”世界のガイト”こと臨海女子・辻垣内 智葉さんの探訪記。
長野・奈良に続いて、今回もどこかの田舎でロケをしたようです。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
ー過去の作品ー
辻垣内 智葉「田舎でツモろう?」
→長野・清澄編
辻垣内 智葉「田舎でツモろう?」2本場
→奈良・阿知賀編
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前略 母上様
私は今、東北某所に来ています。
こちらは春だというのに少し肌寒く、東京とは違って空気がとても澄んでいます。
なにやら素敵な出会いがありそうな、そんな予感がしています。
明日には東京に帰ります。それまでどうか、お元気で…
岩手某所
智葉「…なんにもない所だな。そして人が全然いない」
智葉「まぁいい…とにかく歩いて人と出会う事が先決か」REC
智葉「みなさんこんばんは。”田舎でツモろう”のコーナーです。」
智葉「今回も私、臨海女子麻雀部・辻垣内智葉が、東北某所の素敵な田舎町へやってきました」
智葉「しかし残念ながら、まったく人がいません。しばらく散策してみましょう」
(1時間くらい周辺を散策する)
智葉「…ん? みなさん、ついに第一町人発見です。さっそく話を伺ってみましょう」
豊音「はぁー…買い出し疲れたよー。早く帰りたいなー」
『そこの方! 少しよろしいか!』
豊音「えっ? 誰かなー?」クルッ
智葉「突然すまない、臨海女子麻雀部・辻垣内智葉という者だが。話を聞かせてもらってもいいかな?」
(カンペ:私の質問には全て”はい”で答えろ)
豊音「えっ!? はい…って臨海女子の辻垣内さん!?」
智葉「”田舎でツモろう”という番組で来たのだが、君は麻雀が出来るのかな?」
豊音「は、はいっ!(うそー!なんで辻垣内さんがこんな所に!?)」
智葉「君の学校はここから近いのか? 学校名と名前を教えてくれ」
豊音「はい!宮守女子の姉帯豊音だよー」
智葉「宮守女子…(聞いたことがないな…) 姉帯さん、私を君の学校に連れていってくれないか?」
豊音「え? えーっ!? いやいや、それは困る…」
智葉(カンペを主張し、睨み)
豊音「うー…はい」
智葉「すまないな、それでは案内してもらおうか?」
豊音「は、はい!」
智葉「その荷物…重いだろう? 一つ持ってやろうか?」
豊音「へっ? いやいや! 辻垣内さんにそんな! 荷物持ちなんてさせたくないよー」
智葉「そうか。 豊音、宮守まではここから近いのか?」
豊音「えっと…歩いてもそんなにかからないかなー?」
智葉「そうか…」
豊音「えと…臨海女子ってあの臨海女子だよねー? 東東京の…」
智葉「あぁ、その通りだ」
豊音「あのっ!辻垣内さん!」
智葉「智葉でいい。なんだ?」
豊音「あ…智葉さん、そのカメラって回ってるのかなー?」
智葉「あぁ、絶賛録画中だ」
豊音「えーっ!?」
宮守女子・部室
ガチャ
豊音「みんなー、今帰ったけどー」
塞「おかえり豊音」
エイ「トヨネ!」
白望「ダル…おつかれ」
豊音「あれー?胡桃ちゃんはー?」
塞「トシさんと何処か出かけたよ」
豊音「そっかー、残念。」
白望「なにが残念なの…」
豊音「へへへ、今日はなんと!スペシャルゲストがいるんだよー!」
エイ「Special!?」
塞「ゲストですって!?」
白望「ダル…」
豊音「よーし、それじゃあ呼ぶからねー? どうぞー!」
ガチャ
智葉「東京から来た、臨海女子の辻垣内 智葉だ。よろしく」
白望「臨海…」
塞「えっ!? 臨海女子の…ってウソ!本物!?」
エイ「Surprise!!」
豊音「”田舎でツモろう”っていう番組で、岩手に来たんだってー」
智葉「説明ありがとう。早速だが…お手合わせ願えるか?」
塞「あっはい…って私達と!?」
白望「ダル…なんでまた」
エイ「マージャン、ヤル!」
豊音「わーい!私もやるよー」
智葉「助かる。それではまずはカメラのセッティングを…」
智葉「………」カチャカチャ
塞「ずいぶん熱心にセットしているわね…」
智葉「…これで良し。 待たせてすまないな、それでは始めようか」
豊音「わーい! 楽しみだよー!」
塞「うーん…ちょい緊張」
エイ「ゼッタイ負ケナイ!」
智葉「その心意気やよし。私も全力で行かせてもらおう」
カタ…カタカタカタカタ…
パリン!!
