勇者「しゃーねーな」 (3)
王に命令され、勇者として魔王を倒すべく故郷を旅立ってから半年ほどが過ぎた。
剣の腕に覚えがあったとはいえ、旅の初めのころはほんの雑魚一匹相手にも命がけの戦いだった。
それが今じゃ、どうだ。
村長「お願いいたします、勇者様………どうか、どうか我らの森を守るべく、炎竜の討伐を請け負ってはいただけませんか」
3ヶ月ほど前に大猿を討ち、そしてついこの間、大蛇を相手に大金星を上げて(正直マグレだった)、お次は炎竜ときたもんだ。
いやあ、成長したもんだよなぁ。
………とは言いつつも、正直言って炎竜相手に勝てるかどうか、かなり怪しいところだ。ぶっちゃけ相打ちにすらできないかもしれん。
まあつまり、多分死ぬ。
うわー怖ぇ。燃えて死ぬのって結構キツイって聞くしな。
───それでも。
俺は、村長を小馬鹿にするようにニヤリと笑い、
───俺の返事はいつだってこうだ。
軽く一言、言い放つ。
勇者「しゃーねーな」
気だるくも、確固たる決意を表すこの言葉は、この半年の間、俺の支えとなっていた。
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村長の家から堂々と出てきた俺は、堂々と歩きながら宿に戻り、そして自室に入ると、かたかたと震える足を必死に止めようとしていた。
勇者「ああああ………嫌だなぁ………マジこえーよ………なんだよ炎竜ってふざけんなよ、お前ら食物連鎖にゼッテー関わってねぇだろ………」
理不尽な愚痴でもこぼしていないと、やってられない。
当たり前だ。こんなもん、慈善事業となんら変わらない。収入といえば、モンスターが旅人から盗んだのか、殺して奪い取ったのかわからない金だけだ。
くそ。あのクソ王、魔王殺したら真っ先にぶっ[ピーーー]。
……というような脳内殺人予告は、もはや数十回はした。
勇者「ふぅ───っ………落ち着け、落ち着け俺。考えろ、作戦を」
顔を手で隠しながら、頭をフル回転させて、炎竜をしとめる方法を絞り出す。
死にたくねぇ。
④
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