モバP「主演 水野翠」 (54)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSスレです。
以前『モバP「主演 浜口あやめ」』という題で書いたものとの関連がありますので、内容が分かり辛かったら申し訳ないです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406974279

 トップアイドルという的。

 私を見出してくれた人に報いる為、ただひとつ射止めるべきであった目標。


P「……あっ、いたいた。どうしたんだ? 朝イチでレッスン場になんて」

翠「…………」

P「ああ、そうか……久しぶりに朝のストレッチか? そうだな、最近朝は手伝ってやれてなかったから……っ?」

翠「ん……」

P「みど……んっ?!」

翠「ぅんっ、ん……っ!!」


 振り絞った弓弦は、音もなく弾けました。

また君か嬉しいなぁ(恍惚)

お、久しぶりの続きだな

待ってたよ(いそいそとパンツを脱ぐ)

リアルタイムは初めて、乙

久しぶりだなぁ
期待

来た来た、来ましたよ

リアルタイムでこのシリーズを拝むことが出来ようとは…!(畳んだパンツを横に置きながら)

やったぜ

あーあのシリーズか、懐かしい

後でシブの方で読むか

 私は、日々を慌ただしく、けれど、この上なく充実した心地で過ごしていました。

 恵まれた境遇に感謝していました。

 慈しむべき子がいて、尊重すべき友がいて、誇るべき方がいて――お慕いしているあのひとがいる。
 
 これ以上望むことはありませんでした。

 あの日までは。



翠「…………」ポケー

――――、

翠「…………」ポケー

――――長、

翠「…………」

――――部長?

翠「…っ?! は、はいっ!」ビクッ

――――部長、もうそろそろ下校時刻になりますよ? 

翠「え? あ……じゃ、じゃあ皆、あと三つで今日はお終いです! 頑張って!!」

――――ふふっ、慌てすぎですよ。『はいっ』なんて、監督相手じゃないんですから……部長の天然記録、更新ですね。

翠「……っ、もう……私は天然じゃないのに……」

――――じゃあ、好きな人のことでも考えてたんですか?

翠「え、ええと、それは……」

――――ふふっ、部長って隠し事も、下手なんですね。じゃあ、ボーっとしてる部長に聞いちゃおうかなぁ……その好きな人とは、もうえっちなこと、しちゃってるんですかぁ?

翠「な……え、も、もうっ!! からかうのはやめなさいっ!!」

――――はーい……くすくす


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翠「戸締りよし……急がなきゃ」

翠(校門での待ち合わせ時間、もう5分も過ぎちゃってる……)

