騎士「何者だ!?」
???「ふっふっふ、私は闇の力使い。何に負けたかは知らんが私の力があれば其奴を必ず負かすことができよう」
騎士「どこにいる!?」
闇「私は力そのもの。姿はなく、この声もお前の頭に直接語りかけているのよ」
騎士「姿を見せろ!」
闇「その必要もなかろう。お前は力がほしいはずだ。どうだ?」
騎士「どこにいるんだ!?」
闇「ん? 力が欲しくはないのか? 何者にも屈しない絶対的な力がな!」
騎士「……後ろか!?」
闇「選択を間違わないほうがよいぞ? どうなんだ?」
騎士「ここか!?」
闇「塀の裏などにはおらん!」
騎士「姿を見せろ!」
闇「必要ないといったはずだ! 貴様が力を欲すればいいだけだろう」
騎士「……」
闇「どうだ? ただ頷けばこの世界を支配できるのだぞ?」
騎士「……ここか!?」
闇「塀の裏などにはおらん! 人の話を聞けい!」
騎士「どこだ、どこにいるんだ!」
闇「姿など無用。ただ我の問いに答えればよいのだ」
騎士「……気のせいだな」
闇「なわけあるか! 愚か物!」
騎士「帰るか」
闇「ちょ、話を聞け! 待て、マジで帰るな!」
wwwwwww
騎士「ん? 気分を害したか?」
闇「人の話を聞かずに本当に帰宅されれば誰だって気分を害すわ!」
騎士「うーむ、それは悪いことをしたな」
闇「心にもないことを。道中無視しつづけた貴様の話など誰が信じるか」
騎士「姿を見せない物と話すのはいささか気が進まないからな」
闇「だから姿は関係ないと言っているだろう!」
騎士「わかった、それでいい。幻聴もここまで来ると疑わしいからな」
闇「まだ疑っていたのか……」
騎士「頭の中で声が響くなど、疑わないほうがどうかしているだろう?」
闇「それはそうだが……」
騎士「して、何用だ?」
闇「……人の話を聞いていなかったのか?」
騎士「いや、聞いていたが力が何とか。よくわからん」
闇「簡単なことよ。貴様に絶対的な力を与えてやろうという話だ。悪くないだろう?」
騎士「力とは?」
闇「立ちふさがる何人も圧倒し、我に反逆するもの全てを地に伏せ――」
騎士「具体的には?」
闇「……肉体的な増強と相手を意のままに操り魔法を使用、強化出来る」
騎士「そうか……」
闇「どうだ? 魅力的ではないか」
騎士「うむ、だがいらん」
闇「なぜだ!?」
騎士「今俺はライバルたる奴に勝つこと。その目的と一致していないからな」
闇「どこがだ? 負かすために我の力を使えばいいだろう?」
騎士「負かすのではない。勝つためだ」
闇「何が違う」
騎士「違うのだ。負かすのであれば方法は問わぬ。勝つためには己の力が必要なのだ」
闇「よくわからん」
騎士「うむ。うまく説明は出来ぬがそういうものなのだよ」
闇「そんなこと気にする必要ないだろう」
騎士「ならそもそも勝負などせんよ。お主の力を借りたら主の勝利。そこに俺の勝利はないし、次もない」
闇「次、とは?」
騎士「現在最強の剣士に挑んでいるからな。俺が勝てば最強になるがこの世は広い。まだ見ぬ地により強い奴がいるかもしれん。そいつにも勝負するからな」
闇「面倒だ」
騎士「それも人だ。というわけでもっと他にお前の力を欲する奴がいるだろう、そいつにやってくれ」
闇「……いや、そう簡単にはいかん」
騎士「ふむ、どうしてだ?」
闇「我が力、そう簡単に渡せるものではない。人を選ぶのだ」
騎士「人は多いぞ?」
闇「それでもだ。かれこれ200年、適した者がいない」
騎士「200年、か。果てしないな」
闇「こう簡単に話すことも出来ん。頼む、その勝負の時だけ力は貸さん。だから頼む!」
騎士「……すまない」
闇「……駄目か」
騎士「そこを曲げたら全てが曲がる。そんな気すらするからな」
闇「難しい、貴様のいうことは難しすぎる!」
騎士「人、ゆえに」
闇「だがしかし、それは我があきらめることにはならん」
騎士「そうか」
闇「我が悲願のために必ず貴様の首を縦に振らせる」
騎士「悲願? なんだ、それは?」
闇「なに、簡単なことよ。世界を我がものにする」
騎士「うむ、諦めろ」
闇「早いぞ」
騎士「いいか? 世界は広いんだ。目が届かん」
闇「そんなこと1000年も前より知っておる」
騎士「……1000年やって駄目だったのか」
闇「邪魔な奴もいるのだ」
騎士「それはいいが、世界を自分のものにしてどうする?」
闇「どうするとは?」
騎士「世界は動く。自分のものにしてからが本番であろう?」
闇「……」
騎士「……」
闇「……え?」
騎士「1000年何を見てきたのだ?」
闇「いや、あ、ちょっと待て! えっと……」
騎士「……」
闇「……」
騎士「……」
闇「……」
騎士「……ないんだな、その先が」
闇「だ、黙れ! 貴様こそ最強となった先はあるのか!?」
騎士「あぁ。騎士だからな、国を守る」
闇「……それだけか?」
騎士「騎士だからな。領土の民を守ることより他優先することはない」
闇「それは最強である必要があることなのか?」
騎士「最強であれば民が安心する。民の安心は国を栄えさせる。国の栄えは民の糧になる。その石垣の一つになりたいだけだ」
闇「……そうか」
騎士「俺には人の上に立つ力がないからな。民の下で支えられるというならばそれ以上はない。だが上に立ちたいと思うお前をうらやましく思うときもあるよ」
闇「人の上……」
騎士「そう、別に人のために何かしろというわけではない。人の上に立った時、眼下に広がるものがどうあればいいか見えている者より強いものはないからな」
闇「私には、ない」
騎士「いや、ある。なければ人の上に立とうとせんよ」
闇「……」
騎士「今はまだかすんでいるだけだろう。1000年もあれば忘れることもある。それを思い出す時間があってもよいと思うぞ」
闇「……あぁ。だがそんな時間はない」
騎士「なにか、あるのか?」
闇「我を砕くものがいる」
騎士「ほう……」
闇「実を言うとな、今の我にそれほど力はない。力とは思い、強い感情を糧にして生きる我らだからこそ人が必要なのだ」
騎士「なるほど」
闇「もともと我はこの世界のものではなくてな。何もない、そう本当に何もない世界で生きている。そこにこの世界から漏れ出てくる思いを拾い集めて力にしているのだが……」
騎士「なにか?」
闇「正直効率が悪くてな。ただゲートを開くだけで150年要した。今は50年分、本当に少しの力しか残っていない」
騎士「つまり戻れないと?」
闇「そうだ。それに我を砕く者、我と同じような存在なのだが、光の力の使者がいつ襲ってくるとわからん。まぁ通常半年ほどかかるものなんだが……」
騎士「つまり半年以内に力を溜めて元の世界に戻らないといけないのか?」
闇「いや、出来れば元の世界に何ぞ戻りたくもない。かといって光の奴らに気づかれずに過ごすというのもどだい無理な話ではある」
