「提督……ただいま戻りました」
いつもの遠征任務から戻ってきた第二艦隊の様子がおかしい。
「何かあったのか?」
泣きそうな顔をした電や雷。うつむき加減の叢雲。
天龍はいつも通り振る舞おうとしているようだが、どこか無理をしている感がある。
小破被害すらないことはわかっている。例えほんの少しでも損傷があれば、すでに報告は為されているはずだ。
遠征終了後は損傷有無の報告を必ず一番にするように厳命してあり、それを違えるような彼女たちではない。
「……他の鎮守府の艦娘に会いました」
無言で提督は続きを促す。
そして、次の叢雲の言葉に提督は我が耳を疑った。
叢雲の告げた艦名と、その所属する鎮守府の名は……
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「叢雲、その名前、間違いはないのか」
「はい。間違いありません」
つい先日、深海棲艦の猛攻によって壊滅した鎮守府があった。
叢雲はその鎮守府に所属していた艦娘に遭遇したというのだ。
「生き残りがいたのか」
そこで提督は気づく。
もし叢雲たちが生存艦娘を保護しているのなら、すでに報告されているはずだと。
いや、待て。
叢雲は言ったのだ。
「他の鎮守府の艦娘に会いました」と。
保護したとは言っていない。ただ、会っただけ。
つまり、保護はしていない。
ならば、それなりの理由があるはずだと提督は考える。
怠慢やつまらない意地で友軍を見捨てるような娘たちではない。それは自信を持って言えることだ。
だから、叢雲たちの返事を待たずに続ける。
「理由は、話せるのか?」
提督の言葉に、叢雲たちは安堵していた。
俗に以心伝心とは言うが、この提督に関しては本当に文字通りだ。いつだって、自分たちの気持ちをくみ取ってくれてい
る。
だからこそ、直接には話しにくいことがある。
「私たちが話すよりも」
ごとり、と叢雲は艤装から外した航海記録機を置いた。
同じく天龍、雷、電も。
しかし、航海記録機の総数は五。
「一つ多いようだが?」
「出会った艦娘の記録機です」
「預け……いや、託されたか」
「私たちが説明するよりも、これらを直接見ていただいた方がいいかもしれません」
「わかった。君たちは補給点検後、追って指示があるまで自室で待機しているように」
「はい」
叢雲たちがドックへ向かうのを見届け、提督は記録機を並べた。
艦隊の四つの記録機は連動設定されていて、解析すれば状況を多角的に再現することが出来る。
残る一つの記録機は当然連動されていないが、単艦で行動していた記録としては十分なものだ。
提督は、デスクの上の電話機に手を伸ばす。
「私だ。記録機の解析を頼みたい、準備してくれ」
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航海記録、帝歴×××年○○月△△日
そろそろ燃料も底が見えてきた。
なんとか、鎮守府までは保つことが出来るはずだ。いや、保たせなければならない。
弾薬も、あと一斉射でなくなるだろう。今深海棲艦に遭遇したとして逃げ切れるかどうか……
……
……
意識が途絶えていた。
意識をはっきりさせるためにも、口述記録を続ける。
私たちの提督は最低だった。
最低の男だった。
彼にとって私たちは、代替可能な「力」であり、「女」だった。
戦果を挙げるためには、艦娘の犠牲がどれほどのものであろうと彼には関係なかった。
100の戦果を挙げるのなら、99の艦娘を犠牲にしたとしても1の戦果が残る。それが彼の基本の考えだ。
反発は必至だった。
反抗は皆無だった。
私たちは艦娘。言葉だけならいざ知らず、行動で提督に逆らうことなど不可能。
せいぜいが意見具申。それもまず確実に握りつぶされる。
そんなことはない、と言う艦娘もいる。演習で出会った他の鎮守府の艦娘の中にはそう言う者たちもいた。
