、プロデューサーさんもこの寒さの中に居ると考えたらなんてことありません。

気持ちを奮い立たせて駅の方に歩き出そうとしたとき、前から人影がやってきました。

その人はどれだけの距離を走ってきたのか、遠目にもわかるほど大きく呼吸が乱れて肩で息をしていました。

私もその人のほうに向かって歩き出します。


「こんなに息を切らせてまで急いで来てくれたんですね」

「遅れてごめん・・・」

「いいんですよ」

「待っててくれてありがとう・・・」

「来てくれるって信じてましたから」

「いつも素直じゃなくてごめん・・・」


「それは私もだからおあいこです」

「今日は本当に楽しみだった・・・!」

「私もです」

こんなに素直なこの人を見るのは初めてです。

背中に回している手は冷気に晒されとても冷たいですが、抱き合っていると身体はとても暖かです。

ずっとこうしていたいぐらい・・・


「お二人さん!」

しばらくそうしていると後ろから声をかけられました。

その声を聞いて我に返ったのかプロデューサーさんは慌てて私から離れます。

私も慌ててプロデューサーさんから離れて、声がしたほうに向きなおります。

もう少し素直なプロデューサーさんを見てたかったな・・・ちょっと残念です。


「待ってた人、来たみたいだね」

声の主はマスターでした。

「はい!おかげさまで!」

「なら早くうちの店に入りなさい、二人とも風邪をひいてしまうよ?」

「え・・・?でもお店はもう閉店じゃ・・・」

私がそういうとマスターは悪戯っぽくウインクをしました。


「お店はもう閉じるよ、今日はお二人の貸切さ」

マスターはそういって店の扉をあけ手招きしています。

「行きましょう、プロデューサーさん!」

そういってようやく息を整えたプロデューサーさんの腕を引っ張ります。

プロデューサーさんはバツが悪そうに頭を掻いた後、苦笑しながら歩き出しました。


「あ、そうだプロデューサーさん!」

「ん?」

「実は今日は私からプレゼントがあるんですよ?」

「そうか、俺からもある」

「じゃあ、あとで交換しましょうね♪」

「それは無理だな」

「な、なんでですか~・・・」

「なんせ俺のプレゼントはな・・・」


・・・・・・


今朝は昨日の夜が嘘のように晴れ渡ったいい天気だった、しかし相変わらず寒い。

今日の仕事はクリスマスの生番組の司会をなることになった莉緒の付き添いだ。

車の中の暖房を強くしながらコーヒーを飲んでいると劇場から支度を済ませた莉緒がやってきた。

ドアを開け助手席に座らせた後、車を発進させる。

「いやー!今日も寒いわねプロデューサー!」

「寒い寒いというな、余計に寒くなる」



「そんなこと言ったって寒いんだから仕方ないじゃない・・・あれ?」

そんな毒にも薬にもならないことを話していると不意に莉緒の視線が止まり、俺の左手の中指を見つめていた。

「プロデューサー指輪なんてつけてたっけ?」

全く、こういう所は目ざとい女だ・・・


「お前には関係ないことだ」

「えー!何それ気になるじゃない!もしかしてそれって誰かからのプレゼントとか!?ねーねー教えなさいよ~」

そういって運転中にもかかわらずこちらの肩を揺すってくる。

クソッ・・・!ウザったい!この女には絶対話すものか・・・

「ね~ね~ってば~~」


・・・・・・


「おはようございます!」

「おはよう風花ちゃん」

クリスマス公演の手伝いのために劇場の事務所に行くとまたこのみさんが居ました。

「はい!おはようございますこのみさん!」

「あら、なんだか今日はやけに機嫌がいいわね、もしかして昨日何かいいことあった?」

「えへへ~そう見えますか~」


確かに今朝から自分でもわかるぐらいに浮かれてるのは確かです、今ならどんな仕事でもどんと来い!って気分です。

「察するにその左手の指輪に秘密があるわね!」

さ、流石このみさん、観察力が鋭い。

「昨日クリスマスプレゼントにもらったんですよ、ペアリングなんだそうです」

「へ~・・・よかったじゃない!・・・ん?でも、その指輪少し小さくない?」