騎士「困っている、か?」
闇「力自体はお前と契約すれば程度によるが一週間ほどでゲートを開くぐらいできるがな。一度契約すると破棄は死を意味するが」
騎士「ふっ、はっはっは」
闇「……何がおかしい」
騎士「困っているのであろう? なら私に頼ればいい」
闇「は?」
騎士「俺は騎士だ。民を守るもの。困っている奴は見逃せん」
闇「なら契約しろ」
騎士「それとこれとは別だ」
闇「強情な……」
騎士「ふっ、しばらくどうにかできるようになるまで俺がお前も守ってやろう」
闇「なぜそんな面倒なことをする?」
騎士「言っただろう? お前が困っているからだ」
闇「意味がわからんわ」
騎士「一人でどうにかできるというなら別に俺は手を貸さんぞ?」
闇「……光の奴は1000年もの間力を蓄えている。並大抵な強さではないぞ?」
騎士「なに、どうにかなる」
闇「……普通に死ぬぞ?」
騎士「守るものを守れず生きるのは死と同じだ。安心しろ」
闇「愚か者が。いいか、嫌でも契約してやるから絶対に死ぬんじゃないぞ!」
騎士「あぁ。だが、守る以上姿がないとどうすればいいかわからないんだが?」
闇「姿、か」
騎士「まぁ今の状態で襲われるというのもよくわからんしな」
闇「実体はなくともそこに我はいるからな。光の奴が攻撃したらまぁ当たる」
騎士「そうか。見えないからといってそう都合よくいかんか」
闇「あぁ。だが実体なら作れないこともない」
騎士「そうなのか」
闇「ただ問題なのはそれなりな力を消費するということだな」
騎士「どのくらいだ?」
闇「最初に実体を作るのにゲート2回分。維持するのに3週間でゲート1回分といったところか」
騎士「うーん、どのくらいかわからんな」
闇「この世界にある思いの力を集めても維持分もまかなえぬな。状況が好転するのを待つのが得策か」
騎士「他に方法はないのか?」
闇「あるといえばある。吸収できる力と我が近ければ近いほど吸収は早くロスが少なく済む。触れるほどの距離ならば契約時の1割ほどだがそれでもやらないよりましであろう」
騎士「なるほど」
闇「ただしそれでもかなりの時間が必要になるぞ。影響のない程度で常時吸収してもいつになるやら」
騎士「それはかまわんが、力とはどう出せばいいのだ?」
闇「感情が力になる。怒りや恨みなど強く思えば思うだけ力に代わる」
騎士「……」
闇「どうかしたか?」
騎士「怒り恨みなど考えたことがなくてな」
闇「そんなことないだろう。人は生きていればそういう感情を持たずに生きていけるわけがない。現に勝ちたいという感情があるじゃないか」
騎士「まぁ、何でもいいなら強く思うことはできる」
闇「いや、何でもじゃいけないんだが……」
騎士「何でもじゃ駄目なのか?」
闇「我は闇の力の使いだからな。妬ましいという思いのほうがよい」
騎士「? 力は力であろう?」
闇「そこは我のアイデンティティーというものだ」
騎士「力に善悪はない」
闇「やめろ。人の1000年を無に帰すつもりか」
騎士「なんでも己の力にし目的のために自分すら切り捨てる。それが悪だろう?」
闇「……そうか?」
騎士「ただ破壊衝動に身を任せるのは異常者であり弱者だ。お前は違うと思っていたんだがな」
闇「……うーむ。少々不安だが四の五の言っている状況でもないか」
騎士「さて、次は肝心の感情だが……要は気合を入れればいいのだろう?」
闇「気合ではないだろう」
騎士「む。いや、気合でどうにかなる」
闇「根拠はあるのか?」
騎士「気合?」
闇「おい、大丈夫なのか?」
騎士「なに、駄目なら他の方法を試すまで」
闇「……まぁ、それでいいか」
騎士「ではやるか」
闇「あ、あぁ」
騎士「ふぅ……」
闇「……」
騎士「……」 ぶつぶつ
闇「……ん?」
騎士「……く」 ぶつぶつ
闇「なんだ?」
騎士「にくにくにくにくにくにくにくにく……」
闇「おい」
騎士「肉が食べたい!」
闇「ふざっ……ふざけるな、おい」
騎士「ふぅ……腹が減ったな」
闇「真か……」
騎士「どうだ?」
闇「……なんというかだな」
騎士「あぁ」
闇「大丈夫か?」
騎士「いやなんで俺が心配されなければならない?」
闇「あぁ、たとえるならば一ヶ月水だけ与えられ、その間目の前で腐るほどの大量の馳走を食べるところを見せられているかのようなすさまじい思いだったからな」
騎士「はっは、照れるな」
闇「褒めてはおらんが」
騎士「で、肝心の力はどうなった? あとどのくらいだ?」
闇「それがな、ふざけた話だがゲート8回分まで溜まりおったわ」
騎士「おぉ。よかったな」
闇「はっはっは。ふざけた話しすぎて笑うことしかできんわ。それでだがやはり契約せんか?」
騎士「いや、しない」
闇「あぁもったいない。もったいないぞ。それほどの力があれば光の奴らなど取るに足らんというのに」
騎士「まぁ興味ないからな」
闇「まぁいい。契約はあきらめんが今は実体を作るとしよう」
騎士「うむ」
闇「さて、前のは燃費が悪いからな。新しく作り直すとして……」
騎士「……」
闇「さて、これくらいでいいだろう。いくぞ」
騎士「ん、まぶしっ」
闇「……」
騎士「……」
闇「……おぉ、久方ぶりの実体だがなかなかどうして、上手く定着しておるな」
騎士「女児か」
闇「力の節約で体積の大きいのは選べんからな。見た目相応筋力はないが一般的な生活レベルに支障はないぞ」
騎士「女なのはどうしてだ?」
闇「前の契約者が無類の女好きでな、この姿の元も奴の趣味を元に寄せ集めた」
騎士「なるほど」
闇「さて、これから頼むぞ」
騎士「なに、安い御用だ」
闇「それでだな、久々の実体だ。まず食事がしたいぞ!」
騎士「うむ、俺もだ!」
闇「よし、ここは我が手料理を振舞うとしようぞ」
騎士「ん? できるのか?」
闇「いままでの契約者はお前の言う異常者だったからな。ろくに家事もできん奴が多く、配下がそろうまで飯もろくにな。町を襲えば酒場も潰れ、仕方なしに我が作るほかないのだよ」
騎士「意外と、大変だったんだな」
闇「何、悲願達成のためなら炊事など些細なことよ」
騎士「だがその姿だと何かと不便だろう。手伝うぞ」
闇「うむ、それはありがたい。これでも世界各地、1000年も見てきたのだ。腕のほうは期待してくれてかまわんぞ」
騎士「ふむ、それは楽しみだな」
闇「よし、やるぞ」
騎士「うむ」
騎士「よし、着いたぞ」
闇「ん……よくまぁこんな山中に来たな。なんのようだ?」
騎士「なにって修行に決まっているだろう」
闇「修行か。てっきり昨日言っていた奴と勝負するのかと思っていたが」
騎士「それはもっとあと、夕方からだ。向こうは仕事があるからな」
闇「ん? お前は仕事はないのか?」
騎士「……一応請負の仕事がある時もある」
闇「あー、なんだ。すまん」
