「やよいのグルメ」 (33)
私は今、ご飯を食べる所を探して歩いています。
知らない土地でご飯を食べる場所を探すのがこんなに大変だとは思いませんでした。
探す時間が長くなればそれだけお腹もぐーぐーなっちゃうので早く見つけなきゃ。
そう簡単に見つかるならこんなに苦労はしないんですけど……。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401022607
今日のお仕事はPVの撮影でした。
終わって帰る準備をしていたら、プロデューサーからスタッフさんとお話があるからこれでご飯を食べてくるようにってお金を渡されたんです。
私は悪いから大丈夫ですって断ったんですけど、プロデューサーがこれもケイヒ?だから大丈夫だっていうので一人でご飯を食べに行くことにしました。
「あぅ~、お腹すきました~……」
撮影現場からあんまり離れないように歩いてお店を探しているんですけど、中々ピンと来るお店が見つかりませんでした。
色んなお店が並んでいるんですけど、どれもお酒を飲むようなお店ばかりで私一人で入れる雰囲気じゃありません。
空腹を訴える胃袋に焦っちゃダメだって言い聞かせます。
通りをしばらく歩くと一軒のお店を見つけました。
扉は開いていますが暖簾がかかっていてお店の中は見えません。
お店の外に出ているメニューを見た感じだと普通の定食屋さんのようでした。
よく見るとお店の名前にも食堂と書いてあります。
中から聞こえる揚げ物を作るパチパチ~って音と美味しそうな食べ物の匂いが漂ってきます。
その音と匂いの同時攻撃に、お腹の空いた私は抵抗できず思わず暖簾をくぐりました。
「いらっしゃいませ~、空いてる席にどうぞ」
空いてる席、といってもカウンター席しかありません。
セルフサービスのお水を持って言われた通り空いた席に腰掛けました。
優しそうなおじさんとその奥さんが、一所懸命にお料理を作りながら切り盛りしています。
壁にはたくさんのメニューが所狭しといった感じにずらりと並んでいました。
そのどれもがお手頃価格で、他のお客さんの食べている物を見る感じだと量が少ない訳ではなくちゃんと沢山入っています。
しばらく壁のメニューとにらめっこして、自分の食べたい物をお腹と相談します。
「すいませ~ん」
私が声をかけると奥さんが近くまで来てくれました。
「えっと、生姜焼き目玉丼を一つください」
壁に貼られたメニューの中から一番気になった物を選びました。
「は~い。生姜丼1丁」
奥さんが旦那さんにオーダーを通します。
カウンター席から厨房の中を少しだけ見てみると、長い年月使い込まれた調理器具が沢山並んでいました。
旦那さんと奥さんが息のあった動きで次々と料理をその器具で作っています。
私も家では料理をする方ですけど、あんな風にスムーズには動けないかも……。
まさしくプロの技って感じで驚いていると、先にお味噌汁が運ばれてきました。
お腹が空いていたので、すぐに割り箸を抜いて二つに割ります。
手を合わせて、両手の親指と人差し指の間に割り箸を挟みました。
「いただきます」
立ち上る湯気と、お味噌汁の香りでもう我慢できません。
お椀に口を付けてまず一啜り。
「あつっ」
お味噌汁はとっても熱々で、少し冷まさないとすぐには飲めません。
「ふーっふーっ」
お椀に口を付けたまま息を吹きかけて冷まします。
そのままお椀を傾けてもう一度啜ると、お出汁の良く効いたお味噌汁の風味が口の中いっぱいに広がりました。
具はわかめ、青ネギ、豆腐でとってもシンプルだけど、何だかお母さんが作ってくれたような安心感を覚えます。
ネギのシャキシャキとした食感に柔らかいお豆腐、そこにわかめのこりこりとした食感がと~っても楽しいです。
お味噌汁でほっと一息ついているとあっという間に私の頼んだ料理が運ばれてきました。
「うわぁ~。美味しそうれすぅ~」
大きな丼に、ご飯、千切りのキャベツ、紅しょうが、ピーマン、そして一番上に二つ繋がった目玉焼きが乗ったすごいボリュームです。
食べきれるか心配になってきちゃいました……。
お箸じゃなくてスプーンで食べるみたいなのでさっそくすくってお口に運びます。
「あ~っむ……んぐっ……はむっ」
生姜焼きのあまじょっぱいタレが絡んだご飯とシャキシャキのキャベツが口の中で踊っています。
スプーンの先端がフォークのように先割れているので、目玉焼きの黄身を先っちょで突っつくとドロッとした黄身が溢れてきました。
「はわっ、半熟です!」
半熟の目玉焼きって作るの難しくて、私はあんまり上手くできないんです。
目玉焼きの白身に黄色い道筋を作りながら生姜焼き、キャベツ、ご飯と流れていきそこをスプーンですくって口に放り込みます。
「はぐっ……はふっ……ふぁ」
黄身が加わることによってどこかあっさりとした生姜焼きの味に、卵の濃厚な味わいが増えたのでさっきと味に変化が生まれました。
卵一つでここまで変わるなんてびっくりです!