塞「…! モノクルがっ!」
白望「…割れた」
智葉「………」ゴゴゴゴゴ…
智葉「ツモ。2000・4000」パラッ
白望「…終局だね」
塞「うへー…辻垣内さん強過ぎ!」
エイ「ウー…クヤシイー!」
豊音「ほんと強過ぎだよー!」
智葉「全力でいかせてもらったが…ところどころで苦戦はしたな」
塞「これが全国レベルかぁー…ちょっと凹んだわ」
智葉「県予選までまだ時間はある。まだまだ強くなれるさ」
白望「ダル…この後どうするの?」
智葉「あぁ、今夜泊まる所を探さなければいけないんだ」
豊音「うちで良かったらいいですよー! 少し狭いけどー…」
塞「そっか、豊音は一人暮らしだもんね!」
白望「豊音…がんばって」
エイ「トヨネ! サスガ!」
智葉「いいのか? それなら助かる」
豊音「大丈夫だよー! 智葉さんに東京の話、いろいろ聞きたいんだー」
智葉「あぁ、聞きたい事があれば何でも聞いてくれ」
豊音「うん! それじゃあみんなー、私は先に上がるよー」ガチャ
智葉「世話になった、それではまたいつか何処かで会おう」
バタン
豊音の家
豊音「さぁ、着いたよー」ガチャ
智葉「お邪魔します…本当に一人暮らしなんだな」
豊音「そうだよー? お茶でもいれるからゆっくりしててよー」
智葉「あぁ、すまない」
リビング
智葉(この部屋、生活感がないというか…物が無さ過ぎる)
豊音「おまたせー。 お茶持ってきたよー」
智葉「あぁ、いただこう」
豊音「冷たいお茶の方がよかったかなー?」
智葉「いや、結構。こちらは少し肌寒くてな」
豊音「ふーん、東京は暑いのー?」
智葉「あぁ、コンクリートばかりだからな。夏になると最悪だ」
豊音「へー、こっちは夏でも割と涼しいかなー?」
智葉「羨ましい限りだ」
豊音「東京かぁ…私はね、東京の人が羨ましいんだー」
智葉「…? 理由を聞こうか」
豊音「東京って、すごく夢があるっていうかー…自由な感じがするんだよねー!」
豊音「遊ぶ所も、食べる所もたくさんあるでしょー? どこへ行くにも不便がなさそうだしー」
智葉「なるほどな。ただし、いいことばかりじゃないぞ?」
豊音「そ、そうなのー?」
智葉「人気のスポットにはいつも人混み、有名店には長蛇の列、道路は大渋滞、電車はすし詰め状態…」
豊音「えー…なんか大変そうー」
智葉「しかしこれが現実だ。東京は人も車も多すぎるからな」
豊音「ふーん…なるほどー」
智葉「豊音、私も一つ聞いてもいいか?」
豊音「うん、何かなー?」
智葉「豊音はどうして一人暮らしをしているんだ?」
豊音「あー…うん。 それはね、私の住んでた村が関係してるんだー」
智葉「豊音の住んでいた村…」
豊音「私の住んでた村はね、ここからずっと先の山奥にあるんだけどー」
豊音「とにかく、村の掟とかしきたりが厳しくてー…宮守に編入するまでほとんど村から出たことがなかったんだー」
智葉「…そうだったのか」
豊音「それでねー、熊倉先生が私を村から出してくれて…通学のために今はここで一人暮らしなんだー」
智葉「そうか。一人暮らしで大変じゃないか?」
豊音「うーん、家事とかは大変だけどー…宮守の皆と毎日麻雀ができて、すっごく楽しいよー!」
智葉「それは良かった。豊音、仲間を大切にな」
豊音「うん!」
豊音「あっ! もうこんな時間だよー! 夕食の支度しなきゃ」
智葉「時間が経つのはあっという間だな」
豊音「なにか食べたいものあるー?好き嫌いとかもあれば…」
智葉「好き嫌いは特にないな。何を作るかは豊音に任せよう」
豊音「了解だよー。智葉さんはゆっくり寛いでいてねー」