騎士「いやいい。これも自分の力の無さが原因だからな」
闇「うーん。貴様は言うほど弱いのか? 我からすればそこらへんの人間に負けるような素質はないと思うのだが」
騎士「だが現に負けているわけだしな」
闇「そうか……まぁ素質だけで強さは決まらんしな」
騎士「そういうことだ。だから今日もしっかり鍛錬せんとな!」
闇「おう、頑張れ!」
騎士「はぁっ!」
闇「……」
騎士「てりゃっ!」
闇「……」
騎士「ふんっ!」
闇「……」
騎士「ふぅ……」
闇「……」
騎士「……」
闇「……」
騎士「……」
闇「……ん? どうした?」
騎士「いや……いや、少し休憩だ」
闇「ふむ、もう三時間ほどか。弁当も持ってきているし食べるとしよう」
騎士「おう! そうしよう」
騎士「うん、うまい!」
闇「ふふ、だろう?」
騎士「うむ、流石だな」
闇「仮にも守ってもらう上に居候させてもらっている身だからな。この程度たやすい」
騎士「うむ、助かる……なぁ」
闇「なんだ?」
騎士「俺に何が足りない?」
闇「うむ、そうだな……」
騎士「遠慮なく言ってくれ」
闇「あぁ、そうするが……わからん」
騎士「ん?」
闇「素振りと型の練習しかしていないではないか。それでどう判断しろという。ちょうど今日勝負があるのだからそのあと反省会すればよい」
騎士「反省会とは、負けることが前提か」
闇「勝てれば我の助言など必要ないだろうに」
騎士「そうではないが、そういうことにするか」
闇「で、いつまで鍛錬するのだ?」
騎士「あと3時間して下山すれば約束の時間に間に合うな」
闇「うむ、そうか」
騎士「付き合わせてしまって申し訳ないな」
闇「なに、見ているだけでもそれなりに面白い」
騎士「……そうか?」
闇「そうだ」
騎士「ん。ではもう一頑張りするか。新技も何か思いつきそうだしな」
闇「新技か。面白そうだな」
騎士「うむ。まだ気合いが足らんから出せんから最悪ぶっつけ本番でも奇策になればよいな」
闇「楽しみだな」
騎士「はっはっは。ではやるか」
闇「うむ、頑張れ!」
――――
――
剣士「……来たか」
騎士「ん、待たせていたか」
剣士「付き合わされているんだから先に来てるのが最低限の礼儀だと思うけどね」
騎士「そうだな。申し訳ない」
剣士「いいよ。本当は全然気にしてないから」
騎士「うむ、すまん」
剣士「それよりもさぁ、その後ろの子はなんなわけ? 事情によっては衛兵に突き出すことにもなるけど」
騎士「ん? あぁ今こいつの護衛を受けている」
闇「あぁ。貴様が勝負の相手か……おい」
騎士「ん? なんだ?」
闇「なんだあれは? 力の片鱗もない、雑魚ではないか。女だし」
剣士「護衛ってどこの貴族様の子か知らないけど教育って言葉忘れてきたみたいね」
騎士「こら。あ奴は強いぞ。俺の勝てない唯一の相手だからな」
闇「その言葉、嘘偽りはないんだろうな?」
騎士「あぁ」
闇「……納得させられるかどうかは戦いを見てからだな。いいか、手など抜くんじゃないぞ?」
騎士「そんなことしていたら今頃相手にすらしてもらえていないよ」
剣士「話終わった? 何でもいいけどずいぶんと信頼されてるのね」
騎士「あぁ。騎士の誉れだな」
剣士「……いい加減騎士って名乗るのやめなよ。国から解雇されてるんだしさぁ」
騎士「民を守るから騎士なのだ。国が認めずとも民が認めれば俺は騎士で居続けられる」
剣士「いや、そんな奇特な人もいないって」
騎士「……そうか?」
剣士「あ、いや、まぁ助けられた人もいないわけじゃないしいる、かもね?」
騎士「そうか!」
剣士「はぁ……あ?」
騎士「ん?」
剣士「あ、いやなんでもないの……へっ、あ、ちょっと待ってて」
騎士「よくわからんが待とう」
剣士「ありがと、うん、はい?」
闇「何をしているのだ? 病気か?」
騎士「いやそんな病気をしているという話は聞いたことないが……」
剣士「うん、わかった……あのさ、ちょっといい?」
騎士「なんだ?」
剣士「いや、なんていうか変なこと聞くけどさ、契約って知ってる?」
騎士「あぁ」
剣士「あ、契約って言っても商売とか法律とかの話じゃないほうのことなんだけど」
騎士「となるとこいつとの契約のことか?」
闇「……はぁ、愚か者」
剣士「うわ……マジか……」
騎士「どうかしたか?」
剣士「どっちかって言うとあんたが何考えてんのかわかんなくて頭痛いわ」
騎士「俺にわかるように話してくれ」
剣士「えっと、その子になんて言われた?」
騎士「契約しろ、と」
剣士「力をどうこうって話は?」
騎士「された」
剣士「世界制服は?」
騎士「されたな」
剣士「で、なんでほいほい応じちゃったのよ……」
騎士「いや、応じてないが?」
剣士「え?」
騎士「ん? 応じていなきゃまずかったのか?」
剣士「いや、そういうわけじゃないんだけど……なんで応じてないの?」
騎士「必要ないからな」
闇「こ奴の言っていることは事実だ。で、こちらも姿を見せているのだ。そちらも隠れていないで出てきたらどうだ、光の?」
光「えぇ、いいですよ」
剣士「えっ誰?」
光「皆様初めまして。光の力の使者です」
剣士「男だったんだ」
闇「姿に意味はない。ただ模っているだけだからな」
光「そうですね。別に女性に模すこともできますがどうしますか?」
剣士「あ、いや別にどっちでもいいです」
光「わかりました。ではこのままでいましょう」
闇「はっはっは。しかしこんなにも早く見つかるとは思いもよらんだわ」
光「そうですね。気配は昨日あったものですから私としても早くてあと半年はかかるかと思っていましたよ。何せあまりにも弱弱しい反応ですからね」
闇「ふん、抜かしておれ。貴様こそそのようなものと契約して、慢心か衰えか、どちらにせよ程度がしれるわ」
光「そうですか? まぁあなたを滅ぼすのに過ぎた力であることは変わりありませんよ」
闇「そうであるといいな」
光「あなたが抵抗しなければなおのこと楽でいいのですがね」
闇「無理とわかっていっておるよな?」
光「いえ、力の差にそろそろ気づいてくれないかとは思っていますが」
騎士「なぁ、そろそろいいか?」
闇「ん? どうした?」
騎士「俺は勝負をしにきたんだ。口論するならちょっとよそでやってくれないか?」
闇「ん、あぁ、すまん」
光「口論と……闇よ、あなたがなぜ契約をしていないか知りませんがそれでいいんですか?」
闇「よくないがしょうがないであろう。何、守ってくれるらしいしな、無論貴様からも」
光「こちらは契約しているというのに……一方的ですよ?」
闇「かもな」
光「……なにを考えているのやら」
騎士「剣士よそろそろ始めないか?」
剣士「え……いいの?」
騎士「あれらの話がいつ終わるかわからんしな。そんなことより勝負のほうが大事だ」
