男「妹と共に魔王を倒す!!」(125)
妹「お兄ちゃん……」ユサユサ
男「ん……」
妹「お兄ちゃん……起きてってば……」ユサユサ
男「う……あと五分……」
妹「今起きるのっ!!起きろぉー!」ベシベシ
男「何だよ……今日は休みじゃないか……もうちょっと寝かせてくれても……」
男「……どこだここ」
妹「やぁおはようねぼすけさん」
男「やけに綺麗なとこだなー……」
妹「だねー」
男「こんな景色は漫画やゲームの中にしか無いと思ってたけど……日本にこんな綺麗な丘があるなんてなー……」
妹「ほんとだねー……風が爽やか……」
男「お前が連れてきてくれたんだろ?久しぶりにいい気分だよ……ありがとう……」
妹「いやいやこんなサプライズいくらなんでもしないよ!車持たない私がどうやってお兄ちゃんをここまで運んでくるのさ!」
男「はぁ?じゃあ何で俺らはこんなとこにいるんだよ」
妹「そんなの知らないよ」
男「はぁ……とうとう俺たち、親に捨てられたか……」
妹「ニートのお兄ちゃんと一緒にしないでよ。私は捨てられる謂れは無いね!」
男「む……じゃあここにどうやって、何で俺たちはこんなとこにいるんだ」
妹「私は知らない」
男「そうなのかー……」
妹「ここってそもそも日本なのかな?」
男「こんなファンタジーな場所が日本にあるとは思えないんだけど……どうなんだろう」
妹「お兄ちゃん地理含め社会科目はてんで駄目だからねー。当てになんない」
?「グルルル……」
男「!?」
妹「!! な、何あれ!?」
?「フーッ……フーッ……」
男「み……見たことない生き物だな……」
妹「こ、これは地球上の生き物なのかな……?」
男「そ、それより……あいつ、明らかに俺らを襲う気マンマンだぞ……」
妹「ど、どうしよう……」
村人「! ひいいいいっ!!ま、魔物……!」
男「! ……おっちゃん!背中に背負ってる斧!投げてくれ!!」
村人「戦う気か!!?む、無駄だ!!あいつらには……」
男「早くっ!!」
村人「無駄だと言ってるだろう!!まさか知らないわけじゃあるまい!!」
男「はぁ!!?いいから早く寄越せっ!!あいつが襲ってくる前に!!」
男「妹の脚じゃきっと逃げ切れないんだよっ!!」
妹「お、お兄ちゃん!!私のことはいいから逃げてよっ!!」
村人「くそっ……この無知めっ……!斧はくれてやる!!勝手に死ね!!」
男「ありがとうっ!」
男「さ、さぁ……来い……!!」
妹「お、お兄ちゃん……私もちゃんと逃げられるから……!」
男「そうか……なら俺がこいつを足止めしとくからその隙に逃げろ……!」
妹「そうじゃなくてっ!!お兄ちゃんも一緒に逃げるのっ!!」
男「うわあっ!!」
妹「お兄ちゃんっ!!」
男「く……」
妹「お兄ちゃんから……離れろぉっ!!!」ゲシッ
男「! チャンス!!死いいいねえええええっ!!!」ザクッ
妹「……や、やっつけたの?」
男「そ、そうみたいだな……」
妹「ふぅ……」
男「お前……なんつー脚力してんだ……」
妹「……飛んだねぇー…………」
男「……逃げろって言ったろ」
妹「? 何で私がお兄ちゃんの言うことを聞かなきゃなんないのさ」
男「……ふざけてるのか?」
妹「お兄ちゃんこそふざけてんの?」
男「……」
妹「……」
男「……何で逃げなかった?」
妹「そのセリフ、そのまま返すよ」
男「俺が逃げろって言ったの、聞こえてたのか?」
妹「そのセリフ、そのまま返すよ」
男「その上戦おうとまでするなんて!!」
妹「そのセリフ、以下同文」
男「もし死んでたらどうするんだ!!」
妹「略」
男「やっぱふざけてるだろ!お前!!」
妹「全然全くこれっぽっちもふざけてないよバーカ!!」
男「俺はなぁ……!お前が……!」
妹「あーはいはいわかってるわかってる。お兄ちゃんは絶対私を危険な目にあわせたくないんでしょ?」
男「そ、そうだ!」
妹「だからお兄ちゃんが身を挺して私を守ろうとしたんでしょ?」
男「……ああ」
妹「死ね!!それでお兄ちゃんが死んだら私だって死んでやる!!」
男「はぁ!?」
妹「よーく考えろボケ!!」
男「このっ……!」
妹「怒鳴ったら喉渇いた!お兄ちゃんお茶!!」
男「ねぇよ!!」
男「……じゃああそこの村?集落?に行って何か探してくるか」
妹「やだ!だって私の着てるのこれパジャマだよ!?」
男「俺だって寝間着だ」
妹「お兄ちゃんはジャージにtシャツじゃん!」
男「じゃあどうするんだよ。喉渇いてるんだろ?」
妹「やっぱさっきの無し!!」
男「無しって……」
男「この斧も返さなきゃいけないし……多分あそこの人だろ」
妹「いいよあんな腰抜けなんかに返さなくても」
男「あれは仕方なかっただろ……毒舌だな」
妹「お兄ちゃん一人で行って来なよ」
男「あんなことがあった後でお前を一人にしとけるか」
妹「うーん……そうだ!服を交換しようか!」
男「女物のパジャマなんて着れるか!!」
妹「我慢しなよ」
男「お前が我慢しろ!」
期待
別世界は色々と違う感じか('-ω-)
男「ここから動かずにどうやって帰るつもりだ?」
妹「お兄ちゃん車出してよ」
男「ねぇよ」
妹「じゃあ服買ってきてよ」
男「金ねぇよ」
妹「じゃあ転移魔法でパパーっと!」
男「できねぇよ」
妹「うーん……」
男「ほら、諦めて行くぞ」
妹「やだぁー」
━━
━━━
━━━━
男「あ、あれさっきの人じゃないか?」
妹「本当だ」
男「すみませーん!」
村人「お前ら!生きてたのか!!」
男「すみません……斧、汚しちゃいました……」
村人「!?」
男「ありがとうございました。おかげで助かりました」
村人「まさかアレを斬ったのか!!?」
男「は、はい」
村人「本当か!?」
男「は、はい」
妹「……マズイことをしちゃたのかな?」
村人「そ、そこで少しだけ待っててくれ!!」
男「は、はい」
妹「お兄ちゃん『は、はい』以外に喋れないの?」
男「……」
妹「……」
男「殺しちゃマズイ生き物だったのかなぁ……」
妹「でもあんなのどうしたらよかったのさ」
男「……逃げちゃおうか?」
妹「うーん……」
男「でも逃げたら罪が重くなるよなぁ……」
