従者「魔王を旅に連れ出したった」 (25)

※注意
宿屋「魔王城の近くに休憩所作ったった」の続編となります。
宿屋「魔王城の近くに休憩所作ったった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403078888/)
(全27レス作品)

前作を読んでいなくてもわかるように配慮はしましたが、読んだ方がわかりやすいです。
今作品は20レス位で終わる予定です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403328794




?「………」

盗賊A「おいおいおォい、ここはガキが来ていい場所じゃねぇぞぉ~」

盗賊B「通行料渡すなら話は別だがなァ~」

盗賊C「そこそこいい身なりだ、お小遣い貰ってんだろ坊ちゃん達?へっへっへ」

?「…無い。お前達に渡すような金はな」

盗賊A「ハァ?状況わかってんのかこのガキ、いいからとっとと…」

?「わかっていないのはそっちだ」



?「"魔王”に喧嘩を売ったんだからな…」




従者「すっげーな魔王!3人いっぺんに相手にして勝っちゃうんだからな!」

魔王「あのな…俺は魔王だぞ。むしろ殺さないように加減する方が大変だった」

従者「木に縛り付けて半ケツにする程度で済ませるなんて、な~んて優しい魔王でしょう」

魔王「奴らのズボンをずり下ろしたのは俺じゃねえぇ!」

従者「けど止めなかったじゃん?はい、同罪~」

魔王「…お前、確か女だよな?」

従者「魔王ったら、幼馴染の性別忘れちゃった?」


>魔王と従者は旅をする。素性を隠しての終わりの見えない旅に、緊張感は存在しない。

従者「今日も平和だな~」

魔王「魔王の旅が平和でたまるか…」





村人「あんたら、若造2人で旅してんのかい?最近は魔物だけでなく盗人まで増えてきたっつーのに、物好きなもんだねぇ。あー、早く勇者が魔王を倒して平和な世の中にしてくれないかねぇ~」



従者「バッカで~、魔王が目の前にいるのに気付かないでやんの」ゲラゲラ

魔王「ま、見た目にはわからんだろうな…それにしても、盗人が出るのは俺のせいじゃないだろう…」

従者「ホントだよ。盗賊に襲われたり、悪徳商人にぼったくられそうになったり、偉そうな金持ちに馬鹿にされたり…何か俺ら、結構悪い人間とエンカウントしてねー?」

魔王「人間は魔王や魔物を悪としているが、悪い人間も沢山いるものだな」

従者「むしろ、無害な魔王よりよっぽど人間の方が性質悪いってのに~。皆視野狭すぎ~」

魔王「何だ。それをわかってて、この「人間との戦いを避ける旅」に誘ってきたんじゃないのか?」

従者「そうだけどォ~。人間の魔王への偏見てバカみてーだなーと思ってー」ブツブツ

魔王「お前が人間としては変わり者なんだよ」

従者「はーい、自覚してまーす」

「魔物がまた~」ザワザワ

従者「でも、悪さする魔物も当然いるんだな。何とかしてくれよ魔王」

魔王「そりゃ無理だ。お前達人間だって、言葉を理解できない知性のない獣を完全には制御できまい。まぁ、今人間相手に暴れているような奴は、人間の戦士でも何とかできるレベルの奴ばかりだ」

従者「というと?」

魔王「知性のない魔物は、知性のある魔物に狩られるかペットになる。強くて知性のない魔物は知性のある魔物にとっても害だし、そういう強い奴を飼うのも魔物達のステータスであるからな。野放しにされているのは、あまり害にならずペットにする価値もないような奴らだ」