剣士「うん、まぁあんたがそういう奴だってことは知ってたけどさ。やっていいん?」
光「えぇ、まぁいいですよ」
剣士「いいのか……では」
騎士「ふぅ……あ、少しまて」
剣士「ん? 何?」
騎士「契約しているといったな」
剣士「あぁうんまぁ、なし崩し的に言い寄られてね」
騎士「ならその力も使ってくれないか?」
剣士「え……いいの?」
騎士「かまわん。むしろそっちのほうが燃える」
光「……あなたの契約者、候補の方馬鹿なのですか?」
闇「馬鹿かどうかで言うなら大馬鹿者だな。愚者ではないが」
剣士「……どうなるかわかんないよ?」
騎士「勝負とはそういうものだ」
剣士「そういうことじゃないんだけど……ふぅ……行きます!」 ざっ
騎士「いざっ!」 たったったっ
闇「ほう……」 カン、キン
光「……まさかですね」 カカ、ブン
騎士「はっはっは、やはり強いな」 ブン
剣士「そりゃ、ね!」 ガキン
剣士(前より速さも重さも跳ね上がってるって言うのに……なんでまだ押されてるのよ)
闇「……勝っているのは我のほうか」
光「あれでもなかなか勝てないよう加護はつけているのですが……もう少し上乗せしますか」
剣士「!? りゃあ!」 キン
騎士「むっ!? ぬっ」 ブン、カーン
闇「おぉ、ようやく拮抗か」
光「……」
闇「ん? どうかしたか?」
光「いえ……なんでも」
剣士「はぁっ! ……そろそろ本気でこい!」
騎士「うーむ、まだ体は温まってないんだが、致し方ない。はっ!」 カカカッ
闇「!」
光「……」
闇「ほーう。あれが本来の戦い方か」
光「まるで舞いのようですね」
闇「そんな上等なものではないとおもうが……しかしよく耐えるな。受け流しと回避だけで」
剣士「くっ」 カカッブンブンブン
光「まぁ、そうですね」
闇「どうした? もっと力を上乗せしてやらんのか? まだまだ騎士は速くなるようだが?」
光「っ、わかっていってますよね?」
闇「知らんな。もう強化は限界など」
光「……強化だけが力ではありません。魔法だってあります!」
闇「おう、そうだな。ちょうど距離もとったところだし使うのか?」
剣士「はぁはぁ」
騎士「ふんっ……やはり当たらんな」
剣士「最強は伊達じゃないのよ!」
剣士(まだ速くなりそうだったわ……これでもいつもよりはぜんぜん持ちこたえられたほうなんだけどね、くそっ)
剣士「ちょっと卑怯だけど遠距離から行くよ。火球!」 ぼっぼっぼっ
騎士「よっ、はっ」
剣士「んじゃ、特大!」
騎士「むっ」
闇「あっ、まずい!」
光「……あれは、まぁ死んだんじゃないですか?」
騎士「…ぁあらっ!」 ぶんっ
剣士「嘘……切れた?」
闇「……えー」
光「……無茶な」
騎士「ふぅ、死ぬかと思ったわ。さていい感じに体も熱くなってきたしな。新技、いくぞ」
剣士「!? ちっ」 チャキ
騎士「はぁ……はぁ!」 ひゅーん
騎士「ぎゃあああぁぁぁ……」 じゅう
剣士「……」
闇「……」
光「……」
騎士「う、あぁ……目が、目がぁ……」
闇「……ほれ、貴様のお得意の光線魔法だぞ」
光「目から出したことはありませんがね。外れてますし」
剣士「……えっ!?」
闇「……おぉ、かなり抉れておるな。貴様のより熱量多いのではないか?」
光「そこまでオーバーキルな威力は必要ありませんよ。精度と連射のほうが重要ですから」
闇「ふっ、負け惜しみか」
光「なんとでも」
剣士「あの……あれは放っておくの?」
光「知りません」
闇「同じく」
剣士「……えっと大丈夫?」
騎士「……まけた」
剣士「……あ、うん。せやね」
騎士「また負けてしまった」
剣士「うん、こんなのは初めてだけどね」
騎士「少し、休ませてくれ。目が痛い」
剣士「あ、はい」
闇「女、ちょっとこい」
剣士「……なによ」
闇「……何というかだな、いつもこんな感じか?」
剣士「いつもはあんなにかっこ悪くないわ!」
光「そこは聞いていません」
剣士「うっ……」
闇「なんていうかだな。もう負けてやれよ」
剣士「無理よ。何度もそうしたけどその度気づかれちゃって。しかも毎回『もう、迷惑だったか?』って泣きそうな顔すんだもん」
闇「……でもなぁ。我の立場抜きにしても今の現状は奴にとって可哀想に思えてしょうがないんだが」
剣士「う……そんなことわかってるわよ」
闇「潔く私のほうが弱いですどうか許してくださいくらい言え」
剣士「できるならしてるっての! いい? これでも世界一の剣士なのよ。あれを除けば私に勝てるようなのはどこにもいないの!」
闇「なら奴が世界一と認めさせればよかろう?」
剣士「だからそれもやったっての! 剣どころか魔法まで一位に推薦したわよ! でもね、騎士として雇われてたとき問題ばっか起こすからそんな奴が世界一の称号なんて沽券にかかわるって国王が指し止めちゃったの!」
闇「問題? そんなこと起こすような奴か?」
剣士「えぇ、無駄に正義感が強いのよ。行軍途中でも困ってる市民見つけたら抜けちゃうし、規律乱すのなんて当たり前」
闇「まぁ……らしいな」
剣士「まぁね。だから一応請負の相談所とか見回り業務とかは斡旋してもらえてるみたいだけど。もったいない」
闇「んーだが魔法のほうはどうなのだ? 馬鹿みたいだが一応それなりの実力はあるようだが」
剣士「いや、なんていうか、あれの魔法って厳密に言えば魔法じゃないっぽくて。どの理論にも当てはまらないし当人もよくわかってないから師事もできないってことでノータッチ」
闇「……アホだろ」
剣士「アホよ」
闇「となると仮に貴様に勝てたとしても誰も世界一と認めんわけか」
剣士「たぶんね。そもそもこんな人気のないとこの勝負なんて認められるわけないし。わかってると思うんだけどなぁ」
闇「まぁそれはいいがならなぜ貴様は付き合うのだ? さっさとやめるとでも言えばよかろう」
剣士「……」
闇「ん?」
剣士「……えっと、まぁ、仮にも格上の相手と訓練できるんだし、まぁいいかなぁって、ね?」
闇「……」
剣士「……」
闇「……光の。どう思う?」
光「まぁ、愛じゃないですかね?」
剣士「ないない! 絶対ない!」
闇「あーそういう機微はわからん。貴様の得意分野だろう?」
光「一応敵同士なんですから。でもまぁ……愛でしょうね」
剣士「あーもう! ……だってさぁ、こんな弱い私をわざわざ呼んでくるなんて気があると思うじゃん? 勘違いしてもしょうがないじゃん?」
闇「おー暇だから素振りし始めておるぞ、愛しの君は」
剣士「はぁ……そうなのよ。そういう気持ちまったくなし」
光「あれは、相当苦労されそうですね」
剣士「んなのわかってるっての」
闇「まぁ事情はわかったが……これからどうする?」
光「私としてはあなたを消滅させられれば問題ないんですがね」
闇「はっは、いいよる。契約者でも勝てないあれにそれより弱いお前がどうやってあれに勝つというのだ?」