妹「こんな知らない土地で無一文なんて、逃げてもどうしようもないって。謝って、それから助けてもらおう?」
男「そ、それもそうか……頼りになる妹だな」
妹「頼りにならない兄貴だな」
村人「村長!!彼らです!!」
村長「おぉ……!彼らが……!!」
男「あの、すみませんでした……知らなかったとはいえ……」
村長「私達を助けてください、勇者様!!」
男「はい?」
妹「へ?」
村長「すぐに馬車を手配してくれ!!」
村人「はい!!」
男「あの……」
男「えっと……あの生き物を殺したことで何かあるんじゃないんですか?」
村長「そうです」
男「あ……すみませんでした……」
村長「とんでもない!!あなた方は素晴らしいことをしたのです!!」
男「?」
妹「あの……私達、家に帰りたいんです。ここはどこなんですか?」
村長「それも含めて詳しいことは馬車の中でお話します」
男「馬車……」
妹「まさか本当に日本じゃないの……?」
村長「馬車が来ました。乗ってください!」
男「え、えーと……」
妹「ほら、早く乗りなよ」
男「知らない人についていっちゃってもいいものかな?」
妹「お兄ちゃんいったいいくつなの……はよ乗れ」
男「え、えーと……じゃあお願いしまーす……」
妹「うわー……こんなの初めて乗るよ」
男「すげー……」
男「それで……さっきの勇者っていうのは……」
村長「あなた達は西の丘で魔物を殺したそうですね?」
男「は?魔物?」
妹「そういやさっきの村人さんがそう叫んでたような……」
村長「あなた達は魔物を殺すことが出来た。それが勇者の証です」
男「はぁ……確かに凶暴ではありましたけど……」
妹「銃とか使えば誰でも殺せるんじゃ?」
村長「殺せないのです。私達のどんな攻撃も、魔物には通じないのです」
男「はぁ?」
妹「お兄ちゃんのへっぴり腰の斧でも殺せるのに銃が効かないの?」
村長「恐らくあなた達が銃を使えば殺すことが出来るでしょう。しかし私達ではそれは無理なのです」
男「あぁそうかドッキリか」
村長「この世界は今魔王に脅かされつつあります。その脅威を退けることが出来るのは、あなた達だけなのです!!」
男「魔王だってよ!!ファンタジぃー!!」
妹「ちょっとお兄ちゃん!」
村長「どうか、魔王を倒してください!!」
男「そんなこと言われてもなぁ……」
妹「私達、そんな危険なことはできません。家で両親が待ってますし」
村長「しかし、このままだとあなた達は家に帰ることもできません」
男「はぁ……どうすれば帰れるんですか?」
村長「伝説によると、あなた達は異世界の住人だそうですね?」
男「そうか、ここは異世界だったのか!」
妹「……」
村長「本来交わるはずのない世界からあなた達は来た。それは魔王が引き起こした世界の秩序の乱れ故だとされています」
男「なーるほど!」
妹「お兄ちゃん……」
村長「あなた達が元の世界に戻るには、魔王を倒して正しい秩序を取り戻すしかないのです」
男「明日学校があるんだけど……」
村長「あなた達には信じられないかもしれません。ですが我々の世界では勇者の伝説は常識なのです」
妹「あ、あの……私も明日学校なんですけど……」
村長「あなた達の世界には魔法が無いそうですね?」
男「練習はしたけどなー」
妹「中学生の頃のお兄ちゃん、いっつも部屋でブツブツ呪文唱えてたよねー」
男「はぁ!?聞こえてたのか!!?」
村長「勇者は兄妹、妹様は魔法使いという言い伝えです。この世界に来た妹様なら、魔法を使えるはずです」
男「だってよ。使ってみろよ」
妹「えっと……どうすれば……」
村長「私は魔法使いではないので詳しくは知りませんが、魔法は念じることで使うことが出来るようです」
妹「えーと……」
妹「こうかな?」ボワッ
男「!!?!」
村長「おぉ……素晴らしい……!」
妹「で……出来ちゃった……」
男「お、お前もグルか!!」
妹「ち、違うよ!!断じて違う!!」
男「嘘つけぇ!!」
妹「私が今までお兄ちゃんに嘘ついたことある!?」
男「そんなもんいくらでも……」
男「いくらでも……」
男「……あれ?もしかして無い?」
妹「無いよ!!少なくともお兄ちゃんを陥れるような嘘は付いたこと無いよ!!」
男「……そうかも」
妹「私は今ので信じた。私達は本当に異世界に来ちゃったんだよ!!」
男「……」
男「……そうなのかもな」
村長「信じていただけましたか」
男「……一応。もしドッキリだったらスタッフぶっ飛ばすからな!!」
妹「となると……私達、本当に魔王を倒すまで帰れないんだ……」
村長「その通りです」
男「俺たちに倒せるんですか?」
村長「今のままでは無理でしょう。しかしあなた達は勇者です。旅をすればすぐにとんでもない強さを手に入れることが出来るでしょう」
男「俺レベル上げ嫌いなんだけどなぁ……」
妹「どんな魔法使えるんだろう……ちょっとワクワクしてきたよ!」
男「いいなぁ……」
男「あの、妹は魔法使いなんですよね?じゃあ俺は何なんでしょう?」
村長「伝説によると、あなた様は剣士とされています」
男「剣道すらやったこと無いよぉ……」
妹「お兄ちゃんが剣士……」
男「ところでこの馬車はどこに向かってるんですか?」
村長「王都トウケイです。そこであなた達には王に会って頂きます」
男「王様……」
妹「マジか……」
村長「それほど遠くはありません。日が暮れる前には着くでしょう」
男「結構かかるな……」
妹「私魔法の練習でもしてよっと!」
━━
━━━
━━━━
村長「着きました。降りてください」
男「ふぉー……」
妹「ひゃー……」
男「すげぇな……」
妹「ゲームの世界だよ……」
村長「このまま城へ向かいます。私に着いてきてください」
男「え」
妹「ちょっ……私パジャマなんだけど!!」
男「あの……着替えて行きたいんですけど……」
村長「あなた達の服装は異世界のものです。今着ておられるのがどのような物かは知りませんが、この世界では失礼には当たりません」
妹「そ、そんなこと言われても……」
男「ま、それじゃあいいか」
妹「お兄ちゃんが良くても私は良くないよ……私がパジャマで出かけられるのは近所のコンビニまでだよ」