――タッタッタッ、

翠「……はあ。最近、弓を引いている時も雑念ばかり」

――タッタッタッタッ、

翠「部の皆に示しがつきません……」

――タッタッタッタッタッ、

翠「このままじゃ、いけないのに……」


P「お疲れ、翠」


翠「Pさんっ」

P「おう」

翠「お待たせして、はぁっ、すみませんっ」

P「大丈夫だ、さあ乗った乗った」


 近頃増えた雑念の理由は――分かっています。


P「翠? 退屈だろう、好きな曲かけてもいいぞ」

翠「いいえ……退屈なんて、そんなことないです」


 Pさんの運転で、夜の都会を眺めていると――まるで自分が、撮影さながらの淑女になったようで、


翠「本当に、退屈しませんから」


 演じてしまうのです。大人の女性、Pさんの助手席が似合う女性を。

 退屈する暇なんて、ありません。


P「――いつもながら、学生陣の体力には感心させられるなあ」

翠「そうですか?」

P「学校に通いながらアイドル活動って大変だろう。しかも翠は部活動の部長までやっている」

翠「部の皆も協力してくれてますから、それほどの負担ではありませんよ」

P「でも部長会だのなんだの……気が詰まるんじゃないのか?」

翠「ふふっ、そうですね。でも忙しさでいうなら、Pさんの忙しさも生半可なものではないですよね。きちんとお休み、とれていますか?」

P「ヒトの心配が先か……全く、その気持ちだけで、疲れなんか吹き飛ぶよ」

翠「私もです。気にかけていただいているだけで十分……それに、今の私はとっても充実していますから。Pさんの、おかげですから」

P「……出来た娘だな、翠は。俺みたいなのよりずっと大人だよ」

翠「おかしなPさん……ふふっ、Pさんは、とても立派な大人の男性ですよ」

P「…………」


 Pさんは微笑み、それきり黙ってしまいました。照れてしまったのかもしれません。

 そうなると私自身、臆面もなくPさんへの想いを語ってしまったことが、どうしようもなく恥ずかしくなってしまいました。

 でも、不思議と居心地は良くて、ずっとこの昂ぶりに浸っていたいと思ってしまいます。

 大事にしていただいていると、感じることができるからでしょうか。

 それとも私が、本心のほんの一部でも、お伝えすることができたからでしょうか。

Pさんは立派なおとこのひと。

 トップアイドルを目指す、私のライバル。

 私がPさんに魅了されてしまっているのと同じくらい、私が『誰か』の心を魅了することなんて、私に出来るのでしょうか?
 
 『誰か』

 『誰』?
 

 Pさんの横顔の輪郭、そして唇を、盗み見ている私。


 『誰』が『誰』かということは、既に答えを得ていました。

 私は、Pさんの為に、アイドルをしている。

はじめは違ったのでしょう。

 唐突な勧誘に戸惑いこそしましたが、それでも一歩踏み出した切掛は、好奇心と虚栄。

 歌や容姿を褒められても実感がなかったから――実感を、得たかったのかもしれません。

 その意味では、当初の目標が達成されているとは言い難いでしょう。

 事実、未だに私は、アイドルとしての自信を持ち得ていません。歌も、衣装も、立ち振る舞いも――基準の全ては、あの方が、褒めてくださるかどうか。

 自分でさえ信じ切れていない、水野翠という少女の全てを期待し、信用し、応援してくださるあの方に報いることができるかどうか。

 あの方が振り向いてくれるような魅力を備えれば、私のアイドルとしての道は完遂されると言っていいのです。



 だから私は、ずっとききたかったのです。

 今の私は、あなたを、振り向かせることが出来ますか?



