平和ボケ兵士とエセ商人 (25)
オチのない勢いだけで考えている短編です。
ちなみにちょーっとだけ長いので随時更新を心掛けていきます。
お暇な方は是非ゆっくり読んでいってくださいね
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「あー暇だなぁ…街の周辺の見回りつっても魔物も出ないし…あーあ、俺だってもっと王族とかの護衛したいよ…」
いつもの昼下がり、俺は広大な草原で見回りをしていた。
俺の任務はこの1kmぐらい先にある街を守る事…といってもまだ下っ端なので、街の周辺に怪しいやつが来ないかの見回りだけだ。
「街を守ってる兵士っていうと聞こえはいいけど、俺みたいな下っ端じゃあ地味な仕事ばっかだもんなぁ。」
見渡す限り草、草、草。まあそりゃあ草原なんだから当たり前だ。変わった所といえば、周りに白やらピンクやらの花が咲いてて綺麗な事ぐらいだろうか。
上を見れば空は鮮やかなまでに青く、暖かい日差しがキラキラとふり注いでいる。
風は吹く度に草や花を撫で、柔らかな緑の香りがする。
まるで絵に描いた様な平和ぶりである。
「…昼寝でもしちまおうかなぁ。」
「いや、でもここ確か大きな道があったんだっけ。見つかったらまずいなぁ、やめとこうかなぁ…」
しかしこの天気、そして柔らかく調度寝転びやすそうな草
特にやることもなく暇な俺はこの自然の誘惑には勝てず、少し高く茂った草むらの日陰の中で眠りについた。
「おーい…」
どれくらい時間が経ったのだろうか、誰かが呼ぶ様な声がする。しかしその声に聞き覚えはなく、まだ眠かったのもあり俺はその声をスルーしていた。
「おーい…おーい…」
まだ聞こえるが、そんな事は気にしない、きっとこのまま寝ているフリをすればそのまま通り過ぎて…
「おーい! おーいってば! 起きろぉぉぉぉぉ!」
「うわっ!?」
肩を掴まれ、すごい勢いで頭を揺さぶられる、たまらず俺は目を覚ます
「な、なんだお前!?」
「うわっ!?」
あまりに突然の事で、条件反射なのか俺は側に置いてあった剣を声の主に向けていた
「ちょちょちょちょっと! 落ち着いて! ちょっとクールダウンしよ!? シッダウン! シッダウン!」
「お前は何者だ!? 俺に何しようとした!?」
「ちょい待ち! おじちゃんはただ道を聞こうとしただけだから! 別に襲ったりしないから!!」
そう弁解する相手を、俺はもう一度じっくり見た。黒い長髪、それに見たことない様な服
それと…ん? 胸?
「お前女か!? 女なのにおじちゃんとはますます怪しい…!」
「待ってって! なんで更に剣構えるの!? おじちゃんはただの旅商人だよ!」
「旅商人? なら商売許可証を持っているだろ、見せてみろ」
「うっ…それは…」
「持ってないのか?」
「あー…あはははは、実は商人つっても、おじちゃんが売る物は「物」じゃあないからねぇ。別に許可証とかいらないかなーって…」
「むぅ、確かに貿易や交通情報を流す商人とかはいるな…」
「そう! まあちょっと違うけどおじちゃんは情報商人なの! だから怪しくないんだってば!」
しかし、こうは言っているがもしかしたら俺の言っている事に便乗して嘘を言っているかもしれない。
もしかしたら人に言えない商売だってやっているかもしれない
明らかに挙動不審な彼女だが、奴隷商人か何かの可能性もあるかもしれない…!
「…怪しい!」
「ぬぉぉぉぉ剣先こっちに向けるのやめてってばぁぁぁ!」
「やはり連行する! 場合によっては何をするかわからないからな…!」
「うーん、まあ…おじちゃんも街まで行きたかったし、別に連行されてもいっかなぁ…」
「お前何呑気な事言ってんだよ…捕まるかもしれないんだぞ?」
「えー、おじちゃんなんも悪いことしてないから捕まる要素ないし…じゃっ、道案内ヨロシクー!」
なんだこいつは…普通へ連行するなどと言われたらかなり焦る筈だ。しかしこの自称商人、動揺するどころか少し楽しんでいないか…?
