穂乃果「私はあなたのものだから」 (228)
ある日のこと
その日の放課後は部室にいるのが私と真姫ちゃんだけ
ことりちゃんは保健委員の会議、海未ちゃんは弓道部、3年生は進路相談で、花陽ちゃんと凛ちゃんは飼育委員とその付き添い
だから、暇してるだけだった私はそのまま部室に、真姫ちゃんは……どうだったんだろう
その日は、当時刑事ドラマにはまってたせいで、おもちゃの手錠をこっそりカバンの中にいれてきちゃった
けど、この手錠案外丈夫で、そのせいであとで大騒ぎすることになっちゃったんだけど……
で、持ってきたはいいんだけど、ことりちゃんは犯人って感じしないし、海未ちゃんは遊ぶなーとかって説教されるのはわかってたし
二人にはなんとなく使えなかったんだよね
だから、そこで難しそうな本を読んでいた真姫ちゃんに、やってみることにしたんだ
「突然ですが、真姫ちゃん、現行犯で逮捕します!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411064001
いや~一度言ってみたかったんだよね、この台詞!
「……は?」
真姫ちゃんはあっけらかんとして固まって
今でもそのぽかんとした顔は覚えてます
「ほら、刑事ドラマでよくあるでしょ?」
「それと、私が逮捕されなきゃいけない理由にはならないじゃない」
「それはね、真姫ちゃんと遊びたいからだよ!」
「……」
このとき、真姫ちゃん私のこと馬鹿見たいって思ってたんだと思う
「……却下」
「だよねー、アハハハハ……」
流石に、少ししょげました
そしたら、真姫ちゃんはそんな私を気遣ってくれて
「……仕方ないわね、少しだけよ?」
って言ったの
「えっ!?」
「ほら、するなら早くやりなさいよ」
真姫ちゃんの優しさって、ギクシャクしてる
多分、こういう事に慣れてないんだと思う
でも、本当はすごく優しい子なんだろうな……
「えーっと、では……16時30分、西木野真姫を……逮捕しまーす!」
鞄から取り出した手錠を右腕にかちゃり。私の左手首にもかちゃり
「ふふん、ようやく捕まえたぞ、怪盗マッキー」
「……はいはい、満足でしょ?さっさと外して」
「だめー、これから取り調べなんだから」
「逮捕するだけって言ったじゃない」
「もー、真姫ちゃんのけちー」
でもお願いを聞いてもらったし、仕方ないよね
そう思って、スカートのポケットに入れていた……入れて……あれ?
「どうかしたの?」
退屈げな顔してる真姫ちゃんの横で冷や汗がどっと出ました
胸がどっくんばっくんいってます
ない、ない……
「か、か……」
「か?何を言ってるの?」
「鍵が、ないいーっ!」
思い切り、叫びました
部室に反響するくらい、いや、多分廊下に聞こえるくらい
「えええー!?」
真姫ちゃんも、同じくらい声を出して驚いてました
「どうすんのよ、これ!あなたとずっと一緒じゃないといけないわけ!?信じられない!」
「ぬぬ~っ、は、外れないよ!どうしよう!」
「どうしようじゃないわよ!どこかに落としたんだわ!探しに行くわよ!」
真姫ちゃんは私とつながってることを忘れて、部室から飛び出そうとして
「いった!穂乃果!早く来なさい!」
私は引っ張られるままに部室をでていったの
「いたっ、ちょ、ま、待って、真姫ちゃーん!」
「……それで、穂乃果。今日はどこに行ってなにしたのか、全部覚えてる?」
言葉にとげが……うぅ、穂乃果も反省してるのに
けど、仕方ないよね、穂乃果のお願い聞いたらこんなことになっちゃったんだもん
こうなったら、真姫ちゃんを一秒でも早く解放しないと!
でないと、いろんな人からお仕置きされちゃうよ!
か、考えろ、思い出せ……今日の私は……
「えっとね、多分私の教室にあると思う……」
「そう、じゃあ教室に行きましょう」
こうして、私と真姫ちゃんによる鍵さがしの旅が始まったんだ
「じゃあ、どこから探す?」
「決まってるわ。あなたの机の中よ」
「うん。けど何にも入ってないよ?」
「ホントに……?ほんとね、あなたの頭の中みたい」
「ひどい!」
「じゃあ次。念のためこの教室の床をくまなく探してみましょう」
やっぱりいろいろ頭が回るなぁ、真姫ちゃん
「うん」
「じゃあ私はあっちを探すから、穂乃果はそっちをお願い」
……ん?
「真姫ちゃん、今何を探してるんだっけ?」
「決まってるじゃない、手錠のカギ……ぁ」
「……ぷっ」
え?うそ!
真姫ちゃん、意外とおっちょこちょいかも!
ちょっと親近感わいちゃうな!
「い、今のはなし!聞かなかったことにして!」
顔がみるみるイチゴみたいに赤くして、
ほっぺを膨らませてて、多分誰も見たことない顔してる
多分、真姫ちゃんも初めてしたんじゃないかな
普段見せない、本気で恥ずかしがってる真姫ちゃん
こんな貴重な真姫ちゃんは多分この先一生見られないかも
「ふふっ、あはっ、あははははっ!」
「も、もう、笑わないでー!」
「ご、ごめん、もう笑わないから」
「もう……誰にも言わないでよ?……ばか」
「分かってるって~。う~ん……」
「無いわね……」
「ここにはなさそうだし、別のところに行こう!」
「……仕方ないわね。次は?」
「うーん……んん~……無いや」
「……どうするの?これ」
真姫ちゃんが不機嫌そうに右腕を上げる
私もつられて左腕を上げさせられる
「……ごめんなさい」
「謝罪はいいの。今はこれをどうやって外すかが先でしょ?」
うぅ、ますます真姫ちゃんが不機嫌になってく
穂乃果の頭じゃ、ごめんなさいしか浮かばない
「……どうしたらいいのか、わかんないよぉ、ふえぇん……」
頭の中ぐるぐるして、胸が苦しくなって、泣いちゃって
「ちょ、ちょっと!泣かないでよ、こんなところで!」
「だって、だってぇ……ひっく」
こんなはずじゃなかったのに、ただのいたずらのつもりだったのに
困らせたかったんじゃないのに、怒らせたかったんじゃないのに
そんなとき、真姫ちゃんが私の左手を握ってくれて
「……よしよし、泣かないの。先輩でしょ?私の前ではしゃんとしててよ」
左手で私の頭を撫でてくれて
頭に触れる手が、握ってくれるその手がとても暖かくて
すごく、申し訳なくって
「ふぇぇん……ごめん、ごめん……」
「もう怒ってないから。あなたが落ち込んでたら、怒るものも怒れないわ」
ごめんね、私、ダメな先輩だから
もう少し、暖かい貴女に甘えていたい
「真姫ちゃぁん……」
だから、抱き付いちゃう
「うえぇっ!ちょ、誰か来られたら……!」
ごめん、また謝っちゃう
今はあなたの胸を借りたい
これからは、迷惑かけないようにするから―――
「……すっきりした?」
「…うん」
泣き止んで、少しだけ、疲れた
「……行く当てもないし、戻るわよ」
私は、うんとだけ答える
私の教室から出て行って、その間ずっとこの後のことを考えてた
「けど、どうしようか、これ……」
手錠を改めて真姫ちゃんとまじまじと見る
「……針金とかあったらピッキングで壊せるけど」
「できるの!?」
「……多分」
そりゃあやったことはないよね……
そういうのとは無縁そうだし
「穂乃果、今日のことは私たちだけのヒミツよ」
「え?」
「だ、だってこんなこと誰かに話されたら、恥ずかしくって学校来れないわ」
「そうだけど……」
「だから、お互いのヒミツにしましょう?あなたにとっても悪い話ではないし」
これも、真姫ちゃんなりの優しさなんだろうな
「……うん!」
「約束よ」
「わかった!……なんか二人だけの秘密ってちょっとドキドキしちゃうね」
「へ、変なこと言わないでよ!」
「えへへ、ごめーん」
そんな話をして、部室に戻ってきたら、海未ちゃんが不思議そうに
「あ、穂乃果。ちょうどいいところに。この鍵が部室に落ちていたのですが、何の鍵かわかりますか?」
って、鍵を持ってた
あ、それは……
また、冷や汗がどっと噴き出す
私、今変な顔してる。絶対してる
「どうかしましたか?」
「そ、それ……」
「え?穂乃果、まさか……!」
「それ、この手錠の鍵ー!」
-おしまい-
真姫「私で遊ぶのはいいけど」
真姫「私で遊ぶのはいいけど」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404326379/)
一応これの続きみたいな認識でいいかもだけど付き合う前とかいろいろやりたい
いろいろやるからやってほしいのあったらリクエストください
ただしR-18のはすげぇ淡泊に終わるからやめた方がいいです
ネタは一応数個用意してあります
おやすみ
このまま次の日で物語が続くのかと思ったらあっさり…乙
う~ん、穂乃果がぽんこつ過ぎてあんまりなぁ~
おつおつ
欲を言えば違う鍵だったってことでもっと見たいな
乙
実際あんまり仲良くないやつと仲良くなろうとしてこういうことしたら悪い方向にばっかり転がって最後に泣くってのはあると思う
俺にも覚えがある
おつ!
具体的なリクエストじゃないけどあなたのほのまきをもっと読みたいな
手錠で繋がってるまま歩くのは普通に誰かに見られそうでドギマギ数度しちゃうね
前スレ終わっちゃって残念、と思ってたら続きが始まってた!
このほのまきの雰囲気が好きだったので、更新楽しみにしてます!
少し、懐かしい夢を見ていた
まだ、みんなと壁を感じていた頃
懐かしいなんて言葉で片づけられるほど昔のことでもないけれど
けれど、なんだかすごく離れた場所に自分がいるんじゃないかって
それだけ、孤独な私は嫌悪していた
けど、そんな私はもういない
扉を開ければ、もう私は独りじゃないって分かってるから
「おはよう、花陽、凛」
教室に入ると、いつもの2人が、いつものように話している
「真姫ちゃん!よかった、もう平気なの?」
「ええ、それより花陽、借りてたノート、ありがとう」
私が寝ている間にお見舞いに来てくれた花陽が持ってきてくれた授業のノート
花陽には迷惑かけっぱなしね
「今度、お礼したいんだけど……」
「気にしないで、私たちもいつもお世話になってるし」
「そうそう、気にしなくていいにゃ~」
「あんたは少しは気にしなさい」
「そうだよ、凛ちゃん」
「ええっ、かよちんまで!?ひどいにゃあ~」
「珍しいわね、花陽がいじわるするなんて」
「ちょっと、真姫ちゃんと穂乃果ちゃんを見てたら……えへへ」
それもどうなのよ……
「もー!そういうところは真似しなくていいのー!」
「はーい♪」
「ホント、仲いいわね」
また、いつも通りの日々が始まる
いつも通りの授業、いつも通りの部活、いつも通りの……恋
「おはようみんなー、席ついてー。SHR始めますよー」
先生が教室に入ってくるなり私たちに着席を促す
楽しい一日になるといいな
ふたを開ければ、それは憂鬱な日だった
というのも、穂乃果のブレーキがあの一件で壊れてしまったらしい
「まきちゃーん!」
「まっきちゃーん!」
「まきちゃんまきちゃんまきちゃーん!」
―――と、私を視界にとらえては私の名前を何度も呼び、私に抱き付き、私にすり寄る
お昼休みに入る前から数えて、もう3回目……
私のことを大事にしてもらえるのは嬉しいけど、少し我慢を覚えさせないと
「も、もう!恥ずかしいからそういう事しないで!」
慌てて私は振り払う
けど、この子は決して離ようとはしない
それこそ、対極の磁石のようにがっちりと離れない
「いいじゃん!それとも、私のこと嫌いになっちゃった……?」
「そんなわけないでしょう?」
「真姫ちゃんが倒れてから、心配で、その……。けど真姫ちゃんがいやなら……やめる」
……ずるい、そんなこといわれたあなたは決まってしょげるじゃない
しょげたあなたは、あなたじゃない
私はあなたの気を取り直すしかないじゃない
ほんと、狙ってやってないんだからこの子は厄介
「……ちょっときて」
「……はーい」
不満げながら穂乃果はようやく私から戒めを解く
私は今更逃げる気もないし、私が逃げようとは相手も思ってないから
私は誰もいない音楽室に連れていく
あとに入った穂乃果が扉を閉める
私は、腰に手を当ててその姿を始終追っていた
「……それで、なぁに?」
気落ちした穂乃果はまだその尾を引きずってる
私は別に、あなたのそんな姿を見たいわけじゃないのに
「穂乃果、私のこと、心配してくれてること、大事にしてくれてること、本当に感謝してる」
「ほんとに!?」
「……まだ話の続きよ。…あのね、……私、今の穂乃果は好きじゃない」
少し、うんざりしていた
「え……」
だから、そういうのをやめてほしくて
「今のあなたは私をモノ扱いしてる、そんな感じがするから」
その瞬間、穂乃果は目をぐるぐるさせて、
気を取り直した瞬間、
―――私の前から逃げだした
「え、ほ、穂乃果!」
なんで?どうして?
私、何か……あっ
それから、気づいた
「ま、待って!穂乃果!」
急いで音楽室を出ても、もうそこに穂乃果の姿はなかった
私は、なんてことを言ってしまったんだ
嫌われちゃった
どうして?
