「こちら側」のコミュ障と、決して届かない「あちら側」 (5)

書きだめしていませんが見ていただければ幸いです。

大学生活を経てコミュ承太郎は理解した。
時は今、2014年の夏。

思えばなぜ、早くに気が付かなかったのか。
いや、気づいてはいたが、目を背け続けていただけなのかもしれない。

高校時代、承太郎には友達は居なかった。
趣味もなかった。彼の相手はデスクトップのモニタだけであった。

教育熱心な親の元で、承太郎は塾に通い、それなりの高校には入学できた。
しかし、彼は高校時代、友達を作ることができなかった。
幼いころにネット環境が整備され、それ以来友達と遊ぶことは極端に減ってしまった。
気づいた時には、重度の上がり症と滑舌の悪さを身につけてしまった。

だが彼には一人の幼馴染がいた。
小学校からの付き合いだった。
顔はまあ平均よりちょっと上ぐらいの感じだが、
面倒見のいい性格で、皆からは好かれていた。
彼は学校からひとりで帰るはずだった高校生活には、
彼女という大輪の花が咲き誇っていたのだ。
彼女は言う
承太郎はいつもおとなしいね、と
違う、
おとなしいんじゃない、
俺は話さないだけなんだ。
話せば皆俺にかまってくれる。
そう思っていた。
そう驕ってもいた。
だからかもしれない
彼女はだんだん俺から離れていった。

俺はただその事実を、他人事のように、まるで俺の事実というストーリーをただ傍観してるような気持ちでいた。
ああ、やっぱり彼女も他の人間と同じなのか。
傍観してる立場からすると、ただの八つ当たりに近いって事はわかっている。
でも、当たらずにはいられなかった。
何故俺は彼女にさえ話しかけなかったのか。
彼女は俺に話しかけていたのに、俺は彼女を拒んだ。
彼女を拒むことで、俺は一種の優越感に浸っていたのかもしれない。
だから彼女は離れていった。
だから俺はこのことに気づいた。
でも、そんなこと気づいたところで、どうにかできるほど、俺の心は強くなかった。

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