P「よーし、そろそろだな、翠」


 ――でもその問いは、いつもできないまま。

 逡巡するうちに、二人きりの時間は終わってしまいます。

翠「はい、Pさん」


 着かなければいいのに。

 道が果てなければいいのに。夜が果てなければいいのに。

 いまが終らなければいいのに。
 

 現場に着いても、収録が始まっても――考えていました。

 雑念に塗れていたであろう私は、しかし常以上の立振舞を見せたらしく、その場で次の企画の内定を頂くことができました。

 すぐにご報告すると、Pさんは私の手を取り、満面の笑みで褒めてくださいました。
 
 そこで初めて嬉しさが込み上げて――勢いのままに握ってくださったPさんの手を、きつく、握り返していました。

 その握った手の温もりが消えないよう閉じ込めるのに必死で――帰途は、ひどく短いように感じました。

……バンッ、

P「車のドアに制服挟むなよー?」

翠「も、もう……あんな失敗しないですよ……」

P「ははっ……すっかり遅くなっちゃったな。早く休んで、明日に備えないと。翠は朝からレッスンだっただろう?」

翠「はい……あの、Pさん」

P「どうしかしたか?」

翠「寮に戻る前に……あの、いつもの、お願いしても良いでしょうか」

P「んー、今からか……」チラッ

翠「あ、あのっ、わがままを言っているのは分かっています……でも、Pさんに手伝っていただくのが、私の身体に一番良いみたいで」

P「分かった分かった。しかし、手短に、な」

翠「……ありがとうございます!」


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ぎゅ……、

翠「…………ん」ヒクッ

ぎゅーっ、ぐっ、ぐ……っ、

翠「は……っ、ふ……、ふぅ……っ」

ぎゅっ、ぎゅぎゅっ、ぎゅ……

翠「ん……ぁ、んっ、もっと、つよく……んん……っ」

ぎしっ、ぎ………しっ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ……っ、

翠「ふくっ、う……んっ!! んっ、んっ、はぁんっ、はぁ……ぁ」


 普段なら、旺盛なまでにエネルギーで溢れ、騒がしく、狭さすら感じてしまう寮内のレッスン場。

 でも夜の十一時を回った今、板張りの上に浮かぶのは、私の吐息とPさんの吐息、そして身体が擦れ合う時の熱だけ。

 壁の一面が鏡で覆われているためか、レッスン場は実際以上に広く感じ――広大な空間に二人きりという意識が、殊更増幅されています。


P「ん……、翠、きつく、ない、か?」グイッ

翠「はいっ、大丈夫、です……っ! んっ、んっ」


 秋のスポーツ祭以来、私はPさんに度々、柔軟運動のお手伝いをお願いしていました。

 準備運動でなら、私の身体は隅々まで温まり、最高の士気で本番を迎えることができました。

 整理運動でなら、私の身体は端々までほぐれ、その日の疲れが全て抜け落ちるかのようでした。


 今はレッスン用にも使用している体操着に着替えた私は、開脚して座り、そしてPさんに背中を押していただいています。

 正面の鏡にはその様子が映っています。

 映っている、はずなのですが。

その様子が映っている――はずなのですが。


ぎしっ、ぐっ、ぐぐぐ……っ、

翠「んはぁ……ぅ、はぁっ、んっ、ふっ、うっ、ん……」


 いつも、疑問に思うことがあります。


きゅっ、くっ、くっ、く……ぐぐっ!

翠「ふ、んっ、ふぁ、ぅ……ふぅ!」

ぐぐっ、ぐ~~っ、ぐぐぐぐっ、ぐ~~~っ!

翠「んあぁ……あーっ、んはあっ、やっ、あっ!」


 鏡の中にいる少女は、誰なのでしょう?

 薄着で大股を開き、おとこのひとに身体を折り畳まれ、軋む寸前の息苦しさで喘いでいるのに、

 汗ばんだ身体で、蕩けた目で、虐げられたいかの様に懇願している、

 二人きりには広すぎるこの場所に、二人きりで居るための理由付など、とうに忘れ果てている、

 鏡の中の少女は、一体誰なのでしょう。


―――――もうえっちなこと、しちゃってるんですかぁ?――――――


 ふと、後輩のからかい声が頭を掠めました。

ふと、後輩のからかい声が頭を掠めました。


翠(えっちな、こと……)


 意味するところは分かります。

 保健体育の授業で、それがどういうことかは、意味は、理解しているつもりです。

 でも私にはそれがどういうものなのか、実感としてまだわかりません。


ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐ―っ、

翠「ふうぅぅん……っ!! んっ、んっんっ、んっ、ん……ぁ」


 どうして今、後輩の軽口が思い浮かんだのでしょうか。

 分かりません。

 今はなにもかんがえられません。
 

きゅきゅ……、くっ、ぐぐっ、

翠「も、もっとぉ……!! まだ、まだ……ぁ、ぁ……っ!!」

ぐぐぐぐっ、ぐぐ、ぐっぐい……ぎり……っ!!

翠「んあっ、あっ、あっああ……ひぅぅ……、ん……ぅ!!」


 
翠「やぁっ、あ、ま、まってくだ、や、や……ぁ……!!」


びく…………んっ!!

