*閲覧前にお読みください。
よいこのみんな、葛葉紘汰(かずらばこうた)だ。
このSSは、すごいざんこくなひょうげん、グロテスクな表現があるから、にがてなひとはみないようにしてくれよな! もちろん18さいみまんのこも、みないようにしてくれよな!
とくに、ドキドキ!プリキュアのアイちゃんがすきなこは、ぜったいにみないようにしてくれ。
仮面ライダー鎧武のキャラクターもでてくるけど、キャラがちょっとこわれてるから、みんなちゅういしてくれ。
それからみんなは、このSSにかいてあるようなことを、ぜったいにげんじつでやったりしないでくれよ。
くりかえすけど、ぜったいにいみもなくにんげんやどうぶつをころしちゃダメだぜ。
よいこのみんな、いのちはたいせつにするんだよ。
おれとのやくそく、ぜったいにまもってくれよな!!
ん? ごめん、ちょっと電話でるわ・・・。
・・・なんだサガラか、って何だってぇぇぇ!?
このSSは、ユグドラシルが子供を怯えさせるために書いたものだってぇぇぇぇっ!?
ユグドラシル許せねぇ!!
・・・わりぃ、みんな。今からユグドラシルをブッ潰してくれるからちょっと出かけるわ。
それじゃミッチ、あとはよろしくな!!
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407059724
ミッチ「・・・紘汰さん(汗」
というわけで、約束の代物を書かせていただきます。書き溜めたものを投下していきます。
本文は>>3からです。
トリップミスってんぞ
暗い暗い森。そこに生える木々の葉は、不気味な緑色をしていた。その木の周りには蔦が生え、その蔦にはただただ赤い実だけが成るだけだ。
赤い怪物・デェムシュは退屈していた。
「退屈・・・」
最近手に入れた『下等な猿』の辞書も既に読み飽きてしまっていた。
赤い怪物は森を見回した。
猿どもの住む『向こう側の世界』ならば、森は多様な生命の暮らす楽園となるだろう。
蝶が飛び交い、小鳥が歌い、獣が走り、様々な虫たちが音楽を奏でる。それが、『向こう側の世界』の常だった。
だが、ここには何もない。暗い光が照らすヘルヘイムの森には、植物以外の生命は存在しない。木々は気味の悪い蔓に覆われ、美しい花は何処にもない。ただただ赤紫色の実だけが成るだけだ。
彼が『下等な猿』と呼ぶ生物達は、ここを「ヘルヘイムの森」と呼んでいた。だが、彼にとってはそんな名などどうでもよかった。
彼は、殴るもの、壊す命、戦う相手。それだけが欲しかった。
だが、森に潜むのはせいぜい自分の同族と、高度な意志も知性もない下品な怪物くらいしかいない。
同族を殴ったところで虚しさが晴れるわけではない(そもそも彼の実力では返り討ちに遭うだけである)。
かといって、下品な怪物達と戦い、殺したところで何ら意味もない。弱すぎて話にならないのだ。
それよりも、彼は幸せな種族を殺戮したかった。自分達の種族がこんな惨めな暮らしをしている恨みを、幸福な種族を破壊することで晴らしたかった。
結局のところ、彼はただ幸福な者達を妬み、恨むだけの、哀れな小物に過ぎなかった。
>>3
すみません、 >>4から本文開始でお願い致します(汗)
怪物は、とりあえず空腹を満たそうと木の実に手を伸ばし口へと運ぶ。木の実を噛み砕くと、奇妙な味が広がり、体内に力が満ち溢れてくる。彼は腹が満たされた。
だが、彼の退屈は木の実の力でも満たすことができなかった。
デェムシュは苛立ちながら雄叫びを上げる。退屈と空しさを解消できない怒りに震え、意味不明の言語を喋りながら、木に八つ当たりをする。木々は乾いた音を立てて地へ伏し、倒れてゆく。
「虚しい・・・」
結局、彼はその退屈を満たすことはできなかった。暇つぶしのおもちゃが欲しい。
彼は切に願った。この退屈が解消されることを。
その時、ヘルヘイムの神が彼を哀れに思ったのか、彼に慈悲を授けた。
彼の頭上から次元を結ぶ扉・クラックが開き、「きゅぴらっぱー!」と奇妙な鳴き声をあげる生物と小さな猫が降ってきた。
「ン・・・!?」デェムシェは突如現れたおもちゃに驚き、目を見開いた。
その生物は奇妙な姿をしていた。肌の色や形態は小さいサルそのものだったが、目が明らかにサルのそれとは異なっていた。何より翼が生えて空を飛ぶサルなど、これまで彼は見たことがなかった。
「サルモドキ・・・!?」と、デェムシュはつぶやいた。
その赤ん坊の下では、ネコが戸惑いながら森を歩き回っている。ふと、ネコは森に沢山の果実があることに気付いた。ネコはマタタビに惹かれるかの如く、ふらふらと木の実へ近付く。そして、木の実を牙でもぎ取り、噛み砕いて飲み込んだ。
直後、ネコは呻き声をあげて苦しむ。
哀れな子猫の体が気味の悪い音を立てて変貌していった。毛は抜け、背中が肥大化してゆき、やがて不気味な色の怪物へと変貌した。
「きゅぴきゅぴぃぃぃっ!!」
小さなサルもどきは、その様を見て、手を叩いて大喜びする。この小さな生きものにとっては手品にでも見えたのだろう。
その後、ネコが変貌した白い虎のような怪物は低く唸り、どこかへと消えてしまった。恐らく、別の場所へ実を探しにでも行ったのだろう。
