恭子・洋榎「姫松の日常SS?」由子「なのよー」 (132)

インターハイが終わり、卒業までの姫松三人娘の日常を書いていきます。

基本的には恭子・洋榎・由子の三人しか出てきません。
そして麻雀描写は皆無になります。

だいたいの流れとしては、夏休み編・文化祭編・大阪府民麻雀大会編・修学旅行編・冬休み編で書いていきます。

それぞれある程度書き溜めてから投下しますが、なるべく間隔が空かないよう頑張ります。

主な登場人物

末原 恭子
ツッコミ担当・おしゃれ番長。
卒業後は地元の国立大学へ進学。

愛宕 洋榎
ボケ担当、揚げ物が大好き。
卒業後はどこかの実業団に所属予定。

真瀬 由子
主にツッコミ・のよー担当。
卒業後は海外留学をする模様。

最後まで読んでいただければ幸いです。
それでは、どうぞー。

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夏休み ーその1ー


愛宕家


恭子「ごめんくださーい」


洋榎「おー恭子、いらっしゃー」


恭子「由子は?」


洋榎「もう来てんで、上がってや」


恭子「おおきに。おじゃましますー」


洋榎「あ、邪魔すんなら帰ってや?」


恭子「そういうのええから!」


洋榎の部屋


洋榎「ゆーこ、恭子が来たでー」


恭子「由子おはよ…って!」


由子「きょーこー、おはよー」グデーン


恭子「めっちゃ寛いどんな…自分ん家か!」


洋榎「いや、ウチの部屋やけど…」


恭子「あんたは真面目か!」


由子「もう外が暑くて暑くてー…この部屋ちょー最高よー」ゴロゴロ


恭子「まぁ確かに暑いけど…ちょっとこんなか寒ない?」ブルッ


洋榎「由子が暑いー暑いー言うからな…温度下げたってん」


恭子「何度にしてん…って18度!? 冷やしすぎやろ!」


洋榎「マックスに冷やしたった!」


恭子「なんで得意げやねん…そういや、今日はどうする?」


由子「えー…もう一日中、ゴロゴロでええんちゃうー?」グダグダ


恭子「ゆーこがダメ人間に…」ガクッ


洋榎「そんなら、それぞれ意見を出し合おうやないか」

洋榎「恭子の案から聞くわ」


恭子「そうやなぁ…暑いし、図書館で勉… 洋榎「却下や!」


恭子「なんやねんそれ!」


洋榎「却下や!却下!ド却下や!」


恭子「ひどい…じゃあ洋榎は?」


洋榎「ウチはなー、山にいってキャンプ… 恭子「無茶いうなや!」


洋榎「なんやねん! 山でキャンプ楽しいやん!」


恭子「いやいや…道具もないし! ”そうだ、京都いこう”的なノリで行けるかー!」


洋榎「なんや恭子わがままやなー」


恭子「洋榎に言われたくないわ!」


恭子「最後に…ゆーこは?」


由子「うーん… 割と近場でー、冷たい水が張ってあってー、食べもんが無駄に高いところー」


恭子・洋榎「ピンポインツ!!」


恭子「えーと、って事は由子はプールに行きたいんか?」


由子「ここ何年もプールにはいってないのよー」


洋榎「ええなぁ!ウォータースライダーに、流れるプール!」


由子「浮き輪持って行くのよー」


恭子「プールかぁ…よう考えると私も全然行ってへんな」


恭子「よっしゃ! そしたらこれからプールいこ!」


洋榎・由子「おー!」

ショッピングモール


恭子「てなわけで、プール行くにしても水着買わんとな」


洋榎「えー、学校の水着でええやんか?」


由子「それはちょっと恥ずかしいのよー…」


恭子「ウチらは花の女子高生…せっかくやから可愛い水着を着たいやんか!」


洋榎「恭子、目がまじやな… まぁええわ、それぞれ気に入ったやつ適当に試着して買おうや」


由子「さっそく店内を物色するのよー♪」


恭子「じゃあまた後でなー♪」


恭子(由子はともかく、問題は洋榎や…。 どこか人と違った感性の持ち主やから、気にしとかんと)


洋榎「恭子ー! これどうや!?」


恭子「どれどれ…ってなんやコレ!生地少なっ!!」


洋榎「セクシーやろ? あ、恭子が着るんやで?」


恭子「アホか! こ、こんな水着きれるかー! 露出狂やないか!」


洋榎「ダメかぁ…ほんならコッチならどうや?!」


恭子「ハイレグ!! 2014年にまさかのハイレグ!!」


洋榎「わがままなやっちゃなー! ほんなら…
恭子「自分で着るやつ探さんかい!」ビシッ


洋榎「いたた…すんませんしたー」

試着室


恭子・洋榎・由子「せーのっ!」


シャーーーッ!


恭子「おぉー…二人ともそんな感じなんやな!」


洋榎「なんか恥ずいな…!」


由子「二人ともよく似合ってるのよー♪」


恭子「洋榎はピンク系の淡いグラデーションのビキニか」


恭子「由子はうす黄色のビキニに、下のフリルも可愛ええな!」


洋榎「恭子は黒地に薄紫の細かいドットが大人っぽいなー!」


恭子「ホンマに? いやー早うプール行って遊びたいわー!」


洋榎「そや! お会計だけ済ましてこのまま着ていけば…!」


由子「考えることが男子小学生の発想なのよー」


洋榎「ええやん! どうせ向こうで着替えるんやし…」


恭子「まぁ一応、な? 向こうで着替えようや」


洋榎「はいはいっと、そしたら元の服に着替えんでー」


由子「着替えたら浮き輪を見るのよー♪」

洋榎「水着よーし!」ビシッ


由子「浮き輪よーし♪」ビシッ


恭子「日焼け止めよーし!」ビシッ


由子「プールやぁぁぁぁー!」
恭子「遊ぶでぇぇぇぇー!」
洋榎「いやっほぅぅぅー!」


ザッパーン!!


由子「はぁー! 最高なのよー!」


恭子「めっちゃ気持ちえぇなぁ! 」


洋榎「天国や! ここは天国やで!」


由子「ひゃー! 流されるー!」


洋榎「恭子! 由子の浮き輪に掴まんで!」


恭子「一緒に流してもらおうや!」


由子「アカン! 沈むのよー!」


………


洋榎「かき氷うまぁぁぁー!」


恭子「ゆーこ、ブルーハワイひと口くれへん?」


由子「いいよー、恭子のイチゴも食べたいわー」


洋榎「…アカン、頭キーンなってきた…」ズキズキ


恭子「勢いよく食べるからや!」


由子「私のブルーハワイでも食べて落ち着くのよー」


洋榎「鬼や! ここに鬼がおるで!…ってマジで痛いわ…」ズキズキ

洋榎「ウォータースライダーやろーや!」


由子「わー♪ 楽しみなのよー!」


恭子「いやでも、待ち時間30分やって…今日はやめとかへん?」


洋榎「あれれー? もしかして末原さんビビっとるちゃうんー!?」


由子「これはいただけないのよー、漫ちゃんが聞いたら悲しむわー」


恭子「は、はぁ!? そんなんちゃうし! ただ待つのがしんどいだけやし!」


洋榎「むふふ、そんなら末原さん一番先に滑ってええで?」ニヤニヤ


由子「私らは後でもええからな」


恭子「そうかいそうかい! ほな、お言葉に甘えて先行かせてもらうわー!」


洋榎「よっ! さすが末原恭子っ!」


由子「本当は滑りたくないのに意地を通した結果!」パチパチ


恭子「ぐぬぬ…こいつら!」


………


洋榎「次は恭子の番やな!」


由子「お願いします!先輩っ!」


恭子「誰が先輩やねん! …よっしゃ!やったるわ!」


係員「それではいきまーす、3、2、1、ゴー!」トン


恭子「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」シュゴォォォ!


洋榎・由子「あ、行った!」

恭子「アカン… 死ぬかと思うた!」ガクブル


洋榎「いやーおもろかったな!」


由子「なかなかスリリングだったのよー♪」


恭子「あーもう…」涙目


洋榎「もう一回乗ろか!」


由子「大賛成よー」


恭子「もうええわっ!」


………


由子「今日は一日楽しかったのよー♪」


洋榎「ほんまやな! 今度は海でも行きたいわー」


恭子「海もええなぁ。 日焼け止め塗ったけど結構焼けたわ」


洋榎「部活も室内やったしな」


由子「今日はお風呂入るの辛そうやなー」


恭子「たしかに…。 あ、なんか適当に食べて帰らへん?」


洋榎「せやな。 何か食べたいもんある?」


由子「ファミレスでいいんやない? なんでもあるしー」


洋榎「じゃあファミレス行こか。恭子もええかな?」


恭子「ええよ、ファミレスで。 ほんなら駅前んところにしよか」


洋榎「あー、かき氷食べたいわ」


由子「ええなぁ。私はブルーハワイ味が食べたいわー」


恭子「たしかに、体も火照ってるしな…って!」


恭子「さっきプールで食うてたやん!?」

末原さんツッコミ忙しいなwwww

きたい

夏休み ーその2ー


愛宕家


恭子「………」カリカリカリ


由子「………」カリカリカリ


洋榎「………」ゴロゴロゴロ


恭子「…ふぅー、こんなもんかな」


由子「私もひと段落ついたのよー」


洋榎「おっ、勉強終わった?」ガバッ


恭子「とりあえず休憩やな…ってもう昼過ぎとる!」


由子「お腹減ったのよー」ぐぅー


洋榎「ウチもや、暇すぎてお腹減ったわ…」


恭子「ゴロゴロしとっただけやのに!」


由子「燃費悪すぎよー」


洋榎「暇なんも結構辛いんやで?!」


恭子「ほんなら洋榎、なんかお昼作ってーな?」


洋榎「ウチが作るんか?! まぁええけど…何がええんや?」


恭子「作るんや!? うーん…特にこれといっては…」


由子「おむすびとか簡単なものでもいいのよー?」


洋榎「うーん…まぁ適当に作ってくるわ。ちょい待っとって?」

恭子「由子、洋榎って料理できるん?」


由子「どうやろねぇー、お鍋を焦がすイメージしかないのよー」


洋榎「できたで!」バンッ


恭子「はやっ! すっごいいい匂い!」


由子「洋榎にしては上出来よー!」


洋榎「由子はちょいちょい失礼なやっちゃなー! ほれ、ホットケーキや」


恭子「ええやん! 焼くの上手いなー」


洋榎「せやろ? ウチの数少ないレパートリーのひとつやねん」


由子「他には何が作れんのー?」


洋榎「他には…まぁ、唐翌揚げとかは得意やな!」


恭子「ちょっ、料理の系統がぜんぜんちゃうやんか!」


洋榎「かまへんかまへん、ウチは唐翌揚げがあれば生きてけんねん」


由子「栄養バランス偏りすぎよー」


洋榎「由子はウチのオカンか! ほら、早よ食べーや」スッ


恭子「すまんな。 いただきまーす」


由子「いただきまーす」パクッ

洋榎「どうやろか? 美味いか?」


恭子(…コメントしずらい味や)


由子(味が全然せえへんのよー…)


洋榎「なんや二人とも! どれどれ…まっず! なんやこれ!」


恭子「そ、そんなことないで!」


由子「ひ、洋榎の気持ちは伝わってくる味やでー?」


洋榎「やめて、二人の優しさに泣けてきそうや…」


恭子「そ、そや! ハチミツ! ハチミツとかないんか?」


由子「この際ならメープルシロップでも構わへんのよー!」


洋榎「そんなんあったらな…最初っからかけて出しとるわ!」ブワッ


恭子・由子「ごめん!洋榎っ!」

洋榎「ウチはホットケーキもろくに作れん…女子力最底辺のぽんこつや…」


恭子「洋榎がいじけてもーた…」


由子「得意料理とかいって自分でハードル上げとったからねー…」


洋榎「すまんな二人とも…ウチはダメ人間や…」


恭子「そ、そんな事ないで! 私だって料理そこまで出来へんし…」


由子「わ、私だってそうよー…」


洋榎「ありがとう二人とも…」


恭子「そや! 気分転換にゲームでもしよか?」


由子「ええなぁー、洋榎もやろー?」


洋榎「よっしゃ! 何やるー!? マリパか? 格ゲーがええか?」ケロッ


恭子(は、はめられた…!)


