咲「ホモセックス?」 (66)

卑猥な単語や不快な表現が続出すると思います。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404064680

咲「何言ってるの京ちゃん…私女の子だよ…」

京太郎「なあ、もういい加減やめようぜ…お前は男としても十分魅力的な奴なんだからさ…」

咲「…」

京太郎「確かにお前の容姿は中性的で、こうして服装や素振りを工夫していれば女の子にも見えるかもしれない。」

京太郎「だがな、咲。持って生まれたものはどうしようもないんだ。俺だって咲や咲のおねえさんみたいにすごい能力をバンバン発揮して、麻雀で活躍してみたいと思うよ。
だけど俺にそんなことはできない。俺は持たずして生まれてきたからで、これはどうしようもないことなんだ。」

京太郎「それに咲は俺とは違う。さっきも言った通り、お前は男としてだって、人を惹きつける要素をたくさん持っているじゃないか。正直羨ましいくらいだよ。」

咲「京ちゃん…」

京太郎「告白の件だが、俺はありのままのお前となら付き合いたいと思っている。たとえそれで禁忌を犯すことになったとしてもだ。」

咲「…」

京太郎「とはいえ、咲も色々と考えたいだろう。また明日にでも返事を聞かせてくれ。」

咲「……うん…」

京太郎「このセリフ、昨日はお前から言われたはずなのにな。俺は待たせる側だったはずなのに、いつの間にか待つ側になった。不思議なもんだな。」

咲「はは…」

京太郎「じゃあ俺は帰るわ。返事、楽しみにしているぜ。じゃーな!」

咲「ばいばい…」

咲(はぁ…)

咲(………)

咲(私…どうしたらいんだろう…)

変態調教師マゾ天国と聞いて

今日書いた分は投下しておくのか

咲(京ちゃんは中学からの知り合いで、幼馴染と言うにはちょっと日が浅いかもしれないけれど、友達があまり多くなかった私にとっては思い出の多くを共有した大切な人だ)

咲(私は活発でいつも私を元気にしてくれる京ちゃんに憧れていたし、もし恋人同士になれたら、などとずっと夢見てきた。)

咲(だけど友人からもう一歩を踏み出すことはなかなかできなかった。)

咲(関係が壊れるのが怖い、と言うと使い古された陳腐なワードで、私も小説なんかで嫌というほど目にしてきたけど、やっぱり定番には定番になるだけの理由はあるんだね。)

咲(そんなモヤモヤした気持ちでずっと接してきて、早2年…になるのかな…)

咲(京ちゃんの私に対する態度に変化が見られるようになった。)

咲(京ちゃんもやっぱり思春期の男の子だし、仲の良い友達とはいえ男と女だから、京ちゃんも一線を置いたような雰囲気を感じることがあった。)

咲(それが最近になって、そういうことが急になくなり、今までとは別の感情…私には親近感のように見えた…で接しているように感じるようになった。)

咲(そうそれはまるで…男友達と接するように…)

咲(あからさまに変わったとは言わない…でも何気ない生活の端々で、どうしてもその兆候を感じてしまう…)

咲(たとえば、私生活に関する恥ずかしい出来事を笑い話にして語ってきたり、周りの目を気にすることなく学食に誘ってきたり…)

咲(中学のとき…いや、高校に入学してからしばらく経っも、京ちゃんはそういうことを控えていたと思う)

咲(その接し方をなぜ私は”男友達のよう”だと感じたのか。それは私がこれまで目にしてきて、ずっと憧れてきた京ちゃんの一面だからだ。)

咲(京ちゃんは人気者だったけど、それは特に男子に対して言えることだった。)

咲(もちろん女子に嫌われていたというわけではない。むしろ密かに人気だったくらいだ。)

咲(でもこの辺は田舎だし、性に対して閉塞的な考えもやっぱりあったから、なかなか男子と女子が仲良く一緒に、ということにはならなかんだろう。)

咲(とにかく、私は京ちゃんの気さくで壁を作らない性格が好きだったし、私にもそういう態度で接してくれたらな、と思っていた)

咲(だから京ちゃんの変化は嬉しかった。嬉しかったんだけど…それはあまりに急すぎた。)

咲(麻雀部での私の活躍を見て、急に私のよさに気付いてくれたんじゃないの!?などと淡い期待もした。)

咲(それでとても落ち着かなくなって、勇気を出して告白してみたんだけど…)

咲(…今日の言葉…)

咲(…どうやら悪いほうの予感が当たってしまったみたいだね…)

咲(それにしても…今日の言葉…)

咲(いくら京ちゃんでも…あれはひど過ぎるよ…)

咲(…)

咲(…でも…)

咲(…)




ー教室ー

ザワザワ…

和「咲さんっ!!」ガラッ!