光「そこが悩みどころなんですよね……加担しているとはいえ一般人な訳ですし、一緒にとも行かず。伝統的にそれなりな場所で勝負するのが常でしたからね」
闇「あーそういう形式とかお前ら好きだよな。絶対闇打ちとかしないし」
光「そういうのはあなたの専売特許でしたからね」
剣士「なんかいいように言われてる……」
闇「まぁ停戦じゃろ」
光「停戦とはらしくないですね」
闇「今までどおりいかんのはこちらも同じ。市民を傷つけようものなら我があれに殺されてしまうわ」
光「私の力なしで貴方に攻撃は当たらないはずでは?」
闇「そうなのだが、奴の場合当たらない確証が持てん。それに奴に見限られれば我の立場も危ういしな」
光「変わりましたね」
闇「んーあれじゃないか? 今まで我主体で動いたことないからな」
光「確かにそうでしたね」
闇「まぁ貴様が仲間を呼んだらまた勝負をしに来るのだろう? そのときまでいろいろ考えておくわ」
光「……それって言っていいんですかね?」
闇「それだけ余裕があるということよ」
光「どうせならいつものように傍若無人に振舞ってくれればいいものを。やりにくくてしょうがないですよ」
闇「何、それも時期にだろうよ」
光「あぁ気持ち悪い」
闇「気持ち悪いとは失敬な奴だな」
光「……失礼。それよりも考える時間あるのですかね?」
闇「ん? もうやる気か?」
光「いえ、ただきっとまた明日も会うような気がしてならないだけですよ」
闇「……奇遇だな、我もだ」
剣士「あ、あのぅ……もういい?」
闇「あぁ。どうせまた明日も勝負するのだろう? さっさと約束して参れ」
剣士「……うー。そうだけどさぁ、はぁ」
騎士「ん、どうかしたのか?」
剣士「いや、別に。それより明日はどうする?」
騎士「今日と同じ時間。またここで勝負願いたい!」
剣士「はぁ……いいよ」
騎士「うむ、ありがたい!」
闇「さて、ではそろそろ帰るか」
騎士「おう、そうだな!」
闇「あ、その前に一つ言うべきことがあったな」
騎士「ん? なんだ?」
闇「貴様にではない。あの女にだ」
剣士「えっ私?」
光「またですか……」
闇「いや、なに若い男女二人っきりだ。仲良くやれよ」
剣士「は? 何言って……」
光「……」 ニコ
剣士「えっまさかっちょっと!? 嘘よね?」
闇「何、気にすることもないであろう。我ら霞のときには排泄や湯浴みまで見せた仲なのだろう?」
剣士「は!? ちょっと!」
光「そんなことはしていませんよ、断じて」
闇「したしていないではないと思うがな。今後死ぬまでそばにいるわけだろう? 男子と同衾のときも横に立たれているぞ?」
剣士「いーやー!」
光「それは仕方ないことでしょう? 離れられないのですから」
闇「安心せい。それで過去幾度と他の契約者を一切契りを交わさせなかった奴じゃ。効果は折り紙つき。しかしながら愛を説きながら愛させぬとは面白い奴だな」
光「それは彼らが勝手にそう決めただけです。強いたことはありません」
闇「そういう問題かえ? のう女」
剣士「なし! 契約破棄!」
光「無理ですよ。死ぬまで」
剣士「終わったわ……さよなら……」
闇「ふぅ……やはりこれをやらんと落ち着かんな」
光「まったく、趣味の悪い」
剣士「趣味悪いのは貴方よ!」
闇「ではな、また明日」
剣士「いや……いや……」
支援
ニヤニヤ
スレタイでグラーフ思い出した
ゼノギアスリメイクしないかな
――――
――
騎士「ご馳走様」
闇「お粗末さまでした」
騎士「ふむ、今日も上手かった」
闇「なに、よいよい。それよりも家庭料理なんぞ作ることも少なかったからな。これはこれで面白いものよ」
騎士「そうか。よかったな」
闇「まぁな……ただ」
騎士「ん?」
闇「これもよいと思う反面これでいいのかとな」
騎士「焦る必要はあるのか?」
闇「焦る、とは違うかもな。甘えていないか、目を背けていないか、な」
騎士「ふむ……それがわかっていればよいと思うがな」
闇「わかっているとやっているでは雲泥の差があるだろう?」
騎士「まぁ、そうだな」
闇「まぁそれは我の問題だが他にな」
騎士「まだあるのか?」
闇「あぁこれは我だけでなく主にも関係あるのだぞ?」
騎士「……その主というのはやめないか?」
闇「慣れろ」
騎士「といってもな……」
闇「居候させてもらっているのだ。家主とよそで言うのもおかしな話だとは思わんか」
騎士「いや、全く」
闇「思え」
騎士「……で、話とは?」
闇「居候させてもらっている。ゆえに主の家計を圧迫していると思うのだよ」
騎士「いや、そんなこと――」
闇「ないなどと言える甲斐性を見せて欲しいものだな」
騎士「……」
闇「元より一人で切り詰めて暮らしていることなど理解しているしあの女からも聞いておる。そこに我が転がり込めばどうなるかなど火を見るより明らかであろうが」
騎士「まぁ……そうだな」
闇「っとそれでも今日は見回りの日ではなかったか?」
騎士「うむ!」
闇「今日は我も付いていくぞ」
騎士「だが、これも仕事だぞ?」
闇「なに、邪魔はせぬよ。それにいつ襲われるとも知れぬ身。守ってくれるのであろう?」
騎士「それはそうだが……」
闇「なに、今日はこの姿も解く。誰にも見つからんよ」
騎士「まぁそれならばよいか」
闇「代わりに今晩はまた力を吸収させてもらうぞ」
騎士「それくらいかまわん」
闇「ふふ、楽しみに待つからな」
騎士「……」
闇「元より一人で切り詰めて暮らしていることなど理解しているしあの女からも聞いておる。そこに我が転がり込めばどうなるかなど火を見るより明らかであろうが」
騎士「まぁ……そうだな」
闇「っとそれでも今日は見回りの日ではなかったか?」
騎士「うむ!」
闇「今日は我も付いていくぞ」
騎士「だが、これも仕事だぞ?」
闇「なに、邪魔はせぬよ。それにいつ襲われるとも知れぬ身。守ってくれるのであろう?」
騎士「それはそうだが……」
闇「なに、今日はこの姿も解く。誰にも見つからんよ」
騎士「まぁそれならばよいか」
闇「代わりに今晩はまた力を吸収させてもらうぞ」
騎士「それくらいかまわん」
闇「ふふ、楽しみに待つからな」
上官「んじゃ、いつもどおり頼むわ」
騎士「はい!」
上官「っとちょっと待て」
騎士「なんだ?」
上官「元々そういう事情からs地区周辺は騎士団に任せようと思ってたんだが元騎士団員のお前が問題ないってんなら専属にしてもいいぞ」
騎士「つまり?」
上官「週6で勤務だな? 予定でもあるか?」
騎士「一日空くが……」
上官「そこは騎士団に話しつけるかこっちの人員を増やしてまわすさ」
闇(おぉ、仕事の増えるいい機会ではないか)
騎士(しかし、鍛錬と勝負の時間が減るな……)
闇(……主の名誉と民の平穏。どちらを優先する?)
