傭兵「戦争か…」 (37)


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↓1

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ファンタじ


「フゥ…」

ちょいと岩陰で一休み。
いくら金を貰っているからといって働き続けなければいけない分けではあるまい。

辺りを飛び交う火球やら雷光を肴にボトルの中の酒を呑む。
今は戦時中だし此処は戦場。未成年が酒を飲もうと気にするヤツなど居やしない。

もっと言えば俺はならず者の傭兵だ。法なんざ知った事ではない。

俺にが知ればいいのは酒と肉の味だけ。女の味も知れればいいが生憎知る機会がない。同僚は村娘を襲っただの金を払ってしただの言っていたが無理矢理は趣味じゃない。


ま、そんな話は置いといてだ、そろそろ仕事しないと兵隊さんに怒られるからな。

「よっこらしょっと……危ね!」

立ち上がるや否や頭上を火が掠めていった。
やっぱズリィよ魔法ってやつは、こちとら遠距離なんざ弓か火炎瓶しかねぇってのに。魔法覚えよっかなー、でも座学とか苦手なんだよなー。
ま、考えるのは後でいっか。

「とりあえずお仕事お仕事ォー!」

腰から無造作にぶら下がった両刃の直剣、所謂ロングソードを抜き放つ。

ホントはもっと肉厚な剣が欲しいんだよなぁ。うちの騎士サマはなんだっけ、……十字剣? だっけ?
まあなんでもいいけどさ、あれでよく戦えるよなー。折れそうでヒヤヒヤしそうなモンだけどな。


こちとら金で雇われた傭兵。当然つーか物資の配給なんざありゃしない。
くれんのは金とクソマズイ飯だけ。傭兵は使い捨てだから衛生兵もいない。

ヤんなっちゃうよなー。ま、払いが良いから暫くは寝返らないけど。

「残るはひーふーみーよー………6人か」

さっきから火やら氷やら放ってきてるのが3人、あからさまな肉体派が3人。きれいに分かれたな。

それに比べ此方は……俺と同僚1人とお国の兵士が4人か。ちょうどだな、タイマンでもするか。

あ、ダメだ。同僚のアイツはもうちょいでトンズラする気でやがる。んでもって兵士4人は完ッ全にビビって戦意喪失してらぁ。あれか、新兵か。
ならまぁ上出来だ。


新兵なんざ8割は初陣で死ぬ。生き残る2割は芯の通ったヤツか極端に臆病なヤツだ。
ま、臆病なヤツの方が死ににくいし強くなる。後々使い物になんなら今はいいさ。

語ってる場合じゃねぇな。実質俺1人対敵6人じゃん。メンドクサァー!

ま、最初は200人ちょっといたんだし、マシだと思って我慢するか。

「よーい……ドン!!」

魔法が止んだのを見計らって敵陣へ疾走する。こちとらお国の兵士サマと違って重苦しい甲冑なんざありゃしねぇ。魔法が一発でも当たれば即退場。


俺に気づいて向かってきたヤツに腰に巻いておいた分銅鎖を投げつける。

「なっ!?」

向かってきた巨漢をくるりと包み、その身を縛る。
走っている最中の事だったので巨漢はそのまま倒れ伏した。

「うし、捕虜ゲットォー!」

捕虜を連れ帰ると報酬が増えるので思わず笑顔が綻ぶ。

「クソッ…!」

「援護はまだか!?」

次に接敵したのは浅黒い肌の男と無造作な顎髭を生やした男。

顎髭の言ったとおり、そろそろ魔法の援護がくる頃だろう。早めに始末しなくては。


大振りに斧を降り下ろそうとする顎髭の男の両腕を切り上げ切断し、すれ違う。
刺突してきた浅黒の男の顔と同じ高さに剣先を置いてやる。浅黒の男は必死な顔のまま串刺しになった。

腕を斬り飛ばされ、地をのたうちまわる顎髭の男をせめてもの情けで首を撥ねる。

火やら氷やらが飛んでくる前に終ってよかったよかった。

「さて、後はー……って、あり?」

俺が見たのは3人の人影が背を向けて走り去る姿だった。
今更撤退かよ。ま、いいさ、何時誰が雇い主になるかわかんねぇ家業だから無意味に人は殺すのは不本意だ。何時か雇い主になるかもしれない金づるだからな。

