勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」 (438)

城下町

勇者「……そこの幾億の星よりも美しく輝く彼女。今日という出会いを祝福しましょうか」

女性「はい?」

勇者「俺とお茶しませんか。いい店、知ってるんですよ」

女性「いえ、結構です」

勇者「いいんですか? こんなチャンス、滅多にないですよ?」

女性「ど、どういう意味ですか?」

勇者「俺、勇者なんですよ」

女性「はぁ?」

勇者「さ、行きましょう。損はさせませんから」グイッ

女性「ちょ……」

勇者「少し話せば俺が如何に凄い男かってことがよくわか――」

男性「……よぉ、あんちゃん。オレの女になにかようか?」ポキポキ

女性「あ! た、たすけて! この人が無理やり……」

勇者「ちっ……男いんのかよぉ……」

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路地裏

勇者「う……っ……」

男性「けっ。他人様の女に手を出すとか、最低だな」

女性「行きましょう」

男性「そうだな。……あばよ」

勇者「おう……」

勇者「いてぇ……口切ったな……」

勇者「はぁ……勇者って女にモテるんじゃないのかよぉ……」

犬「クゥーン」

勇者「んだよ。どっかいけよ」

犬「クゥーン」ペロペロ

勇者「犬畜生に優しくなんてされたくねえっての」

兵士長「――よっ。なにしてんだ、こんなところで」

勇者「あ、先輩。うーっす。ちょっとここで息抜きしてたんっすよ」

兵士長「ハハっ。どーせ女のケツおっかけて、野良犬に慰めてもらってたんだろ。お前らしくていいな」

犬「クゥーン」

勇者「あー、どっかいけ。しっしっ」

犬「……」

勇者「なんだよ、腹でも減ってんのか。ほら、これやるから、どっかいけ」

犬「ワンッ」パクッ

勇者「それ食ったら、飢え死にしろよー」

犬「……」タタタッ

勇者「お礼もいわねえのか。なんて犬だ」

兵士長「よかったなぁ。ありゃ、雌犬だぜ。いい彼女できたじゃねえか」

勇者「やめてくださいよ。で、なんです?」

兵士長「お前が勇者になって初めての仕事だ」

勇者「マジっすか」

兵士長「陛下が直々に仕事を言い渡してくれる。さっさと行くぞ」

勇者「うぃーっす」

兵士長「その前に服についてるゴミは落としていけよ」

城内 謁見の間

王「来たか」

勇者「お待たせして申し訳ありません、陛下」

王「よい。早速だが勇者であるお前に頼みたいことがある」

勇者「はっ」

王「ここより東に小さな村がある。お前にはそこへ出向いてもらいたい」

勇者「分かりました」

衛兵「そこで奇怪な事件が起こっているらしい。ここからも近い場所で起こっていることゆえ、早急な調査が必要だと判断された」

勇者「事件ですか」

王「うむ。なんでも家畜が凶暴化し、村人を連日のように襲っているようだ。怪我人も多数でていると報告を受けている」

勇者「なるほど」

王「頼むぞ」

勇者「はっ。お任せください」

王「ああ、それと勇者よ。この者の情報が入ればすぐに知らせてくれ。どんなに些細なことでも構わん」ペラッ

勇者「(手配書か……。何度か見たことあるな……)」

通路

兵士長「よぉ。今日から正式に勇者様だな」

勇者「先輩。いいんすか、こんなところでサボってて」

兵士長「勇者に任命された途端、ナンパに努めてたお前に言われたくないね」

勇者「東の村で起こってる事件について調査してこいっていわれたっすよ」

兵士長「そうか。ま、ガンバレよ。勇者さまぁ」

勇者「しっかし、誰か一人くらい旅の仲間とか用意してくれないんすかね? 俺、寂しいっすよ」

兵士長「アホか。なんでもできる男。それが勇者だろうが。甘えるな」

勇者「でもでもぉ。先輩だって、今の嫁さんは昔の仲間なんでしょ? 不公平極まりないっすよぉ」

兵士長「ありゃぁ、たまたま運が良かっただけだよ」

勇者「ちょー美人だし、毎晩よろしくなってんでしょぉ? マジ、たまんねえっすよ」

兵士長「オマエな。俺の妻で変な想像するんじゃねえよ」

勇者「いいじゃないっすかぁ!!! 変な想像ぐらいさせてくれてもぉ!!! 俺!! 先輩にモテるから勇者になれっていわれて……勇者になったのに……」

兵士長「お、おい」

勇者「いっぱいがんばったのにぃ……ぜんぜん、モテないっすもん……ぐすっ……モテてぇ……モテてぇっすよ……。先輩みたいに美人な彼女ほしぃっす……」

兵士長「あー。わぁーったよぉ。それじゃあ……」

勇者「誰か紹介してくれるっすか!?」

兵士長「ウチの娘はどうだ? いいぞー、旅のお供にはもってこいの体をしてる」

勇者「……先輩の娘さんって、下手な男よりも男じゃないっすか」

兵士長「はぁ……。そうなんだよなぁ。並大抵の男じゃ歯がたたねえ……。いや、お前な俺の娘になんてこというんだ」

勇者「しかも顔は先輩にそっくりだし。ダメっすよ。デートしてても先輩の顔ばっかりが浮かんできそうで」

兵士長「まぁ、俺もお前みたいな軟派な野郎に愛娘を預けるわけにはいかねえな。お前が殺されるかもしれねえし」

勇者「なんか、こういないっすか!? 守ってあげたくなるような清楚で可憐な女の子!!」

兵士長「教会にいるシスターでも連れてけよ」

勇者「……それ、いいっすね。毎晩、毛布の中で体が穢れていくことに懺悔しちゃうわけっすね」

兵士長「冗談はさておきだ」ゴソゴソ

勇者「冗談っすか?」

兵士長「ここに言って来い。お前好みの女戦士がいるかはわからんがな」

勇者「傭兵所っすか……。筋肉ムキムキの屈強なマッチョガールしかいないんじゃ……」

兵士長「つべこべ言うな。仲間を見つけたらさっさと出発しろよ。あまりにモタモタしてると勇者の称号が剥奪されるからな」

傭兵所

勇者「……すみません」

受付嬢「はい。いらっしゃいませ」

勇者「君をテイクアウトできますか?」

受付嬢「傭兵以外できません」

勇者「そんなこといわず」

受付嬢「どのような用件でしょうか? 冷やかしなら出て行ってくださいね」

勇者「……ええと、俺、一応勇者なんっすけど」

受付嬢「まぁ……。証明できるものは?」

勇者「えーと……。これっす」ペラッ

受付嬢「確かに……。国王陛下の勅命状……」

勇者「お……。――では、君と永遠の愛を目指す旅に行きたいのですが」キリッ

受付嬢「勇者様であればどのような傭兵でも喜んでついていくと思いますよ。よかったですね」

勇者「では、君もそうなんですね? なるほど。これも運命ですよ。さぁ、俺と旅立ちましょう」

受付嬢「ええと……。ここでもっとも実績のある傭兵は……このかたですけど、会ってみますか?」

勇者「おっさんじゃないっすか。……あの、女性はいないっすか? 美人でセクシーな女戦士所望」

受付嬢「女性ですか……。ええと……」ペラッ

勇者「やっぱり、旅になるなら女の子のほうがいいじゃないっすか」

「あたしでよければ、ご一緒させてくれない?」

受付嬢「え……」

勇者「む!? お姉様の気配――」バッ!!

戦士「あらぁ。素敵な坊やじゃない。ふふ、可愛い。あたし、これでも結構強いのよ。よろしくね」

勇者「……」

受付嬢「この方にしますか?」

勇者「い、いや、女性がいいんすけど」

受付嬢「でも、性別が女性である傭兵は登録されておりませんで……」

戦士「ちょうど仕事が終わったばかりで疲れてるけどぉ……うふふ……。坊やのためならなんでもして、あ、げ、るんっ」

勇者「……いえ。俺、勇者なんで一人で大丈夫です。それでは」

戦士「え!? ゆ、勇者様ぁ!?きゃぁー!! それなら是非とも力になりたいわぁん!! つれていってぇん!!」

勇者「申し訳ありません。間に合ってます。失礼しました」テテテッ

城下町

勇者「……一人で行くか」

女性「……」

勇者「あ、そこの美しい人」

女性「はい?」

勇者「俺とちょっとスリリングな旅をしませんか。あー、貴女に傷ひとつつけません。絶対に守ってみせま――」

男性「ごめん、待った?」

女性「ううん。今来たところ」

男性「よかった。それじゃ、いこっか」

女性「うん」ギュッ

勇者「……」

勇者「やっぱり一人で行くか……」

猫「にゃぁ……」

勇者「猫畜生の慰めはいらねえよ。しっしっ」

猫「なぁー……」

墓地

勇者「母さん。俺、勇者になったのに全然モテないんだ。この世の女の目は節穴だな。そう思うだろ?」

勇者「親父からもなんとか言ってくれよ。勇者って王国一の兵士ってことなのにさぁ、モテないとかありえなくねぇ?」

勇者「……」

勇者「虚しい。なにやってんだ、俺」

勇者「さ、いこ」

シスター「うーんしょ……」ヨロヨロ

勇者「む。ヘイヘイ」

シスター「え?」

勇者「水を運んでるのか。これは重そうだね。俺が持ってあげるよ」

シスター「いえ。これは私の仕事ですので。見ず知らずの人にさせてしまうと神父様に怒られてしまいますので」

勇者「固いこといわずに。俺の優しさに甘えればいいじゃないか」

シスター「結構です!」

勇者「……そ、そう?」

シスター「はい」

城下町

勇者「しけた町だぜぇ!!! ペッ!!」

門兵「おい。お前は勇者なんだからそういうことをいうな」

勇者「うるせぇ!!! 俺は勇者なんだぞぉ!!!」

門兵「……泣いてるのか? 相談ぐらいなら聞いてやれるが」

勇者「同情なんていらねーっす!!!! ばかぁー!!!」ダダダッ

門兵「……勇者って辛いのかなぁ」

勇者「(くそぉ!! こんな町なんざさっさと見切りをつけてやるぅ!!)」

勇者「……まてよ」

勇者「(そうだ。十数年間、手応えのかけらもなかったこんな町は捨て置いていいよなぁ)」

勇者「ふっふっふっふ。そうだ。世界は広い!!! こんなチンケな町で最愛の人を求めたのがいけなかったんだ!!!」

門兵「おい。聞こえてるぞ。この町を貶すな」

勇者「さぁ、大いなる一歩を今こそ踏み出そうじゃないか!!!」

勇者「まだ見ぬ、マイスウィートハニーを求めて!! うぇっへっへっへっへ」

門兵「……あいつ、モテないんだろうなぁ」

はよ

東の村

勇者「……ここか。ここに俺の伴侶が」

農夫「だ、誰だ、あんた……」

勇者「国王陛下の勅命を受け、馳せ参じた者です」

農夫「おぉ……。つ、ついに国王様が……!! で、では、もしかして……あなたは……」

勇者「勇者です」

農夫「おぉぉ!! で、では、こちらに!!! 村長に是非あってください!!」

勇者「分かりました」

農夫「おぉーい!!! 勇者様だ!! 勇者様がきてくださったぞー!!!」

「ほんとかぁ?」

「おぉ、ありがたや、ありがたや」

勇者「……」

農夫「な、なにか?」

勇者「ご高齢のかたばかりですね」

農夫「はい。若い者は殆ど大きな町へ行ってしまって……。この有様です」

村長の家

村長「おぉ……こんな辺鄙な村まで勇者様に来ていただけるとは……。国王様に感謝しなければ……」

農夫「全くです。もう足を向けて眠れねえ」

勇者「……」

勇者「(女の匂いがひとっつもしねぇ!!)」

村長「あの、よろしいでしょうか?」

勇者「あ、はい。なんでも家畜が凶暴化しているとか……」

村長「そうなんです……。数週間前、牛や馬が急に大暴れをしましてなぁ……。村の人間も大怪我をしてしまい、仕事もままならない状態で……」

勇者「今の状態は?」

村長「それが人間を見るととても興奮するようで……」

勇者「つまり、人間が近づかなければ大人しいと?」

村長「はい。そうなのです。ですが……」

勇者「家畜に近づけないのは農村として致命的ですね」

村長「獣医も匙を投げてしまっていまして。凶暴化した原因も分からぬままなのです……。勇者様、お願いします。力を貸してください」

勇者「獣医も匙を投げたのですか。それはまいった。その他の手を考えてなかったのに……」

村長「えぇ……?」

勇者「てっきり病気の類だろうと高をくくっていたものですが」

農夫「勇者様。獣医も近づけないんですよ。なので病気かどうかも……」

勇者「なるほど。では、家畜を一匹捕まえて獣医に診せれば解決と」

村長「お、おそらくは……」

勇者「分かりました。俺に任せてください」

農夫「おぉ!! 流石勇者様!!」

村長「お願いできますか」

勇者「これでも城下町の種馬と呼ばれているんでね。馬や牛の扱いならお手のものです」

農夫「ほほぉ。勇者様ともなると女性も放ってはおかないでしょうねぇ」

村長「ああ。このような精悍な人だ。様々な女性に好意を寄せられているのだろう」

勇者「案内してもらえますか?」

農夫「ええ、ええ。勿論です。私が案内させてもらいます」

村長「お願いします。勇者様」

勇者「はい」

馬小屋

農夫「これが小屋の鍵です」

勇者「はい」

農夫「気をつけてください。あの小屋には今現在9頭の馬が……」

勇者「問題ないですよ。勇者に任せてください」

農夫「は、はい!!」

勇者「馬なんぞ、勇者の敵ではない」

農夫「すばらしい……」

勇者「……」

勇者「(女の子がいないんじゃ、やる気おきねーなぁ……)」ガチャ

勇者「さて、どいつを生け捕りにしてやろうか――」

馬「……」ザッザッザッ

勇者「……おや?」

馬「――ヒヒーン!!!!!」ドドドドドッ!!!!!

勇者「なぁぁ!?」

村長の家

勇者「ぐ……いてぇ……」

農夫「大丈夫ですか?」

勇者「大丈夫じゃねぇっすよ!!! みてわかんないっすかぁ!?」

農夫「す、すみません」

村長「勇者様でもダメか……」

勇者「あんなでかい馬なんて聞いてないっすよぉ!!! もっと、こう、ポニーみたいな可愛いやつかと!!!」

農夫「色々と運ぶものも多いですから、できるだけ大きい馬じゃないとダメなんでよ」

勇者「あぁー!! ちょーいてぇー!!! アバラ全部いっちゃったなぁー!!! コレぇ!!!」

村長「馬はどうなった?」

農夫「俺たちが離れたら自分から小屋の中へ戻りましたよ。隙を見て、鍵もかけておきました」

村長「そうかぁ……。あの、勇者様……」

勇者「なんすかぁ?」

村長「もう一度……お願いできますか……?」

勇者「あんなの無理っす!! もう自由にさせればいいんじゃないっすか!? 自然に帰りたがってるだけっすよ!! 人間のエゴが招いた悲劇っすね!! 間違いない!!!」

村長「うむぅ……。幾ら勇者様でもあやつには勝てんか……」

農夫「あんなに大人しかったのに……どうしたんでしょうねぇ……」

勇者「家畜扱いされるのに嫌気がさしたんすよ」

村長「むぅ……」

村娘「おじいちゃん」

村長「おお。どうした?」

村娘「勇者様が怪我をしたってきいて……」

勇者「……!」

村長「あぁ、そうなんだ」

村娘「あの、勇者様、大丈夫ですか?」

勇者「ええ。この通り、ピンピンしてます」

村娘「よかったぁ……。厚かましいことは重々承知していますが、勇者様、もう一度……その……」

村長「これこれ。勇者様はもう……」

勇者「顔をあげてください。必ず、貴女のためにこの村を救ってみせますよ」キリッ

村娘「勇者様っ! あ、ありがとうございます!!」

農夫「いいんですか!?」

勇者「は? 良いも何も弱き者を救済してこその勇者。勇者の称号は伊達じゃないんですよ」

村娘「素敵ですぅ」

勇者「ところで」

村娘「は、はい」

勇者「この問題を無事に解決できたら、俺と一緒に食事でもどうですか?」

村娘「え? は、はい。よろこんで」

勇者「ふふふふ……はははは……フフハハハハハ!!!!」

村娘「な、なにか?」

勇者「村長さん、いえ、お爺様!!!」

村長「は、はい?」

勇者「1日だけ時間をください。必ずや、この村の危機を救います」

村長「勇者様……!!!」

村娘「よろしくおねがいします!!」

勇者「ふっ。君の美しさに乾杯」

なんか最後まで報われなさそうな勇者だなwwwwwww
こういう煩悩丸出しだとモテたくてもモテない

古き良き煩悩全開モテない主人公だな
ただし魔物や人外には好かれる

馬小屋

勇者「……」

勇者「(まさか、村長にあんなに可愛い孫がいるなんてなぁ……。これはやるっきゃねえ……)」

勇者「(田舎っ娘は惚れやすいって恋愛マニュアルに書いてたし、ここで俺がカッコイイところを見せれば……)」


勇者『――これでこの村も救われた』

村娘『勇者様……』

勇者『結婚しよう』

村娘『だいてっ!』


勇者「……よしっ。いける! いけるぞ、これはぁ!!!」

勇者「ハーッハッハッハッハ!!! もらったぁ!!!! これはいける!!! いけるぞぉ!!!!」

勇者「でぇっへっへっへっへっへ……」


村長「どうやら妙案が浮かんだようだな」

農夫「頼もしいですなぁ……」

村娘「勇者様、がんばってください!」

横島か

>>21でGS美神の横島が浮かんだ
あいつと考えればなんとか行けそうな気がするわwwwwww

勇者「うし。さっさとケリつけてハネムーンといこうじゃねえか」

勇者「いくぜぇ!!!」ガチャ

馬「……」ザッザッザッ

勇者「ふふん。馬畜生。さっきの俺とは思わないことだ」

馬「……」ザッザッザッ

勇者「今の俺には勝利の女神がついてんだからなぁ」

馬「……」ブルルッ

勇者「てめぇを生け捕りにしてお医者さんに診せる!!! んで、注射とかされて無様に嘶け!!!」

馬「……」

勇者「家畜風情が人間様に勝てると思うなよ!!!」

馬「――ヒヒーン!!!!」ドドドドドドッ!!!!

勇者「ハッハー!!! 突進しかできねえのかよぉ!! 所詮は馬畜生だな!!!」

「ヒヒーン!!!!」

「ヒヒーン!!!!!」

勇者「おいおい!! 男ならタイマンだろ!? 全員とか卑怯じゃねぇ!?」

村長「あ、危ない!!!」

村娘「勇者さまー!!!」


馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドドッ!!!!

勇者「あっぶねぇ!!!」バッ!!!

勇者「――にゃろぉ……!! いい加減に……!!!」

「ヒヒーン!!!!」ドガッ!!!

勇者「いってぇ!?」

勇者「いたいっす!!! 背骨が……!! 背骨蹴られた!!!」


農夫「ダメだ……」

村長「多勢に無勢か……」

村娘「そ、そんな……勇者さまぁ……」


馬「ヒヒーン!!!」ガブッ!!!

勇者「いってぇー!!! それはダメ!!! 噛み付くなら人参っす!!! 人参!!!」

馬「ヒヒーン!!!」ドガッ!!!!

馬「……」ザッザッザッ

勇者「ぐっ……勇者に任命されて、初仕事がこれか……。全く、割りにあわねえっす……」

馬「……」ブルルッ

勇者「(ここで死ぬのか……。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られろなんていうけど……馬が邪魔するんじゃなぁ……)」

村娘「勇者様!!! もういいです!!」タタタッ

勇者「え……?」

村長「行くな!! 危ないぞ!!」

村娘「勇者様!! お戻りになって――」

馬「ヒヒーン!!!!!」ドドドドドドッ

村娘「うそ……」

村長「あぁぁぁ!!! にげろぉー!!!!」

農夫「あぶねえ!!!」

馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドッ!!!!!

村娘「うっ……」

勇者「――させねぇっす!!!! その子に手をだすなぁぁぁ!!!!」バッ!!!

馬「……!!」

勇者「あばれんじゃねぇっすぅ!!!!」グイッ!!!!

村娘「う、うそ……」

農夫「す、すげぇ……。飛び乗った……」

村長「い、今のうちだ!! こっちにこい!!」

村娘「う、うん!!」

馬「ヒヒーン!!!!」

勇者「おぉ!? この野郎!!! 大人しくしやがれぇ……!!!」グググッ

馬「……!!」

「ヒヒヒーン!!!!」ドドドドッ

勇者「なんだぁ!? やんのかぁ!?」

馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドッ!!!!!

勇者「おぉお!? とまれぇぇ……!!! とまってぇぇ……!!!」ギュゥゥゥ

農夫「手綱もなしに乗りこなすなんて……」

村娘「流石は勇者様……。でも、あのままだと村の外へ出て行ってしまう……」

草原

馬「ヒヒーン!!!!」ドドドドドッ!!!!

勇者「どこまでいく気だぁ……もうおろしてぇ……」ギュゥゥ

馬「ヒヒーン!!!!」

勇者「この……もうかんべんして……!!!」

馬「ヒヒーン!!!!」

ガッ!

勇者「え……!?」

馬「ヒッ……」ズサァァ!!!