騎士(む……致し方ない)
騎士「その申し出、ありがたく受ける」
上官「おーよかったよかった。まぁ住んでる奴らが住んでる奴らだけに面倒も多いかと思うけどなるべく穏便にな」
騎士「あいわかった。では」
上官「ん」
上官「はぁ……めんどくせぇ」
闇「何がだ?」
上官「何って……嬢ちゃんどっから入ってきたんだ?」
闇「ドアから」
上官「いや、まぁそうだろうけどさ……」
闇「で、なにがめんどくさいのだ?」
上官「嬢ちゃんに話すことじゃあないよ。ほら帰んな」
闇「なに、それくらい話してもよかろう」 ピーン
上官「くっ……いてて、いきなし頭痛が」
闇「大丈夫か?」
上官「いや、これくらいなんてこたねぇ。年なんだろう」
闇「そうか。で、何かめんどくさいなどといっていたが?」
上官「ん、あぁ。ここで雇ってる騎士って奴のことだよ」
闇「ん? そいつがどうかしたのか?」
上官「いやな。あいつ元騎士団かなんだか知らんがこっちのいうことはきかねぇわすぐ巡回ルート外れるわ。挙句の果てには貴族様に喧嘩売るわで散々なんだよ」
闇「貴族に喧嘩?」
上官「まぁあいつが悪いって訳じゃないんだけどな、平民にいちゃもんつけてた七光りの馬鹿息子をしょっ引いてきやがって。危く俺の首が飛ぶところだったぜ」
闇「だがしかし、それはあやつが悪いのではないだろう?」
上官「正しいだけじゃ駄目なんだよ。誰かが割を食うのが世の常。まぁ嬢ちゃんにはわからんと思うがな」
闇「ふむ。いや、まぁわかる」
上官「へぇ。ま、そんなわけでそいつがいちゃもんつけたいがために騎士はs地区に呼び出されたって訳だ。まぁあいつの場合他人には手上げないからいい薬になるとはおもうけどな」
闇「ほう。そうなのか」
上官「民のためーってな。あと女子供にも、そいつが襲い掛かってきても手はださねぇな。あんなんじゃいつかおっちんじまうだろうよ」
闇(あぁ、どうりで)
闇「甘い奴だな」
上官「まぁな。はぁでもあれはあれで仕事はそれなりにするから便利だったんだけどなぁ……変に逆らったりしねぇし遅刻欠勤ねぇし」
闇「まじめだな」
上官「馬鹿が付くほどの、な。こんな仕事何も言わずにやるなんてあいつ位だってのに、はぁ、また誰か募集しなきゃかねぇ」
闇「ふっ、まだ悲観するのは早いだろう?」
上官「つったって貴族に目つけられてこの世界やってける奴なんざいねえよ」
闇「しかし貴様は先ほど仕事を任せるといっていたであろう?」
上官「……まぁいびりに耐えて戻ってきたらそれくらいはな」
闇「はんっ、主がそんなもの気にするはずがなかろうて。吉報を待っておれ」
上官「はいはい……」
パチン
上官「いっ……ん? 今誰か……なわけないか。さて次のシフトの管理でも――」
騎士「しまった……」
闇(どうかしたか?)
騎士(巡回ルートを聞き忘れた……)
闇(……まぁ好きに回ればいいんじゃないか?)
騎士(それで前に迷惑をかけたことがあってだな……)
闇(だからといってもう目的地には着いてしまったぞ? ここの地理には疎いのか?)
騎士(s地区は貴族の居住区だからな。縁がない)
闇(だろうな)
騎士(誰か顔の知っている者でもいればいいが……)
闇(そうそう上手くいくはずもなかろう。しかしどの家もでかいな)
騎士(あぁ)
闇(これにどれだけの――と、お客様のようだぞ)
騎士「ん?」
七光「おや、見回りの人かい? 相変わらず小汚い格好だこと。君のような人が歩くとそれだけでこの地区の品格が下がるね」
七光「大声なんかだしてみっともない。あの人知り合い? 君にお似合いな貧乏くさい女だね」
剣士「あ? なんつった餓鬼。膾切りにするわよ?」
七光「はん? できるものならやってみなよ。僕を誰だ――」
剣士「じゃーん。これなーんだ」
七光「……えっと、え!?」
剣士「そ、そういうこと。じゃあいっぺん死んでみる?」
七光「す、すみませんでした!」 たったった
闇(ほう、すごいな。あれは何だ?)
騎士(声届いてないぞ)
剣士「最近の若い子は教育がなってないねぇ。あ、おはよう!」
騎士「うむ、おはよう」
剣士「今日はなにしてんの……見回り業務?」
騎士「あぁ、今日からここに回されてな。そっちは?」
剣士「非番」
闇「貴様からなんと思われていようとかまわんがあれの次というのだけは納得いかんな。光の」
光「はいはいなんですか?」
闇「別にこやつに我の存在を告げる必要はなかったろう?」
光「いつ寝首をかかれるかわからないじゃないですか。用心ですよ、用心」
闇「はっはっは。こやつを契約者にしてから性格が一段と悪くなったな。いや似てきたといえばいいのか?」
剣士「それはどういう意味よ」
闇「深い意味はない。そのままの意味よ」
剣士「あーもう。騎士が護衛についてなかったら即刻切り伏せてたのにー」
闇「ところで先ほどは何を見せていたのだ?」
剣士「はぁ、何って免状よ」
>>54のあとが抜けてました
闇(うわー……)
騎士(知り合いか?)