「んじゃ、捕虜連れて帰るかァー!」

今日の報酬は期待できるなぁ~♪

本日の戦いの死者総数、253人。

今日は終い。


「68に捕虜1」

「………偵察兵の報告と一致、これが今回の報酬だ」

ドチャリ、と音を発てて置かれる小袋。パンパンに膨れたそれに入っているのは金貨銀貨。普通に働いていては御目にかかれない金額だ。

「オォウ、太っ腹ァ~♪」

なぜ傭兵にそこまでの大金を払うのかと言うと、傭兵は明日今日死ぬかわからぬ職だ。なら溜め込まれるより大金を使わせて、金を廻らせた方がいい。




「あ、そいやさ、俺の剣がさ、血ぃ付きすぎてなまくらんなってんだけど代わりになんかくんない?」


仕事を頑張っている証なので別段隠すことでもあるまい。
それに斬れ味が悪いのは敵にとっても悪い事だ。

例えば腕をぶった斬るのも斬れ味が悪ければ腕の骨をただへし折って苦痛を与えるだけだろう。


「……貴様等に物資の補給は無いと言った筈だ」

「……が、今日の真夜中に軍の品を横領している商人が来る。そいつから買え」

この前なんか日本人の傭兵のニュースやってたな




今どき軍の品を横領する輩は珍しくない。

ま、此方としてはありがたいからどうでもいいが。

それにしても何を買おうか、うーん……


「そいじゃあ俺はテントに戻らせてもらうかねぇ」


俺達傭兵は最前線基地の一角に各自テントを張って生活している。

テント、と言っても棒と布切れで拵えた木陰のようなモノである。

>>12
今ならフランス外人部隊に入隊できるよ!




「ンー……随分数が減ったもんだ」


国が雇った傭兵は100人ちょっと。そして今日死んだのが30人ちょっと。

ま、これで死ぬのならチンピラ程度の奴らだったのだろう。腕の立つ奴らはほとんど敵側に行っちまったからそんなモンだろう。

こっち側にいる奴は金が欲しかったか国に刃向かうのにビビったかのどっちかだ。

かくいう俺は前者、金が欲しい人間だ。

正直、国の行く末なんて知ったこっちゃない。どうせこの戦い、どちらが勝っても国は滅ぶ。




戦争の発端は愚王による暴政に市民の堪忍袋の緒が切れた事が始まりだ。

始めの暴動市民だけだったが途中、兵士たちも参加し騎士や高名な賢者までもが暴動に参加。もちろん不満のあった傭兵達もそれに参加。

そして肥大化して戦争。


それを見て金を搾ったら拠点を他の国に移そうと思った俺であった。


「やあ、やっと見つけたよ」





ひょっこりと布の切れ目から顔を出して声を掛けてきた男。何度か仕事を共にしているので俺はこの男が何者か知っている。


「第3騎士団の騎士団長サマが一介の傭兵に何の用ですカナ?」


「ははは、つれない事言わないでくれよ。僕と君の仲だろう?」


こんな見るからに弱そうな優男が騎士団長。そりゃ国もダメになるわ、と言いたい所だが、コイツはかなり強い。

詐欺と言っていい位に強い。




「勝手に友人面すんじゃねーよハゲ、で何の用だ」


「いや、なに、君と話がしたくてね」


「話す事なんざねぇサヨウナラ」


「残念だ、夕食会に招待しようと思ったのに」


「………しゃあねぇーなぁー、行ってやるよ」


決して飯に釣られた分けではない。どうせ断ってもコイツがしつこく誘ってきて鬱陶しいからである。決して飯に釣られた分けではない。




「さ、着いたよ、此処が僕のテント。夕食までまだ時間があるし、少し話をしよう」


にゃろう。コイツ夕食まで時間が空いてるのを分かってて俺を誘ったな。

どんだけ俺と話してえんだよソッチのケでもあんのか。


「それじゃあ中に」


「――団長!」




ガシャガシャと鎧の擦れる音と共に飛んできた女の声。

振り向けば、ブロンド髪をた靡かせた美人の女騎士サマが走って来ていた。

はて、この部隊にこんな奴居ただろうか?