ザワザワ

従者「うーん、じゃあ魔王がいなくなっても魔物の被害は減らないんだね~」

魔王「むしろ増える。今現在、知性のある魔物は俺に従って大人しくしているが、俺が死ねば奴らも暴れだすだろう」

従者「じゃあ何で人間は魔王を倒そうと頑張ってるんだよ」

ザワザワ

魔王「魔王が魔物を制御しているなんて考えもしないはずだ。それも仕方ない、俺の父が魔王だった頃は魔物を使って人間を襲っていたからな」

従者「うへぇ。じゃあお前が平和主義であっても、人間達はお前を目の敵にするわけだ」

ザワザワ

魔王「俺は平和主義者じゃない。得るものがない戦いは、面倒なだけだ…」

従者「魔王城にいた頃は「魔王に歯向かう愚かな人間を血祭りにあげてやる~」だの言ってたのに、外に出た途端大人しくなったなぁ。成長したんだなぁ」シミジミ

魔王「うるせー」

ザワザワザワワ

従者「そいやさー、旅に出始めた頃、山奥で迷った時あったじゃん?それで村の人に助けられて、飯までご馳走になって…」

魔王「そういえばあったな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
山奥の村

従者「…置いていくのか、そのペンダント」

魔王「あぁ。この貧しい村の者達は、心までは貧しくないようだ。これは、村を豊かにする為に使えばいい」

従者「でもそれ、父親の形見だろ?」

魔王「俺にはもう、必要ないものだ…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

従者「あの時か?父親の意思と完全に決別したのはさ」

魔王「…関係ないとは、言えなくもないな」

ザワザワワ

魔王「それにしてもさっきから騒がしいな」

従者「ん。あっちに人だかりができてんぞ」

ザワザワザワワザ

従者「すんませーん、何の騒ぎですかー」

村人「見ろよこの看板、さっき国の騎士が張っていったんだけど…」

魔王「どれ…」


『勇者、遂に魔王を討つ!!』

魔王&従者「!?」




従者「お前、討たれていたのか…知らなかったよ」

魔王「これからはボケても無視するぞ。看板には詳細が何も書かれていなかったな…フン、村人同士で色んな噂が飛び交うことだろうな」

従者「お前が魔王城から夜逃げして、そんな経ってないしなー…なぁもしかしてお前不在の間に城の魔物が討たれて、そいつが魔王だと勘違いされたんじゃね?」

魔王「可能性は十分にあるな…」

従者「今のはボケたんだよ無視しろよ」

魔王「ボケ要素の見つからないボケを言うな、このボケ」

従者「だって~、魔王城の魔物ってザ・魔物って位、魔物魔物した姿してるしぃ~」

魔王「人間は魔王の姿を知らんから、ありえなくはない。…だがしかし、詳細が気になる話ではあるな」

従者「だね~。都会の方に行けば、もうちょい詳しい情報聞けるんでねーの?」

魔王「…行ってみるか」



>こうして2人は首都へと足を運ぶこととなった

首都

ザワザワザワザワ

従者「ここも騒がしいねぇ」

魔王「新聞を買ってきた…勇者は単身魔王城へ乗り込み、魔王を討ったそうだ。そして魔王討伐を王に報告したのが昨夜の事。その勇者とやらは、きっとまだ首都にいるぞ」

従者「あの一人旅では無理ゲーな魔王城に単身乗り込んだってぇ!?嘘確定じゃーん、みんな騙されてるぅ」ゲラゲラ

魔王「お前は気楽でいいな…」

従者「だって困らないし~。むしろ人間達は魔王への恐怖心解放されっし、魔王は正体がバレる危険もなくなったし、いいことづくし~」

魔王「バカだバカだと思っていたが、ここまでバカだったとは」ハァ

従者「何だとこのやろ~、3回もバカって言ったなー!」

魔王「バカだからバカ呼ばわりされるんだよ、バカにいちいち説明させられる身にもなれ!」

従者「魔王の物の伝え方が悪いから理解できないんですぅ~、上手く伝えられない人もバカなんですぅ~」

魔王「何ぃーっ、お前にバカ呼ばわりされるのだけは我慢ならん!」

ゴゴゴゴゴ

美男子「ちょっといいかな?」

従者「あ、はいすみません!」(やっべ通行の邪魔してた…謝れよ魔王)

魔王「あ…すまん」(くっ、バカ相手に本気になってしまっていた)

美男子「お嬢さん、旅人かな?今時間ある?」

従者「あ、俺?うん、まぁあるっちゃあるけど」

魔王(ん?)