「きゅぴぃ・・・?」
小さなサルの赤ん坊は、不思議そうに去って行くインベスを見つめた。その後、後ろを振り返り、赤い魔神の存在に気付いた。
「オマエ・・・なにものだ・・・!?」デェムシュは尋ねた。
「きゅぴ! アイちゃん! ねぇ、アイちゃんとあそんで!あそんで!!」
どうやらサルの名前は「アイちゃん」と言うらしい。デェムシュはアイちゃんを見つめて思った。
自らあそんでと言ってきたのだ。これはオモチャに違いない。デェムシュは自らの元に舞い込んできた幸運を嬉しく思った。
何より、デェムシュはサルもどきのその笑顔が気に入らなかったのだ。彼は幸福そうに笑うものを痛めつけ、逆に嗤うことが何よりも好きなのだ。
「これは、イイおもちゃになるか・・・?」
デェムシュは試しに木の実をもぎ取り、空飛ぶ小さなサルもどきに向かって、投げてみる。
サルもどきはそれに気づき、振り返った。だが、時既に遅し。
「ぎゅぴっ!」
木の実は見事に彼女の顔に命中し、サルもどきは森の落ち葉の上に掠れた音を立てて落下する。
「フッ、つまらん・・・」
デェムシュは露骨にガッカリした。
結局、退屈凌ぎにすらならなかった。彼は残念そうに振り返り、何処かへ去ろうとした。だが、彼のその判断は早計だった。彼の後ろで、怒りに満ちた声が発せられる。
「きゅぴらっぱー!」
その直後、背を向けていたデェムシュはどこからか飛んできた大木にぶつかり、バランスを崩して前のめりに倒れた。
「きゃははは!! あい、あい!!」
その醜態を見て、アイちゃんは笑った。どうやら仕返しのつもりだったらしい。
「フハハハ・・・」
面白い。オモチャはこのくらい手こずらなくては。デェムシュは嬉しそうに笑った。
「来い・・・! もっと俺を楽しませろォォ・・・・!」
デェムシュは槍を投げ、サルもどきを仕留めようとする。だが、そのサルもどきは再び「きゅぴらっぱー!」と唱える。
直後、槍は不思議な光に包まれて動きを止め、逆に刃をデェムシュへと向け、凶暴な空飛ぶサメのように襲いかかってきた。
「むん・・・!」
デェムシュは主を忘れた槍を軽く避けた。槍は地面に突き刺さり、衝撃で枯葉を何枚か吹き飛ばした。
だが、サルもどきは再び「きゅぴらっぱー!」と唱える。彼女の前掛けが輝いた直後、地面に刺さっていた槍がすっぽりと抜け、再びデェムシュを襲う。
「フハハハハ!! ハハハハハ!!! オモシロイィィ!!!」
槍に貫かれようとしているのに、デェムシュは笑っていた。楽しいオモチャで退屈を解消できるのが、彼はたまらなく嬉しかったのだ。
いやそれよりトリップをだな
>>8
失礼しました。
修正いたしましたが、これで問題ないでしょうか?
どうやら、◆が◇になってたみたいですね。
これで修正できたと思います。
「これは、イイおもちゃになるか・・・?」
デェムシュは試しに木の実をもぎ取り、空飛ぶ小さなサルもどきに向かって、投げてみる。
サルもどきはそれに気づき、振り返った。だが、時既に遅し。
「ぎゅぴっ!」
木の実は見事に彼女の顔に命中し、サルもどきは森の落ち葉の上に掠れた音を立てて落下する。
「フッ、つまらん・・・」
デェムシュは露骨にガッカリした。
結局、退屈凌ぎにすらならなかった。彼は残念そうに振り返り、何処かへ去ろうとした。だが、彼のその判断は早計だった。彼の後ろで、怒りに満ちた声が発せられる。
「きゅぴらっぱー!」
その直後、背を向けていたデェムシュはどこからか飛んできた大木にぶつかり、バランスを崩して前のめりに倒れた。
「きゃははは!! あい、あい!!」
その醜態を見て、アイちゃんは笑った。どうやら仕返しのつもりだったらしい。
「フハハハ・・・」
面白い。
オモチャはこのくらい手こずらなくては。デェムシュは嬉しそうに笑った。
「来い・・・! もっと俺を楽しませろォォ・・・・!」
デェムシュは槍を投げ、サルもどきを仕留めようとする。だが、そのサルもどきは再び「きゅぴらっぱー!」と唱える。
直後、槍は不思議な光に包まれて動きを止め、逆に刃をデェムシュへと向け、凶暴な空飛ぶサメのように襲いかかってきた。
「むん・・・!」
デェムシュは主を忘れた槍を軽く避けた。槍は地面に突き刺さり、衝撃で枯葉を何枚か吹き飛ばした。
だが、サルもどきは再び「きゅぴらっぱー!」と唱える。彼女の前掛けが輝いた直後、地面に刺さっていた槍がすっぽりと抜け、再びデェムシュを襲う。
「フハハハハ!! ハハハハハ!!! オモシロイィィ!!!」
槍に貫かれようとしているのに、デェムシュは笑っていた。楽しいオモチャで退屈を解消できるのが、彼はたまらなく嬉しかったのだ。
だが、彼もやられてばかりではない。
彼は木を取り巻く蔦に手を伸ばし、力を送る。すると、その蔦が大蛇のように動き出し、鎌首を上げた。そして、アイちゃんに向かってその首先を伸ばし、手足を捕縛する。
「きゅぴぃぃっ! いやっ、はなして、はなしてぇぇぇっ!!」
アイちゃんは木から真横に伸びた蔦によって手足を封じられた。
捕縛から逃れようと手足を動かすが、彼女を縛る蔦は微動だにしない。寧ろもがけばもがくほど、その蔦は強く彼女に食い込む。