翌朝、私は目を擦りながら、再びレッスン場に足を踏み入れました。

 すると、見知ったひとが既に一番乗りを果たしている事に気付き――我ながら些細なことですが――悔しさを覚えてしまいました。

 そのようなことで、Pさんへの想いに傷が付くわけではないのに――少しだけ、自分が、許せない。


 夜更かしをしてしまったことが、今は悔やまれます。


翠「おはようございます、千秋さん」

千秋「おはよう、翠さん……ふふっ、今日は私が一番ね」

翠「はい、でも、次は負けませんから」


 黒川千秋さん。私と同じCo組のアイドルで、Pさんに見出された中でも初期のメンバーになります。

 美しい黒髪と、こちらが気後れしてしまうほど恵まれた容姿を持ちながら、その性質は研鑽と節制。

 自分にも他人にも厳しいけれど、でも、心の内に、誰にも負けないくらいの優しさも併せ持っている……そんな方です。
 
 私は、あるお仕事をご一緒してから、より一層親しくさせていただいているのです。

千秋「いつも思うのだけれど……翠さん、身体、やわらかいのね」


 柔軟運動を始めて少しすると、隣の千秋さんが仰いました。


翠「そうですね……弓道でも柔軟性は不可欠ですから、んっ」
 

 横を見れば、千秋さんは難しい顔で前屈の姿勢をとっていました。


千秋「そう……私も、お風呂上りのストレッチはしていたけれど、現役高校生の運動選手と比べるとまだまだということね」


 ほんの僅かに闘志を滲ませて、更に身体を折り曲げる千秋さん。

 大人の女性として尊敬できる方ですが、こういう負けず嫌いな一面は、可愛らしいと思ってしまう時もあります。


千秋「…………っ、ふ……ぅ」ギシッ

むにーん、

千秋「んっ、ん………くっ」ギュッ

もにーん、

千秋「………………」ギュー

ぷにーん、


翠「…………」

 身体を前に倒して、床にいち早く到達する豊かな胸が、千秋さんの柔軟運動を邪魔しています。


翠「…………………」


 豊かな胸が、邪魔しています。


翠「……………………………………」


 邪魔になるくらいの豊かな胸です。

 教えて差し上げた方が良いのでしょうか。

 しかし、『バストが閊えるから柔軟運動がうまくいかないのです』という事実を説明する際に、一体どういう顔をしていればいいのかわからず、断念しました。

 尊敬する千秋さんの一面を見習って、負けず嫌いになってみようかとも思います。

段々と人が増えてきて、レッスンの時刻も近付いてきたので、私達も各々で調整することにしました。

 そしてトレーナーさんが時計を気にし始めたころ、


千秋「……ねえ、翠さん」

翠「はい、なんでしょうか」

千秋「今度、私の夜のストレッチのやり方を監督してもらえないかしら。我流のところも多いから……」

翠「勿論、お手伝いさせていただきますよ!」

千秋「ありがたいわ……私」


千秋「まだまだ身体が硬いって言われているから」


 私が千秋さんのお部屋にお邪魔することになるのかしら。

 少しだけ顔を赤らめた千秋さんを見てそのようなことを考えながら、私はホイッスルそのもののような、トレーナーさんのレッスン開始の合図を聞いていました。

こうして私は、日々を慌ただしく、けれど、この上なく充実した心地で過ごしていました。

 恵まれた境遇に感謝していました。

 慈しむべき子がいて、尊重すべき友がいて、誇るべき方がいて――お慕いしているあのひとがいる。
 
 これ以上望むことはありませんでした。

 この日までは。

翠「お疲れ様です――ふう」

 この日は、私のお仕事が予定よりも長引いてしまいました。

 なので、Pさんの送迎をお受けすることが叶わず――そのせいか、私の中で重石のような疲労が、ずっしりとその存在を主張しているかのように感じられました。

 警備の方への挨拶もそこそこにして、停まっていた無人のエレベーターに入りました。

 
――――――――――――――――――   ―――――――


翠「…………!」


 静かに開く自動扉が、私の意識を揺り起こします。 

 乗り込んでから目的の階に至るまでの数十秒はまるでなかったかのようです。

 そういえば、ボタンを押した記憶もありません。

 無心――とは、真逆の、隙だらけの状態。

 余りの迂闊さに、内心恥じながらエレベーターを降り、足早に寮の廊下を行きます。

 早く戻って休もう――その考えに支配されていた私は『気が付けば部屋にいた』となっていてもおかしくありませんでした。


翠「……あら?」


 しかし――どういう訳か、私はそれに気が付いてしまいました。

些細な異変でした。

 合わせ鏡の様に立ち並んでいた寮の個室の扉。

 そのうちのひとつが、ほんの僅かに開いている。

 閉まっていない、という表現の方が正しいかもしれません。

 夜も更け、空調以外音の無い静謐な空間で――噛み合わさっていないその扉だけが、殊更異質に思えました。

 
翠「私が閉めておく――だけでは不用心ですね。施錠するよう伝えないと」


 もうお休みかもしれないという意識もあり、少し立ち止まっていましたが――結局私はそのドアノブに手を伸ばしていました。

 今にして思えば余りにも不躾な行動でしたが、携帯電話を取り出して連絡するという、どうということもない手間を嫌ったのでしょう。

 そうしてドアをゆっくりと押し開き、首だけを滑り込ませ、部屋の主へ呼び掛けようと息を吸い込みました。
 
 吸い込んだ時でした、

 それが聞こえたのは。


……っ!! 


翠「――?」

 玄関の奥、部屋に続いている扉の向こうから、何か。

 恐らくは声。それも悲鳴。

 驚愕に喉が引き攣り、行き場を失った言葉が狼狽となって私の精神を掻き乱します。

 
――んっ、――――ぁ、……めっ、んぁ……うぁ!!