支援
ここで一欠片ピーマンを食べます。
「かぷっ……んむっ……んぐっ」
甘めに作られた生姜焼きのタレで甘くなった口の中に、ピーマンの苦さがやってきました。
火を通して少し柔らかくなっているけどカリカリとしっかりとした食感が残ったピーマンが、また別の味を運んできてくれます。
この苦さがタレの甘さを引き立てているような、そんな感じがしました。
「あむっ……ずずっ……んぷぁ……」
ご飯だけじゃなくてお味噌汁も、バランスよく食べましょう。
同じしょうがでも紅しょうがとお肉で甘さ、辛さ、酸っぱさ、しょっぱさが一度に楽しめます。
柔らかさとカリカリとした食感の差で、1口で何度も美味しいかな~って。
「はむっ……んぐ……ん~……おいひいれふ!」
食べれば食べるほど食欲がバ~って湧いてきて、次々にスプーンが丼とお口を往復します。
あともう少しで完食っていう所で、奥さんが小鉢を持ってきてくれました。
中にはじゃがいもとお肉が少しだけ入っています。
「あ、あの……?」
注文した覚えの無い料理だったので、尋ねてみると。
「お嬢ちゃんがニコニコあんまり美味しそうに食べてくれるもんだから嬉しくってね
これはサービスだから良かったら食べてちょうだい」
笑顔でそう言われました。
私、そんなに笑ってたんでしょうか?
う~、何だか恥ずかしいかも……。
折角もらったので肉じゃがにお箸をつけてみます。
じゃがいもを割って、一口。
「あ~ん……ん~……はっふ……」
ホクホクとしたじゃがいもに、これまた甘いタレがよく染み込んでいて凄く落ち着く味でした。
次はお肉と一緒に食べてみます。
「んむっ……はぐっ……んっく……」
お肉もよく煮込まれてタレが染み込んでいたので凄く柔らかくなっていました。
お箸とスプーンを持ち替えながら食べて飲み込んでを繰り返します。
気づいたときには丼も小鉢もお椀も空っぽになっていて、厨房の熱気と食後で沢山汗をかいちゃいました。
あんまり長居したら悪いのですぐにお会計を済ませましょう。
「すいません、お会計お願いします~」
「はい、567円ね」
とっても安いです!
これだけお腹いっぱい食べられてこのお値段はちょっとビックリかも。
プロデューサーからもらったお札を奥さんに手渡します。
お釣りを受け取ってお財布にしまいました。
「ありがとうね、お嬢ちゃん」
「うっうー!と~っても美味しかったです~!ごちそうさまでした!」
最後にお礼を言ってお店の外に出ました。
汗をかいた体に風が気持ちいいです。
お料理と奥さんの温かさで、私の胸も温かくなりました。
さて、プロデューサーの所に帰りましょう。
途中でおにぎりとか買って行ったらプロデューサー喜んでくれるかな?
おしまい
終わりです。
お昼ご飯が生姜焼き目玉丼だったので書いてみました。
ちなみにお店ではもう少し安かったです。
少しでもお腹を空かせられたら幸いです。
それではお目汚し失礼しました。
乙でしたー☆
おつ
おつおつ
乙
腹減ったわ
姑息な夜食テロを…(カップ麺にお湯を入れながら)
乙!
おいしそうに食事する女の子はかわいいかなーって
俺の好みドンピシャじゃねーかよ…
ζ*’ヮ’)ζ<うっうー!おなかがすいたかなーって
メチャクチャお腹減ったんだけどどうしてくれんのよ乙
これは最低だわ。恥知らず
孤独のグルメの設定を真似るのはいいが
ドラマseason1の第10話の豊島区東長崎のしょうが焼き目玉丼を丸パクりするのはダメだ
店ぐらいオリジナルで行けよ
夜中に見るもんじゃなかった
>>28
[ピーーー]
>>8
紅生姜丼かと思ってしまった
肉入ってないし
>>28
どうりで観たことあると思った、町でみかけた女子大生劇団員2人と店で遭遇する回のやつだろ
>>28
無粋な奴め・・・
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