「フハハハハ! どうだァァ!!」
デェムシュは勝利を確信し、大笑いした。
だが彼は忘れていた。彼女は魔法のような不思議な力を使うことができることを。
「きゅぴらっぱぁー!!」
アイちゃんは再び魔法の呪文を叫んだ。先ほどの槍のように、蔦が奇妙な光に包まれた。光を帯びた蔦はあれほど彼女をキツく縛っていたにも関わらず、みるみるうちに萎びてゆき、ほどけて地面へと落ちてしまった。
「ハーハッハッハ!! いいぞ、戦いはこうでなくてはなぁ!!」
自分の策が通じなかったにも関わらず、デェムシュは大笑いする。
そんな彼を、サルもどきは恐怖と怒りの入り混じった表情で見つめる。そして再び魔法の呪文を唱えた。今度は遊ぶためでなく、身を守るために。
「きゅっ、きゅぴらっぱぁぁぁぁぁっっ!!」
彼女は魔法を使い、そのあたりに生えていた大木を数本宙に浮かせる。宙に浮かんだヘルヘイムの大木達は大群となって突き進み、デェムシェへと襲いかかる。
「ウハハハハハ!! ハーハッハッハッハ!!!」
だが、デェムシュは慌てない。嬉しそうに槍を振り、青色の衝撃波を放つ。あれだけあった大木の群れは光の刃によってすべて切り裂かれ、細かな破片となって飛び散った。
「きゅっ、きゅぴぃぃ!?」アイちゃんは戸惑った。
あれだけやって、まさか効かないとは、彼女にとっても予想外だった。
「きゅぴらっぱぁぁぁぁぁっっ!!」
アイちゃんは必死の声で、もう一度呪文を唱える。木の周囲に繁茂していた蔦が奇妙な光を帯び、デェムシュを襲う。ふと、デェムシュは思いつき、敢えて植物を操って抵抗することはなく、大木に蔦で縛られた。その手は、巨木の幹へとしっかり触れていた。
「なんだ、俺を縛るのか・・・。サルモドキの分際で・・・!」
「アイちゃんサルモドキじゃない! アイちゃんいや!!」
と、デェムシュへの嫌悪を顕にしてアイちゃんは叫ぶ。
「フフ・・・。どうしたサルモドキ・・・!? サッサトオレを倒してみるがいい・・・!」
デェムシュは彼女を挑発する。その手は、しっかりと木の幹を強く握っていた。
「きゅぴらっぱぁぁぁぁっっ!!!」再びアイちゃんは叫ぶ。槍が奇妙な光を帯びて浮かび上がり、デェムシュの心臓に刃先を向ける。
だが、アイちゃんは気付かなかった。
一見されるがままだったデェムシュが、大木に触れて、その力と樹上の枝を自在に操る準備を始めていたことを。
そして、彼の不気味な笑みを。
槍が放たれようとしたその瞬間、デェムシュの縛られていた大木から突如、堅い木の実が土砂降りの如く降り出す。
「ぎゅぴ!? きゅぴぃぃぃ・・・!?」
突然の堅い雨を受け、痛みでアイちゃんは混乱した。
その一瞬の隙を付き、デェムシュは自らを縛っていた蔦に触れ、再び彼女を襲わせるよう指令を出す。
だが、今度はデェムシュに油断はない。彼は手足を縛ると共に、蔦で口に猿ぐつわをかけた。
これで、アイちゃんはもはや魔法を使うことはできない。
「んぐむぅぅ!! んぐぅぅぅぅっ!!!」
「フハハハハ!! バカめェッ! 引っかかったふりをしていたのだ!!」
一気に逆転し、デェムシュは高笑いする。
「さぁ、祭りの時間だ!!」
デェムシュは落ちていた槍を再び手に取り、アイちゃんへと向ける。
ただし、刃先を彼女に向けはせず、逆に柄の部分で何度も彼女を殴る。彼はオモチャをできるだけ長く楽しみたかった。
そのために敢えて手加減をしていたのだ。
「んぐむぅぅ!! んぐぅぅぅぅっ!!! びヴぁい、びヴぁいぃぃぃっ!!」
口を縛られながら、アイちゃんは悲鳴をあげる。
「ンフハハハハハ!! ハーハッハッハ!! たのしいぞサルモドキィィィ!!!」
デェムシュは何度も何度もアイちゃんを打ちのめす。
浅倉の人か
>>14
浅倉の人です
だが、打撃の衝撃が蔦をも打ちのめしてしまい、彼女のくつわが外れてしまう。
「きゅぴっ!?」
口が自由となり、アイちゃんは思った。今しかない。
「きゅぴらっ・・・」アイちゃんは再び魔法を唱えようとした。
だが、彼女が呪文を唱え切る直前、異変に気づいたデェムシュはすぐさま指から小さな衝撃波を放ち、彼女を切り裂く。
「ぎゅぴぃぃっ!!」
アイちゃんは突然の刃に混乱し、呪文の発動に失敗した。その刃は彼女の唇と前掛けを切り裂いてしまった。
「ハハハ! バカめぇ!! 二度も同じ手は喰らわんわぁぁ・・・!!」
デェムシュは嬉しそうに嗤う。
その高笑いを聞き、アイちゃんは絶望した
魔法が使えなければ彼女はただのか弱い赤ん坊である。誰よりも彼女自身がそれを知っていた。
デェムシュは絶望に打ちひしがれて蒼白となったサルもどきを見て満足そうに嗤う。この表情が見たかったのだ。
そのまま、サルもどきを何度も柄で打ち付け、痛めつける。
「ぎゅぴ! ぎゅぴぃぃっ!! いたい、いたいぃぃっ!!!」
「フハハハハ! 泣け、もっと喚け!!」
痛みに喘ぎ、アイちゃんは泣き叫ぶ。勿論デェムシュが慈悲を与えることはない。むしろもっと激しい悲鳴を聞きたいという彼の欲求に火を点けるだけだった。
「ぎゅぴ! ぎゅぴぃぃっ!! いたい、いたいぃぃっ!!! やめてぇ、やめてぇぇぇぇ!!!