男「いや着替えろよ」
村長「王に会うまで我慢してください。その後はどんな服でも着てもらって構いません」
男「王様に会うのにこの上なくラフな格好だな……」
━━
━━━
━━━━
王「そなたらが勇者か!よく来てくれた!!」
男「若っ!!」
妹「ずいぶん若い王様だね……」
王「村長から大体話はしたと聞いた。魔王討伐、受けてくれるか?」
男「……ええ、まぁ」
妹「もっとしゃんとしなよ!」
王「すまない。感謝する」
男「俺たちに務まるかはわかりませんが」
王「そなたらに務まらなければ誰にも努まらん。頼んだぞ」
男「……やれるだけ、やってみます」
王「すまないな……本来自分の国の力でやらねばならんことなのだが……」
男「……」
王「感謝する」
男「ところで、ここにあるのは何なんですか?」
王「二つあるのは勇者のペンダントだ。それをつけている者が勇者だと国民がわかるようにしておく」
王「協力してくれることだろう」
男「ありがとうございます」
王「ただし、金銭面での援助はほとんど無いと思ってくれ。店では普通に金を払うことになるだろう」
王「すまないな。この国は魔王の侵攻で疲弊しているんだ。国民に無償での協力を無理強いはできない」
男「いえ、充分ありがたいです」
王「それと、その袋は少ないが金が入ってる。使ってくれ」
男「ありがとうございます」
王「それと、最後のそのロケットだが」
男「これですね」
王「それは王家に代々伝わる家宝だ。どんなダメージからも一度だけ必ず身を守ってくれるという」
男「! そんな大事な物、いいんですか!?」
王「効果がある以上、それは道具だ。使うべき人に渡すべきなのだ。使ってくれ」
男「……ありがとうございます」
妹「ありがとうございます!」
王「魔王城はグンバ湖の上空に在る。これで私から伝えることは以上だ」
王「どうか、魔王を打ち倒してくれ。頼んだぞ」
男「……はい!」
━━
━━━
━━━━
男「1500g……gの価値はわかんないけど……」
妹「経験上端金だね」
男「ま、とりあえず武器と防具とアイテムを揃えるか」
妹「そうだねー」
男「鎧とか着なきゃなんないのかなぁ……」
妹「あ、あそこ武具屋さんじゃない?」
男「それっぽい看板あげてるな。じゃあ行ってみよー!!」
妹「おーっ!!」
男「こんにちはー……」
店主「やぁいらっしゃい!!そのペンダントは勇者様だね!うちで装備を揃えていってくれよ!!」
男「ふわぁ……本物の剣だ……」
妹「あ、杖だ。やっぱりこれ持つと魔力が上がるのかな?」
男「それにしても初級っぽい武具しか売ってないな……」
妹「最初の街だからねー」
男「選ぶ余地は無いな……剣と杖と鎧とローブください」
店主「まいどありー!!気をつけて旅をしてくださいね!」
男「うん、ありがとう」
男「くそ……重い……」
妹「次は道具屋だね?あそこに見えるのがそうかな?」
男「それっぽいな」
妹「周り見てみると、武具屋道具屋以外にもいろんな店があるんだねー」
男「そりゃそうだろ。ゲームじゃないんだから」
妹「あ、あれアイスクリーム屋じゃない?」
男「本当だな。後で寄るか」
妹「賛成!!」
男「タバコ屋は無いかな……」
店主「いらっしゃい!!」
妹「あれ?さっきと同じ人……?」
男「同じデザインだ……」
妹「デザイン!?」
男「色だけ変えてキャラ数稼ぐなんてよくあることだろ。気にすんな」
妹「キャラ数!?」
男「あれだろ。魔王による秩序の乱れのせいだ」
妹「はぁ……?」
男「さ、道具買うぞー!!」
妹「……」
男「回復薬……解毒薬……」
妹「回復薬って飲み薬なんだねー」
男「外傷に効くのかな?効くんだろうなー速効性なんだろうなー」
妹「解毒薬ってどんな毒に効くんだろう?」
男「モンスターが使ってくる毒には全部効くと思うよ」
妹「えー?そんな薬ある?」
男「普通は無いけどここは秩序の乱れた世界だから」
妹「なんとも都合の良い……」
男「蘇生薬は無いみたいだな」
妹「まぁいくらなんでもね……」
こんな世界に俺も行きたいぜ…
男「重い……一旦宿屋に荷物置いてこようぜ……」
妹「これからこれ持って旅するんだよ?大丈夫なの?」
男「くそ……お前ももうちょっと持てよ……」
妹「あ、そうだお兄ちゃん」
男「?」
妹「王様からもらったロケット、あれ私が持つ」
男「えー……まぁいいけど」
妹「あれは『だいじなもの』に分類されるアイテムだからね!貴重品は私が管理します!」
男「……ま、いっか」
妹「『どうぐ』はお兄ちゃんに任せた!!」
男「えぇー……?」
店主「いらっしゃいませ!」
妹「また同じ人だ」
男「一泊いくらですか?」
店主「一部屋150gです!」
妹「……ほぼ無一文になったね」
男「ほんとに端金だったなぁ」
妹「国からの援助なのに……」
男「ま、こんなもんだろ。最初に大金持っちゃうとバランスが崩れちゃうからな」
妹「何のバランスよ」
男「おお!質素な部屋だ!!」
妹「えぇ……ベッド一つなの……」
男「もう一部屋借りる金は無い。諦めろ」
妹「むぅ……」
男「そんなに嫌なら俺は床で寝るけど?」
妹「いいよそんなの。ちょっと抵抗はあるけど別に嫌じゃない」
男「そう?ならいいけど」
妹「でも少しは乙女に対する遠慮はしてね」
男「胸揉むなとかそういうこと?」
妹「それ以前の話だ!!」
男「それじゃ……始めますか!」
妹「? 何を?」
男「部屋の探索」
妹「えぇ!? 駄目だよそんなの!!」
男「何言ってんだ。お約束だろ?」
妹「それはゲームの話でしょ!」
男「この世界、ゲームとそんなに変わらないと見た……お、タンスの中に帽子みっけ!」
妹「そ、それ忘れ物じゃないの!?」
男「大丈夫大丈夫!お前そっちの壺調べろよ。俺はこっちの植木鉢調べるから」
妹「ちょ、ちょっと……お兄ちゃん……」
男「ふむ……トンガリ帽子に30gか……」
妹「本当にいいのかなぁ……」
男「トンガリ帽子は魔法使い用の装備だな。お前被ってみろよ」
妹「うわぁー……元の世界じゃコスプレだけど、この世界だと堂々と被ってもいいんだよね……」