しかし俺はここで大事な事を思い出す。
「今何時かわかるか…?」
「今? えーっと…4時30だね」
「げぇっ! やべえ…!」
俺の街の騎士団では5時に今日一日の出来事の報告会議がある。
しかしこの草原から街までは急いでも25分はかかる! このままでは走らなければ遅刻になってしまう…!
「クソッ、ええいめんどくさい! おいエセ商人ついてこい! 案内だけはしてやる! 走るからくれぐれもはぐれるんじゃないぞ!」
「お! お兄ちゃんやっぱ優しいねぇ~、よぉーし街まで競争だぁ!」
俺は剣を収めるとそのままエセ商人の手を強引に掴んだむ
草原の花や草を蹴散らし街を目指して駆ける二人の影はだんだんと沈みゆく日と共に伸び時間の経過を知らせていた。
ちょっと眠気がやばいので今回はここまでの更新とします。ありがとうございました!
おつ
「ねえお兄ちゃん、君兵士? 兵士なの?」
「そうだよ! もしかして他の兵士に昼寝してたとか言うつもりか!?」
「いんやー? まあ急ぎ足だけど道案内してくれてるしそれは秘密にしといてあげるよ!」
「ほ、本当にだな!?」
「おじちゃん恩人に嘘はつかないよ! 大丈夫だって~」
エセ商人はそんな事を言いながらもヘラヘラと笑っている。本当に緊張感がないというか…
いうか、何かおかしい
大体700mぐらいを全力で走っているのに全く息が上がっていない。
俺はまだ訓練を積んできているから一般市民よりは体力があるつもりだが、それにしたってこれだけ走れば大分キツい。
それなのにこいつは汗一つかかず平気な顔をしている、まさかこいつ、魔物か何かか?
「あっ、ちょちょちょストップストップ!」
「うぉ!?」
いきなりエセ商人が手を引っ張ってきたので、その反応で俺はそのまま後ろに倒れてしまう
「いててて…一体なにすんだよ!」
「いやほら目の前、川流れてたから…」
こいつについて考えすぎていたらしく、俺は目の前にある巨大な川さえ気がつかなかったらしい。
「ねぇこの川一体どうなってるの?明らかに自然にできた川ではなさそうだけど…」
「あぁ、この川はここから更に西に行った場所にある王国が防衛の為に作った魔術による人工の川だ。この街は東の大陸との中間にあるから貿易が盛んで、王国の商人達もよく使うんだぜ」
「へぇ、だからこんなに激流なんだね!」
「そうだ! 王国の魔術部隊の精鋭達が作りあげた魔法による激流は来る物を寄せ付けない…って…」
「これじゃあ渡れないね?」
「うわぁぁぁ道を急ぎすぎてすっかり忘れてたぁぁぁぁ!!」
この街にはこの川がある為に街正面にある桟橋からしか入れないのだ。
どうやら急ぐ余り街の正面からどんどんずれていたらしい。
「しょうがない、ちょっと時間はかかるがここから正面に回るしかないか…なあ今の時間わかるか?」
「えーっとね、4時50分かな」
「も、もう俺はダメなのか…」
何かを悟った俺はいきなり脱力感に襲われ、地面にガクッと膝をついてしまった
橋を渡るのが5分だとしても、正面に回る時間を考えればもう集会には間に合わないだろう。
「あぁ、さようなら俺の晩飯…」
「うーん、なんか用事があったのか、じゃあしょうがないなあ」
エセ商人はうなだれた俺の肩をしっかり掴むと、何かを小さく唱え始めた。
「…?何やってるんだお前?」
「ちょっと頑張って踏ん張ってね、なんせ急だから着地失敗するかもしれないから!」
エセ商人が何かを唱え終わると、辺りの草がザワザワと揺れ始め、その瞬間宙に浮く様な感覚に襲われる
気がつくと俺は街の門の目の前にいた。
夏風邪を引いたせいでちょっと書き溜めができなかったのですがまたちょくちょく書いていきます、見てくださった方々申し訳ありませんでした…
では続きをどうぞ
「えっ…? 今、一体何を…」
「このお礼はまた今度でいいよ!