穂乃果のこと、好きだって……
「言ってくれたじゃん……」
ひどい、ひどいよ
胸が痛い、息をするのも苦しい
穂乃果、真姫ちゃんのことが大事だから……
それが迷惑だっていうなら……
「私、どうすればいいの?」
廊下で一人、うずくまって、ずっと泣いてた
「……ん?……穂乃果じゃない」
「え?」
にこちゃんだった
「どうしたのよ、こんな人気もないところで泣いちゃって。あんたらしくもない」
「……な、なんでもないよ!」
泣いてることを隠して、すぐに逃げようと思った
けれど、そんな私をにこちゃんは
「ちょっと、気になるから話しなさい。それとも、私じゃだめなの?」
引きとめてくれた
ほんとは、誰かに話したかった
だって、こんなに胸が苦しいんだもん
「……あの、あのね。真姫ちゃんが……」
にこちゃんはそんなことだろうな、という顔で私の顔を見る
けれど、そんな顔はすぐに消えて、まじめな顔を戻す
「真姫ちゃんが、ひっ、私のこと、ひぐっ、嫌いって……」
言ったら、涙が急に止まらなくなって
「……よしよし、世話のかかる妹たちね」
「にこちゃあぁん……」
にこちゃんに抱き付く
「穂乃果、そのままでいいから聞いてて。私ね、前、お母さんに妹たちに嫌われたことを話したの」
「うん……」
「そしたら、お母さんね、大事にすることと、大切に思う事って違うのよって言われたの」
真姫ちゃんに言われたことがかすかに頭に浮かぶ
―――私のことを、モノ扱いしてる
「……今だから、どういうことかはっきりわかるわ。何事もやりすぎは良くないのよ」
「あんた、女のくせに女心よくわかってないわね。真姫だって女の子なんだから、そういうところ察してあげなさいよ」
「……うん」
「……落ち着いたみたいね。さ、行ってらっしゃい。どっちが悪いのかは知らないけど、泣いてるあんた見てたら、夢に出てきそうだわ」
「……ありがと!にこちゃん!行ってくるね!」
「……頑張んなさいよ、まったく」
もう一度、音楽室に行かなきゃ
多分、待ってるはずだから
大口を開けて開きっぱなしの音楽室の扉
あれから、時間が止まったよう
動いているのは、私の揺れる気持ち
なんてことをしてしまったんだろう
音楽室のピアノの椅子に座って、天井をじっとみながら、それだけを考えていた
呼吸もままならない
涙が止まらない
気を紛らわすためにピアノを弾こうと思ったのに
全然、できる気がしない
「はぁっ、ひぐっ、ひっく、ぐすっ、ごめん……なさい……」
本当ならすぐにでも謝りたい
すぐにでも抱きしめたい
すぐにでもあなたを感じたい
けど、けれどそれはできない
あなたを傷つけた私にそんな資格があるはずがない
私のことを大事に思ってくれていたのにそれを拒絶してしまった私に
寂しくて、切なくて肩を抱く
そんな時、息を切らして走ってくるのが聞こえた
この息遣いは……間違いない
「はぁ、はぁ、真姫ちゃん……!」
穂乃果が戻ってきた
「ごめんね、真姫ちゃん。あの、私……」
沈痛な面持ちで、私に近づいてくる
だめ、きちゃだめ
「私、その、ごめんなさい!真姫ちゃんの気持ちを考えてなかったから!」
来ないで、お願い、私のところに来ないで
そんな言葉を聞きたいんじゃない
「だから、仲直り、したい!」
私もしたい!
……けれど、
私はできない
「……ごめんなさい」
私は、私を許すことができない
「……どうして謝るの?」
「今の私は、あなたに相応しくない。資格がないのよ」
「そんなのっ……!そんなの、いらないよ!」
穂乃果は慰めるように私を抱きしめる
本当は甘えたい
けれど、罪悪感が私をそうさせてはくれない
手が震えて、腕をギクシャクさせる
「いらないから、一緒にいて?お願い……」
穂乃果が救いの手を差し伸べる
「……少し、時間をちょうだい」
けれど、私はその手を振り払う
「え……」
「今の私は、私を許せないの。だから、整理する時間をちょうだい」
また、私のわがままで穂乃果を傷つけるってわかっているのに
穂乃果が呆気にとられている隙に、私は穂乃果の戒めから抜け出して、音楽室をよろよろと出る
「……待ってる!」
「え?」
扉の縁に手をかけたとき、穂乃果は私をまた呼び止める
その声にハッとして、穂乃果を見る
穂乃果は、そんな私を見て言葉を紡ぐ
「真姫ちゃんが悩んでるなら、一緒に考えたい!……けど、真姫ちゃんが一人でいたいなら、……私は待ってるから」
私は黙って穂乃果の顔を見る
「……けどっ!必ず帰ってきてね?ひとりぼっちは、……寂しいから」
優しい笑顔
その笑顔に何度救われたことか
けれど、今は……その笑顔がただ、眩しいだけ
言い終わったと思って、私は音楽室を後にする
去り際に多分笑顔を浮かべたけど、穂乃果にはどう映っただろう
-続く-
うーん 乙
おつ
ここで終わりかよぉ!とか思ったらつづくか
続きはよ
おお続きが!待ってました!
乙、期待してるで
おちんぽ!
1週間がたった
あの日から、全然真姫ちゃんとはあんまり話せてない
話すことといえば、歌のことくらい
私のせいで真姫ちゃんが悩んでる
本当なら一緒に相談したい、分かち合いたい
けれど真姫ちゃんは私を避けて、どこかに行っちゃう
理由は、真姫ちゃんが私と一緒にいる資格がないからって
そんなもの、いらないのに
それって、恋に必要なの?
ただ一緒にいてくれれば、それだけで私はいいのに
今の私にできることなんてない
だから―――
「待ってる、というのですか?」
様子がおかしいらしい私たちを察して、海未ちゃんとことりちゃんが心配してくれている
まぁ、誰だって、いきなり仲良かったのが疎遠になったら、気にするよね
「いいの?穂乃果ちゃん、真姫ちゃんのこと……」
多分心配してるんだよねって言いたいんだと思う
だから、そんなことないって自分にも言い聞かせるように
「うん、大丈夫」
って返す
そしたら、ことりちゃんは「そっか」って俯いちゃった
「穂乃果、私たちで何かできることはありませんか?」
「え?」
「今の穂乃果に何もできなくとも、私たちにならできることがあるはずです」
「海未ちゃん……」
頼りになるなあ、海未ちゃん
「ありがとう。けど、どうしたらいいのかな?」
「うん、じゃあ何をしたら真姫ちゃんと元通りになるかを考えてみようよ」
「そうですね、それが一番だと思います」
二人があれこれ話している
でも頭に一言も入らない
私の頭の中はもやもやでいっぱい
どうやったらとか、考えられないよ
せっかく、幼馴染の二人が応援してくれてるのに、肝心の私は、何もする気がない
私は待ってるんじゃなくて、立ち止まってしまっただけなんだ
思いがけず、机に突っ伏す
「穂乃果?聞いてますか?」
急に現実に引き戻されて、私はハッとして、頭を起こす
「え?な、なに?」
「何ではありません、聞いていましたか?」
「ご、ごめん、全然……」
「まったく。……ことりに案があるようですよ?」
「案?」
「うん!あのね、ちょっと穂乃果ちゃんに協力してもらいたいことがあってぇ……」
なんだろ?
「なに?何をすればいいの?」
「あの、けど、ちょっと穂乃果ちゃんを怒らせるかもしれなくって……」
目をそらして、物憂げに話すことりちゃん
少し、胸騒ぎがする
けど、聞かないわけにはいかない
ことりちゃんが心配してくれているわけだし
「……いいよ、何をすればいいの?」
「あのね……」
一週間って長いようで短い気がする
あれから、全然自分の中で結論はつけられてない
考えてることさえ放棄して、ただ時間が流れていくのを待っているだけ
なのに、特に喪失感もない
穂乃果と硬直した関係になったのに、もう慣れ始めている自分が恐ろしいくらい
このまま、自然消滅してしまうかもしれない
それも、いいかもしれない―――
「真姫ちゃん、真姫ちゃん、お願いがあるんだけど」
物思いに耽る私に話しかける花陽。その腕は大量のノートを抱えていた
言いたいことはわかる
一人で持つには大変そうだし、せっかく頼ってきてくれているわけだから、協力しないわけにはいかないわよね
「大変そうね、手伝ってあげるわよ。凛は?」
「凛ちゃんは次の授業の事前準備で先生に連れていかれちゃったの」
「そう、じゃあ半分もらっていくわね」
そういって、上から半分以上持っていく
「真姫ちゃん、それ半分より多くない?そんなにもっていかなくていいよ」
「いいのよ。ほら、さっさと持っていくわよ」
ノートを腕に抱えて、さっさと教室を後にする私
「あ、ま、まってぇ」
慌てて花陽もついてくる
まるで親鳥についてくる雛みたい、なんてね
「ありがとう真姫ちゃん、助かったよぉ」
「気にしなくていいわ。さ、戻りましょ」
「うん」
「……そういえば、穂乃果ちゃんとあれから、ほんとに何もないの?」
体がビクッとする
傷に塩を塗られるよう
「……無いわね」
「あっ、ご、ごめんね!立ち入った話しちゃって!」
「……いいのよ、気にしてないから」
その言葉と裏腹に、逃げるように私の歩調は速まる
「……花陽、先に戻ってるわね」
居ても立ってもいられなくなって、すぐにそこから離れる
「待って、私もー!」
イライラが沸々と湧き上がってきた
今の私と穂乃果は関係ないはずなのに
あんな見せつけられたら、なんだか盗まれたみたいじゃない
悔しいような、どうでもいいみたいな、いろんな気持ちがごちゃごちゃ混ざって
「……ばっかみたい!」
ってつい叫んじゃった
隣にいた花陽はもちろん、周りの人たちはびっくりしてた
私も、周りの視線でなおさらいられなくなって、教室に戻ろうとした
けど、花陽は私の腕を掴んで
「真姫ちゃん、行って!」
「か、関係ないでしょ!」
「関係なくないよ!ホントは行きたいんでしょ?」
「でも、だって……」
一瞬だけことりとずっと仲良くしていればいいって思ってしまった
私よりはずっと息も合うだろうからって
そんな私と、
本当は引きはがしたい
私の穂乃果を奪うなんて許せないっていう気持ちがせめぎあって
結局見なかったことにしようって、逃避の自分もいて
私は、その道を選ぼうとした
けれど、花陽はそんな私を許してくれなかった
「真姫ちゃんが私に言ってたよね!?自分の気持ちに嘘をついちゃだめだよ!」
「花陽……うん!」
気づいたら、花陽は私の腕を離していて、私は走り出していた
今の私なら、凛よりも速く走れるかもしれない
「で!なんで二人でそんなに仲良くしてるのよ!」
運動場までたどり着いた私は早々に穂乃果を人気のつかないところまで連れてきた
「だって、私たち幼馴染だし……」
「それにつけてもよ!私のことはどうでもいいってわけ?」
「そ、そうじゃないよ、だって、待ってるって私、言ったし…」
「だからって、だからって他の子と仲良くするっていうの!?ふざけないで!」
「いや、あれは、その……」
「言い訳無用!浮気は許さないわよ!」
私は穂乃果の肩を抱いて、壁に押しやる
穂乃果が小さくうめく
「あ、あの、真姫ちゃん……」
「何よ!」
「今でも、真姫ちゃんは自分のこと、許せない?」
「え?」
言われて、気づいた
私、穂乃果とちゃんと話せてる
「まだ、資格とかって、自分を許せないでいる?」
考えてみれば、そうだった
自分の気持ちに線を引いて、大人ぶったみたいにいて
あの日の私は、自分の気持ちに正直だった
私は、そんな気持ちを忘れかけていたんだと思う
「……ううん、そんなことないわ。おかげで大事なものを取り戻せた」
「そっか、ならよかった!それよりこっちこそごめんね、変な誤解させちゃって」
誤解?
「……どういうこと?」
「あのね、実は……」
それから、全部聞いた
ことりが、私の気を引くために自分からやったことだって
最初は穂乃果も海も反対してて、けれど二人のためだって言ってくれて
原因が原因だけに、怒る気にもならなくって、結局許しちゃった
けれど、そうしてくれたおかげで私はもう一度穂乃果とちゃんと手をつないでいられるようになった
そうさせてくれたことりと、私の背中を押してくれた花陽には、なんと言って感謝すればいいのかわからない
それに、私のことを信じて待っていてくれた、今隣にいてくれる穂乃果にも
「真姫ちゃん真姫ちゃん、この問題が分からないんだけど……」
「んー?ああそこはね、三角比の公式に当てはめてみなさい」
「えっと……えっとぉ……わかんないよぉ!もうやめやめ!」
そう言って、穂乃果はシャーペンを投げ出して、床に寝っ転がる
「ちょっと、そうやってすぐあきらめたりするのはよくないわよ?」
「だってぇ、問題が難しいんだもん!」
「私の時みたいにじっくりとはいかないわけ?」
「それとこれとは別ー!真姫ちゃんの方がいいもん!」
「……どういう意味?」
めんどくさいって、希のお墨付きまであるのに
「だって、真姫ちゃんとはこうしてお話しできるし、忘れることもないもん……」
ふて腐れて、寝返りをうつ穂乃果
「……そう」
53と54の間抜けてる?
私は呼んでいた本を閉じて、寝っ転がった穂乃果の上に覆いかぶさる
そんな私に、穂乃果は微笑を返す
「……そういえば、まだ言ってなかったわね」
「何?」
寝返りをうっていた穂乃果が私を正面に見据える
「……ただいま」
「……遅いよ」
穂乃果が私の頬を軽くつねる
「ちょ、痛いわよ」
「怒ってるんだよ?私のこと放っておくから」
「……ごめん、ほんとならこんなんじゃ済まないわよね」
「ううん、これで十分だよ。……また、こうやって二人きりになれるんだね」
「……ええ」
そう言って、穂乃果をぎゅうって抱きしめて
幸せにキスをした
「……ふぁ」
「おかえり、真姫ちゃん」
「待っていてくれて、ありがとう。穂乃果」
「いいの。私はあなたのものだから」
その言葉で、体がかあって熱くなって、すごく愛しくなって
「もう、離さないからね」
「うん♪」
もっと強く抱きしめて、もう一度、キスをした
-おしまい-
マジだ
これはいります
>>53、>>54の間
「ま、まってぇ~……あれ?」
慌てて私を追う花陽が、急に足を止めて、廊下の外を見る
それに気づいた私も、花陽と同じ方に視線を移す
視線の先には、体操服姿の穂乃果とことりが抱き合っていた
いつも通りの風景、いつも通り穂乃果が―――?
違う、ことりから抱き付いてる
それに穂乃果もいつも通りのっている、という様子だった
「ことりって、あんなに穂乃果にベタベタしていたかしら」
視線はそのままにのろのろと花陽に近づいて、問う
「ううん、あんなことりちゃん、初めて見たかも」
おつおつ
朝起きたとき、体中が痛かった
痛いなんてものじゃない、気づいたら体はベッドの外に投げ出されていて
それに、あんまり眠れた気がしなくて
原因はわかってる
―――穂乃果の寝相が悪いから
こればかりはどうしようもないんだけど、でもどうにかしたいな、とは思う
「おはよう……」
「おっはよー!・・・ってあれ?真姫ちゃんなんか元気ないね」
真っ先に凛が私の異変に気付く
「うん、昨日、あんまり眠れなくってね」
「大丈夫?目元とか沈んでるよ?」
花陽が私の顔を覗き込んでくる
「うん、平気……」
「心配だにゃ……」
「平気、平気だから……」
心配する二人をよそに私は1時間目の授業の仕度をしていた
今日はとっても気持ちのいい朝を迎えました
なんといっても私の抱き枕、真姫ちゃんがいるから!