男「お、似合う似合う!」
妹「ホント?結構憧れてたんだよねーコレ!」
男「よし。じゃ、次行くぞ」
妹「次?」
男「他の部屋だ」
妹「はぁ!?」
男「お、ここ鍵かかってない」
妹「ちょっと!人の部屋だよ!!」
男「大丈夫、ほら」
妹「……無反応だ」
男「じゃあ俺は部屋漁っとくから、お前はその人から話聞いといて」
妹「え!?」
男「多分話しかければ勝手に喋ってくれるよ。よろしくー」
妹「え、えぇ……」
妹「あ、あのー……」
客「あぁ!!勇者様だね!!こんにちは!」
妹「あ……こんにちは……」
客「魔王城がどこにあるか知ってるかい?グンバ湖の上空に浮いてるんだ」
客「だから魔王城に行くには空を飛べないといけないんだけど」
妹「え、あ」
客「どうやら東の町に飛空艇を持ってる人がいるらしいんだ」
客「もしかしたら飛空艇を借りられるかもしれないよ!」
客「気をつけて旅をしてくださいね!」
妹「は、はい……」
妹「お兄ちゃん……この世界怖い……」
男「なんだよ。お前も結構ゲームやるし慣れてるだろ?」
妹「でも……いざこうして現実として触れると……」
男「まぁ異常だよな。それもこれも魔王を倒せば元通りだ!頑張ろうぜ!」
妹「私、耐えられるかな……」
男「さ、少し金集まったからさっきのアイス屋でも行くか!」
妹「本当!?やったぁ!!」
男「せっかく大きい街なんだからいろいろ見て回ろうぜー」
妹「うん!」
男「なかなか美味いなー」
妹「本当!美味しい!!」
妹「……あ、お兄ちゃん、もう一つアイス買ってきて」
男「食い足りないのか?」
妹「違う!あそこに迷子がいる」
男「あぁいるな。そんじゃちょっと話聞いてくるか」
妹「でもあの子泣いてるから。泣き止ませるには甘い物が一番だよ!」
男「そりゃお前のことだろ……」
妹「いいから買ってきて!!」
男「はいはい」
子供「うわああああん!!」
妹「はい、これどうぞ!」
子供「!! ……いいの?」
妹「うん!」
子供「……ありがとう」
妹「ところでキミ、どうして泣いてたのかな?」
子供「……お母さんとはぐれちゃったの」
妹「そっかー。はぐれたときの待ち合わせ場所とか決めてあったりする?」
子供「……はぐれたときは中央公園に行けって言われた…………」
子供「でも……そこの場所……わかんなくなっちゃったの……」
妹「そっか。大丈夫!その公園までお姉さんが連れてってあげよう!」
子供「本当!?」
妹「もちろん!」
子供「ありがとう!!」
男「お前中央公園の場所なんて知ってんの?」
妹「今から探すの!」
男「……」
妹「すみません、あの、中央公園ってどこにあるんですか?」
町人「あぁそれなら……」
妹「着いた!」
男「決まったセリフ以外でも、聞けば答えてくれるんだな……」
妹「そりゃそうだよ!生きてる人だもん!」
男「まぁ……」
妹「どう?お母さんはいる?」
子供「えーと……あ、いた!!お母さーん!!」
母親「子供!!あぁ良かった!!無事だったのね!!」
子供「あのお姉ちゃん達がここまで連れてきてくれたの!」
母親「ありがとうございます!!息子を連れてきてくれて……」
妹「いえいえ!」
母親「あの、これ……少ないですけどお礼です」
妹「! そんなの要らないですよ!!」
母親「そんなこと言わずに受け取ってください!本当にありがとうございました」
妹「あ、あの……」
子供「お姉ちゃん!ありがとう!!僕もこれあげるね!!」
妹「これは……木の実?」
子供「これ食べるとすっごく力が湧いてくるんだよー!食べてね!!」
妹「……ありがとう!
妹「……別に見返りが欲しくてやったわけじゃないのに」
男「わかってるよ。でもこれはゲーム的に言うならストーリーとは関係の無いミッションなのさ。報酬はあって当たり前なんだ」
妹「……なんだかなぁ」
男「1000gも貰っちゃったよ。何か美味いものでも食べに行こっか!」
妹「……うん!」
男「木の実の方は多分ステータスアップのアイテムだろう。力が湧いてくるなら攻撃力を上げる物だろうな」
妹「ならお兄ちゃんが食べるべきだね」
男「こういう物はとっといても仕方ないしな。じゃ、いただきまーす!」
妹「どう……?」
男「うん。今確実に攻撃力のパラメータが上がった」
妹「そんなのわかるんだ」
男「すげぇ!!マンガ肉だぁ!!」
妹「切り分けるの大変そう……」
男「何言ってんだ!!そのままかぶりつかなくてどうする!!」
妹「え」
男「こんな風に豪快に食べるもんだ!うめぇー!!」
妹「えぇー……」
男「ほら食えよ!」
妹「わ、私は切り分けて食べるよ……」
男「全く……」
男「ふぅー……食った食った!」
妹「苦しい……」
男「半分以上残しといて何言ってんだ」
妹「よく私の分まで食べられたね……」
男「明日のうんこはくっせぇだろうな!!」
妹「このクソ兄貴」
男「うんこだけに?」
妹「死ね」
━━
━━━
━━━━
男「ふわぁ……疲れた……」
妹「すごい一日だったね……」
男「明日からもっと大変になるんだろうな……」
妹「お風呂に入りたい……」
男「その内どっかで入れるさ。今日はもう寝よう」
妹「うん……」
男「……」
妹「……」
男「……なんか寝られない」
妹「……私も」
男「……絶対うちに帰るぞ」
妹「うん」
男「俺が何とかしてやるから心配すんな」
妹「心配なんかしてないよ」
男「……そっか」
妹「頼りにしてるよ、オニーチャン」
男「……おう」
妹「……眠くなってきた。おやすみ」
男「おう。おやすみ」
━━
━━━
━━━━
男「……」zzz…
妹「お兄ちゃん、起きて」
男「ん……」
妹「おはよう!」
男「も、もう少し……」
妹「駄目。朝ごはん食べに行くよ!」
男「ん~……おはよう」
妹「早く着替えて!」
男「ふぁい……」
━━
━━━
━━━━
妹「忘れ物は無い?」
男「無い……と思う」
妹「とりあえずの目的地は東の町だね」
男「飛空艇を持ってる人がいるらしいからな」
妹「歩いて三日くらいらしいね」
男「俺そんなに歩いたことねぇよぉ……」
妹「ま、休憩入れながらゆっくり行こー!」