由子(とんだ策士なのよー…!)


洋榎(こっちは数時間も暇してたんや…! まんまと罠にかかりよってからに。わっはっは!)ニヤリ


恭子「さーて勉強しよかー」棒読み


由子「ゲームは後でやろー」棒読み


洋榎「そんな殺生なぁー!!」ブワッ


けっきょく洋榎はその後、一人でネトマをして遊んでた。

引退したから主将呼びじゃなくなってるのね

洋榎の余裕羨まし
まあドラフトでも推薦でもたくさん需要ありそうだもんな

夏休み ーその3ー


大阪某所


洋榎「夏や!祭りや!」バッ


恭子「花火大会や!」バッ


由子「風情やねー♪」


洋榎「去年の花火大会は大雨で中止やったからなー」


恭子「今年は晴れてよかったわ」


由子「去年着れなかった浴衣も着れて嬉しいのよー」


洋榎「打ち上げまで時間あるし、出店でもみーへん?」


恭子「ええなぁ、ちょうど小腹も空いてきたし」


由子「かき氷食べたいわー。ブルーハワイのやつ」


恭子「ゆーこはブルーハワイ好きやなぁ」


洋榎「ここウォータースライダーないんか?」


恭子「それ完全にデジャヴや!」

恭子「あれ? あそこにおるの、セーラちゃう?」


由子「ホンマにー? あ、たしかにセーラやなー」


洋榎「おーい! セーラー!」


セーラ「ん? なんや姫松の三人やないか! 久しぶりやなー!」


恭子「セーラも花火観にきたんか?」


セーラ「まぁな! 夏といったら花火やろ!」


由子「一人できたのー?」


セーラ「いやー、泉たちと来たんやけど気がついたらオレだけ一人になってんや」


セーラ「あいつら迷子になったに違いないわ!」


洋榎「いやいや、それお前が迷子になっとるんやろ!」


セーラ「なんやて!? あ、洋榎! いいかげん30円返さんかい!」


洋榎「すまんな、今日は細かいの持ってへんねん…」


恭子「いやいや、30円くらい財布にあるやろ!? 」


セーラ「しゃあないなー! ほんならまた今度でええわ!」


恭子「ええんかい! 次いつ会うか分からんのにええんかいっ!」


由子「きょーこ、金魚すくいやらへんー?」


恭子「あんたは自由やなぁ! まだこっちの件処理出来てへんのに!」

洋榎「金魚すくい!? やろやろ!」


セーラ「やるか! 金魚すくいならオレにお任せやで!」


恭子「なんやセーラ、金魚すくい得意なんか?」


セーラ「千里山の金魚姉さんとはオレのことやで!」ドヤァ


恭子「うわっ…ネーミングセンス皆無やなー!」


由子「みんなで勝負よー♪」


洋榎「負けたら罰ゲームなー!」


セーラ「罰ゲーム!? なんや燃えてくる展開やなー!」


恭子「嫌な予感しかせーへん…」


セーラ「なんや恭子! 本気でやらんとオレには勝てんで!?」


恭子「はぁ…ほな始めよか」

数分後


恭子「金魚姉さんどこいったん…」


洋榎「金魚すくい中にいなくなるとか、セーラらしいわ」


由子「私が見た時にはすぐに紙が破けてたのよー」


洋榎「てなわけで、罰ゲームは恭子に決定やな!」


恭子「なんでやねん!」


由子「洋榎、罰ゲームの内容は?」


洋榎「そうやなぁ…一位の人の言う事を何でも聞くってのはどうや?」


恭子「えー…洋榎が一位やん。嫌な予感しかせーへんわ…」


由子「決まりは決まりやしねー」


恭子「はぁ…それで? 私は何したらえーんや?」


洋榎「…何も考えてなかったわ!」


恭子「見切り発車か! なんかこう…考えてから発言せーや!」


洋榎「ええやん!良きタイミングで恭子に頼むから!」


由子「じゃあ私も良きタイミングでー


恭子「なに便乗しとんねん! はぁーもう…」

洋榎「あ! そろそろ花火始まんで」


由子「ほなそろそろ行くのよー」


恭子「せやな、行こか」


………


ヒューーー…ドーン!!