「真姫ちゃんのおかげで最近寝相がよくなった気がするんだ!あとすぐおきられるようになった!」
「穂乃果の寝相はとても悪いですからね……」
「あはは、そんなことない……と思うけど」
「あのね、真姫ちゃんが私の抱き枕になってくれるの!あったかいし、柔らかいし、抱き心地いいんだよ!」
「真姫に迷惑なのではないですか?」
「ううん、真姫ちゃん一言も嫌とか言わないし」
本当か?って言いたげな海未ちゃんの表情からして、信じてもらってないよね、これ
「本当だもーん、信じてよ~」
「ならば、真姫に聞いてみるとしましょう」
「うん!早速お昼休みに真姫ちゃんを呼ぼう!」
結局、この日午前中の授業はあまり先生の話は聞けてなかった
かろうじてノートをとることはできたけど、これを頭に入れるのは難しいかもしれない
そんな時、彼女は現れた
「まきちゃーん!一緒にお昼食べよー!」
ドアを開けるなり穂乃果は私の名前を呼ぶ
「大声で呼ばないでよ、恥ずかしいから」
「えぇー?……ごめん」
「もういいわよ。凛と花陽もつれてっていい?」
「うん!みんなで食べよ!」
「決まりね、花陽、凛、行かない?」
「ごめんね、ちょっと飼育委員で早めに食べなきゃいけないから……」
「凛も付き添いするにゃー」
何よ、ノリが悪いわね……
「分かったわ。じゃあ行ってくるわね」
「いってらっしゃーい」
「ほらほら、いこ!」
「分かったから……」
お弁当を持って、穂乃果の後についていく
少し頭の中がぼーっとしてる
眠くて仕方ない……
中庭でお弁当を広げる私と真姫ちゃんと海未ちゃんとことりちゃん
「いただきます」ってみんなそろえて言って、それぞれ食べ始めるの
「それでね、真姫ちゃんの抱き枕の話になってさ」
ってパンを食べながら話していたら、海未ちゃんとことりちゃんはじーっと真姫ちゃんの方を見てて
「ねー聞いてるー?」
なんか無視されてるみたいでいやだったから、思わず言っちゃった
「穂乃果、真姫は何も言ってこないのですか?」
藪から棒に、変なことを聞く海未ちゃん
「本当だよ?ねぇ真姫ちゃん……あれ?」
寝ちゃってる……?それどころか、お弁当箱も開いてない
さっきまで元気だったのに……
「真姫の事です。きっと我慢していたのでしょうね、穂乃果のために」
「どういうこと?」
「真姫は、おそらく昨晩あまり眠れていません。だからそのつけが今になって現れているのでしょう」
「真姫ちゃん、穂乃果ちゃんと一緒に来た時からあまり元気なさそうだったもんね」
私のために、そんな……
ひどいことしちゃったな……
「とにかく、このまま休ませてあげましょう。起こすほうが悪いです」
「うん……」
けど、何かできないかな?
こんなんじゃ、あんまり休めなさそうだもん
せめて、何かしてあげたい
「あ、そうだ」
真姫ちゃんの膝のお弁当箱を取って、真姫ちゃんの頭をゆっくり私の膝の上に乗せる
「穂乃果ちゃん、膝枕?」
「うん、少しでもちゃんと寝かせてあげられたらいいなって……」
「……いい寝顔ですね、真姫」
真姫ちゃんの無防備な寝顔って、普段のきりっとした顔と全然違うから、すごくかわいいんだよね
「うん。とりあえず、このままにするね」
「それがいいよ。いいなぁ、膝枕。ねぇ海未ちゃん、私にもやって?」
「お断りします」
「えぇ~?海未ちゃんのいじわる~」
顔についた枯葉で私は目を覚ます
気が付いたら、なんだか暖かいものに頭を撫でられていた
「ん……」
目の前には優しい表情の穂乃果がいて
それで、納得した
「穂乃果、私、寝ちゃって……」
「うん、けどまだ次の授業の時間まで時間もあるし、ゆっくり休んでて」
「……うん、あったかい。すごく、安心する」
びっくりしたらしい穂乃果が、照れ隠しに私の頭を撫でる
「ごめんね、私の寝相が悪いばっかりに」
「……今度、どうやったら穂乃果の寝相がよくなるかいろいろ試しましょうか」
そこで、また睡魔が私を襲う
最後に見えたのは、恥ずかしがりながら「うん」って答えた穂乃果の顔
体中痛いけど、あなたの顔が見られれば、私はいいかなって
けれど、穂乃果の寝相がよくなったら、もっと気持ちよく眠れるんだろうな……
だって、あなたが私を抱きしめるっていう事は、私もあなたの暖かさをもらえるってことだもの
それに安らぎがついたら、どんな枕よりも私には価値があるもの
世界中どこを探したって見つからない、私だけの枕
それから、午後の授業はいつも通り受けられた
穂乃果の膝枕のおかげかしら?
これからも、眠れない時は頼んでみようかしら
あの子の膝、柔らかくって暖かいから、安心して眠れるから―――
-おしまい-
シリアスやろうとしたら中途半端になる癖何とかしたいですね
おやすみ
乙
そんなほのまきも大好きです。
乙
乙
あなたのほのまき大好き
乙
数日して、穂乃果の部屋に上がり込んだ私は、今日こそ決着をつけなくてはならない問題にメスを入れる
小さな机を狭間に私と穂乃果が相対する
「さて、穂乃果。今日はちゃんと決めましょうね」
「うん、私との愛を育むために!」
「勘違いしないで、私の安眠のためよ」
「ひどい!もー、冗談なのに~!」
「言われたくなかったら普段からちゃんとしていればいいのよ、まったく」
「……真姫ちゃん、穂乃果に厳しくなった?」
「そんなことないわ、けれど今回の件は私の死活問題だからよ。いい?あなたが原因なんだからね?」
「うぐっ、すみません……」
穂乃果は頭をはたかれたように消沈して、頭をガクッと下げる
「無駄話はさておいて、寝相の悪さにはいくつか原因があるって言われているわ」
「例えば?」
「そうね、枕が高いとか、暑さや寒さ、布団の重さ、部屋の照明などがあげられるわね」
「ほうほう」
「穂乃果って暑がり?それとも寒がり?」
「う~ん、暑いときは暑いっていうし、寒いときは寒いっていうし……わかんない!」
正直、頭を抱える
聞いた私がばかだった……
そんな私の態度を見て、穂乃果はぷりぷり怒って
「あ~!真姫ちゃん穂乃果のこと馬鹿にしてる!」
「あたりまえじゃない!2択の質問をしてるのに3つ目の選択肢が出てくるなんて変でしょ?!」
「イエスかノーか半分かの半分ってこと?」
「……何を言ってるの?」
「真姫ちゃんって案外融通利かないよね」
「茶化さないの」
おでこにデコピンひとつ
「あたっ」
「じゃあ次の質問ね。ベッドで寝るときに枕の高さに不満を感じたことはある?」
「う、う~ん…あんまり無いかな?」
「それはそうよね。じゃないと年中ベッドから転げ落ちているものね」
いじわるに笑う
「そうだね、じゃあ枕は関係なさそうだね」
皮肉のつもりだったのに……
「そんなことないわ、泊りがけで寝るときにあなた大概頭と枕が別々じゃない」
「うっ」
「今の枕が相当居心地いいんでしょうね。その分、なれない枕だと眠れない可能性はあるわ」
「わぁ、穂乃果、ことりちゃんみたいだね!」
「ことりの方がマシよ。自覚があるもの」
「……穂乃果、いま馬鹿にされた?」
「慣れてるでしょ?」
「こんなの慣れたくないよう……うぅ」
「…ごめん、ちょっと言い過ぎたわ」
「じゃあ罰として穂乃果の頭撫でて!」
「……は?」
「最近、真姫ちゃんに頭撫でてもらってないから!」
うーん、この人の考えてることってよくわからないわ……
けど、機嫌を損ねられたままだと進む話も進まないだろうし……
「……嫌って言ってもするまで許してくれないんでしょ?わかったわよ。頭出して」
「はーい」
いそいそと机をどかして、穂乃果がにじり寄る
私は、躾けられた飼い犬のように出された穂乃果の頭をそっと撫でる
「わーい♪」
ただ撫でてるだけなのに、どうしてこんなにうれしがるんだろう
「ほら、これでいい?」
「もっとやってもらわないと許しませーん」
「はいはい」
それから、結構やってた気がする
そのうちに穂乃果の体がこっくりこっくりと私の方に倒れて
私は目を覚まさせるよりも彼女に膝枕をしてて
そこまでを無意識にやっていたから、気が付いたときには誰かに見られるかもと思って
急に恥ずかしくなったから起こそうとしたのに結局できなくて
悶々としてたらその寝顔が目に入って
その無防備で愛らしい寝顔をじっと見つめている私がいて
「かわいい」、なんて思ってたり
「あー、お姉ちゃんまた寝てる……」
心臓がドキンって、一つ大きく跳ねる
雪穂ちゃんが、ふすまを開けてあきれ顔で私たちを見てる
「ごめんなさい、真姫さん。お姉ちゃん寝るの好きだから……寝相悪いけど」
「え、そっ、そうね、……合宿の時も相当周りに迷惑かけてたし」
「ですよねぇ、あははは……。あれ?お姉ちゃんって膝枕されてこんなに静かに寝てたっけ?」
「え?いつもは違うの?」
「はい。しょっちゅう寝返りうって、しまいには膝枕から離れて行って……」
「……へぇ」
少し、誇らしかった
「あ、そうだ漫画取りに来たんだった。お姉ちゃんが珍しく大人しいから忘れてた……」
少しおっちょこちょいなところは、姉妹でそっくりかもしれない
穂乃果の部屋の漫画の棚から数冊取り出して、
「あ、雪穂ちゃん。私も少し読みたいから、悪いけど取ってくれない?」
「え?自分で……あ」
少し、申し訳なさそうに寝ている穂乃果を指さして雪穂ちゃんにジェスチャーする
そしたら、物分かりのいい雪穂ちゃんは目線を上下させて、ああと心得た顔をして「いいですよ」と返してくれた
「真姫さんも結構マンガ読むんですか?」
本棚からどっさりとりだした後、雪穂ちゃんは私に問う
「まさか、読み始めたのはここ最近。普段は勉強もかねた古典や純文学とか、外国文学ばかりよ」
「へぇ~、やっぱり育ちが違うなぁ。今度、面白い小説あったら教えてください!」
「ええ、もちろん。その時は本ごと貸すわ」
「やった♪じゃあお姉ちゃんによろしく伝えておいてください」
そういって、雪穂ちゃんは本を抱えて上機嫌に穂乃果の部屋から出ていく
「……いい妹さんね、私が欲しいくらい」
一人っ子だから、なんとなく吐いて出た言葉
私も、兄や姉がいたらもう少し楽だったかもしれないし、
弟や妹がいたら多分もっと楽しかったかもしれない
なんて、妄想しちゃう
「そんなことないよ、雪穂口うるさいし」
「えっ……聞いてた?」
「んー……妹が欲しい、とかそんなことだけ」
「そう」
読もうと思った漫画を平積みにされた本の塔の天辺に乗せる
「よっこいしょっと……穂乃果、どれくらい寝てた?」
穂乃果も、まどろみながら体を起こす
「15分くらいよ」
「そっか、じゃあもう一眠り……」
「待ちなさい。まだ話は終わってないでしょ?」
せっかく起きたのだし、ちゃんと話をしなくちゃ
というか、私が振り回されすぎてるだけなのも原因な気がしてきた
「えー?この際だから真姫ちゃんが穂乃果の抱き枕になってくれればいいのに」
「もう、前のこともう忘れたの?一緒に寝たら私が大変な目にあったから、今こうやって話をしてるんじゃない」
「だ、だってあの日は真姫ちゃん、抱き付かせてくれなかったし……」
瞬間、ハッとした
確かにあの夜一緒のベッドで寝てはいたけど、よくよく考えてみると少し距離を取っていた
だって、なんとなく目が合って、恥ずかしくなったから…
じゃなかった、今考えなきゃいけないのは穂乃果の寝相の良しあしで
一人の時はひどく転げまわるけれど
穂乃果に膝枕をしているときは彼女はおとなしい
あ、何か、解決の糸口が見えたかもしれない
まだ仮説の段階だけど、試してみる価値はあるかも
「……いつも……っていうのはさすがにだめだけど。穂乃果、今度試したいことがあるの」
「ん?いいよ!何するの?」
「それはね……」
穂乃果と一緒に寝るようになってもう両の手で数えられないくらいになった朝
やっぱり先に目を覚ますのは私の方だった
気持ちよさげに隣で眠る穂乃果を起こすのは少しだけ、気が引けるけど
朝練に遅れちゃうし、そこはきっちりしないとね
「起きて、穂乃果」
「ん、んん~……おはよう、真姫ちゃん」
「おはよ」
寝ぼけ気味だけど、いつもの太陽みたいな笑顔
私は気持ちのいい朝を迎えることができた
理由は、あの仮説が当たったから
穂乃果とお互いに手を握り合って寝ると、驚くほど彼女は大人しく眠るようだ
具体的な説明はできないけど、とにかく私がいれば、穂乃果は暴れなくて済む
私といるだけで、彼女は安らかに眠る
私はそれが嬉しくて、満たされていた
だって、彼女が私のことを大事にしてくれてるってことでしょ?
「真姫ちゃんご機嫌だね。今日って何かあったっけ?」
「うふふ、ヒミツ!」
「えー?おしえてよぉ~」
「じゃあ、次の定期試験で数学80点以上取れたら教えてあげる」
「えぇぇぇええ!?……むぅ、わかった、いいよ!それと!穂乃果のお願いも聞いてもらうんだからね!」
「なによそれ、私が不公平じゃない?」
「じゃあ穂乃果が80点取れなかったら真姫ちゃんが穂乃果にお願いしてよ!」
少しだけ、考える
けれど、私のしたいことはもう決まっていて
「じゃあ、久しぶりにデートしない?」
「決まりだねっ、じゃあ約束!」
そう言って穂乃果は右手の小指を出す
でも、私は穂乃果のしたいことが分からなくて
「……なに?」
「ん?あぁ、真姫ちゃんも小指出して」
なにがなんだかわからないけれど、とりあえず、右手の小指を出す
そしたら、穂乃果は私の手を掴んで、私の小指と彼女の指を組み合わせる
「な、なんなの?これ」
「えっへへ、…ゆーびきーりげーんまーんうーそついたらはーりせんぼんのーます♪」
穂乃果がへんてこな歌を歌いだして、
「小さい頃によくやったおまじない!約束だよ!」って組んだ指を離す
……小さい頃のおまじないって
私、子ども扱いされているのかしら
ま、いいわよ。あっちに悪気はないし、私も悪い気はしないし
「ええ、約束。さ、朝ご飯食べて、朝練に行きましょ」
「うん!」
また、新しい一日が始まる
今日はどんないい日になるかしら?