咲「あ、和ちゃん。おはよう。」

和「おはようって…えっと…」

和「その格好…どうしたんですか…?」

咲「ああ…これ…」


咲「今まで嘘をついていてごめんね。わた…僕は実は男だったんだ。」

和「は…」

和「えっと…」

咲「…」

和「や、やだなー…そんな冗談じゃ冷血デジタル女の私は笑いませんよ…」

咲「冗談じゃないよ。本当なんだ。」

和「…」

和「…も、もしかしてこれは何かの罰ゲームなんですか!?だとしたら許せません!一体誰が…」

咲「うるさいよ!!!」

和「が…あ…」

咲「…いきなり怒鳴ったりしてごめんね。でも本当なんだ。本当にわた…僕は…」

和「…」

キンコーン

和「…」

咲「…チャイム鳴ったよ。教室に戻った方がいいよ。」

和「…」

咲「あとこれからは、僕のことは咲くんと呼んでね。」

和「…」

咲(…ああ…)

咲(原村さんの去り際の目…これが現実の出来事なのか、それさえも判断しかねているような…困惑の色をしていた…)

咲(…でも…)

教師「おはよう。授業を始めるぞー」ガラッ

教師「…どうした、ざわついているな。なにかあった…」

咲「…」

教師「み、宮永。その格好はなんだ。」

咲「…格好?」

教師「…どうして男子の制服を着ているのかと訊いているんだ。」

咲「男子だからですよ。」

ザワザワ…

教師「…」

咲「今日まで校則を破り女子の制服を着ていたことについては謝罪します。すいませんでした。」

教師「…」

咲「…」

教師「…後で職員室に来るように…」

咲(…)


京太郎「ハァ…ハァ…おくれてすいま……ん?…」

咲(…)

京太郎「咲…」

京太郎「…」

咲「…」





咲(…結局、放課後まで京ちゃんと会話することはなかった)

咲(会話しなかったとはいえ、お互いがお互いにずっと意識を向けていたことはよくわかっていた。)

咲(京ちゃんの席と私の席は離れているけど、意識の流れが一点に流れてくるから、ああ、京ちゃんも私のことを意識しているんだなと感じた。恐らく京ちゃんも同じだろう。)

咲(…)

咲(京ちゃん…何も伝えなかったけど、来てくれるよね…)

咲(二日前、私が告白するのに誘った場所…)


ザッ

京太郎「咲…」


咲「…京ちゃん…」

京太郎「…クラスの奴から聞いたぜ。お前、先生に呼び出されてたんだろ。」

咲「…うん…」

京太郎「ちゃんと行ったか?」

咲「…」

ー昼休みー

教師「…まず訊こうか。これは悪ふざけか?もし悪ふざけなのだとしたら悪質だ。」

咲「ふざけているわけではありません。今まで嘘をついていましたが、僕は男です。」

教師(…確かにふざけて言っているという感じではない…目はいたって真剣だ…)

教師「…ではチェックしよう。なんなら女教師に頼むが、どうするかね?」

咲「…議論の余地はありません。今まですいませんでした。では。」

教師「こ、コラ!待ちたまえ!…」

教師(…行ってしまった…)

教師「…」

教師(私もこの仕事に就いてそれなりに経った。だがこんなケースは初めてだ…)

教師(どう対応すべきか…)





咲「…なかなか信じてもらえなかったよ。」

京太郎「…そうか…」

咲「そりゃそうだよね。いきなり”実は男です”だなんて、まともな人からすればふざけてるとしか思えないもん。」

咲(…)

咲(…京ちゃん…今なら…今ならまだ…)

京太郎「…ああ…でも…」

咲(…京ちゃん…)

京太郎「…でも、悪かったな。俺は間違っていると言いきったが、それは咲のこれまでの人生を否定するのと同じことだ。」

京太郎「それにこれからも大変だろう。俺のために…とは思っていないが、きっかけを作ったのはたぶん俺なんだろう。」

京太郎「辛い思いをさせてしまったな…すまん…」

咲(…ああ…)

咲「ううん…私もこれで…これでよかったんだろうと…思うよ…」

京太郎「…ありがとう…」

咲「…」

京太郎「…正直に言うと俺、スゲー怖かった…確信があったとはいえ、女の子として生活している咲にあんなことを言うんだからな…」

京太郎「咲は特別な人だ。真偽の如何にしろ、今までのような関係ではいられないだろうって、スゲー怖かったよ。」

咲(…)

京太郎「…でも一昨日咲が俺に告白してくれたとき、勇気を振り絞ってっていう感じがひしひしと伝わってきて、ああこれは俺も本音で語らないといけないなと思った。」

京太郎「人生で一番ドキドキしたよ。それに昨日は怖くって怖くって一晩中震えていた。」

咲(…京ちゃんも…)

京太郎「…でもこれで恐怖に耐えた価値があったってもんだな!」

咲「えっと…じゃあ…」

京太郎「ああ。俺達は今日から、恋人同士だ!」

咲(…やっぱり京ちゃんも…怖いよね…)

京太郎「でもお前、今までどうしてたんだ?ほら、合宿のときとかさ。」

咲「あ、あはは。挟んだりして…どうにかこうにか…」


咲(…京ちゃんの苦しみが消えるなら…そして京ちゃんが私のものになるのなら…)


京太郎「お前器用だなー…って、ていうことはお前、合宿の間同級生の裸見放題だったってワケか!?」

咲「まあ…そうなるかな…」


咲(…私は…)

京太郎「くあー羨ましい!!!俺も禁断に手を染めたとはいえ、女の裸、特に普段接している人たちの裸体には流石に興味ある!
俺も”実は女でした”っていう手を使ってみるかー?」

咲「…京ちゃん…」

京太郎「あ…わ、悪い。いまの冗談は笑えないよな。すまなかった…」

咲「…ううん…いいよ…」

京太郎「…」

咲「…」

京太郎「…あ、あの、やっぱり原村のはすごかったの…」

咲 ジロッ

京太郎「あ、いや、なんでもない。なんでもないぜ!」

京太郎「…あのさ、俺たちが付き合ってること、他の奴らにはまだナイショな。」

咲「え…えーっと…」

京太郎「咲はただでさえ大変なんだ。あんなことがあった後で、すぐ男同士で付き合い始めたなんて言ったら…
     咲の負担は少しでも軽くしたい。それだけだよ。」

咲「…ありがとう…」

咲(ああ、やっぱり京ちゃんは京ちゃんなんだね。)

