【艦これ】駆逐イ級とバイト艦の話 (19)
イ級は気がついたら深海に居ました。
辺りを見回しても暗い闇が拡がっていてイ級は最初はそこが深海だと気がつきませんでした。
ただ懐かしい感覚と胸の中にある何かがイ級に知識を与えてくれました。
深海棲艦になってしまったこと。
此処がイ級が生まれ変わった場所。
この闇がイ級に平穏を与えてくれた事。
ですがイ級は何か大切な事を忘れてしまっていました。
とても大事な…何かがイ級から削げ落ちていました。
イ級は考えました。
何を忘れてしまったのだろう?
何を失ってしまったのだろう?
何を捨ててしまったのだろう?
どれだけ考えても何だったのか思い出せません。
だからイ級は旅に出る事にしました。
闇の中は心地よかったけれどイ級はそれよりも無くした何かを知りたかったのです
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イ級は様々な海を旅しました。
北は北方領域、南は南西諸島まで自由気ままに旅をしました。
道中でイ級は傷ついた艦娘を助けました。
困っている者は助ける。
イ級の本能がそうさせたのです。
艦娘の治療をしていると艦娘が目を覚ましました。
そこからがとても大変な事になったのです。
艦娘が突如、手当てを振りほどいで暴れ始めたのです。
イ級は怪我人を攻撃する訳にもいかず、されるがままじっと堪えました。
なぜなら艦娘の目には涙があったからです。
艦娘が空腹で倒れた後、イ級はまた艦娘の手当てをしました。
敵でも味方でも助けられるなら助けます。
頭によぎったその言葉が誰のものかはイ級にはわかりません。
ただ、今のイ級は目の前の艦娘を助けられた事を誇りに思っていました。
目が覚めた艦娘はイ級に問いました。
なぜ助けたの?
イ級は答えます。
助けるのに理由がいるの?
艦娘はその言葉を聞いて小さくイ級にお礼をいいました。
こうしてイ級と艦娘は出会ったのです
よさげお話みっけた期待
……かなしいおはなしっぽい?
イ級は艦娘に対して事あるごとに艦娘の事を聞きました。
誰かと旅をするのが嬉しかった事と純粋に艦娘の事が知りたかったのです。
艦娘も最初は嫌がりましたが時が経つにつれて色々な事をイ級に教えてくれました。
大事な妹がいた事
艦娘には二種類あり、必要にされるかされないかで全てが違う事
艦娘は必要にされなかった為に艦娘からバイト艦になってしまったこと。
バイト艦になりたくないために妹が轟沈した事。
イ級は艦娘が涙を浮かべてその話をしている時に胸が痛むのを感じました。
艦娘もそれがわかったのかイ級を心配してくれます。
ですがイ級の痛みは治まりません。
日に日に増していく痛みにイ級は悩まされました。
そしてある日、イ級はバイト艦以外の艦娘と出会いました。
他の艦娘に気がついたのはイ級でした。
イ級はそれを艦娘に伝えるか迷いました。
伝えたら艦娘は何処かに行ってしまう。
イ級はそれが嫌でした。
ですがそれ以上に思ってしまったのです。
い級と居ては何時まで経っても艦娘は幸せにはなれないことを。
イ級は艦娘に正直に伝えました。
艦娘は何も答えてはくれません。
艦娘は何もしようとはしません。
さようなら
イ級はそう言って艦娘と別れました。
後ろを振り返る事はしませんでした。
目に溜めた涙が溢れてしまうかもしれないからです。
イ級はまた独りになったのです
イ級が最後に振り返ったとき一番欲しかったものを手に入れてほしいぜ···
バイド艦かと思って開いたらもっとやりきれないものだった……
独りになったイ級はまた旅を始めました。
様々な海で様々なモノを見ました。
泣きながら海に沈む艦娘を見ました。
微笑んで海に変える仲間を見ました。
ですがイ級は誰も沈めませんでした。
共食いを良しとする仲間
見ただけで此方を攻撃する艦娘達
イ級はそれでも誰にも牙を剥きません
救う事が使命だと信じていたからです
だからイ級はボロボロになってしまいました。
傷を癒してもそれ以上の傷を負い
誰かを助けても誰もあの時の様に感謝しません。
イ級はそれでも誰かを助ける事をやめません
イ級は誰かを救う素晴らしさを知っています
それがイ級の誇りでした
その誇りだけがイ級を支えました。
目を失い、視界が消え
タービンが壊れ速力が落ち
装甲が削られ死にかけても
イ級は救う事を諦めません
そしてイ級は出逢ってしまいました
一緒に旅した艦娘と
艦娘はあの時と同じ様に問いました
なぜ、助けるの?