 その間にも断続的に、こちらの鼓膜を擦ってくる声。

 力なく、途切れ途切れた呼吸混じりの、日常とは程遠い感触。

 しかし、もっと不可解なのは――この鼻先を抓るような、饐えた匂い。

 業者さんによって清潔で整えられた女子寮には全く相応しくない、

 更に言えば――この部屋の主のイメージに全く相応しくない、


 なまぐさい。


 あの扉の向こう。

 そこから先は、身体が勝手に動いていました。
 
 足はカーペットの上を滑るように、

 腕は闇を掻き分けるように、 

 神経は全ての刺激を拾おうとし、

 頭は焼けているのか冷めているのか分からず、

 空調は効いているのに熱気が体中から滲み出て、

 背中を走る汗がじっとりとシャツと下着を濡らす感触に浸りながら、

 ただ扉を目指し、ノブを握り、そっと引く――その行為への衝動だけが、私を突き動かしていました。

 私の意思は邪魔されることはなく、呆気無く私は扉に近付くことが出来て、


――キィ……ッ、


 私の想像と、現実との間隙。

 その距離を埋める衝撃が、矢の様に私を穿ちました。

 結果として私の侵入は、誰にも気付かれませんでした。


 あの方は目隠しをされていたから。

 あのひとは、ずっとあの方を見ていたから。


 私の存在は気付かれることはありませんでした。 
 
 私は、あのひとを振り返らせることが出来なかったから。



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 トップアイドルという的。

 私を見出してくれた人に報いる為、ただひとつ射止めるべきであった、目標。


P「……あっ、いたいた。どうしたんだ? 朝イチでレッスン場になんて」

翠「…………」

P「ああ、そうか……久しぶりに朝のストレッチか? そうだな、最近朝は手伝ってやれてなかったから……っ?」

翠「……んんっ」ギュッ

P「みど……んっ?!」

ちゅ………………

翠「ぅんっ、ん……っ!! んはっ、ん……んっ!!」

………………………………っ、

 振り絞った弓弦は、音もなく弾けました。

 それが既に切れていたことにも気付きませんでした。


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 その日の夜、私は部屋にいらっしゃったPさんに、純潔を捧げることとなりました。

 お酒のにおいのする口付で頭がくらくらして、いつのまにか服を脱がされ、下着を外されていました。
 
 明らかに私のそれとは違う指の感触が、私を楽器の様になかせました。

 ぬかるみのようになったそこへ、Pさんは一息に押し入りました。

 とても痛くて涙も溢れてしまいましたが――Pさんに、きつく抱き締めていただいて。

 身体の内側を何度も擦り、熱いものをおなかの奥に感じた時――痛覚とは別の、いいようのない昂ぶりを覚えている自分に、気が付きました。

 血の混じった接合部からまるで壺の様に精液を詰め込まれ、攪拌され、垂直に上下させられ、また、粘液がぶくぶくと零れました。

 私自身が痙攣して泡立てたのだと気付きました。

 身体を二つに折り畳まれるようにして貫かれ、声が抑えられなくなって、ふと――ベッドの脇の鏡に映った自分が見えました。

 刹那、私はレッスン場でPさんに柔軟運動をお手伝いしていただいている時のことを思い出しました。

 しなやかな身体を作るため、Pさんに背中を任せていた私。

 Pさんを信用して、背中を任せていた私。



 背中を任せる? 



