「いってきまーす」猫「にゃあ」 (24)




「いってきまーす!」


少女が元気よく玄関を飛び出してくる


「女ちゃーん 忘れ物ー!」


後ろからもう一人追いかけてくる。


「ありがとお母さん。あぁぁ遅刻するぅぅぅ(泣)」



ほとんど毎朝のみなれた光景である。



「チビ!行って来るね♪」


ボクは決してチビでは無い。


急いでるならボクに構ってる場合じゃないだろう?早く行け。


今日もボクは塀の上からいつもの光景を眺める。


走って行く後ろ姿が小さくなっていく。

いつもながら足が速い。


あの娘は小さいころから足が速かった。

昔は良く追いかけられたものだ・・・。
最近はボクを見つけると袋から干乾びた魚を出して食べさせてくれる。


「おまえはいつもカワイイね♪」


カワイイ?ボクは君がちっちゃな頃から知っているのだよ?

君より大人のボクを捕まえてカワイイとは失礼な。


まぁそれは良いとして、その干乾びた魚は(にぼし)と言うらしい。

ちょっと味が濃いのだが 気にいっている。


サービスで「にゃあぉ」と甘えた声で鳴いてみてやる。


「うんうん。美味しい?良かった♪」


こっちはサービスのつもりで鳴いてやってるんだが 喜ばれると悪い気はしない。


(おんな)は(にぼし)をくれる良いヤツだ。


(おんな)を見送ったあとはちょっと散歩に出かけるのが日課だ。



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「にゃにゃ!」
とある家の玄関先でちょっと強めに鳴いてみる。
ガラっと扉が開く
「あらあらクロちゃん。もう来たの?ちょっと待っててね。」


いつもながらボクの事を勝手に(くろちゃん)と呼ぶ。

ボクの毛色は黒では無い。濃い灰色だ。



一通り撫でなれたのち、ここでは削った木の様なモノが皿に乗って出てくる。


(かつおぶし)というらしい。これもまたちょっと味が濃い。

だけど癖になるうまさだ

「あら。主婦Aさん。またクロちゃん来てるんですか?」


「えぇ主婦Bさん。いつもこの時間に来るんですよ。」



ボクが(かつおぶし)を楽しんでる時に後ろから触るヤツがきた。


コイツは身体から強烈な匂いを発しているから嫌いだ。


(こうすい)と言うらしい。近寄られると鼻がヒリヒリする。


さっさと(かつおぶし)を食べ ヒラリと塀から屋根に登る。


「にゃあ。」振り向き挨拶をする。


(かつおぶし)をくれた(しゅふえーさん)へのお礼は忘れない。





やっぱり(しゅふびーさん)は嫌いだ。



さて。今日は何処へ行こうか?


屋根づたいにブラブラするとしよう。
ん?向こうから誰か歩いてくる。





リリアン(♂)か。近所の仲間だ。



軽く挨拶し ちょっと話しをする。



暗い顔をしてる。今日は(しゃんぷー)の日らしい。


ボクもヤツラと一緒に住んでいた時代に何回かされたことがある。


確かにあれはたまらない・・・・。気の毒だ。




今日は帰りたくないというリリアン(♂)を慰め別れる。



後ろ姿に元気が無い。頑張れ!リリアン(♂)





さて、(しょうがっこう)だ。
うん、ここに居るヤツラは全体的に嫌いだ。


まず 石や木の枝を投げてくる。・・・何が目的なんだ?


ボクは捕まるようなヘマはしないが 前に捕まったユキ(♀)は顔に落書きをされていた。

せっかくの美人が台無しだ。


しばらく落書きは取れずユキ(♀)はとても落ち込んでいた。


ヤツラに見つかる前にとっとと通り過ぎよう。


「あーーー!ネコー!!!」キラキラ



!!!まずい。こっちにいやがった・・・。目が合っちまった。



「フーーッ!!!」
温厚なボクだが威嚇してみる。まったく効果が無い・・・。
少年「」キラキラ

だからその目でコッチを見るな
いや だから何でモノを投げてくるんだ!いい加減にしろ!



やっとヤツラをまいた。この柵からは出て来れないのは知っている。犬のヤツラと一緒だ。


やはりここは散歩ルートからはずすことにしよう。

縺??

