モバP「雨振る森の中で」 (27)

とある日、俺は少女と二人でいた



「あ、見つけた」

「ほう」

「それにこっちにもあっちにも…フ、フフフ…」

「俺には全然解らんがな、お前に言われないとさっぱりだ」

「大丈夫…私といればその内Pもきっと解るようになる…」

「…微妙に遠慮したい気分になるのは何故だろうな」


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今年も気付けば半分が過ぎてしまってもう六月、梅雨の時期だ
この時期は湿気っぽいし雨が多いし億劫でしかたがない
しかし、そんな日に輝子から連絡があった、山に行こうと


「悪戯電話かと思ったぞ…こんな雨降りの日に山に行こうって」

「…こんな雨の日だからキノコ達が元気なんだ」

「キノコが元気でも危ない事はしてほしくないんだがな」

「でも結局来てくれたじゃないかP…ふひ、ツンデレだな」

「お前一人で山に行かせる訳にはいかんだろ」

「え?でも何度も来てるぞ?」

「………今度からは必ず連絡してくれ」

そうして輝子と山にやってきた訳だ
…ただ意外な事に山の中は結構居心地が良かった
輝子が何度も来てるというだけあって険しい山でもなく
山の中では木々に遮られて億劫な雨にも振られない
草木に雨の音や湿気った土の匂いが何とも心地良い

「これが森林浴と言う奴なのかね」

「?」

「思いがけずリフレッシュ出来そうだなってな」

「そっか…よく解らないけどPが喜んでるなら何よりだ…」

「おう」

ただリフレッシュの理由はそれだけじゃない
やはり一番の理由は


「…あ、また発見………!…こ、こいつは立派だ…中々お目にかかれない…」

「へー」

「Pももっと近くで見たらどうだ?」

「いや俺はこの位置で十分」

「そうか…まあPがそう言うならいいけど」

「ああ」

この楽しそうな輝子を見てるのが楽しいからだな

来て良かったな、初めは止めるつもりだったが
こうして喜んでる輝子を見てると嬉しくなる
山登りでなくキノコ狩りだから危険もそこまでないと解ったしな…ただ


「フフフ…それじゃこいつはお持ち帰りだな…きっと食べ応えがある…」

「ところで輝子それっていいのか?」

「ん?何の事だ?」

「いや、ほら…その」


前から思ってたがトモダチを食うのは輝子的にいいのだろうか


「あ…そっか…Pは心配性だな…」

「ん?」

「安心しなP…こ、これは毒キノコじゃないから」

「………………」

「毒キノコを食べて中毒…そんなのは素人のする事だ…私の目に狂いは無い…」

「……………」

「…私は、キノコのプロだぜ?」

「…おう」

言いたい事はそうじゃなかったけどまあいいか
キノコと人間との友情の形というのは当人達にしか解らないんだろう

「つまりキノコマイスター…だ、ふひっ」

「そっか」

キノコマエストロがそう言うなら信じればいい


………
……



あれからしばらく経った
輝子は相変わらず楽しげにキノコと戯れている、よく飽きない物だ


「…輝子?疲れたりとかしてないか?」

「平気…」

「そうか、でも気をつけてくれよ、さっきから夢中みたいだから」

「……………」

「慣れてるみたいだけどここは山の中なんだからな、体力には注意してくれ」

「…そう、だな、ごめんP…ここに来るの久しぶりだったからつい…」

「いや攻めてる訳じゃないから気にしないでくれ、でも久しぶりだったのか?」

「さ、最近は忙しかったらな…」

「ああ…」

アイドル活動も板についてきた輝子
レッスンは勿論それなりに仕事も増えてきた
その分今までの生活を犠牲にさせてしまってたか

「悪い趣味の時間を奪ってしまって」

「…いい、アイドルになってからは…楽しい事ばかりだからな」

「そう言ってくれるなら何より嬉しいが…」

「それにこいつ達意外にも…ト、トモダチ、たくさん増えた…」

「(インディヴィジュアルズだったり142cm組だったりと楽しそうにやってくれてたな)」

「だから、忙しいのはいいんだ…でも」

「でも?」

「ただ、こいつ達にずっと会えなかったのは…申し訳ないな…」

「………………」

キノコは食べるけど、親友は居なくならない(人類史に刻む至言)

「今までずっとトモダチでいてくれたのに、私の都合で今は一緒にいられない」

「……………………」

「私だけ勝手に変わってしまった………フフフ…薄情な奴だよ私は…」

「………………」


今までそうだった物が変わっていくそれは間違いなく不安になるだろう、誰より知ってるはずの自分が変わるのだから
それが良い変化でも、いや、楽しかったり前向きだったりするからこそ
今までのトモダチだったキノコを裏切ってしまう様な気持ちになるのだろう

「………………」

「………………」


気付けば物色していた輝子の動きは止まっていた
このまま話を流すという選択もあるが…
トモダチとして、それは無い、腹を決めて俺は声をかける

「輝子」

「…何だ?」

「気にするな、変わっていくのは悪い事じゃない」

「でも…」

「そもそも変わらない物何て無いんだから」


今までの環境が環境だったから劇的に変わった輝子は自覚があるんだろう
けれど普通は変わる事に自覚なんてない、変わるのは当たり前だから
気付かないだけで皆毎日変わり続けているんだから


「今は不安かもしれないけど…やがて慣れる」

「………………」

「それが成長って言う奴だから」

「………うん…そうだな…Pの言う通りだよ…な」

「ああ」

「それにトモダチが前に進むのを祝福しない奴はいないぞ」

「え?」

「輝子はアイドルになってさ、楽しくなったんだろ」

「それは…うん、勿論だ…最近どんどん楽しくなってる」

「ならきっとキノコ達も満足してる」

「…………………」

「トモダチとして言うけど俺だってそうだ、もし輝子とこれから会えなくなっても」

「輝子が会えなくなった先で輝いてくれるならそれだけで満足だよ」

「…P」

輝子が変わろうがどうなろうが
前に進んで幸せになれるきっかけになれるのなら
トモダチとしてそしてプロデューサーとしてのコレ以上の幸せは無い


「……………………」

「……………………」


空気が止まっている、少しカッコつけすぎたか?
思い返したら結構恥ずかしい事言ってしまったし…


「あー…その輝子?ええっとだ、俺はそのー」

「フフフ」

「お?」

「ふひ…ふふ…フフフ、フヒヒヒヒ」

「あ、あの輝子?どうした?腹でも痛いのか…」

「イイイィィッィヒャッハァァァァッァー!!!!!!!!」

「」

「テンション上がってきたぜえええええ!!!!!」

「いや落ち着け、山で叫ぶな」

「あうっ」


軽く頭をこづいて正気に戻す


「なんでいきなりライブモードになるんだよ、そんな空気だったか?」

「すまんP…でも…く、くくく…私嬉しくてつい…ひひひひヒヒヒャア」

「だからやめろってば…しかし嬉しい?」

「実はな…もう答えは出てたんだ」

「………?」

「皆、Pと同じ事言ってくれた」

「……………え……それって…それはつまり…キノコが…」

「そんな事気にするなって、輝子は輝子のやりたい事をやってくれ……ってさ」

「(キノコと同類だったのか俺)」

「や、優しすぎるぞ皆…フヒヒ…照れるけど…嬉しい」

「そうだな…何処か釈然としないが…」

「…フヒヒヒャ…これじゃ益々アイドルを止められないじゃないか…」

「是非そうしてくれ」

「フヒ…フヒヒヒ…♪…ああ幸せ者だな私は…フ…フフ」

「お前が幸せなら何よりだ」

「…だから」

「ん?」


輝子の緩みきった顔が急に真面目になりこちらをしっかりと見据えてきた


「…輝子?」


そして輝子が言う


「キノコ達もPもずっとトモダチだ、絶対に」

「これは絶対変わらない…ううん、もし変わってもそれはトモダチがもっと大事なトモダチに変わるって事だけだ」

「………………」

「これからも間違いなくずっとずっとずっとトモダチだから…もし会えなくなったって忘れる事だって無い…安心しろ…フフ」

「…奇遇だな俺もだよ」

「フヒッ」

………
……



「そろそろ帰るか」

「…そだな」


あれからまたしばらくたった、もう結構な時間が過ぎた
輝子が慣れてるとは言え山だ、明るい内に出たほうがいいだろう


「しかし雨上がらないな」

「あ、雨が多すぎてもキノコは駄目なのに…」

「これじゃ洗濯物も乾かんな…明日は湿った服を着てくはめになるかもしれん」

「そしたらPにキノコが生えるのか…フ、フフフ…いいなそれ…」

「冗談だっての」

「よいっ…しょ…」


輝子がのそりと立ち上がるのを視界に入れつつ考える
帰りの道は覚えてきたが慣れてる輝子に案内して貰った方がいいか───


「え?…あっ…わわわわ」

「お、おい大丈夫か」


しばらく座り込んだままで痺れていたのか?
輝子の足元がおぼつかな


「…おうっ!?」

「輝子っ!」


咄嗟に受け止める


「あっ…」

「ま、間に合った」

「…フ、フフフナイスキャッチ…」

「あのな…」