闇(まずもって我に知り合いがいると思った主の頭のなかを見てみたいわ)
騎士(う……)
七光「君も自覚があるならもう少しまともな格好て欲しいね? え?」
闇(だと)
騎士(まともではないのか?)
闇(まともじゃないのはこやつの頭の中だろ。気にすることはない)
七光「……僕の話を無視とはいい度胸じゃないか、何とか言ったらどうなんだ?」
闇(はぁ、お望みどおり何とかといってやれ何とかと)
騎士「何とか?」
七光「……君は人のことをおちょくっているのか、なぁ? 僕を誰だと思っているんだい?」
剣士「ん? あっ騎士ー」
闇(おう、ここでさらにめんどくさいのが来たな)
闇「免状?」
剣士「えぇ、王立護衛兵の免状。これがあれば人一人殺したところで罪に問われないのよ。まぁ国外追放だから使わないけどね、みんな」
闇「そんなものをこやつに持たせて……この国も終わりが近いな」
剣士「それだけ実力があるってことですー。騎士団なんかよりずっと上なんだから」
闇「ふむ。ちなみに主はどのくらいの位置なのだ?」
騎士「剣士のいる王立護衛兵がトップとしてその下に王立騎士団。さらに下に貴族騎士兵。その下の国立護衛団に雇われている立場だな」
闇「つまり?」
騎士「一番下だな」
闇「そうか。その一番下に負けるトップか……」
剣士「人外を置ける部署なんざあるかぁ!」
闇「いやいや、深い意味はないといっておろう。ただの事実よ」
剣士「それがうざいのよっ!」
光「女性が三人寄れば姦しいといいますが二人でも十分ですね」
騎士「なに、元気でよい!」
剣士「はぁ、あっ」
闇「なんだ?」
剣士「いや、仕事中なのよね。邪魔しちゃってる?」
騎士「いや、それがだな……」
闇「おい女」
剣士「……なによ」
闇「お前ここらの地理に詳しいのか?」
剣士「詳しいっていうかこの地区に住んでるしね」
闇「ほう、嫌味か」
剣士「そうじゃないっての。王立護衛兵はここに住むように斡旋されるのよ」
闇「それが嫌味じゃないと申すか?」
剣士「う……」
闇「まぁそんな瑣末なことを気にする主ではないからな。だがそうだな、ここら辺の案内でも頼むか」
剣士「は? 巡回ルートがあるでしょ?」
闇「ちっ、知っておったか」
騎士「そうなのだが聞き忘れてな」
剣士「あ、そうなの」
闇「というわけで案内しろ」
剣士「なんでよ?」
闇「……ちょっとこい」
剣士「え? ちょっと引っ張んないでよ」
光「あらあら」
騎士「一緒に行かなくてよかったのか?」
光「えぇ。別にどこに行くわけでもないでしょうし契約者もあれに遅れをとることはないでしょう」
騎士「そうか」
光「それよりも私のほうが危険ですよ」
騎士「?」
光「貴方はあの子が大事じゃないんですか?」
騎士「大事とは?」
光「いえ、忘れてください」
騎士「よくわからん奴だな」
光「貴方に言われたくないんですけどね」
騎士「そうか?」
光「えぇ。ですがだからこそ今のような関係が築けているのでしょう」
騎士「ん」
光「その点では貴方に感謝しています。それと……」
騎士「なんだ?」
光「あの子につくのはやめて私たちと契約しませんか?」
騎士「できん」
光「でしょうね。忘れてください」
騎士「うむ」
光「まったく……あの子も苦労家ですね」
剣士「えっと、なんなのよ?」
闇「うむ、ここらでいいか」
剣士「もう、いきなり……」
闇「いいか。お前は主にほれているな?」
剣士「えー」
闇「どっちだ?」
剣士「……好きだけど」
闇「だが相手は超がつくほど朴念仁」
剣士「そう! そうなのよ!」
闇「……というより貴様は何かアプローチしたのか?」
剣士「えっ!?」
闇「だからアプローチ。別に直球で告白しろといっているわけではない」
剣士「わ、わかってるわよ……一緒に」
闇「一緒に?」
剣士「えっと、なんなのよ?」
闇「うむ、ここらでいいか」
剣士「もう、いきなり……」
闇「いいか。お前は主にほれているな?」
剣士「えー」
闇「どっちだ?」
剣士「……好きだけど」
闇「だが相手は超がつくほど朴念仁」
剣士「そう! そうなのよ!」
闇「……というより貴様は何かアプローチしたのか?」
剣士「えっ!?」
闇「だからアプローチ。別に直球で告白しろといっているわけではない」
剣士「わ、わかってるわよ……一緒に」
闇「一緒に?」
剣士「……訓練?」
闇「……」
剣士「……」
闇「……」
剣士「……」 てへ
闇「あぁ!?」
剣士「だ、だってぇ」
闇「しょうがない理由はないよな?」
剣士「……はい」
闇「で? どうしたいんだ?」
剣士「どうしたいってねぇ……」
闇「ほら、自分のものにしたいとかなんとかあるだろう?」
剣士「えぇ……」
闇「煮えきらんな、おい。だから弱いんだよ」
剣士「それとこれとは関係ないでしょ!」
闇「ないと思っているのは当人だけだがな」
剣士「……だからどうすればいいのよ」
闇「契りを結ぶまで行きたいか?」
剣士「いや、話が飛びすぎじゃない?」
闇「おい、もう貴様もいい年であろう?」
剣士「まだ十代だっての!」
闇「ん? 15,6ならもう子供の一人もいるのが普通であろう?」
剣士「いつの時代の話……あぁ、そのいつかの時代の人だったわね」
闇「ん。まぁそんなことにかまけていられないのは事実であろう? 主は性格はあれだが容姿は悪くない。そのうち知らぬ間に女が出来ていてもおかしくはないな」
剣士「そんな……人いるのかなぁ?」
闇「自分を棚に上げて言うのはよせ。その酔狂の一人なのだぞ」
剣士「……ていうかなんで協力してくれんのよ?」
闇「そんなの決まっておろう」
剣士「決まってる?」
闇「なに、主は少々思い込みの激しいところがあるからな。貴様の話に耳を傾ける程度の仲になれば馬鹿げた茶番もなくなるというものよ」
剣士「なるほど……ん?」
闇「まぁあの主と貴様が恋仲になるとは到底思えんがある程度までなら協力してやろうというものだ」
剣士「はぁ……まぁそれはそれでいいとは思うんだけど、もしさ、あいつが私の話をちゃんと聞いてくれてあの勝負が無くなったらどうすればいいの?」
闇「は?」
剣士「いやだってさ、私そこしか接点ないし」
闇「貴様、いや、はぁ……」
剣士「そんなあからさまに落胆しないでよ!」
闇「よいか? 今は勝負の相手としか見られておらぬな?」