何度も何度も、デェムシュは激しく打ち付ける。その度にアイちゃんは何度も何度も泣き叫んだ。
やがて、顔が真っ赤に腫れ、手足が曲がってしまうと、アイちゃんは泣き疲れたのか、大きな泣き声をあげなくなってしまった。
「ぎゅぷぃ・・・、ぎゅぴぃ・・・」
「もう終わりか・・・?」
デェムシュはその呆気なさに驚き、急激に興奮が薄れてしまった。
彼は思った。もう飽きた。
トリップの使い方知らない書き手なんていたんだ
読者ならたまにみるけど
>>16
さっき調べてみましたが#とつければよかったんですね。不勉強で申し訳ございません。
早くも彼は、アイちゃんという玩具に飽きてしまった。
もうあまり泣き声もあげない。何よりこうも簡単に泣き顔になっては、ちっとも面白くなかった。
「あきた・・・」
彼は蔦を解きアイちゃんの脚を掴むと、勢いをつけ、その辺へと思いっきり放り投げた。
「ぎゅぴっ!」
アイちゃんは悲鳴をあげ、再び落ち葉の上へと落ちる。その顔は傷つき、腫れていた。
「きえろ・・・、つまらんオモチャ・・・」
赤い魔人はオモチャを投げ捨てると、振り返ることもなく去って行った。今度は、彼を後ろから襲うものはいなかった。
「ぎゅぴぃ・・・、いたい・・・、いたい・・・」
全身を貫く打撲の痛みに苦しみながら、アイちゃんは這い歩く。
とにかく、ここから逃げなければ。その必死の思いが、小さな手足を動かしていた。
ふと、どこからか足音が聞こえる。足音の方向になんとか頭を向けると、木陰に数匹の怪物達がいた。
白い虎のような怪物や、龍の顔を持つ怪物、鳥のような顔をした怪物など、様々だった。
しかも、彼等のその目線は、明らかに彼女の方向を向いていた。その目的は、幼子にも自ずと理解できた。
「い、いやぁぁぁっ・・・!」
恐怖に怯え、アイちゃんは泣き出す。怪物達は彼女に襲いかからんと、駆け出してきた。
だが、そこに「救世主」が現れた。
赤と銀の鎧を纏った戦士が、怪物たちの前に立ちはだかる。その鎧には緑色のパーツも存在し、どこかサクランボを思い起こす色合いでもあった。
戦士は小さな弓型の武器を構えた。
直後、弓からサクランボ状のエネルギー弾が飛び出し、それが弾けて無数の赤い光の矢となり、怪物達を襲う。
怪物達は弓矢に突き刺され、怯え惑い、傷つき、それぞれ何処かへと逃げ出した。
邪魔者が去ったことを確認すると、戦士はコップが取り付いたようなベルトの器具を操作する。その直後、鎧の中から黒服と黒帽子を身に纏った中年の男が現れた。その顔は、どこか暗いものを想起させるものだった。
「ほぅ・・・、こんなところに赤ん坊とはなぁ・・・!」
彼は、怪しい売人のような姿をしていた。彼はシグルドと呼ばれるタイプのアーマードライダーに変身する、シドという男だった。
彼はたまたま森を散歩していたところ、オーバーロードが戦う音を聞きつけていた。
何事かと思い木陰から様子を探ると、彼は赤いオーバーロードが小さな赤子と戦っている場面を目撃していたのだ。
「きゅぴ・・・、きゅぴぃ・・・」
不安そうにアイちゃんはその男を見つめた。だが、その不安は余計なものだった。
シドは落ち葉の下に倒れていた赤子を拾い上げ、優しく抱きしめる。
「よちよち・・・、もうだいじょうぶでちゅよぉ・・・」
その不気味な容姿と顔に似合わぬ、やさしい声で彼はアイちゃんをあやす。
「ふぇぇぇ・・・、ふぇぇぇ・・・!」
アイちゃんは安堵して緊張の糸が途切れ、泣き出した。これで大丈夫だ。助けてもらえる。
だが、彼女の安息の時もつかの間だった。
「・・・な~んて、言うと思ったかクソガキィ!?」
シドは突然手を離し、アイちゃんを下へ落とした。
しかし、彼女が再び落ち葉に触れることはなかった。シドは落ちる寸前彼女を膝で蹴飛ばし、宙へと放り上げた。
「ぎゅぷ! ぎゅぷ!! いたい、いたいぃぃっ!!」
シドはリフティングの要領でアイちゃんを蹴鞠にしながら歩き、玩具にして遊ぶ。
そのままゆっくりと歩き、クラックの穴が開けっ放しになってる出口へと向かう。そこは彼の所属する組織が常に通路を開いてくれている場所だ。シドが帰り道に困ることはない。
「ぎゅぴ! ぎゅぷっ! ぎゅぷっ!!」
シドは哀れな赤子を上下に弄び、リフティングを続ける。
「ぎゅぷっ! いだいっ、いだいっ!! やめてぇぇぇっ!! ぎゅぷ!!」
当然、シドがその願いを聞き入れることはない。彼は新しい玩具を手に入れた子供のように蹴鞠を楽しんでいた。
悲鳴をあげる蹴鞠で遊びながら、彼は思った。
禁断の果実を手に入れるためには、それなりの準備も必要だ。とりあえず、この変な生き物は「あの男」の興味を引くに違いない。その間、こちらが細工や根回しをすることもできるだろう。
「コイツを使って時間稼ぎをするか・・・」
シドはそうつぶやき、アイちゃんが気絶して声をあげなくなるまで、蹴鞠をしながら進んだ。
彼にとって、それはちょっとしたジョギングのようなものだった。
ユグドラシル・コーポレーション。そこはシドと彼の上司が働く大企業だ。
