妹「おにいちゃん、どうして…?」 (34)
息抜きに。
・ほのぼの
・エロなし
こんな感じです。
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妹「おにいちゃん、どうして…?」
妹「どうして死んじゃったの…」グスグス
肉塊「」
妹「私がプリン食べたいなんて言ったから…うぅ…」
母「妹のせいじゃないわよ…」
妹「もうおにいちゃんかどうかもわかんないよ、こんな顔じゃ…」
母「そう、ね……うう、……ぅ」
妹「お母さん、お水飲んできた方が良いよ…私、暫くおにいちゃんとお話してるから」
母「ごめんね……」
ぱたんっ
妹「………ぐすっ」
妹「おにいちゃん、いつも言ってたよね。プリンは半分こが一番おいしいって」
妹「私もずっとそう思ってたんだよ。…半分こしたかったんだ」
肉塊「」
妹「一番好きだったのは多分味じゃなくて、おにいちゃんの笑顔だったんだと思う」
肉塊「」
妹「でももう、こんな姿じゃ笑ってくれてもわかんないよね……」グスッ
肉塊「」
妹「今頃、天国でお父さんと会えてるの…?」
肉塊「」
妹「……おにいちゃん、一緒に花火見たかったね」
肉塊「」
妹「バレンタイン、来年はケーキ作ってあげるって約束したよね」
肉塊「」
妹「なのに……ふぇえ…」
妹「お兄ちゃん、明日は一緒にお出かけしようねって……」
肉塊「」
妹「私、一生懸命お洋服も選んだんだよ…?
なのに、どうして……どうしてトラックのタイヤに巻き込まれちゃったの…?」
肉塊「」
妹「私の為に、プリン急いで買ってきてあげようって思ってくれてたの…? ごめんなさい…」
肉塊「」
妹「……私ね、彼氏出来たんだ」
肉塊「は?」
妹「ふぇっ!?」
肉塊「」
妹(な、何だぁ、気のせいかぁ…)
妹「……お兄ちゃんに似てて、優しくてかっこいい人だよ。紹介したかったなぁ…」
肉塊「」
妹「……今夜は、帰るね。また、…後で会おうね」
ぱたんっ
肉塊「……は? 何? 彼氏って何の話?」
妹(お兄ちゃんのお葬式が終わって、もう半年かぁ…)
妹「あっという間だったなぁ…」
ごそごそ
妹「そろそろ帰らなきゃ。……半年前までは、お兄ちゃんと一緒に帰ってたんだよね…」
妹「……」
妹「…も、もう泣かないって決めたもん! 私は一人でも大丈夫!!」
妹「ただいまー、…お母さんはまだお仕事かぁ」
遺影『』
妹「ただいま、お兄ちゃん」
遺影『』
妹「もうすっかり夏だねー、汗びっしょり。冷房つけるね」
遺影『』
妹「はふー、……シャワー浴びなきゃ…うー」
遺影『』
妹「あ、まだスポドリ残ってたかな…」ガサゴソ
妹「あったあった」ゴクゴク
遺影『』
妹「…おにいちゃん、アイス食べよう?」
遺影『いいね。俺あれ、ミルク味のキャンディー』
妹「うん、今準備するねー。……!?」
遺影『』
妹「…幻聴だよね? 疲れてるのかな…」
妹「んぅ、やっぱり夏はアイスキャンディーだよね。林檎味だいすき」ムグムグ
遺影『』
妹「……」
遺影『』
妹「…写真の中ではおにいちゃん笑ってるのに、………私は笑えないよ」グス
遺影『』
妹「ひぅ……ふぇ…」ブワッ
遺影『』
妹「わ、わたしね、かれしと、わかっ、わかれてね、」
遺影『マジか。よっしゃ』
妹「!? えっ!?」
遺影『』
妹「クーラー壊れちゃった……」
遺影『』
妹「幸い今日は土曜日、お買い物行こう」ウン
遺影『いってら』
妹「うん、行ってくるね!」
妹「………うん?」
妹「ふぁー……やっぱり電気屋さん涼しー」
冷風機『』
妹「あ、今CMでよくやってるやつ。涼しいのかな?」
冷風機『』
妹「んー…悪くないかも……」ヒンヤリ
妹「あ、でも湿気が酷くなるんだっけ…?」
冷風機『』
妹「……除湿機と併用すれば大丈夫かな?」
冷風機『』
妹「…うん、決めた! すいませーん、これほしいんですけどー!」
妹「あああーすずしいーー」
冷風機『そろそろ水補充してくれよ』
妹「うん、……しゃべる機能なんてついてたかな…?」
冷風機『いや、ついてない』
妹「確認して買ってきたもん、やっぱりそうだよね……そ!!?」
冷風機『っつーかアイス食わね? クリーム系。ハイパーカップあったっけ』
妹「一個残ってるよ」
冷風機『じゃあ半分こ。一番美味いから』
妹「………お…」
冷風機『なに?』
妹「おにいちゃん!!!??」
冷風機『お、おう』
書き溜めしないで書いてました
ちょっと区切ります
支援
期待
ワロタ
え?