「いいえ、サイズはこれで合ってますよ」

「ふ~ん・・・そうなの・・・?」

このみさんは少し怪訝な顔をしてましたが納得したようです。

「さ~!今日はがんばります!」

「おお!風花ちゃんやる気十分ね、ならお姉さんもいっぱい頼っちゃいますか!」


・・・・・・


私がプレゼントにマフラーを渡した後にプロデューサーさんから渡されたプレゼントは二対の指輪でした。

彼はそれを私の中指に通した後、もう片方を自分の中指に通しました。

でも、少しサイズが小さいような・・・

「プロデューサーさん、これって・・・」

「これは本当は俺が君に贈っていいようなものではないと思ってる、だけどある種のけじめと約束だと思って受け取ってほしい」

いつになく真剣そうな表情でプロデューサーさんはそういいました。


「これは本来別の指のサイズに合わせたものだ、だけどそこの指にはまだつけることはできない」

プロデューサーさんは自分にも言い聞かせるように一言一言ゆっくりと話していきます。

「いつか、俺が君をトップアイドルにしたときに、もう一度この指輪を贈らせてほしい、それまではこの指輪は中指につけていてくれ」

まっすぐこっちを見てプロデューサーさんはそういいます
そういえばプロデューサーさんとこんなにまっすぐに目を合わせたのは初めてかもしれません。

プロデューサーさんがここまで真剣に話してくれているのだから私もまっすぐ思いを告げます。


「確かに、今この指輪を渡されても私は返事はできないと思います・・・」

それを聞くとプロデューサーさんは少し苦そうに顔をゆがめました。

「でも、私が満足できるアイドルになる、その日が来たら返事をさせてください、それまではこれは預かっておきます」

それを聞くとプロデューサーさんは安心したように息を吐き出し緊張していた肩をおろしました。

「・・・受け取ってくれてありがとう」

釣られて私も息を吐き出します。



「あはは・・・なんだか緊張しちゃいましたね・・・」

「悪いな、急に変な雰囲気にして」

「いいんですよ、それにしても綺麗な指輪をありがとうございます」

そういうとプロデューサーさんは少し照れくさそうに頬を描きました。

「お、おう・・・」

「で~も!私がちゃんとこれを正しい指にはめれるようにプロデュース、しっかりお願いしますね?早くしないと中指でちょうどよくなっちゃいますよ?」

少し上目づかいにそういうとプロデューサーさんは顔を真っ赤にしてそっぽを向きました。


け、結構言ってて恥ずかしいセリフでしたが効果は抜群みたいです、それでも恥ずかしい・・・

「やれやれ・・・やっぱり敵わないなお前には」

だんだん自分にもダメージが来て俯いているとプロデューサーさんがボソッっと何かを言いました

「え?い、今何か・・・?」

「なんでもない」

あ、だめです、これはいつもの天邪鬼モードです。

「少しぐらいなら教えてくれても・・・」

「なんでもない!」

「そ、そんな~・・・」




END


ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁつかれたもぉぉぉぉぉぉぉ!!!
張るだけでも長いし途中いいところでこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいに邪魔されるし水疱瘡のせいで体かゆいし最悪だよ!!!!!
HTML化依頼行ってくる!!!!!

あれ・・・HTML化依頼スレッドpart25が見つからないぞ・・・

■ HTML化依頼スレッド Part24 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417440098/)
まだ24だからかな?

投下するときはsageじゃなくてsagaな

>>76
ああ、ありがとうございます
HTML化依頼行ってきます

おつ!
風花Pまじツンデレ

こういう雰囲気大好き!
乙!

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