時計の針が頂点で重なったのが何分か前
日付は変わって5月22日。私、双海真美と妹、亜美の誕生日
誕生日になる瞬間まで起きてようねって亜美と話していたから今日はちょっぴり夜更かし
それがいけなかった
まさかこんな日にこんな気分にさせられるとは思ってなかったよ
頭が真っ白になる
隣でうつむく亜美の顔を見て、今の自分がどんな顔をしているのか理解した
その原因を作ったのが目の前にいるパパ
普段家では見せたことのない顔をして、
真美たちに取扱注意な言葉を投げつけた
※括弧のついてないところは真美1人称です
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双海父「二人とも、こっちに来てくれ。話がある」
亜美「どったの、怖い顔して」
真美「亜美が何かしたの?」
亜美「真美が何か壊したの?」
双海父「いや、今日はお説教じゃない」
双海父「ただ二人とも大人になったなと思って、な」
亜美「んっふっふー、パパも亜美のアダルティーにメロメロですな」
真美「・・・真美のことは遊びだったの、パパ?」
双海父「・・・ふふ、やっぱりまだ子供だな」
双海父「まあ少し父さんの話を聞いてくれ」
双海父「大事な話だ」
双海父「真美」
真美「ん?」
双海父「お前はいつも少しだけ我慢してるな、それは何でだ?」
真美「え?・・・んー、一応お姉ちゃんだから、かな?」
双海父「そうか。そして亜美」
亜美「何?」
双海父「お前は人に甘えるのが上手だな、それはどうしてだ?」
亜美「むー、妹だからじゃん?」
双海父「そうだ、真美がお姉ちゃんで亜美が妹。それがお前たちだな」
双海父「・・・・それ、間違いかもしれないんだ」
亜美真美「「はっ?」」
亜美「え、何それどゆこと?」
真美「真美がお姉ちゃんじゃないの?そしたら真美は妹なの?」
亜美「なにそれこわい」
真美「ンモー、パパ冗談のセンス悪いよ!!」
亜美「しかもタチ悪すぎっしょー・・・」
双海父「・・・・・」
亜美真美「・・・・・」
双海父「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
亜美真美「「マジ?」」
双海父「・・・ごめんな」
双海父「お前たちは予定日よりも早く生まれてな、当日父さんは出産に間に合わなかったんだ」
双海父「だからこれは全部聞いた話だ。無責任でごめん」
双海父「分娩台についてからすぐに先の子は産声を上げたらしい
しかし次の子は逆子でな、生まれるまでの間に少し時間が開かかってしまうんだ
お前たちの産まれた日は休日で、産科の先生はその時一人しかいなかったそうだ」
双海父「そんなとき急患が担ぎ込まれて来た
見るからに危険な状態のその急患を放っておくこともできない
母体も胎児もただちに処置が必要だった
一人目を産んで、安定した状態になった母さんをおいて急患の対応をしていたと聞たよ」
双海父「そして先生が目を離している間に二人目が頭を出していたしい
緊急処置が必要な状況で明らかな人手不足
そんなバタバタした状態でいつのまにかどっちがどっちか分からなくなったのだろう
母さんは麻酔で眠っていてその顛末を記憶していない」
亜美「・・・なんで今言うの?」
双海父「本当はもっと大人になってから言うべきなんだろうが・・・」
双海父「お前たちはアイドルという形で社会に出ているだろう」
双海父「つまり大人の仲間入りをしているのだから、父さんも二人を大人として扱うべきだと
思ったんだ」
双海父「すまない、軽率だった。もう少し大人になるのを待つべきだったな」
真美「違うっ!なんでこんなに遅いのかって話だよ!」
亜美「亜美たちが生まれて13年だよ!その間隠してるなんてズルっこだ!!!」
双海父「・・・すまない」
双海父「実は父さんもこの話を知ったのは去年なんだ」
双海父「父さんは医者をやっているだろう」
双海父「お前たちの出産も当然病院で行われる」
双海父「つまり同業者だ」
双海父「同業者相手にこんな重大な医療ミスが知られたらまずその医者は破滅だ」
双海父「それを恐れた執刀医は母さんが眠っているのを利用して、隠ぺいした」
双海父「すまない、父さんが付き添っていればこんなことにはならなかっただろう」
双海父「アイドルとして活躍する二人をみた執刀医が罪悪感に駆られて父さんに電話してきた