小動物に害を為すガキは大抵ろくでもない奴になる
ヤンキーとは別のタイプでDQNになる


>>5 激しく同意
回りにもいますわ

ーーーーーーーーーーーーーーー


さて そろそろお腹が減ってきた。あそこに行くとしよう。


(こうえん)に向かう。ちょっと遠いがあそこには(おーえる)というヤツラがいる。


「にゃにゃ?」と少し愛想を振りまけば(たまごやき)や(ういんな)をくれる。ちょろいもんだ。



(こうえん)についた。辺りを見ても誰もいない。・・・おかしい。


そういえばこの桜が咲いてしばらくした時期は(こうえん)には暫く(おーえる)は姿を現さない。


……。

それにしても最近(こうえん)には見慣れぬヤツラが増えた。1日中(べんち)でゴロゴロしている。



まるでボクらのような生活をしている。他のヤツラがセカセカと歩いているのにヤツラは寝ている。


(こうえん)にいつもいるヤツラとは餌場がたまにだぶる場合もある。


先に餌場を見つけたのはボクなのに「シッシ!」と言って追い払う。先に見つけたボクにも食べる権利はあるだろう?



さて あてが外れた・・・。どうしようか?

まぁ1食くらい食べなくても何とかなる。


夕方までブラブラすることにしよう。夕方はヤツラが沢山いて色々くれるからな


さてもう少し(こうえん)をブラブラするとしよう。


おっと。(まま)だ。(まま)は(こうえん)に沢山いるな。


(まま)と一緒にここにいる小さいヤツラは(しょうがっこう)にいるのより大人しくていい。



(まま)が向こうに行った。小さい(くるま)は置きっ放しか。


ちょっと中を見てみよう。(ういんな)や(にぼし)があるかも。


ん?小さいのがいるな。こいつはまだ歩けないのか?


「きゃっきゃ(笑)にゃー にゃー」


何か言ってる。おもしろいな。おっ(まま)が戻ってきた。


「あら。にゃんにゃんがいたの? 大人しい子ね。ウチの子のこと見ててくれてたの?」


「子守してくれて ありがと」


何だ?クンクン。ちょっと硬いなこれ。でも甘くてうまいな。もうちょっとくれ。


「まだ欲しいの?しょうがないわね(笑)」


早く出してくれ。ボクはお腹がへってるんだ。


んぐ、カリカリ…
うん。ちょっとだけど足しにはなった。


「にゃーん」 ちょっと離れて座ってお礼をした。

食べ物を貰ったらお礼は忘れないようにしないと。


………

さっきのヤツどっかで見た事あるような・・・。


まあいいや。そろそろヤツラが増える頃だな。



まずは・・・。あそこに行くか。(おんな)と良く似たヤツラがいる所にしよう。


ヤツラも良く食べ物をくれるからな。



さて。ここが一番の問題だ。(くるま)が沢山通るからな。


でもあの光が緑色になれば(くるま)は止まるから それまで待つか。




・・・・遅いな。いつもはすぐに緑色になるんだけどな?


なんだ?ヤツラが来たら緑色になったぞ。まあいいか。あっちに行くとしよう。





おっ!居た居た。ヤツラの群れだ。さて始めるか。



「にゃあーご♪」



「わ 猫くん今日も現れたな。うん?お腹減ってるの?女友Aなにか持ってる?」



「わたしなんも持ってなーい」



「あっわたし売店でかったパンの残りあるよ。」



ほら。早くよこせ。なんだ?サービスが足りないか?



それ!お腹見せてやれ。



「わぁ。無防備ぃ(笑)ゆだんしてるな猫くんめ(笑)」


「かわいいー♪ほら食べな」


おっ。うん。うまいなこれ。中の白い甘いのがいいな。



「じゃれるかな?女友C定規貸して。」



おっ!?おっ!?なんだ?コイツ。こら!動くな。



・・・ふぅ。本能には勝てないな…だが、もう落ち着いたぞ


「じゃれなくなっちゃった。 じゃあね。猫くん」



「にゃあ」 お礼を言って歩いて行く群れを見送った。



うーん。ヤツラが増えてきたな。下を歩くのはやめようか。


ちょっと上に上ってしばらく歩こう。




おや?あそこにいるのはどっかで見たことあるぞ。



(おんな)だ一緒にいるヤツは誰だ?見た事ないぞ?