勇者「うわぁああ!!!!」ズサァァァ

勇者「なんすかぁ!!! 降ろせっていったけどこんな乱暴な……!!!」

馬「バヒ……」

勇者「ふん。まぁ、いいか。大人しくなったし。これで獣医に診せれば完璧だな」

馬「……」ヨロッ

勇者「……なんだ? どっか痛めたのか?」

馬「……」ガクッ

勇者「……」

勇者「(足をやってるみたいだな……)」

馬「ヒヒーン……」

勇者「ハッハー!! 馬畜生め!! 天罰だ、バーカ!! バーカ!! ワハハハ」

馬「……」ヨロッ

勇者「さてと、獣医を呼んでくるか。いいか。ここで大人しく待ってろよ」

馬「……」ガクッ

勇者「いやー、俺の嫁も決まったも同然だなぁ。愉快愉快!」

馬「……」

勇者「婚前交渉ぐらいは別にいいよな……にゅふふふ……」

「グルルルル……」

勇者「……!」

狼「グルルルル……」

勇者「なんだよぉ……。馬の次は狼かぁ? もう獣はいいよ」

村長の家

村長「……あれから随分と経つな」

農夫「な、なにかあったんでしょうか」

村娘「おじいちゃん。探しにいったほうがいいよ」

村長「……」

農夫「そうだ!! もしかしたら勇者様はあいつを捕らえてくれてるかもしれませんし」

村娘「怪我をして動けないのかも!! もしそうなら!!」

村長「うむ……。そうだな。我々だけが座視しているわけにもいかんか」

農夫「そうです!! 探しにいきましょう!!」

村長「……村の者をできるだけ集めてくれるか?」

村娘「う、うん!!」

「その必要はねえ!!」

農夫「お、お前たち……」

「みんなで勇者様を探しに行こう!!」

村長「くれぐれも気をつけろ。外には野生の狼もいるからな」

草原

農夫「勇者さまー!!」

村娘「勇者さまぁー!!! どこですかー!!!」

「本当にこっちにきたのか?」

「それは間違いねえよ!! 俺、見てたし!!」

「でもよぉ……」

農夫「お、おい!! 向こうだ!! 向こうにいるぞ!!!」

村娘「え!? 勇者様!?」

馬「……」ペロペロ

勇者「やめろぉ……くせぇ舌で……なめんなぁ……」

村娘「ゆ、勇者様……!?」

農夫「な、なんですか……その怪我……!?」

勇者「あぁ……? ちょっと落馬して……」

村娘「落馬でそんな傷……」

勇者「とりあえず……運んでくれるっすか……もう死にそうなんで……マジで……」

村娘「た、立てますか?」

勇者「はっはっはっは。いやぁー。ちょっと無理なんで、貴女の手を貸してもらえれば嬉しいです。はい」

村娘「では」

勇者「うぅーん……あたたかい……」ギュッ

村娘「え……と……」

勇者「これが女の子の温もりかぁ……でへへへへ……」スリスリ

村娘「勇者様……あの……」

農夫「勇者様は運ぶとして、こいつはどうする……?」

馬「……」

「足、怪我してるなぁ……」

「こいつは何かに乗せないと無理だな……」

農夫「……ここに置いておくか」

「それがいい。病気にかかってるやつだしなぁ……。このまま狼のエサにさせたほうが……」

勇者「ちょっと……。そりゃ、ないっすよ……」

農夫「しかし、勇者様。もうこいつは足をやられてますし……」

勇者「折角、俺が命がけで生け捕りにしたのに……!! ここに放っていくなんて!!! あんまりっす!!!」

農夫「ですが、運ぶ方法がありません。村の家畜たちは凶暴化しているし……」

勇者「ダメ!! 絶対に連れてかえる!!!」

村娘「勇者様……」

勇者「(じゃないとまた暴れ馬を捕まえなきゃならねーじゃん!!! そんなことあってたまるかぁ!!!!)」

農夫「どうやって運ぶのですか?」

勇者「国王陛下に頼んで馬車かなんか用意してもらえばいいっすよ。俺が直筆の手紙書くんで」

農夫「それを届けるのはいいのですが……。その間、こいつは……」

馬「……」

勇者「ここに置いておくしかないんじゃないっすかね」

「狼に狙われちゃいますよ」

「そうですよぉ」

勇者「あぁぁあ!!! うっせぇなぁ!!! じゃあ、俺が残るっす!!! それでいいっすね!? ついでに獣医もつれてきて!!!」

農夫「ゆ、勇者様……」

勇者「この馬は俺が守る!! それで解決!!! さっさと国王陛下のところに行ってきてくださいっす!!!」 

勇者「うぅ……」ヨロッ

村娘「勇者様、そのような怪我では……!!」

勇者「ふっ。貴女に触れたことで血もとまりました。これも愛のなせることですよ」

村娘「はぁ……」

農夫「勇者様、いいのですか? それではあなたの治療も遅れてしまうことに……」

勇者「ちょっと待ってくださいっす。今、手紙かくんで……。あ、紙あります?」

「あぁ、えっと……えっと……白い布なら……」

勇者「それでいいっす」

「しかし、書くものが」

勇者「我が血で書く」キリッ

「か、かっこよすぎる……!!」

勇者「ふんふーん」カキカキ

勇者「……」チラッ

村娘「……」

勇者「(参ったなぁ……この子、完全にラブってんじゃん……うひょー!!!)」

農夫「では、傷薬と包帯は置いていきます」

勇者「うぃーっす」

農夫「ほ、本当にいいんですね?」

勇者「しつこい」

農夫「わ、分かりました。では、待っていてください」

勇者「お願いします」

勇者「ふぃー……」

馬「……」

勇者「……なんだぁ、馬畜生め。てめぇのおかげでこっちは死にかけてんだぞぉ。わかってんのかぁ?」

馬「……」

勇者「ふんっ」

馬「……」ペロペロ

勇者「やめろって。口くせーんだよ。歯ぐらい磨け」ググッ

村娘「あ、あの……勇者様……。傷の手当てをさせてください」

勇者「(お。キタキタ。お約束だな……)」

村娘「包帯、きつくないですか?」

勇者「この胸の苦しみに比べれば、どうってことないです」

村娘「胸にも傷が……!?」

勇者「いえ、心の病です」

村娘「そ、そうですか」

勇者「ありがとうございます。それより貴女も戻ったほうがいい。ここは狼が出ますから」

村娘「わかっています。勇者様、この子を助けてくれてありがとうございます」

勇者「え?」

村娘「実は……。私にとってこの子は、とても大事な馬なんです……。ううん、私にとっては家族も同然なんです」

馬「……」

勇者「そうでしたか」

村娘「本当は殺処分も検討されていました。このまま解決できないなら……全ての家畜は殺してしまおうって……」

勇者「普通はそうするでしょね」

村娘「そんなこと……私は許せなかったんです……。だから、最後のチャンスをおじいちゃんにお願いしたんです」

勇者「それで国王陛下へ陳情を……」

村娘「勇者様。本当に、本当にありがとうございます」

勇者「お礼なんて必要ないですよ」

村娘「そ、そんな!! 寧ろこんな言葉だけでは……!!」

勇者「いいんですよ。貴女の大切なものを守ることができた。それだけで、俺は十分です」

村娘「ゆ、勇者様……」

勇者「俺からもお礼を言いたい」

村娘「え?」

勇者「貴女を守らせてくれて、ありがとう」

村娘「な……なにを……そんな……」モジモジ

勇者「……」

勇者「(決まった……。決まりすぎてヤバい……。というか、これ……)」

村娘「そ、そんなこと……私が感謝しなければいけないのに……私……私……」

勇者「(キスできるんじゃねえ……!? いや!! この雰囲気なら……!!!!)」

村娘「勇者、様……?」

勇者「……」

勇者『ふっ。申し訳ない。貴女の美しさに少し立ちくらみが……』

村娘『も、もう……からかわないでください……』

勇者『からかってなんかいません。俺は、本心しか口にしない男なんで』

村娘『ゆ、勇者様……』

勇者『……いいかい?』

村娘『ダ、ダメ……。わ、私、初めてなんです……。なのに……こんな外でなんて……』

勇者『はははは。外だから開放的になれるんじゃないですか。バカだなぁ』

村娘『勇者様……わ、わかりました……でも……あの……』

勇者『なんだい?』

村娘『や、やさしく……してください……ね?』

勇者『そんなの……無理にきまってるだろぉ!!!! でひゃっひゃひゃひゃひゃ!!!!』ガバッ!!!!

村娘『あっ……そんな……いきなり……あんっ、やめて……』

勇者『そんなこといいながら、こっちは体は嫌がってませんがぁ? 全く、顔に似合わず……はしたないですなぁ……』

村娘『ち、ちがう……んです……わ、わたし……』

勇者『まぁ、俺はそんなスケベな貴女もだーいすきですけどねぇ。にゅふふふ。さぁ、大草原の真ん中で!! 生命の神秘を体験しようじゃないですかぁ!!!』

こういうノリの主人公は好きだ

勇者「――はっ!?」

医者「気がつきましたか?」

勇者「え? あれ……?」

医者「血を流しすぎたようですね。私が到着する直前に倒れられたみたいです」

勇者「あぁ、そっすか。で、あんたは?」

村娘「この方が獣医です。村の動物たちを診てくれているんです」

勇者「ふぅーん。そっすか」

馬「……」ペロペロ

医者「この子も捻挫しているだけで大した怪我ではようです。これならすぐに元気になるはずだ」

村娘「よかったぁ。それで、どうして凶暴化したのか、わかりそう?」

医者「血液を採取して検査してみないとな。だが、この子はとても落ちついているから治まっている可能性もあるな。足を痛めた所為かもしれないが……」

村娘「そう……。やっぱり貴方でもここでは無理なんだ」

医者「仕方ないよ。でも、こうして調べられるのは勇者様のおかげだ。これで全ての動物を助けられるかもしれないじゃないか」

村娘「うん。そうだね。勇者様に感謝しないと」

勇者「……」

>>41
医者「この子も捻挫しているだけで大した怪我ではようです。これならすぐに元気になるはずだ」

医者「この子も捻挫しているだけで大した怪我ではないようです。これならすぐに元気になるはずだ」

よし追いついた

医者「それにしても勇者様が酷い怪我だ。応急処置を施したとはいえ、このままでは危ない」

村娘「でも、ここにいたら狼に襲われるかもしれないし……」

医者「そうだが……。この子と勇者様を置いていくわけにも……」

村娘「勇者様は大丈夫だっていってたけど」

医者「え? そうなのですか?」

勇者「え? あ、あぁ、そうですけど?」

村娘「ここは勇者様を信じよう」

医者「でも……」

村娘「貴方が怪我したら……どうするの……?」

医者「……」

村娘「貴方しか動物は救えないんだよ?」

勇者「あの」

村娘「はい、なんですか?」

勇者「そのお医者さんと貴女のご関係は?」

村娘「あ、その……お、幼馴染なんです……彼とは……」モジモジ

勇者「なーんだ。そっすか。なーんだ。ふぅー。びっくりした。俺はてっきり恋人かなんかだと」

医者「違いますよ」

勇者「ですよねー」

医者「今度、結婚するんです」

勇者「……」

医者「な?」

村娘「……うんっ」

勇者「……あ、そっすか。へぇー。めでたいっすねー。うん。なら、あれだ。ここにいちゃだめだ。おおかみにおそわれたら、ほら、いちだいじじゃん」

医者「よ、よろしいのですか?」

勇者「うん。あなたはかのじょをまもってあげなさい。わたしはこのうまをまもるから」

医者「……ありがとうございます。感謝してもし足りません」

勇者「いいってことよ。おなじほしにうまれたもの、みなきょうだい」

村娘「行きましょう」

医者「そうだな。血液も採取したし、早速調べてみないと。勇者様!!! 本当に感謝しています!!」

村娘「その子のこと、もう少しだけよろしくお願いします!!」

いい奴じゃん
そこでもうやだおうち帰るーにならんとこが

勇者「……」

馬「……」ペロペロ

勇者「……」

馬「ヒヒーン……」

勇者「フフフ……ハハハハ……アーッハッハッハッハッハ!!!!!」

馬「……!?」ビクッ

勇者「うわぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」

馬「ヒーン……」ペロペロ

勇者「なんでじゃぁああああああ!!!!! 絶対惚れたじゃん!!! あの子、俺に惚れてたジャン!!!!」

勇者「なんで!! なんで!!! なんで!!!」ダンッ!!!ダンッ!!!!ダンッ!!!!

勇者「寝取られたぁぁぁああああ!!!!! うわぁぁぁあああ!!!!!!」

狼「グルルルル……」

「グルル……!!!」

勇者「……なんだぁ? 寄って来るのは獣だけかぁ!? こいやぁああ!!!!! 狼畜生なんぞ!!! てきじゃねええええ!!!!!」シャキン!!

馬「ヒヒーンっ♪」

農夫「こ、こっちです!!」

兵士長「分かった」

兵士長「(まさか、初任務でこのような血文字による手紙をよこすとはな……。俺の目に狂いはなかったな。あいつこそ、真の勇者となる器だ……)」

兵士「あ、あれではないですか!?」

兵士長「いたか!?」

勇者「うわぁぁあ!!! うわぁああああ!!!!」ブンッブンッ

兵士長「な、なんだ……。随分、荒れてるなぁ……」

勇者「どうしたぁ!!! 狼どもぉ!!! その程度じゃ俺の怒りは収まらんぞぉ!!!!!」

狼「クゥーン……」

農夫「す、すごい!! 狼が完全に怯えている……!!」

兵士「勇者の称号はやはり伊達ではないのですね」

兵士長「その通りだ。どこの世界に馬一頭のためにあそこまでやれる男がいる?」

農夫「あの方こそ、真の勇者様……」

兵士長「(俺も鼻が高いぜ……。女のケツを追っかけてるだけじゃねえんだな)」

勇者「うおぉぉおおおおお!!!!!!! どうしたぁぁ!!!! かかってこないなら、こっちからいくぞぉぉぉ!!!!」

翌日 村長の家

村長「この度のことは一生忘れません。村を救っていただき、ありがとうございます」

兵士長「何を仰いますか。まだ解決したわけではないでしょう? どうして家畜が凶暴化したのか判明していません」

村長「そのことなのですが……」

医者「先ほど、結果が出ました」

兵士長「是非、教えてほしい」

医者「まだ詳しいことはわかりませんが、何かを投与されたのは間違いなさそうです」

兵士長「投与? 薬の類ということですか」

医者「ええ。一種の興奮剤のようなものです。いや、成分的には幻覚剤に近いものが……」

兵士長「エサに混ざっていた可能性は?」

医者「確かに幻覚作用をもたらす植物はありますが、この辺りに自生はしていません」

兵士長「犯人がいる、ということですか」

医者「間違いなく」

兵士長「……他の家畜は助かりそうですか?」

医者「ええ。なんとかなりそうです。全てはあの勇者様のおかげですよ」

村民の家

「勇者様、きいてください。他の動物たちも助かるって。エサに薬を混ぜれば大丈夫らしいんです」

勇者「へぇー。よかったっすね」

「これも勇者様のお力があってこそ!! ありがとうございます!!」

勇者「へぇー。よかったっすね」

「そんな謙遜なさらずに。これでもお食べください」

勇者「へぇー。よかったっすね」

村娘「勇者様」

勇者「……」

村娘「このご恩は一生忘れません。何か困ったことがあればいつでも――」

勇者「ぐすっ……」

村娘「え!? ど、どうしたのですか!? ど、どこか痛むのですか!?」

勇者「いえ……今後、貴女に訪れるであろう幸せを考えると……こみ上げてくるものがあるんです……よ……」

村娘「あ、はいっ! そうだ! 勇者様、私の結婚式に是非きてください!」

勇者「おえっ……うぅ……うぅぅ……うんっ……いく……っす……」

やっぱり簡単にはフラグは立たないよな…
でもなんだかんだで頑張ってるな。報酬(女)がないのは辛いがww

女の子求めてそのまま魔王倒しちゃいそうな勇者だなww

アリスフィーズ様みたいな魔王なら大丈夫

東の村

農夫「いいのですか。ろくなお礼もできていないのですが……」

兵士長「気にしないでください。我々は当然のことをしただけですので」

村長「助かりました。こんな辺鄙な村ではありますが、おもてなしをしますので。またお立ち寄りください」

兵士長「はい。そのときはお願いします」

兵士「隊長。勇者殿が見当たりません」

兵士長「なに? 全く……。折角馬車があるのに徒歩で帰るつもりか、あいつ」

村娘「あのぉ。勇者様なら馬小屋のほうへいくと行っていました」

兵士長「馬小屋?」

医者「あの子に別れの挨拶をしているのかもしれません。半日以上、あの子のそばにいたわけですからね」

村長「愛着がわいたのかもしれんなぁ」

村娘「勇者様って動物に好かれるタイプみたいだもんね」

村長「そうだなぁ。あんなに慈しみの心をもった若者は珍しい。勇者と呼ばれるのも頷ける」

兵士長「見てくるか……。お前たちはここで待っていろ」

兵士「はっ!」

馬小屋

馬「ヒヒーン」ペロペロ

「ヒヒーン!!」ペロペロ

勇者「……」グイッ

勇者「こんなもんか……」

馬「バヒっ」スリスリ

勇者「母さん……親父……いま、そちらにいきます……」

「ヒヒーンっ♪」スリスリ

勇者「馬に囲まれながら死ぬのも悪くない……」

兵士長「なーにやってんだ?」

勇者「あ、先輩……」

兵士長「帰るぞ」

勇者「……っ」ウルウル

兵士長「帰りの馬車の中で聞いてやるよ。降りて来い」

勇者「せんぱぁぁい……!!! おれ……おれ……!! きっと前世でなにかわるいことしたんすよぉ……!!! じゃないと……納得できねえっすぅ……!!!」ポロポロ

馬車内

兵士長「――なるほどな。確かにあの娘さんは美人だった。あんな村には珍しいぐらいの別嬪さんだ」

勇者「うぅぅぅ……うぅぅ……」

兵士長「お前が一目惚れするのもよくわかる。だが、仕方ねえだろ。あんなかわいこちゃんなんざ引く手数多だ。お前があの村の出身でもないと無理だよ」

勇者「うぅぅ……でも……途中まで惚れたんすよ……俺を見つめる視線がもうなんか、乙女の瞳だったのに……」

兵士長「気にすんなよ。女なんてこの世に掃いて捨てるほどいるんだ。あんな小娘なんざ、お前にはにあわねえよ」

勇者「あの子のことを悪くいわないでくださいっす!!!! いくら先輩でも……!!! ゆ、ゆるさん!!」

兵士長「わぁーった、悪かったよ」

勇者「はぁ……」

兵士長「そういえば、お前が命がけで守った馬。あれを貰えばよかったじゃねえか?」

勇者「は? なんでっすか?」

兵士長「メス馬だからだよ」

勇者「……うっ……うぅぅ……」

兵士長「あぁ……いや、冗談だ……冗談……。そ、そうだ、帰ったら飲もうぜ!! 勿論、俺の奢りだ! どうだぁ? 嬉しいだろう?」

勇者「オゴリ!? いくいく!! いくっす!!!」

この上げて落とす感じがたまらんなwwwwww

酒場

勇者「すんませーん!!!!」

バニー「はぁい、なんですかぁ?」

勇者「君のハートをください」キリッ

バニー「ビールでよろしいですかぁ?」

勇者「俺の心は既に貴女のもの。あとは会計を済ますだけです。そう、ベッドの上でね」

バニー「マスター。生追加でーす」

勇者「……」

兵士長「すっぱぁー。失恋のあとはやっぱ酒がすすむなぁ。ははははは」

勇者「笑い事じゃないっすよ!!!!」バンッ!!!

兵士長「な、なんだよ」

勇者「俺!! 先輩にモテにモテるって言われたから!!! 2年も血反吐を吐くような訓練をして勇者になったっていうのに……!!」

勇者「なんすかぁ、これぇ!? 俺!! 昨日初めて女の子に触れたんすよぉ!? あんなに柔らかいんっすね!!! たまらんっす!!!」

兵士長「よかったじゃねえかぁ。勇者になれなかったら、触れることすらできなかったかもしれねえんだぜ?」

勇者「あ。そっか。まぁ、それなら……。いや、騙されないっす!!! 先輩!!! 俺は別に女の子に触れるのが目的じゃねえんすよぉ! 美人の彼女、お嫁さんが欲しいんすよ!!」

兵士長「そうは言ってもなぁ。そればっかりは運命ってやつだからよぉ。いい出会いがあれば明日にでもできるし、なけりゃあ……」

勇者「なければ?」

兵士長「ま、今回のことは忘れろ。これ、食ってみろ。うまいぞー」

勇者「あ、うっす。恐縮っす」

兵士長「話は変わるけどよ。あの村での事件、誰かの手によるものの可能性が高いってことは言ったよな?」

勇者「あぁ、はい。みたいっすね」

兵士長「他の町や村でも同じようなことが起こっていないか調べないといけなくなりそうだ」

勇者「へぇー。たいへんっすね」

兵士長「お前も調べるんだよ。バカ」

勇者「なんで? 俺、傷心休暇とるっすから」

兵士長「勇者に休暇なんざあるわけねえだろ」

勇者「はぁー!? いやだぁいやだぁ!! 暫く休まないとやってらんないっすぅ!!!」ジタバタ

バニー「はぁーい。おまたせしましたぁー」

勇者「ありがとう」キリッ

バニー「……ぷっ。駄々こねちゃって、可愛い」

城下町

勇者「バニーちゃんにも笑われた……」

兵士長「ありゃあ、お前が悪い」

勇者「はぁ……」

兵士長「いい店、紹介してやろうか? 上玉ってほどじゃねえが、まぁそれなりのが揃ってる」

勇者「へぇ……?」

兵士長「金さえ払えば女は抱けるんだ。行ってこい」

勇者「……断固、拒否っす」

兵士長「あのなぁ」

勇者「俺はそんな邪まなことしないって心に誓ってるっす。初めては愛する人に捧げたいと」キリリッ

兵士長「それよぉ、気持ち悪いだけだからやめろって」

勇者「先輩にはわかんねーっすよぉ!!! あんなに美人の嫁さんがいて!!! 今晩もしっぽりしちゃうわけなんすよねぇ!?」

兵士長「あははは、てれるぜ」

勇者「こんな世界なんて滅べばいいんだぁ!!!!!」ダダダダッ!!!!

兵士長「おーい。明日、陛下に報告するんだから寝坊するなよぉー。……ま、ねりゃあ、元に戻るだろ。俺も帰ろう」

事情というか、デフォルトの態度さえ知らなければ、物凄く良い奴に見えるだろうなこの勇者

期待

墓地

勇者「うぅぅ……おやじぃ……おしえてくれぇ……。どうすりゃ、母さんみたいな美人を手にいれることができるんだぁ……」

勇者「おやじぃ……おしえてくれぇ……このままじゃおれぇ……どうにかなっちゃうよぉ……」スリスリ

勇者「うぅぅぅ……」

勇者「おぇぇ……」

シスター「誰ですか!?」

勇者「あぁ……?」

シスター「あ、貴方は……」

勇者「……なんかようっすかぁ?」

シスター「こんな夜更けにいったい何をなさっているのですか?」

勇者「みてわかんないっすかぁ? 墓参りっすよぉ!! 墓参りぃ!!!」

シスター「え……? でも……」

勇者「なんすかぁ?」

シスター「い、いえ。とにかく、もう夜ですから家に戻られたほうがいいですよ」

勇者「……そうなんすかぁ? かえるっす……おじゃましましたぁ……」

追い付いた
にしてもまじで横島にしか思えなくなってきた

翌日 城内 謁見の間

勇者「――報告は以上です、陛下」

王「うむ。ご苦労であったな。しかし、その犯人とやらが気になるな……」

勇者「はい。ですが、現状では足がかりすらありません」

王「そうだな……。それと、あの手配書の人物はどうだ?」

勇者「村の者にも一応聞いてみましたが、誰も見ていないと」

王「そうかぁ……」

勇者「(そういえばこの手配者の人物……美人だよなぁ……)」

王「勇者よ」

勇者「はっ」

王「次の任務を言い渡す」

勇者「はい」

衛兵「こちらに詳細は書いている。目を通しておくように」ペラッ

勇者「これは……」

衛兵「お前には連続殺人犯を追ってもらいたい」

訓練場

兵士長「ふんっ!!!」ギィィィン!!!!