のが去年の話だ」
双海父「今まで黙っていて本当にすまない」
亜美真美「「・・・・・」」
亜美「・・・亜美寝るね?」
真美「・・・・お休み、パパ」
・
・
・
双海父「・・・これで・・・これでよかったのだろうか・・・」
すごく気分が悪い
さっきパパに聞かされたことが直接真美たちに害をなすことはないと思う
だから泣きわめいたりはしない
正直お姉ちゃんという立場にこだわりはないし、それは亜美も同じだろう
ただただ気持ちが悪い
今まで過ごしてきた時間が全て嘘を前提としているかもしれないのだ
お互いに何となく気まずくて背中合わせでベッドに入ったから表情は見えない
ふれあった背中が少し汗ばんで不快
体勢を変えたら互いの手が触れる
どちらからともなく手を握り合ってそのまま眠りについた
今夜はとんでもなく嫌な夢を見る気がする
ケータイ「ま・ぶ・た・を・あ・け・て・さ・わ・や・か・お・め・ざ・め」ランラララアサダランラララ
亜美「真美ー、おきてー。お仕事いくよー」
真美「んんー、ちょっち待ってー」
亜美は真美よりも少しだけ朝に強い
ケータイのアラームで亜美が目を覚まし、真美を起こすのが双海家の朝の習慣になっている
それは夢見の最悪な朝でも変わらないみたい
無理矢理体を起してダイニングにいくとトーストの香ばしい香りがする
正直昨日の今日でパパと顔を合わせるのは気まずい
ユウウツだ
パパも同じように感じていたようで、真美たちが髪を梳かしている間にそそくさと家を出たみ
たい。
右を見ると亜美が少しだけほっとした表情をしている
今日は二人のバースデイライブ
ファンの兄ちゃん達の前で上手く笑えるかな・・・
小鳥「おはよう、亜美ちゃん真美ちゃん」
亜美真美「「はよー、ピヨちゃん」」
小鳥「お誕生日おめでとう。これ、私からね」
亜美「えー、今渡すの?」
真美「真美たちのためにサプライズパーティとかないの?」
小鳥「みんな忙しくなったから、残念だけど予定を合わせられないのよ」
亜美「そっか・・・ピヨちゃんありがと」
真美「開けていい?」
小鳥「うん、二人に似合うといいけど」
亜美「うあ!サンダル!」
真美「大人ヒールっ!!」
亜美「ピヨちゃんあんがとさん」
真美「大事にするね」
小鳥「ふふっ、どういたしまして」
小鳥「もうすぐ律子さんが帰ってくるからそしたら会場に移動よ」
亜美真美「「あいあいさー」」
真美たち上手く喜べたかな
今は頭の中がモヤモヤしてていつもみたいにテンションあげるのしんどいんだけど
みんなに心配かけるのは違うよね
家で何があっても事務所に来たら真美たちはアイドル
元気を与える側なんだ
それにプレゼントが嬉しいのは本当だし
もし真美たちが暗い顔してたらきっとピヨちゃん凹むよね
「若い子の趣味には合わなかった?」
「私の趣味ババ臭い?」
きっとそんな風に自分を責める
ピヨちゃんのくれたサンダル、かわいいよ
大人ぶりたい思春期の気持をよくわかってるプレゼントだと思う
気分が晴れたらこれを履いて亜美と出かけよう
小鳥「ご来場の皆さん、本日はようこそお越しくださいました
さて、皆さん、今日は何の日かご存じですね?」
ファン「 ウォーーーーーー タンジョビーーーーーーーーー アミーーーー マミーーーーー」
小鳥「そうです、765プロの怪童天使ツインエンジェルこと
双海亜美・双海真美両名の誕生日です」
小鳥「それではみなさん、盛大なハッピーバースデーで二人を迎えましょう!!」
小鳥「せーのっ」
ファン「 ハッピバースデー2U ハッピバースデー2U ハッピバースデーディア アミチャンマミチャン 」
ファン「 ハッピバースデー トゥ ユー 」
亜美「呼ばれて飛び出て」
真美「じゃじゃじゃじゃーん」
亜美「双海亜美」
真美「双海真美」
亜美真美「「どぅえーーーーーっす」」
亜美「ファンの兄ちゃん姉ちゃん」
真美「おっちゃんおばちゃん」
亜美「今日は亜美たちのバースデーライブに来てくれて」
亜美真美「「ありがとー」」
うん、上手くいってる
真美たちだってプロだから個人的なジジョーでお仕事に失敗するわけにはいかない
何よりファンのみんなの前で歌って踊って
楽しくって頭の中のもやもやも多少晴れた気がする
この時間がいつまでも続けばいいのに
真美たちはステージの上では無敵だ
