加蓮「まだ?」李衣菜「うん、まだ」 (26)



―――


泰葉「まだ冷蔵庫に入れたばかりじゃない」

加蓮「んー……」ウロウロ

李衣菜「ほら、雑誌でも読んでなよ」

加蓮「ん」


ぺら

  ぺら


李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「…………」ソワソワ


加蓮「……もうかな?」

李衣菜・泰葉「「だからまだ」」

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加蓮「待ってるだけじゃつまんないー」

李衣菜「そんなこと言ったって……」

泰葉「ふふ、待ち遠しいのは分かるけどね」

李衣菜「ちゃんと生地を寝かせないとダメなんだってば」

加蓮「むー、クッキー作りってけっこう大変なんだね」クテー

またお前か!待ち侘びたぞ!!

泰葉「大変だけど、せっかくのプレゼントなんだから。ね?」ポフポフ

加蓮「ん。そうだよね……よし、頑張ろ!」

李衣菜「うんっ、その意気だよ!」


加蓮「ま、暇なのは変わんないんだけどね」グダー

李衣菜「あーもうっ」

泰葉「あはは……」

加蓮「他にやることがあれば別なんだけどなぁ」

李衣菜「って言っても、片付けだってしちゃったし」

泰葉「うーん……あ、そうだ」ティン

加蓮「何かある?」

泰葉「せっかく李衣菜の家のキッチンを使わせてもらってるんだから、お料理の練習なんてどう?」

李衣菜「料理かぁ。うん、壊滅的な腕の加蓮にはちょうどいいかも!」

加蓮「う、うるさいっ」

泰葉「ふふっ。どうかな李衣菜?」

李衣菜「うん、やろっか! 実は今日二人に、夕飯にカレーごちそうしようかなって思ってたんだ」

泰葉「そうなの? じゃ、破滅的な加蓮に頑張ってもらおっか」

加蓮「ちょっと」

李衣菜「あ、でも破壊的すぎだから材料切ってもらうだけに……」

泰葉「そうよね、さすがに全部は絶望的だし……」

加蓮「なんなの、もー!」

李衣菜・泰葉「「あははっ♪」」

―――


加蓮「――されるがままにエプロン着ちゃったけど……ほんとにやるの?」

泰葉「やるの。大丈夫、皮むきは李衣菜がやってくれるから」

李衣菜「そうそう、加蓮はとんとんとん、って切るだけでいいよー」クルクル ムキムキ

加蓮「はぁ……包丁なんてほとんど握ったことないし……」

泰葉「うん、だから今日は切るだけ。大丈夫、怪我しないように見てるから。ね?」

加蓮「はーい……」

李衣菜「平気だって、最初は誰だって刃物持つの怖いんだからさ」サラサラサラ…

加蓮「……私としては、李衣菜がこともなげに野菜の皮を剥いてるのにびっくりなんだけど」

李衣菜「あはは。まぁお母さんの手伝いとかしてるうちにね」

泰葉「でも、すごいね。私も一人暮らしを始めて、お料理もちょっとはしてるつもりだけど……」

加蓮「なんだっけ、ぴーらー? ってのは使わないんだ」

李衣菜「うん、包丁に慣れとけーって言われてて」

加蓮「すごーい……!」キラキラ

泰葉「尊敬……!」

李衣菜「そ、そんなそんな……えへへぇ……♪」テレテレ シュルシュル

李衣菜「――なんて言ってるうちに、はい第一弾のとうちゃーくっ」

泰葉「ふふ、ありがとう李衣菜。……さ、加蓮の出番よ?」

加蓮「よ、ようし……!」プルプル

李衣菜「あはは、リラックスだよ加蓮」

加蓮「うー、緊張するよ……」

泰葉「とは言っても、学校の授業で習ったことあるでしょう?」

加蓮「……他の女子と一緒にほぼお喋りしてました……」

泰葉「えー……」

李衣菜「へへ、家庭科の授業って男子の方が張り切ってる場合あるよね」

加蓮「そ、そうそう! うちのクラスもそうなのっ」

泰葉「ふう……それなら、基本からね? ちゃんとやること、いい?」

加蓮「はい、岡崎せんぱ……ううん、岡崎先生!」

泰葉「そ、そういうのはいりません!」カァッ

加蓮「えへへっ」

李衣菜「ふふっ♪」

だりやすかれんかな?

泰葉「こほん。まずは……」

加蓮「ふんふん……泰葉の手ちっちゃいね」

泰葉「そこを見るんじゃなくて。握り方を見なさい」

加蓮「はーい」

泰葉「で、押さえる手はこう。これは知ってるよね?」

加蓮「あ、なんだっけ……ネコの手!」

泰葉「うん、そう。……じゃあ持ち方だけやってみて?」

加蓮「やすにゃん可愛い♪」


泰葉「 や り な さ い 」

加蓮「ハイ」

李衣菜「泰葉こわっ!」

泰葉「もうっ。刃物を扱うんだから、こういうときくらい真面目に……!」


加蓮「んー、むずかし……」トン トン…

加蓮「あ、全然厚さ違う……むむむ」ザク ザク…


李衣菜「じゅーぶん、真面目だと思うなっ」ニコニコ

泰葉「……うん、そうかも」クスッ

―――

――




加蓮「――やっと切り終わった……」プシュー

李衣菜「はいお疲れさまー。どう? 自分でやってみて」

加蓮「料理ってこんなに神経使うんだね……疲れたぁ」

李衣菜「あはは、慣れだよ慣れ。やってくうちに上達するって!」

加蓮「そうかなぁ……。李衣菜みたいになれそうもないよ」

李衣菜「大丈夫大丈夫ー」

泰葉「ふふっ、上手くなったらPさんにもごちそうできるじゃない」

加蓮「!」

李衣菜「あ、そうだね。ヘヘ、今度Pさんにも料理作ってあげよっか」

泰葉「うん、喜んでくれるかしら♪」

李衣菜「楽しみだねー♪」

加蓮「Pさんに、料理……」


加蓮「…………」ポワポワ


加蓮「……えへへ♪」ニヘラ

李衣菜(かわいい)

泰葉(かわいい)

加蓮「よしっ、もっと上手になってPさんに褒めてもらう!」フンス

李衣菜「うんうん、頑張ろー!」

泰葉「ふふ♪ ……さ、もう生地もいい頃合いじゃないかな?」

李衣菜「っと、そうだった。クッキー作りの最中だったね」

加蓮「あっ、わ、忘れてた……!」

泰葉「集中してたものね」クス

李衣菜「あはは。じゃあカレーはあとにするとして、切った野菜はラップしてっと……よいしょ」

加蓮「うぅ、もう気力ないんだけど……」

泰葉「頑張って加蓮。焼き上がったあとのラッピングは、加蓮に期待してるんだから」

加蓮「うー……でも、手を抜くわけにはいかないよね!」

泰葉「うん、その調子♪」

李衣菜「生地、いい感じだよー。あとは焼くだけ!」

泰葉「それじゃ、美味しくなるように気持ちを込めて……」

加蓮「さっそく焼いちゃおう♪」


「「「おーっ♪」」」


―――

――

―――後日、事務所


李衣菜「――来た?」

加蓮「ううん、まだ……」

泰葉「あっ、二人とも! あの角から出てきた人、そうじゃない?」

加蓮「え、どれ? ……あ、ほんとだ!」


李衣菜「よーし……泰葉、加蓮。準備はいい?」

泰葉「ええ。入ってきたら、せーので……」

加蓮「うん! びっくりさせようねっ」



―――


がちゃり


「「「誕生日おめでとうございますっ! ―――ちひろさんっ♪」」」


―――

―――


がちゃ


P「おはようございま――」


P「うわぁ!? ど、どうしたんですかちひろさん! なに泣いてるんですっ?」


P「――え、お祝いしてもらった? クッキー? はは、良かったですねちひろさん」


P「ていうか涙でぐちゃぐちゃですよ……いい年頃の女性がなんて顔を。洗ってきたらどうです?」

P「はいはい、いってらっしゃい。……あ、そうだ」


P「誕生日おめでとうございます。今日は早めに上がって、一緒に呑みにでも行きましょうか」


P「――え、ちょっ、こっち来ないでください鼻水汚い、ちょっとちょっと顔近いこらちひろさ――」



ベチャァ



うぉぁぁぁああああ―――――!!!!



おわり

というお話だったのさ
遅れたのは許してくださいちひろさん……誕生日おめでとう!

おっつおっつ

ここのちひろさんは人情味溢れてるな

なんでチッヒの誕生日ゲーム内で祝ってくれへんかったんや
完全に知らんかった

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