剣士「……はい」
闇「そこからせめて知人にまで昇格させてやろうというのが我の考えだ」
剣士「え!? 恋人の……関係、とか……さぁ」
闇「それくらいで恥ずかしがっている奴には荷が重いと思うがな。だいたい恋だの愛だのは貴様にとりついている奴の分野だろうに」
剣士「とりついてる言うな!」
闇「まぁいい。でだ、知人までになればまぁ食事に誘うなり遊びに出掛けるなり出来るようになるというものよ」
剣士「おぉ!」
闇「んな単純なことにも気づかなかった貴様に我が驚きたいがな」
剣士「しょ、しょうがないでしょ!」
闇「あーあー、しょうがないしょうがない。勝手に言ってろ」
剣士「うー」
闇「というわけで接点何ぞ今より腐るほど増えるのだ。悪い話とは到底思えんが、どうだ?」
剣士「そ、そうね。あんたが何考えてるか知らないけど協力しようじゃない」
闇「協力するのは我だというのに……」
闇(それに知人となったとき今度は自分から動かなければ何もならないということも理解してはおらぬようじゃな。まぁそれはそれで問題ないがな)
剣士「で、具体的にどうするの?」
闇「ついては時期を見て話す。とりあえず今日のところは主に付き添え」
剣士「……まどろっこしいわね」
闇「ならどこかの路地にでも連れて押し倒せるのかえ?」
剣士「なっ……そんなことできるわけないでしょ!」
闇「ならまどろっこしくても我に従え」
剣士「き、期待してるからね!」
闇「はいはい」
剣士「――で、ここが侯爵邸。周りに私兵もいるけどまぁ格好だけでもあんた達が見回りしてますって意味合いで特に重点的に見回るところだと思うわ」
騎士「なるほど」
剣士「あとはいくつかの路地ね。市民街よりは少ないんだけどそれでも人のめの届きにくいところがいくつかあるから」
騎士「そうなのか」
剣士「えぇ。でもそこを進んだところで屋敷の裏口とか小姓が使うくらいしか用はないから問題はあんまりないんだけどね」
騎士「うむ。よくわかった」
闇「……なぁ」
光「なんでしょうか?」
闇「あやつら、どう見える?」
光「……そうですね。貴族とその従者にしては距離が近すぎますし、年下上司と年上部下でいいんじゃないですか?」
闇「うむ。贔屓目に見てもいちゃついているようには見えんな」
④
光「面白い冗談ですね」
闇「冗談で済ましてやるな。貴様の契約者のほうはあれでも本気なのだぞ?」
光「……まさか」
闇「まさかって前に愛だのなんだの言っていたではないか!」
光「それこそ冗談に決まっているでしょう。一応真剣で戦っているもの同士ですよ? 気を抜けばいつ殺されるともわからないというのに」
闇「いや、まぁそれはその通りなんだが……」
光「きっと男性に強く求められたことがなく舞い上がっているだけだと思っていたのですが」
闇「それは愛と違うのか?」
光「違いますよ。後々冷めるとわかっているものが愛なわけないでしょう」
闇「……昔と何か変わったな」
光「変わりましたか?」
闇「……たぶん。昔ならどうこうしたかと思ったが」
光「まぁそれはお互い様だとは思いますからね」
闇「……そうか」
光「ところで気付いてませんか?」
闇「あ?」
光「前、見てくださいよ」
闇「ん?」
騎士「東のほうで何か動かなかったか?」
剣士「ん? ちょっと見てこよっか?」
闇「……おい」
光「なんでしょうか?」
闇「東とはどっちだ?」
光「あなた……」
闇「いや、どう見ても主が南の方向を指しているような気がするんだが」
光「そうですよ? 彼らが気付いた何かは北西にいるのですから」
闇「は?」
光「はぁ……元は私達が考えた合図とはいえそんなことにまだ気づいていないとは……だから負けるんですよ」
闇「あっ!?」
騎士「……」
剣士(騒がしいっての、もう!)
騎士(ついてきている)
剣士(距離、わかる?)
騎士(区画二つ後ろ。殺気強い)
剣士(別れる?)
騎士(後ろ、頼む)
剣士「じゃ、ちょっと見てくるね」
騎士「あぁ。何もなかったら詰所で待つ」
剣士「はーい。ということであんたもこっちに着いてきてね」
闇「……我?」
剣士「そ。いいでしょ、女同士だし」
闇「なにか関係あーつれてくなー!」
剣士「はいはいこいこい」
闇「にゃー!」
光「……行かせてよかったのですか?」
騎士「あぁ。狙いは俺だ」
光「でしょうね」
騎士「それに剣士が一緒なら安全だからな」
光「それはどうなんでしょうね。しかし200年も前の合図がまだ生きていたとは驚きでしたよ」
騎士「そうなのか?」
光「闇の軍勢は純粋な力でいえばまだまだ脅威ですから。それなりに策というものが必要なのです」
騎士「ふむ……来たか」
???「気付いていたか」
騎士「気づくようにしていただろう?」
???「まぁな。あの女のほうは気付いていなかったみたいだがな」
騎士「とるに足らんのだろう」
???「はっはっは。減らず口を」
光「なんでもいいですけど貴方は誰なんです? ずいぶんとお年を召されているようですが?」
剣客「わしは剣客。しがないただの倭刀使いよ」
光「倭刀? 東の国の者ですか?」
剣客「いや、刀はそうだがわし自身はこちらの生まれよ」
光「ほう。で、なんの用件でしょうか? 出来ればあなたが我が子と契約した理由までお聞かせ願いたいのですがね」
剣客「流石にわかるか」
光「えぇ」
騎士「?」
光「あぁ。私や闇のに似た存在が他にもいるということですよ。ベースが私なだけに便宜上子と呼んでいますが」
剣客「あぁあぁ。うるさくてかまわん。なぜ闇の者がそばにいて殺さないか問うておるぞ?」
光「決まっているでしょう? 勝てないからですよ。温情で生かしてもらっているだけですし」
騎士「ん? そうなのか?」
光「貴方にその気がないのはわかっていますから少し静かにお願いします」
騎士「ん……すまん」
剣客「とんだ腑抜けよの。さりとて関係ない。いざ、勝負せよ」
騎士「街での私闘は禁じられているぞ?」
剣客「構わん。やる気がないのであれば先にあの女子を膾切りにでもするまでよ」
④
えっがんばって
まだか
このSSまとめへのコメント
え ちょ おいおいおい
【完結】 やあらへんやろオイ!
と思って過去ログ探したらほんとに挫折してたよ
結構面白いのに...もう読めないのな。残念