兵士「ぐわぁ!?」

兵士長「しっかり構えろ!! 敵はお前よりも常に強者であると思え!!!」

兵士「は、はい!!!」

勇者「せーんぱい、ちぃーっす」

兵士長「む。少し休憩にする」

兵士「はい!」

勇者「すんません、訓練指導中に」

兵士長「構わん。それよりどうした?」

勇者「俺、別の任務言い渡されたんすけど」ペラッ

兵士長「……ああ、東の町で問題になっている事件か」

勇者「これ、町の兵士がやることじゃないんすかぁ?」

兵士長「知らないのか? もう何人も兵士がやられてる。お手上げ状態なんだとよ」

勇者「……マジっすか? それ、俺がやるんすか? かんべんしてくださいよぉー」

兵士長「お前だからやるんだよ。農村での一件で陛下はお前のことを褒めていた。お前になら、この案件を任せられると思ったんだろう」

勇者「がんばりすぎたわけっすね」

兵士長「がんばりすぎるぐらいが丁度いいんだよ。勇者はな」

勇者「女の子にはぜぇーんぜん、モテないのに……。これじゃあ、女の子とデートする前に死んじゃうかもしれねえっすね」

兵士長「俺も手伝ってやりたいがな……」

勇者「先輩は例の幻覚剤だかをばら撒いた犯人探しっすよね。俺もそっちがいいっすよ。危険度でいえばこっちやべぇっす。ぱないっす」

兵士長「今回は傭兵所で誰か連れて行け」

勇者「いやっすよ。あそこの戦士、ちょーこわいんすもん。俺が乙女になっちゃいそうっす」

兵士長「我侭言うなよ。死にたいのか?」

勇者「一人のほうがマシっすぅ」

兵士長「あのなぁ……」

勇者「俺のパートナーは可愛い女の子って決めてるんで!!」

兵士長「分かった分かった。好きにしろよ。死んでも後悔するなよ」

勇者「ハッハー! 死んだら後悔できねーっすよ!! 先輩、バカじゃねー!?」

兵士長「こっちこい。出発前に鍛え直してやろう」グイッ

城下町

勇者「うー……いってぇ……。あんな本気にならなくてもいいのに……」

勇者「……」

女性「ふんふーん」

勇者「そこの美人さん。俺と危険な毎日を過ごしてみませんか?」

女性「失せろ」

勇者「……」

勇者「よしっ。行くか!」

勇者「……墓参りは……いっか……」

勇者「あーでも……なんかあるたびに報告するのは恒例みたいなもんだし……やらないと気持ち悪いし……でも、昨日の夜もしたし……」

勇者「うーん……いや、いけばあのシスターに会えるかもしれないなぁ……」

勇者「そして……たぶん……」


シスター『これは神のお導きかもしれませんね……』

勇者『きっとそうだよ』

シスター『だいてっ!』

墓地

勇者「ぬふふふふ……」

勇者「いやぁー。そうなったら、任務どころじゃねーっすねぇ……にょほほほ……」

シスター「よいしょ……」ヨロヨロ

勇者「……」

勇者「(イター!!! これはもう運命の赤い糸だぜぇ!!!)」

シスター「ふぅ……」

勇者「やぁ。また会いましたね」キリリッ

シスター「あ……。なにか?」

勇者「水、運ぶの手伝いますよ」

シスター「……」

勇者「ほら、遠慮なんて君には似合わない。俺に身も心もゆだねてみなよ。さぁ、決して俺は怪しくなーい。勇気をだして、とびこんでみるんだ」

勇者「すると、どうだ。俺の雄大な心に触れた君は、きっと知ることになるだろう。本物の愛を」

シスター「邪魔です。どいてください」

勇者「あ、すんません」

シスター「……」バシャ

勇者「一人でお墓の手入れしてるの? 大変だろう。重労働にもほどがある。どれ、俺が神父に言ってきてやろう。仕事量を減らせと」

シスター「……なにか、私に用ですか?」

勇者「用というか、そうですねぇ……」

シスター「はぁ……。それでは失礼します」

勇者「待ってくれ!! 俺を見て、何か思い出せないか!?」

シスター「え……?」

勇者「ん?」

シスター「……」

勇者「そう。俺は勇者なんだ。顔ぐらいみたことあるだろ?」

シスター「そういえば、今朝の新聞に貴方の顔が……」

勇者「ははははは。いやぁー、バレてはしかたない。どうです、勇者の俺とお茶でも」

シスター「帰ってください!」

勇者「あ、はい」

シスター「ふんっ」

城下町

勇者「カーッペ!!! なんでぇ!! この町はぁ!!! おわってんなぁぁ!!!! ボケー!!! アホー!!!!」

門兵「おい」

勇者「この町の女はクズしかいねー!!!!」

門兵「……」

勇者「頭の悪い女しかいねー!!! 男は即刻別の町に引っ越すべきだー!!!」

勇者「この世界には神様なんかいないんだー!!! 運命の赤い糸なんてのも嘘っぱちだぁー!!!」

勇者「恋人がいるやつー!!! 結婚してるやつー!!! 両想いのやつー!!!」

勇者「みんなくだばっちまえー!!!!」

門兵「……おい」

勇者「……なんすか?」

門兵「これで涙拭けよ」スッ

勇者「……あざす」

門兵「がんばれよ。俺、応援してるからさ」

勇者「はい。ありがとうございます。行って来ます。あなたもがんばってください」

あかん、この勇者好きだww

東の町

勇者「ここか……」

兵士「あの。失礼ですが……」

勇者「俺はこういうものです」ペラッ

兵士「国王陛下の勅命状……!? ゆ、勇者殿でありますか!!!」

勇者「まぁ、そうなってます」

兵士「あの……」

勇者「連続殺人の件で来ました。詳しい事情を聞きたいんですけど」

兵士「こちらにどうぞ。案内します」

勇者「……静かですね。この町」

兵士「連続殺人犯が捕まっていないのです。誰も外に出ようとはしませんよ」

勇者「兵士も何人かやられているとか」

兵士「……何人ではないです」

勇者「え?」

兵士「何十人とやられています……」

詰め所

隊長「勇者殿、ここまで足を運んでもらったことはありがたいのですが……。その、お一人だけ、ですか?」

勇者「今、奇妙な事件が起こっていて、そちらのほうの調査もありますから」

隊長「あぁ、例の家畜が凶暴化したとかいう……」

勇者「そこで陛下は俺をここへ遣わせたわけですが。俺では力量が足りていないでしょうか?」

隊長「ま、まさか。寧ろ役不足であると思われます」

勇者「……そうですか?」

隊長「既に同志が30人も惨殺されています……。町民を合わせると被害者は50人を超える次第で……」

勇者「異常事態じゃないですか。何故、今まで応援要請を出さなかったんですか」

隊長「我々にも面子というものが……」

勇者「面子を守るために市民を犠牲にしたのか」

隊長「……」

勇者「そりゃ、ゴーストタウンみたいにもなりますね」

隊長「……面目ない」

勇者「俺に謝られても困ります」

隊長「最初の犠牲者は今から10日前です」

勇者「10日前……?」

隊長「その日だけで、7人もの犠牲者が出てしまって……」

勇者「……」

隊長「その日から毎日数人、ときには10人を超える犠牲者も……」

勇者「調査中の兵士も殺された……」

隊長「ええ……」

勇者「犯人の手がかりは一切ないんですか」

隊長「……」コクッ

勇者「……」

勇者「(洒落になんねーっすよぉ……。まじっすかぁ……。町でたら死ぬじゃないっすかぁ……)」

隊長「勇者殿……あの、この事件は我々だけでも……」

勇者「……とにかく、事件現場を教えてもらえますか?」

隊長「わかりました。私がご案内しましょう」

勇者「(あー。こりゃ、ダメだ。俺、死んだっすわぁー)」

何て俺なんだ

路地裏

隊長「ここが第一の事件現場です」

勇者「血がまだ残ってますね」

隊長「3人、ここで……。あとの4人は、向こうの路地です」

勇者「目撃者もいないらしいですね」

隊長「深夜の犯行だったので」

勇者「(まぁ、ありえなくはないか……)」

隊長「事件後は町民も出歩かなくなったためにさらに目撃情報は期待できなくなりまして……」

勇者「そうですか」

隊長「……次へ行きますか」

勇者「あ、はい」

勇者「……」

勇者「(目撃者を全員殺してる……? そんなことできるか……?)」

勇者「(誰にも見られず10日連続で人を殺し続けるなんて……)」

勇者「うーん……かえりてぇ……こえぇっすよぉ……」

広場

隊長「昨日はここで殺人がありました」

勇者「こんな町のど真ん中で!?」

隊長「はい。白昼の犯行でした」

勇者「なら誰か何か聞いてるんじゃないっすか? 悲鳴とかそういうの」

隊長「いえ……」

勇者「マジっすか」

隊長「はい」

勇者「……」

隊長「何か?」

勇者「いや。別に」

隊長「これからどうされますか?」

勇者「あ、えーと……一応、自分なりに調査してみたいんで……」

隊長「護衛、つけましょうか?」

勇者「いいのですか? じゃあ、女の子の兵士所望」

兵士「勇者殿、私が護衛につきます!!」

勇者「あ、どうも。よろしく」

兵士「はい!!」

勇者「女の子の兵士ぐらいさぁ、雇うべきだと俺は思うんだけど」

兵士「はぁ、私もそう思いますが。中々女性で兵士になってくれることはないですからねぇ」

勇者「はぁーあ。やってらんねぇ」

兵士「勇者殿。あの、私はこれで中性的な顔であると自負していますが」

勇者「はぁー!?」

兵士「……!?」ビクッ

勇者「でも、男っすよね?」

兵士「え、ええ」

勇者「俺は女の子がいいんすよ!! 顔も胸も下半身も!!!」

兵士「申し訳ありません」

勇者「聞き込み、いくっすよ」

兵士「ま、待ってください!! 私からはなるべく離れないようにしてください!!」

酒場

勇者「いいですか」

店主「……どうぞ」

勇者「昨日、表の広場で殺人事件があったのは知ってますよね?」

店主「あんた誰だ」

兵士「無礼者!! この方は勇者殿であるぞ!!!」

店主「なに……」

勇者「これこれ。勇者とかいうな。自慢してるみたいになっちゃ――」

店主「……」グイッ

勇者「ぐぇ!? な、んすかぁ……!?」

兵士「きさまぁ!!! 何をしている!!! 離せ!!!」

店主「……っ」

勇者「大事な人、殺されたんですか?」

店主「おねがいだ……ゆうしゃさま……かたきを……かたきをとってくれ……うぅ……」

勇者「……」

店主「――すまない。つい……」

勇者「いえいえ」

店主「三日前です。息子が殺されちゃってねぇ……」

勇者「そうでしたか」

店主「この町の兵士たちは何もしないし……この怒りをどうすりゃいいのか……」

兵士「……」

店主「お願いだ!! 勇者様!! 息子の無念を……!!!」

勇者「分かってますよ。落ち着いてください」

店主「はぁ……」

勇者「(ここまで言われたら、やるしかないか……)」

店主「……」

勇者「なんすか?」

店主「勇者様、結構男前じゃねえか」

勇者「そっすか? まぁ、勇者ですからね」キリリッ

店主「……ちょっと待っててくれねえかい?」

兵士「なんでしょうね?」

勇者「さぁ?」

店主「勇者様。待たせちゃったねぇ」

勇者「どうかしま……!?」

町娘「……」

店主「自慢の娘でさぁ」

勇者「こんにちは。勇者です」キリッ

町娘「はい……。父から……ききました……」

店主「どうだ、悪い話じゃないだろ?」

町娘「で、でも、急に言われても……」

店主「なにいってんだ。お前もいい年だ。そろそろだなぁ」

町娘「だからって……勇者様の都合もあるじゃない……」

兵士「あの、なんの話でしょうか?」

店主「勇者様。殺人犯が捕まった暁には、うちの娘と結婚してやって――」

勇者「よろこんでぇ!!!!」ガタタッ!!!

町娘「えぇ……!? そ、そんな簡単に……!?」

勇者「憎き殺人犯、いえ、ご家族の仇は、俺が討ちます。だから、遠慮なく結婚しまひょっ。うひょっ」

町娘「でも……」

兵士「何故?」

店主「実はね、この事件が起こる前から見合いを何度も奨めたんだが、縁がなくてね」

兵士「はぁ」

店主「別の町でお見合いする予定だったんだが、この事件が起きちまってそれもパァ。んで、息子も……」

兵士「……」

店主「平和になったら、こいつにぐらいは幸せ掴んでほしいんだよ。だから、今のうちに勇者様と約束を取り付けておくのも悪くないとおもってよ」

町娘「父さん。私はあんなことがあったばっかりなのに、そんなこと考えられないわ」

店主「分かってる。でもよ、お前にはあいつの分まで幸せになってほしいんだ。分かってくれよ」

町娘「だけど……」

店主「勇者様……根暗なやつだけど、いい子なんだ……。結婚してくれとはいわねえ、ただ……こいつにさ、人並みの幸せってやつを……みせてくれねえかい?」

勇者「任せてください。必ず幸せにしてみせます」

町娘「ほ、本気ですか?」

勇者「俺は本能で動く人間です。一挙手一投足が全て本気だと捉えてくれても構いません」

町娘「……」

勇者「無論、ご家族に不幸があったばかりです。そんな気分には到底ならないでしょう。ですが……」

町娘「はい」

勇者「貴女に微笑みを与える約束ぐらいはさせてくれませんか?」

町娘「……あの」

勇者「なんですか?」

町娘「弟の仇をとっても弟は戻ってきません。きっと私は自分の不幸を口実に貴方に酷いことをいうかもしれません」

勇者「……」

町娘「心から笑えるときなんてこないかもしれません。それでも……勇者様は……」

勇者「貴女の不幸、俺に分けてください。貴女の苦悩を俺にください」

町娘「勇者様……」

勇者「貴女が笑ってくれるのなら、俺は悪魔にでも魂を売ります」

町娘「……あなたを信じても、いいんですか?」

勇者「俺を信じないで、どうするんですか?」

兵士「勇者殿……」

店主「決まりだな」

勇者「行くぞ」

兵士「ど、どこへですか!?」

勇者「馬鹿野郎。――犯人を捕まえにだ」キリリッ

兵士「は、はい!!!」

町娘「ゆ、勇者様!」

勇者「……」

町娘「……お気をつけて」

勇者「心配しなくていいですよ。俺は、勇者。死にはしません」

勇者「貴女の笑顔を見るまではね」

町娘「はい」

店主「ちょっと気障だけど、いい人そうだなぁ」

町娘「うん……」

町娘「がんばってください……勇者様……」

広場

兵士「ここで待つ!?」

勇者「ここで待っていればいずれ犯人から現れるはずだ」

兵士「しかし!! 危険すぎます!!!」

勇者「腰抜けがぁ!!!」

兵士「……!!」

勇者「俺は刺し違えても犯人を捕まえるつもりだ」

兵士「な、なんですって……」

勇者「それでこの町に平和が戻るなら安いものだろう」

兵士「勇者殿、そこまでの覚悟が……」

勇者「君は――」

兵士「分かりました。では、もう何もいいません。勇者殿」

勇者「え? あの、近くで見張りを――」

兵士「ご武運を!!!」

勇者「……ああ。まぁ、みてろ」キリリッ

夜 広場

勇者「……」

勇者「(かっこつけすぎちゃった……)」

勇者「(い、いや、犯人が捕まれば俺は……あの子と……夢の生活が……)」


町娘『勇者様……』

勇者『……終わったよ。全部ね』

町娘『バカ! どれだけ心配したと思ってるの!?』

勇者『すまない。でも、これで君が未亡人になることはないだろ?』

町娘『……愛してるわ、あなた』

勇者『俺も。一目見たときから君の虜さ』

町娘『……してっ』


勇者「あ、いかん。ちょっと俺の伝説の剣が暴れだして――」

「グルルルル……」

勇者「……ん? この唸り声……」

「グルルルル……!!!」

勇者「まさか、犯人は……」

狼「グルルル……!!」

勇者「こいつ……!?」

「見つけた……仲間を傷つけたやつ……!!!」

勇者「なに?」

狼少女「ガルルルル……!!!」

勇者「お前が犯人なのか!?」

狼少女「ガァァァウ!!!!!」

勇者「ちっ!! やるしかないか……!!」シャキン

狼少女「アァァアァアオ!!!!!」

勇者「ふん!!」ドガァ!!!

狼少女「ガッ……!?」

勇者「……次は、お前か?」

狼「グルルル……!!」

こういう煩悩全開でモテないが人外には好かれるようなタイプの主人公ってどんなやつがいたっけ?
横島以外で

「キャアアアアアア!!!!!!」

勇者「なに!?」

狼「……!!」タタタタッ

勇者「あ、待て!!」

勇者「何がどうなってるっすかぁ!?」

狼少女「ウゥゥ……にが……さ……な……」ギュゥゥゥ

勇者「ええい!! はなせぇ!!!」

狼少女「ガルルル……」

勇者「あぁぁ!!! 面倒だ!!!」ヒョイッ

狼少女「ウアァ!?」

勇者「行くぞ!!!」ダダダッ

狼少女「はなせ!! おろせ!!!」ドガッ!!!

勇者「いっってぇぇ!!! 寝てろ!!」

狼少女「ガァァァウ!!!」ガブッ!!!

勇者「かむなぁぁ!!!」

ぬーべーとか位しか思いつかん

酒場

勇者「どうしたっすかぁ!?」

狼少女「アァァァウ!!!」ガブッ!!

町娘「あ……あぁ……父さん……父さん……!!」

勇者「何があったっすかぁ!? しっかりす――」

狼少女「血の臭い……嫌い……」

勇者「……」

町娘「あぁぁ……いやぁぁ……」

勇者「落ち着いて。犯人の顔は見てないんすか?」

町娘「あぁ……あぁ……ちがうの……ちがう……」

勇者「違う!? どういうことっすか!?」

町娘「あ……う……」

勇者「(ダメだ。錯乱してるっす。無理もないけど……)」

隊長「悲鳴が聞こえましたがいったいなにが……あ……」

狼少女「血の臭い……いっぱいする……」

隊長「……勇者殿、その肩に担いでいる少女は?」

勇者「こいつは関係ないっす」

隊長「それを信用しろと」

勇者「俺が証人っす。悲鳴がしたとき、こいつは俺と一緒にいたんで。別件っすよ」

隊長「……とにかく、その少女は渡してもらいましょうか」

勇者「関係ないっていってるっす」

隊長「勇者殿!!」

狼少女「ウゥゥゥ……!!!」

勇者「唸るな!!」

狼少女「ガァァァウ!!!」ガブッ

勇者「いってぇ!!」

隊長「勇者殿……渡して……モラい……マスよ……」

勇者「だーかーらー」

狼少女「アアァ……!! ウゥゥゥゥ!!! 変……こいつ……変……!!」

隊長「ゆ、ウシャ……どノ……わた……して……コ、ろす……!!」シャキン

>>89
諸星あたるとか?

勇者「な……!? なんの真似っすか……!?」

隊長「アァ……!!! コ、ろス……!!!」

勇者「殺すって言われてもまだ死にたくないんすけど……」

狼少女「アァァァウ!!! ガァァァウ!!!」

勇者「なんだよ、うっせえなぁ!」

町娘「コ、ろサナキャ……」

勇者「……マジすか」

狼少女「ヘン!! ここ、嫌い!!」

勇者「俺も嫌いだよ」

町娘「オォォォ!!!!」

勇者「待って!! 結婚の約束は……!!」

隊長「オォォォォ!!!!」

勇者「なんで……なんで……!!」

狼少女「にげる……!! にげるぅ……!!」ジタバタ

勇者「俺は呪われてるのかよぉ!!!!」ダダダッ

路地裏

勇者「はぁ……はぁ……」

狼少女「はなせぇ……!!!」ググッ

勇者「お前、何かしたのか?」

狼少女「お前、仲間傷つけた!!」

勇者「……はぁ」

狼少女「あやまれぇ!!! あやまれぇ!!!」

勇者「ごめん」

狼少女「う……ぁ……?」

勇者「(犯人が捕まらないわけだ……)」

兵士「そうです。犯人はこの町に住んでいる人全てですから」

勇者「……!?」バッ

狼少女「ガルルル……」

兵士「勇者殿……」

勇者「貴方はなんともないんですか?」

兵士「……私も数人、殺めています」

勇者「……」

兵士「分からないんです。何故か、突発的に人を……」

勇者「……!」

兵士「この町は呪われたんです……」

勇者「町を出れば……。いや、そういう問題でもないっすね」

兵士「隊長はいち早く事実を突き止め、解決の道を模索していました」

勇者「俺には言ってくれてもよかったんじゃないっすかね?」

兵士「そんなことをすれば、貴方は国王陛下にこう伝えるでしょう。あの町を滅ぼしましょうと」

勇者「(家畜を殺処分するように……)」

兵士「だから、外に情報を漏れないようにしていました……」

勇者「(隊長さんが一人かと聞いたのは、軍を引き連れてきたのかどうか知りたかったからか)」

兵士「隊長や他の者も原因を必死に探っています。だから、勇者殿。ここで見た事は、どうか……」

勇者「……少し、待っていてもらえますか? 貴方たちを救えるかもしれません」

兵士「な……!? ほ、本当ですか!?」

勇者「この町で起こっていることは解決できます。滅ぼそうなんて提案するわけないです」

兵士「勇者殿……」

勇者「とにかく待っていてください。1日……いや、半日もあれば……」

兵士「お、お願いします!! 勇者さまぁ!! わ、わたしたちを……町の人たちをすくってください……!!」

勇者「分かりました」

兵士「うぅ……」

勇者「とはいえ……」

狼少女「ウァ?」

勇者「お前は後回しだ」

狼少女「ナニが?」

兵士「ウゥ……」

勇者「今すぐいって――」

狼少女「こいつ、ちがう!!」

勇者「……!」

兵士「アァァァ!!! ユ、うしゃ……!!!!」シャキン

街道

勇者「――ここまでこれば大丈夫か」

狼少女「おーろーせー!!!」バンバンッ

勇者「……ほら」

狼少女「ふぎゅ!?」

勇者「行け。君に構ってる暇はなくなった」

狼少女「ガルルル……!!」

勇者「じゃあな」

狼少女「……」

勇者「(くそ……くそ……!! 例え正気を戻せたとしても……もうあの子は……!!!)」

勇者「うわぁぁぁあああああ!!!!!! ちくしょぉぉぉぉ!!!!!」

勇者「誰がこんなことしやがったんだぁぁぁ!!!」

勇者「俺の幸せを……かえしやがれぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

勇者「わぁああああああああ!!!!!!」

狼少女「わぁー」タタタタッ

翌朝 農村

「はぁー。今日もいい天気だなぁー」

「いいことありそうだなぁ」

村娘「ふぅー」

医者「……よし。異常はなさそうだ」

馬「ヒヒーン」

医者「次は……」

勇者「ごめんくださいっす!!!!」

村娘「勇者様!?」

「おぉ!! どうしたんですか!!」

勇者「ちょっと来てくださいっす!!」

医者「な、なにか?」

勇者「実は……」

狼少女「……」

村娘「(あれ。あの子、勇者様の……彼女ではないよね……)」

医者「……先の異変と酷似しているともいえますね」

勇者「確か薬あるんすよね。それ分けてください。今すぐに、ありったけ」

医者「しかし、効果があるかどうかは分かりませんよ。動物たちのとは別のもの、或いは改良されたものかもしれませんし」

勇者「んなこと言ってる場合じゃないっすよ!!」

医者「逆効果になってしまったら、どうするんですか」

勇者「うっ……。くそぉ、嫁さんがいる人はいちいち正論を……!! むかつくっす!!!」

医者「ともかく、その町の人を診てみないことには」

勇者「なら、みにいきましょう。今すぐ」

医者「私は獣医ですよ」

勇者「採血ぐらいできるんじゃないんすかぁ!?」

医者「……無茶苦茶な」

勇者「ガルルル!!」

狼少女「ガルルル……」

医者「守ってくださいますか?」

勇者「あんたが死んだら、悲しむ人がいるから、仕方なく守ってやる。ほら、いくっすよ!!」

村娘「大丈夫?」

医者「勇者様がいるから心配ないよ」

村娘「気をつけてね」

医者「すぐに戻ってくるよ」

村娘「うん……」ギュッ

医者「……」ギュッ

勇者「……」

狼少女「おぉー」

勇者「で、なんでお前ついてきてんだ?」

狼少女「お前、仲間傷つけた。許さない」

勇者「謝っただろ」

狼少女「ゆるさない!」

勇者「……好きにしろ」

狼少女「するっ!!」

勇者「(この差はなんだ……。俺、なんかしたんすかね……神様……)」

東の町 詰め所

隊長「……勇者様」

勇者「今から血を採るんで、じっとしててください」

医者「……どうも」

隊長「助かるのですか?」

医者「それはまだなんとも。ですが、調べれば分かることもあるはずです」

隊長「そうですね。お願いします」

医者「はい」

勇者「貴方、解決策を模索していたそうですけど、どうするつもりだったんすか?」

隊長「……」

勇者「こうしてお医者さんに診てもらおうとか思わなかったんすか?」

隊長「……医者はもういない」

勇者「もしかして」

隊長「私が殺した……。診てもらおうとしたら……私が……」

勇者「(都合が良すぎる……。誰かが操ってるのか……)」

医者「――結果が出ました」

隊長「……」

医者「若干、違いはありますが、私の調合した薬で症状は治まるはずです」

隊長「ほ、んとうですか……?」

医者「はい。今から配ります」

隊長「おぉ……おぉぉ……!!!」

勇者「問題はこの幻覚剤がどの程度使われているかですけど」

隊長「うぅ……くっ……。――恐らくは全ての町民に使われているはず」

勇者「それは聞きましたけど、確証でもあるんすか?」

隊長「今から14日前でしょうか……。不思議な霧が発生したんです」

勇者「霧……?」

隊長「濃霧でした……。きっとあれが原因なんです」

勇者「(誰が得するんすかねぇ……)」

医者「では、これを全ての町民に配ってください」

兵士「は、はい!!!」

酒場

町娘「……」

勇者「これで心配ないですから」

町娘「はい……」

勇者「それでは」

町娘「……」

勇者「すみません」

町娘「え……?」

勇者「約束、守れませんでした」

町娘「……」

勇者「勇者、失格っすね」

町娘「いえ……そんなこと……」

勇者「……さようなら」

町娘「ありがとう……ございました……」

勇者「(誰がなんのために……こんなこと……!!!)」ギリッ

農村

勇者「助かりました」

医者「勇者様。このことは……」

勇者「貴方は何もみなかったし、しなかったことにしときます」

医者「……」

勇者「そのほうが気苦労もなくていいでしょう」

医者「助かります」

勇者「では、これで」

医者「勇者様、お気をつけて」

勇者「うっす。ありがとうっす。あなたも幸せになってください」

医者「はい。勿論です」

勇者「……むかつくっす」

狼少女「どこいく?」

勇者「……帰る」

狼少女「わかった」

城下町 墓地

勇者「……親父。俺はやっぱり、誰とも結ばれない運命なのかもしれないぜ」

狼少女「うぁー?」ドガッ

シスター「ちょ、ちょっと!! 何をしているのですか!?」

狼少女「ガルルルル……!!」

勇者「あ、どうも」

シスター「墓を叩くなんて……!!!」

狼少女「なんだ、こいつ。食っていいのか?」

勇者「……すんません。ほら、行くぞ。お前のことも色々聞きたいし」

狼少女「あい」

シスター「何かありましたか?」

勇者「……自分の人生に絶望してます」

シスター「よければ教会のほうでお話を……」

勇者「いいんすか? なら、今夜にでも」

シスター「分かりました。待ってますね」

城内

兵士長「……陛下には話したのか?」

勇者「まだっす」

兵士長「ふむ……。誰が何のためにしているのかわからんが、忌々しき事態だな」

勇者「ここも危ないかもしれないっすね」

兵士長「実はな、それに関連しているかは分からんが農村での事件と似たようなことが頻発しているようだ」

勇者「マジすか?」

兵士長「ああ。見知らぬ相手が急に殴りかかってきたり、刺してきたり。殆ど通り魔ってことで片付けてたようだが」

勇者「……犯人は?」

兵士長「わかんねえよ。だが、陛下は犯人はこいつしかいねえって言ってる」ペラッ

勇者「手配書の女……っすか。美人っすよね」

兵士長「美人だが魔女だ」

勇者「魔女……」

兵士長「陛下がいうには、コイツが国の乗っ取りを企てているんだとよ。そのうち、討伐命令が下るだろうなぁ」

勇者「魔女っすか……魔女ね……」

狼娘かわいい

勇者の方はケモノくさい女はノーサンキューなんだろうな

なにこの生き物かわいい

ゆるさないとか言いながら妙に素直に言うこと聞くしw

口調が不良ぽくて女好きか
ポケスペのゴールドを思い出した

なんかこんなキャラ見たことある気がするんだけどなぁ…
誰だったかな…

>>112
ああそうか、通りで既視感があるなと思ったら

兵士長「それにしても東の町で女を置いてきたって、その辺はお前のクソ親父とは違うな」

勇者「どう違うんすか?」

兵士長「お前のクソ親父なら精神的に弱ってる女を見かければ、確実に持って帰ってきてたぜ? 一夜限りの相手としてでもなぁ」

勇者「ふぅーん」

兵士長「まぁ、がめつさが無い分お前のほうがまだ人間はできてるなぁ。誇っていいぜ」

勇者「……俺に足りないのはあと少しの強引さなわけっすか」

兵士長「参考にするなよ。でさぁ、そろそろツッコんでいいか?」

勇者「なんすか」

兵士長「そいつ、誰?」

狼少女「……」

勇者「なんか知らないけどついてきたっす」

兵士長「別によぉ、他人の趣味にとやかく口出すつもりはねえけどさ、お前は勇者だ。流石に犯罪じゃねえか?」

勇者「失敬な。こんなワイルドをそのまま着込んだようなやつは断固拒否っすよ。俺の理想は守ってあげたくなるような……」

兵士長「はいはい。わぁーってるよ。清楚で可憐な美人さんだろ」

狼少女「あぅ?」

狼少女かわいい

勇者「狼と一緒に襲ってきたんすよ。ゆるさなーい!!とか言いながら。そのあとはこうして俺の後ろにぴったりついて回る次第で」

兵士長「狼と……? そりゃ本当か、お嬢ちゃん?」

狼少女「……」プイッ

兵士長「あら……。嫌われてるな」

勇者「本当だよな?」

狼少女「あい」

兵士長「じゃあ、あの話は本当だったのか」

勇者「話って、先輩はこいつのことしってんすか?」

兵士長「人伝でな。あの農村の近くに狼が住んでいる森があるんだがよ、その森に狼に育てられた女の子がいるとかなんとか」

勇者「なんすて!?」

狼少女「おぉー」

兵士長「狼が捨てられた赤子を食わずに育ててるなんて荒唐無稽すぎて単なるホラ話だと思ってたけどよぉ……」

勇者「お前、狼に育てられたのか。ははーん、どうりで獣臭がするわけだ」

狼少女「そう?」クンクン

兵士長「(いや……でも……もし本当なら、こいつちょっとおかしくねえかぁ……?)」

勇者「その辺のことはじっくりと尋問してやるっすよ。じっくりとなぁ」

狼少女「ガルルル……!!! 変なことしたら食うぞ!!」

勇者「するかぁ!!! 俺にも相手を選ぶ権利ぐらいあるわい!!」

狼少女「ガルルルル……!! ガァァァウ!!!!」ガブッ!!!

