男「名前は男です」
死神「では、男さん。なぜ自殺などという愚かなことを」
男「疲れたんですよ。色々と」
死神「色々とは?」
男「職場とか、家庭環境とか、友人関係とか、彼女とか…」
死神「…わかりませんね」
死神「貴方は両親が資産家である名家の長男として生まれ、誰もが羨む超一流企業に入社。高校時代から交際をつづけている容姿端麗にして心優しい恋人がいて、沢山の友人がいらっしゃる」
男「…」
死神「家庭内では両親、姉、妹との関係は極めて良好。職場では上司のみならず社長にも期待のホープとして一目置かれ、同僚達には慕われ、恋人とは将来の約束を交わすまでの愛情に溢れた深い関係を築き、貴方の事ならまるで自分の事のように親身になって考えてくれる親友達がいる」
死神「…なのに貴方は…」
男「…確かに…」
死神「…はい?」
男「…確かに“色々”というのは違いますね」
死神「…」
男「…僕は、“僕”に疲れてしまったんですよ」
死神「それは…どういう…?」
男「そのまんまの意味ですよ」ニコ…
死神「貴方は…」
男「しかし、皮肉なものですね」
男「死んだら無に還ってそれで終わりと思っていたんですけど、いわゆる死後の世界って本当にあるんですね」
死神「えぇ。ありますよ」
男「じゃあ早速あの世的な所に連れて行って下さい」
男「その為に君がわざわざ僕の前に現れたんですよね?」
死神「そ、それはそうですが…」
再録?
男「…頼みますよ。少し、独りになりたいんです」
死神「…何が」
男「…ん?」
死神「一体何が貴方をそこまで追い詰めたんですか?」
男「…僕がそれを君に言わないといけない義務でもあるんですか?」
死神「……ありません」
男「だったら別に…」
死神「…でも!」
死神「知っておきたいんです!興味本位とかではなくて!貴方が自分の死に…そしていままで生きてきたことに納得できるように…!」
男「…」
男「…死神さん」
死神「…はい」
男「誰の言葉だったか忘れたけど“本当の孤独は個人の中にではなく、人と人との間にある。それ故に
『人』は孤独ではないが、『人間』は孤独である”…みたいな格言、聞いたことある?」
死神「…いいえ」
男「そうですか…」
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