男「お前元気だなぁ……」
妹「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
男「おー……」
男「広大だ……」
妹「見渡す限りの草原……」
男「歩く気が失せるな……」
妹「はいはいさっさと歩くよ!」
男「お前は身軽だからいいよなぁ……」
妹「鎧、似合うよお兄ちゃん!」
男「重い……」
男「!」
妹「ま、魔物だ!!二体も……」
男「よ、よぉーし……うりゃあ!!」
妹「えいっ!!」ボワッ
男「おりゃあ!!!」
妹「お兄ちゃん!後ろ!!」
男「!! いってぇええええ!!」
妹「お兄ちゃんに何すんだこの野郎!!くらえ!!」バチバチ
男「うりゃあ!!くたばれやぁ!!」
妹「や……やっつけた……」
男「あ、今レベルアップしたな」
妹「あ、ほんとだ」
男「金を落としたな」
妹「なんでこんなもの持ってるんだろう……」
男「ところでこの傷治してくれないか」
妹「わ、すごい血!!回復魔法だね……えいっ!!」ポワワワワ
男「すげぇ……みるみる治ってく……
男「……それにしてもやっぱ危険だな」
妹「そりゃねー」
男「……お前やっぱさっきの町で待ってろよ。俺一人で」
妹「馬鹿言わないで。昨日私が言ったこと何も解ってないんだね」
男「解ってないって……」
妹「私も行くよ。誰がお兄ちゃんの言うことなんて聞くもんか」
男「……お前はあくまで後方支援だからな?怪我しないようにしろよ」
妹「お兄ちゃんこそ……」
妹「いや、まぁいっか。お兄ちゃんが怪我したら私が治せばいいもんね!」
男「……うんこしたくなってきた」
妹「あっ!?そうか……私も外でトイレしなきゃいけないんだ……」
男「鎧脱ぐのめんどくせぇー!!」
妹「ところで、ティッシュって無いよね……」
男「あ!!」
妹「……どうしよう」
男「……適当な布で拭くしかないだろうな」
妹「……自然由良だから、その場で使い捨ててもいいよね。持ち運びたくない」
男「スーパー袋も無いしな……」
━━
━━━
━━━━
男「この辺にテント張るか」
妹「そうだね。水場も近いし」
男「今日一日で結構レベルアップしたな」
妹「そうだねー。転移魔法も覚えたから行ったことのある町ならいつでも行けるよ」
男「俺も魔法使えるんだな……攻撃魔法は一つも覚えなかったけど」
妹「私は即死魔法も覚えたよ!なかなか成功しないけど!」
男「まぁ即死魔法はそんなもんだろ」
支援
妹「ほい、ご飯出来たよ」
男「おぉー米だ米!!」
妹「火起こすの楽でいいねー」
妹「ま、おかずは保存効くやつ、ってことで干し肉と野草くらいしかないけど!」
男「ところで野草にかかってるのってこれドレッシング?」
妹「食用油はあるから適当にドレッシング作ってみた!」
男「やるなぁ……」
妹「明日は適当な動物でも狩ってみようか。それとも魔物って食べられるのかな?やっぱ干し肉だけじゃ飽きちゃうし、生肉が欲しいところだよねー」
男「お前たくましいな……」
続きはよ
男「はぁー……せめて馬が欲しい……」
妹「お兄ちゃん乗れるの?」
男「昔どっかで一回乗せてもらったことがある」
妹「えー!いいなぁー!!」
男「お前も乗ったぞ?」
妹「え?」
男「お前はまだ小さかったから覚えてないだろうけど」
妹「えぇー……知らぬ間に私の乗馬処女が無くなってたなんて……」
男「乗馬処女やめろ」
妹「ま、今は地道に歩いてたくさんエンカウントしてレベル上げしましょー!」
男「はぁ……」
男「ごちそーさまでした!美味かった!」
妹「ご馳走様でした。じゃあ私、川に行って食器洗うついでに水浴びしてくるね」
男「え、じゃあ一人で行くのか?」
妹「当たり前でしょ」
男「でも魔物が襲ってくるかもしれないし……」
妹「大丈夫だよ」
男「でもなぁ……やっぱ俺も着いてくよ。絶対見ないから」
妹「えぇ……」
男「つーか興味無いから見ないし」
妹「死ね!……まぁいいや。じゃあ見えない所で待ってて。何かあったら呼ぶから」
男「おう」
男「お、もう済んだのか?」
妹「うん!すっきりしたぁー!お兄ちゃんは水浴びしないの?」
男「今俺臭うか?」
妹「え?いや、別に」
男「ならいいや。臭ったら教えてくれ」
妹「臭うまで身体洗わないの……」
男「じゃ、戻るぞー」
妹「……」
男「じゃ、お前先に寝ろよ」
妹「え?お兄ちゃんは?」
男「見張ってるよ。お前が起きてから俺も少し寝る」
妹「えー……大丈夫なの?」
男「大丈夫大丈夫。気にせずいっぱい寝とけ。疲れたろ」
妹「お兄ちゃんもでしょ……じゃあ先に寝させてもらうね」
男「おう。おやすみー」
妹「おやすみ」
男「ふぅー……」
男「暇だな……」
男「何か本でも買って来ればよかったなぁ……」
男「……妹ー」
男「寝たかー……?」
男「……よし」
男「抜くか」
━━
━━━
━━━━
妹「おはよー……」
男「あれ、もう起きたのか?」
妹「どれくらい寝てた……?」
男「四時間くらいかな。もうちょっと寝ててもいいんだぞ?」
妹「ううん……いい……」
妹「見張り……代わるよ……」
男「いいのか?なら俺も寝るか」
男「二時間くらい経ったら起こしてくれ」
妹「……はーい」
妹「……」
妹「……暇だなー」
妹「……お兄ちゃん、もう寝た?」
妹「……返事無し」
妹「……」
妹「……暇だなー」
妹「……お兄ちゃんの鎧でも磨こうかな」
━━
━━━
━━━━
男「ふあ……おはよー……」
妹「おはよーお兄ちゃん」
男「今何時だ……?」
妹「えーと、五時だね」
男「四時間も寝ちゃったのか!?なんで起こしてくれなかったんだよ!!」
妹「私も四時間寝たじゃん……」
男「寝足りないだろ!俺が起きた後お前にもう一回寝てもらうつもりだったのに……」
妹「……はぁ」
男「まぁ五時ならもう一眠り出来るか。お前もうちょっと寝てこいよ」
妹「私が寝たとして、その後お兄ちゃんがもう一度寝る時間は無いでしょ?」
男「……まぁな。でもお前は女の子なんだから、もうちょっと身体を休めないと……」
妹「大きなお世話。あのさ、お兄ちゃんだけが相手のことを気遣ってると思わないでよね。お兄ちゃんの方こそもうちょっと寝てきなよ」