恭子「きれいやなぁ!」


由子「たーまやー!」


洋榎「花火見んのも久しぶりやな」


恭子「花火ってこんなにきれいやったか…」


洋榎「そうやなぁー…」


由子「洋榎、口あいてんでー…」


洋榎「そういう由子こそ…」


恭子「あ、花火そろそろフィナーレみたいやで」

帰り道


洋榎「いやー、めっちゃ綺麗やったなぁ!」


洋榎「花火大会も終わってもうたし、夏休みもあと一週間しかないなぁ」


恭子「たしかに…あ、夏休みの課題とか終わっとるよな?洋榎」


洋榎「………もちろんや!」


由子「今の空白はなんなのよー。まさか今年も…」


洋榎「……んなわけないやろ!」


恭子「自由研究」


洋榎「…!」ビクッ


由子「数学のプリント30枚」


洋榎「…!!」ビクッ


恭子「読書感想文800字」


洋榎「…なぁ恭子。一つ聞いてもええか?」


恭子「なんや、洋榎」


洋榎「タイムマシーンって何処に行けば乗れるんや?」


恭子「…現実逃避すなっ!」


このあと洋榎は、恭子に小一時間説教された。

その間由子はかき氷を食べながら、線香花火を楽しんでいた。

乙乙
ボケとツッコミと天使、このトリオ好きだ

ー姫松祭編ー


放課後


恭子「結局うちのクラスはメイド喫茶になってもうたな…」


洋榎「まぁ無難やないか? 文化祭といえば、って感じやし」


由子「そやねー」


恭子「いやいや…てか3年連続でメイド喫茶て!? どんだけメイド服着たいねん! ボキャブラリー少なすぎやろ!」


洋榎「えー? いいやんか。準備とか去年のやつ使えるから楽やし…」


恭子「洋榎は去年も一昨年も麻雀部の出しもん行ってたやんか!」


由子「あれは仕方ないのよー、洋榎目的でライバル校の子達が集まってきちゃうし」


洋榎「せやせや! あーウチもメイド服着たかったわー」


恭子「まったく心こもってへんで?それ…」

由子「でもでも、恭子は2年連続でお客さんの投票1位だったのよー」


洋榎「あーあれな! 乙女モードの恭子な!」


恭子「なんやねん乙女モードて! 正直な、メイド服とか高3で着るの恥ずかしいねん…」


洋榎・由子「需要はあるから大丈夫!」グッ


恭子「やかましいわ! てか…洋榎も今年は着るんやで?」


洋榎「えー…あんなん恥ずかしくて着られんわ」


恭子「さっきメイド服着たい言うてたやん!」


洋榎「はぁ…由子は普通に似合うからええよなー」


由子「そうかなー? まぁ普段出来ない格好やから楽しいでー」


恭子「はーもう…今から憂鬱や」


洋榎「なに言うてんねん! 今年で姫松祭は最後なんやで? 思いっきり楽しまな!」


由子「そうよー!思い出作りと思って、がんばろ?」


恭子「まぁ…せやな。 とりあえず頑張りますか」


洋榎「千里山の連中にも恭子のメイド姿をやな…


恭子「アホか!呼ばんでええっちゅーねん!」

翌日・教室


由子「おはよー」ガラッ


恭子「あぁおはよ…ってなんやその格好!? メイド服?」


由子「これ? 去年のやつが着れるか、試着したのよー」


恭子「そうやったんか。 朝からビックリしたわ…」


由子「去年より少しゆるいかなー?ウエストのあたりが」


恭子「ええなぁ、私も後で試着してみようかな?」


由子「恭子も大丈夫よー。見た目変わってへんし」


恭子「それは…複雑な気持ちやな」


洋榎「おっはよー! って由子?!どないしたんその格好」


由子「かくかくしかじかでー」


洋榎「なるほどなぁ…あ! あれ言ってみてや、お帰りなさいーってやつ」


由子「おかえりなさいませ♪ お嬢様♪」ニコッ


洋榎「はー! たまらんなぁ!」


恭子「アンタはおっさんか!」


由子「スマイル1回1000円になりまぁす♪」ニコッ


洋榎・恭子「ぼったくりや!!」


由子「いやー妥当な金額よー?」


恭子「どこがやねん! てか、もうすぐ授業始まんで?」


由子「あ…! うっかりしてたのよー、着替えてくるわー」


恭子「忘れとったんかい…!」

放課後・更衣室


恭子「えーと…去年の衣装はどこかな…あった!」


恭子「…大丈夫!そんなに変わっとらんし、着れるハズや」スッ


恭子「…ファスナーが上がらんやと!」


恭子「………」しょぼん


教室


恭子「………」ガラッ


洋榎「おー恭子! どうやった?メイド服着れたか?」


恭子「あ、あぁ! 全く問題あらへんよ!」


由子「あっ…(察し)」


洋榎「そかそか。せや、帰りに何か食べていかへん?」


恭子「あ、あー…ごめんな。 今日はちょっと寄ってくとこあるから」


洋榎「そうなん?そんならその後に行こうやー!」


由子「洋榎、今日は恭子ちょっと体調悪いみたいなのよー。 また今度にしよ?」


洋榎「え、そーなん? 恭子さっきメロンパン食うて…


恭子「べ、別腹やから!」バンッ


洋榎・由子「!!」ビクッ


恭子「体調悪いのと…その、メロンパンは別腹やから! 今日はホンマにごめん!」タッタッタッ


由子「いっちゃったのよー…」


洋榎「なんや恭子…変な奴やなー」

翌日・教室


恭子「おはよー」ガラッ


由子「恭子おはよー。 あのな、恭子…」


恭子「どないしたんや?由子」


由子「昨日さ、メイド服試着したんやろ? 本当はどないやったんー?」


恭子「…由子は相変わらず鋭いなー。言うまでもないわ」


由子「やっぱり…新しいの作ったらー?」


恭子「それも考えたんやけどな、やっぱ悔しいねん!去年の服が着れんくなったのが…」


由子「気持ちは分かるけどー…恭子は去年より背伸びてるし、サイズが変わるのは仕方ないのよー?」


恭子「ありがとな由子、まぁ本番まで時間あるし…ダイエット頑張るわ!」


洋榎「誰がダイエット頑張るやてー?」ひょい


恭子「ひ、洋榎…!」ビクッ

洋榎「なるほどなー、それで昨日は急に帰ったりしたんやな?」


恭子「すまんな、洋榎」


洋榎「なんやねん水くさいなー! 言うてくれたら協力したるで?!」


恭子「ありがとうな」


由子「せやでー、私らで協力して恭子を可愛いメイドにやなー…


恭子「ちょっ!ゆーこ」


洋榎「まぁあれや、成長期っちゅーのはウチらの特権やで!」


恭子「はは、なんやそれ。 そういや洋榎はよう食べるのに、めっちゃ細いよなー」


洋榎「ウチか? あぁウチな、いくら食べても全然太らんねん!」ドヤァ


恭子「なんやそれ! 自慢か!」


由子「羨ましい限りなのよー」

放課後


恭子「今日から洋榎の衣装を作ってくで?」


洋榎「えぇ!? ホンマにウチも着るんか?」


由子「当たり前なのよー」


恭子「ほれ、サイズ測るから立ってや?」


洋榎「はぁ…じゃあ」ガラッ


恭子「………」スッスッスッ


洋榎「ふひ…ふふふ! あははは!やめっ、くすぐったい…!」


恭子「はい終了ー、もうええで」


洋榎「あはは…やばかったわ」


由子「洋榎のやつはとびっきりフリフリにしちゃうのよー」カキカキ


洋榎「えっ!? ちょっ!」ビクッ


恭子「思いっきりミニスカートでな!」ニヤッ


洋榎「ちょ、堪忍してーな!ちゃんと着れるやつで頼むでー!?」


由子「こんなんでどうかなー?」


恭子「おっ、ええやん! あとはここに洋榎のサイズを書いて…」


洋榎「どれどれ!? ウチにも見せてーな!」ひょい


由子「だめー! 洋榎は出来てからのお楽しみよー」スッ


洋榎「なんやそれ! ほんなら、もし変なヤツやったらウチは着んからな?!」


由子「それはそれで恥ずかしいでー? 制服指定やったのにジャージで校外学習来ちゃうみたいなー」


恭子「ゆーこ!それ中学時代の私の実話やし!まだ憶えとったんか!」


洋榎「えー!?末原さん! そんな実話があったんですかー?」ニヤッ


恭子「うっさいわ! こうなったら洋榎のメイド服はシースルーに…


洋榎「あーすんません! 調子乗りましたぁー!」

姫松祭・本番前日


恭子「さてと、飾り付けはこんなもんやろな」


由子「恭子ー、この後みんなでメイド服着るから準備よろしくねー」


恭子「わかったわ、ほんなら衣装とってくるわー」


………


更衣室


恭子「大丈夫…絶対入る!」


恭子「よしっ!」ススススー


恭子「上がった…! しかも若干余裕あんで!」


洋榎「ようやったな!恭子」スッ


恭子「洋榎っ!? ってどっから出てきてん!?」ビクッ


洋榎「ウチもな…衣装を試着しようかな思うて」


洋榎「どうやっ!」バッ


恭子「おー…可愛いやん!」


洋榎「せやろー? 可愛いやろー!」


恭子「ははは、孫にも衣装やな!」


洋榎「なんやそれ!?」


恭子「冗談や、冗談。 よう似合ってんで?」


洋榎「ホンマやろな? あ、そろそろ教室戻らな!」


恭子「せやな、ほな行こか」

由子「きょーこ! 無事に衣装が入って良かったねー!」


恭子「ありがとな由子! 頑張った甲斐があったわ」


洋榎「ゆーこ! ウチのメイド服姿はどうや?」クルッ


由子「かわええよー? 孫にも衣装やなぁー」


恭子・洋榎「デジャヴや!」


由子「それはそうとー、これからメイド服で全校生徒に宣伝するらしいのよー」


洋榎「えっ!? そんなんするん?」


恭子「あぁー…そういや去年もやったなぁー」


洋榎「まずい…いやや!」


恭子「なんやねん、今さら恥ずかしくなっ…


洋榎「化粧直しせな!!」


恭子「そっち!? いやええやん!本番明日なんやから!」


洋榎「せやけど…せめて髪型だけでも!」


由子「変なスイッチが入っちゃったのよー…じゃあ恭子も!」


恭子「ちょっ!私はええから!明日やるし今日はええから!」ガシッ


洋榎「つかまえたでー…! ゆーこ、今や!」


由子「大丈夫、すぐに終わるのよー」


恭子「ちょっ! ホンマかいなー!」

洋榎「ウチと由子はツインテールやなー」


由子「そして恭子は乙女モードなのよー」


恭子「もう…なんなん」


洋榎・由子「……」パンパンッ


恭子「拝むなっ!」


洋榎「さてと、ほんならそれぞれ分かれて宣伝いこかー」


由子「私の班は3年生フロア、恭子と洋榎は2年生フロアやねー」


恭子「2年生フロアて…漫ちゃん絹ちゃんおるやんか」


洋榎「ええやん、どうせ明日また見られるんやし」


恭子「恥ずかしいけどしゃあないな…ほな行こか」

2年生フロア


漫「末原先輩?! その格好どないしたんですか!?」ドキドキ


恭子「どないもこないも、今年もメイド喫茶やんねん」


漫「いいです! すごくいいですよ、末原先輩!」ドバッ


恭子「漫ちゃん…鼻血出てんで」フキフキ


漫(メイド姿の末原先輩がウチの鼻血を…///)ドキドキ


恭子「大丈夫かいな? 明日も時間あったら遊びに来てなー」


モブ「先輩ー! 一緒に写真撮ってくださいー!」


モブ「ずるいわー! 先輩ウチともお願いしますー!」


恭子「ちょっ! 写真とかは恥ずかしいわ…!」オロオロ


漫「みんなやめーや! 先輩困っとるやろ!?」


恭子「漫ちゃん…!」

漫「それにな…ツーショット写真撮るなら一回500円やっ!」バンッ


恭子「なんやそれ!? 急に大阪の血が騒いだんか!!」


洋榎「ずるーい! ウチも末原先輩と写真とりたーい」(声変え)