「…慣れてるんじゃなかったのか?」

「き、きのこも木から落ちるってやつだ…」

「それは正しいあり方じゃないだろうかね、とにかく何処かくじいたりぶつけたりとか平気か?」

「だ、大丈夫だ問題ない…何処も痛くないぞ…Pが受け止めてくれたおかげだな」

「そうか、ならいい」

「…でも、まだ足は痺れてるかも…」

「ならもう少しこのままだな、でもその前に…よっ!」

「おうっ?」


咄嗟に支えただけのでバランスが悪い
一度輝子を抱き上げてしっかり体重を俺の体に預けさせた


「これでよし少し我慢してろよ」

「……………」

「お前は軽いから持ち上げるのも楽でいいな」

「フヒ」

「やれやれ気をつけろよ?山の中で転んだら一体何処を怪我するか」

「………………」

「やはりお前の身体の事を思うとキノコ狩りは…あ、いやトモダチと会えなくなってしまうか?なら」

「…あったかいなPの手」

「…んん?」


気付けば輝子が俺の手を掴んでいた
六月とはいえ山中で雨降りだ、気付けばだいぶ体が冷えていたみたいだ

「そう…だな、ただお前の手もあったかいぞ」

「そ、そうか…」


「いいなこれ…ぽかぽかしてくる」

「…おう」

「フヒ…私これ好きかも…」

「…そうか」

「Pは…どうだ?すきか?」

「…嫌いじゃないな」

「フ…フフフ…」

「………………ふっ、何だ?」

「顔が赤いぞP?」

「気のせいだろう」

「じゃ暖まった所でいくか、足の痺れはとれただろ?」

「あ…」


話を流すように先を促す
たかが手を繋いだ程度で何を動揺しているのか
雰囲気にに少しだけ充てられただけだ、うん


「…ちょ、ちょっと待って」

「何だよ、もう暗くなるかもしれないし行かないとまずいだろ?」

「そうだけど…ほら、もう少し暖まりたいな私」

「しかしな…山から出たほうが早いだろう、ほら手を繋ぐくらいしかここじゃ出来ないだろう?」

「………………」


山なので二人とも肌はほとんど出していない


「肌が出ているのは手と顔くらいだからな、ほれ諦めて帰るぞ」

「…そうだな、ならしょうがないよね」

「おう、そんじゃ行くぞ」


輝子に背を向けて歩き出す、しかし


「待って…………今度こそ最後だから…」


後ろから懇願するかの様にに声をかけられる


「ああ、もうしょうがないな、最後だからな」


そう言って振り返ろうとして


「あ…違うそうじゃなくて…しゃ、しゃがんでくれないか?」

「え?しゃがむ?」


突拍子も無い事を言われる…おんぶでもして欲しいのか?まあ距離もそんなに無いしいいけど


「まあいいか…っと、ほれしゃがんだぞ、それで後ろに乗…っ?」

「……………………」


しゃがんだ瞬間、輝子に回りこまれていた、そして

>>21は抜かしてください


「じゃ、これで我慢する」

「む…」

繋いだ手の指を絡めてくる

「…駄目?」

「………………」

答えず代わりにそのまま握り返す

「……あ♪」

「行くぞ…今度は転ぶなよ」

「フフ大丈夫…ぼっちより二人の方が安全だからな…」

「ああ」

「よろしくなP…これからも、今からも」

「…こちらこそ」



おしまい


読んでくれた方ありがとうございました
成長してる輝子を見てると胸が熱いです


if
>>21から



やわらかい感覚と熱が伝わる



「ふひ…やっぱりこっちも暖かい…」

「お、前」

「フヒ…ヒ…ううん、これ暖かいじゃない…フフフ…あ、熱いくらいかも……」

「輝子…今何をした?」

「…うん満足した…じゃ行こP」

「待て!…答えろ」

「…怒ってるのか?」

「そうじゃない、ただ今のがどういう意味か解っているのか?」

「意味…?そんなの知らない…」

「あのな、それ以上茶化すのなら俺も言い方が」

「茶化してない…Pと、してみたくなっただけ…それだけ」

「…っ」

「ほら、帰ろ?…帰ったら、もっと暖まってみたいな…フヒ」

「…………………輝子」


おしまい




>>21
からだとどうやっても不穏な事になりそうだからやめました、本当にすいません


やっぱ輝子ちゃんは最高やな

乙。
山の中なら叫んでも問題ないんじゃ?泣いても叫んでも誰も来ないぜふひひ

Pのキノコで貫かないのか

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