智葉「手伝える事があったら言ってくれ」
豊音「ありがとうー! でもキッチンは狭いから…また何かあれば!」
智葉「あぁ、わかった」
豊音「おまたせー!」
智葉「早かったな。これは…冷麺か?」
豊音「岩手といえば、盛岡冷麺かなー? 冷めないうちにどうぞー」
智葉「いや、もう既に冷めているんだが…」
豊音「わわっ! そうでした…じゃあ冷たいうちにどうぞー」
智葉「いただきます」
豊音「いただきまーす!」
智葉「…うまいな。」
豊音「ほんとにー?うれしいよー」
智葉「冷麺を食べる機会は殆どないが、ここまで美味いものだとは」
豊音「それは良かったよー! 私も誰かと一緒に夕食なんて久しぶりだからうれしいよー」
智葉「豊音、終わったぞ」
豊音「ありがとうー! 洗い物頼んじゃってごめんねー」
智葉「なに、このくらいお安い御用だ。」フキフキ
豊音「助かるよー! そういえばお風呂なんだけどー」
智葉「風呂? 風呂がどうした?」
豊音「この近くにねー、地元の人も滅多にこない温泉があるんだー。もしよければ、一緒にどうかなー?とかとか…」
智葉「温泉か…いいな。豊音、案内してくれ」
豊音「やったー! 支度するからちょっと待っててねー!」
智葉「あぁ…私も支度するか」
温泉
智葉「私たちしかいないな…」
豊音「ねー! 貸切状態だよー」
智葉「ふぅ…豊音はここにはよく来るのか?」
豊音「んー、実は今日が初めてなんだー! ずっと来たかったんだけどねー」
智葉「そうだったのか。いいところに連れてきてもらって感謝する」
豊音「私こそ感謝だよー! あ、智葉さん! 背中流してあげるよー」
智葉「いいのか? それじゃあ頼む」
豊音「痛かったら言ってねー?」
智葉「あぁ」
豊音(…智葉さんの背中、すっごく小さいなー。話し方も素っ気ないけど、頼りになるんだよねー)
豊音(対局した時はすごいプレッシャーだったけど…こう見ると普通の女の子なんだねー)
豊音「はい、終わったよー」
智葉「ありがとう。豊音も流してやるから、背中向けて」
豊音「わわ! ありがとうー! それじゃあ…」クルッ
智葉「………」ゴシゴシゴシ
豊音「いたた、ちょっと痛いかなー?なんて…」
智葉「…我慢しろ」ゴシゴシゴシ
豊音「えー!?」
帰り道
豊音「はー、サッパリしたねー!」
智葉「あぁ、いいお湯だったな」
豊音「うん! はぁ…夜風が気持ちいいねー」
智葉「そうだな。それに星もよく見える…とても綺麗だ」
豊音「東京は星が見えないって本当なのかなー?」
智葉「あぁ。東京は高い建物も多いし、夜でも街が明るいからな」
豊音「そっかー! 東京に行ったら、この景色も見れないんだー…」
豊音の家
豊音「もうこんな時間だー。そろそろ寝ようかなー?」
智葉「そうだな。布団まで用意してもらってすまないな」
豊音「全然大丈夫だよー。電気消すねー?」
智葉「あぁ。 おやすみ」
豊音「おやすみー」
豊音「…智葉さん? 起きてるー?」
智葉「…どうした?」
豊音「私ね、今日は凄く楽しかったんだー」
智葉「………」
豊音「でもでも…智葉さんと対局してね、少し怖くなったんだー」
智葉「………」
豊音「宮守のみんなで全国大会に行って、優勝したい…その気持ちで頑張って来たけどー」
豊音「力の差、っていうのかな? もし全国大会で臨海女子と当たったら勝てないかもー…って思っちゃったんだ」
智葉「…じゃあ麻雀をやめろ」
豊音「えっ!?」
智葉「何を言い出すかと思えば世迷言を…麻雀をやめればその悩みもなくなるだろ」
