輪廻転生の環の外側に落ちた卵(29)
人は竜を求め
竜、これに従いて
共に滅ぶべし
・初めて
・短い
・ステマ
◆◆◆◆◆◆◆◆
灰竜「おなか、すいた」
少年「待って、干しミジンコをあげるよ」
灰竜「かたい、おいしくない」
少年「我慢して、きっともう少しだよ」
灰竜「うー、がまんー」
少年「おそば屋さんがあったらなにか分けてもらおうね」
灰竜「むぐ!たまご、コロッケ、おにぎり!」
少年「あはは、前に食べたのがずいぶん気に入ったんだね」
灰竜「はやく、いこう!もう、がまん、できない!」
少年「待ってよ、走ると危ないよー!」
◆◆◆◆◆◆◆
少女「……?どうしたの?疲れたの?」
白竜「あらら?ごめんなさいご主人さま。眠ってしまっていたようです」
少女「仕方ないよ、あんなに元気な子どもたちを見てるのは大変だもの」
白竜「うふふ、けれどそれがかわいいんですよね、ご主人さま」
少女「そうだね、こんなにちっちゃいのに本当に竜なんだもの」
白竜「仔竜が育つのはあっという間です、すぐに私よりも大きい立派な竜に育ちますよ」
少女「楽しみだね」
白竜「そうですね、ふふ」
少女「よーし、今日はご馳走だ!とっておきのくろぶたを使うよ!」
白竜(夢を見ていた気がします。それはなんだか大変な、けれどとても楽しい夢でした)
サンサーラナーガか?
◆◆◆◆◆◆
灰竜「むはー!たべた!まんぞく!」
少年「一杯食べたね、お店の人も苦笑いだったよ」
灰竜「うまいもの、いくらでもたべられる!すき!それに……」
少年「いつも何でも食べるじゃん、キミは……ん?なに?」
灰竜「“みんなで食べると美味しい”んだ!おれしってる!」
少年「みんなって、僕とキミしかいないよ」
灰竜「……おれ、しってる!みどり、あか、みゅーん!のやつ!」
少年「もう、なに言ってるのかわからないや」
灰竜「たび、たのしい!うまいもの、へんなとこ、へんなやつ!」
少年「にぎやかだなあ、でもその方が楽しいよね。一人じゃ寂しかったよ」
◆◆◆◆◆
女性「……なあ、お前はいつもそうだが、退屈ではないのか?」
黒竜「…………」
女性「お前、喋れるんだろう?私は知っているぞ」
黒竜「…………」
女性「……そんなに私のことが気に入らないのか?」
黒竜「…………!」
女性「いや、冗談だ、済まない。悪かったからそう睨まないでくれ」
黒竜「…………」
女性「大丈夫だ、私はお前のことを本当に大切に思っている。そしてお前が私のことを大切に思ってくれていることもよく知っている」
黒竜「…………」
女性「だからな、その、もう少し打ち解けられないかと思っていてな」
黒竜「…………」
女性「……うーん、まだ駄目なのか。まあいい。急ぐ旅ではあるが先は長い。これからゆっくりと親交を深めていけば良いさ」
黒竜(…………)
◆◆◆◆
灰竜「なあなあ、なあなあ、つぎはどんなところだ?みずみずか?ごつごつか?」
少年「もう、そんなに急かさないでよ。どこにいくのか決めてないんだから」
灰竜「じゃあつぎはたかいところがいい!たかいところだ!」
少年「えー、高いところ?山とか?」
灰竜「おしろとか、かいだんとかだ!きれいなところもあるとこ!」
少年「うーん、キミたまによくわからないこと言うよね」
灰竜「きらきら、たのしい!かぜ、ぶわぁーっと!おそばやいっぱい!」
少年「なんでおそば屋さんなのさ?結局食べたいだけじゃないの」
灰竜「もういちど、みたい!きれい、たのしい、ずっとうえのほう!」
少年「まだ食べたいって?食い意地張ってるんだから。上の方ってなんなのさ?」
灰竜「うえ!ろーか!はちばん!」
少年「やっぱりわからない。……でも、まあいいや。やることもない旅だものね」
◆◆◆
女性「なあ、いい加減返事くらいしてくれないか?寂しいぞ」
黒竜「……」
女性「せめて一言くらいなにか……そうだ、私の名前くらい呼んでくれてもいいんじゃあないか」
黒竜「……」
女性「全く、愛想のない……誰に似たんだ、誰に」
黒竜「……」
女性「なあ、笑ってくれよ。友達がいないのはお前に似たのかもなって」
黒竜「……」
女性「喋らなくたっていい、せめて反応してくれよ、なあ……」
黒竜「……」
女性「……どうして、お前は、動かないんだ?頼むよ、教えてくれよ、なあ!」
黒竜「……」
女性「私たちの旅は、もう終わりなのか?こんな結末なのか?
