矢吹可奈「六年後のある日の風景」 (6)
窓の外の風景を、カートにまとめた荷物に腰かけながらまとめていた。
ガラス一枚で隔たれた先では、飛行機が空へと飛び立っていく。
「ほんとにいくんだね、可奈ちゃん」
かけられた言葉に振り返ると、その人は困ったように笑いながらその場に立っていた。
「……ほんとにきてくれたんですね、天海先輩」
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「可愛い後輩の旅立ちだもん。見送るに決まってるよ」
「ありがとうございます」
初めて会った時と何も変わらない温かな声に、懐かしさを感じつい笑みがこぼれる。
「……ほんとに行くんだね。ロンドン」
「ええ。決めたこと、ですから」
わたしには、二人の憧れがいる。
一人は天海春香、わたしがアイドルになるきっかけを作った人。
もう一人は如月千早、わたしが歌を歌うきっかけを作った人。
かつて千早さんがニューヨークへ行ったように、わたしもこれから、ロンドンで本場の音楽を学んでくる。
「みんな忙しくて見送りに行けなくてごめんって言ってたけど……天海先輩が来てくれてよかったです」
作り笑いを浮かべながら、心配そうな表情の天海先輩にそう告げる。
もうあれから6年が経った。わたしはもう、ただ支えられるだけの14歳の子供じゃない。
「そっか……あっ、可奈ちゃんさ、髪伸びたよね」
「そうですね。向こうで短くしようかな」
正確には、切りに行く暇がないが正しいのだけれど。
「だったら、これ使って」
そう言って天海先輩は、自分の着けていたリボンを渡してきた。
「これでわたしはいつでも可奈ちゃんのそばにいるからね! あっ、でも、なにか困ったことがあったら絶対相談するんだよ! すぐに駆けつけるから!」
力強く訴え、そのままガバッとわたしを抱きしめてくる天海先輩。極度に密着したせいで心臓の鼓動まで伝わってくる。
まるで、鼓動を通して、春香ちゃんのアイドルとしての魂を分け与えられているようだった。
「うん……うんっ……ありがとう、春香ちゃん……」
涙を流しながら春香ちゃんに感謝の言葉を告げる。
天海先輩、天海先輩、わたしの大好きな先輩。
先輩に出会えて、本当に良かった。
わたしは今日から変わります。
外国だろうとなんだろうと必ず春香ちゃんの耳に私の名前を届けてみせます。
そう今日はわたしの誕生日。
新しいわたしが、ここから始まる。
終わり!
普通に一日遅れて申し訳なさしかない
誕生日おめでとう可奈!
いつか可奈が憧れられる立場になることを祈って書きました
本当におめでとう!
乙!はるかなもいいな
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