帰ったらパパにもう一回ちゃんと話を聞いて
大丈夫だよって伝えたい
亜美、真美は亜美とどういう関係でも大好きだよ
さあ、これが最後の一曲
全部出し切ろう
亜美「ファンの兄ちゃん」
真美「姉ちゃん」
亜美真美「「ありがとー」」
亜美「特別な日をみんなと過ごせて今日はチョー最高だよ」
真美「・・・でもね、幸せな時間はもうおしまいなんだ」
亜美「亜美、13歳の誕生日は一生忘れないよー」
真美「また来年も来てくれるかな?」
ファン「 イイトモー 」
___奈落が下りる
ゆっくりゆっくり薄暗い地下の待機スペースにむかって
夢が覚めるのとよく似たこの感覚、真美は結構好きだ
亜美と抱きしめあいながらお互いにささやく
「誕生日おめでとう」
亜美「あれ?止まった?」
真美「え、故障かな?」
亜美「こんな中途半端なとこで停まるとか最悪っしょ」
真美「昨日からホントついてないね・・・」
亜美「まーなんかもー吹っ切れたっしょ」
真美「まーね!」
亜美「パパには高すぎるプレゼントねだるよ」
真美「モチ!・・・あ、動いた」
亜美「あり?なんかおかしくない?」
真美「これ上ってるよね!?」
亜美「すたっふぅー すたっふぅー」
真美たちがステージに戻ると、ファンの兄ちゃんたちはまだ帰っていなくて
春香「お帰り、亜美、真美」
みんなが奈落を囲んでいました
亜美「え?え?」
真美「なにこれなにこれ」
美希「アハッ、二人はまだ状況がつかめてないみたいなの」
亜美真美「「どゆこと?」」
伊織「にひひっ何よ鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔しちゃって」
貴音「さぷらいず、ということです」
響「どっちかっていうとドッキリだけどな」
やよい「はい、二人ともこっち来て」
あずさ「それじゃあ改めまして」
みんな「「お誕生日おめでとう」」
雪歩「二人のお祝いのためにケーキを用意したんだよ」
千早「それではファンのみなさま、もう一度歌いましょう」
真
「盛大に行きますよっ!せーの」
「「ハッピバースデー2U ハッピバースデー2U ハッピバースデー ディア アミマミ」」
「「ハッピバースデー2U」」ワーワーパチパチパチ
美希「ミキたちが来たのはケーキのためだけじゃないよ」
千早「ふふっ、実はとっておきがもう一つあるんです」
春香「というわけで双海亜美・双海真美バースデーライブ特別企画VTRスタート」
さっきまでライブ演出に使われていた大型ビジョンに真美の見知った部屋が映る
そこには真美と亜美とパパ
え?どういうこと?
なんで家にカメラがあるの?
___VTR____
双海父『二人とも、こっちに来てくれ。話がある』
亜美『どったの、怖い顔して』
_________
亜美「・・・・え?」
真美「なんで?」
春香「はい、実はですねご両親に協力いただいてカメラを取り付けてました」
響「自分さっきドッキリっていったでしょ」
伊織「・・・言っちゃったら台無しじゃない」
VTR内の真美たちは瞬きが異様に多くて、口が半開きで・・・
春香「はい、ここの二人の表情注目ですよ、注目」
雪歩「必死に頭の中を整理してるみたいですぅ」
やめて、解説しないで。恥ずか死ぬ
てかどっきりってことは昨日の話は全部ウソで真美の訳分かんないモヤモヤはどうすれば
とにかくこの最悪の状況でも、少しだけ安堵して・・・・るわけないっしょ
亜美『・・・亜美寝るね?』
真美『・・・・お休み、パパ』
・
・
亜美「ひどくない?」
真美「思春期の子供に対してすることじゃないよー」
春香「ドッキリはやりすぎる位がいいと思うよ」
春香「そして、VTRはまだ終わっていないんです!」
春香「中継ですよ、中継」
亜美「え、中継?」
真美「・・・嘘、だよね」
___中継
双海父『亜美、真美誕生日おめでとう、双海父です』
双海母『亜美、真美ごめんね、双海母です』
亜美「ちょwwww」
真美「何やってんのパパママwwww」
あずさ「あらあら、お母さん美人さんね」
貴音「双海亜美、双海真美のふたりも麗しい婦人へと育つことでしょう」
亜美真美「「今そういうのいいから!!」」
双海父『さて、本日は娘たちのためにこのような素晴らしいイベントを催していただき』
双海母『そういうのいいから』
双海父『ははは、母さん辛辣だな』
真「ハハッ」