それじゃっ、またねー!」
エセ商人はそう言うと街の中に向かって走っていった
門の前にいた見張り兵まで目を見開きぽかんとした表情でエセ商人の方を向いていた。
「…君、今のは一体?」
「え!? あ、いや、俺集会で急いでるんで! 失礼しまーす!」
俺も正直混乱していたが、とりあえずなんとかなったので集会に向かう
空はすっかり赤くなり、日暮れを伝える教会の鐘が街に鳴り響いていた。
ーーー
「あー危なかった…なんとか晩飯抜きにならずに済んだぜ…」
「お前随分息を切らしてたけど走ってきたのか? まさか昼寝でもして時間がやばかったから走ってきたとかか?」
「何にやついてんだよ…俺が図星な事ぐらい知ってんだろお前…」
俺は集会の帰りに同僚の兵士と駄弁っていた。
辺りは暗くなり、夜の7時ぐらいだろうか、仕事を終えた人々がそれぞれの家庭で夕食を楽しむ時間になっている。
「お前は街の見回りだっけ? いいよなぁお前は、何か事件があったら犯人とか連行したりすんだろ?」
「まあな、でも大きな事件なんてありゃしないしあったとしてもただの酔っ払いの喧嘩ぐらいさ。まったくこの街は平和だよ。」
「本当平和だよなー、平和すぎて昔はわんさかいた筈の魔物の一匹も出てこないからな…でも今日はちょっと変わった事あったぜ」
「おおそりゃよかったな、なんかいい収穫でもあったか? それともなんか不審者でもいたか?」
「そうだよいたんだよ不審者、よくわかったな…不審者つうか自称商人みたいな感じだったんだけどさー、なんか案内しろって言われたから帰りついでに走ってきたらそいつ息切れとかしないし、なんか知らない場所に転移魔法とか使うし…」
「転移魔法!? お前それってかなり高位な魔法使いじゃなきゃ使えない様な呪文じゃねえか、国の要人とかじゃなきゃなんかやばいやつじゃ…」
『あ、いたいた! おーい寝坊助兵士くーん!!』
大通りに繋がる薄暗い路地の先から聞こえる声…この声はまさか…
「やっと見つけたよー! 集会場ってとこの前でずっと待ってたけど、みんな一斉に出てくるから見失っちゃってさー!」
やはり声の主は昼間のエセ商人だったらしい。
薄暗くて足元もあまり見えない路地を此方に向かって軽快に走る様は正に昼間の彼奴だ。
「おいおいあんな子を案内してたのかお前!? なかなかいい女の子じゃないか…!」
「お前あの格好見て怪しいと思わないのか!? あの服、流石に東の大陸の商人でも着てないぞ」
「別にいいんじゃねえか? 商人なんて客の目を惹かなきゃやってらんねぇしな、そんな事より見てみろよ! 走る度にあのたわわに実った大きな二つの果実が揺れて…」
「お前な…」
スレンダーでしなやかな細身の美人体型という訳ではないが、確かにあのむっちりとした柔らかそうな身体つきはなかなか…
「いやいや! そんな要人レベルの高い魔力を持った奴が何の申請もなく来てるんだぞ!? 完全に要注意人物だろ!!」
「おや、もう一人の君はご友人かな? お話中いきなりお邪魔しちゃってごめんね!」
「いえいえ! 丁度貴方の事を話していた最中でしたので! こいつなんかわざわざ心配して頂いて…ほら、探して来てくれたんだぞ! ちゃんとお礼言えよ!」
「お前完全に人の話聞いてなかっただろ!!」
「ほらほら、二人ともケンカしないケンカしない! 」
「そうだ! 笑顔が一番だぞ!」
「エセ商人! お前まで馴染むな!!」
「んで、なんで俺の事探してたんだ?」
「いや実は大変お恥ずかしいんだけど、実はおじちゃんまだこの街の事よくわかんないし、明日君に案内してほしいなーとか思ってさ」
「ああ、俺明日休みだし大丈夫だが…」
「やった! じゃあ明日の9時にあの集会場? の前で待ち合わせがいいな!」
「ああ別にいいぞ。だが明日までに何か問題を起こしたりしたら即刻騎士団に連行するからな!」
「へいへい大丈夫ですよ! おじちゃんだって大事な約束の前に変な事はしないさ。ふふふ、楽しみだなーっ!」
エセ商人は両手を横に開きぐるぐると回りながら喜んでいる。
そんなに買い物に行くのが嬉しいのだろうか?
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