男「いや、俺はもう大丈夫」
妹「私だって大丈夫。お兄ちゃんと私は平等」
男「……でもなぁ」
妹「安心して。疲れてるときはちゃんとそう言うから」
妹「だから、お兄ちゃんも、同じようにしてよね」
男「……おう」
妹「本当にわかってる?私のために無理なんて絶対にしたら駄目なんだからね?」
男「……おう」
妹「絶対だからね。約束だよ。破ったらぶん殴るから」
男「……女の子がぶん殴るなんて言っちゃいけません」
━━
━━━
━━━━
男「着いた!東の町だ!!」
妹「ふぅー……疲れた……」
男「はぁ……どこかで一休みしてこうぜ……」
妹「駄目。陽があるうちに飛空艇を持ってる人と話に行こう」
男「えぇー……今日はもういいじゃん……」
妹「もうここに来てから4日だよ!?一日でも早く帰らないと!!」
男「やっぱり元の世界でも4日経ってるのかなぁ……」
妹「そう考えて行動した方が確実でしょ。あ、すみませーん!」
男「はぁ……」
町人「これはこれは勇者様!」
妹「あの、私達この町にいる飛空艇を持ってる人に会いに来たんですけど、どこにいらっしゃるんですか?」
町人「それならこの町の西部へ行けば飛空艇が置いてあるのですぐわかると思いますが……」
妹「そうですか!」
町人「ですが……」
妹「?」
町人「今、飛空艇を飛ばすことは出来ないと思います……」
妹「? どうしてですか?」
町人「詳しくは知らないのですが……動力源を盗まれたらしいんです……」
妹「盗まれた……」
男「ま、とりあえず訪ねてみるしかないだろ」
妹「そうだね。ありがとうございました!」
町人「いえ。あなた方が無事に旅を終えられることを祈ってます」
妹「はい!」
男「ごめんくださーい」
親方「いいよー入ってー」
男「お邪魔しまーす」
妹「こんにちはー……あの、貴方が飛空艇を持ってると聞いて……」
親方「あぁ勇者さんだね、来ると思っていたよ。ここらで飛空艇を持ってるのは俺だけだからな」
男「魔王討伐の為に是非貴方の飛空艇をお貸ししてもらいたいんです」
親方「あぁ……俺も貸してやりたいのはやまやまなんだが……」
男「……町の人に聞きました」
親方「あぁ……こないだ魔族の野郎が押し入って来てな……」
親方「飛空艇をバラバラに壊されちまったんだよ」
男「……そうなんですか」
親方「船体の方はもう大分直したんだけどな」
親方「問題は奴等に盗まれた動力源だ……」
男「動力源……」
親方「飛空艇をには浮遊効果を持つ飛空石っつー石を動力源に使ってんだ」
親方「なにせ貴重なもんでな……なかなか手に入んねぇのよ」
親方「それを奴等に盗まれちまったのよ……」
男「……わかりました。そいつ等の居場所はわかりますか?」
親方「……ここから南に半日ほど歩いた所にある洞窟が奴等の根城だ」
男「そうですか。それじゃあそこへ行って、飛空石を取り戻してきます」
親方「……奴等、強ぇぞ。ここに来るまでにも魔物には出会っただろうが、あいつらはさらに強い」
親方「奴等の親玉はまたさらに別格だ。比べもんになんねぇ」
男「これから魔王を討伐しよってのに、そんなのに尻込みしてられません」
男「任せてください!」
親方「そうか……それじゃあ頼んだ。飛空石が戻ってきたら、大急ぎで飛空艇を飛べるようにしてやる」
男「ありがとうございます!」
親方「……死ぬなよ」
男「はい!」
男「最初のダンジョンだな」
妹「ボス戦か……不安だな……」
男「ま、充分鍛えてから行こうぜ」
妹「うん」
男「この町の武具屋行こうぜー」
妹「そうだねーお金も結構溜まったし新しいの買おっか」
男「あ、あそこだな」
妹かわいい
男「おー武器も防具も新しいのがあるある」
妹「お兄ちゃん!この杖特殊効果付きだよ!mp消費無しに炎魔法が使えるんだって!」
男「おぉ……そりゃいいな」
妹「買って買ってー!!」
男「駄々こねなくても買ってやるよ……リスクを下げるためになるべく良い装備を揃えとくべきだ」
妹「やったぁ!!」
男「武器も防具も全部新調するぞ」
妹「そんなお金あるの?」
男「今の装備を売れば宿代くらいは残る」
妹「アイス食べたい」
男「まぁアイスくらいなら……」
男「あ……しまった」
妹「どうしたの?」
男「道具類も買い足さなきゃいけないのを忘れてた……」
妹「あ」
男「うーん……ちょっと外出てモンスター狩ってくるか……?」
妹「そうしようか……めんどくさいけど……」
男「じゃあちゃっちゃと行ってこようか」
妹「あ、猫」
男「本当だ。かーあいーなぁー」
妹「さ、触ってもいいですか……?」ソロソロ
妹「……」ソロソロ
妹「……やった!触れらせてくれた!!ありがとうございます!!」ナデナデ
男「……」
妹「人に慣れてるなぁ。飼い猫かな?」
男「……妹、あれ」
妹「後にしてよ。今モフモフなんだから」
男「その猫、あの貼り紙のやつじゃないか?」
妹「ん?……ほんとだ」
男「その猫は迷子らしいな」
妹「飼い主のとこまで連れてってあげよう!」
男「そのつもりだ。だってほら」
妹「ん……?わ、3000gもくれるんだ!」
男「これで道具類を買えるな」
妹「ま、私は別にお金が欲しくてこの猫を助けるわけじゃないんだけどね!」
男「じゃあ何なんだよ」
妹「誰かを助けるのに理由がいるかい?」
男「ジタンかっこいよなぁ」
━━
━━━
━━━━
男「ラッキーだったな」
妹「そうだね」
男「しかし猫を助けて3000gか……」
妹「迷子を助けたときは1000gだったね」
男「対して魔王を討伐する勇者への国の援助は1500g……」
妹「細かいことは気にしない!」
男「釈然としないぜ……」
男「回復薬に……解毒薬に……」
妹「この針はなんだろう?」
男「これは……石化状態を治すものらしいな……」
妹「石化!?」
男「金の針みたいなもんか……」
妹「い、いっぱい買っとこう!」
男「そうだな……こっちの草は……」
妹「沈黙を治す……?」
男「沈黙って何だよ」
妹「やまびこ草みたいの物かな……私呪文とか唱えて魔法使うわけじゃないんだけど……」
男「……一応買っとくか」