美男子「そうか、じゃあ…僕と食事しないかい?」

従者「………は?」

魔王「」

美男子「いやぁ、ひと目見かけた時に可愛いと思ってさ。どう?」

従者「か、可愛い!?////」

魔王「おい…」

美男子「あ、連れの君?女の子にバカはないよバカは。顔が良くてもデリカシーのない男は駄目だねぇ~」

魔王「何だと貴様…こいつはな」

従者「えーと喧嘩すんなよ、あのさ悪いけど」グイッ

魔王「んっ」

従者「俺、こいつのこと好きなの。だから他の男に全っ然興味ないの。ごめんね~」

魔王「!?」

美男子「ふぅん…見る目ないなぁ。そんな男のどこがいいんだ?」

従者「どこって…全部かな」

魔王「!!!!!」

美男子「ハハッ、僕が入り込む隙間はないってことだね、残念。それじゃあ潔く身を引くとしますか。バーイ」

従者「何がバーイだっての、失せろ失せろナンパ男」ケッ

魔王「……おい」

従者「ん?」

魔王「今の…」

従者「あ、勿論あいつを諦めさせる為の嘘だよ嘘」

魔王「そうじゃなくてな…今の男、何を企んでいたんだ…」

従者「へ?ナンパじゃないの?」

魔王「だとしたら相当なマニアだな…お前が可愛いわけがない」

従者「んだとーっ!?そ、そそそりゃ魔王の好みじゃないかもしれないけどさ、人には好みってもんがさーっ」

魔王「ん。ちょっと待て、騎士達がゾロゾロと出てきたぞ」


ゾロゾロ

騎士「これより、城にて王の演説が開かれる!聞きたい者は城に集合するが良い!」

魔王「…丁度いい。きっと魔王と勇者の件だろう。行くか」

従者「へいへ~い…」←すねている



「きっと勇者のことだよ」「詳しいことはわかってないもんな」「そうか、遂に魔王が倒されたか…」ザワザワ

騎士A「静粛に!これより王の演説が始まる!」

王「既に話は広まっているが、昨夜、遂に魔王が討たれた…魔王城の位置は前々から掴めてはいたが、魔王城に住む魔物は街の周辺にいる魔物と比べ物にならない程強く、引き返してくる冒険者がほとんどだったのは皆も知っているだろう」

従者「そうそう。臆病な魔王が、強い魔物みんな魔王城に配置して必要以上にガードを固めていましたからね~」

魔王「うるさい…」←事実なので小声

王「しかし難攻不落の魔王城へ単身乗り込んだ者が魔王を討った…我々は彼を、勇者と認めよう」

「いいぞー」「勇者様の誕生だー」「勇者様!勇者様!」ワーワー

王「そこで勇者を皆に披露しよう………彼だっ!」

カッカッ

魔王「…!?」

美男子「…やぁ」

「キャーかっこいいー」「ゆ、勇者に相応しき美貌…」「神々しくも見える…!」ワーワー

従者「あ。さっきのナンパ男。演説出なきゃいけないってのにナンパしてたんかい、自由なやっちゃな~」

魔王(魔王を討った勇者とやらが俺たちに接近してきただと…絶対、何かがおかしい…)