-おしまい-
ほっこりした
乙
乙
やっぱりほのまきはいいよね
いつも楽しみにしとります
しえんあげ
きゃわわ 乙
いつもありがとうです。
乙
心が凄く幸せ
定期テストが返されました。
この前真姫ちゃんと約束した80点以上とったら、っていう約束のもと、猛勉強した成果が……。
78点。
世界が固まって、胸に雷がどーんって落ちたみたいに痛くなって、泣きそうだった。
どうして?なんで?ってずっと考えてたよ。
だから回答用紙と問題用紙を必死に見比べたら、たったひとつ、最初の問題ですごく単純な間違えをしちゃってたの。
あぁ、ほんと私、おっちょこちょい。
先生に赤で「次もガンバれよ!!」って書かれて、海未ちゃんやことりちゃん、ミカたちにもすっごく誉められたんだ。
嬉しいんだけど、そうじゃないの。
一番誉めてほしい人には誉めてもらえない。
それが、悲しい。
真姫ちゃんになんて言われるかな。
怒られちゃうかな?
…ごめんね、真姫ちゃん。約束、守れなかったよ……。
「穂乃果ちゃん、穂乃果ちゃん?どうかした?どこか痛い?」
ふわふわした優しいことりちゃんの声。
気がついたら授業も終わって机に突っ伏してたみたい。
あわてて起きるけど、もうあとのお祭り。
「まったく、高得点をとったと思えばこれですから……」
海未ちゃんが鬼のお面を被ったみたいな、すごく怖い顔をしてる。
また怒られちゃうね、こりゃ……。
「…今日はその点数に免じて許してあげましょう」
「え?あ、うん。ありがと…」
「それより大丈夫?顔色悪いよ?保健室行く?」
「だ、大丈夫!考え事してたら眠くなっちゃって、あはは」
「無理は禁物ですよ?その点数にしても、睡眠時間を削ってのことでしょう?」
やめて、やめてよ。
この点数に意味なんてないんだよ。
「それにしても穂乃果がこんな点とれるなんて世の中何が起こるかわからないねぇ」
やめてよっ……。
「穂乃果ちゃん、やるって決めたことはちゃんとできるからね」
やめてよぉっ!
気づいたら、椅子を倒して立っている私がいた。
あっ、って思って周りを見たら、みんなが石みたいに固まって私を見る。
吐き気がする、居心地が悪い。逃げ出したい。
「あ、あははは、……ごめん、やっぱり保健室、行くね」
「ついていこうか?」
「ううん、一人で平気だから」
精一杯の作り笑い。ことりちゃんの気遣いも振り切って、ばれないように逃げるように教室を出ていく。
保健室に逃げ込もう。ベッドを借りて、寝てしまおう。
今のこの気持ち悪い感じを、なかったことにしよう。
ガラガラ、ってドアを開けるとそこには
「ん?あら、穂乃果」
「え……」
「どうかした?体調でも悪いの?」
なんで
なんで今一番会いたくない
真姫ちゃんがいるの?
「あっ……うっ……っ!」
胸が痛い。
涙がぼたぼた出てくる。
「ひっ、ひぐっ……ぐす……」
「えっ!?ちょっ、穂乃果!大丈夫!?どこか痛いの!?」
「何でもっ……ぐすっ、ひっく、ないっ、よ……」
「何でもないことないでしょ!どうしたのよ!」
「ひぐっ、ふっ、うえぇえん……」
「……あぁもう!」
ぎゅうって、包み込まれる感覚。
よく知ってる、優しいこの息遣い。
私の、居場所。
「……もう、人がいるところでこんなこと、させないでよね」
「……んっ、はぁっ、すんっ……ごめんっ……」
人がいるなんて、全然気づいてなかった。
最初に見えた姿が、真姫ちゃんだったんだもん。
「あー…西木野さん、私先に教室行ってるね」
「えっ、ああ、ええ!少し遅れるって先生に言っておいてもらえる!?」
「うん、けどそのまま帰ってこなくてもいいよ?」
「変なこと言わないで!」
「あはは、はーい…失礼しましたー」
真姫ちゃんのクラスメイトの子が申し訳なさそうに私たちの合間を縫って保健室から出ていく。
真姫ちゃんは、その後姿を見届けた後、むくれ顔で私の制服の袖を引っ張って連れていく。
「ふぇっ、ちょっ、まきちゃっ、どうしたのっ?」
戸惑う私に何も言わず、そのまま歩く真姫ちゃんと、つられる私。
そのまま、廊下を歩く二人の足音が聞こえるばかりの時間が続く。
時折真姫ちゃんに話しかけるけど、真姫ちゃんは何を言ってもうんともすんとも言わないし。
このなにも言ってくれない時間が、怖い。
真姫ちゃんが何を考えてるのか全く分からなくて、独り置いていかれてるみたい。
歩いて行った先は、アイドル研究部の部室。
真姫ちゃんがカギを開けると、私をひっぱって、部室の椅子に座らせる。
「……で、何があったの?」
ふくれっ面のままで、私に尋ねる。
「えっ、あのっ……その」
私も言おうと思ったのにまごついて、言葉が出せないで。
目も合わせられないくらい、真姫ちゃんを見るのが怖い。
そんな私を見て、真姫ちゃんは溜め息をついて、隣の椅子に座る。
「……テスト、だめだったの?」
「あっ……」
「やっぱりその件だったのね。……で?どうだったの?」
隠し事なんて、私にはできないね。もう、話さなきゃ。
「……78、点」
顔も見られないくらい悔しくって、そっぽを向く。
ごめんなさい。
ごめんなさい、期待を裏切って。
ごめんなさい、約束守れなくて。
ごめんなさい、こんな私で。
何もできなくって、そんな自分が許せなくて、自分の制服をぎゅって掴んで、もっと泣いちゃう。
「……そう」
真姫ちゃんはそんな私の頭をそっと優しく撫でて、私の体を包む。
「泣きたいなら、思いっきり泣きなさい。ここには、私しかいないから」
息が詰まる。
胸の中にたまっていたものが今にも張り裂けそうで、どうしようもなくて。
「ひっ、ふぐっ、ふえぇえぇええん」
「うん、もっと泣いていいのよ」
「はぁっ、ひぐっ、ひっ、うわぁぁぁぁ……」
「うん、うん……」
ずっと、ずっと泣いてた。
真姫ちゃんは、ずっと私のことを抱きしめてくれた。
暖かい、真姫ちゃんの体。
心のもやもやが洗い流されていく気がする。
心が、軽くなっていく。
泣き止んだのは、それから少しして。
「どう?すっきりした?」
「すん、ありがとう、ぐすっ、真姫ちゃん」
「……授業、半分終わっちゃったわね。…あ、私の制服びしょびしょ…」
「あっ…ごめん」
「……ま、穂乃果の珍しい泣き顔で許してあげる」
って言ってぷいってそっぽを向く。そんな仕草を見ていたら、真姫ちゃんの目元もうっすら赤く、頬に涙の線ができてて、この時、私は真姫ちゃんも泣いてたんだって、やっとわかった。
「それにしても、なんで泣いてたわけ?」
「そ、それは……」
「ま、話したくないなら、いいけど」
「……真姫ちゃんに、嫌われるって思って」
「え?」
「約束守れない私じゃ、ダメだと思ったから、だから……」
「……ばか、思ったことには本当に一直線ね」
「……うん」
「でも、苦手だから、どうせできないから諦めようとしない穂乃果は、とても素敵」
「ぁっ……」
「なんでもないようなどうでもいいことでも、あなたは彩を与えてくれる。嬉しいとか、悲しいとか。今ならわかるわ。そういうところに惹かれたんだって」
励ましてくれる暖かい言葉と、気持ちのいい真姫ちゃんの笑顔に思わずハッとして、私は目を逸らす。
何でこんな変なこと考えてたんだろう。もっと、もっと真姫ちゃんのこと、信じてあげればよかった。
「また変なこと考えてるでしょ」
「えっ?そ、そんなことないよ!」
「ならいいけど。さて、約束は約束だし、何か罰を与えないとね」
「えっ……」
呆気にとられてる隙に真姫ちゃんは私のおでこにデコピン。
「いたっ」
びっくりして、目を閉じる。
「何する……」
文句の一つでもしようとおもったのに、真姫ちゃんはすかさず私の顎をくいって掴んで、
「え……?」
何をされてるのかわからなかった。
けれど、暖かいものが触れているのがわかって、それからおでこにキスされてることがやっとわかった。
しばらく、私の中での時間が止まる。
我に返ったのは胸がとくんと鳴った時。
真姫ちゃんの腕をそっと握ると、真姫ちゃんが離れる。
離れるとき、真姫ちゃんは名残惜しそうに舌をつん、って当てて、ゆっくり椅子に座った。
「……はい、お仕置きと…ご褒美」
「…ご褒美なんて、こんなの、いらないのに…」
「なに?私のあげるものに文句でもあるの?」
「うっ、そういうわけじゃ……ごめん」
「ふふっ、冗談よ。謝らないの」
「はい…あっ、あの。ねぇ、今度は…」
ドキドキが、止まらない。真姫ちゃんのキスがもっと欲しい。
「だめよ、もっとしたいときがあるもの」
顔を真っ赤にして、そっぽを向きながら、真姫ちゃんは私に言う。
そしたら、なんか急におでこが、キスされたところからぎゅううって、
体が熱くなって、心がぽかぽかして、気持ちよくなった。
「…つ、次はもっと点が取れるように頑張りましょう。私も、穂乃果が分かるように頑張って教えるから…」
「……うん!えへへ……あ、そういえば真姫ちゃんのお願い…デート、だね」
「あ……そのことなんだけど……ごめん、ちょっと変えていい?」
「えっ?」
「よくよく考えたら穂乃果に得ばっかりあって、それは不公平だと思うのよ」
「いいじゃーん、真姫ちゃんとデートしたい~」
「話は最後まで聞いて。…一日だけ、私のわがままに付き合って。それでいいでしょ?」
「えっと……?」
どういうことだろ?
「……デートはする。けど主導権は私。穂乃果は黙ってついてきなさいってこと」
「あぁ、そういうことね!うん!」
「いい?絶対に口出ししちゃだめなんだからね」
「うん!わかった!よっし、元気出てきた!教室に戻るねー!」
「ええ」
真姫ちゃんに見送られながら保健室をぱたぱた出て行って、教室に戻る。
来た道をたどると、重苦しかったステップが、とても軽くって。
スキップしていると、後ろから私の名前が呼ばれる。
「お、高坂ー、ちょっと頼みごとがあるんだけど」
担任の数学の先生だった。
「なんですかー?」
「数学の回答な、ちょっとミスがあって、それの修正のプリントがあるから、ほい、これクラスのみんなに渡しておいてくれー」
「はーい」
「点数自体は全員分の答案はコピーしてあるから、こっちで修正するからさー。じゃっ!」
って渡された30枚くらいの紙束。
そこに書いてあったのは、私が間違えてたあの問題で、しかもそれがあってる。
心がぐんって浮かぶ。
今にも宇宙に飛び出しちゃいそう。
「やった、やったよ、真姫ちゃん……」
また、涙が流れる。
けど、今度は悔し涙じゃないよ。
嬉しく仕方ない涙。
ねぇ真姫ちゃん知ってる?
真姫ちゃんは私のことを太陽みたいって言ってくれてたけど、
私だって真姫ちゃんのこと、太陽みたいだって思ってるんだよ?
多分、意味合いは違うんだろうけど。
真っ赤で、温かくて、優しい。
私だけの、太陽。
sage進行でもいいかなって思ってたけど支援ageされちゃったしsage解除しますね
おやすみ
乙
乙!
いいものだ
乙
いいね
ほのまきは最高だな
やっぱのゴミカプとはちがうわ
やっぱ他のゴミカプとは違うわ(^^
乙でした
紅葉もすっかり木から抜け落ちて、季節はもう冬の玄関口。
私は枯葉で満面の中庭で、μ’sのみんなと一緒にいる。
……ジャージ姿で箒をもって。
「なんで私たちが中庭の掃除をしなきゃいけないの?」
「仕方ないわよ。用務員の先生がいらっしゃらないわけだし」
「このスーパーアイドルに雑用させるなんていい根性してるわよね、ほんと」
「にこっちー、ちゃんとやらんとだめよー?」
「わかってるわよー」
「物事はマイナスに考えるよりもプラスに考えましょう。こういった地道な活動が、私たちを有名にしてくれると考えるのです」
「μ'sがただのスクールアイドルをしているグループじゃなくて、こうやって学校の活動にも積極的だってアピールできるよね」
「その通りです。私たちは廃校阻止から立ち上がったわけですから」
「むむむ、そういわれたらやるしかないわね」
「終わったらみんなでパフェでも食べて帰らない?」
「あ、さんせーい!」
「無駄話してたら終わるものも終わらないわよ?手、動かしてー」
「はーい」
「…ところで、穂乃果ちゃんは?」
「あれ?さっきまで一緒にいたのに……」
「私、探しに行ってくるわ。どうせ道草食ってるんでしょ」
「お願い。早く戻ってきてね」
「ええ」
箒を片手に中庭を後にして、いろいろなところを歩き回っていたら。
「あ、真姫ちゃーん!」
「穂乃果…なに、それ」
「ん?もうすぐハロウィンだし!魔女の恰好!」
「…変なことしてないで。みんな怒ってるわよ?」
「えへへ…ねぇねぇ!見てみて!魔法使い!」
元々持ってた箒にまたがって、空を飛ぶ格好をする。
なんか、その姿が恥ずかしく見えて。
「や、やめなさいよ!みっともない」
「あー、真姫ちゃんこういう事、したことないんだ?」
「関係ないでしょ!」
「ふっふーん、貧しい青春してる真姫ちゃんだもんねー、やったことないよねぇ?」
穂乃果のくせに……!