咲(これなら私も…)

咲「…」

京太郎「…」

京太郎「…じゃ、じゃあ俺はそろそろ帰ろうかな!」

咲「あ、うん!じゃあ私はちょっと麻雀部に寄っていこうかな。」

京太郎「そ…そうか。じゃあまた明日な!」

咲「ばいばい!」


咲(私に片手で会釈をし別れの挨拶を告げた京ちゃんの表情は、残念そうにも見えたが、ほっとしているようでもあった。)

咲(何年も前からの知り合いとはいえ、やはり付き合い始めは緊張するのだろう。)

咲(これからお互いに恋人としての接し方に馴れていくんだろうな。それが今から楽しみだ。)

咲(…それに、京ちゃんが麻雀部に付いて来ると言わなかったのは好都合だ。)

咲(これから繰り広げられるであろう展開は、京ちゃんにとってはきっと辛いものだろうから…)


ー部室ー

咲「…」 ギイィ…

優希「あ…咲…ちゃん…」

まこ「おお…」

久「…あー、にわかに信じがたかったけど、優希が言う冗談にしてはあまりにセンスがありすぎだものねえ…」

咲「こんにちは、皆さん。」

咲「今まで嘘をついていてごめんなさい。僕、実は男でした。」

優希「咲ちゃん…何言ってるんだじぇ…」

まこ「…」

久「…ま、余計な質問は控えることにするわ。単刀直入に訊くけど…本気?」

咲「本気もなにも…」

久「…そう。じゃあ…インハイはどうするの?」

咲「棄権します。しかし皆さんにはできるだけ配慮するつもりです。」

まこ「配慮?」

咲「インハイの期間中は病気ということにしておきます。団体戦は医師の診断書がある場合に限り補欠として登録されている選手に交代可能でしたよね。
  診断書はなんとかします。なので申し訳ありませんが試合は補欠の方でなんとかして下さい。」

久「…まあ…一応生徒議会書記のAさんに頼み込んで名前だけは貸してもらってあったけど…
  でもたとえ誰かが病気になっていても、私は引きずってでも連れて行くつもりだったわ。」

まこ「はは…補欠を用意しとったのはさすが部長ってところじゃのう…」

咲「私が性別を偽っていたことがばれたら当然失格になってしまうでしょう。ですから病欠ということにし、私は麻雀を引退します。」

咲「とはいえ、この近辺の人たちにはいずれ周知のこととなるでしょう。そこは至らなくて申し訳ありません。」

久「…手痛い戦力ロスね…まあ当然私は諦めていないけど。
  でも今は何を言っても聞いてくれなさそうだし、とりあえずそうですかと言っておくわ。」

咲「…ご迷惑をおかけします…」


優希「お…おかしいじぇ!咲ちゃんもみんなも!咲ちゃんは誰がどう見ても女の子だし、私たちはみんなでインハイに出て優勝するんだじぇ!」

咲「ごめんね優希ちゃん。でもどうしようもないんだ。持って生まれたものは変えられないんだよ。
   あと、これからは咲ちゃんじゃなくて咲くんって呼んでね。では皆さん、お元気で。」

優希「ちょ…ちょっと待つじぇ!!」

久「優希!…」

優希「えっ…」

久「まあ引退するといっても、部員の練習相手くらいになってくれてもいいんじゃない?いつでも歓迎だから。」

咲「…善処します…では。」 ギイィ

優希「あ………部長!どうして止めないんだじぇ!」

久「優希…人には色々あるのよ…」

まこ「ま、とりあえず様子見じゃな…」


優希「…咲ちゃん…」





ー時を同じくしてー


和「…咲さん…」
(暗い部屋でベッドに座りエトペンを抱きながら)

今日はここまで
おやすみなさい


期待してるぞ


これは男なのか女なのか

マジで咲男じゃなきゃスレタイ詐欺で提訴も辞さない乙

京ちゃんと付き合いたいがために男のフリをしてる美少女咲ちゃん
男を好きになってしまいさらに好きな人に正体を見破られる美少年咲くん

どっちも可愛い!

咲(部長や染谷先輩はやっぱり大人だ。私はとんでもないことを言って、しているのに、何も訊かないでいてくれた。優希ちゃんにはちょっとショッキングすぎたかな。結構取り乱していたし…まあ当然のことなんだけどね。)

咲(…麻雀部のみんなには申し訳ない気持ちで一杯だ。私は自分の意思で団体戦のメンバーを引き受けたんだから、きちんとその責任を果たして、京ちゃんとのことはそれから…とすべきだったのかもしれない。)

咲(だってすごく迷惑だよ。部長は私がいる前提で団体戦のオーダーを決めたのに、それが急にいなくなっちゃって、素人同然の人を連れて全国の強い人たちと戦わなくちゃならない。
もう作戦も何もあったものじゃないよ。部長はこれが高校最後のチャンスなのに…)

咲(それに今回のことは、私が風邪で試合に出られなくなったとかいう状況とはわけが違う。入部してから数ヵ月、短い間だったけど、私たちは確かにお互いを信頼しあい、心を通わせていた。
それがこんな、部長たちからすればわけのわからない形で説明もなしに信頼を裏切らたんだ。これからの麻雀部が"人数が減った"だけの部活になるだろうか。いや、決してそうはいかないんだろうな。)

咲(それは今日の様子を見ても一目瞭然だよ。優希ちゃんは麻雀どころじゃない感じだったし、部長も染谷先輩も困惑して対局や研究に集中できるような状態じゃないだろう。
それに原村さん…今日は部の例会だったはずの日だ。原村さんは部室にはいなかったみたいだけど、真面目な彼女が理由もなく部活を休んだりはしないはずだよね。
…やっぱり私のことなのかな。原村さんは繊細だし、繰り返して言うけどとても真面目な人だから、特に親しくしていた私の頭がおかしくなっちゃったと思って、悩んでくれているのかもしれない。)

咲(みんなが私のことを忘れてしまえばいいんだけど、インハイまではもう数週間しかない。楽しく和やかでみんなが積極的に参加したいと思える部活。麻雀部はまさにそんな部だった。今日からたった数週間で元のように戻れるのだろうか。)

咲(…それにはみんないい人過ぎる。みんなの一挙手一投足がぎこちなく、気まずくて、ふとした沈黙があると、そこにいる誰もが誰かが"あの話題"を切り出したりしないかヒヤヒヤしだして、
その様子をお互いが察してしまうからますます気まずくなって、すごく落ち着かない雰囲気。そんな様子がありありと目に浮かんでくるよ。)

咲(その対価は本当に得られるんだろうか?…ううん、それはこれから確かめることだ…)

咲(…私は…)

咲「…あっ…」

咲(丘の上に野薔薇が咲いている。綺麗だなあ。)

咲(もう大分暑くなってきたのに。頑張ってるんだね。嶺上と言うとちょっと大袈裟になっちゃうけど…)

咲(…京ちゃん…)

これならわざわざ括弧で括らなくても地の文使えばいいだろ

決まりなんて無いんだから書きたいように書けばいいよ

野薔薇とは咲さんの誕生花を言ってるのか
ホモの隠語の事を言ってるのか
両方なのか

>>18
キモい。ホモじゃないなら普通に書くべきだろ、そもそも何でも京太郎中心にもの言ってんじゃねーよ

>>23
過剰反応しすぎ

京豚による最大の被害者は咲さんだよな
当て馬にされたりホモ好きにされたり、
今度は性別まで変えられて咲さん可哀想

>>23
何お前

速報に来ると臭いのが沸いてくるけどめげずに頑張ってほしい

>>23
くさい

妹はいないってそういう…

>>25
百合豚さんオッスオッス

>>29
ワロタ

咲くんの嶺上開砲はまだかな?

僕も咲くんとホモセックスしたいです

>>27
ほんとこれ
四六時中罵り合いしてるようなのばっかで読者の質が落ちたのは痛切に感じると思うけど
ゆっくり書けるって利点だけはポイント高いんでめげずに頑張って

説得力あるな、流石

咲ちゃんかわいそう…

ー宮永宅ー

咲「ただいま」

宮永父「…ん。帰ったか…」

咲「あれ、お父さん。帰ってたんだ。」

宮永父「ああ…ちょっとな…咲…後でちょっと居間に来てくれないか」

咲「…うん…」





宮永父「…そこに座ってくれ。」

咲「…」 ゴトッ

宮永父「…」

咲「…」

宮永父「…はは…父さん今朝はびっくりしたぞ…いきなりあんなことを言いだして、それで男の制服を着たまま学校に行っちゃうんだからなあ…」

咲「うん…ごめんね…」

宮永父「…それでな、今日は会社を休ませてもらった。街まで行って…その…病院に行ってきたんだ。」

咲「…そうだったの…」

宮永父「欠勤なんて本当に久しぶりだ。咲が生まれたとき以来じゃないかな。電車も平日の昼間は随分と空いているものなんだな…はは…」

咲「…」

宮永父「…うん…で、心のお医者さんに会ってきたんだ…」

咲「…」

宮永父「父さんが鬱になったとか、そういうことじゃない。…言わなくてもわかるよな。咲のことだ…」

咲「…」

咲に何か恨みでもあんの?

宮永父「…」

咲「…」

宮永父「…それでな、お医者さんは直接話さないとわからないとおっしゃった。」

咲「…うん」

宮永父「だから明日、街の病院まで一緒に行かないか?」

咲「…うん。わかった…」

宮永父「…」

咲「…」

宮永父「…咲…お前は父さんの子供だ。父さんはお前が真面目な子だということよくわかっている。
     だから今回のこともお前なりの考えがあってのことだろうと信用しているよ。だけど心配なんだ…だから病院には行ってくれ。」

咲「うん…」

宮永父「…」

咲「…」

宮永父「…そうだ、街に出たついでにケーキを買ってきたんだ。テレビにも出た店だぞ。冷蔵庫に入っているから食べなさい。」

咲「えっと、もしかして先月駅前にできたっていうあのお店?」

宮永父「あ…ああ。多分それだと思う。」

咲「やったっ。ありがとう!」

宮永父(…)

宮永父(会話や素振りはいつもの咲のままだ…私がよく知っている咲の…)

宮永父(まったくおかしくなってしまった、というわけではないみたいだな…)

宮永父(…)

宮永父(…しかし、咲が真面目な性格でなければ…などど思ったのはこれが初めてだ…)

宮永父(今回のことがただの悪ふざけであってくれたら…)

宮永父(…)

部長ですね、分かります

あ、iPSが何とかしてくれるはず……

あくしろよ

はよ

ホモの兄ちゃんもう終わりか?(泣)

作者は死んでくれ




咲(ふぅ。今日は色々あって疲れちゃったよ。…これからはもっと大変になるんだろうけど…)

咲(真っ白ですべすべの生地にラズベリーの乗ったチーズケーキ。お姉ちゃんとよく一緒に行ったお菓子屋さんで私がいつも頼んでいたやつによく似ている。)

咲(お姉ちゃんがいなくなった後、ケーキなんて食べる機会はほとんどなかったけど、それでもお父さんは私の好みをしっかり覚えていてくれたんだ。
やっぱり家族ってすごいな。他者のことに対してそれだけ深い関心を向けられるのって、家族とか、恋人とか、それくらいのものだろう。
お父さんは私のことをとっても心配しているんだろうな。)

咲(そして私はその真心を裏切らなければならないんだ。)

咲(このケーキは甘酸っぱい。甘酸っぱい恋愛とはよく言うけど、私がする予定の恋愛は果たして甘酸っぱいものなのだろうか?)

咲(もし私がこの先自分の気持ちを曲げることがなかったら、私はこれからの人生…恐らく50年以上にわたって…今まで親しくしてきた人、新しく出会う人、みんなに「僕は男です」って言わなければならないんだ。
どれだけ笑われても、狂人扱いされても、ずっと言わなければならない。私のことを一番に心配してくれているお父さんにさえも…)

咲(すごく胸が重いよ。心臓が鉛になったみたいだ。頭にもやがかかっている…体一杯に溜まったやりきれない気持ちが爆発しそうだ…)

咲(…でもお父さんは、私が幸せになることをなによりも望んでくれているだろう。)

咲(たとえこんな方法でも…一般的に理想とされる形からはかけ離れていたとしても…私がその方法でしか幸せになれないのだとしたら、みんなは納得してくれるんじゃないのかな?
もし納得してくれなくても、そうするしかないんじゃないのか?)

咲(じゃあ本当にこの方法で幸せになれるのかな?もしなれたとして、他に方法はないのかな?)

咲(…それは試してみないことにはわからない。とにかく一刻も早く京ちゃんに会いたいな…)

咲(電話したいけど、もう遅いし、私も本当に疲れた。今日はもう寝よう。)

咲(…京ちゃん…お休み…)

京豚は咲に恨みでもあるのか?

まってた




ガタン ゴトン


咲「…」

父「…」

咲(お医者様の診察は診察というより雑談に近いものだった。)

咲(怪我やできものだったら、症状を見ればある程度原因が推測できるんだろうけど、心の病気は本人が話さないことには何もわからないだろうからね。)

咲(でも初対面の人に何もかも腹を割って話すっていうのは難しいから、ああやって雑談みたいなことをしつつ私のことを喋ってもらって、私の理解者であるということを示してから本題に入るのだろう。)

咲(そのためのテクニック…それが医者として必要だから身につけたものなのか、もともと人格として備わっていたものなのかはわからないけど…
とにかく、私を自分のことについて話す気分にさせる雰囲気の作り方がとても上手い人だった。)

咲(病院、という言葉を聞いて、ポジティブなイメージを持つ人は、そうそういないだろう。)

咲(ポスターや観葉植物でフォローしていても、整然とした内装は患者に無機質な印象を与えるし、それに日々事務的に処理されてゆく患者達…
別にお医者様を責めたいわけでがない。医療だって商売だし、機能性のためそれが必要だということは理解している。
待合室の長椅子は、一人また一人と診察室に呼ばれるたび、そこに並べられた患者達は診察室に近い方へとスライドしてゆく。診察室の中の様子はもちろん待合室からは見えない。それは一種の工場のようなものを連想させた。
嫌が応にも死を連想してしまう病院という空間で、ベルトコンベアーに乗せられ、処理される時を待つものたちの列。
その中に私がいると思うと、私の「個」が底の見えない夜の海に投げ入れられたように感じられ、自分の人生が上向だという気持ちにはとてもなれなかった。)

咲(そんな中だからこそ、私の言葉に真摯に耳を傾け、私のことを理解してくれようとするお医者様の態度は身に沁みるものであった。本当に困っている人はきっと心中を洗いざらい話してしまうのだろう。)

咲(だけど、私は当然、何もかも話してしまうというわけにはいかった。もしそうすれば京ちゃんに非難の矢が向くことは明白だからだ。)

咲(ということで、学校でとったような、私は男ですの一点張りの態度で通さざるを得なかった。)


ガタン ゴトン


咲(…私はさっき「本当に困っている人」と言った。では、私は「本当に困っている人」ではないのだろうか?)

咲(困っているのは確かだ。だけど私の行った「困っている」とは、自分の外部であり不可抗力である病気に対して困っているという意味であって、私は当てはまらない。)

咲(この現状は私の選択の結果だし、もし全てを打ち明けて京ちゃんを諦めたなら、今すぐでも問題は解決する。明確な解決策がわかっていて、あえてそれを選ばずにいるんだから、私は本当には困っていないはずだ。)

咲(本で読んだけど、昨今は精神科受診の敷居も低くなり、悩み相談程度の内容で精神科に来る人も少なくないそうだ。そして専門家であるお医者様には、そういう人と本当の意味の患者とは、一瞬で見分けがつくらしい。)

咲(恐らく、私が本当にお医者様の助けを必要としている人間ではないということは、あの数十分の短い対話の中でも見抜けるものだったのだろう。
再診の必要はなく、もし心配ならお父さんだけ相談にいらっしゃってくださいと言われたのがその証拠だ。本人である私が精神的に参っている素振りを見せないのだから、そもそも再診の必要も薄いのだろうけど。)