えっ…?
妹「どうしてこんな姿に…」
冷風機『ちょいちょい喋ってたけどな』
妹「つらくないの?」
冷風機『ぶっちゃけ涼しいよね』
妹「うん、それはわかるけどね」
冷風機『学校でいじめられたりしてないか?』
妹「大丈夫だよ。えへへ」
冷風機『?』
妹「こんな姿になっちゃったけど、お兄ちゃんが帰ってきてくれて嬉しいなーって…」
冷風機『妹……』
妹「でも一言いいかなぁ」
冷風機『なに?』
妹「冷風機はアイス食べられないよ?」
冷風機『マジだわ』
妹「お兄ちゃんには悪いけど、いただきまーす…」モグモグ
冷風機『はー』
妹「それにしても、どうして冷風機なんだろ…」
冷風機『俺の死に方、身体メチャクチャだっただろ?』
妹「……う、ん」
冷風機『多分意識だけ分離しちゃったんじゃねえかなって。
普通はさ、肉体と一緒に墓に埋葬されるはずなんだろうけど』
妹「そっかぁ…」
冷風機『でもまあ、妹とまた話せるし、何でもいいか……』
妹「うんっ! ……故障しちゃったらどうなるのかな」
冷風機『わかんねえ。なるべく壊れないようにいきたい』
妹「じゃあ、もう一台買ってきた方がいい?」
冷風機『もったいないから俺の方使っちゃっていいよ』
妹「もうすっかり秋だねー」
冷風機『そうだなー』
妹「お兄ちゃんって夏でも長袖着てたし、秋なんかばっちりだったよね」
冷風機『ああ、……まあ、そだな』
妹「暑くなかったの?」
冷風機『暑いに決まってんだろ』
妹「私がプレゼントした半袖シャツ、アームカバーと合わせてたのかっこよかったよ!」
冷風機『……そ?』テレ
妹「えへへ。…はあ、おなかすいた」
冷風機『冷凍庫に何か入ってんだろ』
妹「パンケーキ位あるかな、ちょっと見てくるね」ガサゴソ
冷風機『どうだった?』
妹「無かったから焼くつもり」
冷風機『ジャムある?』
妹「マーマレードある! ……お兄ちゃん」
冷風機『おう』
妹「その、生き物になることって出来ないの…?」
冷風機『多分無理だな…自分の意思でこれになった訳じゃねえし』
妹「そっかぁ……」
冷風機『良いんだよ。妹が美味そうに食っててくれれば俺は何にもいらないからさ』
妹「おにいちゃん……」
冷風機『だからさ、プロペラに料理ぶち込もうとしないでいいからな?』
妹「この間は麻婆豆腐入れちゃってごめんね」
妹「感覚はあるんだよね?」
冷風機『ある。ぶつかられると痛いし』
妹「気をつけなきゃね…」
冷風機『ほら、そろそろ作り始めないと昼飯間に合わないぞ』
妹「作ってくるね!」
冷風機『妹は学校、お袋は仕事か…』
冷風機『何で俺、妹にプリン買ってやるまで我慢出来なかったんだろ』
冷風機『自殺』
ガチャッ ゴン
冷風機『!?』
空き巣「誰も…いねえな……」ニヤニヤ
冷風機(っ、)
空き巣「金目のモンは…おお」
冷風機『テメ、それは妹の貯金箱だ! 離せよ!!』
空き巣「まあまあ重いしいただいとくか…へへへ…」ゴソゴソ
冷風機『くっそ、動く事も出来ねえのかよ…』
空き巣「…ん? これ」
空き巣「少し前に売れたやつか。売っちまうか」ヨイショ
冷風機『待っ』
妹「うう、寒い…ただいまー」
妹「…あれ?」キョロキョロ
妹「おにいちゃーん?」
妹「おにい……!」
妹「私の貯金箱無くなって…」
妹「これ、お兄ちゃんの電源コード……」
妹「お兄ちゃんは自分で動けないって言ってた…も、もしかして泥棒!?」
妹「どうしよう、どうしよう! お兄ちゃんが誘拐されちゃった!」
妹「け…警察に電話しなきゃ!!」
妹「……帰ってきたら貯金箱とネックレスと、…お兄ちゃんが」
警官「お兄さん? 誘拐か…」
妹「私が、学校から早く帰ってこなかったから…ひっく…」
警官「大丈夫だ、お兄さんは全力で捜すし、盗られたものも取り返そうね」
警官(…待てよ? この子のお兄さんは既に……)
空き巣「あー、電源コード忘れちまった。不揃いジャンクで売れるか?」
冷風機『駄目だ、ダンボールから出れねえ…』
空き巣「参ったな…バラして売り飛ばすか?」
冷風機『ひっ』
空き巣「金属類はそこそこ売れるだろうし…」
冷風機『ま、待て早まるな!』
空き巣「しかしなあ、勢いで持ってきたしアシついちまう…」