亜美真美(//////)
双海父『昨日の話だがな、もちろん嘘だぞ』
双海母『お父さんは出産中ずっと手を握っててくれてね、おお泣きしてたのよ』
双海父『それだけ嬉しかったんだよ』
双海母『お爺ちゃんがビデオ回してたから今度見てみましょうね』
双海父『パパもママも若くてびっくりするぞ』
亜美「もう////」
真美「やめて////」
どうしよう、感情の整理がつかない
真美たちはアイドルで、ここはステージの上
なのに画面にはパパとママがいるから、どうしても家にいるときの顔が出てしまう
しかも今はパパへの怒りとかドッキリの恥ずかしさとかで感情がこぼれそうになってる
どうしようもないからうつむいておこう
握りこぶしがプルプル震える
やよい「ふたりとも静かだねー?お腹痛いの?」
伊織「放っておいてやりなさい・・」
双海父『二人のイタズラ好きはパパから遺伝したのかもな』
双海父『母さんにしたいたずらが切っ掛けで結婚したからな、ハハハ』
亜美「最悪///」
真美「穴掘って埋まりたい///」
春香「以上VTR終了です。それでは主賓の亜美真美にコメントを頂きましょう」
亜美「・・・・パパとこれからどう接すればいいのかわからないよ」
真美「はるるんがノリノリすぎて引いた」
春香「コメントありがとうございます。では、さようならー!」
小鳥「これにて本日の催しは終了とさせていただきますお気をつけてお帰り下さいませ。」
____楽屋
ステージからどうやって楽屋にたどり着いたかは覚えてない
お姫ちんとまこちんの背中が濡れてる
多分二人が運んでくれたんだろう
ファンの目線がないこの場所でなら、
もう、我慢しなくていいよね
亜美真美「「ひっくひく・・えぐっ」」
真「これは・・・まずいね」
千早「まあ正直やりすぎなところはあったもの」
小鳥「大丈夫だからね、みんな二人が嫌いでやったわけじゃないのよぉ」
亜美「知んないよ」
律子「今回の企画、私と小鳥さんは反対したのよ・・・」
律子「いえ、止め切れなかった時点で同罪ね」
真美「もういいよ・・・」エグッ
亜美「ほっといて・・・」ゴシゴシ
昨夜からの真美たちの言葉にしづらい感情が涙に溶けて流れる
メイクと混じって濁った雫が床を汚す
部屋の真ん中にみんなが持ってきたプレゼントが山積みになっている
なんかもうどーでもいいや
何かにこのモヤモヤをぶつけて忘れよう
ガチャッ ドアが開いた
P「亜美っ真美っ、スマン」
あ、ぶつけどころがやってきた
P「お前たちがここまで傷つくとは思わなかったんだ」
亜美「兄ちゃんは亜美たちをなんだと思ってるの?」
真美「真美たち、もう訳分かんないよ」
P「すまん、俺も正直やりすぎだとは思ったんだが二人の強さなら行けるかなって」
亜美「亜美たちを信じてたからこういうことしたの?」
P「ああ、そうだよ」
真美「真美たちはもう他人を信じれないかもだけどね」
P「くっ、この償いは必ずする。なんだってするよ」
亜美「ん?」
真美「今、」
あの最悪の日から数日が経った
今日はピヨちゃんにもらったサンダルを下ろそう
せっかくの大人ヒールをもらったんだ、使わなくちゃもったいない
まあ、本来の使い方ではないかもだけど
亜美「兄ちゃん、こっち」
真美「ソファーにうつぶせ」
兄ちゃんは1週間、真美たちのドレイになった
ドレイの背骨を大人ヒールでゴリゴリする
亜美はアキレス腱に乗っかっている
大人の悲鳴はすこしだけおもしろい
悪徳記者が会場にいたらしく、あのドッキリはちょっとだけ問題になった
・・・まあ悪徳記者の記事だから、そこまで大問題にはならなかったけど
そして兄ちゃんは減俸3か月+謹慎1週間
その謹慎期間をドレイとして過ごしている
ドレイを尋問したところ、どうも企画をしたのは兄ちゃんではないらしい
兄ちゃんは決して口を割らなかったから、犯人は分からないけど正直予想はつく
明日からパパの洗濯物は別に洗ってもらおう
終わり
おつおつ
亜美真美らしい話とオチでほっこりした
面白かったよ乙!
>>7
13歳でこの思考は凄い
読んでくれた方ありがとうございます
HTML化依頼出しときます
心理描写がホントに真美っぽくてよかった
このSSまとめへのコメント
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