勇者「いてぇー!! ゆるしてぇー!!!」

兵士長「……そいつのことどうするつもりだよ」

勇者「事情を聞いたあとで森に帰すか保健所にもっていくか決めるっす」

狼少女「お前ゆるさない!! 仲間傷つけた!!!」

兵士長「随分恨まれてるなぁ」

勇者「そうなんすよ。俺のこと殺そう思ってるのかもしれないっす。まぁ、こんなガキにやられるほど落ちぶれちゃいないっすけどね。はっはっはっは」

狼少女「うー!!!」ドガッ

勇者「いてぇ!? いい加減にしろこらぁ!!!」

狼少女「バカにするなぁー!!」

勇者「生意気なぁ!!」

兵士長「……」

兵士「隊長、勇者殿。国王陛下がお呼びです」

兵士長「俺もか。了解だ」

勇者「うーっす。あとでいくっす」

兵士長「今から行くんだよ」

勇者「えぇー?」

兵士長「おい」

兵士「はっ」

兵士長「この子のこと少し見ておいてくれ」

兵士「え?」

狼少女「あぅ」

兵士「こ、この子どもは……」

兵士長「いいから」

兵士「了解」

勇者「じゃ、行ってくるから。ここで大人しくし待ってろ」

狼少女「あい」

謁見の間

王「――ご苦労であったな」

兵士長「いえ」

王「連続殺人犯は自害か……」

勇者「力及ばず申し訳ありません、陛下。ただ、その町でも他で起こっている奇怪な出来事が同じく発生しておりました」

兵士長「被害は広範囲に及んでいます。北の町、南の港でも多発しているようです」

王「こんなことができるのはあの魔女だけだ。――これより魔女狩りを行う!!! 全兵に通達しろ!!!」

衛兵「はっ!!!」

勇者「(魔女狩りっすかぁー)」

王「草の根を燃やしつくしても構わん。必ず魔女を捕らえ、ここへつれて来い」

兵士長「生け捕りにするのですか」

王「当然だ。今回の罪を償わせる」

兵士長「はっ」

勇者「仰せのままに」

王「期待しておるぞ」

「あい」が可愛すぎる

さすがに体は汚れてるだろうから、これは是非とも風呂で入れた…、間違えた、風呂に入れたい

通路

勇者「ふぃー。陛下も結構乱暴なことするんすね」

兵士長「妃に先立たれてから良くも悪くも仕事熱心になってしまったからな。以前の陛下であればもう少し慎重だったはずだが」

勇者「魔女狩りか……」ペラッ

兵士長「どう思う?」

勇者「そうっすね。なんで陛下が魔女が犯人だと決め付けてるのかわかんねーってぐらいっすかね」

兵士長「そもそも陛下はこの事件が発生する前から手配書を出してまで魔女を探していたわけだからな」

勇者「この事件の犯人にしちゃってますけど、どうなんすかね」

兵士長「あー、やだやだ。こういうきな臭いことは。もっと分かりやすく危険だったらいいのになぁ」

狼少女「わぁぁー」タタタッ

勇者「よぉ」

狼少女「あう」

兵士「こらぁー!! 待てというのに!!!」

狼少女「ガルルルル……!!! こいつでてきた! おまえ、いらない!!」

兵士「そ、そうかもしれないが……」

勇者「どうも。もういいですよ」

兵士「は、はぁ」

勇者「大人しくしてたか?」

狼少女「あい」

兵士「問題なく大人しかったですよ。黙って座ってましたし。ただ勇者殿が出てきた瞬間、走り出して……」

勇者「大人しくしてねえじゃん。嘘ついたのかよ。謝れ」

狼少女「すまん」

兵士長「それより明日から大仕事だ。その子のことどうするか今日中に決めろよ」

勇者「わかってるっすよぉ」

兵士「それでは自分も持ち場に戻ります」

勇者「あざしたぁ。先輩、今度は一緒に仕事できそうっすね」

兵士長「頼りにしてるぜ、勇者様」

勇者「頼ってくださいっすよ。それじゃ。また明日。お前も挨拶ぐらいしろ」

狼少女「ばいばい」

兵士長「おーう。しっかり休めよぉ」

宿舎 勇者の部屋

勇者「で、狼に育てられたのは本当なのか?」

狼少女「あい」

勇者「どんなこと教えてもらった?」

狼少女「狩りのやりかた。獲物の息の根の止め方」

勇者「へぇー。どんな感じ?」

狼少女「ガァァァウ!!!!」ガバッ

勇者「くっ……!?」ググッ!!!