イ級は当たり前のように答えます
助けたいから助ける
イ級は目が見えません。ソナーから艦娘がいる位置だけはわかりました。
艦娘はイ級にいいました。
あなたは自分を助けないの?
イ級はその問いについて考ました
イ級は困っているのだろうか?
イ級は助けてもらいたいのか?
その問いの答えはどれだけ考えてもイ級はわかりません。
ですがイ級は一つの事を思い出しました
わからないけど、探し物をしている。
イ級は艦娘に言います。
闇から抜け出したのは大切な何かを失ったからだと
それを忘れて誰かを助けていたことを
艦娘はイ級に言いました
私はそれが何かを知っている
イ級は艦娘に問います
なら教えてよ
イ級のその言葉に艦娘は答えません
ですがイ級は艦娘に抱きしめられました
冷たく、生温い感触をイ級は感じました。
艦娘は言いました。
貴方が失ったのは名前。その名前は名前はね
潮って言うのよ。
潮
その言葉を聞いてイ級は思い出します
艦娘の代わりに轟沈した名前も潮だったということに。
ごめんね、こんな姉妹艦で
艦娘から暖かい水滴が落ちてきます。
イ級はそれが涙だとわかりません。
だからイ級は問いました
困っているの?
艦娘はより一層に涙を流します。
困ってない、困ってないよ。
イ級は艦娘の言葉を信じます。
困ってたら助けてあげるから言ってね
艦娘は答えません。
ただ抱きしめる力は強くなりました。
艦娘はイ級に言いました。
私を助けて欲しい
イ級は艦娘に言いました。
何をしたらいい?
艦娘は声を震えさせていいます。
お姉ちゃんと呼んで欲しい。
イ級は答えました。
お姉ちゃん
艦娘はそっとイ級から離れます
ありがとう
艦娘はそう言って消えました
ソナーに反応しない為にイ級は艦娘が何処にいるのかがわからないのです。
イ級は急に不安になりました。
なぜ艦娘は消えてしまったのだろうか?
イ級にはわかりません。
イ級は泣きました。
心のそこから泣きました。
イ級は自分が泣いているとは思いません
ただ心のそこからから、空っぽの何かから湧き上がってくるモノを抑えることができなかったのです。
イ級は三日三晩泣き続け、燃料が尽きて動けなくなりました。
動けないイ級は海に沈んでいきます。
深い、深い闇に還っていきます。
還っていくはずでした。
そっちに行ってはダメよ。
艦娘の声がしました。
動けないイ級はその声に答えます。
もう身体が動かない
艦娘の声はイ級に言います。
動ける。そう望んでいないだけよ。
イ級はこたえます。
動かなくてもいい。このまま還る。
艦娘の声は言います。
本当にそれでいいの?
イ級はその問い答えられません。
それでいいはずなのにイ級は闇に還るのが怖くなっていました。
助けてあげる。今度は私の番だから。
イ級は暖かい何かに包まれました。
なんで助けてくれるの?
声は言いました。
私はあなたのお姉ちゃんだから。
イ級は何を言っているのかわかりません
でも暖かい何かはイ級の中に入ってきます。
それは暖かい記憶でした。
艦娘とご飯を食べ
艦娘と笑いあって
艦娘と一緒に寝る
わからないのはイ級が艦娘になっている事
イ級は潮と呼ばれる艦娘だった事を思い出しました。
潮も艦娘と同じバイト艦だったのです。
潮は姉に言いました。
お姉ちゃんはどうするの?
声は答えません。
ただ暖かい何かが潮の中に入ってきます
お姉ちゃんは沈んだの?
声は言いました。
還る場所に還っただけだよ。
潮は叫びます。
お姉ちゃんが助かるなら私は!
声は静かに答えます。
ダメよ、私は気がついたの。
大事なのは私の生命ではなくて
私を助けてくれた大事な妹とだって事に
だからね、潮。
私が貴女を助ける。
潮は…イ級は意識を失いました
気がついた時には潮は海上に居ました。
全身がボロボロでロクに動くことができません。
潮の前にはイ級が居ました。
イ級は潮に聞きました。
何故、ボロボロなの?
潮は答えます。
お姉ちゃんが助けてくれたから。
イ級は潮に言いました。
なら私も助けてあげる。
潮は涙が流れるのをグッと我慢します。
そして一言だけ言いました。
ありがとう
終わり
おつおつ
ほろっときた
雷電姉妹かと思ったら潮だったか
乙
補給もせずに使うだけ使ったら解体するだけの癖になーにがバイト艦だ
バイトどころか奴隷以下だろ
バイドかとおもった…R-TYPEじゃないのか…
B系機体やめーや
乙
うちの鎮守府のキラ付けは単艦特攻です
本文ではなく読者のバイド係数が高い
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