 いいえ、私はきっとPさんを信用していませんでした。

 信用を裏切られることこそが、私の望みでした。

 この方なら安心、と。

 愚かにも無防備な背中を晒し、油断し切っているところへ抱き付かれて。

 胸を揉みしだかれ、おとがいを捩じりながら唇を吸われ、衣服を暴かれ、欲望のままに犯される。

 力ずくでもと、求められてしまう。
 
 それは今も同じ。

 Pさんなら大丈夫だと、女子ひとりの部屋にお通しし。

 女の子のいちばん大切なものを奪われてしまう―― 


 その時、鏡の中の少女と、私とが重なりました。

 あの――物欲しそうな顔をした少女は私だったのだと、ようやく分かりました。


 
 その日以来、私がいただくお仕事は急激に増えました。

 役どころはいつも――清楚で、潔癖で、純粋な、皆が誰かに期待するような、理想の大和撫子。

 その代り私生活では――私は自分でも恥ずかしくなるくらい、Pさんに甘えるようになりました。

 隙さえあればPさんに擦り寄り、ささいなお話をしながら、その目を見ていました。
 
 Pさんの背中や腕に、さりげなく胸をあててみたりもしました。
 
 Pさんの前でだけ、キャミソールを着ないで、おへそをさらけ出すこともありました。

 そうすることで、私は昂ぶりをPさんに伝えていたのです。

 隣に居られることがこんなにも嬉しく、そして、したたる様な劣情を抱いてしまうということを、昏い期待と共に。


 Pさんも、皆の前では、私を今までどおりに扱いました。

 でも、私が――Pさんを振り向かせようとした時には、私のことをしっかりと見てくださってから、乱暴にするようになりました。
 
 二人きりのエレベーターで身体が折れるくらい抱き締められたり。

 送迎のついでに海沿いまで車を走らせて、狭い車内で、犯されたり。

 警察の方に止められた後などは、お互いの情欲が、今までにないくらい高まりました。

 スーツ姿の男性と、制服姿の少女が夜の街などを歩いていると、やはり目に留まるのでしょう。

 そこでPさんはお決まりに名刺を見せ、にっこりと笑顔を浮かべながら、うちの水野翠をよろしくおねがいしますと、少しおどけて言うのです。

 私はその隣で、楚々として慎み深く御辞儀をしています。

ああそれは失礼いたしました――そう言って去ってゆくおまわりさんを見送り、

 私たちは目配せをして、車に乗り込むのです。

 私が足を開き、Pさんに跨り、這いつくばるには十分に広い車に。


 『水野翠 18歳』


 これは、何度目に、Pさんの愛を頂いた時の記念でしょうか。
 
 最奥に注がれたあと、千切るようにしてたくし上げられた制服の胸元に、生徒手帳と学生証を載せられて、撮られてしまった写真。

 乳首は甘噛みで仄赤く腫れ、一生懸命選んだ下着は切り裂いていただき、口元はご奉仕の跡がこびり付き、お股は、Pさんと私の体液が、泡立って混ざって汚れていました。

 学生証に写った私は、今にしてみれば、なんて清楚で、潔癖で、純粋な、皆が思い描くような少女だったことでしょう。

 その凛とした写真の隣で、私は、想い人に愛され、法悦の彼方で、泥のように蕩けた顔を晒しているのです。


 お前は俺のものだぞ。


 Pさんの宣言に、私は頷くことしかできませんでした。

 誓いのお返事は、まともな言葉の態をなしていませんでした。

 粘液まみれとなった口元に、Pさんは唇と舌をくださいました。



 お仕事は、もっともっと多く、そして大きなものに変わっていきました。

 Pさんに抱かれるほど――私は、清楚で、潔癖で、純粋な、皆が思い描くような大和撫子としての位置を、確立してゆきました。

 そのご褒美の様に、私はPさんとのえっちに溺れていきました。

 Pさんと私が共に努力する。そして、その結果としてファンの皆さんに喜んでもらう

 それはいつのまにか逆転していて。

 Pさんに喜ばれるために、私は、ファンの皆さんに喜んでもらうようになっていました。

  
 とあるお仕事では、私は古代の女神に扮し、全てを魅了するような存在としての役を頂きました。

 以前も似たようなお仕事はありましたが、今度はより豪華になり、本物の白馬を利用した演出になるとのことでした。

 勿論私の力などと自惚れるつもりはありません。全部、Pさんがよくしてくださったおかげです。

 ユニコーンを模した白い馬が私の傍に傅きます。

 美しい毛並みのそれは、私の髪の毛とは正反対の色です。

 おとなしく頭を垂れるそのたてがみを撫でながら、知れず、私の息はあつくなっていました。
 

 乙女にのみ懐くという幻想の白馬。

 その資格が、とっくに失われているという事実に、私はひどく興奮していました。

 