狼少女「ガルルルル……!!!!」

勇者「分かったからすわれ!!」

狼少女「……」

勇者「なんで俺についてきたんだ?」

狼少女「お前、仲間傷つけた。ゆるさない。殺すまでつきまとうつもり」

勇者「……なぁ、ナンパできなくなるからやめてくれないか? ほら、親代わりの狼も森でお前の帰りを待ってるだろうしさ。ここは素直に……」

狼少女「やだ」

勇者「勘弁してくれよ……」

狼少女「はらへった」

勇者「しらねーよ」

狼少女「はらへったぁ」ガブッ

勇者「いてぇよ。自分で何か狩ってこいよ。狼に育てられたんだろ?」

狼少女「わかった」

勇者「待て待て。冗談だよ。んなこと町でされたら俺が困る」

狼少女「あぁー? はらへった」

勇者「ちょっと待ってろ……。えーと……。あぁ、あった。ほら、パンでもかじってろ」ポイッ

狼少女「あう」モグモグ

勇者「(最悪だ……。どうにかして森に……。そうだ。どうせ魔女狩りに出るんだから、森へ行って……)」

勇者「よし。そうするか」

狼少女「くった」

勇者「おう。そうか」

狼少女「うまかった。もっとないのか」

この狼少女が清潔にしてそれなりに着飾ると超絶美少女になるとかだったら最高

城内 中庭

兵士長「(魔女……。どんな奴だろうね。陛下の読み通り、一連の事件の犯人だとするなら、幻覚に気をつけねぇと同士討ちで自滅も……)」

勇者「ほーら」ポーイッ

狼少女「がうー!!」タタタッ

勇者「狼っつーより、犬だな」

兵士長「よう、旦那。球遊びとは楽しそうだなぁ」

勇者「先輩。うぃーっす。楽しそうにみえるっすか?」

兵士長「見えるぞ。変態にも見えるがな」

勇者「あいつが退屈で死にそうとか喚きだしたんでしかたなくっすよ。部屋の食料殆どの食べるし、マジ疫病神っすよ」

兵士長「ハハッ。昔から獣とガキにはモテるから、どストライクだな」

勇者「先輩、俺は――」

狼少女「あうあうっ」

勇者「おかえり。もう一回行ってこい」ポーイッ

狼少女「がうー!!」タタタッ

兵士長「なんだ。飼うのか?」

勇者「飼わないっすよ。明日、町を出て森に帰してくるつもりっすから」

兵士長「そうなのか。もったいねえ。折角お前のことを好いてくれてるお嬢さんなのによ」

勇者「殺したいほど好かれたくはねえっす」

兵士長「そうかい? おっ。てことは今日は一緒に寝るのか? ヒュー。やるじゃん。ド変態野郎っ。このこの」

勇者「なわけないでしょうが!!!」

兵士長「風呂にもいれてやらないといけねえし、下の世話もあるし、大変だな」

勇者「あとで教会に行くんで、そこで今晩だけ預かってもらうつもりっす」

兵士長「教会に用事でもあんのか?」

勇者「ふっ。可憐なシスターが俺のことを待ってくれているんすよ」

兵士長「ほーぅ?」

勇者「実をいうとわかってたんすよね。俺の伴侶は彼女しかいないって」

狼少女「あうあうっ」

兵士長「この子のことか」

勇者「お前じゃねーよ!!! おらぁ!!!」ポーイッ

狼少女「がうー!!!」タタタッ

夜 教会

勇者「ほら。ここでは一言も喋るなよ。静かにしてないといけないなんだから」

狼少女「あい」

シスター「あ……」

勇者「約束通り、来ました。君へ懺悔するために」

神父「ほう。この方が……」

シスター「ええ……」

勇者「どうも、初めまして。ところでこの子のことこき使いすぎですよ。毎日毎日水汲みさせて。倒れたらどうするつもりですか?」

神父「はぁ……。シスターとしての仕事ですから」

勇者「それにしたって……!!」

シスター「あの、お話のほうを……」

勇者「聞いてくれますか?」キリリッ

シスター「是非、聞かせてください。どうぞ、こちらへ」

勇者「はぁーいっ! お前はここでお座りしとけ」

狼少女「あい」

懺悔室

勇者「俺、この世に生を受けてから女性とお付き合いをしたことがないんです」

シスター「そうなのですか」

勇者「あなたは?」

シスター「私は修道女です。そういうことは……」

勇者「おっと。失礼しました。そうですよね。しかし、こんなにもお美しいのだから恋をしたほうがいい。より貴方は綺麗になれる。ご趣味は?」

シスター「続けてください」

勇者「ああ。申し訳ない。脱線しましたね。幾ら町で声をかけても相手にしてもらえません」

勇者「何がダメなのかと悩む日々でした。安定した収入さえあればモテると恋愛マニュアルにも書いていたのでがんばって兵士になったのに結果は変わらず」

勇者「勇者になればモテると言われ、血の滲む努力をしても女の子の柔らかさを知るだけに留まっている始末……」

シスター「……」

勇者「あ、でも結婚を約束した女性もいるんですよ。ちょっと辛いことがあったので俺はそっとしておこうと思ったんで、諦めたんです」

シスター「その女性、本当は期待していたのかもしれませんよ。貴方に手を引いてもらえることを」

勇者「……マジっすか?」

シスター「どれほど辛いことがあったのかは分かりませんが、女からすればそういうときほど心の支えになってくれる殿方を求めていますから」

勇者「マジかー!!! あぁー!!! 強引に連れてかえっていればよかったぁー!!! うわぁぁー!!!!」

シスター「まだ待っているかもしれません。機会があれば顔を見に行ってみてはどうでしょう」

勇者「ぐぐ……!! い、いや!! もう過去の女!! 俺は忘れたんです!!」

シスター「付き合ってはないのでしょう?」

勇者「今はもう、君だけしか見えないんだ!!」

シスター「え……」

勇者「神の前で愛を語らないか?」

シスター「でも……私は……」

勇者「ああ、失礼。急に言われても困るだけですよね。はははは。俺としたことが。君を困らせるようなことをしてしまった」

シスター「いえ……。でも、あの……勇者様は私のことを……?」

勇者「(きたっ!! 食いついた!!! いける!! 恋愛マニュアルにもシスターは恋に奥手だから攻めあるのみって書いてたしなぁ!!!)」

勇者「ええ。恥ずかしいことですが……」

シスター「どうしてですか?」

勇者「どうして? 決まっているじゃないですか。貴女がこんなにも可憐だからですよ」

シスター「あ、ありがとうございます……」

勇者「……」

シスター「……」モジモジ

勇者「(あぁー。神よ。俺にこんな可愛く清楚な女の子を紹介したくて、今まで試練を与えていたのですね。アーメン)」

シスター「あ、あの……」

勇者「な、なんですかぁ!?」

シスター「……明日の予定は?」

勇者「明日ぁ!? 明日は……その……仕事で……。いつ戻ってこれるかわからないんですよ」

シスター「そうですか……」

勇者「で、でも!! 絶対に帰ってきます!!! だから、そのとき改めて……!!! はい!!!」

シスター「はい。待っています」

勇者「(はぁー。祝福の鐘がなってるよぉー。これはもう……たまんねー!!! うっひょー!!!)」

勇者「この町で一番のホテルをとっておきます。無論、スウィートルームです。帰ってきたらそこで話しましょう。ゆっくりと。今後のことを」

シスター「そうですね。私も……その……ゆっくりとお話……したいですから……」

勇者「今日は貴女のような天使と話せてよかった。ありがとうございます」

シスター「私もです」

教会

神父「……」

狼少女「……あう?」

神父「あなたのことどこかで見たことが……」

狼少女「私は知らない」

勇者「約束ですからね。あともう一度確認しときますけど、好きな人がいるとか婚約しているとかないですよね?」

シスター「ありませんよ」

勇者「ふぅー。なら、いいんだ」

狼少女「わぁぁー」タタタッ

勇者「元気か?」

狼少女「あい」

シスター「ところで、この子は……?」

勇者「一時的に保護しているだけです。勘違いしないでください。安心してください。もう俺は貴女のことしか考えてませんから」

シスター「保護ですか」

勇者「ああ、そうだ。この子のこと今晩だけ預かってもらえないでしょうか?」

神父「それは構わないですが……」

勇者「よかった。見ての通り野生児なんで風呂はともかく、トイレには気をつけてください」

神父「分かりました。お任せください。責任をもって預かりましょう」

勇者「助かります」

神父「勇者様、この子はどこで?」

勇者「任務中に襲ってきたんですよ。狼と一緒に」

神父「……そうですか」

勇者「なんか知ってるんですか?」

神父「もしかしたら、という程度なのですが」

シスター「まさか、この町に……?」

神父「いたかもしれません。ただそのときは赤子だったので確信はないのですがね」

勇者「ここに捨てられてたってことですか?」

神父「いえ、母親と一緒でした」

勇者「母親が……」

狼少女「あう?」

面白い

神父「ここで子どもを手放すと神に告げていたのかもしれませんね」

シスター「なんてこと……」

勇者「そのことは俺が預かります。他言はしないでください」

神父「承知しております」

勇者「……」

狼少女「なんだ?」

勇者「(調べなきゃいけないか……?)」

狼少女「こっちみんな」

勇者「それじゃ。明日の朝、来ますので」

神父「はい。お待ちしております。おやすみなさい」

シスター「おやすみなさい」

勇者「よし。帰ろう」

狼少女「あい」

勇者「お前はこなくていい。ここにいろ」

狼少女「あぇ? やだ」

キャワワッ ぺろぺろしたい

勇者「やだじゃないんだよ」

狼少女「やー」

勇者「あのなぁ」

狼少女「お前、逃げる気だ!! そんなことさせない!!!」

勇者「迎えにくるっていってんだろ」

狼少女「信じてやるもんか。お前、仲間傷つけたし」

勇者「今日はここにいろ!」

狼少女「い、や、だ!」

勇者「ええい!! 今まで普通に待ってたじゃないか!!」

狼少女「見えるところはいい。見えないところにいくな」

勇者「何様だこんにゃろぉ」

シスター「あのぉ」

勇者「なんでしょうか?」キリリッ

シスター「勇者様も教会に泊まられてはどうすですか?」

勇者「そうしたいのは山々ですが、明日の準備もあるので……」

>>138
シスター「勇者様も教会に泊まられてはどうすですか?」

シスター「勇者様も教会に泊まられてはどうですか?」

狼少女「ガルルルー!!」ガブッ

勇者「いってぇんだよ!!」

神父「困りましたね。勇者様から片時も離れたくないということですか」

シスター「どうしましょうか」

勇者「こら。お姉さんが困ってるだろ。いいから、お前はここにいろ」

狼少女「いやだ」

勇者「おい」

狼少女「う……なんだ……?」

勇者「必ずに迎えにくるから」

狼少女「……」

勇者「俺は逃げない」

狼少女「……ぜったい?」

勇者「おう。これでも約束は守るほうだ。だから、ここにいろ」

狼少女「……ぁぃ」

勇者「納得してないような返事だな。まぁ、いいや。一晩だけなんだからお姉さんに迷惑だけはかけるなよ」

神父「では、改めまして。おやすみなさい、勇者様」

勇者「よろしくお願いします」

シスター「は、はい」

勇者「じゃあな」

狼少女「……」

シスター「おやすみなさいって言ってあげて」

狼少女「ふんっ」

勇者「なんでぇ、その態度。むかつくなぁ」

神父「拗ねているのではないですか?」

勇者「かわいくねえやつぅ」

シスター「そんなことないですよ」

勇者「そうですね。これも愛嬌というやつですかね。それでは、おやすみなさい」

シスター「はい。おやすみなさい」

狼少女「うぅ……。む、むかえにこいよー!!! こなかったら探しにいくからなぁー!!!」

勇者「うるせえなぁ。わかってるっつーの」

ヤバイ
本格的に狼少女が可愛くなってきた

城内 通路

勇者「(出生名簿ってどこで見れるんだろう……。ああ、いや、捨てたってことはそういう記録も残ってないかもな……)」

兵士長「お。戻ってきたか。待ってたぜ」

勇者「先輩。どうかしたんすか?」

兵士長「明日からの魔女狩りだがな、お前は遊撃扱いだとよ」

勇者「自由にしていいってことっすね。なら、先輩の部隊にいれてくださいよ」

兵士長「そのつもりだ。だが、お前はその前にあの女の子を家まで送るんだろ? 隊との合流はそのあとだな」

勇者「そうなっちゃうっすか」

兵士長「俺たちの行動予定表渡しとく。ま、がんばって追いつけ」

勇者「うぃーっす」

兵士長「あの子、やっぱりなんかあるか?」

勇者「あるでしょうね。狼に育てられたってのはきっとデマっすよ。あんなにちゃんと喋ってるんすから」

兵士長「人間の教育係がいるか」

勇者「ちゃんとした母親がいるのかもしれないっす」

兵士長「あっちもこっちも面倒だな。勇者様は大変だぁねぇ。お疲れさん」

翌朝 宿舎 勇者の部屋

勇者「すぅ……すぅ……」

勇者「あぁ……そんなぁ……きょうかいで……そんな……のぞむところよぉ……ぬふふ……」

『勇者殿!! 勇者殿!!』ドンドン

勇者「ん……なんすかぁ……いい夢みてたのにぃ……。まぁ、正夢になるだろうけど……にゅふふふ……」

『勇者殿!! 起きてください!!』

勇者「もー! なんすかぁー!?」

兵士「おはようございます!!」

勇者「うっす。で、なんすか? 俺、もう少しゆっくり寝てられるんすけど」

兵士「城門のところにあの子どもがいるんですよ」

勇者「子ども……?」

兵士「ほら、昨日勇者殿が連れていた女の子です」

勇者「……なんかしたっすか?」

兵士「あいつを探しにきたと叫びながら無理やり中に入ろうとしたところを衛兵に取り押さえられたみたいで」

勇者「すぐいくっす」

城下町 城入り口

門兵「こら、暴れるな!!」

狼少女「はなせぇ!!! ガルルルル!!! ここにいるのはわかってるんだー!!!」

勇者「なにしてんだ?」

狼少女「あー!! ……こないから探しにきた」

勇者「あのなぁ」

狼少女「朝になったのにこないから探しに来た。お前、やっぱりうそつきだ」

勇者「もうちょっと寝かせてくれよ」

狼少女「まぁ、いたからいい。ゆるしてやる。逃げなかったんだな。ほめてやる」

勇者「すんません」

門兵「いや、いいんだが。それよりもこの子は?」

勇者「任務中に色々あって保護してるだけです」

門兵「そうか。俺はてっきりモテないあまりに……」

勇者「どういう意味っすか?」

門兵「ま、まぁ、がんばってくれ。俺は応援してるぞ」

食堂

狼少女「はむっ……はむっ……」モグモグ

勇者「朝からよく食うな」

兵士長「いよぉ。きいたぜぇ。姫様が迎えにきたらしいじゃねえか」

勇者「何が姫様っすか。こっちはいい迷惑っすよ。神父さんにも謝らなきゃいけなくなったし」

兵士長「この様子じゃ帰れねえんだな」

勇者「でしょうね」

狼少女「んぅ? やらないから」

勇者「いらねぇよ」

兵士長「どうして狼とつるんでいるのかはわからねえが、能力は人間と同じか。離れた場所に連れて来られたら帰り道が分からない」

勇者「……」

兵士長「お前しか頼るやつがいないんだな」

勇者「こいつつれてちゃ日課のナンパにいけねぇっすよぉ」

兵士長「いいじゃねえか。教会のシスターと懇ろなんだろ?」

勇者「でへへへ。じつはぁ、そーなんすよぉ。任務が終われば一緒にホテルで……でぇっへっへっへ……あぁー。まちきれないっすぅー」

兵士長「んじゃ、合流するの楽しみにしてるぜ」

勇者「うぃーっす」

狼少女「うぃーっす」

勇者「真似すんなよ」

狼少女「すまん」

兵士長「ハハッ。仲良いいなぁ」

勇者「うっさいっす!!」

狼少女「はむっ……はむっ……」

勇者「大人しく待ってろっていっただろ。何逃げ出してきてんだよ」

狼少女「ふんっ」

勇者「お前のおかげでこっちは迷惑してるんだよ。わかってんのかぁ?」

狼少女「しらん」

勇者「知らんってなんだ!?」

狼少女「はむっ……」

勇者「食ったら教会に行くぞ。彼女に好感度、確実に落ちてるなぁ……」

教会

シスター「よかったです。朝起きたら、もう姿がなかったので心配していたんです」

勇者「心配をおかけして本当に申し訳ありません。ほら、お前も謝れ」

狼少女「……」

勇者「おい」

シスター「いいですよ。無事で何よりです」

勇者「そう言っていただけるとありがたい。――これ、貴女のために花を買ってきました」

シスター「わぁ……。綺麗……。いいのですか?」

勇者「勿論っ」

シスター「ふふっ」

勇者「うぇっへっへっへ……」

狼少女「ガウッ!」ガブッ

勇者「なんだよ。邪魔すんな」

シスター「では、ミサの途中ですので。勇者様、お気をつけて」

勇者「あ……。は、はい。必ず、帰ってきますから。そのときはよろしくしましょう。いえ! よろしくお願いします!!」

城下町

勇者「さぁー。いくぞぉ」

狼少女「おー」

門兵「……」

勇者「ええと……。問題の森は……農村の近くだから……この辺りか」

狼少女「おー?」

勇者「お前、地図読めるのか?」

狼少女「よめない」

勇者「なら、覗きこむな。邪魔だよ」

狼少女「あぅ」

勇者「農村を経由してもいいけど……あの幸せの二人をみると憎悪がわいてくるからやめておいて、直接行くかなぁ……」

狼少女「みーせーろー」ガブッ

勇者「噛み付くなよ」

狼少女「ガルルルー」

門兵「(うーん……。羨ましいやつ……。くそ……くそ……)」

勇者「あー。早くかえりてぇー」

狼少女「なんで?」

勇者「フィアンセが待ってるんだよ」

狼少女「結婚、するのか」

勇者「……」

狼少女「誰とする?」

勇者「お前には関係ないだろ」

狼少女「そうだけど」

勇者「(フィアンセって言葉も結婚の意味も知ってるってことか……。普通に生活できそうだな……)」

勇者「なぁ」

狼少女「んぁ?」

勇者「お前の母親って誰なんだ」

狼少女「母親はいない。父親はいる」

勇者「誰だ?」

狼少女「お前、一度見てるだろ。私と一緒にお前と戦った」

勇者「あぁ、あの狼がそうなのか」

狼少女「もう少しでお前を倒せたのに……」

勇者「お前置いて逃げちゃったもんな」

狼少女「逃げてない。あれはせんりゃくてきてったい」

勇者「難しい言葉知ってるんだな」

狼少女「教えてもらった」

勇者「父親にか?」

狼少女「父だけじゃない。お兄ちゃんにもお姉ちゃんにも教えてもらったことあるぞ」

勇者「ふぅーん」

狼少女「みんな物知りなんだ」

勇者「お前はさぁ……その……。人間なのか? 狼なのか?」

狼少女「狼人間だ」

勇者「なるほど。そうきたか」

狼少女「私は人間と狼の間にできた、最強の狼なんだ。こわいだろー?」

勇者「いや、全然」

狼の森

勇者「ここだな。――おい、ついたぞ」

狼少女「……」プイッ

勇者「まだ怒ってるのか? わかったよ。お前は怖いよ。恐怖の対象だ。これでいいだろ?」

狼少女「ガルルル……!!」

勇者「(ダメだ。完全に拗ねちゃってるもんなぁー。これだからガキは嫌いなんだ)」

狼少女「お前、きらいだ」

勇者「ほら、もうここまで来たら帰ることができるだろ?」

狼少女「……」

勇者「元気でな」

狼少女「どこいく?」

勇者「大事な仕事があるんだよ。お前は父親のところに戻れよ」

狼少女「……あい」タタタッ

勇者「……」

勇者「行きますか」

先が気になるな

農村

医者「――狼に人の子を育てるだけの能力があるかどうかは微妙でしょうね」

勇者「やっぱ、そうっすか」

医者「可能性としてなくはない。ただ、仮に狼が人の子を育てたとしても、その子が言葉を覚えることはできませんし、遠吠え等の狼に似た行動をとるはずです」

勇者「二足歩行もできませんよね?」

医者「無論です。加えて短命でしょうね。口にするものは人間のそれと全く異なりますから」

勇者「……」

医者「どう考えても勇者様のいうその子どもには、人間の親、或いは親代わりがいるはずです」

勇者「問題はその親がどうして狼と娘を一緒にさせていているのか。娘に狼の真似事をさせているのか」

医者「本当の娘ではないかもしれませんね。どこからか連れてきた子どもを使って実験ということも」

勇者「実験?」

医者「聞かない話ではありません。犬が猫を育てたり、豚が犬を育てたりするという事例はあります」

勇者「狼が人間の子どもの面倒をみてくれるかってことっすか? でも、あの子は自分の父親が狼だって信じてるんすよ?」

医者「そこです。面倒をみるかどうかの実験ならば、そのような思い込みをしていることが不自然です。狼が世話を始めれば実験終了ですからね」

勇者「逆かもしれないっすね。狼が人間の面倒を見るかどうかじゃなく、人間が狼を親だと思い込むかどうかの実験……とか」

医者「……どちらにしても非人道的です」

勇者「そうっすよねぇー」

村娘「どうぞ。コーヒーしかすぐに出せるものがなくて……」

勇者「ああ、お構いなく」

医者「各地で起こっている事件と関係があるのでしょうか」

勇者「そうかもしんねーっすね」

医者「だとしたら、私の薬も役に立つかもしれませんね」

勇者「俺も貰うつもりで来ましたから」

医者「好きなだけ持って行って下さい」

勇者「すんません。何度も手助けしてもらっちゃって」

医者「何を言っているんですか。貴方は村の恩人。そして、命の恩人でもあるのですから」

村娘「そうですよ。みんなが元気でいられるのは勇者様のおかげですもの。私、本当に幸せです。もし、あの子が処分されていたらきっと結婚なんてできなかったかもしれない……」

勇者「マジっすか。殺しとけばよかった」

医者「あはははは。勇者様、またまた。心にもないこと」

勇者「マジでいってんすけど」

医者「こちらが薬です。飲んですぐに効果が現れるかはわかりません。もし、何かあればすぐに私のところへ来てください」

勇者「飲ませる前に診せたいっすけど、まぁ、状況に応じてっすね」

医者「ええ。まぁ、私は獣医ですので、できればちゃんとした病院にいってもらったほうが」

勇者「……くやしいっすけど、あんたが誰よりも頼りになる医者なんすよ」

医者「……」

勇者「また来ると思います。そのときはお願いします」

医者「はい! 勇者様のご期待に応えられるよう、がんばります!!」

勇者「あざす」

医者「こうなってくると薬は流通させたほうがいいですね。手は打っておきます」

勇者「何から何まであざす」

医者「いえ。貴方のお役に立てるなら光栄ですよ」

勇者「嫌味にしかきこえーっす」

医者「いつでも頼ってくださいね」

村娘「勇者様ー!! お気をつけてー!!」

勇者「うーっす!!」

狼の森

勇者「(あいつが人体実験の被害者っつーなら、その親がなんか知ってる可能性があるなぁ……)」

勇者「さてさて……。泳がしたんだから、出てきてこいよー、母親か教育係さん」

「グルルル……」

勇者「……ん?」

勇者「……」

勇者「(俺を狙ってるわけじゃないか……。この唸り声はどこから……)」

狼「グルルルル……!!」

狼少女「ガルルルル……」

「まさか逃げるとはね。ダメじゃない」

勇者「(あれは……)」ペラッ

「ふふ、でも、こうして戻ってきてくれたんだから許してあげる。もう逃げちゃダメよ?」ナデナデ

狼少女「あい」

勇者「(魔女……!)」

魔女「さぁて、ご飯の時間にしようか。みんな、いらっしゃい」

パンツ脱いだ

狼「オォォン!!」

魔女「ほーら。いっぱいあるから、慌てないでいいわよぉ」

狼少女「はむっ……はむっ……!!」

勇者「なんてこった……」

勇者「(魔女、ちょー美人じゃん。年上のお姉様じゃん。踏まれたいじゃん)」

勇者「(あの数だ。ここで出て行っても狼のエサになるだけだな……。いや、でも、エサくってるし、俺が食べられることはないか)」

勇者「……よしっ」

魔女「ほら、もっと綺麗に食べなさい。口元が汚れているわよ」フキフキ

狼少女「うぅ……」

勇者「――いいペットをお持ちですね、お姉様」

魔女「……」

狼「ガルルル……!!!」

勇者「よぉ。狼畜生。また、返り討ちにしちまうぜ?」

狼「クゥーン……」

狼少女「あ……ぅ……」

「グルルル……!!!」

「ガルルル……!!!!」

勇者「(ざっと20匹か……。まともにやったら死ぬな)」

魔女「珍しいわね。この森に人間が迷い込むなんて。狼の縄張りだって知らないのかしら?」

勇者「貴女の色香に誘われてしまってね。のこのことやってきてしまいましたよ」キリッ

魔女「そう。篭絡されにきたということかしら?」

勇者「してくれるんですか? 是非ともお願いしたい」

魔女「うふっ。いいわよ」

勇者「ただし……」

魔女「なにかしら?」

勇者「俺の家まで来てもらいますけどね」シャキン

魔女「……国王の差し金ね。一人しかいないということは、勇者様かしら」

勇者「よくご存知で」

魔女「勇者って本当にバカしかいないのね。いつも一人でやってきては気障な台詞はいて、死んでいくだけなのに」

勇者「貴女のような美しい人を前にしたら男はみんな腑抜けにもなりますよ」

ああ…どうやらコイツは本当にバカなようです…

魔女「似たような台詞、ずっと前にも聞いたわ。さてと……」

「グルルル……」

「ガルルル……」

勇者「……」

狼少女「うぁ……ぅ……」

魔女「――やれ」パチンッ

狼「ガァァァァァ!!!!」ダダダダッ

狼少女「やめて!!」

狼「……!」

魔女「なんの真似?」

狼少女「あ、あいつは……あの……敵じゃない……」

魔女「何を言ってるの?」

狼少女「仲間、傷つけたけど……わ、わるい人間じゃない……」

魔女「……もう少し強いお薬が必要のようね」

狼少女「うぁ……!?」ビクッ

勇者「――そこまでにしてもらおうか。貴女を斬りたくはない」

魔女「……意外とすばやいのね」

勇者「伊達に勇者って呼ばれてませんからね」

狼少女「あ……ぁ……」

勇者「一つ聞きましょうか。農村で家畜が凶暴化したのは貴女の仕業ですか?」

魔女「農村……。ああ、あれね。ええ。試作品を使ってみたの。人間を見ると暴走してくれるかどうかをね」

勇者「何のために?」

魔女「貴方にいう必要があるの?」

勇者「なんて馥郁たる香り……。香水な何をお使いになっているのですか?」クンクン

魔女「変なやつ」

「ガァァァア!!!!」

勇者「おっと!! その牙で噛まれたくはないな!!」バッ

魔女「食い殺せ」

狼「オオォォォォォオ!!!!」

勇者「やべぇ。逃げろぉ」

魔女「逃がすな!!」

「ガァァァァ!!!」

勇者「ひえぇー!!!」

狼少女「あ……」

勇者「一緒にこい!!」

狼少女「え……」

勇者「どうした!? こい!!」

狼少女「――あいっ!!」ギュッ

魔女「な……!! どこに行くの!!!」

狼少女「ご、ごめんなさい……」

魔女「そんなの許さないわよ……!! 許さない……!!!」

勇者「(すげー怒ってるな……)」

勇者「お姉様、この子は預からせてもらいますよ。母親が泣いているかもしれないので」

魔女「な、なんですって……!?」

勇者「また会える日を楽しみにしてますよ。お姉様。今度会うときにはもう嫁がいるだろうけど、愛人にはしてあげますから心配いりませんよ。ではでは」ダダダッ

「ガァァアアウ!!!!」

勇者「あぶねぇ!?」

狼少女「なんで、斬らない?」

勇者「仲間傷つけたら、お前怒るだろ。だから」

狼少女「……」

「ガァァアアア!!!!」

勇者「やめてぇ!!!」バッ!!!

狼少女「がんばれ! がんばれ!」ペシペシ

勇者「おめえを抱いてるから動きが鈍くなるんだよ!!」

狼少女「すまん」

「ガァアアアアウ!!!!」

勇者「ひぇぇ!!」

狼少女「おぉー」

勇者「くそぉぉぉ!! 早く帰って結婚してぇぇぇぇ!!!」

狼少女「あい」ギュッ

狼「クゥーン……」

魔女「逃がしたのね?」

狼「……」

魔女「何をしているの!!!」ゲシッ!!!

狼「クゥーン……」

魔女「早く探して来なさい!!! はやく!!!」

狼「……」タタタッ

魔女「……っ」

魔女「もっと投与量を多くしておくべきだったわね」

魔女「数日の間外界に行っただけであんな男に誑かされて……」

魔女「許せないわ」

魔女「しっかりとお仕置きしてあげないとね」

魔女「そしてあの勇者も……」

「グルルルル……」

魔女「そうね。勇者を追うより、待ち伏せしたほうがいいわね。ふふふふ……」

農村

医者「では、採血を……」キラッ

狼少女「わぁぁー!!」ギュッ

勇者「なんだよ?」

狼少女「ちゅうしゃぁ……やだぁ……」

勇者「やれよ」

狼少女「ガルルル……!!!」

勇者「おねがいします」

医者「はい」

狼少女「たすけろー!!! あ……あぃー!!!!」

勇者「ハッハッハッハ。ざまーみろ」

村娘「しかし、勇者様。よく狼の群れから逃げてこれましたね」

勇者「こいつが狼のことをよく知ってたんで、なんとかなりました」

村娘「それでも普通の人では助かったとしても大怪我していますよ。勇者様、流石ですね」

勇者「今からでも遅くありません。惚れてくれてもいいんですよ?」キリリッ

狼少女「ぐすっ……」

勇者「なんだ、元気ないな。別に痛くなかっただろ?」

狼少女「……私、仲間裏切った。悪いのは私。きっとみんな恨んでる」

勇者「じゃあ、俺についてくることなかったのに」

狼少女「お前がついてこいっていったから!!!」

勇者「俺の所為か!?」

狼少女「ガルルルー!!」ガブッ

勇者「いてぇよ!!」

医者「……結果が出ました」

勇者「どうでした?」

医者「やはり同種の薬を投与されているようですね」

勇者「つまり……」

医者「動物の凶暴化、町で起こった連続殺人、そして狼に育てられた女の子。これらは勇者様が見た魔女の仕業で間違いないかと」

勇者「あぁ……。残念っすね。こんな事件を起こしてさえいなければ俺の正妻になれるチャンスもあったのに」

医者「これからどうされるおつもりですか?」

勇者「とりあえず、こいつを正気に戻すとして……。まぁ、陛下に報告しておわりっすね」

医者「そうですか。薬のほうは任せてください」

勇者「お願いするっす。ほら、これ飲め」

狼少女「なにこれ?」

勇者「薬だ。これでお前は元の女の子に戻れる」

狼少女「元の……?」

勇者「おう。それでできれば思い出して欲しいんだよ。お前の母親のことをさ」

狼少女「薬、きらいだ」

勇者「飲めって」

狼少女「いーっ」

勇者「……」グイッ

狼少女「ふぁふぇふぉー!!!」

医者「そ、そんな乱暴にしなくても……」

勇者「ほーら、のめ!!」

狼少女「ふぁにゃー!!!」

狼少女「うぇぇ……まずい……」

勇者「……どうだ?」

狼少女「まずいっ!!」ドガッ!!!

勇者「いって!! なにすんだこらぁ!!!」

狼少女「うまいものくわせろー!!!」

勇者「母親は!?」

狼少女「いない!!」

勇者「父親は!?」

狼少女「それは……あー……うーん……いない?」

勇者「……」

狼少女「うぅー……?」

医者「どうやらかなりの量を投与されていたのでしょう。中和できるまで時間がかかりそうです」

勇者「んだよぉ。役にたたねえなぁ。お前の母親さがせねえだろぉ」

狼少女「バカにするなぁー!!!」ガブッ

勇者「ふん。噛まれるのにはもう慣れたわ! バカめ!」

馬小屋

馬「ヒヒーン!!」

狼少女「おぉー! 馬だ!!」

勇者「馬だな」

狼少女「食っていいか!?」

勇者「ダメに決まってんだろ」

狼少女「いじわるか!?」

勇者「違う。そいつは食べたら腹壊すぞ。毒もってるからな」

狼少女「そうなのか!? 馬にも毒もってるやついるんだなぁ。しらなかった」

勇者「……野生的な思考は薬の所為じゃないのか?」

村娘「うふふ」

勇者「どうしたっすか?」

村娘「いえ。勇者様って、本当にお優しいんですね。みんなが懐いてるのも納得です」

勇者「懐かれるのはいいんすけどね。舐めるのはやめてほしいっすわ。臭くなるんで」

「ヒヒーン」ペロペロ

馬「ヒヒーン」ペロペロ

狼少女「やめろー!!」

村娘「勇者様、動物には好かれるほうですよね?」

勇者「ええ、まぁ。昔から獣にはモテるんすよ。慰めてくれるのはいつも野良犬と野良猫ばっかりで……」

村娘「心が澄んでいる証拠ですね」

勇者「心が澄んでいても女の子にはモテねーっすよねぇ……」

村娘「そんなことないですよ。勇者様ならいつかきっと素敵な女性と結ばれますよ」

勇者「……」


シスター『あなた。お疲れ様。ごはんにします? お風呂にします? それとも……わ、た、し?』

勇者『君とお風呂に入ってから君をおかずにする』

シスター『やだぁ! エッチ!! でも、そんなあなたがだーいすきっ』


勇者「のほほほほぉ」

狼少女「なんだ、お前。気色悪いな」

勇者「あぁ? しっしっ。あっちいけよ。美しい考えごとしてるんだから邪魔すんな」

医者「勇者様。間に合わせですが、できました。お持ちください」

勇者「どもっす。とりあえずこれで様子を見ましょうか」

医者「1日1回ですからね。それ以上は体に毒です」

勇者「わかってるっすよ。おーい。いくぞー」

狼少女「あーい。またな!」

馬「ヒヒーン!!」

勇者「お世話になりました。これで最後になればいいんすけどね」

医者「何を仰いますか。どんなに些細なことでもお助けしますよ」

村娘「はいっ。遠慮なんてしないでください」

勇者「(あんたらを見てると死にたくなる自分がいるんすよね……)」

狼少女「なにしてんだ。はやく」

勇者「お前が仕切るなよ。どこに行くかもわかってねえくせに」

狼少女「どこいく?」

勇者「先輩と合流する。本当ならお前はここに残していきたいんだけどな……」

狼少女「お前、ついてこいっていった!! だから、ついていくからな!!」

南の港町 酒場

狼少女「はむっ……はむっ……」

兵士長「んで、子持ちになっちゃったわけか」

勇者「子持ちって言わないでくださいよ。母親が見つかるまでっす」

兵士長「嫁にしてやったらどうだ? こんなに懐かれたら悪い気はしねえだろ」

勇者「じょーだん。俺の理想はぁ!!」

兵士長「美人で清楚で可憐な女性だろ。耳にタコができちまうぜ」

勇者「だから、こんなガサツでしかもガキは論外っす。眼中にはいらないっす!!」

兵士長「10年後は分からんぞ? 今のうちに唾をつけとくのもアリだと思うがねぇ」

勇者「どーせ、ゴリマッチョウーマンになるだけっすよ。こんなやつ」

兵士長「んー……」

狼少女「はむっ……はむっ……ん? ガルルル……!!」

兵士長「とらねえよ。ゆっくり食べな」

狼少女「はむっ……はむっ……」

兵士長「(こいつ、絶対に美人になるなぁ。あー、もったいねぇ)」

勇者「そんなことより、先輩」

兵士長「魔女と会った感想は?」

勇者「誤解を恐れず言うと、俺の理想通りの人でした!」

兵士長「誤解しかうまねぇ意見、サンキュー。他には?」

勇者「狼を従えていたんで、ちょっと獣臭いとか思ったでしょう? ところがどっこい、すんげーいい香り漂わせてたっすぅ。ありゃ、魔女と呼ばれてもしかたないっすわぁ」

兵士長「ああ、そうかい。割り勘にするぞ」

勇者「ああ、すんません。魔女っつっても普通の人間でしたね。殺すだけなら簡単っすよ」

兵士長「問題は取り巻きの狼か」

狼少女「……」ピクッ

勇者「先輩」

兵士長「あ、ああ。悪いな。お嬢ちゃん」

勇者「育てられたってのは嘘でも、あいつにとっては仲間なんすよ。家族っていってもいいかもしれないっすけど」

兵士長「獣が家族ね」

勇者「先輩はペットとか飼ったことないからわかんないだけっす。動物を大切にしてる人にとってはそうなんっすよ。マジで」

兵士長「そうか。お前の惚れた相手がそんな感じだったのか?」

勇者が貰わないんだったら俺が狼少女欲しいんだけど

勇者「昔の女の話はやめましょうよ」

兵士長「てめぇの女じゃねえだろがよ。すっ……ぱぁー……」

狼少女「げほっ……げほっ……! ガルルル!!」

勇者「タバコはやめてくださいっす」

兵士長「かたいこというなよ」

勇者「殴られるっすよ」

兵士長「マジで? すっ……ぱぁー……」

狼少女「げほ……! ガルルル……!! ガァァウ!!!」ドガッ!!!

勇者「いってぇ!? ほら!!」

兵士長「狼はこの臭いダメか?」

狼少女「狼じゃなくても嫌だ」

兵士長「はいよ。おかわりしていいから、好きなの食べな」

狼少女「いいのか!?」

兵士長「俺のオゴリだ」

狼少女「あ……うー……どれに……あ、これ! これ!! ハンバーグ!!」

港町 宿

兵士長「何はともあれ長旅ご苦労さん。今日はしっかり休めよ」

勇者「うぃーっす」

狼少女「うぃーっす」

兵士長「魔女の行方については明日検討するから、早起きしろよ」

勇者「了解っす」

兵士長「といっても、一度戻らないといけなくなったな」

勇者「そっすね。調べてみる価値はあると思うっす」

兵士長「母親探しが魔女に繋がる……か」

勇者「だといいんすけどね」

兵士長「一つの手がかりとしてはアリだがな。この狼姫が親の顔を覚えてくれてたら楽だったんだがなぁ」

狼少女「すまん」

兵士長「ハハッ。良いって事よ。面倒ごとには慣れてる」

勇者「お疲れっす、先輩。ほら、行くぞ」

狼少女「あい」

廊下

勇者「お前はこの部屋な」

狼少女「お前はどの部屋だ」

勇者「隣だよ。何かあったら呼べ」

狼少女「わかった」

勇者「んじゃ、おやすみ」

狼少女「あいっ」

勇者「寝坊したら置いていくからな」

狼少女「うぇ?」

勇者「なんだよ?」

狼少女「おいて、いくのか?」

勇者「当たり前だ。人間社会ってのは厳しいもんなんだよ」

狼少女「そうか……」

勇者「すぐに寝れば寝坊しねえよ。じゃあな」ガチャ

狼少女「あ……まっ……」

寝室

勇者「――ふぃー。さっぱりしたぁ。この宿は中々いいっすねぇ。シャワーの水圧が申し分ないわぁ」

勇者「はぁー。この分だと二日後には帰れるなぁ。そうなれば……クフフフ……ブフフフ……」

勇者「風呂からあがれば女の子がベッドで待っているという夢のような生活が待っているんだぁぁ!!! うらよっしゃぁぁぁ!!!!」

勇者「まぁー、今日は誰もいないベッドで我慢――」

狼少女「すぅ……すぅ……」

勇者「……おい」

狼少女「うぅ……なんだ?」

勇者「隣の部屋だって言っただろ」

狼少女「考えた」

勇者「何を」

狼少女「一緒に寝れば起きるときも一緒だ。寝坊するときも一緒だ。おいていかれることはない。な?」

勇者「……」

狼少女「ダメか!?」

勇者「もういいよ。寝てろ」

狼少女「すぅ……すぅ……」

勇者「はぁーあ。酒でも飲むか」

勇者「んぐっ……んぐっ……。ぷはぁ……」

狼少女「うぅん……」

勇者「……」

勇者「(一人になるのが、怖いのか……?)」

狼少女「すかぁー……すかぁー……」

勇者「やっぱり、捨てられたんだろうか、こいつ」

勇者「(両親がいないって、寂しいもんなぁ……)」

勇者「(嫌いじゃなかったけど親父は滅多に帰ってこなかったし、母さんは俺が小さいときに死んじまったから、一人でなんでもしてきたけど)」

勇者「(親父が任務中に死んだって聞いたときは、喪失感がすごかったもんなぁ……)」

勇者「(今でもふとしたときに寂しくなるし……。だから、早く家で待っていてくれるような可愛いお嫁さんが欲しいのに……)」

狼少女「がおー……がおー……」

勇者「……」

勇者「(さっさとこいつの親を探しださねえと。こんなやつが一緒だと幾ら広い心の修道女でも嫌がるだろうしなぁ。がんばるぞ!! 俺の幸せのために!!)」

パンツは脱いでいる はよっ

遅くまで乙


狼少女が徐々に丸くなってきたな

(お?結婚フラグか?)

おつ

待ってるよ

サン!