「で、できるわよっ!貸しなさい!」
「はーい」
半ば強引に帽子とマントをかりて、箒にまたがる……はずが。
やっぱり恥ずかしい……。
「……やらなきゃ、だめ?」
「もちろん!……あ、やっぱりできないんだぁ~?」
頭の中でカチン、って音がした。
「うぅううぅ、や、やればいいんでしょ!……ほらっ!」
箒にまたがる。
次の瞬間、シャッター音が空間を切り取る。
撮ったのは、穂乃果。
撮られたのは、私。
「あ……あ……」
「いいもん撮れました!さっそくみんなにまわそーっと!」
わなわな震える私をよそに穂乃果は中庭への歩を進める
「ちょっ、ま、待ちなさい!穂乃果ぁー!」
「待たないよーっだ!捕まえて御覧なさーい!」
「ま、待てー!」
こうして、中庭までの鬼ごっこが始まった。
穂乃果って案外足、速いのね。
私が箒とか持ってるということを差し引いてもどんどん差が開いていく。
なのに、こっちをちらちら見てはわざと足を遅くして、捕まえられそうになったらまた差が開く。
遊ばれてるのはわかってるけど、なんか、悔しい。
だったら、こっちの土俵に持ち込めばいいのよ。
追いかけるふりをしてなんとかポケットからスマホを取り出す。
かける相手はもちろん。
「もしもし、海未?そっちに穂乃果が行くと思うから捕まえて!」
『捕まえる?えっと…分かりました!』
「まきちゃーん、捕まえるんじゃなかったのー?」
ふふん、余裕でいられるのも今のうちよ。
「ほのかぁ!どこほっつき歩いていたんですか!」
「うわわっ、う、海未ちゃん!」
穂乃果の目の前にいたのは、鬼の形相の海未。
「はぁ、はぁ、ありがと、海未。助かったわ」
「いえ、連れてきてくれて…それはいいとして真姫、なんですか?その恰好」
「え?」
頭には帽子、肩にはマント。
しまった、穂乃果を追いかけるのに夢中で……。
遊んでいたんだな、と思われても仕方ないわ。
言い訳をしようにも目の前には強い怒気の海未。
その隣にはクスクスと私を嘲笑する穂乃果。
「少し、お灸をすえて差し上げましょう。特に穂乃果~?わかっていますよねぇ?」
「ひいぃっ!真姫ちゃんたすけてっ!」
「諦めなさい。逃げても意味ないわよ」
「そんなーっ!」
後でこっぴどく海未とついでにきたエリーに説教をされて、
にこちゃんや凛に大笑いされて、
しまいには掃除を丸投げされるなんとも散々な結果に。
穂乃果に振り回されると、ろくなことがない。
二人での大掃除もなんとか陽が落ちる前に終わって、穂乃果の家で一息ついていた時のこと。
「ねぇねえ真姫ちゃん!もしわたしが動物だったらどうする!?」
「……は?」
また妙なことを考え出すんだから。
「むぅー!だからぁ、私が人じゃなくって、動物だったらどうする!?」
「……ま、飼おうとは思わないわね」
だって、ね?こ、恋人じゃ、なくなるわけだし…。
「えぇー!?どうしてぇ!?」
「そりゃそうよ。普段のあなたって人の話聞かないし、勝手にどこか行くし、頭は悪いうえに、うるさいし」
「うぐぅっ!……ばかぁ」
…少し言い過ぎたかも。穂乃果が泣きそう。
「……う、嘘よ。冗談。そうね、ハムスターとかなら可愛げもあっていいんじゃないかしら」
「穂乃果がハムスター?……じゃあほのハムちゃんだね!」
「……?まぁそんなダサい名前は付けないわ」
「ひどいっ!」
「そうね、付けるとしたらまぁ、ほのかってつけ……ないわね」
「え!?えぇえ~!?どうしてそこでやめるの!?っていうか今日の真姫ちゃんなんかひどくない!?」
「だって、好きな相手の名前をペットにつけるとか、ストーカーっぽくって気持ち悪いし……」
「え……」
「ほ、穂乃果はどうなのよ!?私が動物になったら、とか!」
「……ほぇ~」
「穂乃果、聞いてる?」
「……はっ、あっ、うん!なに!?」
「やっぱり聞いてなかった。私が動物になったらどうするかって聞いてるの」
「うーん、そうだねぇ……とにかくいっぱいいっぱい遊びたい!」
「ふぅん、どうやって?」
「それはねー……えへへ」
穂乃果の目がぎらつく。
しまったと思った時にはもう遅い。
「こうやって!」
「きゃあっ」
猟犬のように素早く獲物を捕らえるように私を押し倒す。
「こうやって、頭撫でたり~」
わしゃわしゃと私の髪を乱暴に撫でまわす。
「ちょ、髪乱れるからあんまり強くしないで!」
「お腹さすったり~」
人の話も聞かないでシャツの下に手を伸ばしておへその辺りをさすって。
「ちょっ、あははっ、くすぐったい!」
「抱きしめたり!やった!どんな真姫ちゃんでも愛せそうだよ!」
「はぁー、はぁー、そ、それは、よかったわね……」
「あり?なんでそんなに疲れてるの?」
もう、もうっ!こんなんじゃ私の体が持たないわよっ!
「はぁ……もうしらないっ」
「もう、ごめんって~……ゴキゲン直して?」
「ふーんっ」
「真姫ちゃん、おねがぁい」
「やっ」
「……むぅ、真姫ちゃんのどけち、いけず!」
かっちーん。
誰のせいだと思ってるのよ。
こうなったら体でわからせてあげるしかないわ。
「……しゃーっ!」
「わっ、わわわっ!?」
「こうやって頭を撫でてぇ!」
「痛っ、痛いよっ!真姫ちゃん!」
「こうやってお腹をさすって!」
「わっ、あははっ、おへその周りばっかりくすぐらないでっ、あははは!」
「こうやって抱きしめて!」
「ふへぇ~……」
「どう?あなたがさっきやったことよ?」
「へぇ、へぁ、すぅ、すみませんでしたぁ~……」
「はぁ、……疲れた。余計な体力使ったわよ」
「あはは、すみません……えっと、その、お詫びとして……」
「なに?」
「最近我が家に導入したこのソファを、どうぞ……」
穂乃果の部屋の片隅に置かれたソファというには……小さい。
クッションというには大きすぎるし。
「ソファっていうには、少し変な形をしているけれど。でも、商品名はソファだから」
こういう事をする穂乃果って大抵私に何かしようとするのよね。
「変なこと考えてない?」
「もちろん!」
「…じゃあお言葉に甘えて。うわぁ、なにこれ、体が沈み込む……」
「すごいでしょ?人をだめにするソファって呼ばれてるんだって」
「へえぇ、……ふぁ~……」
何も頭に入ってこない。
ふわふわした感じ。
「すごいわねぇ、これ……なんか、体に優しいものがまとわりついてるみたい……」
けど、何か足りない。
「ね、ねぇ真姫ちゃん?」
「ん~?」
「さっきのこと、まだ怒ってる?」
「ん~……ん~ん」
なんか、どうでもよくなるっていうか……
「じゃ、じゃあさ、今から抱き付いても……いい?」
「……ん」
ほわほわした頭のまま、両手をぱっと開いて、穂乃果を招く。
今の私、どんな顔してるのかしら。
どうでもいっか。
「っ……んっ」
なにか物憂げに、遠慮がちに私に抱き付く。
私は両腕でぎゅーって抱きしめる。
「つかまえた。……うふふ」
わかった、温もりだ。
穂乃果の体温。
これが足りないんだ。
「わっ、ちょっ、え?」
「あなた、私の抱き枕ね。ちょっと重いけど」
「う、うん……」
「あのね、ほのか。私ね、ほのかが私と一緒にいてくれて、私のこと、大事にしてくれて、嬉しいの」
「ふぇ?」
「だから、ずっと一緒にいてね」
「……うん」
ただ、それだけ言って穂乃果は私の服をきゅって掴む。
私は、大好きな体温に包まれながらゆっくりと時間が過ぎていくこのひと時をただ噛みしめていた。
「……なんだか眠くなってきちゃったね」
「……寝ましょうか」
「……掛布団……よい、しょっと。おやすみぃ……」
「ええ、おやすみ……」
あったかい……ずっとこの時間が続いてくれたら、いいのにな……。
穂乃果と一緒にいると、心が落ち着く。
ネタが枯渇しつつある
あと考えてるのは3つくらい
おやすみ
おやすみ
まあ結構長くなったからネタ尽きてもしゃーない
乙
乙です
いつも楽しみにしております
保守
きたろうのきたないモノ
【SS】真姫「友達じゃ、物足りない」 [転載禁止]©2ch.net・
個人的なワガママでこっちでちょっとやってます
掛け持ちしてたもう一個のスレが落ちてしまったので保守ついでに
あとあれは復活させたいけどどうしよう……
落ちたらならもっかい建てなおしてもええんやで
一段落してからでもみたいね
同じひとやったんか
両方楽しみにしてます
穂乃果「ねぇ、真姫ちゃん」
真姫「……んー……どうしたの?」
穂乃果「あの、一緒に寝てるところ悪いんだけどさ」
真姫「うん」
穂乃果「お腹……さすってくれない?」
真姫「はぁ!?」
穂乃果「あの、あのね、なんかね、お腹がすごく熱くって……」
真姫「……はぁ、わかった、こっちいらっしゃい」
穂乃果「うん……」モゾモゾ
真姫「じゃあ、お腹出して」
穂乃果「……はい///」
真姫「えっと……」ゴソゴソ
穂乃果「ひゃっ!」
真姫「え!?な、なに!?」
穂乃果「ぁ……うん、真姫ちゃんの指が冷たくって……ごめん///」
真姫「はぁもう……ごめん」
穂乃果「ううん、こっちこそ……」
ほのまき(……気まずい)
真姫「あ……続きやったほうがいい?」
穂乃果「……真姫ちゃんが、いいなら……」
真姫「……我慢、してね」
穂乃果「……ん」コク
真姫「じゃあ、行くわよ」スル
穂乃果「……あん///」ピク
真姫「変な声出さない」
穂乃果「ん、で、でもくすぐったくって……///」プルプル
真姫「我慢なさい。……この辺り?」
真姫(お腹の辺りがトクトク脈打ってるわね)
穂乃果「んあ……///そう、そこ、ふぁ……」ピクンピクン
真姫「……どれくらいやればいい?」ソロリソロリ
穂乃果「も、もっとぉ……///」ピクピク
真姫「……だから、変な声出さないの」
穂乃果「だってぇ、なんか、気持ちよくってぇ……」ハァハァ
真姫「もうやめよ、やめ。変なことに付き合わせないで」
穂乃果「まきちゃぁん……もっとぉ……」トロン
真姫(……やれやれ)サスサス
穂乃果「ふゃぁ……///」ゴロゴロ
真姫(……退屈ね。……そうだ)スッ
穂乃果「ぅぁ……あれ?何でぇ……?」プルプル
真姫「……犬みたいなことするからね。ちょっとお預けよ」ニヤニヤ
真姫「……どうしましょうかね」ツツー
穂乃果「やだぁ、手でさすってよぉ……」ピクピク
真姫「……ふふっ」ナデナデ
穂乃果「はぁ、ん……///」
真姫(……そう言えば、おへそとかいじったらどうなるかしら)ゴクリ
穂乃果「ぁ……そこ、おへそだよぉ」
真姫「わかってるわよ」クリクリ
穂乃果「ぁ……んっ、ダメっ……そこっ……///」
穂乃果(気持ちよくって……変になっちゃいそう///)
真姫「穂乃果、どう?気持ちいいの?」サスサスクリクリ
穂乃果「うんっ///すごく、きもちいいよ///」
真姫「そう……じゃあ、フィニッシュよ」チュッ
穂乃果「んんっ!?ふぁっ、あふぁあっ///」ビクッ
真姫「ほら、もっと激しくするわよ」
穂乃果「んっ!?んん~~~~!?」ビクビクッビクン
真姫(あら、なんか大きく跳ねちゃって。……そんなに気持ち良かったのかしら)
穂乃果(はぁ、はぁ、気持ち、いい……)クタァ
真姫「……はい、もうおわり」パッ
穂乃果「えっ///もうちょっとだけぇ……」
真姫「今度は、私もしてよ。キスもしながら……」
穂乃果「……」ゴクリ
真姫「だめ?」
穂乃果「ううん、もっとお互い、気持ちいいことしようね」ギュッ
真姫「ん……///」ドキドキ
穂乃果「……ん」チュッ
真姫「ん……ふ……///」チュル
穂乃果「ん……はぁ……あん」チュ
真姫「ん……んっ……///」サスサス
穂乃果「ふはぁ……あんっ///」ソロリソロリ
真姫「ほのかっ、ほのかぁ……///」ピクピク
穂乃果「んっ、ぁぁ……///」
真姫「……きもち、いい……///」トロン
穂乃果「うん……///」ギュッ
真姫「……もっとぉ……///」
穂乃果「ほのかも、ほしい……///」
真姫「……ということが昨晩あったのよ」ゲッソリ
花陽「oh...」
凛「すごいにゃ……」
すばらしい
もっとだ、もっとください
友人にどんなこと話してるんだ……
保守
あ、ごめん…
保守
【悲報】ほのまき豚、pixivの作品をほぼ丸パクリ
親愛なる者へ【ほのまきSS】
【悲報】ほのまき豚、pixivの作品をほぼ丸パクリ
親愛なる者へ【ほのまきSS】
【悲報】ほのまき豚、pixivの作品をほぼ丸パクリ
親愛なる者へ【ほのまきSS】
【悲報】ほのまき豚、pixivの作品をほぼ丸パクリ
親愛なる者へ【ほのまきSS】
消えないでくれ
ほ
音楽室で二人でお昼ご飯をしていた時のこと。おもむろに、穂乃果がかじりついたパンの中身を見て、思い出したかのように穂乃果がパンの残る口を開いた。
「へぇへぇまひひゃん!んぐっ!」
「もう、食べてる物のみ込んでから話しなさいよ、なに?」
「……ごっくん。ねねね、もうすぐ、バレンタインデーだよね!」
そんなこと、知ってるわよ。でも、そういうの、したことないし。
好きな人にチョコレートをあげる、ただそれだけのイベントじゃない。
けれど、それだけじゃない。行為自体は知ってる。日ごろの気持ちをチョコレートにして渡す、ということ。
その見返りは朽ちぬ自分への慕情と、昨日までと変わらぬ関係の構築。
でも、私はそんなものが無くても気持ちはかわらないし。
けれどもらえたらもらえたで嬉しくて爆発してしまうかもしれない。
そんな気持ちを塗り隠すように私は短く「そうね」と返した。
「そうねって、反応薄くない?」
そうさせているのは、あなたの言葉と飾り気のないまっすぐな気持ち。私はあなたのその気持ちにちゃんと向き合う術を、まだ持ってない。
「だって、別にそんな、いいじゃない、ほしくない」
彼女のむくれる顔も見れず、声も上ずる。
なんで私は、ちゃんと用意した言葉もちゃんと言えないで、こんな私はどうして彼女を突き放してしまうんだろう。
……わかっているくせに。そうすれば、彼女は―――。
私に縋りつくように抱きついて、私の心を全て溶かすように体を抱きしめて、甘えるような可愛らしい声で「教えて?」と耳元で囁いてくる。
温かい吐息が耳をふわふわくすぐって、その奥、脳髄にパチパチと刺激を与えながら、私は快楽なのか、または悪寒なのかで体を震わせる。
こういう事はいつまで経っても慣れない。いいえ、永遠になれることはないかもしれない。あるいは、こうなることを愉しんでいるのかもしれない。
でも、嫌いじゃない。むしろ大好き。こうしていれば、あなたの暖かさを噛みしめていられる。
「……私の気持ちは、ずっと変わらない。だから、チョコレートなんてもので誤魔化したくないの」
とはいうけれど、これも嘘。心の奥底で、チョコレートを上げたいって、気持ちが沸々と湧き上がっている。
「誤魔化しているわけじゃないけどな……。けど、うん、真姫ちゃんがしたくないなら、いいや」
穂乃果が離れて、にこりと笑うけれど、私にはその笑顔が寂しく見えた。
そんな顔、しないでよ。やりたいやりたいってわがまま通してくるのがあなたでしょ?