 そう、外見だけでは、だれもわからないのです。

 朝、どれだけ痴態を晒したまま目覚めたとしても。

 何食わぬ顔で登校すれば、周囲は私を以前通りの模範生として扱う。

 まどろみとともに、子宮から零れた種がとろりとシーツを汚したとしても。
 
 生臭いままの口で、お目覚めになったPさんにご奉仕していたとしても。

 誰にも何もわからないのです。

 
 自分では分かっています。

 水野翠は、清純という名の仮面を被った、淫らな女の子だと。

 想い人の前では、仮面を外し、どんな求めにも悦びを覚える性質の、どうしようもない娘だと。

 神聖な道場、などと言って。

 冒涜されるのを待っているのです。 

 プールでのお仕事もそう。

 抵抗があるなどとうそぶいて。

 あなただけのためと肌を晒し、身を寄せて、ずっと離れないでと囁いて。

 
 見え透いたおねだり。


 あなたならと油断しています。

 あなたならと安心しています。

 あなたならと信頼しています。 

 すぐにでも犯してください。


 これまで積み上げてきた弓道や、いただいたお仕事まで利用して、愛欲を満たそうとしているのです。

 本当に、どうしようもない私。

 道場のお手洗いで、口を塞がれ汗まみれになって蕩かされながら、

 シャワー室で後ろから、塩素混じりの精をお受けしながら、そう思っていました。 

自虐的でいて、でも本心では、それ以上の安寧はないのだと。

――でも、私の慢心は、そこでした。

 一瞬でも錯覚した私は愚かでした。

 まるで私だけが、Pさんの愛をいただいているかのように。

 私だけが、Pさんに愛されようとしてるかのように、錯覚して。


 少し考えれば分かることでした。
 
 Pさんほどの方なら、誰だって――お慕いするようになる。

 そもそものはじまり。

 私があの日見たのは。

 あの静かな女子寮で見たのは。


 研鑽と節制を、そのまま体現したようだった千秋さん。

 優しく厳しく、皆の、そして私の一番の理解者だったPさん。

 立場は違えど、敬愛し、手を携え、ともに高みを誓った二人。

 私が目にしたのは、その二人が、けだもののように唸り、絡み合う姿でした。

 憧れであるひとと、お慕いしているひと。

 その二人がそうして睦み合っていることが、こんなにも胸を焦がす。


 私はその歪んだ昂ぶりを、事務所の皆に、覚えなければならなくなったのです。

 慈しむべき子がいて、尊重すべき友がいて、誇るべき方がいて、

 皆が、Pさんに愛されている。愛されようとしている。

 今日何食わぬ顔で擦れ違った人たちも、昨日は、一昨日は、

 ずっと前から、

 選んだ服を、暴かれたのです。

 舌を絡ませ、飲み下したのです。

 やめてと言いつつ、絡み付いたのです。

 おなかの奥に、授かったのです。  



 録画されていた映像が、全てを伝えてきました。

 私だけが。

 知らなかっただけだと。 

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P「ほらほら、しっかり動くんだ。俺にまたがったまま、いつまでへたり込んでいるつもりだ?」

翠「も、もふぁっ!! むりっ、むりぃぃっ!! らめっ、らめなんれすぅっ、りゃ……ゃぁぁぁァァ!!!」

P「まったく、自分ばかり気持ちよくなって、夜伽ひとつまともにできないとは……俺の妻となる女だから、しっかりと教え込んでやる」

ずぷっ、ずぷんっ!! ごちゅっ、ごぷちゅくっ!! ちゅくっ、ちゅく……っ!!

翠「んはぁっ!! や、やぁぁ!! うごいちゃや、やぁぁっ!! やっあっあぅあ!!!」ガクビクンビクン!!

翠(カラダが反り返ってぶるぶる震えて……ぇ!!)

P「……真下から串刺しにされて、どうだっ?」

翠「ひくぅっ、うっ、う……ァ!! うぁ、あっ、あ、あ!!」ビンビンッ

P「ほら、呻いていないでその口で説明してみろ」

翠「あ、う……っぁ!! うっ、うで、下にひっぱられて、し、しきゅー、おまんこごと、おしつぶされ……てましゅっ!!」

ずちゅっ!! ぶちゅっ!! ぶちゅっぶちゅぶちゅぶちゅっ!!

翠「らめっ、りゃめぇっ!! しきゅー、天井までつんつんしちゃ、ら、あ、あァ!!!」

どびゅー、どびゅーどびゅー、どびゅーぅぅぅぅぅ…………

翠「あ……あー、あーー、あ、ああ、あああああァ…………!!」ブルブル…ッ

翠「せーし、でてます……っ、しきゅーのナカに、ふきあがって、こぼれて……でも、こぼれなくて……ぇ」

とぷとぷっ、トプン、トプン……ッ、

P「……っ、どう、だ? どんなになってる?」ペシン!!