翌朝

勇者「う……ん……」

勇者「朝か……」

狼少女「がぉー……がぉー……」

勇者「起きろ。朝だぞ」

狼少女「がぅー……?」

勇者「早くしろ。置いていくぞ」

狼少女「うぁーい……ふわぁぁ……」

勇者「何か思い出したことはあるか?」

狼少女「ぁえ?」

勇者「魔女のこととか母親のこととか父親のこととか」

狼少女「魔女はしらない。母親はいない。父親はよくわからない」

勇者「……お前の父親は狼じゃないな?」

狼少女「うーん……。きっと、多分違う」

勇者「そっか。よし、顔洗ってこい。先輩のとこに行くから」

食堂

兵士長「そうか。やはり姫にとって魔女はよく喋る狼なわけだ」

勇者「そうだと思うっす」

兵士長「姫から魔女を追うのは今のところ難しいか」

勇者「うっす。で、姫ってなんすか?」

兵士長「勇者様が抱くのは姫様って相場が決まってるだろ?」

勇者「はぁー? あいつが姫って」

狼少女「はらへったーはらへったー」

兵士「好きなのとって食べていいぞ」

狼少女「いいのか!? あざす!」

勇者「アーッハッハッハ!! にあわねー」

兵士長「とりあえずは姫の親探しからだな」

兵士「しかし、隊長。名前もよくわからないのでは探しようが……」

兵士長「可能性を一つ一つ潰していきゃあなんとかなるだろ。なぁ?」

勇者「時間かかるっすね、それ。まぁ、俺としては時間をかけてくれたほうが……にゅふふふ……」

城下町

兵士長「――俺は陛下に報告してくるが、お前はどうする?」

勇者「ホテルの予約にいってくるっす」

兵士長「例のシスター絡みか」

勇者「うっす!! 今回は成功率200パーセントっすね」

兵士長「まぁ、がんばれや。あとで顔出せよ」

勇者「うぃーっす。明日には俺の可愛い嫁を紹介できるっすから、期待しててください」

兵士長「おう」

勇者「さぁて、行くかぁ」ポキポキ

狼少女「あい」

勇者「……お前はこなくていい。俺の部屋にでも行ってろ。場所は覚えてるだろ?」

狼少女「お前、どこいく?」

勇者「ガキには関係ねえさ。ほら、早くいけ。俺には時間がないんだ」

狼少女「……かえってこいよ」

勇者「帰るよ。まだ俺の住まいはあの宿舎だからなぁ」

墓地

勇者「(スウィートルームも予約できたし……あとは……誘うだけ……。くぅー!!! ついに!! ついに!! 俺も一皮剥けるときがきたわけだぁ!!!)」

勇者「(恋愛マニュアル通りなら、女はホテルの雰囲気に呑まれて……自ら脱ぐ!! そうなっちゃえば、もうやることは一つよ!!!)」

勇者「たはー!! もうドキドキしてきちゃったよぉ!!」

勇者「さーてと、この時間ならここに……」

シスター「……」

勇者「いたいた……。――ただいま、戻りました」

シスター「あ……。おかりなさい」

勇者「約束通り、今晩は貴女を夢の一時へ誘います」

シスター「あの、お父様に報告はされなくていいのですか?」

勇者「え?」

シスター「いつもそうしているようでしたので」

勇者「ふっ。よく見てますね。そうですね。報告しておきましょう」

勇者「父さん。俺、ついにやったよ。今晩、男になれるよ。……で、来てくれますよね?」

シスター「え? は、はい。約束ですので」

勇者「20時ですよ。忘れないでくださいね」

シスター「え、ええ。ところで、あの子は?」

勇者「俺の部屋でお留守番させておきます。俺たちの時間には介入してきませんよ。大丈夫です」

シスター「そ、そうですか……。そうですね。そのほうがいいかもしれません」

勇者「でしょう? ふふふ。まぁ、あんな子どもには見せられないですけど。教育上、よくないといいますか」

シスター「……あの」

勇者「はぁい?」

シスター「お父様と話したことはありますか?」

勇者「勿論です。まぁ、仕事熱心な父でしてね。あまり家には帰ってきませんでしたが」

シスター「そう……ですか……。よかった」

勇者「なにがですか?」

シスター「いえ。今晩、ゆっくりと話しましょうね」

勇者「今晩といわず、朝まで語り合ってもいいですよ」

シスター「確かに時間はいくらあっても足りないかもしれないですね……」

勇者「(この子、意外とスケベじゃん? サイコーだね)」

(あ、これ、あかん奴や)

早く狼少女を風呂にダイブさせるんだ!

宿舎 勇者の部屋

狼少女「ほぅほぅ……」ペラッ

勇者「あー!!! ひゃっはー!!!」バーンッ

狼少女「わぁぁー」タタタッ

勇者「あははははは!! いやぁー!! 俺は今日と言う日のために生まれてきたんだな!! きっと!!!」

狼少女「なんかあったのか?」

勇者「なにかあったどころじゃないんだよ!!! 念願のワイフを見つけたんだぜぇい!!! フフハハハハ!!!!! オヒョヒョヒョ!!!」

狼少女「嫁か!!」

勇者「そうだ!! 嫁だぁ!!」

狼少女「おぉー。がんばるっ」

勇者「ああ!! ほぼ確定事項とはいえ、最後の詰めを誤らないようにしなくてはな。勝って兜の緒をしめよっていうしなぁ!!!!」

狼少女「あい」ペラッ

勇者「ん? お前、何読んでるんだ?」

狼少女「落ちてた」

勇者「おいおい。それ俺のバイブルじゃねえかよ。お前が読むには10年早いっつの」

勇者「――蝶ネクタイ、曲がってないか?」キリリッ

狼少女「またどっかいくのか?」

勇者「メシはそこにあるからテキトーに食ってろ。間違っても宿舎の中を彷徨ったり、城のほうへ散歩にいったりすんなよ」

狼少女「わかった」

勇者「どうだ、カッコイイだろ、今日の俺」

狼少女「よくわからん」

勇者「だろうなぁ。まぁ、次に会うときはもっとかっこよくなってるけどな。何せ、今夜、俺は、真の意味で大人になるんだ」

狼少女「なんかするのか?」

勇者「する。お前では到底理解できない生命の伊吹を感じてくる」

狼少女「交尾でもするのか?」

勇者「……さ、行ってくる。明日の朝には帰ってくるから。大人しくしてろよ」

狼少女「私も一緒じゃダメか?」

勇者「ダメに決まってるだろ」

狼少女「むぅ……わかった」

勇者「んじゃ、いってきまぁーす!! 待っててくれー!! 俺のスウィートハニー!!!」

通路

勇者「にょほほほー!! あひゃひゃひゃひゃー!! 笑いがとまんねーなぁ!!」

兵士長「ご機嫌だな」

勇者「先輩!! そりゃご機嫌にもなるっすよぉ」

兵士長「お前にも恋人ができるか……。こりゃ、明日は雪でも降るな」

勇者「何をいってんすかぁ。俺の魅力に気が付いた女の子がようやく現れたってだけのことっすよ。むしろ遅すぎたぐらいっすわ」

兵士長「そうだな。お前みたいな馬鹿正直ないい奴は二人もいねえよ」

勇者「てれるぜ」

兵士長「でよぉ、姫のことだが……」

勇者「先輩。今は、今だけは仕事のことを忘れさせてくださいよぉ」

兵士長「だがな」

勇者「今宵の俺は野生児の保護者じゃなく、カッコいい男なんすよ」

兵士長「あいよ。もう行け」

勇者「うぃーっす!!! せんぱーい!! 今度、ダブルデートでもしましょーねー!!! 俺もちょー美人の嫁さんつれていくんでー!!!」ダダダッ

兵士長「はしゃいで転ぶんじゃねぇぞぉ。……すっかり舞い上がってるなぁ。ダイヤの原石を磨いてやったほうがずっといいと思うんだがなぁ、俺は」

ホテル スウィートホーム

勇者『……綺麗だ』

シスター『そうですね。夜景が綺麗です』

勇者『違うよ。君のことさ』

シスター『ゆ、勇者様……』

勇者『君の純潔は神にではなく、俺に捧げてくれ』

シスター『はいっ』


勇者「――おしっ。予行練習は完璧だ。あとは、本番のときに上手くできるかどうかだが……」

「勇者様……」コンコン

勇者「(キタッ!! 平常心……平常心……)」

勇者「あ、あいてぇーますよぉー!」

シスター「……」ガチャ

勇者「よ、ようこそぉ……!! こんにちは!!!」

シスター「はい」

勇者「(落ち着けぇ、俺……。深呼吸、深呼吸……)」

シスターのセリフが性的な意味でなく意味深だが…これはあれか、「墓の下で親子仲良く語り合うがよいわ!」的なノリなのか?

>>199
ホテル スウィートホーム

ホテル スウィートルーム

いや、あれだろ異母的な……

EDで勇者は人知れず姿をくらます
それは勇者が絶望したからなんだな

勇者「スー……ハァー……スゥゥゥ……ハァァァ……」

シスター「綺麗ですね」

勇者「そうですね。夜景が綺麗です」

シスター「はい。本当に」

勇者「違うよ。君のことさ」

シスター「は?」

勇者「あ、いや……」

勇者「(くそぉ……!! くそぉ……!! うまくいかねえぇ!! だが!! 彼女はもう我が手の内!!! なにしたって大丈夫だぁ!!!)」

シスター「……こんな素敵な部屋を取ってくれてありがとうございます。私なんかのために」

勇者「な、何をいっているんですか。それより、シャワーをあびてきてはいかがですか?」

シスター「でも、あの、私はお話を……」

勇者「まずは今日一日の疲れと汚れを落としてくるのがいいかと」

シスター「そ、そうですか? 勇者様は?」

勇者「俺はもう準備万端ですから!!」

シスター「……で、では、お言葉に甘えて」

勇者「ここまでは恋愛マニュアル通りに事が進んでる……。あとは、タイミングだけだな」

勇者「押し倒すのは絶対にNGだから、優しく肩を抱いて……ベッドに座らせてから……」

シスター「――いいお湯でした」

勇者「おぉ!? さ、さっぱりしましたか?」

シスター「はい。あんなに広いお風呂は初めてです。ありがとうございます」

勇者「そうですかそうですか。喜んでもらえて俺も嬉しいです」グイッ

シスター「きゃっ!?」

勇者「……」

シスター「あ、あの……顔が近いです……」

勇者「君の純潔を……僕にくれぇ……」

シスター「な、何を言って……」

勇者「そして……もう結婚を前提に……はぁ……はぁ……」

シスター「あ、あの、待ってください!!!」

勇者「なんすか? 俺、俺、もう……!!」

シスター「貴方と私は……その……腹違いの兄妹なんですよ?」

はい

近親相姦か・・・

別に俺は妹でもいいと思うで?

全然かまいせん

恋した相手が妹だったとか最高じゃないですか

勇者「……え?」

シスター「今日は……そのことで話を……」

勇者「……」

シスター「私の父と貴方のお父様は同じ人なんです……」

勇者「は?」

シスター「貴方が父の墓前にいつもいるので、おかしいなぁとは思っていたんです」

勇者「はぁ……そうなんすか?」

シスター「母から父がどのような人物なのかは聞いていたので、もしかしたらって思っていたんです」

シスター「色々な場所に淫らな関係をもった女性がいて、それで……何人もの子どもがいることも知っていました……」

勇者「あぁ、親父ならありえそうっすね」

シスター「母に子どもを産ませて責任を放棄し、私が生まれても一度も顔を見に来ることすらなかった父親を私は恨んでいました」

勇者「はぁ……」

シスター「でも居所を突き止めたときには、もう死んでいて……。私にとっては最後まで身勝手な人だった……」

シスター「私は父のことを何も知らないんです。どんな人だったのか、知りたくて私はこの町に住むことを決めました。そして……貴方を知ったんです……」

勇者「へぇー。そっすか。すごいっすね」

シスター「教えてくれますか? 私の父親がどんな人だったのか、どんなことをしていたのか知りたいんです。知った上で……」

勇者「うえで?」

シスター「バカヤローって墓の前で言いたいんです。そうでもしないと気がすまなくて」

勇者「ええと。まぁ、だらしない男だったのはしってるんすよね?」

シスター「はい。でも、それだけです。母も一夜限りの関係だったみたいで……。それ以上のことはわからなくて」

勇者「この町に来てから色々調べたんじゃないんすか?」

シスター「耳にするのは似たような話ばかりです。愛人が何人もいたとか、港の数だけ恋人がいるとか」

勇者「親父め、やりおる」

シスター「でも、勇者様……いえ、兄さんならきっと他のことも知っているんじゃないかって……。違う父の顔が分かるかなって……だって……」

シスター「父が本当に愛していた女性って、兄さんのお母様みたいですから」

勇者「な、なんで?」

シスター「父がこの町に住んでいて、最後に帰ってくる場所はここみたいでしたから」

勇者「それは親父が城の兵士だったからで」

シスター「この町に守りたい人がいるから、ずっとここで兵士をしていたのではないかと私は思っています」

勇者「ま、まぁ、確かに母さんはすげー美人で、色んな人に言い寄られてたみたいっすけどぉ……」

シスターだけに妹ってかwwwwwwwwwwww

シスター「やっぱり!! どんな人だったんですか!? 教えてください!!」

勇者「ちょ、ちょっと待って!!」

シスター「な、なんですか?」

勇者「……君は親父のことを聞くためだけに、俺の誘いにのったってことか?」

シスター「はい。丁度いい機会でしたので」

勇者「それなら俺の部屋を訪ねてくれたらよかったのでは?」

シスター「勇者である兄さんはとても忙しいみたいでしたから、ご迷惑かなと……」

勇者「俺がホテルを予約する前に、父親のことで話があるとか言ってくれたらよかったのでは?」

シスター「兄さんに……可愛いって言われて……その、嬉しかったんですけど……」

勇者「なんすか」

シスター「あの場で妹ですって告白したら、もう会えなくなるような気がして……」

勇者「……確かに」

シスター「兄さんは私のこと……その……」

勇者「ええ。狙ってました。恋におちてすらいました。君は俺の純粋な気持ちを弄んだのかい?」

シスター「ご、ごめんなさい……そんなつもりは……。でも、こうでもしないと兄さんが逃げてしまいそうだったから……」

まぁよく考えたら同じ墓の前でそう何度も偶然では会わないわな

>>213

誰うま

勇者「そうかぁ……そうなのかぁ……」

シスター「兄さん……」

勇者「……禁断の愛なんてのもいいかもしれないな」

シスター「え?」

勇者「同じ血は半分しか流れてない。多分、結婚しても大丈夫だよ」

シスター「だ、ダメです!! そんな兄妹でなんて……!!」

勇者「うるせぇぇ!!!」ガバッ!!!

シスター「きゃぁ!?」

勇者「俺は……俺は……この日を糧に……森にいって、狼の群れとも戦ったんだぁ……」

シスター「に、兄さん……」

勇者「今日、俺は……男になるって……きめてたんだぁ……!!!」

シスター「や、やめて……兄さん……」

勇者「ぐ……ぁ……」

シスター「ダメ……兄妹なんだから……こんなのダメ……」

勇者「ぐぁ……ぁぁぁ……ぁぁああああ……!!! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

いや流石に無理矢理はよくないよ無理矢理は

京介「おいおい兄妹でとか…ないわー」

ゆっくり落としていこう

シスター「兄さん……!」

勇者「そうだな!!! 血を分けた兄の誘いだ!!! よっぽどのことがなければ断ったりしねえよなぁ!!!!」

シスター「……うん」

勇者「アーッハッハッハッハ!!!! お前は最高の妹だぜぇ!!!!」

シスター「兄さん、あの……恋人とかにはなれないけど……あの、これからは一緒に住むぐらいは――」

勇者「フフフハハハハハハハハ!!!!! なぁーんてこったぁぁぁ!!!! こんなに可愛い妹が俺にいたなんてぇ!!!」

勇者「おやじぃ!!! やってくれんじゃねえかぁ!!! 相変わらず、いい仕事してやがるぜぇ!!!! ハーッハッハッハッハッハ!!!!」

シスター「そんな……可愛いなんて……」モジモジ

勇者「俺は幸せものだなぁぁぁ!!!!」

シスター「私もまさか勇者様が兄だったなんて、嬉しいです。こんなに立派な兄がいたなんて母が知ったらきっと喜んでくれます」

勇者「だろうねぇ!! 吉報を手紙にしたためればいいさぁ!!!」

シスター「はいっ。そうします」

勇者「今日はここに泊まっていくといい。兄からのささやかなプレゼントだ」

シスター「え、でも、兄さんから父の話を……」

勇者「いやいやいや!! お前みたいな可愛い妹一晩も一緒とか理性がもたないよ。俺は宿舎に戻るから。金の心配はしなくていいよ。一泊分は払ってあるから。二泊目からは自腹な」

悲しいなぁ(大嘘)

この勇者絶対にイケメンやぁ…

これはつらいなぁ…

シスター「兄さん、本当にいいんですか? ここ、高かったんですよね?」

勇者「良いっていってるだろ。お前だって広いお風呂に入れて嬉しいっていってたじゃないかぁ」

シスター「そうですけど……でも……兄さんに迷惑を……」

勇者「馬鹿野郎。妹が兄に気を遣うんじゃねえよ」

シスター「兄さん……」

勇者「また会いにくる。そのときたっぷりと話してやるよ。親父のことをさ」

シスター「はい。待っています」

勇者「それじゃ」

シスター「兄さん!」

勇者「なんだ?」

シスター「本当にありがとう。こんなにも綺麗な夜景を見せてくれ」

勇者「お前のほうが何倍も綺麗だよ」

シスター「や、やだ……もう……」

勇者「ふっ……。おやすみ」

シスター「おやすみ、兄さん」

親父の墓を滅しよう


この報われなさがなんとも親近感が

城下町

勇者「うおぉぉぉぉぉぉお!!!!!!! うおぁぁああああああ!!!!!」

門兵「おい。こんな夜に何を騒いでいるんだ?」

勇者「だまぁぁれぇぇぇ!!!!」

門兵「な、なにかあったのか?」

勇者「うっ……こんな仕打ちあるかよぉ……!!! おれがなにしたっていうんだぁぁよぉ……!!!」

門兵「お、おい」

勇者「ひとなみにもてたいっておもうのが、そんなにつみなのかよぉ!!! なぁ!? 教えてくれよぉ!!!」グイッ

門兵「く、くるしぃ……!!」

勇者「うわぁぁああああああ!!!!!」

門兵「……」

兵士長「なんの騒ぎだ?」

門兵「あ。いえ、その……」

勇者「なんだよぉ……なんでもするからよぉ……おれに……しあわせをすこしだけ……かけらでもいいから……わけてくれよぉ……!!! あぁぁぁ……!!!!」

兵士長「こりゃ、ひでぇな。どんな振られかたしたんだ……」

真っ当な理由があるとはいえ、自分への好意を理解しながらそれをだしにして誘い出して散々期待させ、
用が済んだら「家族でした」と言って振る…

これは無自覚な性悪と言われても仕方ないクラス

酒場

兵士長「ふぃー……。そうかぁ。あの糞野郎の娘だったのか」

勇者「ぐすっ……うぅ……ぅぅ……!!」

兵士長「今日は飲もう。な?」

勇者「せんぱい……嫁さんは……いいん、っすかぁ……?」

兵士長「バーカ。今日は嫁なんざ忘れたよ。気が済むまでのむぞぉ」

勇者「せんぱぁい……!!」

兵士長「ジャンジャン飲め。今日も奢ってやる」

勇者「あざすぅ……!! ――すんませーん!!!!」

バニー「はぁーい」

勇者「君の心はおいくらですか?」

バニー「生ビールでいいですか?」

勇者「心に空いた穴を貴女の愛で埋めてください」

バニー「畏まりましたぁー。マスター、生おねがいしまーす」テテテッ

勇者「……よし! のむっすよ!! 今日はとことんのんでやるっす!!!」

勇者「女なんてぇーもうこりごりだぁー!! ちくしょー!!! 女なんてぜったいにもう信用しねぇー!!!」

兵士長「すっ……ぱぁー……」

勇者「おんななんて……おんなんてぇ……!! おれはぁー!! いっしょう、童貞でいい!!! 俺の純潔をクズどもになんぞ、渡してたまるかってんだぁ!!!」

兵士長「おぅ。言ってやれ言ってやれ」

勇者「童貞こそがぁ、俺の誇りっすよぉ。墓まで待っていくっす。きめましたっ!!」

兵士長「素晴らしいねぇ。それでこそ勇者だ」

勇者「ハーッハッハッハッハッハ!!! ヒャーッハッハッハッハッハ!!!! ナーッハッハッハッハッハ!!!! ハーッハッハ……ハァ……」

兵士長「おい、どしたぁ?」

勇者「……せんぱぁい。俺、なんでモテないんすかぁ? 勇者になったのもモテるためなんすよぉ……なのに……なんでっすかぁ……」

兵士長「諦めなけりゃあ、きっといい女がひょっこり現れるって」

勇者「ふんっ。聞き飽きたっすよ。その台詞」

兵士長「悪いな。可愛い後輩を慰めることもできねえ男で」

勇者「まったくっすぅ……。すんませーん!! 酒、おかわりぃー!!!」

バニー「はぁーい、ただいまぁー」

兵士長「(姫の話は明日だな、こりゃ)」

城下町

兵士長「本当に一人で戻れるか?」

勇者「よゆーっす。俺をだぁれだと、おもってんすかぁ? 天下無敵の勇者様っすよぉ? ひーっひっひっひ」

兵士長「姫が待ってんだろ。早く戻ってやりな」

勇者「ひめぇ!? へんっ。あんなクソガキなんてぇ、どぉーでもいいんすよぉ!!!」

兵士長「そういうなよ。お前のこと頼りにしてんだから」

勇者「あいつがもっとボインボインならやる気がでたんすけどねぇー」

兵士長「あと5年は様子みてやれよ」

勇者「おれは!! 今すぐ!! ほしいんです!! 彼女がぁ!! 嫁がぁ!! 伴侶がぁぁ!!!!」

兵士長「分かった分かった。もう休め」

勇者「今日は、あざしたぁ!!」

兵士長「はい。お疲れさん」

勇者「先輩!!! おれぇ!! まけねえっすからぁ!!!」

兵士長「おーぅ。しっかりやれ」

勇者「もうね!! 悟りましたからぁ!!! モテたいとか思わないっす!!!! うっひょぉぉ!!! イェーイ!!!! どっからでもかかってこいやぁぁ!!!」

勇者「あー……せかいがまわってるなぁ……。もっと歪めばいいんだぁよぉ。世界が歪めばよぉ、俺がモテモテになる世界に変わるかも……なぁ……」

勇者「ハハハハハハハ!!! 世界がひっくりかえったって、そんなことあるわけねぇええかぁ!!!!」

勇者「……かえろ」

「グルルルル……」

勇者「あん?」

狼「グルルル……!!」

勇者「なんだぁ、でけえ犬畜生だなぁぁ。やるかぁ! こいよぉ!! おらおら!!」

魔女「随分と酔っているようね」

勇者「お前……は……」

魔女「ふふ……。あの子はどこかしら?」

勇者「あぁん? いうわけねえだろぉ、ぶぁーか!!」

魔女「そんなこと言わないで」スリスリ

勇者「おっほぉ……なにすんだよぉ……?」

魔女「教えてくれたら、いいことしてあげるわよ?」

勇者「マジっすかぁ……? へへっ、どぉーしよっかなぁ……」

宿舎 勇者の部屋

狼少女「あぅ……あぅ……」ウトウト

勇者「おーい!! もどったぞぉい!!!」

狼少女「ぅあ!? 戻ったか!?」

勇者「おーぅ。いい子にしてたかぁ?」ナデナデ

狼少女「あい!」

魔女「――やっと会えたわ」

狼少女「え……」

魔女「さぁ、帰るわよ」

狼少女「あぅ……やだぁ……」

魔女「聞き分けのないこと言わないの。完全に薬の効果が消えているわね……」

狼少女「うあぁぁ……!!」

勇者「どしたぁ?」

狼少女「あ……ぅ……」ギュッ

勇者「んだよぉ……はなせよ……」

魔女「みんな待っているわよ」

狼少女「い、いや……!! いやぁ!!」

魔女「……」

狼少女「こいつについていく!! そう決めた!!」

魔女「ふんっ!!」パシンッ!!!

狼少女「あぅ!?」

勇者「あーらら……」

魔女「行くわよ」グイッ

狼少女「た、たすけ……」

勇者「……」

魔女「ありがとう、勇者様。もう二度と会うことはないわ」

勇者「おい、まてよぉ。いいことしてくれんだろぉ? ほら、脱いでくださいよぉ。ほれほれぇ」

魔女「……いけ」

狼「グルルルル……」

勇者「なんだぁ? 獣とヤレってかぁ!? そこまでおちぶれちゃいねえぞぉ。こらぁ!!」

魔女「さようなら」

狼少女「あぁ……!!」

狼「ガァァァウ!!!」

勇者「――邪魔だ、おらぁ!!!!」ドガァ!!!!

狼「ガッ……!?」

魔女「うそ……!? 素手で……!?」

勇者「いいことしてくれんだろぉ!? 俺は約束守ったのにぃ、そりゃあねえだろぉ!?」

狼「グルル……」

勇者「やらしてくれるんじゃねえのかよぉ!! 冗談じゃねえぞ!!! おらぁ!!! 女性不信になっちまうぞ!!! あぁぁ!! いいのかぁ!?」

魔女「(これ以上、騒がれたら……)」

「まーた勇者殿が騒いでるみたいだなぁ」

「一応、様子見にいくかぁ」

魔女「ちぃ……」

勇者「約束守る気ねえなら、そいつ置いてけぇ」

狼少女「たすけて……」

勇者「今は虫の居所が果てしなくわりぃんだ……。美人でも容赦しねえぞ……こらぁ……!!」

魔女「置いていけですって。誘拐しておいてよくいう」

勇者「誘拐だぁ? あんたこそ、こいつをどっかから攫ってきたんだろぉ……?」

魔女「……」

勇者「なんとかいえ――」

狼「ガァァァアウ!!!!」

勇者「なんだ犬畜生!!! 人間様に勝てるとおもってんのかぁぁぁ!!!!」

魔女「(今のうちね)」グイッ

狼少女「いや……いやぁ……!!」

魔女「くっ。仕方ない。ここで薬を……」

狼少女「ちゅうしゃ……いやぁー!!」

兵士「誰だ!!」

魔女「大人しくしなさい!!」

狼少女「ガルルルル……!!!!」

兵士「その子をどうするつもりだ!!」

魔女「――いい機会だわ。さぁ、行きなさい」

狼少女「……」

兵士「どうした? 早くこちらに――」

狼少女「アァァァァウ!!!!!」

兵士「な……!?」

魔女「ふふ……。大人を圧倒できればそれでいい」

狼少女「ガァァァァウ!!!」

兵士「くっ……!! 勇者殿!!! 勇者どのー!!!」

勇者「なんっすかぁ!!!」

兵士「一体、これは……!!」

勇者「あぁ!? そいつが魔女っす!! つかまえろぉ!!!」

兵士「魔女……!! 敵襲ー!!! 魔女だぁー!!!」

魔女「(薬の効果のほどは見れた……。まだ捕まるわけにはいかないわ……)」

魔女「もういいわ!! 行くわよ!!」

狼少女「あい!!」

えー

狼「ガァァァァウ!!!」

勇者「この……!!! どけおらぁ!!!」ドガッ!!!

狼「グルルル……!!」

勇者「魔女は!?」

兵士「町のほうへ逃げました!! 追います!!」

勇者「たのむっす」

勇者「(あれだけ怒ってたから取り戻しにくることは予想してたけど、結構早かったなぁ……。くそ、酒のむんじゃなかった……)」

狼「グルルル……」

勇者「まだやるかぁ?」

狼「……」

勇者「……なんだ?」

狼「……ガウっ」ダダダッ

勇者「あ、逃げた」

勇者「んじゃ、あとを追わせてもらうぞ」

勇者「うわぁぁああああ!!!!」ダダダッ

これは…シスターが悪い!(錯乱)

城下町

魔女「ふふふ……。よかったわぁ。取り戻せて」

狼少女「……」

魔女「貴女がいないと、寂しいもの」

兵士長「――どこいくんだ。こんな夜更けによぉ」

魔女「……ちっ」

兵士長「まさか、魔女から来てくれるとは思わなかったぜぇ。助かった」

魔女「通してもらえるかしら?」

狼少女「……」

兵士長「ふぃー……。姫を人質にするつもりか」

魔女「本当はしたくないのだけどね」

兵士長「くだらねえ脅しはやめろ。お前が姫を殺すのは勝手だ。それでも俺はお前を捕まえるぜ」

魔女「……捕まえる?」

兵士長「あんたを連れて来いって言われてんだよ」

魔女「そうなの……。てっきり、殺されるのかと思っていたけど、ふぅーん。そうなの……」

兵士長「なに?」

魔女「それって国王が私に会いたがっているってことよね」

兵士長「……」

魔女「ふふふ……。そう。なら、話が違ってくるわね」

兵士長「なんだと?」

狼「ガァァウ!!」

兵士長「おぉ!?」

勇者「にがさんぞぉぉ!!!」

兵士長「お前!!」

勇者「あ、先輩! ちっす!! なにしてんすかぁ?」

兵士長「てめぇがちゃんと戻れたかどうか確かめてこいって嫁に言われてな。そしたらお祭りが始まってやがったんだ」

勇者「できた嫁さんっすねぇー」

兵士長「てめぇこそ、なにしてやがる。姫を奪われてんじゃねえか!!」

勇者「酒が入ってなけりゃあ、こんなことはなかったっす!!」

兵士長「どーだかぁ。素面でもハニートラップに引っかかってたんじゃねえの?」

勇者「それは否定しないっすけど……」

兵士長「ったく、減給ものの失態だぞ」

勇者「……反省してるっす」

狼少女「アァ……ゥ……」

勇者「さぁ、魔女さん。返してもらいましょうか」

兵士長「残念だけどなぁ。姫はあんたよりも、勇者のほうが好きらしいぜ」

魔女「……新旧の勇者に追い詰められては逃げ場はないわね」

勇者「諦めたっすかぁ。素直じゃないっすか」

魔女「お手上げね。好きにするといいわ」

兵士長「……」

魔女「何?」

兵士長「いや。こっちにこい」

魔女「はいはい。あ、勇者様。この子のことよろしくね」

勇者「(なんだ……?)」

狼少女「アァ……ォ……ウ……」

流石に詐欺に近いやり方でこっぴどく振られたらしばらくはそういうのに引っかからなさそうだが…この勇者はなぁw

勇者「おい、大丈夫か?」

狼少女「アァ……ウゥ……」

勇者「そうだ。薬を……」

狼少女「アァァ……ウゥゥ……」ギュッ

勇者「……」

狼少女「アァァ……ぁぁ……」

勇者「悪かったよ。守ってやれなくて」

狼少女「う、そ……つき……」

勇者「ごめん」

狼少女「あぅ……ゆる、さない……」

勇者「……すまん」

狼「……」

勇者「なんだ? 取り戻すつもりか? やれるもんなら……」

狼「……」タタタッ

勇者「……魔女といい狼といい。何がしたいんだか」

…姫?(文盲)

城内 謁見の間

魔女「……」

王「おぉ……。でかしたぞ」

兵士長「いえ」

王「魔女よ。各地で起こっている事件に関わっているのは分かっている。弁明はあるか?」

魔女「ないわ。全部私がやったことだもの」

王「何のためにだ」

魔女「……知ってるくせに」

王「……」

兵士長「陛下、あの……」

王「地下牢に放り込んでおけ」

兵士長「はっ。こいっ」

魔女「痛くしないで欲しいわ」

兵士長「つべこべいうな」

魔女「はいはい」

宿舎 勇者の部屋

勇者「あーあ、部屋の中、滅茶苦茶だなぁ。ここまで滅茶苦茶だと片付ける気もおきねー」

狼少女「……」

勇者「んだよぉ。謝ってんだろぉ。もう二度とあんなことには……」

狼少女「……っ」ギュッ

勇者「怪我してるのか?」

狼少女「お前、どこか行くの禁止な」

勇者「……そうだな。もういかねえよ」

狼少女「本当か?」

勇者「ああ。もう行くところがなくなったしなぁ……。それより、どこかおかしいところはないか?」

狼少女「うー……?」

勇者「なんでもいい。どっか痛いとか、苦しいとか」

狼少女「ある。胸だ。胸が苦しい」

勇者「胸だぁ? どう苦しいんだ?」

狼少女「なんか、きゅーって締め付けられてる感じがするぞ! どうにかしろ!!」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

ふむ



ふむ

勇者「よくわかんねえけど、痛み止め飲んどくか?」

狼少女「薬はいやだ。ちゅうしゃもいやだ」

勇者「我侭いうなよ。死にたいのか?」

狼少女「わかった! これ恋わずらいだ!! 多分そうだ!! あの本に書いてた!!」

勇者「はいはい。そんな相手いねえだろ、お前」

狼少女「あぇ? ちがうのか?」

兵士長「――よう、ご両人。仲いいねぇ。まるで恋人同士じゃねえのぉ」

勇者「先輩。魔女はどうなったっすか?」

兵士長「今は地下牢だ。それよりな……」

勇者「なんすか?」

兵士長「嫌な予感がするんだ。どうにも面倒なことになりそうだ」

勇者「はっきり言ってくださいよ」

兵士長「なぁ、姫。母親はいないって言ってたけど、それって死んだってことか? それともどこかに行ったのか?」

狼少女「母親はいない!」

兵士長「姫の生みの親はいるだろ? まだ生きてんじゃねえのか? 教えてくれねえか。大事なことなんだよ」

狼少女「いない!!」

勇者「まさか……お前……」

狼少女「私に母親なんていない!!」

兵士長「薬漬けにしてくるような奴を母親とは認めたくないってことでいいか?」

勇者「……魔女が母親なのか?」

狼少女「……」

兵士長「わざわざリスク背負ってまで取り戻しに来た理由がわかったな。歪んではいるがあれで娘を愛してるんだろうぜ」

勇者「実の娘に嫌われてるじゃないっすか」

兵士長「ハハッ。確かにな。じゃ、次の問題だ」

勇者「薬で父親は狼だと思い込まされていて、正気に戻れば『父親はよくわからない』でしたもんね」

兵士長「姫。父親が誰なのか知らないんだろ?」

狼少女「よくわからない」

勇者「先輩、心当たりでもあるんすか?」

兵士長「調べてみないとわからんが……。姫は本物の姫様かもしれねえな」

狼少女「あぅ?」

地下牢

王「……」

衛兵「国王陛下!! な、何故ここへ!?」

王「席を外してくれ」

衛兵「し、しかし……今ここには……」

王「命令だ」

衛兵「はっ! 失礼しました!!」

王「うむ……」

魔女「――ふふ。明日まで待てなかったのかしら?」

王「……」

魔女「変わらないわね。せっかちな人」

王「会いたかったぞ」

魔女「どうして?」

王「お前を愛しているからに決まっている」

魔女「嬉しいわ。私もよ、アナタ。うふふふ……」

宿舎 勇者の部屋

勇者「……」

狼少女「姫か。私、姫なのか」

勇者「まだわかんねえだろ。かもしれないってだけで」

狼少女「姫か! なんかかっこいいな!!」

勇者「そうか?」

狼少女「お前に命令できるか!?」

勇者「まぁ、できるな」

狼少女「よし! 私、姫になるぞ!! それでお前に命令する!!」

勇者「なんて命令する気だ?」

狼少女「私から離れるな!!」

勇者「すみません、その命令はきけません。姫、調子にのるのも大概にしろよ」

狼少女「ガルルルー!!!」ガブッ

勇者「やめろよ。汚いだろうが」

勇者「(姫か……。国王と妃の間に子どもがいたとは聞いたことないし……。だとしたら魔女は陛下の側室か何かだったってことになるか……?)」

翌朝 城内

兵士「隊長!!」

兵士長「すまんな。どうだった?」

兵士「公式記録ではないのですが、気になる文書を見つけました」

兵士長「そうか。やはり大臣クラスが隠していたか」

兵士「この事実を知っていたのは恐らく当時勇者であった……」

兵士長「わぁーってる。城下町の種馬だろ」

兵士「はい。彼は特命で魔女狩りを行っています」

兵士長「それはどういう理由でだ?」

兵士「姫君の奪還と妃を殺害した魔女を捕らえるためです」

兵士長「あの二人の間に子どもはできなかったからな。側室との間にできた赤子をそのまま姫にするしかなかったわけだ」

兵士「そういうことになりますね」

兵士長「糞野郎を殺したのはあの魔女だったか……」

兵士「おや? なんでしょうか、靄が……」

兵士長「んぅ? こりゃ霧か……? 城の中で霧なんて……」

宿舎 勇者の部屋

勇者「でへへへへ……ついに、おれも……ハーレムを完成させたぞぉぉ……」

狼少女「おい!! 起きろ!!」

勇者「あぁ……。うっせぇなぁ……もうすこしねかせろぉい……」

狼少女「お、き、ろー!!!」デーンッ

勇者「ごふっ!? なにしやがる!? のしかかってくるんじゃねえよ!!」

狼少女「霧!! 霧だ!!」

勇者「霧だぁ?」

狼少女「うぅぅー……!!」ギュゥゥ

勇者「……おい。これ半分持ってろ」

狼少女「これ……薬……」

勇者「自分がおかしくなったと思ったら飲め。気休めにはなる。わかったか?」

狼少女「あ、あい……。お前、どこいく?」

勇者「とりあえず陛下に会いにいってみるかぁ」

狼少女「か、かえってこいよ!! 約束だ!!!」

勇者「何言ってんだ。お前もこい」

狼少女「あぇ!?」

勇者「なんだよ? 嫌なのか?」

狼少女「だって……おかしくなって、お前傷つけるの……いやだ……」

勇者「俺を誰だと思ってんだ? お前みたいなガキに傷なんてつけられるわけないだろ?」

狼少女「バカにすんなー!!!」ガブッ

勇者「おーし、いくぞぉ」ガチャ

狼少女「あい!」

勇者「(うわぁ……。すげぇ、霧だな……。本当に霧ならいいけど……)」

衛兵「勇者殿。おはようございます」

勇者「うーっす。何か異常はないっすか?」

衛兵「見るからに異常でしょう。この濃霧ですし」

勇者「町で発生はしてないっすか?」

衛兵「ええ。城の敷地内だけみたいです」

勇者「それはそれは。作為的っすねぇ」

謁見の間

勇者「陛下!!」

狼少女「ガルルル……」

王「……勇者よ。どうした?」

勇者「この霧、原因は?」

王「何故、私に訊く?」

勇者「そりゃ……」

魔女「――不敬罪で死刑するわよ?」

勇者「お前……!!」

狼少女「あぅ……あぅ……」

魔女「その子を返してくれるなら、許してあげてもいいけどね」

勇者「……」

狼少女「うぅ……!!」ギュゥゥ

王「勇者よ。言うとおりにしてくれないか。その娘はとても大事な存在なのだ」

勇者「大事? 次期女王陛下だからですか?」

魔女「あら。知っていたの? お父さんから聞いたのかしら?」

勇者「(親父……?)」

王「その通りだ。その娘は私の血が通っている。ずっと、ずっと探していたのだ」

勇者「だから、魔女を探してたと?」

王「そうだ。そして今日、この日。全てが揃った。妻と娘が戻ってきたのだ」

勇者「陛下。貴女の隣にいるのは魔女なのですよ?」

王「知っている」

勇者「そいつが何をしようとしていたのかも知っているのですか!?」

王「無論だ。幻覚剤を用いて、国内を混乱させ、国を滅ぼそうとしていた」

勇者「な……!?」

王「動物は人間を見れば容赦なく牙を剥き、人間は人間を発作的に殺害する。そんな強力な薬だ」

王「こうして霧のように散布することで小さな町なら簡単に壊滅させることができる。画期的な兵器と言えよう」

勇者「陛下……何をいっているのですか……」

王「お前には分からんか? 愛した女がしたことだ。私はこれらを受け入れる。妻の兵器は世界を征服できるだけの力もあるしな」

勇者「本気でいってんすか?」

魔女「素敵よ。アナタ」ギュッ

王「ふふはははは……」

勇者「……っ」

狼少女「あぅ……」

王「勇者よ。さぁ、娘を渡してくれ。今まで世話をしてくれていたそうだな。ご苦労だった。お前には特別報酬をくれてやろう」

勇者「陛下!! 正気っすか!?」

王「私はな、この魔女に身も心を奪われている。前妻が死んだあのときからな」

勇者「それも魔女の仕業じゃないんすか?」

王「そう。この魔女が殺した。嫉妬に狂ってな」

勇者「頭おかしいっすよ」

王「それだけ私のことを想ってくれているということだ。ここまでされると考え方も変わる」

魔女「ごめんね。私、アナタが怒ってると思ってずっと逃げてたの」

王「私のほうこそ悪かったな。お前が腹を痛めて産んだ子を渡せと言ったばかりに傷つけてしまった。思慮が足りなかったよ」

魔女「いいのよぉ。私もずっとアナタのことを愛していたからこそ恨んでいたけど、こうして一緒になれるんですもの……。もう許してあげるっ」ギュッ

勇者「……」

1000まで続けて

魔女「勇者様。そういうわけで、私の娘を返してください」

勇者「こいつに何するつもりっすか?」

魔女「なにって、その子は新しい兵隊なのよ」

勇者「兵隊……!?」

王「特別な薬を投与することで極限まで身体能力を発揮することができるそうでな。子どもであろうとも兵士を制圧できるという優れものだ」

勇者「あぁ、そうっすかぁ……。狼と一緒に行動させてたのは野生児っぽくみせるためとかか!!」

魔女「そうよ。そのほうが違和感ないでしょ? 奇声をあげたり、叫んだりしていても」

勇者「(ってことは、こいつは普通の女の子なんじゃないか……)」

狼少女「ぅ……あぅ……」

王「次期女王にして最高の兵士だ。それに姫自らが戦場に立てば士気もあがるというもの」

魔女「もう。そんなことにはならないでしょっ。私の幻覚剤があるんだしっ」

王「それもそうだな。でも、娘にも活躍の場がないとなぁ。可哀相だろう」

魔女「考えておくわっ。うふっ」

王「うむ。頼むぞ」

勇者「……っ」ピクッ

王「納得できたか、勇者よ。娘を置いて――」

勇者「断る!!!」

王「……なんだと?」

勇者「断るっす!! この魔王!! よりにもよって俺の前で美人の魔女とイチャイチャしやがって!!! あーもう!! はらたつぅ!!!! 死ね!! 死ね!!」

王「勇者よ。お前はわが国の一兵士だ。勇者というのは称号にすぎんぞ。特別な権限などないし、ましては私に逆らうなど言語道断」

魔女「そうよ。勇者は国のため、王のために働く最強の兵士でしょう?」

勇者「国のため? 王のため? はんっ!! ちゃんちゃらおかしいっす!!!」

王「貴様……!!」

勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」

魔女「フフフ……。お父さんにそっくりねぇ」

王「ならば、どうあっても娘をよこさぬというんだな」

勇者「わたすかぁ!!! ぼけぇ!! 子ども欲しかったらもう一回つくれ!!」

魔女「そのつもりよ。ねー?」

王「こらこら。恥ずかしいだろう。はははははは」

勇者「うわぁぁぁあああ!!!! いい加減にしろぉ!!!!」

王様に対してここまで言い切るとかっこいいな

狼少女「だ、大丈夫か?」

勇者「行くぞ!! こんな国なんざこっちから願い下げだぁ!! あー!! やってらんねえ!! マジつまんねえ!!!」

狼少女「あぅ……でも……」

勇者「俺についてくるか、それとも魔女と魔王のところに残るか。ここで決めろ!!」

狼少女「そ、そんなのお前についていくに決まってる!!」

勇者「おーし!! いい子だぁ!! 初めてお前が可愛く思えるぞぉ」

狼少女「か、可愛いか!! 私、可愛いか!?」

勇者「おう。すんげー、可愛い」

狼少女「おぉー!!」

王「……お前の決意はわかった。だが、簡単にはいかんぞ?」

勇者「ふんだっ。止められるもんなら……とめてみろ!!!」ダダダッ

狼少女「わぁぁー」タタタッ

勇者「こんな町にもう未練なんざねぇ!!!」

王「――反逆者が逃げたぞ!!! 捕らえなくてもよい!! 殺せ!!! ただし娘には傷一つつけるなぁ!!!」

魔女「馬鹿な男。ホント、救いようがないほどに」

兵士「勇者殿が反逆者……!?」

兵士長「なーにしやがった、あのやろぉ。先走りやがって」

勇者「――げぇ!? 先輩!?」

狼少女「あぇ!?」

兵士長「馬鹿野郎。国に喧嘩なんざ売りやがって」

勇者「先輩でも容赦はしないっすよ」

兵士長「……」シャキン

勇者「……」

兵士長「はぁぁあああ!!!」

勇者「こんのぉ!!!」

狼少女「わぁぁぁー!!!」ダダダッ

兵士長「なに!?」

狼少女「ガァァァァウ!!!!」ドガッ!!!!

兵士長「ぐぁ……!?」

勇者「ナイス!! 今のうちだ!!」

城下町

「にがすなぁー!! 捕まえろー!!」

狼少女「きてるぞ!! どこいく!?」

勇者「……こっちだ!!」

狼少女「あい!」タタタッ

勇者「ええい!! 遅い!! 抱きかかえるぞ!! いいな!?」ヒョイッ

狼少女「おぉー!」

勇者「いくぞ!! しっかり捕まってろ!!」

狼少女「あいっ」ギュゥゥゥ

勇者「くるしい!! だきつきすぎ!!」

狼少女「すまん」

「向こうだ!! 追えー!!」

勇者「早くいかねえと……!! この時間ならもう戻ってるだろ……!!」

狼少女「どこいく?」

勇者「教会に決まってるだろ!! 面倒な奴がいるんだ!!」

教会

神父「ホテルのほうどうでしたか?」

シスター「とてもよかったです。兄さ……勇者様にお礼をいわなければなりません」

神父「そうですか。はっはっは」

勇者「――おし!! いた!!」

シスター「兄さん? ど、どうかしたのですか?」

勇者「行くぞ!!」

シスター「え? ど、どこへ!?」

勇者「黙ってついてこい!! 神父さん、すんませんが今日限りでこいつシスターやめるんで!!」

神父「……勇者様」

勇者「こいつをこの町に残してはおけなくなったんす。ホント、すんません」

神父「早く行ってください。上手くごまかしておきますから」

勇者「あざっす!!!」

狼少女「ガルルルル……」

シスター「な、なにがなんだか……」オロオロ

傭兵所

受付嬢「何か外が騒がしくないですか?」

戦士「なにかあったのかしらぁ? やだわぁ」

勇者「――うぃーっす!!!」

受付嬢「きゃ!?」

狼少女「うぃーっす」

受付嬢「い、いらっしゃいませ……」

勇者「前に紹介してもらった戦士の人は!? いるっすか!?」

受付嬢「そ、そちらに」

勇者「おぉ!? よかったぁ!!」

戦士「あらぁ! 勇者様ぁ! どうかしのぉん?」

勇者「あんた、俺のためならなんでもするっていったっすよね!?」

戦士「いったわよぉん。うふっ」

勇者「俺のために命かけてくれっす!!」

戦士「よろこんでかけちゃうわぁ!!」

城下町

戦士「勇者様の妹さんを守ればいいのね?」

勇者「頼むっす!」

戦士「りょうかぁーい。よろしくね。うっふん」

シスター「は、はい」

狼少女「おい!! 前、前!」

勇者「分かってる!!」

門兵「とまれぇ!!」

勇者「どけぇ!!」

戦士「おどきになってぇん!!」ドドドドッ

門兵「げぇ!?」

戦士「じゃないとキスしちゃうわよぉん」

門兵「お前!! モテないからってついに目覚めたか……!!!」

勇者「んなわけあるかぁー!!!」ドガッ!!!

狼少女「わぁぁー!」

門兵「まてぇぇ!!」

兵士長「……やめろ」

門兵「し、しかし!!」

兵士長「あれでも王国一の兵士だぞ。勝てるわけねえだろ」

門兵「これから、どうなるのですか……」

兵士長「わかんねえが、アイツが戻ってくるまでの間、この町を守らなきゃいけないのは確かだ」

門兵「それは……どういう……」

兵士長「何があっても平常心でいろ」

門兵「は、はい」

兵士長「(頼むぜ……。勇者様)」

兵士「隊長!」

兵士長「どうした?」

兵士「陛下が会見を行うと」

兵士長「内容は?」

兵士「不明です。ですが、早急に発表したいことがあるということですが……」

街道

勇者「追っての気配はないか」

戦士「逃げて来ちゃったけど、これからどうするわけぇ?」

勇者「あんまり考えてないっす」

戦士「えぇー? こまっちゃうぅわぁ」

勇者「はぁーあ……結局、俺は誰とも結ばれることなく朽ち果てていくんだろうなぁ……」

シスター「あの、兄さん?」

狼少女「ガルルル……!!!」

勇者「威嚇するな」ペシッ

狼少女「いてっ」

勇者「で、なんだ?」

シスター「あの、この前聞いた結婚を約束したという女性を頼るわけにはいかないんですか? ご迷惑かもしれませんが、宿がないのでは……」

勇者「はっ!! そうだ!! まだ俺には希望が残っているじゃあないかぁ!!! おい!! お前はやっぱり、最高の妹だなぁ!! 妹にしておくには惜しい!!!」ギュッ

シスター「え、そんな……はずかしい……」

狼少女「ガルルルル……!!!」

東の町

勇者「こっちだ! こっち!! いそげー!!」

シスター「はいっ」

狼少女「うぅー……」

戦士「でも勇者様ぁ? その人、ちゃんと待っててくれてるわけ?」

勇者「あの人は引っ込み思案でありましたし、色々とあって結婚とか考えられないはずです。無論、恋人を作ることもできていないはずっす」

戦士「そうなの?」

勇者「ええ。間違いなく」

シスター「私の姉さんになる人ならきちんとご挨拶しておかないといけませんね」

勇者「そうだぞぉ。失礼のないようにな」

シスター「は、はい」

町娘「ふぅ……」

勇者「お! いたいた! よかった、元気そ――」

隊長「何をしているんだ。俺がやるから君は休んでいてくれ」

町娘「そう? でも、体を動かしてないと色々考えちゃうから……」

戦士「あら? 男いるじゃない。しかも、イイ男ぉ」

勇者「……」

シスター「えーと……」


隊長「無理はするな。君に何かあったら……俺は……」

町娘「でも、いいのかしら……。あんなことがあったのに、私たち……」

隊長「罪は償う。でも、今だけは……」ギュッ

町娘「あっ……もう……」

隊長「愛している」

町娘「私もよ」


勇者「……」

狼少女「ざんねんだったなぁー」

シスター「あの、兄さん。本当に結婚の約束をしたのですか?」

戦士「いいわねぇ。あたしもあんなふうに恋がしたぁーい」

勇者「……ふ、ふふ。彼女に笑顔が戻っている。それだけで十分だ。満足だよ。さぁ、行こう。俺たちを受け入れてくれる場所は他にもあるさ。少なくともここに居たくはないんだ、俺」

農村 馬小屋

勇者「ロープはこんなもんでいいか」グイッ

馬「ヒヒーン」

勇者「さぁ、死のう。こんな腐れきった世界にララバイするんだ……」

勇者「世界中にいる既婚者、恋人持ちを恨みつつ、死んでやるぅ……」

狼少女「なにしてる?」

勇者「よぉくみとけ。これが男の散り方だぁい!!」

狼少女「うぁー……」グイッグイッ

勇者「なんだよ。邪魔すんなよぉ」

狼少女「はらへった。なんかくわせろ」

勇者「……はいはい。行くか」

狼少女「あい」

勇者「メシ食ってから死んでも遅くないよなぁ」

狼少女「ない」

勇者「おーし。死ぬ前の腹ごしらえといこうじゃないかぁ……!! めちゃくちゃ食って死んでやる!! 死んでやるぞぉ!! おぉぉー!!!」

くおおおおおおおおおおお
今日も寝れねえぜ

ララバイララバイおやすみよ

おつ


飯食ったら死ねなくなるぞぉぉぉ!