「……別に、そういうわけじゃ、ない」
「いいんだよ?無理しないで」
心配げに私の顔を覗く。けど、バレンタインデーだって焚き付けたのはあなたじゃない。
何をそんな不安がることがあるのよ。
「無理なんてしてない!いいわよ!やりましょう!」
あなたがどう思っているかは知らないけど、煽られたらそのままってわけにはいかないのよ、私。
だから、私が満足するまでとことん付き合ってもらうわよ。NOとは言わせない。
「で、でも、真姫ちゃん」
「いいの!決まりよ!もう!そんな辛気臭い顔しないで!これ以上そんな顔してたら怒るわよ!」
意地を無理やり通して、穂乃果を納得させる。穂乃果もびっくりした顔で、コクコクと頭をたてに振って、
「は、はいっ!え、えっと、じゃあ14日にね!」と答えた。
とはいったものの。私は、本当は穂乃果のことを独占したい。
なにより、学校でやるのは見られたときに私が恥ずかしい、……ので。
「ええ、……私の部屋、でね」
「うん。……うん?何で、真姫ちゃんの部屋?別に、学校でもいいよね?」
あ。
……あ。
「……だ、だって、それは、その、見られたら、恥ずかしいし……」
慌てて目を逸らしてつい癖で髪をいじる。
「……えへへ、真姫ちゃん、そんなこと考えてるってかわいい♪」
思わず顔が、耳まで赤くなって、まともに受け答えもできない。呼吸、出来ているかしら。
「いいよ。他でもない真姫ちゃんの頼みだもん。じゃあ、14日ね!ごちそうさま!先に教室に戻るね!」
おつ
あー甘過ぎるわ
今年はバレンタインなくていいわ
バレンタインネタは散々だったからな
乙
地の文すごいわ
私の家のインターホンが鳴る。時間は午後2時を過ぎたあたり。
間違いない、彼女だ。私の勘というか、言葉にするにはあまりに難しい私の中のアンテナともいうべきものがピン、と立っている。
リビングでそわそわしながら今か今かと待っていた私は座っていたソファからぴょん、と飛び立ち、急ぎ足で玄関までかけて、ドアを開ける。
我が家の勝手を知っている彼女はもう扉の前には立っていて。
「いらっしゃい、穂乃果」
「うん!おっじゃましまーすっ」
ニコニコ明るい笑顔で招き入れた穂乃果は、彼女らしい暖色のコートに、珍しいスカート姿で、小さめのハンドバッグを持っていた。
というのも、普段着や練習着はパンツルックだし、制服姿やライブでの衣装自体のスカートはよく見ていたけれど。
こうしてみると、なんだか少し新鮮。ばっちり決めてきましたっていう、穂乃果の気持ちがこもってるのかもしれない。
そんなことを考えていたとき、「どーしたの?」と言う言葉とともに見惚れていた私の顔を覗き込んでくる穂乃果に、私は思わず後ずさった。
「ひゃっ!い、いきなり入ってこないで!びっくりするじゃない!」
「あはは、ごめんね」
謝るのは私の方なのに、彼女はそういうところはすぐに下がる。引き際を心得ているというか、なんというか。
「……それは?」
綺麗めのバッグから覗く、ラッピングされた箱状の物。それが目に入るたびに気になっていて、つい問いかける。
「あぁ、これ?バレンタインデーだからだけど……えへへ、中はヒミツ!」
和菓子が入りそうな長方形の箱に入っている、おそらく中身はチョコレート。
彼女の言葉が気にはなる。なるけれど、秘密と言われてしまっては私は深入りすることはできない。というかしてはいけない気がしたから、しない。
だから、あえて秘密は秘密のまま彼女が開けるまで、その仕掛けに乗ってみることにした。
「わかったわ。楽しみにしてる。じゃあ行きましょう」
「うん!今日は何してくれるの?」
穂乃果の頭の犬耳がぴこぴこ動いて、というかサイドポニーが楽しそうに揺れて、見えない尻尾が興味深そうにぶんぶん振れているように見える。
けれど私はウィンクしながら「ヒミツよ」とさっくり返した。意地を\の悪いお返しに見えてしまったかもしれないが、あえて気にはしない。
けれども穂乃果はそんなこと意にも介さないで「楽しみだなぁ!早く行こうよ!」と私の腕を抱いて急かしてくる。
「はいはい、急かさないの。私の部屋は逃げないから」
と、私はリードをつけた飼い犬のようにはしゃぎまわる穂乃果を制しながら、今日の一大イベントの会場へと足を進めた。
「おぉー!なに?これ!お鍋にチョコレートいっぱい!それにイチゴとかマシュマロとか、パンもあるよ!」
私が用意したのはチョコレートフォンデュ。これなら二人で楽しめるし、固める手間もいらないし。
……バレンタインデーっぽくないかも、しれないけれど。
「フォンデュよ。チョコレートフォンデュ。ここにあるイチゴやパンをチョコレートにかけて、それを食べるの。簡単でしょ?」
「うんうんうん!ねぇ真姫ちゃん、食べていい?もう食べてもいい!?」
目をキラキラ輝かせて、殺気よりもいっそう見えない尻尾をブンブン振っているように見えて、なんだか可愛らしい。つい、頬が綻んでしまう。
「ふふ、もちろんよ。あまりがっつかないでね?チョコレートが飛んだりしたらお部屋が汚くなっちゃうし」
「はーい!どれにしようかな~、やっぱりイチゴ!……いや、パンも捨てがたい……。それにビスケット……。うぅぅ、悩んで決められないよー」
「じゃあ私はカステラにしようかしら」
「えぇ!真姫ちゃん決めるの早いよぉ!……じゃあ穂乃果はこのパン!」
と言って慌ててフォークでバゲットを刺して、お鍋の中のチョコの海にねっとりと、じっくり浸していった。
その時の顔が眉間にしわを寄せて、なんだか変で、おかしくって。
「穂乃果、ふふふ、変な顔しないでも、チョコはなくならないわよ」
「だって、いっぱいつけたいんだもん……よしっ、いただきまーす」
チョコをつけるのに満足したらしい穂乃果はその一口サイズのチョコがべったりついたバゲットを口に頬張る。
すると彼女はとても幸せそうな顔でうっとりしながら鼻を鳴らした。
「んふふ~、おいひ~」
私も続いて小さくカットしたカステラにチョコをつけて一口。ふふ、悪くないわね。
「ほら、具材もまだいっぱいあるし、いっぱい食べましょう?」
「うん!じゃあ次イチゴ!」
嬉々として具にチョコを具に付けては口に入れ、幸福感満点のスマイルを見せては、また具を選んでを繰り返している穂乃果を見ると、私まで幸せな気持ちになってくる。
こんなことであなたの幸せをもらえるのなら、これ以上に欲しいものはないわ。小さなことでも人一倍の元気で明るく祝福してくれる。
「喜んでもらえてよかった……」と、つい口にしてつぶやいてしまった。穂乃果は聞いていないようだったから、ある意味助かった……のかも。
そんな穂乃果は穂乃果でまたみょうちきりんなことを考えていた。
「ねえ真姫ちゃん!」
「なぁに?」
「ほら、口あけて!あーん」
フォークで刺されたマシュマロを差し出される。私に食べてほしいんだろう。私一人でも食べられるのに。
「えぇ?べ、別に……」
「あーん♪」
拒否の姿勢をそれとなく見せるけれども暴走特急穂乃果は止まることを知らない。ここで私が折れないと、せっかくのご機嫌を損ねてしまうかもしれない。
「……あー……ん」
あ……なんだか、不思議な気分。自分で取って食べるよりも、ずっと美味しく感じる……。
「……ん、わるくないわね」
「ふふ、よかったー♪じゃあ次、穂乃果にやってー」
はいはい、と少し呆れ調子で返しながら、本当はその気になってビスケットにチョコをつけている。なんだかんだ、こうするのも面白い。
「はい、あーん」
ビスケットの三分の一くらいにチョコを塗って、穂乃果の口に差し出す。
「あー…ん♪」
穂乃果はさぞ楽しそうに、ビスケットを口につまんだ。もぐもぐと咀嚼しながらほっぺに両手をあてて、楽しそうに食べている。
そんな彼女を見ていると、口元にチョコレートがついているのが見えた。
普通の一歩引いた私だったらテーブルナプキンでそれを拭き取るだろう。
けれど、ワクワクした私の気持ちはそんなことをすることはなく。
その隙に私は、指で取るよりも、もっとドキドキを感じたくて、私は。
「穂乃果、ちょっとごめん」と、一言断って穂乃果に近づく。
チョコレートを舐めとるついでに、穂乃果の唇を奪った。
「ん……」
我ながらなんてことをしているんだろうとは思った。けれどもう私の中の理性の糸はとうに千切れていた。
「んんっ!?んぐっ、んぅ……」
ごめんなさい穂乃果。ビスケットを美味しくいただいているところだったわね。
だってしょうがないじゃない。ここに用意してある素材のどれよりもおいしそうなものが、チョコレートをつけているんですもの。
美味しいものに目がないのは私も同じなの。
穂乃果の艶やかなリップからチョコレートの苦みと甘さ、その奥にある酸っぱさが伝わってくる。
その味がもっと欲しくなる。私は穂乃果の中を味わいたくて、舌を差し込む。
「ふぅ、ん…?!ちゅ、はぁ、ぁ……」
案の定、穂乃果はさらに困惑した様子を声に出すけど、でも抵抗も何もしない。ただ私の袖をつかむだけ。
私の舌が穂乃果の舌先につん、と触れ合う。やっぱりまだチョコレートの味。チョコレートは甘くておいしいけれど、私は穂乃果の味が欲しかった。
だから、舌をつりつり這い回らせて、彼女の中のチョコレートを根こそぎ奪ってやることにした。
私の中の嗜虐心は徐々に私を化け物にしていくのがわかる。もっと味わいたい、もっとかき乱したいと私の中の本能がそう私に迫ってきて、私はただそれに従っていた。
穂乃果をとらえる手は彼女を抱きしめ戒める鎖になり、逃がすまいと私は彼女を押し倒した。
「きゅっ!?」
動転した彼女はあまりに奇妙な、可愛らしい声を出すけど、だからと言って私は力を緩めることはない。
「れろ、はぁ、あん、ん……」
「んぁ、やぁあ、くひゅぐっひゃ……」
舌で上あごをつつ、となぞると、ぴくんと体を大きく一跳ねさせて、くすぐったいと私に言った。
「んふ、はっ、ぁっ……ちゅううう」
歯と歯の間をマッサージするように念入りに舐めとった後、唇を大きく吸い尽くすように吸う。
「んんん、んぅぅ……」
「ちゅっ、はぁ、はー、はー……」
吸い切った後、私は息を切らしながら、上気する顔を観た。
「……はぁ、あう……もう、びっくりしたよ?」
「ふふっ……穂乃果が可愛いのがいけないのよ」
「もう…ばか」
バカと口では言うけれど、私を掴む腕はぎゅっと私を離すことはなかった。
ヴェェェ糖分キツイ
「もう、いじわるな真姫ちゃんにこれはあげません」
私が理性を取り戻したころには、すっかりご機嫌ななめなむくれ穂乃果になってしまった。雰囲気はすっかりお通夜状態。
「ごめんってば。機嫌直してよ」
「別に機嫌が悪いわけじゃないもん。ふんだ」
それ、絶対機嫌悪いわよね。……穂乃果には悪いことをしてしまったかもしれない。
穂乃果の考えていることはわからないけれど、おそらく、もっとあとに、少なくとも穂乃果のバレンタインチョコを消化してからやりたかったのかも知れない。
「……ほんとは、これを渡してからキス、したかったんだ」
穂乃果は私に鞄から取り出した箱を私に差し向けた。
「……開けてもいい?」
その問いかけに、穂乃果は小さく「うん」と頷いた。
リボンを丁寧に解いて、ラッピングをはがすと、そこにはおよそチョコレートには見えない黒い箱が顔を出した。
穂乃果の顔をちら、と覗くと、また穂乃果は黙ってただ開けろ、というようにうなずく。あけてみると、そこには。
「……え、これって……ネック……レス……?」
中から顔を出したのは、赤いペンダントネックレスとオレンジ色のネックレスのペア。
どちらも音符をあしらったデザインをした可愛らしいもの。カラーからして、穂乃果と、私なのだろう。
「……バレンタインだから。チョコレートよりももっと、形になるようなものがいいなって思ったんだ」
……なんてことをしてしまったんだろう。
少し前の時間に戻って今すぐにでも浅はかだった自分を殴り飛ばしたい。
オシャレにも気合入れて、こんなプレゼントを用意してくれていて。私は自分がとても嫌になった。
陰鬱な雰囲気がもっと濃くなった。私は何を言えばいいのかわからなくなってしまった。
「……ねぇ、受け取って、くれる?」
その暗いムードに光明をもたらしてくれたのは、穂乃果だった。
「もしも真姫ちゃんが気に入ってくれたら、とっても嬉しいな」
そんなの聞くまでもないでしょう?私のいう事なんて決まってるじゃない。
「……あたりまえでしょ!穂乃果が私のために用意してくれたものなのよ!?受け取らないわけないじゃない!」
逆切れみたいな形になっている。どうして私が怒っているんだろう。
「……よかったぁ、いらないって言われたらどうしようかなって思ってたんだ」
「……大事にするわね。私、オレンジのネックレスでいい?」
「え?うん。いいよ。じゃあ私が赤のペンダントだね」
早速首にペンダントチェーンをかけてみる。うん、いい感じ。
「似合ってるよ。真姫ちゃん」
「穂乃果こそ、とてもよく似合ってるわ」
自然とお互いの距離が少しずつ近くなる。今度は間違えたりしない。
「穂乃果、やり直しはきかないかもしれないけど、それでも、もう一度あなたとちゃんとキスしたい……」
「真姫ちゃんがいいなら、私は……」
肩に触れそうな手を掴んで、掌の温度を余すことなく得られるようにって、恋人つなぎして。
「穂乃果……」
「真姫ちゃん……ん……」
私たちは唇を、触れ合わせた。
おやす
早く起きないとバレンタイン終わっちゃうぞ
最高や…
ハヤクシナサイヨ
すごく楽しみしてるお(^ω^)
3月に入って、そろそろ上級生の3年生が卒業をする。
いつだって出会いがあれば別れはある。それはわかりきったことだけど、けれども、この1年を思うと、それはやっぱり寂しくって。
そんな思いを引きずり音楽室でピアノも弾かず物思いに耽っていたところにそんなこととはとうに別れを告げたらしい彼女はやってくる。
