汗が頬をつたり、一滴の雫となって地面に落ちる。どうやら君は緊張しているようだ。
君は鬱蒼した森の中、草陰に身を隠して愛銃を背負い、手には閃光玉をいつでも投げられるように準備し、獲物をいまかいまかと待ち構えていた。
…………ウォウウォウ!
遠くから聞こえてきた生き物の鳴き声に君は身を堅くして見つからないよう息を潜めた。
だっだっだっ……
青色のウロコを持った二足歩行の生き物が数匹こちらへ近づいてくる。
君はそっと草陰から顔を出し、お目当ての獲物がきたのか確かめる。
鋭い爪に牙、青色のウロコ……間違いない、ランポスだ。ランポス達はしきりに周囲を見回しているがどうやらまだこちらには気づいていない。
君が見つからないようにランポス達を注視していると、その数匹のランポスにやや遅れて足音が近づいてきた。
……どっどっどっど
ランポスに比べ重い足音。赤く長い鋭い爪。大きく発達したトサカ。そして何よりもその体はランポス達に比べ一周り大きい。
間違いない、あれがランポス達の群れをまとめる首領、今回の獲物ドスランポスだ。
君は不意をつくために素早く準備していた閃光玉を投げる!
途端にあたりは眩い光で包み込まれた!
ぎゃおう!ぎゃおう!?
凄まじい眩しさで視界をやられてしまったドスランポス達は驚きと戸惑いと盲目で混乱している!
事前に目をつむっていたことで光を直接見ずにすんだ君は素早く愛用のライトボウガンを構えた!
こちら一人、まさしく多勢に無勢。敵が混乱している今の状況でどれだけ動けるかがドスランポスの討伐に関わってくるだろう!
君ははやる気持ちを抑えつつ、ライトボウガンを構え、一匹のランポスに狙いを定めて……
たぁーん
撃った。
たぁーん(笑)
撃たれたランポスはまだ死んではいないようだった。それを想定していた君は続けて次弾は放つ。
たぁーん
これでこのランポスは確実にその命を失っただろう。
倒した感慨にふけることもなく君は次のランポスに狙いをつける。それはまさに冷徹なスナイパーを連想させるが別にクールな性格というわけでもなく、ただそんなことをしている暇や余裕がないだけである。
構えて、狙って、撃つ。構えて、狙って、撃つ。構えて、狙って、撃つ。構えて、狙って、撃つ。
焦りにより弾を数発外してしまったが君はただそれだけを追われるように繰り返していた。
モンスターの回復力は凄まじい。強い光によって視界が奪われた程度では大した足止めにはならないのだ。
そして最後のランポスを倒し、残るのはドスランポスだけ。思った以上に快調なペースでランポス討伐が進んだことに君が思わず口を緩めてしまった時に君は、こちらをにらみつけるドスランポスと視線が合った!
相手の目は明らかにこちらを見据えている。視界は既に回復してしまったのであろう。部下たちがやられたのが大変トサカにきたようで相手はその大きな爪をこちらに向けながら吠え、襲いかかってきた!
だがもう既に数は1対1の互角。数の有利などどこにも存在しない。
君はライトボウガンに通常弾をリロードし、素早くその銃口をドスランポスへと向けた!
「どうやらドスランポスの討伐を済ませてきたようだね。お疲れ様」
気さくな青年の労いの言葉に君はただ首を上下する。
返事をするのが億劫なだけで別に口下手というわけではない。
「あっはっはっはっ! 相変わらず無口だねぇ君は、めったなことでは喋らない。僕には別にそれでいいけど」
彼の深く考えない性格は君には好ましいと思えた。
「それにしてもどうだいこの村は? 気に入ってくれたかな」
その質問には君は首を上下することで答える。少し汗をかいているのは気のせいだろう、きっと。別に会話で緊張しているわけではない。
「そうかい、それはよかったよ。何せ君は何も知らずにここに来たからね」
君はその言葉で自分をここに置いていった師匠のことを思い出した。
「あ、お前ここの村付きハンターな」そう書かれた手紙だけを残して自分をここに置いていった師匠を思い出して君は苦笑いの表情を浮かべる。
「怖っ……じゃなくて、破天荒なお師匠さんだね」
自分の顔の怖さは自覚している。自覚しているが怖がられて悲しくないわけではない。
「あ、いやごめんねーあははは。……それにしても大した怪我もせず毎回依頼を成功してくれるから、こちらも大助かりだよ」
……褒められて悪い気はしない。我ながら単純だとは思うが。
師匠は基本に忠実にじっくりと狩りの知識を教えてくれた。だからこそ今の自分があるのだろう。
……口下手な自分に比べてもとても、とてもとてもお喋りで、いやでも覚えたような気がしないでもない。
「だけどさ、口出しをするのもなんだけどそのライトボウガンはまだ使い続ける気なのかい? いや、村長でもハンターが使う武器に口出しするのはあんまりよくないことだとわかっているんだけどね」
君は青年あらため村長が指差したライトボウガンを手に持った。
このボウガンは師匠から初めてもらった武器であり、今まで愛用してきたのだが……
「それって数売りのライトボウガンだよね? 大切にしているのはわかるんだけどそろそろ換え時じゃないかな」
愛用している、ということは長い間使っているということでもある。
ハンター見習いだった時から使ってきたそれは確かに少々痛んできていた。
だがそれは君にとって大切な物なのだ。たとえ撃った時の音が気の抜けるような音だとしても。
破天荒の意味勘違いしてるかも
>>3
お前のせいだどうしてくれる?
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