咲(困っていて、それを話すことが求められているのに、話すことができないというのは、辛いことだな。)


ガタン ゴトン


咲(…電車が揺れるたび、人も揺れる。私の心は…どうなんだろう…)


ガタン ゴトン


宮永父(…お医者様には「思春期特有の反社会的態度」とだけ診断された。)

宮永父(咲も照も、今まで反抗期らしい反抗期もなかったから、これが反抗期だと言われてもピンと来ない。だが今はお医者様の言葉を信じておこう。)

宮永父(私は素直な咲が心の底から大好きだったから、どちらにせよ私には辛いことなのだ。しかし一人の人間として問題を抱えるようになった娘の成長を祝うべきなのかもしれない。)

宮永父(その問題を徹底的に問い質し向き合うべきなのか、本人が自力で解決するのを見守るべきなのか、親としてあるべき姿は一体どちらなのだろう…)

宮永父(とにかくもう少し様子を見てみないことにはわからないな。)

宮永父(ああ母さん、こっちの娘は父親を困らせるくらいに成長しているよ…)


ガタン ゴトン


咲(平日の電車…お父さんの言ったようにガラガラだな。)

咲(私はこの先、こんな一人ぼっちの道をずっと歩むことになるのかな。)

咲(でも、京ちゃんが一緒にいてくれる…いやでも…やっぱり一人ぼっちだな…)

宮永父「…そうだ咲、今日は何か食べて帰ろうか。」

咲「そうだね。私イタリアンがいいな。」

宮永父「わかった。じゃあ駅前のあの店に行こうか。」

咲「うん…」

宮永父「…」

咲「…」


咲「…ごめんねお父さん。」

宮永父「…咲…」

咲「心配だよね。ごめんね…」

宮永父「…ああ。心配さ。」

咲「うん…でも、これが必要だってことは後で絶対にわかるはずだから…」

宮永父「…そうか…」

咲「…」

宮永父「…」

乙。

タイトルからは想像もつかなかったけど、かなりシリアスだ。

ー翌日ー


ザワザワ

咲「…」ガラッ

シーン

咲「…」


咲(私が入った途端みんな静まり返ってしまった。)


シーン

「…それでさー…」

「…うん…」

…ザワザワ


咲(クラスのムードメーカー的な立ち位置の生徒がぎこちない素振りで口火を切るまで、その静寂は続いた…
彼女の口調は雑談の再開を促しているようで、それまで私の方を見たくてもじっと見るわけにはいかず気まずそうに沈黙していた他のグループの面々も、彼女の声を聞いておずおずと元の談笑へ戻っていった。)

咲(私はあんまりクラスの人と話したことなかったから、みんな私の扱いに困っているんだろう。)

咲(やっぱりこうなるのか。私がクラスの雰囲気を悪くしていると思うと申し訳ないな…)

咲(だけどそれも時間の問題だろう。私のこの態度が日常になれば、誰も気にしなくなるはず…なってほしいな。)


和「…咲さん…」

咲「…あっ。和ちゃん。おはよう。」

和「おはようございます…」

咲「…」

和「あの…」

咲「うん?」

和「放課後、私と優希と一緒にどこか遊びに行きませんか?」

咲「えっと…和ちゃん、和ちゃんも優希ちゃんも今日は部活があるんじゃないの?」

和「いえ、いいんです。」

咲「でもインハイ前の大事な時期だし…」

和「昨日は急に休んで、優希はとても心配していましたよ。それに私も…優希も私も寂しいです…」

咲「…」

和「…」

咲「…うん。5時から用事があるから、それまでなら…」

和「あ、ありがとうございます!」

咲「ううん。私も楽しみだよ。じゃあ…」

和「はい。ではまた放課後に…」

VIPにあったやつか

ー放課後ー

咲「…お待たせ。」

優希「あっ。咲ちゃ…咲ちゃん…」

咲「…優希ちゃん」

咲(一回言いよどんだのは、私のことを咲ちゃんと呼んでいいか考えたのかな。でも結局直さなかった。訂正…しても無駄だろうし、もうやめておこう…)

和「揃いましたね。」

咲「どこに行こうか?私は後で用事があるから、あんまり遠出はできないんだけど…」

和「あっ。でしたら、橋のところにあるカフェにでも行きませんか?ちょうどさっきまで優希とあそこの紅茶がおいしいって話をしていたんです。ねえ優希?」

優希「うん…」

咲「カフェか…いいね。じゃあ行こうか。」

和「はい。ほら優希。行きますよ。」

優希「…」

大会出てんのかよww
男だと思ってんなら京太郎止めろよ……




和「…その部長の和了りも、3面張を捨てて地獄単騎にしていて…」

咲「あはは。部長らしいね。」

和「でも最後には結局勝ってしまうのがあの人の不思議なところです。」

咲「ほんとにその通りなんだよね。」

和「そんなオカルトありえません!と言いたいところですが、麻雀を打つのは人間です。打牌を単純な確率で語ることはできませんし、山読みなど明確に数値化しにくい部分があるのも事実です。」

咲(面倒事が起きた後でも自分のすべきことをしっかり見据えることができる…和ちゃんはやっぱりすごいな。)

和「全国に行けば色々な強者と出会うことになります…そう、色々な人と…ねえ、優希。」

優希「…うん。」

和「部長の打筋には一部私には理解の困難な部分があります。でも、理解できないからこそ、それに向き合うことは実りの多い経験だと言えると思います。ですから部長の思考を披露していただくのもいいかもしれませんね。」

咲「うん。そうだね。」

優希「…」

咲(理解できない、色々な人かぁ…)

和「ねえ。優希。」

優希「…いい考えだと思うじぇ。」

咲「…」

和「…それでですね…」

咲「うん…」


咲(和ちゃんは私がいなかった昨日の部活についてずっと喋り続けている。その内容はいたって普通の、普段通りの部活を描くようなものだ。)

咲(私が気軽に復帰できるように配慮しているのだろうか。)

咲(普段はおしとやかな和ちゃんも、麻雀のことを話すときは饒舌になるし、熱くなることだってある。)

咲(でも、今日の和ちゃんがよく喋るのはそれだけが原因じゃなさそうだ。まるで…優希ちゃんが静かになった分の穴を補っているように見える。)

咲(優希ちゃんがおトイレに行っている間に訊いてみたところ、優希ちゃんは私といるとき以外でもずっとあんな様子だったそうだ。)

咲(よく喋る和ちゃんとだんまりの優希ちゃん。)

咲(そして、話の中には恐らく意図的に削除された部分もあるのだろう。)

咲(私がいなかったのは昨日と一昨日だけど、和ちゃんは昨日の話しかしない。)

咲(一昨日は練習ができなかったのだろう。私のことについての対策会議をしていたのか…いや、話し合えたならまだいい。)

咲(優希ちゃんはかなり取り乱していたし、部長が優希ちゃんを諌めるシーンもあった。)

咲(そして今日は二人が部活を休んでいる。仲違いなんかが起きていなければいいけど…でも逆にこうして二人が私と話しているのが部長の意図なのかもしれない。)

咲(いずれにせよ今日のこの会合は、仲の良い高校生が放課後にちょっと話していこう、という感じではないな…)

咲「あ…そろそろ時間だ…」

和「あ…はい。」

咲「楽しかったよ。ありがとうね。」

優希「…どこに行くんだじぇ?」

咲「…ちょっとね。」

優希「ちょっとって…」

咲「ちょっとはちょっとだよ。」

和「…」

優希「…」

咲「…じゃあね。」


和「…朝、登校の途中で見かけた咲さんはすごく思い悩んだ様子で、私は声をかけることができませんでした。」

和「優希…あなたがそんな様子では、咲さんの心はもっと重くなってしまいますよ…」

優希「…わかってるじぇ…」

和(とはいえ、無理もありません。男装云々は笑い話にできるかもしれませんが、急に部活をやめるなんて言い出して…それも私達に何の相談もなしに…)

和(優希がショックを受けるのは当然ですよ…私も…)

和(…咲さん…)

そういえば咲の和や優希に対する一人称は「僕」にしなければいけなかった
脳内補完お願いします

本当、京太郎は罪深い男だな。

あと和は優希のことをゆーきと呼んでいたよな…

優希「…咲ちゃん…これからどこに行くのかな…」

和「…」

優希「あれは明らかに誤魔化している態度だったじぇ…」

和「ゆーき…」

優希「なんで教えてくれないんだろう…」

和「…私達を心配させないよう気遣っている…例えば、病院やカウンセリングに行ったり、一人で泣いていたり…であればいいのですけど。
いえ、もちろんよくはないのですが、まだ良いほうではあります。」

和「ですが、私達に知られたらまずいので言えないのでしたら…そしてこちらの見込みのほうが大きそうなのですが…だとしたら、咲さんのこれからの"予定"というものは、今回の件の核心に関わっている可能性が高いと思います。
その場合、その"予定"が咲さんの悩みをより大きくするものである、という気がしてなりません…」

和「…」

優希「…」

優希「…確かめるべきなのかな?…」

和「…尾行する…ということですか?」

優希「…」

和「…確かに気になりますし、確かめる価値はあるかもしれません。」

優希「うん…」

和「ですが、もし私達が咲さんの信用を失ってしまったら、咲さんが誰かに相談したくなったときに相手がおらず、一人きりになって思いつめてしまうかもしれません。
それにまだ知らない方がいいと思うんです。もし衝撃的な事実を知ってしまったとして、ゆーきも、そして私も、それを冷静に受け止められる状態ではありませんから…」

優希「…好奇心旺盛でなんでもはっきりさせないと気が済まないデジタル科学少女ののどちゃんにしては珍しい意見だじぇ。」

和「こと友人関係の問題については、私だって慎重になるものです…」

優希「…」

和「もう友達と離れるのは嫌ですから…」

優希「のどちゃん…」

和「ですから、咲さんもゆーきも私が絶対元気にします!任せて下さい!」

優希「…ありがとうだじぇ…」グスッ

和「…紅茶、冷めてしまいましたね。新しいものを注文しましょうか。」

優希「…うん。」




咲(…ああ、10分も遅れちゃったよ…)

咲「京ちゃん!」

京太郎「咲…」

咲「ごめん京ちゃん!待ったよね…」

京太郎「おせーぞ咲!その…初…デ…デートだってのによ…」

咲(!)

咲(京ちゃんってこんな風に照れることもあるんだ。)

咲(もし私達が普通の…男と女のカップルだったら、「俺も今来たところだよ」なんて言っちゃうのかな…)

京太郎「ま…まあ、今日はその…楽しもうぜ!」ガシッ

咲「ひぁっ!」

京太郎「うわっ!…どうしたんだ!?」

咲(そんな…)

咲(い…いきなり…肩を組むって…)チョンチョン

京太郎(咲のやつ…顔を真っ赤にしてフルフルして…肩の俺の手を指差している)

京太郎(…恥ずかしいのかな?)