そこに設けられた主任研究員の研究室は二つある。その一つは、幾つものコンピューターやモニターが設置された、明るく輝く大きな部屋だった。
そこで、シドの上司・戦極凌馬は一人コンピューターと格闘していた。隣にはその秘書・湊耀子もいた。恐らく新型武器か何かのシミュレーションテストをしているのだろう。
「ようプロフェッサー。相変わらず研究熱心だねぇ・・・!」
軽い調子でシドは声をかける。
「・・・何か用かい?」
凌馬は笑顔で返事をする。だが、その目は作業を邪魔されたことで、少し苛立っているように見えた。
「まぁ、そんな怒んなって。アンタにプレゼント。ほら、ヘルヘイムの森で見つけた変なバケモンだ」
「ぎゅぴ、ぎゅぴぃ・・・」痛みに赤子が喘ぐと、シドは顔を殴りつけて黙らせる。
「ぎゅぷ!」悲鳴をあげて、アイちゃんは再び気を失った。
シドは哀れな赤子を凌馬に投げ渡す。凌馬は座ったまま、ゴールキーパーがサッカーボールをキャッチするかのように受け取った。
「あら、可愛らしい赤ちゃんね」スーツの似合う美人秘書が呟く。
彼女の声色からして、本音で言ってるようにシドには聞こえた。
「で、シド。私にこの子をどうしろと?」と、凌馬。
「よく見てみな。こんなキモくて不気味なバケモンが、人間の赤ん坊に見えるか?」
凌馬はその赤子の足を掴みながら、痣だらけで息も絶え絶えの赤子をじっと見つめる。
言われてみれば確かにその通りだ。
髪の毛が桃色なのも変だし、普通の赤ん坊の頬にハートマークなどない。
何より羽根の生えた赤ん坊など、彼の知る限りこの世にいない。
「人間の赤ん坊はもっと可愛いもんなぁ・・・。俺も子供ができたら、いいパパになりてぇもんだ・・・」
お前のことなど知るか・・・。凌馬は内心で毒づきながら、シドに視線を向ける。
凌馬の脳裏に、ちょっとした不快感がこみ上げる。
まさか、観察力でこの哀れな小物に後れを取るとは不覚だった。その不快感を消すためにも、なんとしても彼はこの赤ん坊を丁寧に研究してみたいと考えた。
「ただの赤ん坊が森に一人で行けるわけはねぇ。コイツはインべスとは別の、森の謎を解明するカギになるかもしれねぇ。だろ? 参考になると思って拾ってきたってわけさ・・・」
「ふむ。その意見はもっともだな。ちょっと調べてみよう・・・。協力に感謝するよ、シド」赤子を乱暴に放り投げながら、凌馬はシドに礼を述べる。赤子は、秘書が捕まえた。
「まっ、お互い様さ。大人は何事も助けあいが肝心。だろ?」
「ふふ・・・、そうだね・・・」
二人は小さく笑いあう。
直後、手をあげて無言の挨拶をし、シドは背を向けて歩き出した。
アイちゃんは、荒い息を吐きながら、これからの地獄を想って恐怖に震えた。
「きゅぴぃぃ! きゅぴぃぃっ!! だして! だしてぇぇっ!」
戦極に渡って以降、暫くの間美人秘書によって世話をされ、体調を回復しつつあったアイちゃんだったが、数日後にいきなり実験室に連れて行かれ、閉じ込められた。
檻に閉じ込められた赤子のような生き物を凌馬達はじっと観察していた。
その檻は何重にも囲まれた鉄の檻だった。さらにアイちゃんと凌馬達は、特殊防弾ガラスの壁に阻まれていた。凌馬達はシドから話を聞き、容易に危害を加えられないよう万全な対策を施していたのだ。ガラスの壁はマジックミラーともなっており、アイちゃんの側から凌馬達を認識することはできない。
「さて湊くん・・・。これをどう思う?」凌馬は秘書に尋ねた。
「すごく・・・、かわいいです・・・」と、秘書の湊耀子。
「ふむ・・・。確かにかわいいかもしれないね。レントゲンは?」
彼女の答えには大して関心を示さず、凌馬は報告書を求め手を伸ばす。耀子は黙って解析結果が記された書類を渡した。
「レントゲンの結果は、人間の赤ん坊と骨格が異なるところはありませんでした。もちろん羽根を除いては」湊はレントゲン写真について説明する。
その説明を聞きながら、写真を凌馬は静かに見つめた。そして、未だ檻の中で喘ぐアイちゃんと写真を交互に見比べた。
まず、羽だ。これがどのように生えているのか、体の構造がすこぶる気になる。そしてもう一つ気になったのは目である。
これも人間と異なる。彼の心に、ひとつの―湊耀子にとっては―残酷な結論が浮かんだ。
「やはり羽がどう生えているのか気になるな・・・。それに内臓や目の構造なども見てみたい・・・。湊くん、手伝ってくれるね?」
その言葉を聞き、耀子は動揺した。
「お、お言葉ですがプロフェッサー・・・」
「君の気持ちも分かるよ、湊くん。だが、科学の発展に犠牲はつきものだからね・・・」と凌馬。
その眼は新しいおもちゃを見つけた少年のように輝いていた。もっとも、耀子にとっては気味の悪い目つきにしか見えなかったが。
「・・・はい」
渋々湊は同意し、"Danger"と描かれたボタンを押す。
その瞬間、檻の中に高圧電流が流れ、アイちゃんを焼き尽くす。
「いやぁぁぁ、いやぁぁぁっ! だしてぇぇ!! いやぁぁぁっっ!!」
悲鳴をあげ、赤子は助けを求める。だが、それを凌馬は黙って楽しそうに笑うだけだった。
「ぎゅぴぃぃぃ! ぎゅぴぃぃぃっっ!!