恭子「アンタはなにしとるん…やっ!」スパンッ


洋榎「あいたー!」


恭子「ちゃんと宣伝しとるんやろなー?」


漫「洋榎先輩こんにちはー」


洋榎「おぉスズー! どや?ウチのメイド服は?」


漫「ええですね! 髪型も可愛いですわ!」ダバッ


恭子「また鼻血出しとるし…」フキフキ


洋榎「なんかこの感じ、クセになってくるわ…」


恭子「アカンで、変な方向に目覚めてもうたら…」


洋榎「せや! 絹にも見せてくるわー!」ダダダダッ


恭子「忙しないヤツやなー…」


漫「あ、あの! 末原先輩!」


恭子「なんや漫ちゃん?」


漫「後で一緒に写真…ええですか?」ドキドキ


恭子「しゃあないなー…ええで」


漫「ホンマですか!」パアッ


恭子「一枚1000円や!」ニヤッ


漫「ふぎゃっ!」

姫松祭・本番当日


恭子「おかえりなさいませお嬢様」


洋榎「お待たせしましたー、オムライスになります」


由子「なんか今年は凄い賑わってるのよー」テキパキ


恭子「おかえりなさいま…せ!? ちょっ、マジか!」


セーラ「今帰ったでー! はー…えらい賑わっとるやん!」


怜「ホンマやな、もっと閑散としてるかと思うたわ」


恭子「セーラに怜ちゃん! なんでこんなところに!?」


セーラ「なんでって言われても、呼ばれたからに決まっとるやん!」


恭子「さいですか…あれ?竜華は一緒やないん?」


怜「竜華は風邪引いてもーて…病弱やからしゃあないわ」コホコホ


恭子「いやいや、現在進行形で病弱な怜ちゃんがそれ言う!?」


セーラ「きょーこ! オレ腹減ってんねん、なんか食べさせてーや!」


恭子「ええで、これメニューな」


怜「ウチは膝枕してほしいわ。出来れば太ももムチムチな子が…


恭子「そんなサービスないわ!」


怜「今どき膝枕のサービスもないメイド喫茶なんて…酢豚にパイナップル入ってないくらいありえへんな」


恭子「例えが下手か!! 」


セーラ「決まったでー! オレはオムライス大盛りで!」


恭子「はいはい、怜ちゃんは?」


怜「ウチはこの、愛情たっぷり甘さ控えめフルーツどっさりパ…コホコホ」


恭子「無理せんといて! 途中で苦しくなるなら無理せんといて!」


怜「じゃあ恭子ちゃんよろしゅう」


恭子「はいはい、ちょい待っとってなー」トタタタッ

セーラ「しっかし見渡す限りメイドばっかりやな!」キョロキョロ


怜「メイド喫茶やからな。こん中にナースがおったら不自然やろ」


セーラ「例えが雑やなぁ!」


洋榎「おっ、セーラに怜やないか! ホンマに来てくれたんか」


セーラ「当たり前やん! てか洋榎…なんちゅー格好しとんねん」


洋榎「メイド服や! ウチのメイド服なんて今日限りの激レアやで!?」


怜「洋ちゃん似合ってんで? なんか新鮮やわ」


洋榎「せやろー? セーラにも衣装貸したろか?」ニヤ


セーラ「絶対嫌や! そんなん着るくらいなら学校の制服きたほうがマシや!」


怜「メイド服着れんのかいな?」


洋榎「レンタルっちゅーか、それ着ての写真撮影とかもやってんで」


怜「…ちょっと着てみたいわ」


セーラ「えー!? 怜、正気か?!」


洋榎「これが結構人気やねん! 食べ終わったら声かけてや?」


怜「おっけー、ほなまた後で」


洋榎「待っとるで! あっ、おかえりなさいませー!」トタタタッ

セーラ「忙しそうやなー!」


怜「竜華も来れたら良かったのになぁ」


由子「あれー? セーラに怜ちゃんやないのー」


セーラ「おう由子! 久しぶりやな」


怜「ゆーこちゃん、お水もらえへんかな?」


由子「はいはいー、どうぞー」


怜「ここはお水いくら?800円?」


セーラ「いやいや、東京の高級店やないんやから!」


由子「850円なのよー」


セーラ「ケチくさー! しかも微妙に値上がっとるし!」


怜「世知辛い世の中やなぁ…」


由子「もうすぐ料理も出てくると思から、ゆっくりしてねー」


セーラ「また行ってしもうた…」


怜「あ、恭子が来たで」

恭子「お待たせしました、オムライスとパンケーキです」スッ


セーラ「おー! めっちゃ美味そうやん!」


怜「パンケーキも名前負けせんボリュームやで」


恭子「セーラ、ケチャップでなんか書く?」


セーラ「うーん…おまかせで!」


恭子「おまかせな、ほな書くで」


お ま か せ


セーラ「ちょっ! ホンマに”おまかせ”って書いてどないすんねん!」


恭子「えっ!? せやかてセーラが…!」


怜「恭子ちゃん、そのボケは逆に斬新やで?」


恭子「えーっ!? アカン!素で間違えてもーた…///」


セーラ「ホンマ頼むでー!? まぁ味は変わらんからええやろ」パクッ


怜「セーラ、味はどないや?」


セーラ「これはなぁ…うん。 ご想像におまかせします」


恭子「誰が上手いことを言えと!」


怜「お後がよろしいようで。パンケーキも美味しいで」


恭子「ありがとうな、怜ちゃん」

怜「せや、ウチの学校も来週文化祭やねん」


セーラ「みんなで遊びにきてや!」


恭子「そうなんや! 二人はなんの店やるん?」


怜「ポップコーンやで」


恭子「ポップコーン?なんでまた」


セーラ「なんや知らんけど、東京の方やとポップコーンが流行っとるらしいで!」


怜「キャラメルとかチーズとか、そういう味で出すんやで」


恭子「へぇーそうやったんか! ほな遊びに行かせてもらうわ」


セーラ「待っとるでー!ふぅー…食った食ったー」


………


セーラ「ほなまたなー! 来週待っとるでー」


怜「今日はええもん見せてもらったわ。ほなまた」


恭子「気ぃつけてな、二人とも」

洋榎「あれ? セーラと怜はー?」


恭子「たったいま帰ったで。洋榎によろしくー言うて」


洋榎「なんや呼んでくれたら良かったのに」


恭子「洋榎は他のお客さんで忙しそうやったし。 あ、来週千里山の文化祭なんやて」


洋榎「ホンマか! みんなで遊びいこーや」


恭子「せやな、今日も来てもらったわけやし」


洋榎「むっちゃ楽しみやなー! あ、ちょっと案内行ってくるわ」


恭子「よろしゅうなー」ヒラヒラ

夕方・キャンプファイヤー前


洋榎「あー…今日は疲れたで」


恭子「ホンマやな…慣れん格好しとったし、余計に疲れたわ」


由子「でも、去年よりも凄い盛り上がって楽しかったのよー」


洋榎「せやな! 今年で最後なのが寂しいけどなー」


恭子「来年は一般客として来たらええんやいの?」


洋榎「あー…それは難しいかもしれへんな」


由子「私もなのよー」


恭子「…洋榎は東京にある強豪チームに、由子は海外留学やもんな」


洋榎「ホンマは大阪の実業団がよかったんやけどな、将来的なことを考えるとやな…」


恭子「ははは、洋榎が将来のこと考えるなんて。明日は雨やな!」


由子「大雪かもしれないのよー」


洋榎「二人ともやかましいわ! ウチだって少しは考えるわ!」


恭子「すまんな、まぁ洋榎なら何処へ行っても活躍できるはずや」


由子「恭子は地元の大学やっけ?」


恭子「そやな。私はココが好きやし、大阪で頑張るわ」


洋榎「恭子が大阪から離れたら、誰がウチにお好みソース送るねん」


恭子「私はあんたのオカンか! てか東京でもソースくらい売っとるやろ!」


由子「私にもソース送ってー」


恭子「自分で買いなさい!」


ー姫松祭編・完ー

乙乙

乙乙
去年のメイド服、由子入って末原さん入らなかったのは由子が間違えて末原さんの着てるのかと思ったが違ったか

普通に太ってた末原さんww

>>44

生長期というマジックワードが使えるお年頃なんですww

(末原さんのおもちが大きくなった可能性が微粒子)   

ー大阪府民麻雀大会編ー


実況「さぁ今年もこの季節がやって参りました! 大阪No.1雀士の称号は一体誰の手に渡るのか!」


実況「昨日行われた予選リーグから勝ち上がった強者たちによる決勝トーナメントがまもなくスタート!」


実況「また、決勝トーナメントの解説は愛宕 雅枝プロにお越しいただきました!」


雅枝「よろしくお願いします」


実況「よろしくお願いします! それでは長らくお待たせしましたー!選手達の入場です!」

控え室


洋榎「なんやかんやで残ったのはウチと恭子だけやな」


由子「三箇牧の憩ちゃんにはさすがに勝てなかったのよー」


恭子「憩ちゃんと予選で当たったらキツいわなー…」


由子「二人には頑張って豪華賞品をもらって来て欲しいのよー」


洋榎「任せとき! ハワイ旅行はウチらのもんやで」


『聞き捨てならんなぁー!』


洋榎「その声は…セーラ!」


セーラ「ここで会ったが百年目や!オレも絶対負けへんでー!」


由子「百年目って…おととい一緒にボウリング行ったやん」


セーラ「ちょ、そういうのは今ええねん! オフレコで頼むわー!」


洋榎「ウチが勝ったら一緒にハワイ行けるやん、6人分チケットあるみたいやし」


セーラ「ホンマかいな! いやーすまんな…ってそれじゃあ意味ないねん!」


セーラ「オレは大阪No.1になりたいんや! ハワイなんか二の次や」


洋榎「ほんなら優勝させたるから、ハワイのチケットくれや」


セーラ「そうやないねん! オレはハワイにも行きたいねん!」


洋榎「行きたいんかい! ほな、せいぜい決勝まで負けんなや!?」


セーラ「上等や! 洋榎こそ負けたら承知せーへんからな!」トタタタ

恭子「あ…行ってしもた。 あんまり挑発したらアカンで?」


洋榎「あっちから先に突っかかってきたやん! ウチは悪くないし」


由子「似たもの同士やから仕方ないのよー」


洋榎「あんなヤツと一緒にすな!」


恭子「えー、二人仲良いやん? 」


洋榎「どこがやねん! たまに一緒にカラオケとか買い物行ったり、おもろいDVD貸し合ったりするぐらいやで?」


恭子「めっちゃ仲ええやん!」


洋榎「でも今は敵同士や! どっちが勝っても恨みっこなし、ってさっきもメールしてたし」


恭子「めっちゃ仲ええやん!」


由子「さっきの小芝居はとんだ茶番だったのよー」


洋榎「まぁええやん! あ、そろそろ出番やから行ってくるわー」


恭子「私もそろそろかな。ほな行ってくるわ」


由子「いってらっしゃい、私は観客席で応援してるのよー」

洋榎「それロンや! 8000!」


実況「決まったぁー! 姫松高校の愛宕選手、親の連荘で圧勝ー!」


恭子「ツモ、3000・6000!」


実況「これは強烈な上がりー! 末原選手、準決勝進出ぅー!」


雅枝「さすが姫松といった所やな。去年より相当強くなっとるわ」


実況「さぁこれで準々決勝が終了です! 準決勝進出を果たしたのはご覧の選手たちです!」


準決勝
Aグループ
・愛宕 洋榎
・愛宕 絹恵
・ほか2人

Bグループ
・末原 恭子
・江口 セーラ
・ほか2人

Cグループ
・荒川 憩
・園城寺 怜
・ほか2人

Dグループ
・清水谷 竜華
・ほか3人


実況「30分の休憩をもって、各グループの準決勝スタートとなります!」

控え室


洋榎「はぁ、よりにもよって準決で絹と当たるとはなー」


絹恵「たまたま運が良かったんよー、お姉ちゃんが相手なんて敵わんわぁ」


洋榎「そんなことあらへん! ウチは誰が相手でも手ぇ抜かんからな?」


絹恵「もちろん私もや! 準決楽しもうな、お姉ちゃん!」


………


恭子「次はセーラと同じグループかぁ」


セーラ「なんや嫌そうな顔して! あれか、オレと戦うんが怖いんか?」


恭子「いや、対局中やかましいやろなーって」


セーラ「なんやそれ! やかましくないわ!元気なだけや!」

怜「もう生きるん辛いわぁ…」


竜華「いきなりネガティブやなぁ」


怜「次は憩ちゃんとやし…ダブルも使わんとアカンかも」


竜華「あんまり無理したらアカンよ? また倒れたりしたら…」


怜「大丈夫や、ちゃんと使いどき考えて使うから」


『もし倒れてもウチがおるから心配ありませんよー』


怜・竜華「憩ちゃん!」


憩「どうもですー。園城寺さん、準決ではよろしくお願いしますー」ペコ


怜「こちらこそ、お手柔らかに頼むわー」


竜華「ウチがおるからって…あぁそういうことかいな」


憩「ウチは園城寺さんが体調悪いのも知っとるし、具合が悪うなってもすぐにケアできますからー」


竜華「憩ちゃんならお任せできるわ。よろしく頼むで」


憩「はい、だから清水谷さんも心おきなく準決を戦ってくださいね?」


竜華「ありがとうな、憩ちゃん」


憩「それに…どうやら清水谷さんのグループには魔物が潜んでおるようです」


竜華「なんやて!?」


怜「パッと見でそんな選手おったかなー?」


憩「まぁあくまでウチの勝手な憶測ですから。 準決がんばりましょねー」

準決勝・Aグループ


洋榎「ロン! 5800や!」ダンッ


絹恵「ロン!3900いただくで!」


実況「これは激しい展開となりました! 愛宕姉妹の点取り合戦!」


実況「卓上はさながら姉妹喧嘩のごとく、ノーガードで殴り合い状態だー!」


洋榎「絹ぅ…なんやえらい強なったやんけ!」


絹恵「私かて愛宕の血が流れとるんや、そう簡単には負けへんで!」


雅枝「あの子らホンマに…」


実況「愛宕姉妹以外は一度も和了れていない! 完全に蚊帳の外だー!」


洋榎「ロン! 8000!」ダッ


絹恵「ロンや! 11600!」ダン


モブ「リ、リーチです」スッ


実況「おぉーっと! ここにきてモブ選手のリーチ宣…


洋榎・絹恵「それロンや!」ダンッ


実況「愛宕姉妹による強烈なダブロン炸裂ぅー! それと同時にモブ選手のトビ終了となりました!」


実況「決勝戦へ進むのは…愛宕洋榎選手に決まりましたー!」


洋榎「正直驚いたで…! 絹がここまでやりおるとはな」


絹恵「小さい頃からずっとお姉ちゃんと麻雀しとんねや。癖とか打ち筋ぐらい分かっとるで」


洋榎「ウチもまだまだやっちゅうことか…楽しかったで!絹っ!」


絹恵「私もやで、お姉ちゃん! 決勝がんばってな!」


洋榎「おう! 任せときー!」

準決勝・Bグループ


恭子「ポン!」「チー!」


セーラ「オレの親を速攻で流すつもりか?恭子ぉ!」


恭子「それもチー…


セーラ「ロン! 18000やっ!」


実況「江口選手の親ハネ直撃ー! 他家を一気に突き放したー!」


恭子「くっ…!」


セーラ「速さだけではオレには勝てへんで?」ニヤッ


恭子「………」スッ


セーラ「なんや急に静かになりおって…こわいこわいー」スッ


恭子「ロン。12000や!」カッ


セーラ「その手をダマやとー!?」


恭子「火力だけやなく、麻雀はココ(頭)も使わんとなぁ」ニヤッ


実況「末原選手のカウンター炸裂!江口選手の点を削り取ったー!」


セーラ「まぁええわ! オレはオレの麻雀を貫く、それだけや!」


恭子「攻撃が最大の防御ってわけか、やれるもんならやってみい!」

準決勝・グループC


怜「リーチ」カッ


実況「きたぁー! 百発百中の精度を誇る、園城寺選手のリーチ宣言! 」


憩「ポンですー」チャッ


怜「そう来るんは見えてたわ…ツモ! 2000・4000や」ダンッ


実況「園城寺選手!これは鮮やかなツモ和了りが決まりましたー!」


憩「あっちゃー…やっぱ園城寺さんは凄いなぁ」


怜「憩ちゃん…遠慮は無用やで?」


憩「そうですか、ほんなら本気で当たらせてもらいますー」


憩「リーチ!」ゴッ


実況「おーっと続いては三箇牧の荒川選手! ダブルリーチが入ったぁー!」


怜(なんや…いま一瞬だけ一巡先が見えんかった!)ゾクッ


憩「ツモですー! 4000・8000!」


実況「決まったー! いよいよ荒川憩の本領発揮かー!?」


怜「はは…反則的やな憩ちゃん」


憩「えーっ!? その台詞、園城寺さんが言いますかぁー?」ニコッ

準決勝・グループD


竜華「リーチ!」ダンッ


??「早いなぁー、それにめっちゃ高そうやねー」


竜華(この声…どっかで聞いたことあるような…)スタッ


??「油断したらアカンでー?」


竜華「…! やっば!」


??「それロンやでー?8000点いただきやー♪」


竜華「はい…」パラッ


??「ウチの親番やー♪」コロコロ


竜華(帽子にサングラス、パッと見じゃ分からんけど…たぶんあの人やろな)