彼女らが嘘をついているとは思いたくない。だから言い換えよう。
少なくとも、私たちの鎮守府では反抗など不可能だったと。
それでも、私たちの鎮守府はそこしかなかった。
私たちは戦った。
深海棲艦と戦い、遠征を繰り返し、修繕し、改修し、開発し、レベルを上げた。
そんな努力など、あの男の前では無意味だった。
修繕されない駆逐艦。
補給すら受けられない巡洋艦。
艦載機を載せることのない空母。
演習だけを延々と繰り返す戦艦。
そして、動くことすら難しくなった艦娘たちが前線に送られた。
敵の攻撃を散らすために、ただそれだけのために。
最後のご奉公として敵の喉笛に食らいつけと叱咤されながら、修繕もされず、片道燃料だけを入れた艦娘たちは鎮守府
を後にしたのだ。
私もその中の……
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叢雲、天龍、電、雷の四人は順調に遠征を終え、鎮守府への帰路を急いでいた。
この遠征を何度もこなしているという叢雲は、海流を利用した近道を三人に案内している。
「叢雲、この海路で本当にあってるのか?」
「天龍はこの遠征航路は初めて?」
「おう、今まではこっち方面の遠征には来てなかったからな」
「だったら、ここでは私の指示に従って。私が先任よ」
「へいへい、叢雲先任士官さまの命令に従います。聞いたな、電、雷」
「了解なのです」
「聞いたわ」
「よし、俺についてこい」
「だからアンタじゃなくて、私だって。なんでアンタが偉そうなの」
「あのな、叢雲。大事なこと忘れてないか?」
「なに?」
「俺、旗艦なんだが」
「あら、そうだった?」
「お前なぁ。一応、命令系統ってもんがあるだろ」
「龍田さんから言われてるのよ」
「何を」
「『天龍ちゃんをよろしくねぇ』って」
「……龍田が?」
「龍田さんが」
「なら、しゃーねえな」
「でしょ?」
「道案内は任せる」
「ええ、この電探で……」
言いかけた叢雲が顔をしかめ、電探の反応を確認する。
「かすかだけど、反応有り」
天龍は即座に艤装を展開、残る二人に指示を与える。
「全艦複縦陣にて艤装展開。電は三時方向、雷は九時方向を警戒」
「はいです」
「任せて!」
「待って、かなり弱い反応よ。しかも、深海棲艦じゃなくて艦娘」
「弱いって、遠いんじゃないのか?」
「いいえ、反応そのものが弱いのよ」
「あー、確かお前の電探って」
「ええ、単純に対物探査じゃなくて、生命反応を探査するタイプ」
だからこそ、探査対象が艦娘であるか深海棲艦であるかが判断できるのだ。
「つまり弱ってるってことか」
天龍は電の視線を感じ、うなずいた。
「救助に向かう。叢雲、詳しい座標を」
「いいの? 任務中よ?」
「はっ、友軍見捨てなきゃなんねえような極秘任務中じゃねえぞ、今は」
第一、と天龍は続けた。
「俺が見捨てるって言ったら、とたんに反乱起こして旗艦の座奪うだろ、おめえらは」
笑う天龍。電は雷と顔を見合わせニッコリと笑った。
「さすがは、天龍さんなのです」
「それでこそ、栄えある第二艦隊の旗艦ね」
「帰ったら、龍田さんと司令官にお願いして褒めてもらうのです」
二人のやりとりに慌てる天龍。
「待て、龍田はまあいいとして、なんでそこで提督が」
「顔が赤いわよ」
「叢雲ぉ!」
一瞬の緊張から転じて訪れた、敵ではないという安心感。それが一同の意識をやや弛緩させていた。
その弛緩は、数分後に再び緊張に取って代わられることとなる。
「……! どうしたんですか!」
誰よりも早く、見つけた艦娘に駆け寄る電。
電を追うように、同じく艦娘に駆け寄る雷。息をのみ、絶句する天龍と叢雲。
そこにいたのは、大破と呼ぶことすら躊躇われるような姿の艦娘だった。
ごく普通の艦船であれば確実に難破船、さらに言うならば幽霊船とまで呼ばれるのではないかと思われる姿。
人の形を持った物として表現するのならば、まさに幽鬼の姿がそこにあった。
「しっかりするのです!」
駆け寄った電は艦娘に手をさしのべる。
「一体何があったのですか!」
「……」
艦娘の腕が上がり、電の伸ばした手を払いのける。
「貴方!」
叫んだのは雷だ。
「……るな」
「なによ!」
「さわるな……!」
絞り出すような低い声に、電と雷は思わず下がる。
艦娘にもそれぞれの個性が有り、無論声質も違う。
基本的には女性の声。それも、美しい声であることが多い。声だけならばどこの女優かと思うほどの。
だが、今の声は違う。
例えるなら、自ら喉を潰したような声。確実に、平常の状態ではないとわかる声。
「おいっ!」
天龍が主砲を構え前に出る。叢雲はその場から動かず、周囲を電探で探っている。
「何の真似だ」
静かに尋ねる天龍。
電を振り払った艦娘の腕は、砲を構えていたのだ。
「ウチの駆逐がいきなり驚かしたことは謝る。が、いきなり砲を向けるとは穏やかじゃねえな」
「深海棲艦や所属不明艦ならまだしも、艦娘同士だろうが」
「……わたしのじゃまを……するな……」
「邪魔と言われてもな。そもそも、こっちはそっちが何をしてるかも知らねえんだ」
どろりと濁った目が天龍に向けられる。
……なんだよ、この目は。
天龍の知る限り、一番近いのは深海棲艦の目。だが、記憶のどこかに引っかかるものが……
「ちんじゅふに……かえる……」
「どこの鎮守府なんだ? その調子じゃ、無事に帰れるかどうかもわかんねえだろ」
「ちんじゅふ……」
艦娘が一つの座標を告げると、叢雲が手持ちの地図と照合する。
「俺たちは敵じゃない。それはわかるだろ」
天龍は説得を続けていた。
「明石がいるわけじゃねえから完全修理は無理だが、応急処置くらいならなんとかなるんだ」
(天龍)
叢雲からの通信が入る。直接接触しての通信のため外部に……正体不明の艦娘に聞かれる心配はない。
(座標照合したわ。確かに鎮守府に間違いない)
(連絡取れるか?)
(無理。正確には、かつて鎮守府であった場所、よ)
(なに?)
(深海棲艦の猛攻で全滅してる。所属艦娘、人員、妖精。生き残りは確認されていないわ)
(……おい、それじゃあ、こいつは……)
(幽霊、じゃないわよね)
(どう見ても実体はあるぞ。殺気だって立派に出してやがったしな)
(生き残り、かしら)
(だったら……保護……か……?)
(なに、歯切れ悪いわね、アンタらしくない)
(思い出したんだよ、あいつの目)
(目? 目がどうしたの)
(あの目、轟沈した艦娘の目だ)
(……どういう意味よ)
(正確には、轟沈寸前の目だよ)
大破からのさらなるダメージを受け、轟沈が決まった瞬間の絶望の目。
これまでの戦いで天龍が見ていなかったわけではない。いや、どれほどその目を見てきたか。
見慣れるほどに見てしまった目が、そこにはあったのだ。
ただ、その目と、今動いている艦娘の姿が結びつかなかった。
死をイメージする目が、今現在どんな形であろうと生きている艦娘に結びつかなかったのだ。
望みが叶うならば、もう二度と見たくない目。
エゴをむき出しにして身勝手を言うならば、せめて、龍田と叢雲の中には見たくない目。
その目が今、天龍を見ている。
だから、わかってしまった。
……こいつはもう、長くない
足掻いて足掻いて逆らって、最後の瞬間を遅らせることは出来ても、跳ね返すことは出来ない。
……いずれ、飲み込まれる
それは時間の問題に過ぎない。
(天龍)
叢雲の見つけた資料に記されていたのは、鎮守府壊滅の顛末だけではなかった。
(そこ、いわゆる『最低』だったみたいよ)
(ブラック鎮守府ってやつかよ)
(深海棲艦の攻撃がなければ、内部査察対象になっていたようね)
(査察の目的は?)
鎮守府が内部査察を受ける大きな原因は複数ある。
資材の横流し、横領。あるいは鎮守府全体に蔓延る怠慢、厭戦。そして、艦娘に対する非道な待遇。
(艦娘を私物化してたってことよ)
艦娘を人間以下の存在として見ている提督は少なくない。
それでも兵器として有用かつ貴重であり、あだやおろそかに扱っていいものではないという意見がほとんどだ。
結果として、提督自身の本音はどうあれ、待遇として悪い扱いは受けない。
しかし、艦娘をただの消耗品としか見ない提督も、実際に存在している。
必要以上の損耗を与え、見目麗しい姿の艦娘が苦しむのを余興とする嗜虐趣味の外道。
艦娘を人間以下の存在だと見下げながらも、ある意味において人間の女……それ以下のものとして扱う痴者。
(それじゃあ、こいつも、その一人ってことなのかよ)
(確証はないけれど、恐らく、ね)
興味を失ったかのように再びふらふらと動き始めた艦娘を、天龍は引き留める。
「待ってくれ」
天龍の言葉にも止まる気配はない。
「もう、あんなところへ戻らなくてもいいんだ」
「そんなクソ提督のところに戻る必要はねえんだよ」
濁った目が天龍を捉える。
腕が上がる。
主砲の照準を合わせる。
砲撃の準備を整える。
これまでの動きは偽装か、そう思わせるほどの速度で天龍に突きつけられる主砲。
すさまじいばかりの練度だ、と叢雲は思った。
「……きさまが……わたしの……ていとくを……かたるな」
「なにもしらないきさまが」
「提督を語るな」
徐々に明瞭になっていく声。
「提督は提督だ。私の提督だ」
「やめるのです」
電が単装砲を構えていた。
「天龍さんに向けた砲を、そのまま静かに降ろすのです」
叢雲も雷も、天龍を囲むように、艦娘に砲を向けていた。
「電の言うとおりにして。四対一よ。例え貴方が戦艦であろうと、勝ち目はないわよ」
「降ろしなさいよ。同じ艦娘を撃ちたくないのよ」
天龍が手を挙げる。二人を制止するように。
「天龍?」
「すまねえ、叢雲、雷。それを引っ込めてくれねえか?」
「電、お前もだ」
「天龍さん?」
「艦隊旗艦としての命令だ。三人とも砲を戻せ」
しぶしぶと降ろす三人を見届けると、天龍は艦娘から突きつけられた砲を気にすることもなく、頭を下げた。
「悪かった。今のは俺が言いすぎた。提督に関して言ったことは詫びる。撤回させてくれ」
突きつけられたままの砲が揺れる。
「だが、これは聞いてくれ。あんたの言う鎮守府は、深海棲艦の猛攻を受けて壊滅している」
「……知っているわ」
「提督も、もういない」
「……知ってる」
「俺たちと、来ないか?」
突きつけられていたはずの砲は、いつの間にか降りていた。
「うちの提督なら、悪いようにはしねえと思う。俺がさせねぇ」
「……わたしは、わたしのていとくのところへいく」
心なしか力が抜けたように肩を落とし、振り向いた艦娘に天龍は声をかける。
「ちょっと待てよ」
そして即座に電と雷を呼ぶと、
「俺が責任を取る。燃料と砲弾、高速修復材、少しばかり出してくれ」
「待って、さすがにそれは」
言いかけた叢雲に、片手をあげて拝む真似。
「俺のわがままだ。提督には、俺が旗艦命令で無理強いしたと言ってくれていい」
「お断りなのです」
きっぱり言うと電は背中に背負っていたコンテナを開き、小型のタンクを二つと取り出す。
黄色い丸印のついたタンクには油が、赤でバケツの描かれたタンクには高速修復材が入っている。
「これは、電の意思なのです。天龍さんに無理強いされたわけじゃないのです」
「私も、電に賛成するわ」
雷は予備の弾薬を取り出している。
「そうね、これは共同責任。天龍、アンタにだけいい格好させる気はないわよ」
叢雲が機材を艤装から取り出す。
「とりあえず、燃料はここで入れて行きなさい。弾薬はそのまま持って行って」
「三人とも、すまねえ」
「高速修復材は……ドックもないし明石さんもいない。せいぜい大破が中破になるくらいよ」
「……なぜ」
雷から受け取った弾薬を渡しながら、天龍は艦娘の言葉に答える。
「もし俺だったら、沈む前に龍田に……妹に会いたい。そう思っただけだ」
一枚の書類を、天龍はさらに艦娘へと渡す。
「ウチの鎮守府だ。気が変わったらいつでも来てくれ」
「……あり……がとう」
「気にすんな」
もう二度と会うことはない。と天龍にはわかっていた。
死んでしまったと知っている提督に会うために、すでに廃墟と化した鎮守府へ行くと言ってるのだ。
つまり、そういうことなのだ。
「……よかった」
「え?」
「……あなたたちみたいな……」
そこで言葉を切り、艦娘は深々と頭を下げると、振り向いた。
天龍たちは、その後ろ姿を見送る。
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提督は、解析された記録の再生を止めた。
廃墟となった鎮守府にも、今は亡き提督にも覚えがある。
その提督は、艦娘の運用のかんする論文を発表していたはずだ。
いかに少ない資材で効率的かつ非情に鎮守府を運営すべきかという論を。
艦娘の運用に必要なのは論理と算術であり、倫理と心理ではないと。
一部の提督が恥ずべき資料だと吐き捨て、別の一部の提督が絶賛した論。
禽獣にも劣る恥知らず、あるいは、感情に流されることのない有能な策士。
これほど毀誉褒貶の激しい提督がいただろうか。
恐らく、有能ではあったのだ。それがどの方向に向けられた才能であるかはさておいて。
だが……
提督は考える。
鎮守府の破壊された日付。
天龍たちが艦娘と出会った日時。
最後の特攻、あるいは捨て艦として向かわされたのであろう海域の緯度経度。
万に一つの僥倖で生き延びた艦娘が鎮守府へと戻るための海路と時間。
それらをすべて盤上に並べるのなら、最悪の稼働条件下における艦娘の……
「馬鹿か、俺は」
提督はそこで一言呟くと、すべての数字を頭から叩き出す。
そんな運用など、あってはならない。
そんな運用をしなければならない戦線があるのなら、それは敗戦だ。殲滅される寸前の。
花を買おう。
提督は思った。誰に頼めばいいのだろう。
世間知のある鳳翔か、あるいはこの手のことに詳しそうな龍驤か。
誰でもいい。
花を買ったなら、叢雲に預けよう。天龍は、自分の柄ではないと断るだろうから。
あの鎮守府の近くに献花させよう。
二人の間に何があったのかは知らない。
片道の想いだったのかもしれない。
それでも二人のために、花を捧げよう。
「……自己満足かも、しれんな」
そうして提督は、自嘲気味に笑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
航海記録、帝歴×××年○○月▽▽日 記録機紛失のため、口述のみ
鎮守府が見える。
私は帰ってきた。
私は、帰ってきた。
私は……
半身が沈んでいるのがわかる。
あの子たちのおかげで、ここまで保たせることができた。それは感謝したい。
私は提督の眠るこの場所に……
私もここで眠る。
提督のいた鎮守府が見える場所で。
提督は私を覚えていないだろう。
提督にとって私はただの艦娘だった。
だけど私は覚えている。
初めて提督と会ったとき、提督はとても喜んでくれた。
私が建造されたことを、あの人はとても喜んでくれた。
主力ではなくとも、私を使ってくれていた。
私はそれでいい。それだけでいい。
だから私は提督を……
提督……
私は沈んでいく……
私は深い海の底から貴方を想い続ける
決して貴方には届かないだろうけど
以上、お粗末様でした
おつ
艦これはやってないけど、ゲーム好きの自分としては何処かササる名作
おつつ
おっつ
暗い海の底より深く乙
おつ
乙
なんだかサイレントヒル2のような悲しさを感じたわ
おつ
こういう話好きだわ
仄暗い水の底から乙
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