京太郎「あ…悪い。男同士だし普通だと思って…」ガシッ

京太郎「(…離そうとしたら、今度は俺の手を掴んで自分の肩に持っていきやがった…)

咲(恥ずかしいよ…でも…京ちゃんがこんなに近くに…京ちゃんの匂い、服の感触、おっきな手…ああ…京ちゃん…)

咲「そのままで…いいよ…」ボソッ

京太郎「あ…ああ…」

京太郎(そんなに真っ赤になられると…その…すごく…気恥ずかしいな…)

咲「…京ちゃんすごくおっきいね。僕は京ちゃんの肩に届かないよ。ごめんね…」

京太郎「そ…そんなこと気にしなくていいぜ!ほら行こう!」

咲「これじゃ京ちゃんの肘置きになったみたいだよ。」

京太郎「ははは!じゃあこれでどうだ?」グッ

咲「ふわわ…」

咲(京ちゃんは私の肩をぐっと抱き寄せる…)

咲(腰に腕を回すのが愛情の表れだとしたら、肩を寄せるのは保護欲が表れているように感じる。
その純朴な清潔さと、抱き寄せられたときに香る制汗剤のすっきりした香りが、私が求めていた爽やかで優しい京ちゃんをよく体現しているよ。)

咲(京ちゃんが私の肩を寄せ、私は京ちゃんの大きな体に少し寄り添った姿勢で、私達は夕日の差す田舎道を、お互いのペースを問いかけるように、ゆっくりと歩いた。)

咲(ずっと無言だった。だけどその沈黙はむしろ心地よいものだった。)

咲(知り合ったばかりの恋人同士なら、互いに色々なことを訊きあったり、相手を楽しませようと大げさな話をしたりするのだろう。でも私達には、いまさらそんな話は必要ないようだ。)

咲(私達はよく見知った関係だ。そして少なくとも私の意識のどこかに京ちゃんはいつも存在していた。恋とはそういうものだと私は思っていた。
だが今この時、私の中の京ちゃんという存在はかつてとは比べものにならないくらい大きく膨らんでおり、
眼の覚めるような鋭い初夏の西日も、小川の向こうから流れてくる街の喧騒も、青々とした草木の生命の匂いを運んでくる風も、何もかもが私の中を通り過ぎてゆくくらいに、私の頭を埋め尽くしていた。)

咲(服越しに伝わってくる人肌の感触。人形を抱くのとは明らかに違う、絶対的な安心感。そしてそれがあの京ちゃんからもたらされている。)

咲(恋をすると世界が輝いて見えるというが、あれは聞こえがいいだけの詭弁だったんだ。本当は世界なんてどうでもよくなるんだね…)





咲(もうこんな時間か。門限は7時だし、そろそろ…)

咲「ねえ京ちゃん…」

京太郎「ん、なんだ?飲むか?」

咲「えっ!?」

京太郎「?」

咲「でもそれ、今京ちゃんが口をつけて…」

京太郎「ああ…男同士なら普通だろ?それに俺達はこ…恋人同士でもあるわけだし…」

咲「…そうだね…」ぐいっ

咲(暑い中結構歩いた。私はこんなに喉が渇いていたんだ。全然気付かなかった。)

咲(…)

咲(…今日はやたらと「男同士だから」という言葉を聞いている。)

咲(京ちゃんは、私に男の世界をそれとなく教えるつもりなのだろうか?)

咲(でも京ちゃんのその言葉は…京ちゃん自身に言い聞かせているような響きでもあった。)

咲「京ちゃん…」

京太郎「…」

咲「僕は男だけど、いいの?」

京太郎「!…」

咲(京ちゃんの表情が変わった。なにかやりきれないことをふと思い出したときのように眉根が下がり、下瞼を細め、眉間に皺が寄る…)

京太郎「…男でも、というか、男でなければだめなんだ…」

咲(消え入りそうな声だ…)

咲「そっか…」

咲「そうなんだ…」

咲(…そうなんだ…)

咲「…」

京太郎「…」

咲「…でもぼk、私は…」

京太郎「…咲!!」

咲「!」ビクッ

京太郎「…それ以上は…」

咲「…ぼ…僕は…7時が門限だからそろそろ帰らなきゃって…言おうとしたんだよ。」

京太郎「…あ…」

咲「…」

京太郎「…ああ…そうだったか。悪い…大きな声を出して…」

咲「ううん。…」

京太郎「…」

咲「じゃあ…」

京太郎「…ああ。また明日な!」


咲(恋人と恋人以前がいかに違っていたかはわかった。でもそのまるっきり違う世界を保障するものは、「付き合いましょう」「そうしましょう」というたった一つの口約束、ただそれだけなんだ。)

咲(そして私達の場合、それに一つの嘘が…私の我慢が…加わる…)

咲(私の世界を埋め尽くしたかに思えた恋の温かな日差しも、それを支えているのはこんなに脆弱な二本の柱だけなんだ。)

咲(私はこの柱を守れるのだろうか?京ちゃんを、そして私を守れるのだろうか?)

咲(…私はこの関係を…守るべき…なんだろうか…)

咲(…)

咲(いや、今日のふれあいでわかったじゃないか…)

咲(私にはきっと…京ちゃんが必要だ…)

乙。
続きが待ち遠しいです。

早く来て

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