竜華(憩ちゃんが言ってた魔物て…この人なんかいな)

実況「激しい戦いが繰り広げられた準決勝もついに決着ぅー!」


実況「決勝戦へ進んだのはこの4人となりました! それでは、選手たちの入場です!」


実況「グループAを勝ち上がったのは…姫松高校3年・愛宕洋榎ー!」


実況「続いてグループBを勝ち上がったのは…千里山女子高校3年・江口セーラ!」


実況「そしてグループCを勝ち上がってきたのは…三箇牧高校2年・荒川憩ー!」


実況「最後にグループDを勝ち上がったのは…無所属・赤澤ー…おっと!帽子とサングラスを取ったこの人は!」


実況「姫松高校監督代行ー!赤阪郁乃だーっ!!」


郁乃「決勝まで来ちゃったわー♪」


洋榎「えぇ!? いくのん!?」


セーラ「なんや洋榎んところの監督やんか!」


憩「変装してもウチは分かってましたー。 ヤバいオーラ出まくりですよー?」


郁乃「えー、バレとったんー? せっかく変装してたのにー」


洋榎「いやいや…ってかなんで変装なんかしてはるんですか?」ギッ


郁乃「大人にはー、色んな事情があるんやでー?洋榎ちゃーん」ギッ


実況「さぁ選手たちが卓につきました! 決勝戦スタートです!」

観客席


恭子「なんで代行が!? あの竜華が負けたっちゅーんか…」


由子「そうなのよー、なんやバカヅキしとったでー?」


絹恵「驚きの展開ですけど…代行ってそもそも強いんですか?」


恭子「それは分からんなぁ…でもプロにもぎょーさん知り合いおるし、ただ者やないのは確かやけど」


由子「あの人が打ってるところ、一度も見たことがないのよー」


絹恵「お姉ちゃん…」ギュ


恭子「洋榎なら大丈夫、きっと勝ってくれるはずや!」


決勝卓


洋榎「ロンっ!5800!」


セーラ「それロン!3900や!」


憩「ツモでーす。2600オールやー」


実況「これは激しい攻防戦ー! 高校生たちによる点の取り合い!奪い合いだー!」

実況「親の赤阪選手、ここで果たして上がれるのかー?!」


郁乃「ウチも混ぜてーなー…ってあれー? もう出来てはるやーん♪」


洋榎「ウソやろ!?」
セーラ「なんやて!?」
憩「あちゃー…マジですかー!」


郁乃「今日はめっちゃツイとるみたいやなー♪ ほな、16000オール…まいどありー」パラララッ


実況「て、て、天和だぁー! 赤阪選手に幸運の女神が微笑んだー! 」


雅枝「もっとも出にくい役満の上にそれを親であがるとは…並大抵の幸運の持ち主やないで」

実況「試合終了ー!! 大阪府民麻雀大会優勝者は…赤阪郁乃選手に決まりましたぁー!」


郁乃「やーん♪めっちゃ嬉しいわー」


洋榎「あんなん和了られたらきっついわー…」


セーラ「洋榎! 勝負はいったんお預けやな!」


憩「ほんま恐ろしい人ですわー」


実況「優勝者の赤阪選手にはトロフィーとハワイ旅行券が贈呈されます! おめでとうございます!」


郁乃「やったでー! ほんまに嬉しいわー♪」


ロビー


恭子「洋榎…残念やったなぁ」


洋榎「めっちゃ悔しいわー! いくのんの強運にやられたで…」


由子「まぁハワイならこれから先いつでも行けるのよー」


恭子・洋榎「ブルジョワめ!」


郁乃「あー♪ おったおったー」


恭子「代行…」


郁乃「あのなー、ウチからひとつ提案なんやけどー♪」


郁乃「これ、みんなで行かへんー? レギュラーメンバー誘ってー」


恭子・洋榎・由子「えっ!?」

郁乃「ちょうど6人分あるんやしー、今度の連休あたりどうやろー?」


恭子「いや、でも…」


洋榎「いやー赤阪さん! 今日も一段とお美しい!」


由子「美の秘訣が知りたいのよー」


恭子「ちょっ! 太鼓鳴らしすぎやろ!」


郁乃「末原ちゃんはー行きとうないんー?」


恭子「そ、それは…」


洋榎「青い空!」


由子「白い砂浜!」


恭子「…行かせていただきます!」

数日後・姫松高校校門前


郁乃「みんなそろったー?」


恭・洋・由・絹・漫「はーい!」


郁乃「おっけー♪ ほな出発進行ー」


車内(助手席に恭子さん)


恭子「代行すみません、車まで出してもろうて…」


郁乃「ええんやでー♪ 車のほうが何かと便利やからー」


恭子「ん…? そうですか…って代行、空港行くなら道が逆じゃありませんか?」


郁乃「こっちでええんよー、ウチにまかしときー♪」


恭子「はぁ…(なんや高速道路に入ったんやけど大丈夫かいな)」


洋榎「ハワイ楽しみやなー! 向こうにも唐翌揚げとかあるんかな?」


絹恵「フライドチキンになるんかな? お姉ちゃん、本場の味やで!」


由子「私はハワイに行ったらショッピングしたいのよー♪」


漫「ええですね! 私も一緒に周っていいですか?」


恭子「後ろ楽しそうでええなぁ…」

数時間後


郁乃「みんなー、ハワイに到着したでー?」


恭子「え…?」


洋榎「どこがハワイやねん、ここまだ日本やろ?」キョロキョロ


絹恵「私ら飛行機にも乗ってへんし…」


由子「ここはどこなのよー」


漫「なんか書いてありますよ。羽…合…羽合?」


郁乃「羽合(はわい)やでー?」


恭・洋・由・絹・漫「はわい!?」


郁乃「そうやでー♪ 羽合温泉やー」


恭子「いやいや! ちょっと待ってくださいよ!」


洋榎「ハワイってあんなにでかでかと書いてあったやん!」


由子「これは詐欺よー!訴訟も辞さないのよー!」


絹恵「ワイキキビーチは!?」


漫「ショッピングは!?」


郁乃「えー? ちゃんと書いてあるやーん。ここ、よう見てみー?」


”豪華ハワイ旅行” (羽合温泉)


恭子「ちっさぁー! 羽合温泉の表記ちっさぁー!!」


洋榎「なんやこれ! ルーペでも使わな見えへんで!」


由子「オーマイガーなのよー…」


絹恵「ホンマに書いてあった…」


漫「これはヒドイですわ…でもなんでこんなトラップが!!」


郁乃「さぁー? まいどお馴染みの関西ノリちゃうかなー♪」


恭・洋・由・絹・漫「ズコーッ!」


大阪府民麻雀大会編 ー完ー

乙です

ー修学旅行編ー

”初日が終わり2日目は自由行動”


原宿周辺


由子「上野のパンダ、ちょー可愛かったのよー」


恭子「せやなー!」


洋榎「それにしても…ここはぎょーさん人がおるなー!」


恭子「ホンマやなぁ…! 平日やのにこの人混み!」


由子「みんなお洒落なのよー!」


洋榎「まさに東京っちゅー感じやなぁ! あ、あの店気になるわー」


恭子「ちょっ、迷子になるでー!」


由子「そんなぁ、洋榎も子供やないんやからー」


恭子「たしかに。いくら洋榎でも迷子になるなんて…って!」


恭子「洋榎おらんがな!!」


由子「言ってるそばから迷子になってるのよー…」

洋榎「きょーこー…ゆーこー…どこいったんやー!」


洋榎「二人してウチからはぐれるとはな…。 子供やないんやから!」


洋榎「しゃーないな…こういう時はケータイで」


洋榎「あれ?電源切れとる…あれっ?あれっ!? …電池切れや」ガクッ


洋榎「きょーこー! ゆーこー! ウチはここにおるでー!」


『あれ、もしかして…愛宕さん?』


洋榎「なんや…ってアンタは!!」

恭子「ひろえーっ! どこやー!」


由子「全然おらへんねー…」


恭子「ったく…ケータイも繋がらんし、どこほっつき歩いとんねん!」


由子「きょーこー」


恭子「なんや?ゆーこ」


由子「いったん冷静になったほうがいいと思うのよー。 そこのカフェでお茶しーひん?」


恭子「それもそうやな…ただでさえ慣れない土地で歩き回って疲れてもーたし」


由子「そうそう、とりあえず座って休むのよー」

洋榎「アンタは…! 宮永!?」


照「どうも」


洋榎「なんで宮永がこんなところに…??」


照「それはこっちの台詞だよ?」


洋榎「ウチは修学旅行で東京に来とんねん! 今日は自由行動やから原宿とかをやな…」


照「そうだったんだ。一人で自由行動?グループでじゃないの?」


洋榎「…! いや今はな! 今は他の二人がウチとはぐれてしもーてな!」


照「なるほど。愛宕さんは迷子になってしまった、と」


洋榎「うっ…それ言われたら否定は出来へんけど…」

照「大丈夫。私も一緒に二人を探してあげる」


洋榎「…! ホンマか?!」


照「私はこう見えても(西東京だけど)東京に住んでるし、(長野出身だけど)この辺りは詳しいから」


洋榎「はぁー助かった! ホンマおおきに!宮永はん!」グッ


照「うん。あと一つお願いが…」


洋榎「なんや? ウチに出来ることなら何でもするで!」


照「ほんとに?それじゃあ…」

カフェ・2階席


恭子「しあわせや…」ボーッ


由子「至福のひとときやねー…」


恭子「今までこんなパンケーキ食べたことなかったわ」


由子「すごく美味しかったねー」


恭子「それにここなら下の通りも見えるし、洋榎を見つけたらすぐに動けるな!」


由子「そう思ってこの店をチョイスしたのよー(偶然やけど)」


恭子「ははは、由子は策士やなー!」

カフェ・1階


洋榎「おしゃれなカフェやなー」


照「そう? ここはパンケーキが有名で。一回来てみたかった」


洋榎「そうなんや? それにしても宮永の口から”一人で入りにくいから一緒にパンケーキ食べてほしい”なんて出るとはなぁ」


照「ん…初めてのお店は一人で入りにくくて」


洋榎「なるほどな、まぁわからんでもないけど。 それにしても宮永はテンション低ない?」


照「いま凄くハイテンション」


洋榎「うそつけー! リアクション薄いし、雑誌の写真と全然ちゃうやんけ」


照「あれは営業用。 本当の私はクールビューティー」


洋榎「自分でクールビューティーっていうやつ初めて聞いたで?」


照「私もいま初めて言った」


洋榎「初めて言うたんかい! ったく…調子くるうわぁー」


照「あ、パンケーキが来た」キラッ


洋榎「ちょい待っとって!お手洗い行ってくる!」スッ

カフェ・2階


恭子「しばらく見とったけど、洋榎は通らんかったなー」


由子「そうやねー…お店も混んできたしそろそろ出よか?」


恭子「せやなぁ、外に出て洋榎探すとするか」スッ


由子「お腹もいっぱいになって元気いっぱいよー」スッ

『ありがとうございましたー』


洋榎「いやーすまんすまん、待たせてしもうて…」


照「大丈夫。 愛宕さんのもさっききたよ」


洋榎「すごいなーコレ! こんなパンケーキ見たことないわ!」


照「すごく美味しそうでしょ? 早く食べよ」うずうず


洋榎「せやな! ほな、いただきまーす」パクッ


照「いただきます」パクッ


洋榎「…美味いっ!」
照「…おいしい」

洋榎「これはなんちゅーか…パンケーキという枠には収まりきらん美味さやな!」


照「うんうん」モグモグ


洋榎「はぁ、これは恭子たちにも食べさせたかったわー」モグモグ


照「そういえば、この後はどうするの?」パクッ


洋榎「せやなぁ、恭子達も心配しとるやろし…」


照「携帯電話で連絡するのは?」


洋榎「アカンねん、電源切れてもーて…連絡つかへんわ」


照「そっか…よかったら私のケータイ貸すけど」スッ


洋榎「ホンマか!? なにからなにまで…ホンマおおきに!」スッ


照「困った時はお互い様だから」


洋榎「よーし! ちょっと二人に連絡してくるわぁ!」ガタッ


照「いってらっしゃい」モグモグ

いい感じにすれ違ってるなwww

そこぬけー♪ポジティブでー♪


恭子「ん…知らん番号やな。 はい、もしもし?」


恭子「…って洋榎!? あんた今何処におんねん?!」


由子「洋榎からー?」


恭子「うん、うん…はぁ!? チャンピオンと一緒におるやて?!」


由子「???」


恭子「はぁ、わかったわ…そしたら今から迎えにいくから。そこから動いたらアカンで?」ピッ


由子「洋榎どこにおるってー?」


恭子「表通りのパンケーキ屋におるって…そして何故かチャンピオンも一緒らしいわ」


由子「チャンピオンの件がよく分からないのよー…まぁ、とりあえず行ってみよー?」


恭子「せやなぁ…ほな行きますか」

照「おかえりなさい。話できた?」


洋榎「今から迎えに来てくれるゆーてたわ。 ホンマありがとうな!」


照「ぜんぜん大丈夫。」


洋榎「はーよかったよかった! 宮永と会えんかったらもっと合流に時間かかってたわ!」


照「あの…愛宕さん」


洋榎「ん?なんや?」


照「私の事は宮永じゃなく、他の呼び方で呼んでほしいかな?」


洋榎「はぁ、宮永がええなら。なんて呼んだらええねん?」


照「ん、テルーかテルテルで」


洋榎「どっちもなんか恥ずいわ! 照、じゃあかんのか?」


照「うーん…それでも別に」


洋榎「はぁ、そんなら照もウチのことは”洋榎”でええで!」


照「わかった、洋榎」


洋榎「おぉー…って背後に殺気が!」

恭子「ひーろーえー…探したでー?」


洋榎「きょ、恭子! いやーすまんすまん! 迎えに来てもらって」


恭子「まったく、知らん土地でフラフラ先に行ってまうからこういう事になんねんで?」


洋榎「す、すまんな」


恭子「宮永さん、洋榎を助けてくれはってホンマにありがとうございました」


照「大丈夫。洋榎には私のわがままにも付き合ってもらったから」


洋榎「まっ!ギブアンドテイクっちゅーやつやな!」


恭子「あんたがそれ言うか!」

由子「でもビックリしたのよー。宮永さんと洋榎が一緒にいるなんて」


恭子「ホンマやな。今日は平日やのに、学校はどないしたんですか?」


照「今日は創立記念日で休みだったから。買い物でも、と思って」


恭子「そうやったんですか。えらいお世話になってしもうたんで、お礼させてくださいよ?」


由子「うんうん、なんでも言ってほしいのよー」


照「お礼…それじゃあひとつ」


照「ついて来てほしい所がある」


恭子・洋榎・由子「ついて来てほしいところー?」

ゲームセンター


照「………」


恭子「ゲーセンで何するんやろ?」


洋榎「さぁ…ってか照もゲーセンとか行くんやな」


由子「あ、止まったのよー」


照「プリクラを撮ろう」キリッ


恭子「プ、プリクラやて!?」


由子「意外なのよー!」


洋榎「照がしてほしいお礼て…一緒にプリクラ撮ればええんか?」


照「うん。 (普段撮ったことないけど)東京の女子高生は遊びに行ったらプリクラを撮るもの」


恭子「はぁ、なんかホンマに意外っちゅーか…」


由子「さすが東京って感じなのよー」


洋榎「まぁええ記念になるし! このメンツで撮るのも最初で最後かもわからへんな!」


照「さっそく撮ろう。みんな中に入って」

洋榎「わははは! なんやコレ! 照のポーズ全部同じやん!」


恭子「洋榎、笑すぎやで!」


照「雑誌の取材とかだと…いつもこのポーズだから」ボソッ


洋榎「せやかて、営業スマイル全開やし! 普段からこうやって笑えばええのに」


由子「そうなのよー。笑った顔が可愛いのに」


照「…善処します」


恭子「ちょっ、二人とも! 宮永さんすまんなぁ。私らもいい記念になりましたわ」


洋榎「せやなー! あの宮永照とプリクラなんて、自慢できるで!」


由子「帰ったら後輩たちに自慢するのよー」


照「それならよかったけど。私も楽しかった」


恭子「ほんならよかったです。それじやぁ私らはそろそろ…」


洋榎「今度は大阪に遊びに来てや!ウチらが観光案内したるわー」


由子「またプリクラ撮るのよー」


照「うん、ありがとう。今度は大阪に遊びに行くね」


洋榎「約束やで! ほなまたなー!」


照「…(姿が見えなくなるまで手を振り)」

照「…いっちゃった」


淡「いたー! もうテルーったら何処にいってたのさー!」


照「ん、ごめん。 ちょっと友達と会ってて…」


淡「えー!? テルーに友達なんていたの?」


照「む、失礼な。私にだって友達はいるよ」


淡「これはこれは…って!スミレも待ってるんだから早く行こーよー!」グイッ


照「わかったから、引っ張らないで淡」


照(また遊べるかな、洋榎たちと)

そのプリクラ欲しい

恭子「もうはぐれたらアカンで?ひろえー」


洋榎「わかっとるって! もう迷子になったりせんわー」


由子「そんなこんなで集合時間までそんなに時間ないねー?」


恭子「どっかの誰かさんが迷子になったからなぁー?」ニヤ


洋榎「もう堪忍してや! せや、この後少し付き合ってくれへんか?」


由子「付き合う? 何処か行きたい所でもあるのー?」


恭子「変なところやったら承知せーへんで?」


洋榎「わかっとるって! 二人も行ったことあるし、とにかく行くで!」

お台場・インハイ会場付近


洋榎「到着やー! いやぁ…電車やとけっこう距離あるなぁ」


恭子「ここって…夏のインハイ会場やんか!」


由子「なんでこんな所にー?」


洋榎「なんとなく…っちゅーかまた来たかったんや! 三人揃ってな」


恭子「なんやそれ? 来ようと思えばいつでも…」


洋榎「ホンマにそうやろか? ウチはこれが最後の機会やと思うわ」


恭子「ぷっ…はははは! なんや洋榎らしくもない! そんなことずっと考えとったんか?」


由子「洋榎からそんな言葉が聞けるなんてねー」


洋榎「なっ…ウチは真剣にやな!」


恭子「…また集まったらええねん。どんな形であれ、また三人で」


洋榎「きょーこ…」


由子「そーやねー。その時はもしかしたら敵同士かもしれへんけどー」


洋榎「ゆーこ…」

恭子「まぁそういうこっちゃ。麻雀をしてればいつかは巡り会えるもんやろ?」


洋榎「…せやな」スゥー


洋榎「ウチは絶対プロになる! 日本だけやなく、世界でも戦える雀士になったるわ!」


恭子「言うやないか…! 私はなんやろなー、教員資格でも取って何処かの学校で麻雀を教えよかな!」


由子「私はー…麻雀に携わる仕事がしたいのよー。世界中で活躍できるよーな!」


洋榎「おもろいぐらいにバラッバラな夢やな…せやけど二人とも! 麻雀辞めたら許さへんで!?」


恭子「当たり前やろ? 辞めろ、言われても辞めへんわ!」


由子「これは三人の約束やねー」


洋榎「あぁ!約束や!」


恭子「約束やな!」


なんやかんやあったけど、二日目の東京観光も無事に終わった。

インハイ会場で約束した三人の夢。

東京で偶然出会った新しい友達。

友達…ん?

洋榎「あっ!」


恭子「どないしたん?洋榎」


洋榎「ははは…照にTEL返すの忘れてたわー、なんつって!」スッ


恭子「はぁ!?なにやってんねん!つまらんギャグ言ってる場合やないで!」


由子「早く返してあげないと…」


洋榎「ホンマすんません!!」


恭子「まったく…さっさと行くで!」


結局、集合時間に遅れたウチらは三人揃って先生にめっさ怒られた。


修学旅行編ー完ー

おつー
照も電話のこと忘れてたに一票

乙乙

冬休み編 ークリスマスー


洋榎「今年もクリスマスパーティーやるでー!」


由子「わーい!」パチパチ


恭子「はぁ、今年はどこでやるんや?」


洋榎「一昨年は由子ん家、去年はうち、ときたらまぁ…」


由子「自然と恭子の家なのよー」


恭子「ウチかいな! まぁええけど…」


洋榎「今年は盛大にやるでー! 寝かせへんでー!」


由子「寝たら額に”肉”やでー!」


恭子「なんやそれ!もっと純粋にクリスマスを楽しもうや!」

洋榎「とりあえずプレゼント交換は鉄板やろなー」


由子「食べ物とかどうするー?」


恭子「ケーキはいるやろ?」


洋榎「ほんなら恭子、ケーキよろしゅう! 手作りでな!」


恭子「まかしときー…ってなんで私が作んねん!」


由子「恭子が言い出したからよー」


恭子「みんなで買いにいったらええやん! ケーキなんか作ったことないで!?」


洋榎「わかっとらんなー、恭子は。ウチはな…恭子が作ったケーキが食べたいねん!」


恭子「しらんがな」


由子「恭子なら何か上手く作れそうな気がするのよー」


恭子「はぁ…どうなっても知らんで?」

洋榎「他にはどうする? お菓子とかそのへん」


由子「それは適当に買えばいいんやないのー?」


恭子「まぁその辺は二人に任せるわー…ってそんならケーキも一緒に買ってきてや!」


洋榎「断る!」


恭子「なんで?!」


洋榎「決まりは決まりや…恭子、ケーキは頼んだで?」


恭子「はぁー…わかったわ」


由子「恭子のケーキ楽しみなのよー」

後日・恭子の家


恭子「クリスマスまであと一週間…レシピ本は買ってきたし」


恭子「あとは…ひたすら練習あるのみや!」


恭子「………」カチャカチャカチャ


恭子「できた! さっそく試食してみよか…」パクッ


恭子「…味が全然しーひん」


恭子「砂糖ケチったのがいかんかったかー…もう一回作ろか」


恭子「………」カチャカチャカチャ


恭子「できたっ! 次はどんな感じやろか…」パクッ


恭子「あっまぁー! 溶ける!歯ぁ溶けるくらい甘すぎるわ!!」


恭子「なんやもう…お菓子作りは難しいなぁ!」


恭子「そしてこの洗いもんの山…メゲそうやで…」


恭子「とにかく…もう一回挑戦してみよか!」


恭子「………」カチャカチャカチャ


恭子「出来た…けど生クリーム食べ過ぎて気持ちわるなってきたな…」


恭子「冷蔵庫に入れて、後で食べよか…」ガチャ


恭子「はぁーあ…洗いもん、しんどいなぁ」

街中


絹恵「お姉ちゃん、今年のクリスマスプレゼント決まったん?」


洋榎「せやなぁ…何にしよ。 絹は決まっとるんか?」


絹恵「私はもう決まってんでー。お姉ちゃんにあげるやつな」


洋榎「そっかー! はぁ、ホンマどないしようかな…」


絹恵「まぁ何や、お姉ちゃんが貰って嬉しいモンでええんやないの?」


洋榎「…なるほど!そしたら買うもの決まったわ! 絹、ちょっとついてきて!」


絹恵「まかしとき!お姉ちゃん!」


洋榎(これはプレゼントとして鉄板やろな!)