最初からこうなるのが分かってたとでも言うのか?なあ!」
◆◆
灰竜「いきどまりか?いちばんうえ?やった!」
少年「でも、ほんとうに何もないなあ。なにか用があったの?」
灰竜「まえはあった!あむー!ぱりー!たまごのからー!」
少年「あ!あまり遠くまで行かないでよー!」
??「もし、少年。あの竜は君の?」
少年「はい、僕の友達です!」
??「……友達?そうなのか……」
少年「?どうしましたか?そんなに顔を隠して」
??「いやな、不意に可笑しくなってな、済まない」
少年(よくわからない人だなあ)
??「……何故か君にこれを渡さなければいけない気がした。持っていってくれ」
少年「これは、笛?二本もですか?」
??「白い笛と、黒い笛。二匹分だ」
少年「……せっかくですけど、これは」
??「いや、それはそういう道具じゃない。言うなれば、絆か」
少年「……旅の思い出、ですか?」
??「そうだ。……こっちのヘルメットは要らないな?」
少年「ええ、もう必要ないと思いますよ」
??「それじゃあ、さよならだ。ありがとう、感謝している」
少年「……また、会えるといいですね」
??「これで竜使いの旅は終わり。これからは、共に歩む道を選んで欲しい」
??「人は竜を求め、竜、これに従いて共に滅ぶべし。
滅びののちの新生、輪廻の輪より外れた一つの世界。
人が竜を求め、竜もこれに応え共に歩むべし。そんな世界もいいんじゃないかな?」
◆
女性「なあ聞いてくれ、私は考えたんだ」
女性「皆は黒い竜が災いだと、危険な存在だと言った。お前のことは殺してしまえと」
女性「けれど私はそうは思わなかった。思いたくなかった」
女性「その結果、今こうしていることには何一つ後悔はないよ」
女性「彼女の白い竜、あれはきっとお前と似たようなものなんだ」
女性「お前がここを目指したように、きっとあの竜もここに導かれていた」
女性「私たちの知らない、大切ななにかを宿しているんだろう?」
女性「……私もきっと、彼女をここに導くために」
女性「そして、お前を導くために旅をしてきたんだ」
女性「今なら分かる気がするんだ、とても大切なことなんだって」
~♪
女性「こうして笛の音を聞かせるのもこれが最後になるんだろうな」
女性「彼女たちが来た、行かなければ」
女性「…………」
女性「なにかが、始まるんだ」
女性「大きななにか、すべてを別のものにしてしまうようななにかが」
女性「さよなら、私の竜」
女性「次は……もし次があるならば」
女性「そんなに真っ黒じゃなくて、それこそもう少し白混じりになるといいな」
女性「吉凶の白黒竜、なんてどうだ?」
女性「その方が、楽しそうだろう?前にそんな夢を見たんだ」
◆◆◆◆◆◆◆◆
おそらくこれで終わり
>>5
が全て
乙、懐かしかった
……
ここから蛇足
蛇に足を付けても竜にはならない。
一、常に竜と共にあれ
灰竜「ぎゃっぎゃっ」
少年「君はいつも元気そうだね」
灰竜「そうみえるか?」
少年「そうとしか見えないけど」
灰竜「そうかー!ぎゃっぎゃっ」
少年「なんでだろうね」
灰竜「ふふーん」
一、正しき者より盗むなかれ
灰竜「がつがつむしゃむしゃ」
少年「ご飯の時はまだおとなしい方、かなあ」
灰竜「たべないのか?」
少年「食べるよ、食べるから欲しそうにこっち見るのやめてよ」
灰竜「つまんなーい、そっちもたべたいぞ」
少年「君のはそっち、僕のはこっち。分けるのはお店の人によくないよ」
灰竜「むぐぐー」
少年「それに丼ものなんて分けるもんじゃないよ」