湊は眼を逸らしながらボタンを押し続けた。
やがて、彼女の声は出なくなる。電流のショックで気絶したのだ。
そのタイミングを見計らい、凌馬は実験室へと入って行った。
「さて、楽しい解剖の時間だ・・・!」
凌馬は嬉しそうに、気絶したアイちゃんを見て、言った。まるで、理科の実験を嬉々として行なう小学生のようだった。
※こっからある意味鎧武本編以上の鬱グロ注意。
気絶したアイちゃんは、実験室の眩しいランプで目を覚ました。
気が付くと裸にされ、手足は拘束されていた。
魔法を使うために必須の前掛けもはがされ、未発達の生殖器も、小さな乳首も、全てがさらけ出されていた。
まず最初にその眼に映ったのは、白く明るく清潔感の漂う部屋の天井だった。次に、マスクと白衣を身に纏った戦極凌馬と、居心地悪そうなな目をしていた湊耀子が映った。
「さて、解剖実験を開始する。湊くん、記録を頼むよ」マスクと解剖用の帽子を被り、凌馬は解剖用メスを構えた。
「・・・はい」
湊は気乗りしない様子でビデオカメラを設置し、録画ボタンを押す。
「いやっ、いやっ!! たしゅけて! たしゅけてぇぇぇ!!」哀れな赤ん坊は助けを求めて泣き叫ぶ。だが、湊は目を逸らすだけで動こうとはしない。
凌馬は彼女を裏返しにし、メスを羽に向けて向ける。メスを目にし、咄嗟に
「やめてっ!! やめで!!やめでぇぇぃぃっっっ!!!」
雷鳴のような悲鳴があがるが、凌馬は意に介さない。むしろ楽しいBGMのように感じていた。暴れる羽を押さえつけ、羽を傷つけないよう、丁寧にナイフを筋肉の付け根へと突き刺す。
「いだいっ、いたいっ!! アイちゃんいやぁぁぁっ!!!」
アイちゃんは肉体をちぎられる恐怖に怯え、手足を、頭を、羽をばたつかせる。だが、凌馬にそんな抵抗は無意味だった。羽の付け根の周りに円を描くよう刃を振りかざし、筋を切り離す。
そして、思い切り羽を引っ張り、体から引きちぎった。
「いだい! いだいっ!! いだいぃぃぃぃぃ!!!!」
肉体が失われる苦痛に、アイちゃんは悲鳴をあげる。
「ふぅ・・・」
凌馬は引きちぎった片翼を金属のパッドに置く。
その翼は、引きちぎられたトカゲの尾のように、ぴくぴくとパッドの上で動いた。
さすがの凌馬も、いいかげん泣き出す赤子の悲鳴が鬱陶しくなってきた。
「さすがにうるさいなぁ・・・。湊くん、麻酔を」
後ろを向けば、耀子は悲鳴に耐えきれず、目と耳を手で覆って、うずくまっていた。
とても、麻酔など取れる状況ではなさそうだった。
「やれやれ・・・、仕方のない助手だ・・・」
凌馬はため息を付き、その辺にあったペーパータオルに水を含ませ、耳の穴に突っ込んだ。とりあえずの簡易性耳栓だった。これで多少は悲鳴にも耐えられるだろう。
「いやぁぁぁっ!! いやぁぁぁぁ!! あいちゃんいだいぃぃぃ!!!」
凌馬は悲鳴をあげ続けるアイちゃんを見つめ、次はどこを取り出そうか思案する。
ふと、彼女の涙を流し続ける目が気になった。
人間のそれとは思えない、奇妙な目玉。これはキチンと研究を行なう必要があるだろう。
凌馬はメスを反対方向に持ち替え、泣き続ける哀れな赤子の目の周りを突き、眼窩の位置を探す。
少しいじっていると硬い感触を感じた。その点にペンを使ってマーキングする。
「いっ、いやぁぁぁ・・・!
アイちゃんは自分の目の周りを金属物で触れられる不快感を感じていた。そして、自分の眼球に向かって鋭い刃先が向けられるのを目にして恐怖を感じ、助けを懇願する。
「いっ、いやぁぁ! いやぁぁぁぁっ!! たっ、たしゅけて! たしゅけてぇぇぇ!!」
だが、探究心に心を奪われた凌馬がその願いに心を傾けることはない。彼は黙ってメスを突き刺す。
「い゛や゛ぁぁっぁぁぁっっ!! いたいぃぃぃぃぃ!!!! いだいぃぃぃぃぃ!!!!いだいぃぃぃぃぃ!!!!」
体をジタバタと動かし、なんとか逃れようとするが、無駄な努力だった。メスが彼女の目の間に入り込み、瞼を切り裂く。メスは目と骨の間に深々と突き刺さった。
凌馬はメロンの中身をスプーンでくり抜くようにメスを操り、脳と目をつなぐ視神経を切り離す。
その激痛はアイちゃんの脳にまで浸透した。彼女は激痛に悲鳴をあげる。
「いたいぃぃぃぃぃ!!!! いだいぃぃぃぃぃ!!!!いだいぃぃぃぃぃ!!!!」
「うるさいなあ・・・今いいところなんだから・・・!」
凌馬は一層力を込め、目を体から切り離した。
血と体液がこぼれ落ち、ネバネバした糸を引き、小さな丸い球体が引っ張り出される。
「びぃやぁぁぁぁぁっっっ!! いたいぃぃぃぃぃ!!!! いだいぃぃぃぃぃ!!!!いだいぃぃぃぃぃ!!!!」
「うっほぅ・・・!」
赤子の悲鳴も物ともせず、凌馬は嬉しそうに小さな眼球を見つめた。
「いだい! いだいっ!! いだいぃぃぃぃぃ!!!!びぃやぁぁぁぁぁっっっ!!」
アイちゃんの甲高い悲鳴を無視し、凌馬は取り出した右の目玉を手に取り、改めて観察を開始する。
目の表面をピンセットで軽くつつき、角膜などを確認する。どうやら鳥類のように、目を支える強膜はないようだ。
それでも目の表面に何かないか探してみると、フィルムのようなものが眼球を覆っていることに気付く。
それを剥がすと、人間のものとは変わらない普通の眼球が現れた。
凌馬は推察した。どうやら、人間とは思えない目玉をしていた理由もこれだろう。
おそらくヘルヘイムの森の有害物質から目の保護のため、こういった保護膜システムが発達したのだろう。彼はそう推察した。
しかし、こういじってしまっては標本にはできない。
確かに研究材料としては十分役割を果たしてくれたが、標本としてはより完璧なものが保存にふさわしい。
そもそも、どうせこの生き物は骨格標本にするつもりだったのだ。
本来は目がなくなろうと何の問題もなかったのだ。どうせ標本はあの森に行けば無限に手に入るのだ。
生体実験も、別個体を利用すればそれでいい。
「それじゃあ、もう一個いただくとしよう・・・」
凌馬は目を水の入った容器に入れ、再びメスを構える。
「いだいぃぃっっ!! いたいぃぃぃっ!! いだいぃぃぃっっっっ!!!」
目を失った激痛に苦しむアイちゃんをよそに、先ほどと同じように、マーキングを左目に施す。
「やめでぇぇぇぇ!! いだいのいやぁぁぁぁっっっ!!!」
「あぁ・・・、哀れなアイちゃんよ許しておくれ・・・。私のために犠牲になっておくれ・・・!」
彼はわざとらしい謝罪の言葉を言い放つ。
勿論、彼女を憐れむ気など、彼にはさらさない。その証拠に、彼は鋭いメスを再び左のまぶたに突き刺した。
「いたいぃぃぃぃぃ! いだいぃぃぃぃぃ!! いだいぃぃぃぃぃ!! たしゅけてまにゃぁぁぁぁぁっ!!!」
アイちゃんは痛みに耐え切れず叫ぶ。勿論彼女の『母親』であるマナが助けに来ることはない。
無情なメスは、瞼を切り裂き、左の眼球を眼窩からくり抜いた。
「びぃやぁぁぁぁぁっっっ!! いたいぃぃぃぃぃ!!!! いだいぃぃぃぃぃ!!!!いだいぃぃぃぃぃ!!!! いたいィィィィィィィっっ!!!!」
右目に加えて、左目の激痛がアイちゃんを襲う。同時に、目の光を失ったことが、彼女の恐怖心をさらに煽った。もうこれでどんなことをされるのか、目で確認することさえできなくなってしまった。
「いたいぃぃぃぃぃ! いたいぃぃぃぃぃ! いたいぃぃぃぃぃぃぃ!」
脳に響き渡る苦痛が、彼女に更なる悲鳴をあげさせた。
目の入っていた部分は、深い深い竪穴となった。
もはやそこに光はない。ただただ暗い闇を備えた穴が、ぽっかりと開く。
そして、オレンジジュースのような体液までもが流れ出ていた。
左右の目玉をいずれも抉り出され、アイちゃんは光を失った。
もう彼女には何も見えない。愛する者の顔を確認することも、今自分が何をされるか確認することもできなくなっていた。(もっとも、その愛する人はこの場にはいないのだが)
その耳には、楽しそうな凌馬の声だけが聞こえた。
もはやガイム以上と書く必要性を感じないレベル
その後、凌馬は腹部にメスを当てる。
彼は、最後に内臓を取り出すつもりだった。
「いたい・・・、いたい・・・。アイちゃんもういたいイヤァァ・・・!!」
「うるさいな・・・、ちょっと黙ってられないのかな・・・?」
凌馬はさすがに鬱陶しくなり、文句を言った。勿論、凌馬が彼女の要求に応えることはない。すぐさまメスを突き刺し、彼女の腹に穴を開けた。そのまま深く刃を突き刺し、綺麗な直線を彼女の腹部へと描いた。
その後、内臓を取り出すため切り込みを入れた腹を手でこじ開ける。
「いだい・・・、いだぃぃ・・・、いだぃ・・・!! いだいいいいぃぃぃ!! いだいいいいいいぃぃぃ!! いやぁぁぁっ!!! やめてぇぇぇぇぇっっ!!!」
再び、アイちゃんは絶叫した。その大声にも構わず、凌馬は腹部をこじ開け、内臓を観察する。
その構造はあまり人間と変わらなかった。