クリスマス当日


洋榎・由子「おじゃましまーす」


恭子「邪魔するなら帰ってや?」


洋榎「いやー外寒すぎやろ! 早くコタツ入りたい」


恭子「ノーリアクション! まさかのノーリアクションかい!」


由子「寒いー…暖炉でぬくぬくしたいのよー」


恭子「んなもんないわ!」


洋榎「今日オトンとオカンは?」


恭子「二人ともおらんで。どこか出かけよったわ」


洋榎「そっか、ほんなら今日はウチらが来て良かったやん」


恭子「なんで?」


洋榎「恭子ひとりやと…留守番できへんやろ?」


恭子「アホか!出来るわ!もう高3や!」ビシッ

洋榎「すまんすまん、そしたら早速始めよか?」


由子「そうやねー、お腹空いてきちゃったし」


洋榎「恭子、例のやつは出来てるんか?」


恭子「あぁ、出来てんで。 ちょい待っとき」(キッチンへ向かい)


洋榎「ケーキ楽しみやな」


由子「さっきの恭子の顔、きっと上手に出来たはずやでー」ワクワク


恭子「お待たせー、これが私の作った”恭子スペシャル”や!」ドンッ


洋榎「すっごいなぁ! これ全部恭子が作ったんか!?」キラキラ


由子「ハイクオリティなショートケーキなのよー!」パチパチ


恭子「見たか!私の実力を! さっそく食べてみてや?」

洋榎「ほなさっそく…」モグ


由子「いただきまーす」モグ


恭子「どうやろか…?」


洋榎「うまい!!」
由子「おいしいのよー!!」


恭子「ホンマに!? ホンマに美味いんか!?」


洋榎「美味いで! 市販のやつより甘すぎず、食べやすいわ」もぐもぐ


由子「うんうん、手作りならではの優しい味付けやねー」もぐもぐ


恭子「そか…ま、まぁ! 私からしたらケーキ作りなんて楽勝やったけどな!」


洋榎「さすが恭子やな!恭子も食べーや? 上手く作ったんやし」


恭子「いや、私は後で食べるわ。二人で食べててええよ」


恭子(試作品で試食しすぎて、しばらくは甘いもん食べとうないわ…)

由子「そうなのー? あ、そんならお菓子食べる? たくさん買ってきたのよー」ガサガサ


チョコチップクッキー
コアラのマーチ
タケノコの里
キノコの山
トッポ
ポッキー


恭子「ぜんぶ甘いやつ!! チョコ使ってる甘いやつ!?」ガクッ


由子「恭子、甘いもん好きやろー?どれでも食べてええからね?」


恭子「す、好きやけど…(由子の気持ちは嬉しいけど、正直地獄や)」


洋榎「ちょい待ち! …甘いもんの時間はここまでや!」バッ


恭子・由子「洋榎!?」


洋榎「おやつ食べたらご飯食べれんよー、ってオカンに教わったやろ!」


洋榎「まずは…食事が先や!」


由子「ひ、洋榎がまともな事をいっとるよー??」


恭子「ははは、今夜は大雪になるんちゃう?(洋榎!ナイスアシストや!まさか洋榎に助けられるとは…)」


洋榎「なんやそれ! ウチだってまともな事くらい言うっちゅーねん」


恭子「ははは、ほんならたこ焼き器持ってくるわ」

恭子「うーん、たこ焼き美味い!」


由子「洋榎は焼くの上手やねー」


洋榎「せやろー♪ さすがやろー♪」


由子「なんかクリスマスらしい話題あらへんのー?」


恭子「クリスマスらしい、かぁ…」


洋榎「ははは、ほんなら”恋バナ”でもしよか?!」


恭子・由子「えっ?」


洋榎「まずは恭子からな!」


恭子「いやいや! そんなん言われても何も話すことないわ!」


由子「このメンバーでそのトークテーマはちょっと…ねぇ?」


洋榎「そうなん? まぁウチもあらへんけどなー」


恭子・由子「無責任やなー…」


洋榎「ほれほれ、どんどん焼けるんやから食べてやー」


恭子「すまんな、次は私が焼くから洋榎も食べや?」

23時00分


洋榎「そろそろプレゼント交換しよか?」


由子「お待ちかねなのよー」


恭子「せやな、そしたら隣の人に回す感じで」


洋榎→由子→恭子→洋榎


洋榎(ウチのプレゼントは鉄板中の鉄板!)


由子(無難といったら無難やけど、外れやないハズ…)


恭子(洋榎、ちゃんと使ってくれるやろか…)

洋榎「プレゼント回ったな? せーので開けるで!」


恭子・由子「おっけーやで」


洋・恭・由「せーのっ!」バリッ


洋・恭・由「えっ?」ガサガサ


洋榎・恭子・由子「えーっ!?」


洋榎「まさかの!?」


由子「全員!?」


恭子「マフラーやて!?」


洋榎「ぷっ…」


由子「ふふ…ふふふ」


恭子「はは…はははは!」


洋・恭・由「はっはっはっは!!」

洋榎「なんやコレ! プレゼント交換が全部マフラーやて!」


由子「偶然にも程があるのよー!」


恭子「これは傑作やな!どんだけマフラー好きやっちゅーねん!」


洋榎「はー…ウチのは赤いタータンチェック柄か! 実は今年マフラー欲しかってん」


由子「私のは白地にポンポン付きやでー!可愛いのよー!」スリスリ


恭子「私のは黒いニットマフラー、しかもロングサイズか! これで冬は完璧やで!」


洋榎「はー、おもろいおもろい…笑いすぎて腹痛いわ」


由子「なんやかんやで、ウチら仲良しやなー!」


恭子「せやな! ほんならそろそろ…三麻で徹マンや!」バッ


洋榎・由子「おーっ!!」


ウチはこの時まだ知らんかった。
次の日、絹から色違いのタータンチェック柄マフラーを貰うなんて…


冬休み編 ークリスマスー 完

おつー
余ったマフラーは宥姉に送ろう

冬休み編 ーお正月ー


近所の神社


洋榎「あけおめー」


恭子「ことよろー」


由子「なのよー」


洋榎「この神社は正月やってのにえらい人少ないなぁー」


恭子「ええやん、でっかい所いったら人混みで疲れるわ…」


由子「せやねー。 私はこの静かな雰囲気が好きなのよー」


洋榎「まぁ二人の言うこともわかるわ。さて、お参りしよか?」


チャリーン


洋・恭・由「………」


洋榎「二人とも何お願いしたん?」


恭子「私は受験が上手く行きますように、って」


由子「私もそうなのよー」


洋榎「そっか。まぁ二人とも受験勉強頑張ってな!」


恭子「洋榎は進路決まったんか? 最近よく学校にスカウトの人来とるけど…」


洋榎「あぁ、まあな…ぼちぼち決まりそうやわ」


洋榎「…ちょっとそこ座って話さへんか?」


恭子「はぁ、ええけど…」


由子(なんか洋榎の様子が変やねー)