こんだけインパクトがあれば忘れないと思うのだが。


「こんな奴居たっけ?」


「ああ、彼女は君とした最後の仕事の少し後にウチへ来た娘だよ」



ほーん、女の癖に魔術師でなく騎士でねぇ……
柔よく剛を制すってか。それとも人材不足か。


「団長! 何故こんな輩と!」


「そんな言い方は失礼だろう? 彼は僕の友人だ、夕食に招こうと思ってね」


友人じゃねーし赤の他人だし。

しかも他の奴ら乗り気じゃねぇのかよ。団長なんだからそこらへんはしっかり説得しとけよ。


「ぐっ……なんでこんな奴……大した腕もない癖に」


――カチン。



「そんな事はない。彼は僕なんかよりよっぽど強い」


「御謙遜を! 貴方は間違いなくこの国で1、2を争う騎士だ! そんなゲスに劣るはずがない!」

――イラッ。

「いや、僕は彼に勝負を挑み、負けた。彼はれっきとした強者だ。勇者様に勝てるとしたら彼くらいだろう」



「何を仰います! そんな筈がありません! 団長との勝負だって何か卑怯な手を使ったに決まってます!」


――ブチリ。

我慢の限界だ。このクソアマ好き勝手言わせておけば言いたい放題言いやがって、鎧ひん剥いて野郎共の中に放り込んでやろうか。


「そこまで言うなら君も彼と戦ってみるといい」


「あ゛? 勝手に話進めてんじゃねぇよハゲ。誰がんな金の足しにもなりゃしねぇ戦いするかよ」



「……彼女に勝てれば夕食のおかわりは自由としよう」


「――と思ったが、どっちが上か分からせる必要があるし、仕方ねぇ。やってやるよ」


女に嘗められてるのが気に入らないだけだ。決して飯に釣られた分けではない。

逃げたと思われるのが癪に障るから相手をするだけだ。決して飯に釣られた分けではない。

「そうと決まればすぐに始めようか。夕食に遅れてしまう」


「ふん、すぐにその鼻を明かしてやる」


「はっ、血気盛んな女だ」


◆◇◆◇◆◇◆◇


連れていかれたのは拓けた場所で、地面に踏ん張った跡や何かに削られた痕からするに兵士達の訓練場、といった所だろう。


「どちらかが降参するか、逆転のしようがない状態まで追い詰めれば勝ち。いいね」


「はい!」


十字剣と長方形のタワーシールドを構える女騎士。
タイマンでそんなクソデケェ盾は邪魔にしかならないという事も分からないのか。



「本当ならお前程度、素手で充分だがてめぇらの糞の足しにもならねぇ騎士道とやらに付き合ってやんよ」


「貴様! 騎士を愚弄するかッ!」


あーあー怖い怖い。騎士ならおちょくられただけでキレんなっつの。
ちゃんと剣持って相手してやるだけ有り難く思えってんだ。


「はいはいキシドーはスバラシーですねー、分かったから掛かってこいよ騎士サマ」



「このッ!」


盾を前に構えた突進。覗き穴から見える女騎士の眼には怒りが宿っていた。

そんな重装備でこの速さは大したモンだ。しかし文字通り動きが直線的すぎる。

これでは猪牙船だ。


「精々怪我しねぇように避けろよ」


剣を持つ腕を弓の如く引き絞り、矢の如く突きを放つ。



放たれた矢は覗き穴へと吸い込まれる。

ガキン、という音が響き、刃が止まる。

肉を裂いた手応えはなかった。上手い事避けたようだ。

剣を引き抜き女騎士の姿を探すと、最初に立っていた位置まで戻っていた。


「よォ、上手く避けんじゃねーか」


「くっ……」



「そんじゃあ此方の番だ」


剣を逆手に持ち換え、女騎士から刀身が見えぬよう自分の後ろへ隠す。
これで刃の飛んでくる方向は分かるまい。


「いくぜ」


「っ!」


跳躍で一気に距離を積める。剣戟に身を構える女騎士へ上方から斬りかかる。



「剣に気を盗られ過ぎ、足下がお留守だぜ?」


「なっ!?」


と、見せ掛け足払い。

斬撃が飛んでくると思い迎撃の体制をとっていた女騎士は虚を突いた足払いにまんまと払われ、尻餅を着いてしまった。

すかさず首に突き付けられる刃。



「型にはまったスポーツみてぇな剣術じゃあ一生勝てねぇよ」


「くぅ……!」


「そこまで!」


告げられた勝敗の合図。勿論俺の勝ち。

小娘とは越えてきた場数が違うんだよ場数が。

◇◆◇◆◇◆◇◆


「ね、強かったでしょ?」


「……腕が立つのは認めます。しかし! 次は負けない!」


「なんだ? 今すぐやるか? あ?」


「もうすぐ夕食の時間だからダメだよ二人とも」

◇◆◇◆◇◆


ふぃー、満腹満腹。久しぶりに旨い飯を食った。

今度からあの女騎士挑発して飯集ろうかな。


「お?」


傭兵達のテント付近に大荷物の見慣れない男を見つけた。

あいつが商人か。


「よォ」


「! やあ、傭兵かい? なら何か買っていきなよ」



言われずともそのつもりである。

取り敢えずは使い物にならなくなった剣の代わりが欲しい。

そう思って商品を物色していると、


「ん? おい商人、この本はなんだ」


「ああ、それは魔導書《グリモア》。簡単に言えば魔法を覚える為の本さ」



ほー、そんなんも売ってんのか。これを期に魔法覚えるのもいいな。

うーむ、どうしたもんか。


・ぼろぼろの刀
・真っ直ぐなマチェット
・黒い鎖
・太極剣
・数十本の短剣
・浮遊魔法のグリモア
・空気圧縮のグリモア
・氷のグリモア
・雷のグリモア


安価↓3

誰もいなけりゃテキトーに決める

・雷のグリモア

ボロボロの刀

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