お千代「どうぞ……若旦那」
彦太郎「すまないね……ところでお千代」
彦太郎「おまえ、好いた男はいないのかい?」
お千代「いえ、そんな人はいませんけど……突然どうしたんです若旦那?」
彦太郎「……お千代っ」ギュッ
お千代「わ、若旦那っ……何をなさいます……!」
彦太郎「お千代……私は以前からおまえのことを……!」
お千代「な、何をおっしゃるんです……!若旦那……!」
お千代「若旦那は和泉屋の跡取り息子……私のような下働きの女など……」
彦太郎「そんなこと、私は構やしないよ……!お千代……!」ドサッ
お千代「お、おやめください……あっ……!」
ふぅ
~~
お千代「うっうっ……」
彦太郎「お千代……無理に迫って悪かったから泣かないでおくれ」
彦太郎「でもね、私は本気でおまえと添い遂げたいと思ってるんだよ」
お千代「ううっ……若旦那……でも私なんかでは……」
彦太郎「いいかい、お千代……」
彦太郎「遊郭で身体を売ってた卑しい女に惚れこんで」
彦太郎「身請けして後家に迎える大店のあるじだって世の中にはいるんだ」
彦太郎「それに比べりゃ下女なんて問題じゃないよ」
彦太郎「お千代はよく気の付くいい子だからね」
彦太郎「おとっつぁんだってきっと分かってくれるよ」
彦太郎「……それともお千代……私のことは嫌いかい?」
お千代「嫌いじゃありません……でも……」
お千代「そんなこと……いきなり言われても……」
彦太郎「無理にとは言わないよ、考えておいてくれないかい?」
お千代「……」
彦太郎「今晩はもういいよ、下がって休みなさい」
お千代「……はい、お休みなさい……若旦那」
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