店員(団体向けメニュー……ありかな)
一、無益に殺すなかれ
灰竜「やっつけたー!おれつよい!」
少年「三羽いるから二羽はご飯で一羽はお店に持っていくかな」
灰竜「ごっはん、ごっはん」
少年「ジョギングシューズは後で商人さんに引き取ってもらおう」
灰竜「まだかー?ごはんまだか?」
少年「やっつけちゃったなら出来るだけの事はしないとね」
灰竜「おれやさしい!おそってくるやつしかやっつけない!」
少年「そうだよ、相手も生き物だものね」
灰竜「あとおいしくないやつもやっつけない!」
少年「……はあ」
一、やられたらやりかえせ
灰竜「ぎゃっはー!どかーん!」
少年「痛い!やめて!」
灰竜「ぎゃぎゃぎゃ!どーん!どーん!」
少年「もう怒ったぞ!こいつめ!」
灰竜「おこったー!ぎゃー!」
少年「ご飯抜き」
灰竜「ごめんなさい」
一、やられる前にやれ
少年「いやー町は久しぶりだなー」
商人「ちょっとお兄さん、見てってくんな」
少年「おっと、お店やさん?ちょうどよかった」
商人「このマダラぶたは普通のぶたの二倍の価値があるんですよ」
少年「ぶたは間に合ってるので、こっちのえものを引き取ってくださいな」
商人「そう言わずにぶたをですね」
少年「これとこれとこれとこれと、このくらい!ざっとこんなもので」
商人「げっ、こんなに引き取ったらこっちが吊りますよ?」
少年「買ってくれたらぶたも考えるけどね、じゃあ他の店に行きますか」
商人「ぐぬぬ」
灰竜「くろいぞ」
少年「ぶたが?」
一、一日一善
灰竜「まるいやつだ!」
少年「ストゥーパだよ」
灰竜「まるいやつ!ぺちぺち!」
少年「まったく、誰がストゥーパを見たら取り合えず叩け!なんて言ったんだろ?」
灰竜「ぼーん!ぺちぺち!いろかわれー!」
少年「あらら、大分汚れてる、少し磨いていこうか」
灰竜「こっちー!まるいやついっぱいだ!」
少年「げ」
一、常識を疑ってみよ
少年「ねえ、君って本当にオス竜なの?」
灰竜「ぐげ」
少年「そうにしか見えないし性格もそんな感じだけどさ」
灰竜「たいあたりー!」
少年「痛い!」
灰竜「ふーんだ」
一、気を付けよ、甘い言葉と暗い道
少年「すっかり夜中だなあ、町は見つからないし」
灰竜「あっちだ!」
少年「分かるの?」
灰竜「わからない!」
少年「ああ、そう」
灰竜「おれをしんじろー!」
少年「分からないって自分で言ったじゃないか、夜道は危ないんだよ?」
灰竜「いいからいくのー!」
少年「先にご飯にしない?」
灰竜「ごちそうさま!おやすみ!」
少年「やれやれ」
一、小さな予算で大きな仕事
少年「わんこそば大会?」
灰竜「そーばー!そばたべるぞー!」
少年「この参加費なら……十杯で元が取れそうだ、ちょうどいいかな」
灰竜「おっかわり!おっかわり!」
灰竜「たべたー!」
少年「また出たいな、景品も貰って大分節約になったし」
店員(次からは参加資格に【人間】って書いとこう)
一、あがめよ讃えよ汝の師匠
少年「師匠って?」
灰竜「だいじなひとか?」
少年「いたかな、そんな人」
灰竜「おまえ!」
少年「はいはい、君はそうやって臆面もなく照れることを言うんだから」
「ご主人とうちの子達ですね」
「あ、一応あの人、師匠ってことになってなかったかな?」
「大切なことを教えてくれた、という意味ではこの世界か。……勿論、お前も大切だぞ?」
「…………」
真の本当の終わり
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