立ったら書く
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淡(ずっと、わたしはイライラしていました)
淡(プロリーグ、U-21日本代表の選考合宿)
淡(年上のプロたちの中で、わたしはなかなか対戦に勝つことができませんでした)
淡(この合宿、代表に選ばれるのはもちろんのこと、)
淡(練習試合のベンチ入りすら大変な毎日)
淡(選手たちはみんな、なんとか選ばれようと必死な日々を送っています)
淡(わたしもその中のひとり)
監督「そこまで、全員集合!」
監督「今日の収支ランキングを発表する」
淡(わたしにはわかっていました)
淡(わたしはよくて中の上、日によってはそれ以下も)
淡(そして上位は)
監督「上から、荒川・宮永・鶴田」
監督「以下、全員分を貼りだしておくから、見ておくように」
監督「それでは、解散!」
全員「ありがとうございました!」
淡(上位メンバーは、だいたい決まっていました)
淡(そしてわたしは)
淡「あ…れ…」
淡(その日は、下から数えたほうが早いところにいました)
淡(ちなみに、2位の宮永というのは、)
淡(テルではなく、その妹)
淡(宮永咲…サキのことです)
淡(テルや辻垣内、福路がここに入っていないのは、単に年齢制限やリーグの違いだけど)
淡(サキはすでに、そこに混じっても負けないぐらいの、強い選手でした)
淡(年上ならまだしも、同年齢が活躍するのを見るのは、もちろんいい気分がしません)
淡(しかも、やっぱりテルの妹)
淡(似た顔のうえ、)
淡(麻雀のとき以外は目立たず、あまり人と交わらず、一人で表情を変えずに本を読んでいる)
淡(それが王者の証のように思えて、くやしいのでした)
…
……
………
淡(今日は、長い合宿で数少ない休養日)
淡(選手たちは、仲の良い同士で出かけたり、地元に電話したり)
淡(みんな、思い思いに過ごしています)
淡(荒川憩のように、地元の福祉施設でボランティアとかいう変わり者もいますが…)
淡(友達のいないわたしは、ネット麻雀か散歩ぐらいしかやることがありません)
淡(アイスでも食べようかと、近くの公園をうろうろしていると)
淡「あ…」
淡(サキがいました)
咲「…」ペラッ
淡(ベンチに座って、いつものように一人で本を読んでいました)
淡(指先とまぶた以外はほとんど動かさず、吟味するようにページをめくっていきます)
淡(昨日のボロ負け具合を思い出して、わたしはムカムカしてきました)
淡(こっそり近づいて、ちょっと邪魔してやろうと思いました)
淡(まあ、ただの八つ当たりなのですが)
淡「…」
咲「…」ペラッ
淡「…」
咲「…」ペラッ
淡「…」
淡「ねえ、サキ」
咲「わ、わっ!」アタフタ
淡(なんとも間抜けな慌て方でした)
淡(こんなのがテルの妹、同世代トップかと思うと、ため息をつきたくなりました)
淡「サキ、また一人で本読んでんの」
咲「そ、そうだよ」
淡「楽しい?」
咲「うん、楽しいというか、おもしろいよ」
淡(膝の上から落とした本を拾いながら、顔をこっちに向けて言いました)
淡(イヤミのつもりだったのですが、少し微笑みながら答えてきたので、拍子抜けでした)
淡「ふうん、何読んでるの」
咲「イギリスの、ちょっと古い恋愛小説だよ」
咲「淡ちゃんも、本読むの?」
淡(サキが、ベンチを空けるように少し横にずれました)
淡「ふん、読むわけないじゃん」
淡「いいね、余裕で」
咲「…」
淡(かっこ悪いと思いながらも、わたしは捨て台詞をはいてその場を離れました)
淡(わたしが立ち去る間、サキがこっちを見ていたのか、すぐ読書に戻ったのか)
淡(わたしにはわかりません)
淡(自分に嫌気がさし、手に持ったアイスを口に運びながら、振り向くこともできずに歩きました)
…
……
………
淡(次の日も、その次の日も、わたしの対戦成績は低迷していました)
淡(上位メンツとの差は、ますます開くばかり)
淡(戦い方をいろいろ工夫しても、どうしてもうまくいきません)
淡(高校生のころは、こんなことなかったのに)
淡(さすがのわたしも、だいぶまいってしまいました)
淡「…」
淡「ヒック…ヒック…」
淡(またある日の夜、食事と入浴を終え、他のみんなが自由時間を過ごしているころ)
淡(フロアのランドリールームで洗濯しながら、わたしはひとり泣いていました)
淡(さっきまで、自分の部屋にいた時はなんともなかったのに)
淡(洗濯という単純作業が一段落したとたん、急に気持ちが弱くなってしまったのでした)
淡「ヒック…ヒック…」
淡(涙というのは、流したことのない期間が長ければ長いほど)
淡(いったん流れ始めると止まりません)
淡(顔をぬぐう余裕もなく、次から次へと悲しい気持ちが吐き出されていきます)
淡(そして、声を抑えるのが難しくなってきたそのとき)
淡(こっちに近づいてくる足音がしました)
コツ、コツ、コツ
淡「ヒッ……」
コツ、コツ、コツ
淡「……」
ガチャ
淡「……」
咲「あ、あ…淡ちゃん…?」
淡「うう……ヒック…ヒック…」
淡(一番見られたくない相手に、見られたくない姿を見られてしまいました)
淡(わたしは終わりだ、と思いました)
咲「淡ちゃん…」
淡「…」ヒック…ヒック…
咲「淡ちゃん」
淡「…うっさい! あっち行け!」ヒック…ヒック…
淡(サキは、何も言わずに隣に座りました)
咲「…」
淡「あっち行っちゃえ、ばぁか」ヒック…ヒック…
咲「…」
淡「サキには、関係ないでしょ…」ヒック…ヒック…
咲「…」
咲「淡ちゃん」ニコッ
淡「…?」
カキカキ
咲「これ、わたしの部屋番号」
淡「……え…?」
咲「よかったら、こんど来て」
咲「じゃあ、おやすみなさい」ヒョイ
ガチャ
淡「…」
淡「…ふんだ、行くもんか…」
…
……
………
淡(その次の日も、練習は続きます)
淡(もちろん、サキと対戦することも)
淡(この前のこと、サキはどう思っているのかわかりませんが、)
淡(わたしは平静を装って打ちます)
咲「ツモ、嶺上開花 1600・3200です」
淡(サキは、強いです)
淡(今日は一日中、サキの打ち方を観察していました)
咲「ツモ、嶺上開花、チンイツ、ドラドラ 4000・8000です」
淡(毎度、呼吸をするように嶺上開花で和了るのにはあきれますが)
淡(強さの秘訣)
咲「ツモ、嶺上開花、ドラ3 8000」
淡(サキの麻雀は、わたしやテルや菫先輩のように破壊的ではありません)
淡(むしろ、すべてを包み、許すような)
淡(そんな、愛情深く、母性的な勝ち方をします)
淡(わたしは、認めたくありませんでした)
…
……
………
淡(そして久々の休養日の午後)
淡(扉の前で、深呼吸をします)
淡「…」
淡「…」
淡「…」
淡(焦げ茶色のドアをノックしてみます)
トントン
「は、はーい?」
淡(わたしは答えません)
「あ、あの…」
トントン
咲「…はい?」ガチャ
淡「…」
淡(昼すぎだというのに、サキは起き抜けのまま、麻雀番組を見ていたようでした)
淡(わたしを部屋に入れると、あわてて身支度をしていました)
咲「ごめんね、ちょっと見始めたら止まらなくて」
咲「えへへ…」
淡「…」
淡(これが咲の部屋)
淡(ぬいぐるみのひとつもない、かわいげのない部屋でした)
咲「お姉ちゃん、いまドイツに遠征中なんだって」
淡「…」
咲「チョコレート送ってくれたの」
淡(サキは、紅茶のポットをテーブルに置きながら、そう話し始めました)
咲「合宿も、あと半分だね」
咲「だいぶ、疲れたなあ」
淡「…」
咲「ねえ見て、この雑誌」
咲「お姉ちゃんと菫さん、かっこいいね」
淡「…」
咲「他にも、石戸さんに白水さん、清水谷さん、愛宕さん、加治木さん」
咲「みんなすてき」
淡「…」
淡(雑誌には、かつて戦った他校の選手たちが掲載されていました)
淡(もちろん、みんながプロとして活動していることは、わたしも知っています)
淡(でも、改めて見ると、みんな---)
淡「…サキ…」
咲「なあに?」
淡「…」
淡「なんで来たのかとか、こないだのこととか、聞かないの?」
咲「…」
淡「休みの日に、いきなり押しかけて」
咲「…」
咲「ニコッ」
咲「ねえ淡ちゃん」
淡「ん…」
咲「淡ちゃんは…」
淡「…」
咲「淡ちゃんは、麻雀、好き?」
淡「え…」
咲「麻雀牌の絵柄の意味ってね、一説によると」
咲「昔の中国で、役人さんが一生懸命お仕事して、」
咲「お金をかせいで幸せになる、っていう意味なんだって」
咲「でも、わたしには違うふうに見えるなあ」
咲「そこは、とてもすてきな場所なの」
咲「広い海に囲まれて、東西南北から太陽の光をうけ」
咲「…空には鳥が舞い、河には魚が泳ぎ、木々や草花が豊かに育つ」
咲「そんな景色が、千年も万年も続いてゆく」
咲「わたしは、嶺の上に花を咲かせる役目」
咲「淡ちゃんは、夜空に星を輝かせ、人々を導く役目」
咲「…わたしたち、自分の手でその美しい自然を作る、ストーリーテラーなんだよ」
支援
咲「淡ちゃん、麻雀は好き?」
淡「……」
咲「麻雀って、楽しいよね」
咲「わたしは、麻雀が大好き」
淡「……」
淡「…サキ」
咲「淡ちゃん」ニコッ
淡(それから、わたしはサキの前で大泣きしました)
淡(サキの細い体に抱きついて、)
淡(謝るように、甘えるように)
淡(何を言いたいかもわからず、ただひたすら言葉にならない思いをぶつけました)
淡(サキは、そんなわたしの体を両腕でずっと包んだまま、何も言いませんでした)
淡(ただずっと、わたしが泣き止むまで、)
淡(わたしの髪を、その指で、やさしくなで続けていました)
淡(サキが強い理由が、わかりました)
…
……
………
淡(それからというもの、わたしは毎晩、練習後にサキの部屋を訪れました)
淡(あたたかいものを飲みながら)
淡(麻雀の話をしたり、たわいないおしゃべりをしたり、)
淡(悩みを聞いてもらったりしていました)
淡(翌日が休みのときは、朝まで一緒でした)
淡(まるで世を忍ぶ恋人同士のように)
淡(というか、実際にそうなっていったのですが)
淡(わたしは、生まれて初めて、人を愛するということを知りました)
淡(人間、気の持ちようというのは大事なもので)
淡(そこから、わたしの対戦成績はどんどん上がっていきました)
淡(最近わかってきた、場を包み込むようなイメージ)
淡(そのイメージが、わたしを勝ちにつなげてくれるのでした)
淡(まだトップ3にはかなわないけど、あと一歩といったところで)
淡(監督も、周囲のメンバーも、とてもびっくりしていました)
淡(もちろん、サキとのことは、誰にも話していません)
淡(もっとも、日頃の行動を見ていれば、自然とわかってしまうものですが)
淡(わたしもサキも、それを表立って話題には出しませんでした)
…
……
………
淡(とてもうれしかったことがあります)
淡(サキには、変わったくせがありました)
淡(大切なものを、心ゆくまで指先で確かめるくせです)
淡(まあ、プロの雀士ならよくあることなのかもしれませんが)
淡(以前、おそろいのコーヒーカップを買ったとき、)
淡(部屋に戻ってからずっと指でなぞっていて、気づきました)
咲「ああ、これ…子供のころからのくせなんだ」
咲「もし何か、いやなことや辛いことがあっても」
咲「その感触を思い出せば、乗り越えられるんじゃないかって…あはは」
淡(夜、いっしょのベッドに入ると、サキは手をわたしの方に伸ばします)
淡(わたしの髪の毛、くちびる、首筋、鎖骨のあたり、背骨の凹凸と)
淡(そのやわらかい指先でなぞっていきます)
淡(わたしはくすぐったくてはずかしいのですが、)
淡(それよりも、愛されていることの喜びのほうが大きいのでした)
淡(わたしは、幸せでした)
…
……
………
淡(ついに、合宿の最終日を迎えました)
淡(今日は、いよいよ代表メンバーが決まる日です)
淡(さすがにゆっくり眠れず、何時間も前に目が覚めました)
淡(夕方、全員が大会議室に集まり、神妙な面持ちで発表を待ちます)
淡(発表は上位から行われ、正選手は5人、補欠は3人)
淡(その中に入らなければ、ここで終わりです)
淡(みんな、冷たい表情をしていました)
淡(監督が、ゆっくりと入室し)
淡(書類を取り出して、読み上げます)
淡(わたしは目をつぶって、隣にいたサキの手をとりました)
淡(結果は…)
監督「宮永咲 正選手」
…
…
…
監督「大星淡 正選手」
淡(わたしが…わたしが、呼ばれました…)
咲「淡ちゃん」
咲「おめでとう」ニコッ
淡「サキ…」
淡(本来なら、トップ通過のサキを賞賛しなきゃいけないのに)
淡(わたしは、その言葉がとっさに出ませんでした)
淡(でもサキは、いつものように穏やかな笑みで、わたしを祝福してくれるのです)
淡(この時ばかりは、人目をはばからずに大泣きしてしまいました)
淡(その間、ずっと)
淡(サキの両腕がわたしを包み、指がわたしの髪を静かになぞっていました)
…
……
………
淡(代表入りが決まってから2週間後)
淡(わたしたちは、いっしょに暮らすことを決めました)
咲「高校生のころ、淡ちゃんは違う世界の人だと思ってたよ」
咲「明るくて、勝ち気で、都会的で」
咲「わたしは地味な田舎者だから…あはは」
淡(サキは、たまにおどけてこんなことを言います)
淡(実際、わたしはサキの友人知人にはいないタイプでした)
淡(わたしは、サキが大勢の人に愛されているのを知っています)
淡(姉のテルはもちろん、先日の雑誌で見た面々)
淡(別のプロリーグでトップを走る親友の原村や、竹井、池田、姉帯、末原、龍門渕)
淡(すでに牌を置いた天江や高鴨とも、いまだに親交があるといいます)
淡(もちろん、プロである以上、大勢のファンもいます)
淡(そんな人たちを差し置いて、わたしなんかがサキと一緒になってしまってよいものか)
淡(わたしは悩んだあげく、サキに相談しました)
咲「えっと…」
咲「わたしは、みんな大好き。淡ちゃんも大好き」
咲「それじゃだめかな…」
淡(はにかむように、こう答えるのでした)
淡(実際、わたしたちのことを報告したとき、みんな賛成してくれました)
淡(もちろん、テルと原村はすごくびっくりしていたのですが)
淡(ふたりいっしょに代表戦をまわれるのは大きいと、共感してもらえたみたいでした)
淡(サキといっしょにいるとき、わたしは常に将来のことを考えていました)
淡(明るい未来だけが見えていました)
…
……
………
淡(ある日、不思議なことが起こりました)
淡(雲が厚く、星のない夜でした)
淡(外出からの帰宅途中、家からそう遠くないところで、道に迷いました)
淡(最寄りの駅で電車を降りて、いつも通りの道を歩いているはずが)
淡(どこまで行っても、見慣れた景色にたどり着けません)
淡(右に曲がっても、左に曲がっても、通行人にすら会いません)
淡(怖くなって、家にいたサキに電話をかけました)
淡(その瞬間、周囲の景色は、いつもの見慣れたものになっていたのでした)
淡(次の日も、その次の日も、同じことが起こりました)
淡(知っているはずの道に迷い、サキに電話するとまたいつもの景色に戻る)
淡(どれも同じように、雲の厚い、星のない夜でした)
…
……
………
淡(その後、しばらくは天気がよく、不思議な体験はおさまったのですが)
淡(久々の曇りの日、予想通り、現象が起こりました)
淡(迷うことはわかっていたので、とっととサキに電話をかけようと思ったのですが)
淡(今回は珍しく、少し前を通行人が歩いていました)
淡(顔はよく見えませんでしたが、わたしと同じくらいの年かっこうの、女の子です)
淡(これまでのことも、もしかしたら解決するかもしれないと思い)
淡(わたしは、その人に声をかけました)
淡「あの、すみません」
通行人「はい?」
淡「○○町に行きたいのですが、道に迷ってしまって」
通行人「ああ、○○町ですか。近くですね」
淡「はい、すみませんが、道順を教えてもらえませんか」
通行人「いいですよ、あそこの信号が見えますか」
淡「ああ、あそこの…」
淡(その人の示すほうに視線をそらした瞬間)
淡(わたしは、背中から刺されました)
…
……
………
淡(そこからの展開は、早いものでした)
淡(わたしは涙を流すひまもなく、そのまま息を引き取りました)
淡(病院に運ばれたときは、すでに手遅れでした)
淡(犯人は、あの通行人)
淡(遺留品や足あとが証拠になり、すぐに逮捕されました)
淡(日本代表プレーヤーが事件にまきこまれたとあって、いろんな憶測が流れましたが)
淡(犯行動機は、いま思えば単純です)
淡(彼女は、わたしのファンだったのでした)
淡(わたしは、サキを愛するあまり)
淡(わたし自身が他の人から愛されているということに、気づきませんでした)
淡(もちろん、ファンと呼べる人たちはいたし)
淡(手紙やプレゼントをもらったりしたことはあったのですが)
淡(それは、なにか別の世界のやりとりにしか感じませんでした)
淡(わたしは愛情を受け取る能力に乏しかったのです)
淡(あの、道に迷う現象がなぜ起こったのか)
淡(結局、まだわたしにはわかりません)
淡(あのとき、サキに電話しておけばよかった)
淡(サキの声を、聞きたかった)
淡(わたしは、そうして自分を責めました)
淡(犯人が逮捕され、わたしの葬儀の段取りが固まってからも)
淡(サキは、ひどく取り乱していました)
淡(わたしが病院にいる間も、葬儀が始まってからも)
淡(サキはしきりにわたしを呼び、泣いていました)
淡(テルや原村、監督、その他大勢の支えのかいあって)
淡(ようやく落ち着きを取り戻し、外に出ることができたのは、わたしの納骨のときでした)
淡(晴れた空の下、着々と儀式が進んでいきます)
淡(テルも、原村も、他のプロのみんなも泣いています)
淡(サキは、硬い表情のまま、じっと前を見ています)
淡(あちこちで、わたしの思い出話をしている人がいます)
淡(進行役の人が、次の段取りを指示し、みんながそちらを向きました)
無人島の人か
淡(その瞬間でした)
淡(サキが、出席者全員の目を盗んで)
淡(小石ほどの大きさの骨を、手の中におさめたのです)
淡(もちろん、だれも気づいていません)
淡(サキは、表情ひとつ変えませんでした)
淡(儀式のあいだ、サキはずっとそれを手の中に握っていました)
淡(子供が草の露をすくうように)
淡(技術者がねじをしめるように)
淡(指先で、すみずみまで確かめていました)
淡(その愛おしむようなしぐさに、わたしは心の底から満足をおぼえたのでした)
…
……
………
淡(その後、サキがどうなったのか、あまり情報はありません)
淡(風のうわさによると)
淡(以前にもまして、他人から孤立するようになったこと)
淡(日本代表を辞退したこと)
淡(破壊的なプレースタイルに変わったこと)
淡(そして、なにかをしようとしているらしいこと)
淡(サキがなにを考えているのか、わたしにはすでにわかりません)
淡(でも、いいのです)
淡(わたしも、麻雀が大好きだよ)
カン
乙です
最後のくだりは少女架刑かと思った
乙です
乙
おもしろかった
乙
ひゃー
けどいい話だったわ
なるほど
あれに繋がるのか
乙
なるほど…
乙です。引き込まれてしまいました…
乙
このあと咲さんは無人島を買ったってことね
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