「同級生君。これ読んで下さい」



「ありがとう、嬉しいよ。…でもごめん・・・。俺いま彼女いるんだよ。」


なんか渡して話しをしている。(おんな)が向こうに走りだした。



さっきから甘いものが多かったからな。ちょっとしょっぱいものが食べたいな。



(にぼし)持ってるかも?追いかけるとしよう。やっぱり(おんな)は足が速いな・・・。


やっと座り込んだ。さて行くか。


「にゃぁーん♪」 ボクの必殺の甘え声を喰らえ!


お???(おんな)?どうした?元気が無いぞ。


「チビ?なんでこんな所いるの?」


ん?目が真っ赤だぞ、(なみだ)も出てるぞ。何か入ったのか?
よし、取ってやろう!


んむ、ほっぺにしかとどかん…
うんショッパイ


「チビ・・・慰めてくれてるの? ありがとう」



もっと目から(なみだ)を出しながら笑っている。そうか!楽しい時に出るんだな(なみだ)は。覚えておこう。


「あっ ごめんね。いま何も持って無いんだよ。家に帰ったら煮干あげるね。」



何か言ってそこに座り続けている。(にぼし)はまだか???・・・仕方無い待つか。


「ん?待っててくれるの?じゃあ一緒に帰ろうか?」



なんだなんだ!?コラ!気安くボクを抱くな! おい 苦しい。そんなにギュッとするな。


・・・なんだ?まだ元気が無いな。仕方無い(おんな)に付き合ってやるか。



(おんな)の家が見えてきた。さあ 早く(にぼし)をくれ。



「ちょっと待っててね。」



「お母さーん。煮干ちょうだい。あと牛乳あったっけ?」


まだか?喉も渇いてるんだ。なにか飲ませてくれ。


「チビ。こっちおいで。」



ん?そこの中に来いって事か?・・・仕方無い。行ってやるか。



うん。うまい!(にぼし)とミルクの組み合わせは最高だな。


ふぅ。うまかった。ありがとな(おんな)


「にゃーん♪」 サービスだ。足に擦り寄ってやるか。


「なに?チビ?元気付けてくれてるの? ありがとう。」


また(なみだ)を出してるな。そうか。ボクのサービスがそんなに嬉しかったか。いいことしたな。


さて。今日はあと・・・。そうだ。あそこに行くか?


ちょっと遠いけど夕飯と言えばあそこだな。


また(くるま)が多いな。緑色になるまで待つか。



・・・やっと緑色になった。さて渡る・・・




……

……………





どうしたんだ?真っ暗だ。



緑色になったから渡ろうとしたら。???そのあとどうしたんだ?




ん?なんで兄弟達がいるんだ?あれ?ボクの身体小さくなってないか?




お母さんだ!!!なんで居るの?



まあいっか。今日も色々動いて疲れたし家族みんなで寝よう。



明日もボクが行ってあげないと街のみんなが寂しがるからな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まちのみんな /みんなのおはなし


主婦Aさんのお話。



クロちゃんは毎朝同じ時間に遊びにきてくれていたのよ。



きまって玄関先で にゃ! って鳴いてわたしを呼ぶの。



鰹節が大好きでいつも鰹節を食べてたわ。



主人にも先立たれて寂しいわたしの事を構ってくれてみたいだったわ。



・・・最近遊びに来ないのよね。どうしたのかしら?


怪我とか病気とかしてなければ良いんだけど・・・心配だわ。



女の子ちゃんのお話し。



教室からお外見てるとよく柵の上を歩いてくネコがいたの。



黒くて ピシッとしてて とってもかっこよかったの。



男子は見つけると石とか投げてたんだけど。



この間学級会でそのこと言ったら



ネコさんにモノを投げるのはやめましょうって決まったんだ。



だからまた来てくれないかなぁ?



ユミあのネコさんかっこよくて好きなの♪



ママのお話し。



この間息子を公園に連れて行った時なんですけど



ガーゼをゆすぎに水道に行ったんです。戻ってきて驚きました。



黒い猫がベンチの上からベビーカーを覗いて悠斗をジーっと見てるんです。



野良かなって思ったんですけど不思議と怖くありませんでした。



まるで子守をしてくれてるみたいな感じで。変ですよね?猫が子守なんて(笑)



でも近所のママたちに聞いたら有名な猫なんですって。



昔からあの公園によく現れて同じように子供の顔をじっと見て帰って行くんですって。



このお腹の中の子の時も公園に連れて行ったらあの猫くるのかな?(笑)


女友 Aちゃん、Bちゃん、cちゃん のお話し。。。




あー猫くん?良く見るよね?いつも帰り道にわたしたちの道ふさぐの(笑)



でもラブ♪な感じな猫だから好きですよ。




うん。わたしもあの猫好きぃ。いっつもじゃらされないぜ!って感じの癖に



結局いつもじゃらされちゃうんだよ(笑)でもそこがカワイィんです♪




わたしもぉ。他の子たちも良く言ってるよね?あの猫おねだり上手なの。



みんな買ってたお菓子とかついあげちゃうって言ってた(笑)



うちの学校のマスコット?みたいな感じ。。。次は何あげよっか?