王「彼が魔王を討った後、魔王城の魔物は一斉に城から逃げ出したそうだ。我々が調査したが、確かに魔王城は今現在もぬけの殻だ!」

魔王「何っ!?」



ダダダ…

騎士B「王様!魔物が!」

王「何だ?魔物がどうした!」

騎士B「魔物の大群が首都に接近しているとの報せが!」

王「!?」

ザワザワザワザワ

王「皆取り乱すでない!首都の門を閉めよ、騎士団出動だ!」

魔王「チッ…仕方ない、騎士団より先に魔物の大群の所へ行く」ダッ

従者「え、あ、魔王――っ!行っちゃった……」


美男子「………」ニッ

美男子「王様、騎士団は首都の守りを。魔物の大群は僕が何とかしましょう」

王「しかし危険だぞ…いくら勇者といえど」

美男子「ふふ、僕を信じて下さい…どうしても助けが必要になったら、魔法で狼煙を上げますので」

王「う、うむ…では任せたぞ!」

美男子「えぇ…」

魔王(あの偽勇者め…魔王を討ったなどと偽ればこういう事態になるんだよ!)ダダダッ

魔王(よし、まだ騎士団は来ていないな。魔物の群れは…来た!)

ドドド…

魔物首領「ハッハッハ、人間め!1人で我々に立ち向かおうとは、いい度胸をしておる…」

魔王「馬鹿、俺だ」

魔物首領「ま、魔王さまああぁぁ!?」

ザワザワ

魔王「俺の命令なく人間達に攻め入るなと言ってあるだろう。それとも、俺が相手しようか?」

魔物首領「そ、それはご勘弁を…それにしても魔王様、討たれたというお噂でしたが…」

魔王「貴様、魔王城にいた奴だな?人間達の言う、「魔王が魔王城で討たれた」現場を見たとでも言うのか?」

魔物首領「そ、それが…その人間の間で広まっている話と、我々の間で広まっている話では、違いがありまして…」

魔王「違い?どういう違いだ、言ってみろ」

魔物首領「はっ。我々は、魔王様が旅先で討たれたと聞いておりまして…」

魔王「ほう。何の根拠もなくデマを信じたわけか?」

魔物首領「それが…」


ダダダッ

美男子「大丈夫かい!」

魔王「!」

魔王(チッ…タイミングの悪い奴だ)

美男子「良かった、戦い始める前だったんだね…これだけの大群だ、骨が折れそうだね」チャキン

魔王「…おい」ボソッ

魔物首領「はい」ボソッ

魔王「早急に他の魔物にも伝えておけ…噂はデマだから、人間を襲うのはやめろとな」ボソボソ

魔物首領「御意」

ドドド…

美男子「え、魔物の群れが立ち去って行く…!?」

魔王「ふん、勇者様のご登場に恐れをなしたんじゃないか?」

美男子「そうじゃないと思うよ…強いんだね、君」

魔王(………)

首都

「勇者様が魔物の群れを追い払ったぞー」「流石勇者様だー」「勇者様ー勇者様ー」ワーワー

美男子「お願いだから君も王様に会ってよ。これ、僕の手柄じゃないし…」

魔王「俺の手柄でもない。それに俺には、一国の王と対面できる程の礼儀は持ち合わせていないのでな」

従者「お~い、魔王~」

魔王「待たせたな。行くか」

従者「おう!」

美男子「…」

騎士「お疲れ様でした勇者殿!お怪我はございませんか?」

美男子「ないよ。…それよりも王様に伝えておいて。ちょっと出かけるってさ」

騎士「はぁ…」(相変わらず自由な人だ)