男「さ、とっとと晩飯食って明日に備えて早めに寝るか」
妹「そうだねー。疲れたし」
男「せっかく町にいるんだし、ビール飲みたいな」
妹「あ、私もー!」
男「お前未成年だろ」
妹「いいじゃん。ここは日本じゃないんだし」
男「……ま、いっか」
妹「堂々と飲めるっていいねー!」
男「お前今まで隠れて飲んでたのか?」
妹「う……た、たまーにだよ!」
男「……」
━━
━━━
━━━━
男「ここが例の洞窟か」
妹「ちょっとワクワクするね」
男「あ!しまった!!」
妹「何?」
男「松明用意すんの忘れた……」
妹「あぁ大丈夫。明かりくらい出せるよ」ポン
男「……お前便利だな」
妹「へへーいいでしょ」
男「いいなぁ……」
男「……結構明るいな」
妹「明かり要らないね……」
男「特に光源は無いのに……」
妹「まぁ楽でいいじゃん」
男「……」
妹「さぁ、ちゃっちゃと攻略するよー!」
男「……おー」
男「くそ……マップが欲しい……」
妹「そんなのあるのかなー?」
男「あ、宝箱みっけ。オープン!」
妹「鍵かけてないの……」
男「やったー!マップだー!!」
妹「なんで地図なんかを宝箱に入れたのか……」
男「さーどんどん攻略するぞー!」
妹「攻略されるためにあるようなダンジョンだね……」
男「あ、宝箱みっけ。オープン!」
妹「鍵がかかってない宝箱はもはやただの箱な気がする」
男「……」
妹「どうしたの?」
男「……さっきの町で買った剣だ…………」
妹「あー……」
男「……」
妹「よくあることだよ。気にしちゃ負け!」
男「わかってる……わかってるけど……!」
魔物「ギャァッ!!」
男「妹!?何をされた!!?」
妹「……」
男「おい!妹!!」
妹「……」ボワッ
魔物「グギャアアアア……」
男「た、倒したか……それよりさっきの奴の攻撃は一体!?」
妹「……」パクパク
男「あぁ……そうか……」
男「沈黙か」
妹「……」コクコク
男「ほれ、やまびこ草だ」
妹「……ふぅ。喋れないって意外とストレス溜まるね」
男「買ってきといてよかったな……」
妹「お兄ちゃん!?」
男「……」
妹「石になっちゃったよ……」
妹「とりあえずくたばれっ!!」バチバチ
魔物「グギャアアア……」
妹「ふぅ……」
妹「お兄ちゃんの石像……」
妹「芸術性皆無だね」
妹「ま、さっさと復活させたげますか!えいっ!」プスッ
男「……ふぅ」
妹「それにしても石化って怖いね。金の針持ってなかったらどうしていいかわかんなかったよ。置いてくわけにもいかないし」
男「芸術性皆無とは言ってくれたな」
妹「あ、聞こえてたの?」
男「さて……マップによるとこの先がボス部屋らしいな」
妹「多分レベルは充分でしょー。ダンジョンの雑魚は一撃で倒せるようになったし」
男「そうだな……」
妹「あ、お兄ちゃん……あれ」
男「……水が張ってあるな」
妹「もしかして……」
男「……浸かってみよう」
妹「すごい……体力が回復した……」
男「どういう仕組みなんだ……」
妹「それにしても何でボス部屋の前にこういうのを設置するかね……」
男「もし……勝てなさそうだったら……」
妹「だったら?」
男「お前だけでも逃げろよ」
妹「はぁ……」
男「約束しろ」
妹「ヤだね。さっさと倒しに行くよ!!とつげーき!!」
男「あ!ちょ、待てよ!!」
妹「早く来い不細工なキムタク!!」
━━
━━━
━━━━
男「うわぁっ!! 」
妹「お兄ちゃん!!腕がっ!!」
男「う……腕が飛ぶなんて初めての経験だ……」
妹「えいっ!!治れっ!!」ポワワワ
男「……腕が生えるのも初めての経験だ」
妹「おりゃっ!!うりゃぁっ!!」ボワッバチバチカキン!
男「落ち着け!!氷魔法は回復してるっぽいぞ!!」
━━━━
━━━
━━
男「た、倒した……」
妹「はぁ……はぁ……」
男「危なかった……」
妹「お……お兄ちゃん……死んじゃうかと思ったぁ……!」
男「よしよし……怖かったな……」
妹「お兄ちゃん……私の分まで攻撃受けるんだもん……馬鹿ッ……!」
男「……」
妹「お兄ちゃんが頭をふっ飛ばすくらいなら私だって腕や脚くらいいくらでもふっ飛ばすんだから……!」
男「……悪かったな」
妹「お兄ちゃんが死んだら……!私どうすればいいのっ……!!」
男「……今度からはもっとレベル上げしていこう」
妹「それだけじゃ駄目」
男「?」
妹「次からはダメージは均等に受けるんだよ。お兄ちゃんだけがダメージを引き受けて、それで死んだら許さない」
男「……でも」
妹「でももへちまもない。必要以上に私を庇わないで」
男「……」
妹「どうせ治せる怪我なら私だっていくらでもする」
妹「でも、死んだら治らないんだから」
男「……」
男「これが飛空石だな。ちゃっちゃと持って帰ろう」
妹「綺麗な石だね……」
男「吸い込まれるような青だな……」
妹「ま、アクセサリーにするわけにはいかないよね」
男「当然だ」
男「こんにちはー」
親方「おぉお前ら!!無事だったか!!」
男「飛空石、取り返してきました」
親方「よし……これがあれば飛空艇を飛ばせる……!」
男「どれくらいかかりますか?」
親方「二週間ってとこだな」
男「二週間……」
妹「さすがに結構かかるね」
親方「俺は急いでこの飛空艇を完成させるから、お前らは次の問題を解決してこいよ」
男「次の問題?」
親方「なんだ知らねぇのか?魔王城には結界が張ってあるんだ。飛空艇があっても、その結界をなんとかしねぇ限りは魔王城には入れねぇ」
男「結界……」
親方「結界専門の魔法使いが西の村にいるらしい。まずはそこを訪ねたらどうだ?」
男「そうします。ありがとうございます」
いいねがんばれ
妹かわいい
━━
━━━
━━━━
男「さて、今から魔王城へ突撃するわけだが」
妹「一ヶ月か……早かったのやら遅かったのやら」
男「魔王城へ入るともう戻ってこれません。魔王城へ突入しますか?」
妹「親切な注意書きどうも」
男「まぁ多分戻ってこれるけどな」
妹「大丈夫……だよね。帰れるよね」
男「これでもかってくらいレベル上げはした。この国のダンジョンはだいたい回って装備も揃えた」