翠「ひゃうぁ!! あ、ああァ……Pどのの、おち、おちんちんで、イかされて……ぇ、こぼれるくらい、せーし、注がれてっ、でも」

つぷ……、

翠「こ……こぼれてないの……わたくしに、ねづいてます……っ、Pどのの、せーしに、カラダ、あげちゃってます……っうぁぁ……」

どさっ……、ずるんっ!!

翠「あへぁ……っ!!」

どろ、ぬちゃぁ……

P「ははっ、抜けた途端、グツグツのまたぐらから大量に精液吐き出したな……それにしても手を離したら簡単に倒れるとは、もう限界か?」

翠「は、は、は……ぁぁ……、もう、もう……りゃめ、らめぇ」ビクッビクッ

P「一度は屈服したお前が、どうしてもと言うから条件を呑んでやったのに……お前がイき果てたら、目の前であやめを犯すという約束だったろう?」

翠「……っ、ぐ、ぅ、ぐすっ、うう、う……」ボロボロ

P「配下の苦しむ姿を見たくないということか。はは……なら、安心しろ」

ぐいっ、

翠「う、あ……っ?」

P「もうあのくノ一は苦しみなんか感じない。はじめこそ抵抗もしたが……自分から腰を振って、俺におねだりしてくるからな。もしかしたらお前よりよっぽど優秀な――」ニュチュ

翠「ヒ………ッ!! や、やめ」

ぷちゅぐちゅぐちゅぐちゅっ!! ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりっ!!!!!

翠「きゃ、あぁぁぁぁぁ!! アッアッアッアッ、あ、いやああああああああああああっ!!!」ビグゥゥ!!

P「優秀な、性奴隷になれるかもな……っ、敵に犯されて、精液を詰め込まれて」

翠「ほあっ、あっ!! あっ!! あああああっ!! あぉっ、おっ、オッ、おっ、ああああああァ!!!」プシャァ

P「達したばかりだから、めちゃめちゃにうねってるぞっ、そうだっ、そうやって精液を搾り取るんだ」

ぐぐぐっっ

どびゅぶちゅ!! ぶつゅっ!! びゅぶぢゅっぶちゅっ!! びゅびゅっびゅっびゅく~~っ!!

翠「へぁ、あんっ、いやいやっ、また、ナカ叩かれて、い、イっちゃうっ、やぁ……いやぁ~~ッ!!!!」キュンキュンキュンキュンッ!!

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 
 
 私を抱き潰した後、Pさんは再び、浜口さんの方へと向かいます。


 追いすがろうとして――まるで精液の重さで腰が立たなくなったかのようで、這うことすら出来ませんでした。

 ほどなくして、くノ一の跳びはねる様な喘ぎ声が、耳朶を擦りました。

 拒否は言葉だけ――艶に満ちた声音。

 
 今だけは、仕方ありません。


 でも――私、負けません。
 
 いつか、私だけに。
 
 私だけに、振り向いてほしい――

【特別企画】

   赤裸々!! ほろ酔い座談会~惚れた弱みの反省会・あんなことまでされちゃって~

 【番組内容】

   経験ホーフな成人たちが、禁じ手ナシでぶっちゃけトーク!! 

 【出演者御芳名(仮名)】

『元看護師    K・Yさん(23)』

『元保育士    A・Mさん(21)』

『元秘書     R・Wさん(26)』

『元ボーカリスト M・Kさん(25)』

『元警察官    S・Kさん(28)』

『元オンナノコ  S・Sさん(26)』



S藤「ちょっと待てオルルルァッ」

おしまいです。前回から間隔あいてしまってすみませんでした。
お読みくださった方、ありがとうございました。


座談会すごいみたい

乙、待った甲斐があるというもの

次があれば響子の再戦をお願いしたい

のあ編にあった主演ナンジョルノが見たいれす

おっつおっつ。独占欲強い水野さんかわかわ。
しかし、特別企画は対抗心剥き出しでトンでもプレイを披露しそう。

周子オナシャス!!なんでもしまむら

おつんつん
久々に見れてよかった

乙である


ふみふみを・・・

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