従者「ふーん、つまり魔物はデマを信じてあんな騒ぎを起こしたわけだ」

魔王「あぁ。だからこんなデマが広がるのはまずいんだ。このデマを信じてるのが人間だけなら、全く構わんのだが…」

従者「それにしても、デマが広がった途端暴れだすとは。魔物も暴れたくてウズウズしてんだねー」

魔王「別に魔物同士で喧嘩する分には禁止はしていない。が、やはり魔王の抑圧が無くなればこんなものだ」

従者「どうすんのこれから?放置はできないよな?」

魔王「あぁ、魔物達と直接会って噂はデマだと説明するしかない。幸い、魔物全体にデマが広がりきっているわけでもなさそうだしな。だが、面倒なことになった」

従者「ま、いいんじゃない。目的のない旅に目的ができたってことで」

魔王「お前は気楽だな…まぁ、こういう事態を予測できなかった俺も十分お気楽者か」




魔物A「ぎゃー、魔王様!」

魔王「今すぐ去れ」



魔物B「ま、ままま魔王さま!こ、これは」

魔王「人間を襲うのを止めないと、俺が相手になるぞ?」



魔物C「きゃー、魔王様が生きていたー」

魔王「あぁ、だから俺に従え」






魔王「ふぅ、事前に魔力を察知して何とか被害を出す前に食い止められているな。…しかし」

従者「グゴーグゴー」

魔王(このいびき…せめて寝てる時だけでも女らしくできないのか)

魔王(まぁ仕方ないか…人間にはかなりハードなペースで動いているからな)

魔王(こいつが寝ている間に、また行ってくるか)

魔物D「お久しぶりです魔王様!いやぁ、魔王様が討たれたのはデマだったそうで。あ、いや私はわかっていましたよ?」

魔王「何だ知っていたのか。それにしても、どうしてそんなデマが広まったんだ」

魔物D「まぁ、あんなもの見せられちゃねぇ…。あ、いや私はわかっていましたよ?」

魔王「あんなもの?お前も魔王城にいた魔物だったな、何を見たというんだ」

魔物D「ペンダントですよ」

魔王「ペンダント…?」



~~~~~~~~~~~~~~~
従者「でもそれ、父親の形見だろ?」

魔王「俺にはもう、必要ないものだ…」
~~~~~~~~~~~~~~~

魔王「親父の形見のペンダントのことか。それを見せられたのか?」

魔物D「はい、今勇者って呼ばれている男が魔王城に乗り込んだ際、あのペンダントを掲げて「魔王は討った」って言ったんですよ。魔王様が大事にしていたペンダントを見せられたせいで、皆デマを信じてしまって…あ、いや私はわかっていましたよ?」

魔王「なるほどな。何故かそいつの手にペンダントが渡ったというわけか…だが何故、奴がそれを魔王のペンダントだと知っているかがわからんな」

魔物D「不思議ですね~?」

魔王「…おいお前飛べるよな?ちょっと連れていってほしい所があるんだが」

魔物D「はい、どこでしょう」

魔王「ここから大分離れた山だ…お前の翼ならそう時間はかからん」

山奥の村

>村には、かつて村民だった者達の変わり果てた姿が散乱していた…

魔王「…!!」

魔物D「これはひどい。もしかしてデマを信じた魔物がやっちゃったんですかねぇ?」

魔王「…しかし建造物はほとんど破壊されていないな。それに死体も、皆原形をとどめている…」

魔物D「ですね。それがどうかしましたか?」

魔王「魔物の暴れ方というのは、もっと豪快なものだろう。これは魔物の仕業ではなく…」

魔物D「人間によるもの…ですかね」

魔王「…そっちの方が近い」






宿屋前

魔物D「それではご達者で~、従者さんと末永く~」バッサバッサ

魔王「一言余計だ!」

魔王(あの村の惨状…ペンダントと関係があるのか?)

魔王「偽勇者…奴が村を襲ってペンダントを奪ったのか…?だとしたら…!」

美男子(偽勇者)「だとしたら…何?」

魔王「!?」

偽勇者「流石じゃないか魔王…被害が出る前に魔物を鎮圧するなんて、ふふ、まるで勇者だ」

魔王「お前のやり方が甘いんだよ…やはりお前か、あの村を襲ってペンダントを奪ったのは」

偽勇者「そう。あんな山奥の村だから襲いやすかったよ~。村の番兵も雑魚ばっかで、手応えなかったよ」

魔王「お前、何者だ?」

偽勇者「何者だと思う?」ニコ

魔王(こういう返答する奴が1番嫌いだな…)ピキ

魔王「初対面の時は隠していたようだが、今のお前は魔力が溢れている。それに魔王のペンダントを知る人間はいないはずだ。ふん、俺に逆らうことのできる魔物が存在したのか」