冷風機『……』ホッ
<こちら、廃品回収車でーす
空き巣「お」
冷風機『!!!!!』
区切ります。
また明日。
機体
試演
乙
ヨビォ
空き巣「………」
冷風機『やめろやめろやめろ』
空き巣「よいせ。すいませーん」
冷風機『あああああああ』
お兄さん「あ、こちら廃品回収車ですー」
空き巣「これお願い出来ますかね」
お兄さん「へ? これ、売ったら高くつくんじゃ…まあいっか。お預かりしますー」
冷風機『』
妹「おにいちゃん、どこにいるんだろ」タッタッ
妹「私のせいだ、緊急ブザーみたいなの置いておけば…」
妹(あ、でもお兄ちゃん手がないから押せないよね)
冷風機『嫌だああああああ売られるううううううううう』
お兄さん「積み込み完了、と。行きますか」ブロロロ
妹「家電ってそんな簡単に落ちてないよね…」タッタッ
妹「あ、あれって…家電引取りの車かな?」
妹「すいませーん! とまってー!!!」
お兄さん「? 廃品回収車ですー」ピタ
妹「あ、あの! 最新式の冷風機って受け取ってませんか?」
お兄さん「あー…すいません、ウチ販売はしてなくて…」
冷風機『誰かー!』
妹「お兄ちゃん!!」
お兄さん「!?」
妹「う、…お、お願いします! お金なら幾らでも支払います!」
お兄さん「そうは言っても…」
妹「あの冷風機…お兄ちゃんの生き形見なんです…」
お兄さん(普通の形見じゃなくて…?)
妹「お願いします!」
お兄さん「…わかったわかった。ちょっと荷台開けるから待っててね」
冷風機『妹…たす、』キュル
お兄さん「はい、開けたよ。この冷風機で合ってる?」
妹「そうです! お兄ちゃん!」
冷風機『』
妹「おに…い、ちゃん…?」
お兄さん「どうかしたの?」
妹「あ、いえ…えっと、………ん。おうちに帰ろう、お兄ちゃん」
お兄さん「タダでいいよ、持って行って」
妹「ありがとう、ございます…」
妹(どうして返事しないの、お兄ちゃん…)
妹「ただいまー」
冷風機『』
妹「警察の方にも挨拶済んだし、お金は…戻ってこないけど、諦めよう」
冷風機『』
妹「今後犯人が見つかったら戻ってくるかもしれないし、…バイト頑張ればいいや」
冷風機『』
妹「…ねえ、お兄ちゃん?」
冷風機『』
妹「どうして返事してくれないの? ねえ、…あ、電池ないや」
冷風機『』
妹「ちょっと待っててね、すぐ充電するからね!」カチカチ
冷風機『』
そして、私は電源コードをはめた。
やがて赤いランプがついて、ちかちかとして。
それから緑になって、充電完了を私に告げた。
でも。
お兄ちゃんの声が聞こえるなんてことはなかった。
いっぱい話しかけて、いっぱい揺さぶった。
安全装置が『これ以上揺らさないでください』と言っても。
冷風機自体は動いても、お兄ちゃんの応答はなかった。
お兄ちゃんが中に入ったまま電池が切れてしまったからなのか。
廃品回収車の中で壊れてしまっていたのか、それはわからない。
空き巣が何かしたのかと考えて、部品チェックなども行った。
不安を抱えながらも電気屋さん、メーカーなんかにも修理をお願いした。
だけれど。
幾ら万全な状態の冷風機にしても、もうそれはお兄ちゃんではなかった。
私を慰めてくれたお兄ちゃんは、もうどこにもいなかった。
あの日、私に『助けて』と言った優しいお兄ちゃんは、もうどこにも。
「……お兄ちゃん」
仕方がなく、私はお墓へとやってきた。
そっと花束を置き、静かに手を合わせる。
やっぱりお兄ちゃんは返事をしてくれなかったけど、本来はこれで正しいんだ。
だってもう、お兄ちゃんは死んでしまっているのだから。
「プリン半分、置いておくね」
またいつか、生まれ変わってまた兄妹になったら、プリン半分こしようね。
一緒にアイス食べたり、何でもないことで笑い合ったりしようね。
そっと囁いて、立ち上がる。
制服のスカートが、吹き抜ける風で揺れていた。
――――私は、在りし日のトラック運転手を殺すことにした。
おわり。
え?
昔の恨みって、ある日突然忘れた頃に殺意にまで登りつめそうになるよね。
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