境内のベンチ


洋榎「よっこいしょーいち、っと」


恭子「ははは、あんた幾つやねん」


洋榎「まぁ何や、新年迎えて冬休みもあと少しやな」


恭子「なんや急に…洋榎が真面目な話なんて気味悪いわ」


洋榎「なんやそれ! …新年早々こんな話するのもアレやけどな」


由子「………」


洋榎「東京のチームに行くのな、ちょっと迷ってんねん」


恭子「はぁ、なんでや?」


洋榎「やっぱウチは地元好きやし、こっちにも強いチームはあるわけやし…」


由子「洋榎らしくないのよー」


洋榎「ゆーこ…」


由子「たしかにこっちにも強いチームはあるで? せやけど洋榎は世界で戦えるプロになりたいんやろ?」


洋榎「そ、そら世界一のプロにはなりたいけど…」

由子「それなら東京のチームに行って活躍するんが一番近道なんやないの?」


洋榎「せやかて…」


由子「修学旅行の時、三人で約束したの忘れたん? それともあれは嘘やったんかなー?」


洋榎「いや、あれはホンマに…


恭子「私も由子の意見に賛成やな」


洋榎「きょーこ…!」


恭子「私の、私らの知ってる愛宕 洋榎は…いっつも勝ち気で自分に絶対的な自信を持っとった。それを麻雀で体現してきた人間やったで?」


洋榎「なんやねん…なんやねん二人とも! ウチが東京に行っても寂しくないっちゅうんか!?」


恭子「ははは!…寂しい思うとるんはあんたの方やろ?」


洋榎「きょーこ…! この薄情者!」

恭子「アホか! 私らはな、洋榎にもっとデカい舞台で活躍してほしいんよ」


洋榎「えっ…」


恭子「洋榎なら出来る、いや…それは洋榎にしか出来へん事なんや」


洋榎「………」


恭子「あんたを欲しい言うてる東京のチーム。優勝実績も一番やし、麻雀やるには環境も整っとるはずや」


恭子「そんな超名門チームで洋榎が活躍する姿を、私らは見たいんよ」


由子「友達として、これほど嬉しいことはないのよー」


洋榎「…二人ともすまんかった。ウチのこと、そこまで…」


恭子「こっちにはいつでも帰ってこれるやろ? せやから…」


恭子「東京(あっち)で思いっきり暴れてこいや!」


由子「格の違いを見せつけたれー!」


洋榎「恭子、由子…ありがとうな! ははは…何か泣けてきたわ」ポロポロ


恭子「…なに泣いとんねや! どーんと胸を張ったらええねん!」


洋榎「グスッ…アホかぁ…! 張れるほど胸ないっちゅうねん!」


恭子「ものの例えやがな!」ビシッ

由子「ふふふ、もう洋榎は大丈夫そうやねー。 ちょっとトイレ行ってくるのよー」


恭子「おー、いってらー」


洋榎「…はぁー、泣いたらスッキリしたわ」


恭子「そうか、そら良かったわ」


洋榎「それにしても、由子があそこまで言ってくるとはなー」


恭子「…由子のほうが色々不安なんやと思うで?」


洋榎「はぁ…なるほどな。由子、海外留学するんやったな」


恭子「言葉も文化も違う、自分を知ってる人間が誰もおらんところに行くんやで? 私だったらメゲるわ」


洋榎「…せやな」

恭子「由子にな、なんで留学するのか聞いたことあんねん」


洋榎「由子はなんて?」


恭子「今しか出来ない事だし、もっと広い世界を見てみたい、そう言っとったわ」


洋榎「ゆーこは強いなぁ…」


恭子「せやな。 どっかの誰かさんは東京に行く前にホームシックになっとるし」


洋榎「ちょっ、 なに笑うてんねん!その話はもうええやろ!?」


恭子「ははは、絹ちゃんに言ったろーかなー?」


洋榎「やめーや! ウチの姉としての威厳がやな…」


由子「二人ともおまたせー。なんや盛り上がっとるねー?」

恭子「由子おかえり! 洋榎がお昼ゴチってくれる言うてるで!」


洋榎「は…? はぁ!?」


由子「おー、洋榎ふとっぱらー♪ ほな食べにいこーや」


洋榎「なんやそれ…あーはいはい! 今日はウチがゴチったるわ!」


恭子「よっ!愛宕プロっ!」


洋榎「ちょっ…そんなおだてても高いモンは勘弁してや?」ニヤ


由子「ふふふ、洋榎ったらまんざらでもない顔してるのよー!」


恭・洋・由「わははははは!」


………


こうやって三人で笑い合って話せる日も、あとどれくらいあるんかな。

次は最終回、卒業式の話やで。

乙です

おつー
終わりが近付くの寂しいな

最終回 ー卒業式ー


教室


洋榎「卒業式もあっちゅう間に終わってしもうたな」


恭子「せやな。 なんかあっけなかったわ」


由子「この制服を着るのも、今日が最後やねー」


洋榎・恭子「せやなぁー」


洋榎「ウチら三人、一年の時からずっと同じクラスやったな」


恭子「せやな。意外と稀なケースかもしれへんよ?」


由子「初めて会った時のこと覚えてるー?」


洋榎「なんやったっけ…あ! 入学式ん時に恭子とケンカした事は覚えとるよ」


恭子「そんなんあったっけ!? 全然覚えとらんわー」


由子「あれはどうしてケンカになったんやっけ?」


洋榎「あー…原因が思い出せんわ」


恭子「ははは、どうせ洋榎が何かやらかしたんやろ?」


洋榎「なんやそれ! …と言いたいけど多分ウチが原因やろな」


恭・洋・由「ははははは!」


恭子「…部室寄ってく?」


洋榎「あぁ、寄ってこか」

麻雀部・部室


洋榎「誰もおらへんな。 今日は部活休みやったっけ?」


恭子「たしか休みだったはずや」


由子「なんか凄く久しぶりに来た感じなのよー」


洋榎「せやな…あ! 私物持って帰らんと!」


恭子「はぁ? 引退した時に整理せんかったの!?」


洋榎「整理したで! 整理したんやけど、漫画やらゲームやら置きっぱにしとってな」ガチャ


洋榎「あっ!」


恭子・由子「どないしたん?」


洋榎「めっちゃ整理されとる…絹の仕業やなー」ガサガサ


恭子・由子(できた妹さんやなぁ…)


洋榎「よっし、これで全部や!」


恭子「そういや、ここで三人でよく三麻したなぁ」


由子「そうやねー。部活の空き時間とか、昼休みとか」


洋榎「やったやった! 負けたらジュースとかな!」


恭子「懐かしいなー」


由子「あ、このあと屋上行かへん?」


恭子「よっしゃ、行こか!」

屋上


恭子「この景色も今日で見納めかー」


由子「せやねー。 ここも色んな思い出があるのよー」


洋榎「ここでよく昼食べたなぁ」


由子「せやねー。 あ、あれ覚えとる? 牛乳爆発事件」


恭子「…あー、あったなぁ!あれには参ったで」


洋榎「牛乳爆発事件?」


恭子「洋榎が”牛乳振ってチーズにしたる”とかわけわからん事言って」


由子「ずっと振り続けてたらパックが破裂して…三人とも牛乳まみれになったのよー」


洋榎「あぁ、あれな! いやーあの頃はウチも若かったからなー!」


恭子「いやいや! たった2年前の話やから!」


由子「若気の至りってやつやねー」


恭子「由子もなに共感してんねん!」


洋榎「それやったらあれもあるで、恭子のダイエット作戦!」


恭子「ちょ、それは言わんでええやんか!」


由子「文化祭までの間、食後にバレーボールやったねー」


洋榎「そうそう、OLの昼休みかっちゅうねん!」


恭子「あーもう、やめやめ! この話はおしまいや!」

校門前


恭子「もうこんな時間やし、そろそろ帰ろか?」


洋榎「せやなぁ」


由子「洋榎は明後日やったっけ?東京に行くの」


洋榎「そうやな、少しも気が休まらんわ」


恭子「見送り、行ったろか?」


洋榎「ええよええよ! 準備とかな、家族で東京いくもんやから」


恭子「そっか、ほんなら行かんほうがええな」


洋榎「すまんな…由子はいつ出発なんや?」


由子「私も来週には出発予定やでー。 少しでも早く向こうに慣れとかんとね」


恭子「そっか…ほんならここでお別れとしますか?」


洋榎「そうしよか、そのほうがええかもしれへん」


由子「そうやねー…」

洋榎「恭子、由子、三年間ホンマにありがとうな。二人がおったから、毎日オモロかったで!」


由子「私もよー。二人と過ごせた三年間は私にとって一生の宝物なのよー」


恭子「二人が遠くに行ってしまうんは…正直寂しいわ。毎日毎日一緒におったからな」


洋榎「これから先は別々の道や。三人揃う時はしばらく無いかもしれへんけど…」


恭子「麻雀を続けていればいつかまた三人揃う時がくるハズや。二人とも麻雀やめたらアカンで?」


由子「もちろんそのつもりなのよー。恭子もやで?」


恭子「あぁ、わかっとる…ほんなら二人とも元気でな! なんかあったらすぐ連絡せえよ」


洋榎「おおきに! 恭子もこっちで頑張るんやで!」


由子「これでしばらくさよならやねー。 ほんなら、またね!」


………


こうしてウチらは姫松高校を卒業し、それぞれ別の道を歩きだした。


別々の道を進んでも、麻雀を続けておればいつかまた巡り会える。


そん時はまた、ウチがボケて、恭子がツッコんで、由子がフォローして…そうやってまた遊ぶんや。

いつかまた、三人で。


卒業式編 ー完ー

あとがき

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

途中でコメントくださった方々にも、大変感謝しております。
コメントを返せずすいませんでした。

三人の卒業までを書くはずが、おまけの話も書いてしまいました。

そちらも是非、お付き合いいただけたら…と思います。

乙です

乙乙なのよー

おまけ ー10年後ー


東京某所


恭子「あれからもう10年かぁ」


由子「早いものやねー」


洋榎「気づけばみんなアラフォーやもんな!」


恭子「アラサーやろ!」
由子「アラサーなのよー」


洋榎「思いっきりハモっとるし…」


恭子「二人とも今日はすまんな、忙しいのに…」


洋榎「なに言うてんねん! 今日は恭子にとって大事な日やろ」


由子「そうなのよー。 一緒にいてあげられないけど、応援してるでー」


恭子「ありがとうな、二人とも…そろそろ時間やから行くわ」


洋榎「この試合が終わったら久しぶりにご飯でも行こーや!」


由子「賛成なのよー。楽しみにしてるわー」


恭子「りょーかい、ほなまた後で…」ガチャ

洋榎「恭子!」


恭子「なんや?どないした?」


洋榎「あの日の罰ゲーム、なんでも言うこと聞くいうやつな…今使わせてもらうで!」


恭子「は?…あぁ、花火大会の! よう覚えとったなーそれ!」


洋榎「…絶対優勝してや!」


恭子「はぁ?」


洋榎「せやから! 今日の試合で絶対優勝するんやで! これはウチからの命令やからな!」


恭子(なんやそれ…絶対負けられへんやんか!)


恭子「ぷっ…ははは!洋榎、そんなんでええんか?」


洋榎「あぁ、これでええねん!」


恭子「言われんでも…元よりそのつもりやで!」


恭子「ほな、行ってくる!」

由子「………」スタスタ


『真瀬さん!探しましたよー』


『ユーコ! サガシタ!』


由子「ごめんごめん、ちょっと友達と会ってたのよー」


『そうでしたか…さっ、これを付けて下さい。まもなく時間ですから』


『ユーコ! ハヤクスル!」


由子「おっけー。ほな行こかー」


”国際麻雀協会オセアニア支局・真瀬 由子”

実況「激闘が続いた全国高校生麻雀大会・団体戦、本日ついに決勝戦を迎えます」


実況「決勝戦には特別ステージが設けられ、各校の選手たちが今まさにそのステージへと集まりました」


実況「それではここで決勝の舞台へ進んだ各校の学校紹介を行います」


西東京代表・白糸台高校!
”インターハイ最多優勝記録”を持つ、名門中の名門!
今年度の”チーム白虎”は超攻撃型プレイヤーでオーダーされています!


福岡県代表・新道寺女子高校!
”北部九州最強”の名の通り、今年も決勝へと駒を進めてきました!
副将・大将のダブルエースが決勝でも大暴れとなるか!


南北海道代表・有珠山高校!
”ダークホース”として今大会の注目度ナンバーワン!
レギュラーメンバー全員が1年生という異色のチームです!


南大阪代表・姫松高校!
緻密なデータ戦略と圧倒的な高火力を武器に、帰ってきた”西の王者”!
宿敵・白糸台を破り、今年は優勝なるか!

実況「そして決勝戦の解説を務めるのはこの方…」


麻雀ワールドカップ日本代表として中堅を務め、今年の欧州・全米オープンの金メダリスト!
大阪が生んだ”雀姫”こと、愛宕洋榎プロです!


洋榎「どもども、よろしゅうたのんますわー」


”世界トッププロ雀士・愛宕 洋榎”


実況「本日は解説よろしくお願いします。 愛宕プロはどの学校に一番注目していますか?」


洋榎「そらもう、姫松高校やな」


実況「なるほど、その理由は何でしょうか?」


洋榎「まぁ…地元やし、ウチの出身校やしな。それだけや」


実況「…ありがとうございました! それでは一旦CMです」

姫松高校・控え室


恭子「いよいよ決勝戦や。泣いても笑うてもこれが最後!」


恭子「それぞれの力を出し切って、麻雀を楽しむように!」


恭子「私はいつも皆に”負ける可能性も考えろ”、そう言うとったけど」


恭子「今日だけは”絶対に勝つ”、そう強い気持ちで卓に入ってほしい」


『はいっ! 末原監督!』


恭子「気合十分やないか…!さぁ、姫松の力を見せつけたろうや!」


”姫松高校麻雀部監督・末原 恭子”

洋榎「さぁ見せてもらうで。恭子が作った姫松の力を!」


由子「恭子が監督を務めとるんやから、負けるはずがないのよー」


恭子「洋榎、由子、見とってや。絶対に優勝したるからな!」


………


実況「それではお時間となりました…。 全国高校生麻雀大会・決勝、先鋒戦のスタートです!!」


カン!

乙です

たいへん乙でした

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