偽勇者「半分正解で、半分不正解」

魔王「何だと?」

偽勇者「ハーフですよ、魔物と人間の」

魔王「…ほー」

偽勇者「驚かれないんですねぇ」

魔王「まぁ、滅多にいるものではないがな。それでお前の目的は、やはり魔物達への抑圧解放か?」

偽勇者「その通り」

偽勇者「知性ある魔物達は貴方に従って人間を襲わない。しかし貴方も見たはずだ。貴方がいなくなったと信じた魔物達は意気揚々と人間を襲おうとした。そうです、皆我慢してるんですよ…」

魔王「…我慢してない奴もいるだろう、お前みたいにな」

偽勇者「それは僕がハーフだからですよ。どうして魔物達は、争いを避けてコソコソしてる臆病な魔王なんかに従うんでしょう…わからないな」

魔王「それはお前がハーフだからだ。とにかく「そういうもの」なんだよ」

偽勇者「ふーん、知性ある魔物達の間ではそれが常識なんですか。魔王の言うことは絶対、そういうもの…」

魔王「お前は何故そんなことをする?人間に差別でも受けたか?」

偽勇者「…さぁ、どうでしょう」

魔王「まぁ、こちらもお前の動機などどうでもいい。それよりも魔物達の統制を乱そうとしたんだ、それなりの覚悟はしてもらう」

偽勇者「ふふ…腑抜けた魔王が何を言う」

魔王「何とでも言え」

偽勇者「はい、では…」

ジリ…

偽勇者「好きにさせてもらいますよっ!」

――ダダダッ

魔王「宿の中に…まずい!!」

従者「ん…ムニャムニャ魔王…かっ!?」

ガシッ

偽勇者「お嬢さん、すみませんねぇ」

従者「テ、テメェ!な、何だってんだ…!」

ダダダッ

魔王「貴様…!」

偽勇者「それ以上近づかないで下さい、従わなければ、このお嬢さんの命はありませんよ」

従者「ま、魔王、え、何これ?」

魔王「後で説明する黙れ。貴様、何のつもりだ?」

偽勇者「フフ…詳しい事情はわかりませんが、どうやら貴方が腑抜けているのは、このお嬢さんがいる為でもあるようだ。魔王さん、魔物達を抑圧から解放して下さい。じゃないと…」キラッ

従者「ひぃ…っ」

魔王「…俺がそんな馬鹿げた取引に乗るとでも思っているのか?」

偽勇者「さてね。まぁ乗らなかったならそれでもいいんです。魔王に即位してからずっと強い魔物を自分の護衛につかせ、今では争いから逃げ回っているような臆病な魔王に、負ける気はしませんしね」

魔王「俺を討って本当の勇者になるつもりか?今度は、俺の首を掲げて…!」

偽勇者「流石魔王、引きこもっていた割に頭の回転はいいようですね」

魔王「どっちでもいいなら、とりあえずそいつを放せ」

従者「そ、そうだ放せーっ!」ブルブル

偽勇者「おや、そんなにこのお嬢さんが大事ですか?貴方の魔王としての威厳を損なわせている原因かもしれないのに…」

従者「お、お前、魔王をバカにしやがったら…」

魔王「あぁ、大事だ」

従者「!?」

魔王「腑抜け相手に人質などいらないだろう…放せ」

偽勇者「フ…」

偽勇者「笑えてくるね!こんな腑抜け相手に、あんなに暴れたくてウズウズしている魔物達が「魔王だから」ってだけで従っているなんて…絶対におかしい!」

魔王「…おかしいか、そんなに?」

偽勇者「えぇ、おかしいですよ。大体魔物達もこんな臆病な魔王、見捨てるか謀反を起こすかして、好きにすればいいのに…だが「そういうもの」と貴方は言った、だからやはり貴方がいなくなれば魔物達は抑圧から…」