「真姫ちゃん真姫ちゃん!」
サイドポニーを犬の尻尾のようにぶんぶん振りながら、大好きなあの人が私の名前を呼びながら駆けてくる。
どうやらまた彼女は楽しいことを見つけたのだろう。
「大声出さなくても聞こえてるわよ。で、どうしたの?」
「えへへへ。あのねあのね!」
ふと、穂乃果の視線が私から天井へと逃げる。
「分かったから……どうしたの?」
再び私は聞き返す。すると、指を頭に当てて、眉間にしわを寄せる。
「えっと、えーっと…………忘れちゃった……」
始まった、穂乃果のおっちょこちょい。いつものこととはいえ、思わず頬がほころんで、失笑してしまう。
しばらく前の私なら穂乃果と同じく眉間にしわを寄せて、はぁ?と返して空気を悪くしていたかもしれない。
この環境になってもうそれなりに時間はたったけれど、これが私の中で一番の変化だと思う。
「ふふふ、何よそれ。私に会いに来たことだけが用事ってわけでもないでしょ?」
「そんなことないよ!真姫ちゃんに会うことだって私の中の用事に入ってるんだから!」
「それは嬉しいんだけど、けど何か伝えたいことがあって私に会いに来たんでしょ?しっかりしなさい」
そういいながらそのふわふわな頭に手刀を用意すると。
「ひっ!真姫ちゃんチョップ!それだけはご勘弁を!」
と頭を守ろうと両手を頭に当ててガードの構えをとる。そんなに怖いのか、ぷるぷる震えて、目もぐっと閉じていて。
まるで小動物にしつけをしているみたい。できれば甘やかしてやりたいんだけど、非情な私はその手の親指と人差し指を組んで、穂乃果のおでこに触れるか触れないか辺りに待たせる。
そのまま少しだけ待っていると、穂乃果はなにも来ないことを不審に思って片目を薄く開き、こちらの様子をうかがおうとして。
「うぅぅぅぅ~……う?」
その瞬間、私のデコピンが火を噴き、ものの見事に穂乃果のおでこにぺちん、と乾いた音をたてながらクリーンヒットした。
「あたー!真姫ちゃんそういうのずるーい!」
「ふふ、だったら思い出せばいいじゃない。で、思い出せた?」
「……えっと、あの……そうだ!あのね!真姫ちゃんにお願いがあるの!というか、真姫ちゃんにしかできないお願いなの!」
「私にしかできないこと?」
「うん!あのね……、卒業式の送辞で、歌を贈りたいの!だめかな!?」
だめって言ってもどうせ聞かないくせに。穂乃果はそういうところを無意識でやってくるんだから、ずるいと思う。
それに、私はいいと思う。歌とダンスで廃校を救おうって考えてここまで来れた私たちだからできる事だと思うし。
「ふぅん、……生徒会長らしい提案ね。それで、使う曲は決まってるの?」
「もっちろん!それで、それでね!真姫ちゃんが歌っていた曲を使いたいんだ。真姫ちゃんと出会った時に歌っていた、あの曲!」
何故だか、その時私は少しだけ、少しだけ心に隙間風が吹いた気がした。どうしてかしら。
……考えなくてもわかる。私と穂乃果の初めての繋がり、なんてことはないただの曲だけど、私たちをこうして結んでくれて、初めてできた宝物だから。
何となく、それを他人に見せびらかされたり、使われるのが嫌なだけだった。要するにただの嫉妬で、つまらない意地。
けれど、穂乃果のとても温かい笑顔を見るとそれにこだわっていても無駄だって、すぐにわかった。
穂乃果は自分のこともそうだけど、他人の幸せを強く願う人。その中に勿論私もいて、けれどそれは私だけじゃなくて、μ'sのみんな、それにいろいろな人たちがいて。
だから、私は彼女と一緒にいるうえで、彼女と同じものを見なければならない。ううん、見たい。
私たちの行動で、どれだけの人が幸せになるのかはわからないし、もしかしたら不幸になる人たちが出てくるかもしれない。
けれど、それでも、何かしていないと気が済まないのが私たちだから。
だから、私たちの幸せを、誰かにも感じてほしい。私たち、幸せなんだって気持ちを込めて。
「……わかった。いいわ。じゃあμ’sのみんなを呼びましょう。花陽、凛、海未もことりも。送り出す側として」
「……うん!みんなでやろう!真姫ちゃんありがとう!」
「礼なら、別にいいわよ」
「真姫ちゃん、だーい好きっ♪」
照れ隠しで髪をいじる私に穂乃果はきゅっと抱きしめて私にすり寄る。
またいつもの穂乃果のくせ。もう何度されているかわからないけれど、やっぱり、これだけは。
「も、もう、やめてよ……」と、うろたえながら、抱きしめ返すぐらいしかできなかった。
すまん、短いけどこれだけなんや……
まだ続けやれるはずや
(U^ω^)<マキチャンマキチャン
おつ
短くても問題ないけどここ落ちたら悲しいからたまーにお願いします
ネタを考えたら、書いてくださるのでしょうか?
自分が時間に依ります、とだけ。
更新するまで主の過去作読み漁るよ
ー
保守
「だから、新入生歓迎ソングを作りたいんですっ!」
にこちゃんの跡を継いでアイドル部部長になった花陽が発した言葉は、人が減って少し広く感じたような部室に響いた。
周りを見るとみんな少し驚いたみたいな顔をしている。あの凛でさえそんな顔をしていた。
確かに、ラブライブを優勝した私たちだし、それを目当てに入学してきた子たちだっているかも知れない。
それにしても、内気で引っ込み思案な花陽がこんなことを言うなんて、ずいぶん変わったわね。
ううん、本当はすごく勇気を出して私たちに言ったのかもしれない。一人で考えていたんだろうことも、凛を見ればわかる。
「……ダメ……かな?」
みんな黙ってしまって、もしかしたら駄目なんじゃないかって、ピンと伸ばした背筋がどんどん丸くなってる。
けど違うわ。みんながみんな花陽がそんなことを言うはずないってどこかで思ってたんだと思う。私もそう。
でも、アイドルのことになると一途に追いかける花陽だもの。そういう事を言い出しても不思議じゃない。
だったら、私も乗ってあげなくちゃね。せっかくの部長の提案だもの。こういう事にも挑戦しないと。
「……そんなことないにゃー!凛もオッケーだよ!」
一歩速かったのは凛の方だった。
「新部長の初提案、何事も挑戦してみるのはいい事でしょ?」
「凛ちゃん、真姫ちゃん……!」
花陽のくもりそうだった目がまた光を取り戻し始めた。けど、私だけが同意しても何かができるわけではないし、協力者は募らないとね。
「さてと、私はいいって言っちゃったけど、2年生は反対かしら?」
「そんなことないよ!うん!やろう!新入生歓迎ソング!」
「ええ、μ'sが解散しても私たちがすることが変わるわけではないですし、やりましょう!」
海未もことりもやる気は十分。あとは……。
「で、どうなの穂乃果。あなたはやりたくない?」
皆の期待が視線になって穂乃果の一身に集まる。花陽は不安げに、でもみんな答えを期待して待ってる。
「……すっごいいいよ!さっすが花陽ちゃん!じゃあ早速どうするかって決めないとね!」
そう穂乃果が言った瞬間、みんなの歓声が部室中に響いた。
花陽はなぜか泣いてるし、凛はそんな花陽に飛びついているし。
ことりはノートを取り出して早速衣装のテーマを書き出して、海未も歌詞を考え始めてる。
みんな、何かをしたくてうずうずしていたみたい。私も、違うってわけじゃないけど……。
「さてと、ここで一つ副部長から提案があるわ」
「ん?」
今度はみんな私の方に視線を集める。
「部長が提案したことだから、大まかなアウトラインは部長に作ってもらいたいわ。最終的に作るのは担当がすることだけど。いいわよね?」
「え?え?」
「いいと思います。花陽の優しいイメージが表れてくれるといいです」
「え、え……えっと……、む、むりだよぉ。もし、もし変なことになっちゃったら」
うん、また悪い方向へと考えようとしてる。ちゃんと修正してあげないと、ね。そう思って視線を凛へ向けて、花陽へけしかける。
すると凛はピン、と思い当ったような顔ですぐにまた花陽にかぶさった。
「だいじょーぶにゃっ!苦しくなったら凛がそばにいるよっ!だからそんな顔しないでかよちん!」
「凛ちゃん……」
うん、この二人ならうまくやっていけそうな気がする。
「大丈夫よ。失敗するようなことがあっても私たちはあなたのことを責めたりしないし、どうしたいかを決めるだけだもの。ね?そこまで気を張らなくていいから」
「そうだよ花陽ちゃん。部長さんらしくやること決めたらことりたちに任せてどーんと待ってて」
「真姫ちゃん、ことりちゃん……」
「うん、じゃあ新曲は、花陽ちゃんセンターで、花陽ちゃんが目立つような曲にしよーっ!」
「えぇぇっ!?それはちょっとぉ……!」
花陽の顔がみるみる赤くなっていく。そんな彼女にみんな笑っていた。
部の打ち合わせが終わった後、2人一組でわたしたちは学校を離れた。
私はいつも通り穂乃果の家にいて、五線譜に記譜をしていく。その横で頬杖をつきながら朗らかな顔で私を見つめている。
次の段に行くたびにその優しい笑顔がちらちら視界に入ってきて、何だかこそばゆくて。
「ねぇ、あんまりじろじろ見ないでよ。集中できないじゃない」
「えへへ、こうしてみてたら真姫ちゃんがあったかい気持ちになれるかなって思って」
「……ま、いいけど」
春のイメージをって言われたから、最初は寂しく、けど暖かい気持ちになれるような曲をって頼まれて。となりにいるだけで胸の温かさを、生きてることを感じさせてくれる彼女には感謝している。
「ねぇ、真姫ちゃんってさ、よく周りのこと、見てくれてるよね」
おもむろに、穂乃果が私の事を褒めだす。私はそんなつもりじゃないんだけど、でもなんだかその言葉に引っかかってしまって、手が止まった。
「別に、見てるわけじゃないわ。ただ、目につくっていうか」
「それを見てるっていうんだよ。そうじゃないとフォローなんてできないでしょ?」
認識の違いなんだろうけど、でも穂乃果のいう事は正しい。けど、穂乃果が真剣なことを言うと、なんだか変な感じがする。
だから、私はそこに引っ掛かりを感じて、その先に何かがあるんだろうって思った。
「……そうね、それで?それが言いたいわけじゃないんでしょ?」
胸のつっかえの正体が何となく分かった気がしたから、あえて挑発してみる。
刹那、私の目の前が大きく動いて、視界は穂乃果の顔だけで埋め尽くされた。
背中は鈍痛と、肩には体温を感じる。
あまりに一瞬のうちに私は穂乃果に押し倒された。
私に乗っかる穂乃果の顔が寂しげに目を細めて、眉間を狭める。まるで誰かを憐れんでいるかのよう。
「ねぇ、どうして花陽ちゃんの提案に乗ったの?」
……なるほど、穂乃果はやきもちをやいているのね。私があまりに花陽たちに構っているのだから、それで寂しくて仕方ないのね。
「……一応言っておくけど、穂乃果のことは大事よ。けど、花陽や凛を無視できるわけじゃないの。……特に花陽は今、自分からなにかを切り開こうとしている。私はね、花陽の勇気に、自信を持ってほしいの」
だって、私に勇気を分けてくれた花陽だもの。一歩踏み出してほしかったんだから。
「そんなことはいいよ、でも、穂乃果、寂しかったんだよ」
花陽の応援をそんなこと、であっさり切り捨てられてしまって、少しいらだつ。でも、置いていかれてしまう気持ちがわからないわけじゃないから、ただ私は穂乃果の目をじっと見る。
「もう、子供ね。今こうしているのも寂しいからしてるんでしょ?大丈夫よ。私はどこにも行ったりしない。だからそんな泣きそうな顔しないで」
「泣きそうなんかじゃないもん、怒ってるんだもん」
頬をぷくーっておもちみたいに膨らませて、ふふ、本当におもちができてしまいそう。
「ごめんって、次からはちゃんと気を付けるから。それより作曲の続きさせてよ」
「やだ」
「やだって、……もうわがまま」
「穂乃果の気持ちが済むまで、絶対離れないもん」
穂乃果がこうなったら梃子でも動かないから困ったものね……。こうなると、慰めてあげることの方が先かしら。
「……はいはい、いい子にしててね」
私の胸に落ちる大好きな人は、じっとそのまま動かないで、私に頭を撫でられる。
「むふぅ……」
不満げな、でも安らいだ感じの声が下から昇ってくる。
そんな折、部屋のふすまが開いた。
「お姉ちゃーん、ちょっと……って何してるの?」
上から見下ろすように私たちの方を見る雪穂ちゃん。私たちの関係のこともうすうす察してはいるようで、何も言ってはこない。
穂乃果よりできた妹よね、ほんと。
「ああ、これ?真姫ちゃんがいじわるするからこうしてお仕置きしてるの」
「無視していいわよ」
「ひどいっ!」
「あははは、お邪魔だったみたいだね。じゃあ出直して……ってこともできないかな」
頬をポリポリと掻いて申し訳なさそうな顔で視線をずらす雪穂ちゃん。
「い、いいよもう!ふんだっ。真姫ちゃんなんてきらいっ。それで、雪穂。穂乃果に何か用事?」
「あー、あのさ、なんかお姉ちゃんにお客さんが来てるんだって。お母さんが客間に入れてて、で、見に行ってみたんだけど……男の人なんだよね」
「男の人?誰だろ……」
「お姉ちゃん天然たらしだから、道端でその人助けたりでもしたんじゃないの?」
「そんなことしたっけ……?」
「もしかしたらファンだったり!」
「ホントに!?」
と姉妹らしい軽口をたたいてる。ちょっと、二人してそんなこと話してる場合じゃないでしょう。
穂乃果にお客様、となるとむしろお邪魔なのは私の方になるわね。
「……うん、私帰るわ」
「えぇー!なんでさ!」
「穂乃果、お客様のことはちゃんとお迎えしないといけないわ。私も厄介になるつもりもないし、これから塾だってあるから、少し早いけど今日はこれでバイバイってだけよ」
「うぅ……わかった。じゃあまた明日、ね」
「ええ、また明日」
「じゃあ真姫さんは私が送ります」
「ありがとう」
この時、私は気づいてなかった。その来客が、私たちの将来に関わる人だったなんて。
シリアスになっちゃうのん?