消化器官は未発達だったが、人間の赤ん坊もまぁこんなものだろう。そのほかの臓器もあまり変わらない。
「なんだ・・・、つまらないな・・・」
残念そうに凌馬が言った。しかし、弱弱しく脈打つ心臓に目を向けると、彼の目の色は変わった。
彼が気づいたのはアイちゃんの心臓の構造だった。その構造は人間のものとは大きく異なっていた。
その形は、心房と心室のある人間のそれとは異なり、なんとハートをそのまま心臓にしたような形状だった。
「ほぅ・・・、これは興味深いねぇ・・・」
「ぎゅぴ、ぎゅぴ、ぎゅぴぃ・・・! ぎゅ・・・」
目を失い、羽を失ったアイちゃんは、内臓を弄られたショックを受け、息も絶え絶えだった。そんな彼女をよそに、彼は心臓を取り出そうとしていた。
「おぉ・・・! なんてきれいな形の心臓なんだ・・・!」
凌馬は嬉しそうに心臓にメスを向け、血管を切り裂いて体から引きちぎる。
「ぎゅぴぃ・・・、いたい・・・、いたいぃぃ・・・」
それが彼女の最期の言葉だった。
アイちゃんは最期まで苦痛に苛まれ、逝った。
だが、幸か不幸か、彼女はもう苦しむことはない。
生命の源たる心臓を切り抜かれ、彼女の命は失われてしまった。
「ほらほら湊くん! これを見てくれ・・・」
狂科学者は宝物を扱うかのように心臓を手にし、それを助手に見せようと、後ろを振り返る。
耀子はもう正気を保ってすらいない。赤子の悲鳴に耐え切ることができず、失禁して床に崩れ落ちてしまった。
床には彼女の体内から流れ出た汗と体液で水たまりができていいた。
それを凌馬は、再びアイちゃんの残骸へと向き直り、楽しそうに臓器を弄り回す。
可哀想な助手に気を遣うことすらなく、取り出した心臓を揉んだりつついたりして楽しんでいた。
そのさまは、まるで新しいおもちゃを楽しむ子供だった。
数時間の格闘の末、ようやく解剖が終わった。
凌馬は取り出した内臓や目玉を小瓶に入れ、ホルマリン溶液を注入して液浸標本にする。その裏で、気が付いた湊はマスクを外し、金属製の洗面器に顔を向けていた。
「御苦労さま、湊くん。特別ボーナスを出すよう、上に申請しとくよ」
湊はそれどころではなかった。百戦錬磨の彼女ですら、あまりにも残酷な凌馬の実験には耐えきれなかったのだ。体内を源とし喉から溢れ出る激流を止めることはできなかった。
「おやおや・・・。まぁ初めては誰でも大変だからねぇ・・・。私も「はじめて」は大変だったさ。あぁ! 懐かしき、青春の日々!」
吐き続ける彼女を無視して、狂科学者は身勝手に話し続ける。
「あぁ、今日はもう帰ってもいいよ。私も疲れたから一休みするよ・・・。
あの赤ちゃんモドキは残念だったけど、おんなじものなら他にもたくさん森にいるだろう。
今度入手したら、君にペットとしてプレゼントしよう。それじゃあ、お疲れ」
彼女の苦痛などまるで意に介さず、凌馬はゆっくりと部屋を出て行った。耀子の頭に彼の言葉など入りはしない。
その間にも、耀子は喉に詰まった異物に苦しみ、咳をしていた。
ゲホゲホッ!!
彼女の咳の音を文字にするならば、こんな擬音が相応しいだろう。
何度も何度も嘔吐を繰り返し、ようやく吐き気が収まった後、耀子は標本にされた赤ん坊を潤んだ目で見つめる。
「・・・ごめんね、アイちゃん・・・・」
耀子は静かに死体に詫びた。
物言わぬ死体の残骸はほかの助手達によって処理され、薬品液の入ったバケツへと漬けられた。そのバケツには、タンパク質を溶かす劇薬・骨格標本制作用の水酸化ナトリウムが含まれていた。
狂科学者が取り残した肉片が溶け出し、タンパク質が分解される。そしてそれは、白いネバネバとなってバケツの底へと落ちていった。
耀子は、ただ黙って肉が溶け、骨となってゆく場面を見つめていた。
彼女には、それはあんまりにも残酷すぎる、アイちゃんの葬儀に思えた。
この解剖が遠因となり、後に湊耀子は戦極凌馬を裏切ることになるのだが、それはまた別のお話である。
おしまい
以上で、全SS終了となります。
リクエストにございましたデェムシュがあんまり活躍せず、戦極博士の独断場みたいになってしまい、申し訳ございません。
それでは、失礼いたしました。
おつ
なぜ脳に手をつけなかったんだい?
ハカイダーのボディは……ああ、もうダークに返してしまったんだっけ。
>>32
>戦極「あの赤ちゃんモドキは残念だったけど、おんなじものなら他にもたくさん森にいるだろう」
本文中の戦極博士はとりあえず模式標本を制作するつもりで、それ以外の研究は森にいる別個体でやれば良いと考えてました。
ハカイダーに関しては、完璧に忘れておりましたww キカイダー回結構好きだったんですけどね・・・
お前ホントアイちゃん嫌いだな!?
>>34
村上社長風に言えば、『愛ゆえの行為です』
それでは、当スレッドはこの辺でお開きとさせていただきます。
次回、
草加雅人「アイちゃん虐待は乾巧って奴の仕業なんだ」
にご期待ください(10月頃までに投稿予定です)
ご閲覧いただきありがとうございました。
デェムシュの武器は槍じゃなくて剣ですよ(とてもそうは見えないけど)
あと、同族に喧嘩売っても返り討ちにあうって書いてあったけど、デュデュオンシュはデェムシュを尊敬してたみたいだから少なくともフェムシンム最弱ということはないはず...
>>17からの分岐ルートで
紘汰がヘルヘイムの森からアイちゃんを救出して、舞さんに可愛がられるアイちゃんにミッチが嫉妬して、インベスの仕業に見せかけて始末する展開が来ると思ってた
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