おんな ちゃんのお話し。。。


…………



うちの猫じゃないんですけどチビとはずっと一緒だったんです。




わたしが幼稚園に入った日も高校の入学式の日も。




どんな日も「にゃあ」って言って わたしを学校に送り出してくれたんです。。。




わたしが告白して振られた時もどっかから現れて。わたしの足にピタって寄り添って



泣いてたわたしの涙をペロってなめてくれたんです。。。



そのあともわたしの横にずっと座って一緒に居てくれました。。。



きっとわたしの気持ちが分かってて。それで慰めてくれたんだと思います。。。



いつからチビがいたか覚えてません。それくらい昔から一緒だったんです。








そう この間初めて抱っこしたんですよ(笑)今まで絶対に抱かせてくれなかったのに。。。



で お母さんにチビの事飼っていい?って聞いたんです。そしたらお母さんいいって。





あの日はめずらしく学校行くのに家を出たらチビがいなかったんす。



まあいっか。って。帰ってきたら家の中に連れてお風呂入れてあげよ。って思ってたんです。。。



学校行く途中の信号で猫が血だらけで倒れてました。チビだったんです。わたしがチビを見間違えるワケ無いし。



急いで抱きかかえた時は息をしてたんです。。。その時はまだ暖かかったんですよ。。。



ひゅーひゅーって苦しそうにしてました。獣医さんの所に連れていく最中に息が弱くなって・・・


獣医さんに見せたらもうダメだって。一生懸命お願いしたんですけど。



もう高翌齢で多分20歳以上だろうって。
体力的にも手術には耐えられないって・・


長い間良く生きたよって。


良く生きた。ってなんですかね?




ずっと目を閉じてたんですけど。少し目を開いて 「にゃあ」 って。 いつも通りの声で・・・



「おんな、泣かないで。」って 言ってるみたいでした。



わたしは泣きながらチビを抱っこして。そしてらどんどん冷たくなっていって。



最後にわたしのホッペの涙をペロって舐めて・・・。



チビですか?獣医さんで火葬してもらって 庭の木の下に埋めてあげました。



きっと天国でも楽しく過ごしてますよ(笑)


おやすみチビ。




ボクのお話し。。。




しゅふえー さん。 かつおぶし ごちそうさまでした。 いつもおいしかったです。




おんなのこ ちゃん?やつらに ボクこといじめるなって いってくれて ありがとう。
 
あ そうそう このあいだミルクくれたよね。 ありがとう。 おいしかったよ。




まま さん、こんにちは。 まま さん とは むかし こうえんで

よくいっしょに あそんだんだよ。 おぼえてないかな?

ままになったんだね。 おめでとう。 つぎのこどもも まま さん みたいに

やさしいこになるよ。 きっと。




おんなとも えーちゃん、びーちゃん、しーちゃん いつもありがとう。 

きみたちが いちばん ボクのこと かわいがってくれたね。

あと じゃれてたんじゃないよ。 じゃれたふり してあげてたんだよーだ。


おんな ごめんね。 ボクしんじゃった。 

おんな と いっしょに いたかったけど だめみたい。


おんな のことは ちっちゃいときから ずっとみてたよ。

ボクは げんきな おんな が すきなんだ。


だから なかないで。 
 
もう ボクは おんな の なみだをなめて あげられないんだよ。



さいごに だっこしてもらって うれしかったよ。

にんげんって あったかいなぁって。


おんな のうでのなかで てんごくにいけて しあわせだったよ。

だから なかないで。



まちのみんなに いっぱいかわいがってもらって しあわせだったよ。

だから みんななかないで。 


あしたからボクはいないけど。 

もう みんなに あいにいけないけど。


でも みんなのこと みまもってるよ。

だいすきな まちのみんな。


さようなら。



おしまい

年のせいかな…
こういう話に弱くなってしまった

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