男「絶対大丈夫だ」
妹「……うん」
男「忘れもんは無いよな?」
妹「うん」
男「ステータスは万全だな?」
妹「うん」
男「じゃ、行くか」
妹「うん!」
男「それじゃあ、とつげーき!!」
妹「おー!!」
━━
━━━
━━━━
魔王「グッ……」
男「魔王弱っ!!」
妹「魔王が弱いんじゃない……私達が強くなりすぎちゃったのさ……」
男「んー……じゃ、さっさとトドメさして帰るか」
妹「そうだね」
魔王「クククク……」
男「? 何で笑ってんの?」
魔王「私を見くびるなよ……」
妹「いやむしろビビって損したって感じ」
魔王「ただでは死なぬ……貴様らも道連れだ!!」
男「じゃあ何かされる前にさっさとトドメさすか」
魔王「私を殺したときこそ……貴様らの……最期だっ!!」
妹「?」
魔王「私に秘められた魔力を甘く見るなよ……もし……私が死ねば……その魔力を抑えるものは無くなり……」
魔王「大爆発を起こす!!生き延びることは到底不可能だ!!」
男「!!」
妹「そんなこと言われてもねぇ……魔王の攻撃なんてほとんど効かなかったわけだし……」
男「……」
男「いや……違う」
妹「違う?」
男「俺たちはもう経験値を貰ってる。つまり戦闘を終えてるんだ」
妹「……つまり?」
男「つまり、これはイベントだ。恐らく魔王の爆発で、本当に死ぬ」
妹「えっ……!?」
男「格好良く言うなら、俺達は世界に殺される」
妹「格好良く言わなくていい」
男「……お前、逃げろよ」
妹「……はぁ?」
男「お前が充分離れてから、俺がこいつにトドメさすよ」
妹「駄目っ!!そんなの駄目っ!!」
男「でもこのままお前が帰らなかったら……母さん達が悲しむだろ」
妹「そんなのお兄ちゃんが帰らなくても一緒だよ!!」
男「……」
妹「そ、そうだ!この世界の人にトドメはさしてもらおうよ!」
妹「もともとこの世界の問題なんだ!私達が死ななきゃいけない道理なんて無い!!」
男「駄目だ……この世界の住人の攻撃は一切効かないって最初に言われたろ……」
妹「あ……そっか……」
妹「……それじゃあ魔王討伐はやめて、この世界で一緒に生きてこうよ」
男「……」
妹「魔王をも相手としない私達ならこの世界における脅威なんて無い」
妹「この世界の住人たちのことなんて知るもんか!私には知らない大勢の人たちよりお兄ちゃんの方が大事」
男「……母さん達が悲しむぞ」
妹「お母さん達には悪いけど……」
妹「……でも、私たちは生きてる。それが私にとって一番大事」
男「……そっか」
妹「……なんてね!えいっ!!」
男「!! 転移魔法!!?おいっ!!どういうつもりだ!!」
妹「お兄ちゃんは帰って、お母さん達に上手く言っといて!!」
男「おいっ!!今すぐキャンセルしろ!!こんなの絶対駄目だ!!」
妹「お兄ちゃんも今まで似たようなことしてきたでしょ!おあいこおあいこ!」
男「ふざけんな!!おいっ!!」
妹「じゃ、お母さん達によろしくっ!じゃーね!!」
男「おいっ!!おいっ!!待てよぉー!!!」
男「……ここは」
ドガアアアアン……
男「ま、魔王城が……!」
男「!! 世界が……歪んでく……!」
男「おいっ!!ふざけんな!!このまま元の世界に戻るわけにはいかないんだよ!!」
男「待てっ……待てったら……!」
男「俺一人戻ったって何の意味も無いんだよっ!!」
男「妹……妹おおおおお!!!」
━━
━━━
━━━━
男「……」
男「……俺の……部屋だっ…………!」
男「くそぉっ……くそぉっ!!」
男「ふざけやがって……!」
男「うあああああっ……!!」
男「お前がいないとっ……」
男「俺はっ……!俺はっ……!!」
妹「私がいないとどうなのさ?」
男「!!」
妹「で、私がいないとどうなのさ?」
男「お、お前……何で……」
妹「忘れちゃったの?王様からもらったアイテム」
男「あ……一回だけダメージを無効にしてくれるやつか!!」
妹「へへー。なんせ『だいじなもの』だからね!イベントにも効くと思ったよ!」
男「だ……だったら何でその計画を教えてくれなかったんだ!!」
妹「ちょっとしたイタズラだよ!」
男「お……お前なぁ!!」
妹「お兄ちゃんも人のこと責められたもんじゃないね!妹のピンチにこんな簡単な解決策も思いつかないなんて!」
男「ぐっ……」
妹「ま、私の機転に助けられたね!感謝しな!」
男「ぐうっ……!」
妹「で、私がいないと何だって?ほらほらちゃんと最後まで言いなよ!」
男「く……う、うるさい!!うるさい黙れ!!」
妹「お兄ちゃんは私がいないと駄目なんだよねー!まったく、しょうがないなぁ!!」
男「そ、そんなこと誰も言ってないだろ!」
妹「またまたー」
妹「……ところで携帯見た?」
男「え?あ、そういや見当たらないな」
妹「お兄ちゃんのは見つかっちゃったか。私のはマナーモードだったから見つからなかったみたい」
妹「これ、見て」
男「……!」
妹「……こっちの世界でも一ヶ月、経ってるみたい」
男「ど、どうしよう……」
妹「お母さん達、怒ってるだろうねー……」
男「……そんなレベルじゃないだろうな」
妹「何て言い訳しようか……」
男「ど……どうしような……」
妹「まさか異世界に行ってたなんて信じてもらえないだろうしね……」
男「当然だ……」
妹「ま、とりあえず心配してるだろうし、さっさと顔見せに行こうか……」
男「気が重い……」
妹「行こう!ホントの最終決戦へ!!」
男「はぁ……」
fin
一応前vipで書いたのの書き直しです
vipだとすぐ落ちちゃってさっさとまとめなきゃいけないから改めてこっちで書かせていただきました
知ってる人はまずいないと思いますが一応(´・ω・`)
しかし妄想垂れ流すって楽しーですねーwww
おつ
駆け足気味だったけど面白かったよ
面白かった乙
もうちょっと長引かせても良かったんよ
乙
後日談とか書いてもいいのよ?というか書けください
結構前に書いたやつだよね?
まとめられたやつ読んだことあるよ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません