遊矢&柚子(緊張する……)(30)
遊矢(先週、俺は柚子に自分の想いを告白した)
遊矢(柚子もそんな俺の気持ちに応えてくれて、俺達は世間一般で言う恋人同士という関係に一応なった)
遊矢(一応というのはお互いに妙に意識してしまい、今日まで恋人らしい事を何一つ出来ないでいたのだ)
遊矢(これでは駄目だという事で、俺達は今日の休日を利用して初めてのデートというものをする事になったのだが……)
遊矢「あー、やっぱり緊張する……心臓の動悸が早過ぎてやばい」ドキドキング
舞網市駅前・ライコウ銅像前……
遊矢(落ち着け、俺の魂のペンデュラム。別に柚子と2人で遊びに出掛けるのはこれが初めてじゃないんだ)
遊矢(それに多分柚子も俺と同じくらい緊張しているだろうし……ここは男の俺がしっかりしないと)フンス
遊矢(しかし集合時間1時間前に来たのはさすがに早過ぎたな。とりあえず柚子が来るまで今日の予定を再確認して……)
「――あーもう、緊張するな~」
遊矢(あれ? 今の声ってまさか……?)
柚子「落ち着くのよ、柚子。大丈夫、遊矢と出掛けるのはこれが初めてって訳じゃないんだから」
遊矢「…………」
柚子「でもただ出掛けるのも幼馴染と恋人同士じゃ色々と意味合いも変わるんじゃ……駄目、駄目! 余計な事考えちゃ!!」ブンブン
遊矢「あ、あの、柚子……?」
柚子「髪、乱れないわよね? 寝癖とか洒落にならないわよ」
遊矢「おーい、柚子さーん?」
柚子「この服、似合うって言ってくれるかな? 遊矢はこういうの鈍いからあんまり期待出来ないけどやっぱり言ってくれると嬉しいな……って、ああもう! さっきから心臓がドキドキのバクバクだしどうしたら良いのよ!!」
遊矢「柚子、さすがに独り言でか過ぎて通行人がチラチラこっち見てるから! そろそろ俺の存在に気づいて……」
柚子「うるさいわね! ちょっと黙っててよ!!」
ハリセンスパーン!!
遊矢「ヒッポォ!?」
柚子「あ」
…………
柚子「本当にごめんなさい」ションボリチュア
遊矢「いや、そこまでしょんぼりしなくても大丈夫だよ。柚子にハリセンで叩かれるのはもう慣れてるからさ」
柚子「それもどうかと思うけど……とりあえず、その、おはよう」
遊矢「ああ、おはよう……それにしても来るの早いな。まだ集合時間の1時間前だぞ?」
柚子「それは遊矢も同じでしょ? しょうがないじゃない、早く来てないと何か落ち着かなかったんだから」プイッ
遊矢「まあ俺も柚子と同じだよ。それに、やっぱり楽しみだったし」
遊矢「なんせ今日は俺とお前にとって初めての……デ、デ、デート……だから」
柚子「そ、そうね」
遊矢&柚子「…………///」
通行人A(何か駅前で中学生らしき男女によって桃色空間が展開されている件)
通行人B(あらあら、2人共トマトみたいに真っ赤になっちゃて可愛い♪)
通行人C(爆ぜろ)
遊矢「と、とりあえず最初は映画館に行く予定だったけどまだ時間あるからな……どうする?」
柚子「今日は遊矢がエスコートしてくれる約束でしょ? 遊矢に任せるわよ」
遊矢「わ、分かった。じゃあしばらくこの辺りでもブラブラするか。駅前だから店も色々あるし……えっと、それで良いか?」
柚子「だ、だから遊矢に任せるって言ってるじゃない。それで良いわよ」
遊矢「そっか。じゃあ……行こうぜ」
柚子「う、うん」コクリ
…………
遊矢&柚子「…………」トコトコ
遊矢「そ、それにしても今日は晴れて良かったよな!」
柚子「そ、そうね!」
遊矢&柚子「…………」トコトコ
遊矢「その、天気予報でも今日は1日晴れだって言ってたぞ!」
柚子「や、やったね!」
遊矢&柚子「…………」トコトコ
遊矢「きょ、今日の朝飯は三段重ねのパンケーキだったんだ!」
柚子「ま、満腹ね!」
遊矢&柚子「…………」トコトコ
遊矢(駄目だ。やっぱり緊張し過ぎて……)
柚子(会話が、続かない……)
遊矢(くそ、付き合う前はこんな事は一度も無かったのに)
柚子(何だか今は並んで歩いているだけで胸の辺りが苦しいし)
遊矢(というかせっかくこうやって並んでるなら)チラッ
柚子(その、恋人同士らしく)チラッ
遊矢&柚子(手とか、繋いだ方が良いかな?)
遊矢&柚子「…………」
遊矢&柚子「…………」ソー
遊矢&柚子「…………」チョン
遊矢&柚子「!?」ビクッ
遊矢&柚子「「あ、いや、今のは……!」」バッ
遊矢&柚子「…………」
遊矢「……何でも、無い///」
柚子「……私も///」
遊矢「せ、せっかくだしそろそろ何処か店にでも入らないか?」
柚子「そ、そうだね」
遊矢「お、あそこの雑貨屋とかどうだ? 柚子好きだろ、あんな感じの店」
柚子「えっと、確かに好きだけどあそこ思いっきり女の子向けのお店よ? 遊矢が入るのは……」
遊矢「大丈夫だって。ほら、遠慮せずに入ろうぜ」
…………
<キャッキャウフフ
遊矢(……何か想像以上に女の子の店だった)
遊矢(何だろう? さっきまでとは違う意味の息苦しさを感じる……)
柚子(遊矢、すごい気まずそうな顔してる。だから言ったのに……)
遊矢「いや、俺こんな店に入るの初めてだよ。あは、あはは」ガチガチェイン
柚子「えっと、きついなら出ようか? 無理して居なくても良いのよ?」
遊矢「大丈夫、問題ない。柚子は俺に気にせず店内を楽しんでくれ」ガクガクリッター
柚子「そんな引き攣った表情で楽しめと言われても正直困るんだけど」
数分後……
遊矢「それにしても結構色んなもの売ってるんだな、雑貨屋って」←少し慣れた
柚子「うん、ここは特に品揃え良いわね……あ」
遊矢「どうした?」
柚子「いえ、別に何でも無いけど……」
遊矢「もしかしてこのオルゴールか。柚子ってこういう子供っぽいデザイン好きだもんな」
柚子「もう、子供っぽいって何よ。確かに可愛いなとは思ったけど……」
遊矢「……買ってやろうか、それ?」
柚子「え?」
遊矢「ほら、今日の記念って事で……俺から柚子にプレゼントするよ」
柚子「そんな、悪いよ」
遊矢「大丈夫だよ、オルゴールの1つくらい」
柚子「そうじゃなくてほら、ちゃんと値札見てよ。これ、そこそこの値段するから」
遊矢「へっ、嘘? 何でこんな小さいのがこんなにすんだよ!?」キョウガクェーサー
柚子「ゆ、遊矢。本当に無理しなくて良いから。その気持ちだけで十分嬉しいから」オロオロットン
遊矢「いや、買うと言った以上は買ってやるよ。男に二言は無いって権現坂も言ってるし」ガクガクリボン
柚子「何か表情がまた引き攣ってるんだけど?」
遊矢「気のせいだ。俺は元々こういう顔だから」
柚子「……分かったわ。じゃあ私も買う」
遊矢「え?」
柚子「遊矢にだけ貰うのは悪いから……私も今日の記念に遊矢にこのオルゴールを買ってあげる!」
<アジュジュシター
遊矢&柚子「…………」
柚子「じゃあ遊矢……これ」
遊矢「あ、ありがとう……じゃあ柚子にも」
柚子「ありがとう……私、大切にするから……遊矢も大切にしてよね、それ」
遊矢「わ、分かってるよ」
遊矢(しかしお互いに同じ物買ったのに、わざわざ交換する意味あんのかな、これ?)チラッ
柚子「…………」ギュ←貰ったオルゴールを胸に抱いている
遊矢(まあ柚子は満足しているみたいだから良いか……ん?)
遊矢「ああああああああ!?!?」
柚子「きゃ!? 何よ、急に大きな声出して?」ビックリボー
遊矢「やばい、ちょっとゆっくりし過ぎた!? 早く行かないと映画始まっちまうよ!!」
柚子「えっ、本当?」
遊矢「これ見逃したら次は大分後になっちまう……急いで移動するぞ、柚子!!」ダッ
柚子「ちょ、待ってよ、遊矢! 遊矢ったら!?」アタフタキオン
映画館前……
遊矢「ふぅ、何とか間に合ったな」ホッ
柚子「確かに間に合ったけど……私を置いて1人で突っ走るとか信じられないんだけど?」ギロリ
遊矢「うぅ、悪い。ちょっと焦っちゃってさ……だけど柚子、ちゃんと着いて来れたから良かったじゃん、あはは」
柚子「笑い事じゃないわよ、もう……それで今日は何を観るんだっけ?」
遊矢「えっと、ほらあれだよ。あそこにポスターも出てる奴」
柚子「ああ、CMでも良くやってるアクション映画ね」
遊矢「初デートでアクション映画はどうかと思ったけど、これなら2人共楽しめるだろうし、流行の映画なら外れも無いと思うから」
柚子「ふぅん、遊矢なりに考えたのね」
遊矢「後一応恋愛映画も考えたんだけど……それ観ると、その、確実にこの前の事を思い出しそうで……」
柚子「この間の事って……あっ!」
遊矢&柚子「…………///」
遊矢「と、とりあえず時間も無いし入るか。ポップコーンでも買って……///」
柚子「そ、そうね。コーラも買いましょう……///」
映画視聴後……
遊矢「……スイマセンでした」ズーン
柚子「こんな往来で頭下げないでよ。確かにびっくりはしたけど」
遊矢「えっと、その……」
柚子「まさかラスト30分の一番盛り上がってる時に……いびき掻いて寝ちゃうとは思わなかったわ」タメイキング
遊矢「いや、本当に悪かったよ。その、実を言うと始まる前から少し眠くて、何とか頑張って観てたんだけど……」
柚子「大丈夫、分かってるから……どうせ今日の予定考えていてあんまり寝てなかったんでしょ?」
遊矢「うぅ……」
遊矢「何か、本当にごめんな」
柚子「だから寝ちゃった事ならもう良いって」
遊矢「いや、映画の失態もそうなんだけど……思えば何か今日は朝からやけにドタバタしてるし」
遊矢「その、俺達の最初のデートなのに中々スムーズにいかないから、何か申し訳なくてさ……」
柚子「遊矢……」
遊矢「本当、上手くいかないもんだよな。あはは」
柚子「……ばーか」デコピン
遊矢「痛っ!」
柚子「上手くいかないのは当たり前でしょ。初めてなんだから多少の失敗はそりゃあるわよ……そもそも私もその原因の1つだし」
遊矢「だけど……」
柚子「でも、これで終わりじゃないんでしょ?」
遊矢「え?」
柚子「だってまだ雑貨屋で買い物して映画観ただけでしょ? 今日はまだまだ時間もあるし、私達の初デートも終わってないわ」
柚子「だからさ、何時もみたいに言ってよ。私にあの笑顔で言ってよ」
柚子「『お楽しみはこれからだ』って」
遊矢「柚子……」
遊矢(そうだよな……せっかくのデートなのに凹んでいても仕方ないよな)
遊矢(それに俺は何時か父さんみたいな最高のエンターテイナーになるって決めてるんだ)
遊矢(好きな女の子1人楽しませられなくて、そんな夢が叶う訳が無い。だから――)
遊矢「――レディース&ジェントルメン!!」
柚子「へ?」
遊矢「榊遊矢プローデュースによる柊柚子の為のデートショーは始まったばかり!」
遊矢「まだ至らぬ所も多々ありますが、必ず柚子が満足するデートにするとここに改めて宣言しましょう!!」
遊矢「だから柚子さん、ここから先も……私がエスコートしても構わないでしょうか?」
柚子「遊矢……」
<ママー!アノオニイチャンタチナニシテルノ?
<コラ!ミチャイケマセン!!
柚子「何時もみたいにとは言ったけど……さすがに外でこれは恥ずかし過ぎるわよ///」
遊矢「……ああ、俺も今すごいやっちまった感を覚えてる///」
柚子「だけど……ふふ、あははははは♪」
遊矢「うぅ、そこまで笑う事無いだろう?」
柚子「ふふ、ごめん……でも何か色々と馬鹿らしくなっちゃて」
柚子「やっぱり遊矢と一緒に居るのは楽しい。素直に楽しめば良いのに……変に緊張していた自分達が馬鹿みたい」
遊矢「そうか……そうかもな! よし、そうと分かったなら後はとことん楽しむか!!」
柚子「そうね。それじゃあ……」
柚子「今日はしっかり私をエスコートしてよね、私のさえない王子様」
遊矢「任せとけよ、俺の不器用なお姫様」
<おわり>
おつー
遊馬と小鳥じゃこういうの出来ないだろうし、初々しいかんじがいいね
読んでくれた人、ありがとうございました。今更ですがこの話は以前書いた『遊矢&柚子「気まずい……」』の後日談となっております。またアークファイブのSSは他にも、
『榊遊矢「アクションデュエルで童貞を捨てる」』
『遊矢「ペンダントをア〇ルに入れたら抜けなくなった」』
『遊矢「エレベーター・パニック」』
『権現坂「不動のオ〇ニー」』
等を書いているのでもし何処かで見かけたらよろしくお願いします。では。
乙ー
今回も面白かった
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