ヒュン

――ポタッ

偽勇者「―――え?」

従者「魔王…」

魔王「お前、大きな勘違いをしているな」


>魔王は一瞬の内に偽勇者の手から従者を奪い、その胸に引き寄せるように抱いていた

魔王「この世界は既に「魔王のもの」だ。人間達が自由にしているのは、俺がそれを許しているからだ。だが――」

偽勇者「――っ」ブシャアアァ

>偽勇者の腕があった所からは、血が大量に溢れていた


魔王「俺の許しがない自由は制裁する――「そういうもの」だ」ギロ

偽勇者「ひっ――」


>一応は実力者で、人間より本能の強い生物である偽勇者は、その瞬間悟っていた

>自分は、魔王には勝てないと――


魔王「死なれては困る。制裁はまだ終わっていない…」




従者「知らん間に魔王ったら世界征服してたんだね~、ハハー魔王様~」

魔王「」←思い出して真っ赤

従者「それにしても魔王、よく加減できたもんだね。結構マジに見えたから、殺しちゃうかと思ったよ」

魔王「殺しなんて気分が悪いものは御免だ…」

従者「けどいいのかよ、あれで」

魔王「あぁ、あいつも魔物のルールを理解しただろう。なら、死ぬまで制裁を受け続けてもらう」






騎士「勇者殿の腕を吹っ飛ばすとは…やはり魔王がいなくなっても魔物の脅威は収まらずか…!」

偽勇者「その通りですね…魔王がいなくなったからと力を抜かず、緊張感を持つことですね」




従者「偽勇者には人間達の英雄として居てもらい、裏で魔物をお前が制御する。何か、制裁がぬるくないか?」

魔王「暴れたくてウズウズしてる奴にとっては大層な苦行だ。それに生涯、俺のいいように動いてもらうんだ」

従者「そうだけど…」

魔王「…山奥の村の件は、俺にも責任がある…。今後こういうことがないよう、平和には気をかける…償いの為にもな」

従者「…そうだね」





従者「ところで」

魔王「うん?」

従者「お前が偽勇者に言っていた、あの言葉だけど~…」

魔王「あの言葉?」

従者「そうそう、その~…俺を「大事だ」とか何とか」

魔王「…あー」

従者「冗談じゃないよね~?俺、魔王の幼馴染だもんね~?本気だもんね~?ね~?」

魔王「あぁ、本気だが?」

従者「ぶーっ!!」

魔王「何だその反応は。お前から聞いてきたんだろう」

従者「おっお前、いつもみたく「違うわ!」って否定とかしてくれないとこっちも予想外っつーか…」

魔王「…」フン



魔王「そんな嘘は、つけないな」

従者「魔王…」



魔王(この世界は既に魔王のもの――その中で俺は、こいつだけは手放さないと決めた)

魔王「立ち止まってないでさっさと来い。お前は俺を旅に誘った張本人だろう?」

スッ

従者「魔王…」


>従者は顔を赤らめながらも、魔王の差し出した手を握る。
>それから一度俯いた後顔を上げ、魔王に笑顔を見せた。

従者「へへ。一生ついていきまーす!」

魔王「あぁ」



>魔王と従者の旅は、まだまだ続く…






Fin

前作を見て下さった方へ
このあとがきはまとめられないとは思いますが、まとめブログのコメントも見させて頂いています。
その中でわずかですが続編希望のコメントも頂いたので、蛇足かもと思いつつ書かせて頂きました。
それと自分の文章が痛いのは素なので直りません、まぁ直すよう気をつけますw

今更ですが今回の従者=前作の居候です。今回は適切な呼び名が思いつかなくて「従者」となりました。
前作は思ったよりも好評なコメントを頂いてとっても喜びました。

最後に見て下さった方、ありがとうございました。

乙乙

おつん

>>21
まとめられるんだなこれが

まとめられてしまいましたねwww
ありがたいですw

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom