仮面王子「王になどなりたくない」 (8)
初投稿かつ遅筆です。
それでも構わない、という方はよろしくお付き合いください。
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王国の宮殿内は物々しい雰囲気に包まれていた。
現国王である剣聖王が病に倒れ、王国各地から貴族や王族と付き合いがある豪商たちが王を見舞うために集まっていた。
貴族や豪商たちは、王族たちは初めこそ国王の体調についてお互いに情報交換していたものの、その中で次期国王の話が持ち上がった。
議会の議長を務める国王の長男が第一候補にあがり、第二候補に聡明である王女の名が挙がった。
どちらを次期国王に据えるか言い争う者を、物陰から冷ややかに見つめる者がいた。
仮面王子「くだらない。実にくだらない」
王国第二王子、国王の第三子である王子だった。
仮面王子「父上の身を案ずるのかと思いきや、隙あらば王国を乗っ取ろうと考える者ばかりではないか」
王子の声は大声で言い争う貴族や豪商たちには届かなかった。
王子は宮殿の大広間から立ち去ると、練兵場に向かった。
練兵場では王室に忠誠を誓い、その命を王室の為に捧げる誓約を交わした近衛兵たちが一糸乱れぬ隊列で行進を行っていた。
馬上の訓練教官の号令に従って陣形を変える様は、一種の芸術の様に思えてならない。
近衛将軍「いかがですかな王子。我らが近衛兵は」
近衛兵たちの訓練に見とれていると、いつの間にか背後にいた近衛将軍に王子は話かけられた。
思わず剣を抜きそうになった王子は息を吐き、剣の柄から手を話した。
仮面王子「心臓に悪いぞ将軍」
近衛将軍「申し訳ありません。しかし、今のは隙を作った王子が悪いでしょう。常在戦場、例え心休まる我が家であっても」
仮面王子「判った判った。今のは私の気の緩みがいけなかった」
一度始まったら気が済むまで止めない近衛将軍の説教を打ち切ると、王子は将軍を連れて兵舎の中に入っていった。
兵舎の近衛将軍の自室で王子はようやくその顔を覆っていた仮面を取り外し、机の上に置いた。
金属製の仮面の下に隠れていたのは、深い十字の傷が刻まれた色白の端正な顔だった。
その傷はかつて部下だった者に負わされた、一生消えない傷である。
王子の顔の傷を見るたびに貴婦人たちは気を失い、貴族たちは恐れ慄き、いつしか王子は「呪われ王子」と呼ぶようになった。
そして何時しか金属製の仮面で素顔を隠し、滅多に王宮に現れることなく、こうして近衛将軍や近衛兵たちと日々を過ごすようになっていた。
近衛将軍「国王陛下のご容態はいかがですか」
仮面王子「良い、とは言えない。父上も長くないかもしれない」
給仕から差し出された、水で喉を潤し王宮であった出来事をそのまま近衛将軍に話す。
仮面王子「貴族たちは相変わらず次の国王を兄上にするのか、姉上にするのか言い争っている。まったく醜いことこの上ない」
近衛将軍「ふぅむ… 議長閣下と国の知恵袋と称される姫様。どちらも次期国王には相応しい様に思えますが」
仮面王子「ところがそうでもないぞ将軍」
近衛将軍は王子の言葉の意味がわからず首をかしげた。
以下、
好きな給食のメニューと思い出スレ
給食でひなあられでた
じゃんけんで余りが奪い合いされてた
仮面王子「まず第一に、兄上は王国の危機を自ら引き起こそうとしている大馬鹿者だ」
近衛将軍「それはいささか言い過ぎではありませんか王子。いくら実の兄弟と言えども、言葉をお選びになった方が」
仮面王子「まぁ聞け。兄上は王国議会の議長という、重要な役職に就いているがそれが原因で見えていない部分がある」
近衛将軍「見えていない部分?小官には判りかねますが」
仮面王子「軍事だ。四半世紀に渡って繰り広げ、三年前ようやく終結したエルフとの戦争で、我が王国が学んだのは軍事の重要性だ」
近衛将軍「…あの戦争は辛かったですな。若い男がどれほど死んだことやら」
仮面王子「突発的な徴兵、常備軍の低い士気に練度、議会による杜撰な補給計画によって危うく本国まで押し込まれそうになった」
近衛将軍「急いで近衛軍が出立して、やっと戦線を立て直せましたな」
仮面王子「ただでさえ王国が保有する鉱山地帯を欲する国が多いというのに、兄上は軍縮を行う腹積もりだ」
近衛将軍「王国軍15万でも多いと議長閣下は申されておられるのですか…」
仮面王子「そしてもっとも厄介なのは姉上だ。『軍隊いるから戦争が起こる』、と王宮で議員の貴族たちと話していた」
近衛将軍「…何と言ったら良いか、言葉が見つかりませんな」
仮面王子「私は姉上の主張もある意味では正しいとは思える。だが、それでも賛成はできない」
しばらくの静寂。
王子と近衛将軍は兵士たちの掛け声に耳を傾ける。
近衛将軍「もしも、です」
沈黙を破ったのは近衛将軍だった。
近衛将軍「もしも、王子が王に即位された暁には…」
仮面王子「やめてくれ将軍」
王子は仮面を被り直し、席を立った。
仮面王子「私は王に向いていない。いや、王になどなりたくない」
王子の声は震えていた。
今日はここまでとします。
一日にこれくらいのペースでいきたいと思います。
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