>>197
後ここ2年生じゃなくて3年生かな?
まあ細かいことだけど
真姫ちゃんを送り出して、居間の前に行くと、お母さんが随分不安そうな顔をして、こっちを見てた。
「どうしたの?……そんな顔してたら私まで不安になるよ」
本当は男の人って雪穂から言われて少し怖いっていう気持ちがある。
そんな私の気持ちを察したのか、不安げな顔はもっと影を増やして、私に耳打ちするみたいに顔を近づけて、
「……あなた、援助交際とかしてないわよね?男の、それもいいところの人なのよ」って言ってきた。
「男の人なのは雪穂から聞いてるけど……援助交際って、なに?」
そう聞いたら、お母さんは肩を下げて、ため息というかほっとしたというか、とにかく大きく息を吐いた。
「……そう、そういうのではないのね。ひとまずほっとしたわ。……とりあえず居間に待たせているから早く行ってらっしゃい」
お母さんの様子から見るに、多分援助交際っていうのは悪いことなんだと思う。大丈夫だよ、お母さん。私、そういうことしちゃいけないって、お母さんからはもちろん、おばあちゃんやお父さん、雪穂にだって言われてるし、そういう事はぜーったい、しないもんね!
「はーい」
それにしても、誰なんだろう。私、男の人とかかわることって言ったら学校の先生ぐらいだし。うーん。もしかして本当に私のファン、とか?どうしよう、サインとか用意してないし……。ていうか押しかけてくるって相当なファンの人だね、あはは。
なんてね。そういう人とはお付き合いしちゃいけないのがアイドルだってにこちゃんから教えられてるし、もしそういうお話だったらきっぱり断ろうと思います。それに、私には真姫ちゃんがいるし、ね。エヘヘ。
ふすまを開けると、そこにはお母さんの言う通り本当にいいところの男の人、でも援助交際っていう悪いことをしそうになさそうな、誠実そうな人が正座していました。
あれ?でもこの人どこかで会ったような……。どこでだろう。うーん……。
「……こうして会うのは初めてかな。久しぶりだね」
えーっと、この声、どこかで聞いたことある。それに、なんだか雰囲気が誰かに似てる……あ。もしかしたら。
「真姫ちゃんの、お父、さん?」
「……そうか、会ったのはもう半年も前だから、忘れるのも無理はないかな。……そう。いつも娘が世話になっている」
「あ、はい!えっと、あの、それで、どういった御用件で……」
言ってみてもなんだか思い当たる節がない。ううん、多分これは私の頭が空っぽな証拠。ちょっと考えればすぐわかる。本当は少し考えればわかってしまう。真姫ちゃんのお父さんが来た理由は。けどそれは何もかもを踏み潰してしまいそうな足音になって、私に近づいてくる。
「……君には、本当に感謝している。もしかしたら寂しい人生を送らせていたかもしれないあの子が、今では口を開くたびに、君の名前を呼んでいるし、それに明るくもなった。それは、本当に君たちと出会ったからだと思う」
とても、とても優しい口調。この人が西木野総合病院の院長で、それに真姫ちゃんのお父さん。
「君は、あの子の夢を知っているかい?」
「あ、はい!お医者さんになって、病院を継ぐって言ってました」
「……そう。だから、本当は私たちはアイドルをさせていたくはない。けれど、あの子は成績も下げないし、アイドルも続けるといった。実際にそれは叶っているし、それに模試の判定も問題なく良い判定を維持している。本当に今という時間を大事にしている証拠なんだろう」
「えっと、あの……」
嫌な予感がする。どうして私でも知ってることを言うの?なんで、そんなことを聞くために私に会いに来たの?
「君が真姫と交際していることは知っている。同性愛がどうこうというのはこれからの時代においてはもはや意味をなさなくなるだろうし、それを咎めるつもりはない。ただ」
背筋がピリピリと痛くなって、私の勘が言ってる。多分これは、そうだ。
初めてのことだからいまいちはっきりとはわからないけど、そう。
『別れてほしい』って。
早く言ってほしいけど、言わないでほしい。もうこれ以上私たちの間に入ってこないでほしい。出て行ってほしいのに、私は、言えない。そんなことを言ったらもっととても大きく壊れてしまいそうな感じがして。
「?」
きょとんとしたふり。でももう核心に触れそうなことがわかる。ただ、息をのんでその言葉を待つ。待ちたくないその言葉は、土下座をしながら重く、苦しく紡がれた。
「……真姫と、別れてくれないか」
「…………」
今どんな顔、してるかな?言葉も出ないよ。予想通り過ぎて、けど、衝撃的すぎて、全てが凍り付いた。時間も、心でさえ。初めて見る土下座や、それに続く言葉のせいで、何も考えられなくて、何も感じられなかった。
「え?」
ようやく出せた言葉は、知っているのに、まだ納得しきれないもの。やっぱり、そういうことだった。私からすべてを奪われる、胸の苦しさを感じる。ああ、真姫ちゃんはこんな苦しみを感じていたんだね。今なら全身でわかるよ。真姫ちゃんが小さい頃に感じたっていう、とても痛くて重いこの気持ち。
「……申し訳ないとは思っている。またあの子から大切なものを奪ってしまうと思うと、殺されても、何も言えない」
「どうして……」
絞り出した声は、あまりに短く、小さく。―――そして、悲しかった。
「あの子の夢のために、前だけを向かせていたいんだ。だから、二つのうちから、一つを選んでほしい」
「二つ……?」
「一つは真姫と別れて、アイドルをさせるか。もう一つは、アイドルをやめるか」
「え……」
選べない、選べるわけないよ。そんなの、そんなの、ずるいよ。どうしてそんなことを急に言うの?どうして私に選ばせるの?私だけで決められることじゃないよ。
どうしよう、なんて答えればいいの?どっちも嫌だよ。けど、選ばなきゃいけないんだよね?もしここで私が嫌だって言ったら、どうなっちゃうんだろう。また、真姫ちゃんはアイドルをやれなくなってしまうのかな。……それも、嫌だよ。あんなに楽しそうに歌って踊って、真姫ちゃんのお父さんに泣いてまで続けたいって頼んでいたんだよ?
「……もし、どっちも嫌ですって言ったら……どうなるんですか?」
「申し訳ないが……真姫を海外留学させる」
胸の奥がどっくん、と一つ大きく音を出して、頭にバチバチって電気が走って、寒気がして、鳥肌が立った。
「え、あ……りゅう……が、く……?」
ことりちゃんの時と同じように、離れ離れになっちゃうっていうこと?そんなの、もっと嫌だよ。どうしてそんなことをするの?大人になったら、そうしてもいいってこと?大人って、ずるいよ。ひどいよ。
「だが、それはあくまで最後の手段、だ。だから、こうならないことを願っている」
待って、まってよ。私、むりだよ、選べないよ。
「……少し、考えさせてもらってもいいですか?あの、全然、整理できなくって……」
いつの間にか顔を上げていた真姫ちゃんのお父さんは、私に近づくこともなく、ただ淡々とそこで話をする。
この人は嫌いな人だ。自分が悪いと思っていても、相手も悪いんだと思って開き直る人だ。
奪っていくものの大きさを大切さを、奪うから知らない人だ。
「うん。急な話だからね。しっかり考えてほしい」
「……あの、ちゃんと、真姫ちゃんに伝えます。それで、いつまでって……」
けど、抗えない。この人は正しい。私は多分、真姫ちゃんの将来の邪魔になってしまうかもしれないから。だから、従うしかない。
本当は、どうにかして、今のままでいたい。
「……出来るだけ早い方がいいが、遅くとも夏休み迄には、決めてほしい」
そんな、夏休みって、もう少ししたら、ラブライブがあるんだよ?それに、その前にも予選だって、あるのに。
「……わかり、ました。じゃあ一つだけ、おねがいしてもいいですか?」
真姫ちゃんがこのことを聞いたら、多分真姫ちゃんのお父さんを恨むどころじゃないかもしれない。とても、口では言えないくらい酷いことをしてしまうかもしれない。
「……出来る限りのことをしよう」
「だから、今日私と話したこと、真姫ちゃんには秘密にしてください。……お願いします」
「……よろしく頼む。私はこれで失礼するよ。時間を取らせて済まなかったね」
私が受け入れた、と思ったみたいで、その人はそう言ってすくっと立ち上がって、ゆったりとした歩調で居間を出ていった。私は、話の内容に頭がいっぱいで、出されていたお茶菓子を目に入れるだけ、顔なんか全然見れなくて、立ち上がったところを視界に入れただけで、見送ることも出来なかった。
真姫ちゃんのお父さんはそれでもよかったみたいだけど。玄関で、うちのお母さんが真姫ちゃんのお父さんと挨拶しているのが聞こえる。
私、どうすればいいの?別れるの?それとも一緒にいる?……何も見なかった、聞かなかったふりをして、真姫ちゃんを留学させる……それは絶対に嫌だよ。
どうしよう、どうすればいいの……?頭が熱くて、胸が苦しくて、何か吐き出しそうになって、私は机に突っ伏してしまった。
「穂乃果、お客さんをお送りしないで……、ってどうしたの?」
少し怒っているらしいお母さんが今に来るなり私に説教をしてこようとして来ていたみたいだけど、全身で机と同化してまで落ち込んでいる私を見て、それは心配に変わった。
「……ううん、なんでもないよ。ちょっと、考え事……。部屋行くね。ご飯出来たら、呼んで」
茫然自失、現代文で読んだことあるけど、これがそういう事言うんだね、とにかくそんな感じでよろよろと居間を出る。その間も、真姫ちゃんとのこれからをどうしようか考えたまま。それしか頭にないっていうか。
階段を上って、自分の部屋まで歩いている間に浮かぶのは、真姫ちゃんの顔。笑っている顔、怒っている顔、悲しそうな顔、驚いてる顔、照れている顔、あきれてる顔、楽しそうな顔……。
部屋の引き戸を引いて、さっきまで楽しくて、明るかった私の部屋は一転して暗くしんと静まり返っていて、私はその一部になる様にベッドに倒れ込む。暗くなると、余計にさっきまでいた真姫ちゃんの顔がはっきりと浮かんでくる。
真姫ちゃんと別れれば、これまで通り真姫ちゃんはスクールアイドルを続けられる。けれど、真姫ちゃんとは特別な関係でいられないんだって思うと、それは嫌。
じゃあ真姫ちゃんをスクールアイドルを辞めさせて、私と一緒にいさせればどうなるかな。……真姫ちゃんはそれでもいいっていうかもしれない。けど、真姫ちゃんは音ノ木坂の大事なスクールアイドルだし、もしもやめたら花陽ちゃんたちが迷惑しちゃう。
だからと言って、私のわがままで真姫ちゃんを一人にさせちゃうのはもっと嫌。私がいやだもん。
「……わかんないよ……。どうすればいいの?」
柄でもなく解決方法を考えているのに、結局浮かぶのは真姫ちゃんが遠ざかってしまうことばかりに目が行って、結局具体的なことは何にも、それどころかどうして別れてしまうんだろうってことばっかり考えてしまって、胸の中がぐちゃぐちゃになって、頭がパンクして、気づいたら真っ暗闇の中で、寂しく寝ちゃってた。
夢の中なら、何もかもが許されるのに。夢の中なら、いろんなことができるのに。夢の中なら、真姫ちゃんと結ばれるのに―――。
「ねぇ、私の事、好き?」
夢の中なのに、はっきりと真姫ちゃんが私に語りかけてくる。
大好き、ダイスキだよ。日本で一番、世界で一番、宇宙で一番、銀河で一番。私が、私だけが真姫ちゃんのことを愛してる、のに……!
「私も穂乃果のこと、好きよ」
だから、抱きしめていい?真姫ちゃんのこと、ぎゅうって、潰れちゃうくらい、抱きしめていい?
「いいわよ。私もそれくらい、大好きって思いを乗せて、あなたを抱きしめたいから」
ふわって真姫ちゃんが抱きしめてくる。私はただ抱きしめ返すだけ。
良く知ってる。この感触。真姫ちゃんのにおい、真姫ちゃんの温もり、真姫ちゃんの優しい手つき、私の手が当たる真姫ちゃんの小さい背中、真姫ちゃんの優しい顔。
私だけが知ってる、秘密の真姫ちゃん。誰にも渡したくない。渡せない、大切な人。
「ねえ真姫ちゃん、どうして医者になりたいの?」
「それはね、パパとママの跡を継ぐためよ」
「それだけ?継ぐ人なんて、別に真姫ちゃんじゃなくてもいいんじゃないの?」
「それは……」
それは、なんなの?ねえ、教えて?穂乃果おバカさんだからわからないよ。ねえ、ねえ―――。
重いなぁ
おお、来てたのか
楽しみにしてるよ
真姫パパ…
真姫パパはやはり障害となるのだな
上がってるぞ気をつけろよ
今は特にな
待ってる
構想浮かんでるのに全然書けないせるふほ
酉つけーや
出先だがこれでいいのか
早くしろォーッ!
一ヶ月も待たせやがって焦らしプレイかよ!
それでも、守りたいスレがあるんだぁぁぁ!!
頑張れ
ほ
誠に申し訳無いのですが、諸事情につき、このスレを落とさせていただきます。
理由は諸々お察しください、とだけ。
ただし、このまま投げっぱなしで終わらせないで、pixivの方で最初から続き、以前より考えていた結末までを書き切る方針です。
このような勝手な真似をしてしまい、読んでくださっている、待ってくださった方々には大変申し訳ありませんと、重ねて言うことしかできません。
pixivでは続けて投稿はする予定です。ご面倒ではあると思いますが、そちらをご確認いただければ幸いです。
そうか
まぁ残念だが気長に続き待っとるよー
残念です…
このSSまとめへのコメント
悪くないけど不完全燃焼