豊音「智葉さん…冷たいよー」
智葉「お前は私に何を期待した? 頑張れ、諦めるな、お前たちなら大丈夫だ」
智葉「そんな生ぬるい、慰めの言葉でも欲しかったか?豊音」
豊音「うっ…ぐすっ…」泣
智葉「山奥の村から下界に降り、ようやくお前の夢が始まったんじゃないのか?」
豊音「……!!」
智葉「………」
豊音「うぅ…ぐすっ…うっ」泣
智葉「…ある少女は”姉にもう一度会うため”、またある少女は”別れた友と会うために”、全国出場を目指している」
豊音「えっ…?」
智葉「お前の夢は、目標はなんだ?もう一度それを見つめなおせ」
豊音「わたしの…夢…」
智葉「私はもう寝る。おやすみ」
豊音「うん…おやすみー…」
翌朝・近くの駅前
智葉「送ってもらってすまないな、豊音」
豊音「ううん、ちゃんと見送りたかったからー…」
智葉「それに朝食まで持たせてもらって、ありがとう」
豊音「うん! おにぎり作ったんだー! 帰りの電車で食べてねー」
智葉「あぁ。それじゃあ私はそろそろ行くよ」
豊音「あっ!智葉さん!ひとつお願いがー…」
智葉「なんだ?」
豊音「サイン…書いて欲しいかなー、なんて」
智葉「あぁ…断る」
豊音「えーっ!? ダメかなぁー…あ、サインは書かない主義とか
智葉「全国大会に来たら、その時は書いてやる」
豊音「えっ…?」
智葉「全国出場の切符、色紙とペンを忘れるなよ」フッ
豊音「…うん!」ニコ
新幹線の車内
智葉「腹減ったな…豊音の作ってくれた朝食でも食べるか」ファサ
智葉「ん? これは…手紙?」
智葉へ
昨日は私たちの所へ来てくれてありがとう。
きっかけは何でも、智葉と一緒に過ごせてすごく楽しかったよー!
それと、昨日は泣いちゃってごめんなさい。
あの後、私の夢についてもう一度考えてみたんだー。
私の夢は、宮守のみんなと全国大会で優勝すること!
もちろん、臨海女子にだって勝つつもりだよー?
だから…全国大会で待っててね!
P.S.
私たち、友達になれるかな?
そうなれたらすごく嬉しいよー!
智葉「…豊音」モグモグ
智葉「…美味い。東京で待っているぞ、友よ」
臨海女子・部室
智葉「いま戻った」ガチャ
メグ「オカエリナサイー! 岩手ハドウデシタカ?」
智葉「あぁ。温泉がよかった」
ネリー「サトハー! お土産は!?」
智葉「は?土産なんてないぞ」
ネリー「えーっ!? サトハのケチー!」
智葉「ケチで結構。お前たち、早く部活を始めるぞ」
メグ「サトハはタフデスネー!」
智葉「県予選まで時間がないんだ。それに…」
ネリー「それに? なになにー?」
智葉「…なんでもない。ほら、さっさと始めるぞ!」
カン!
ーおまけー
インターハイ・個人戦2日目
福与「さぁーやってまいりました!インターハイ個人戦2日目! 本日よりシード選手が登場します!」
福与「個人戦D卓! 昨年度個人戦3位、臨海女子・辻垣内選手の入場でーす!」
智葉「………」ガチャ
『智葉お姉ちゃん!』
『智葉さーん!』
『智葉ー!待ってたよー!』
智葉「これは偶然か、はたまた奇跡か…」フッ
智葉「見せてやろう…都会っ子(シティーガール)の実力を!」
もいっこカン!
1回目と2回目のも読んできた乙乙
カンペは事前に用意されてたのかガイトさんが自分で書いたのかが気になる
>>28
ありがとうございます。
カンペは旅に出る前にガイトさんが用意しているもので、使い回しです。
乙
素晴らしい
乙です
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