スレタイをきっちり使った良いSSだ・・・。

ここまてま清々しいバカは珍しいから見てて楽しいな。
いいぞ、もっとやれ

激動続きの展開だな
面白くなってきた

おお、アツい展開だな
続きに期待

更新速度が早くていい感じ、だった(過去形)

民家

シスター「食事の用意ができました」

戦士「あらぁ、ありがとう。美味しそうじゃないのぉ」

シスター「お口に合えばいいんですけど……」

戦士「いただきまぁーすぅ」

シスター「兄さんもどうぞ」

勇者「……」モグモグ

シスター「ど、どうですか?」

勇者「……なんでお前が妹なんだ。この世界は狂ってるぜ。さっさとララバイしてー」

シスター「(ララバイ……? 子守唄歌って欲しいのかな)」

狼少女「……」

シスター「美味しい?」

狼少女「べ、べつに普通だ!! 普通!!」

シスター「そ、そう? ごめんね。それにしてもこんな場所を快く貸してくれるなんて兄さんってやっぱり勇者なんですね……」

戦士「そうねぇ。まぁ、村民も少なくなってて空き家が増えてるってのもあるんじゃない? あたしとしてはぁ、勇者様と二人きりになれる愛の巣がほしかったけどぉ。うふふ」

狼少女「こんなの普通だ!! はむっ……はむっ……!!!」

勇者「最後の晩餐に相応しいなぁ!! おかわりぃ!!!」

シスター「食材を分けてくれましたし、あとで改めてお礼を言っておかないと……。――はい、兄さん。どうぞ」

勇者「ありがとぉ!! うまい! うまいっす!!」

狼少女「おかわり!!」

シスター「ありがとう。はい、どうぞ」

狼少女「普通だ!! こんなの別に普通だからな!!!」

戦士「さてと、これからどうするわけぇ? ここに来るまでに勇者様の事情はわかったけどぉ」

シスター「町に帰るんですよね?」

勇者「帰る? なんで?」

シスター「なんでって……。兄さんが言っていた魔女と国王陛下の計画は止めないと戦争になるんじゃ……」

勇者「戦争になんてならねぇっすよぉ。魔女が薬ばら撒いて同士討ちさせるだけなんだから」

戦士「なったとしても戦うのはこの娘みたいにヤク中の人間でしょう? 兵隊を使う必要なんてないもんねぇ」

シスター「そ、そんな人の道から外れたような行いを許すわけには……!!」

勇者「そぉーっすねぇ」

シスター「兄さん。町の人やお城にいる人たちのために戦ってください。私もできることがあるならなんでもします」

勇者「いやだ」

シスター「……え? に、兄さん?」

勇者「ぜんっぜん、モテないし!! 人を助けたって感謝されるだけで、女の子は俺に優しくしてくれない!!! こんな世界なんて大嫌いだ!! けっ!」

シスター「兄さん!!」

勇者「勇者になってから俺は4人の美女と出会ったんだ!! あぁ!! どの人も俺の嫁に申し分ないほどの美女だったさぁ!!!」

シスター「な、何をいっているのですか!?」

戦士「まぁまぁ、聞きましょうよ」

狼少女「おかわり!!」

勇者「一人目はとある村に住む、素朴な女性だった!! 動物を慈しむ心をもった優しくて可愛くて清楚な美人だったんだ!!!」

勇者「だからぁ!! だから俺はぁ!!! がんばったんだ!!! 暴れ馬に轢かれようが!! 蹴られようが!!! 狼に噛まれようが!!! 戦ったんだ!!!」

勇者「でもなぁ、その女性はカッコよくて頭もよくて優しくてしかも医者という出来た男と婚約していたんだってさぁ。ハーッハッハッハ!!! じゃあ、俺ががんばったのはなんだったの!?」

シスター「兄さん……」

勇者「その次は事件が解決できれば結婚しようと約束をした女性だった。少し陰があってもその美貌は正しく完璧な人だったんだぁ!!!」

勇者「だから俺はぁ!!! 狼に襲われようが!! 狂った町民に襲われようが!! みんなを救うために!! もう一度医者に頭を下げて救ったんだぁ!!!」

勇者「でも、その人は今、幸福に満たされていたね? お前も見ただろう?」

シスター「う、うん」

勇者「そう。だから、この話はこれで終わりなんだ。わかるな?」

勇者「で、3人目はお前だ!!! 結果のほどはいわずもがな!!! 容姿端麗でしかも料理ができる!! 家庭的な妹がいたことに感謝してるよ!!!! マジでぇ!!!!」

シスター「ごめんなさい……」

狼少女「おかわりぃ!!!」

戦士「4人目は? もしかして、あたし?」

勇者「魔女だよぉ!!!」

シスター「魔女って兄さんにとっては敵では……」

勇者「敵だよ!! でもあんなにも美人だ!! 酔っていた所為もあるけど誘ってきたときはいけるかも!!って思ったんだぁ!!!」

勇者「でも、結局は自分の娘を利用する、ただのクズだったぁ!!!」

勇者「もー!!! いやだぁぁ!!!! こんなのぉ!!! こんなのぉ!!!!」

シスター「……」

狼少女「おかわりぃ」グイッグイッ

シスター「あ、うん。ちょっと待ってて」

狼少女「あい」

勇者「こんな荒廃した世界に救う価値がどこにある!? あるんですか!? 誰か!! 教えてくださいよぉ!!!」

戦士「そうよ。女なんてみんな酷いのよ。男の気持ちは女の心をもった男にしかわからないわぁ」

勇者「ああ、いいこと言うっすね。その通りかもしれないっす」

戦士「さっすが、勇者様。分かる人でうれしいわぁ」

勇者「魔女にほの字の魔王も!!! 勝手にやってくれってんだ!! 世界をめちゃくちゃにしてくれたほうが俺にとっては好都合でぇい!!!」

狼少女「うぁー……。よしよし」ナデナデ

勇者「同情なんていらねえんだよぉ!!! うわぁぁぁぁ!!!!」

勇者「うぅぅ……うぉぉぉ……ぉぉぉ……!!」

狼少女「あぅぅ……」

シスター「はい。どうぞ」

狼少女「あざす。――おい、お前。おい」

勇者「ぐすっ……なんだよぉ……?」

狼少女「あーん、しろ。これ、ちょっとなら食っていいぞ」

勇者「うぅ……ぅぅ……」

狼少女「あーんっ」

勇者「いらないっ」プイッ

狼少女「あぅ……」

勇者「そうだ! 馬小屋に行こう!! ハーッハッハッハッハ!!! 俺のことを愛してくれるのは馬だけだぁ!!! アハハハハハ!!!」

狼少女「はむっ……」

戦士「あららぁ。色んな女に手痛い仕打ちを受けてきたのね。可哀相。あたしが身も心も慰めてあげたいっ」

シスター「兄さんは本気、なんでしょうか?」

戦士「さぁ。あたし、勇者様のことよくわからないし、ただの傭兵だもの。言われたことをするだけよ」

シスター「言われたことですか」

戦士「そう。だからあたしの今の仕事は、貴女を守ることなの」

馬小屋

勇者「ロープはこんなもんか」グイッ

馬「バヒン」ペロペロ

勇者「……」

馬「……」ブルルッ

勇者「(そういえば、こいつメスなんだよなぁ……。このまま泣き寝入りで死んじゃうより、一度くらい……経験しておいてもいいよなぁ……)」

馬「ヒヒーン」ペロペロ

勇者「なぁ、最後の思い出にお前のこと抱いていいか?」

馬「……」

勇者「もう、俺にはお前しかいないんだ」ギュッ

馬「……」ペロペロ

勇者「いいんだな? ありがとう。優しいな、お前は……」

勇者「シャワーは浴びてこなくていいな。お前のその臭い、割と好きなんだ」

勇者「こっちの準備もできてるぜ……?」スルッ

医者「勇者様、こちらにいると――」ガチャ

支援

(あかん)

医者「あのですね……」

勇者「……ちょっと気が動転してて……その、そんな趣味はないんす。ホントに……」

医者「いえ。そのままだと病気になりますし、動物に対する虐待にもなるので……」

勇者「このことは誰にも言わないでください。特にあの妹には言わないでください。俺、どうかしてたんす。女の子にモテなさすぎて、頭がバカになってただけなんす」

医者「他言はしませんよ。英雄は色を好むと言いますが。ここまでだと敬服する限りです」

勇者「うっ……うぅぅ……。もう、おれ……だめっすぅ……もう……こんな自分がいやになるっすぅ……」

医者「そんなことより、勇者様。検査のほうはされなくてもいいですか?」

勇者「けんさぁ……?」

医者「城のほうで濃霧が発生したのですよね? それはあの連続殺人事件があった町で発生したものでは」

勇者「そうでしょうねぇ……。あんたの薬、貰っていてよかったっす」

医者「城下町の人々のために大量の薬も必要になりますね。私の呼びかけて複数の医師も協力してくれることになっています」

勇者「そうっすかぁ……。あ……そうだ……」

医者「なにかありましたか?」

勇者「あの野生児の健康診断お願いするっす。魔女に変な薬注射されちゃって……」

医者「なんですって? 分かりました。早速、始めます」

勇者「ルールールー……ルールルールルー……」

馬「……」スリスリ

勇者「悪いな。変なことしようとして。そうだよな。俺のことを愛してくれている相手だからこそ、無理やりするなんてあっちゃいけない」

勇者「相手を大事にしないと、いけないよな……。すまない……」ギュッ

馬「ヒヒーン……」

勇者「え? なんだ?」

馬「……」

勇者「……そんなにして欲しいのか?」

馬「……」ペロペロ

勇者「そうか。お前がそこまでいうなら、仕方ない」スルッ

馬「……」ブルルッ

勇者「まずはお前の舌で――」

シスター「兄さん、あのー。あの子が注射嫌がって暴れてるから……あっ」

勇者「……」

シスター「……すみません。勇者様。おやすみなさい」

民家

狼少女「ガルルルー!!!! ちゅうしゃ、やだー!!!」

医者「しかしだね……」

狼少女「絶対にいやだぁ!!!! それ以上近づいたら、噛み付くぞ!! いいのか!?」

医者「困ったな……」

シスター「はぁ……」

戦士「勇者様はどうしたのぉ?」

シスター「私が悪いんです。兄さんがあんなことになったのは……きっと……」

戦士「どゆこと?」

医者「勇者様にも頼まれているから、大人しく……」

狼少女「こっちくんなぁ!! ガルルルル……!!! がおー!!!」

勇者「……ぉーぃ……」

シスター「兄さん……!?」

狼少女「お前!! たすけろぉー!!!」

勇者「きちんと検査を受けろ。お前にもしものことがあったら困るだろぉ」

狼少女「こまる、のか?」

勇者「困るよ」

狼少女「ちゅうしゃ、しないと、お前が困るのか?」

勇者「そうだぁ」

狼少女「……してもいいけど、傍にいろ。それが条件だ」ギュッ

勇者「わかった。おねがいするっす」

医者「助かります。それでは……」

狼少女「うぅぅ……」

医者「いくよー」

狼少女「アァァウ!!」ガブッ

勇者「……」

戦士「勇者様ぁ? どうしたのぉ。元気ないけどぉ」

勇者「……」

シスター「あの……」

勇者「いいんだ。軽蔑してくれ。そのほうがすっきりする」

医者「――では、失礼します」

狼少女「うぁぁ……いたかった……」

勇者「そうか。では、これで」

狼少女「どこいく?」

勇者「今は、一人にしてくれ」

狼少女「あい」

戦士「どこで寝るの? 添い寝してもいい?」

勇者「今日はすんません」

戦士「今日はってことは、明日ならいいのね!? あはぁーん。あたし、かんげきぃー」

勇者「……寝よう」

シスター「兄さん……」

勇者「兄だと思う必要はない。こんな男と血が繋がっているなんて、吐き気がするだろ?」

シスター「いえ、確かにびっくりしちゃったんですけど……」

勇者「お前と俺はもう兄妹じゃないよ。お前には兄なんていなかった。そうだろ? 強く、生きてくれ……」

シスター「あ……兄さん……」

牧場

勇者「ふっ……。女の子たちにモテないばかりか、実の妹にまで嫌われる始末……」

勇者「家族の女の子とも仲良くなれないとは……」

勇者「苦労して勇者になっても報われないんだなぁ……。俺の人生、無駄が多すぎる……」

勇者「このまま旅に出るのもいいな。そして仙人にでもなれば煩悩を捨てられるかもしれないし」

勇者「うしっ。そうしよう、そうしよう。決めたぞ。勇者から仙人になるんだ。俺は。きっとその先に素晴らしい世界が待ってるはず」

勇者「こんな穢れだらけの俗世にいちゃ、俺はダメになる。山にこもって修行しよう。うん」

シスター「――兄さん」

勇者「……君のような可愛い妹はしらないんだ。どっか行ってくれ」

シスター「兄さん、戻ってきてください」

勇者「俺はたった今決心したんだ。仙人になるってな。邪魔しないでくれ。煩悩退散!! 煩悩退散!!!」

シスター「私、帰りたいんです」

勇者「え?」

シスター「まだまだ父に文句を言いたいんです。だから……」

勇者「空に向かって言えばいい。ほら、あの全然輝いてない星を親父だと思って、レッツトライ」

勇者をやめて賢者になりたいとか神官に怒られるぞ

シスター「……兄さんがして欲しいこと、私がしてあげても……いいですよ?」

勇者「な、なに……!?」

シスター「兄さん……」

勇者「で、でも、お前……嫌がってたじゃないか……」

シスター「私、兄さんの力になりたいから……」

勇者「……」

勇者「(いいのか……? 相手は妹だぞ……? いいのか……?)」

勇者「(折角、向こうから誘ってきてるんだ。いいじゃないか。何を拒むことがある。男を見せろ俺)」

勇者「(ダメだ!! 相手は妹だぞ!! そんなことあってはならない!! だが、俺から迫ったわけじゃないからセーフ!!!)」

勇者「……いいんだな?」

シスター「ここで、する?」

勇者「どこでも構わないさ」

シスター「兄さん……それじゃあ……」

勇者「ああ……」

勇者「(妹でもいいじゃないか。妹だって女だ。結婚できなくても一緒に住めるわけだし、こうして愛し合っているなら……!!)」

シスター「あ、このベンチがいいかも。ここでしようよ」

勇者「ああ。しかし、お前がこんなスケベな妹だったとは。血は争えないな」

シスター「はい。きて」

勇者「……」

シスター「どうしたの? はやくきて」

勇者「……ダメだ!!!」

シスター「え?」

勇者「ダメだ!! やっぱりだめだぁ!!!」

シスター「に、兄さん?」

勇者「妹を抱くなんて、俺にはできねぇぇよぉぉぉお!!!!!」

シスター「あの、膝枕してあげようと思っていたんだけど」

勇者「……ひざまくら?」

シスター「うん。ほら、兄さん、子守唄歌って欲しいんだよね?」

勇者「……」

シスター「ララバイしてーって言ってたから……。ち、違うの?」

シスター「ら~らら~ら~らら~ら~」ナデナデ

勇者「(妹に膝枕してもらって……子守唄か……。なにしてんだろうな……俺……)」

シスター「兄さん、これでよかった?」

勇者「俺はね。ララバイとバイバイをかけていたわけでね」

シスター「違う歌がいい?」

勇者「もういいです」

シスター「……私のお母さんはまだ生きてるの」

勇者「……」

シスター「だから、このまま魔女が世界を征服するなんて……私は嫌なの……」

勇者「そうか」

シスター「兄さんにとっては血も繋がってない赤の他人だけど……私にとってはただ一人の親だから……」

勇者「……」

シスター「守って……ください……」

勇者「……妹の頼みじゃ、断れないなぁ。こんなことまでしてもらってるし」

シスター「兄さん……。うれしいっ」ギュッ

やっぱこの勇者ちょろいなぁw

結局は困ってる人見捨てられないタイプだ

勇者「ありがと。なんか懐かしかった。母さんによくこうしてもらっていた気がする」

シスター「兄さんのお母さんって……」

勇者「実はいうと、俺が小さなときに病気で死んじゃってな。よく覚えてないんだ」

シスター「それって……」

勇者「なんだよ?」

シスター「あ、ううん」

勇者「そうだ。親父のこと知りたいんだよな。ええとだなぁ」

シスター「いいよ。今は、話さないで」

勇者「どうして?」

シスター「平和になってから聞きたい」

勇者「今でいいだろ?」

シスター「ううん。あとでいい。だから、兄さん。絶対に戻ってきてね」

勇者「俺は死なないって」

シスター「約束して」

勇者「わかった。約束する。魔女を倒して、お前に親父のことを話す。これでいいな?」

シスター「うんっ」ギュッ

勇者「(妹じゃなきゃ、キスできてるんだろうなー……)」

狼少女「おい!! なにしてる!?」

勇者「おう。元気か?」

狼少女「ガゥー!!!」ガブッ

勇者「なんだよ、お前。鬱陶しいな」

シスター「ダメだよ、噛み付いちゃ」

狼少女「ガルルルル……!!!」

シスター「私、どうして嫌われてるの……?」

勇者「気にするな。俺にもよくわかんないから」

狼少女「お前、この女のこと好きなのか!?」

勇者「好きというか、妹だからなぁ……」

シスター「(そういうことか……)」

狼少女「むぅー……」

勇者「とりあえず戻るか。もう寝よう」

民家

戦士「あらぁ、お帰りぃ」

勇者「寝る前に今後のことを話すっす」

狼少女「あいっ」

勇者「明日から仲間をかき集める」

シスター「な、仲間ですか?」

勇者「ああ。俺たちの戦力じゃどうしたって町中で捕らえられて終わりだからな」

戦士「そうかもねぇ。実質、あたしと勇者様だけだしぃ」

勇者「そういうことです。なので、手を貸してくれそうな奴に声をかけてくるっす」

シスター「どこにいるのですか?」

勇者「まぁまぁ。仲間は俺に任せてくれ。考えがあるから」

戦士「任せちゃっていいのぉ?」

勇者「もちろんっすよ。では、寝ましょう」

戦士「はぁーい。勇者さまぁ。こっちにきてぇーん」

狼少女「ガルルルル!!!」

戦士「なによぉ!」

狼少女「がう! がうっ!!」

勇者「よし。俺の貞操をそのまま死守するんだ」

戦士「やだぁ、ひどぉーい。あたし、そんなことしないのにぃ」

シスター「私と一緒に向こうの部屋にいこ、ね?」

狼少女「ガルルルル……!!」

シスター「やっぱり、ダメ?」

勇者「俺はもう寝るぞ。お疲れー」

狼少女「あいっ」ギュッ

戦士「んもぉ! もういいわ!! 明日はあたしとねるんだからねっ!!」

狼少女「いーっだ!」

戦士「んまぁ!! かわいくない子!!」

シスター「兄さんのこと、よろしくね?」

狼少女「まかせろっ!」

勇者「すぅ……すぅ……おっぱ……ぃ……もみてぇ……よぉ……」

翌朝

狼少女「がぉー……がぉー……」

勇者「……行くか」

狼少女「すぅー……すぅ……」ギュゥゥ

勇者「はなせよ」グイッ

狼少女「うぁ……? おはよ」

勇者「おはよう。まだ寝ていていいぞ」

狼少女「……どこいく?」

勇者「おつかいだよ」

狼少女「私もいく」

勇者「危ないからダメだ」

狼少女「大丈夫!!」

勇者「でもなぁ……」

狼少女「つれてけ!!!」ドガッ

勇者「いってぇ!? なんにすんだこらぁ!? さっさと顔洗って来い!!!」

狼少女「うぅー。つめたいぃ……」パチャパチャ

勇者「いい天気になりそうだな」

狼少女「あらった!!」

勇者「早く拭け」ゴシゴシ

狼少女「おぉう」

勇者「本当に姫様かよ、お前。品性のかけらもねえな」

医者「勇者様。こんなに朝早くからどうしたのですか」

勇者「すんません。ご迷惑ばかりかけて」

医者「いえ。そんなのはいいのですが」

勇者「こいつに異常はあったっすか?」ポンポンッ

狼少女「あぅ」

医者「その……耳を貸してください……」

勇者「……なんすか?」

医者「……」

狼少女「なんだ? 私もききたいぞ」

医者「詳しく検査をしたわけではないので、正確なことはまだなんともいえないのですが……」

勇者「……」

医者「薬の影響で成長障害が起こっている可能性があります」

勇者「それって……」

医者「今すぐ治療を始めなければ、彼女の体はあのままかと。第二次性徴を迎えることもないでしょう」

勇者「よ、よくわかんないっすけど、結論としてはどうなるんすか?」

医者「一生、あの姿のままです」

勇者「……」

狼少女「うぁ?」

勇者「治療しなけりゃ死ぬんすか?」

医者「成長を妨げるほどの強い薬を投与されているわけですからあの小さな体には相当な負担のはずです。少なくとも治療を行わず、これ以上薬を投与されることがあれば……」

医者「命の保障はできません」

勇者「(そうだ。どうして考えなかった。あの体で兵士を圧倒するだけ力を出していて体が壊れないわけがない……)」

狼少女「むぅ。こっちみんな!」

勇者「(ここまで来て死なせちゃ夢見が悪いよなぁ……。守るって約束もしちゃったし、俺がしっかりしないと)」

医者「勇者様。医師の手配はできますが……」

勇者「その話は魔女を倒したあとでしましょう」

医者「勇者様、いいのですか?」

勇者「元凶を討たないと同じことの繰り返しになるっすよ」

医者「……それもそうですね」

勇者「問題は魔女の出す霧の影響がどれだけあるかっすけど」

医者「この薬で抑えられたらいいのですが……」

勇者「もっと貰っていいっすか?」

医者「え? それは構いませんが、今からどちらへ?」

勇者「魔女の被害者を仲間にしようかと思って」

医者「被害者?」

勇者「んじゃ、行ってくるっす。おーい、待たせたなぁ。いくぞぉ」

狼少女「あーい! 女を待たせる男はモテないぞ!」

勇者「どこで見たんだよ」

狼少女「あの本に書いてた!! 恋愛マニュアル!!」

狼ちゃん可愛すぎる

>>315
勇者「どこで見たんだよ」

勇者「どこで知ったんだよ」

狼の森

狼少女「おぉぉ……!!」

勇者「怖いなら戻ってもいいぞ?」

狼少女「な、なにする!?」

勇者「多分いるはずなんだ。あのとき魔女がつれていた狼は一匹だけだったし、その一匹も町の外へ行ったからな」

狼少女「うぅぅ……」ギュッ

勇者「行くか?」

狼少女「……いくっ!」

勇者「よぉし。行くぞ!」

狼少女「あぁう……」

勇者「(裏切った仲間にあうのは、まぁ怖いよなぁ)」

狼少女「なぁなぁ」

勇者「どうした?」

狼少女「だ、だっこしてくれ。私になんかあったら、こ、困るんだろ?」

勇者「畏まりました、姫様」ヒョイッ

狼少女「……」ギュゥゥ

勇者「いるかな……。いてくれないと出鼻をくじかれることになるけど」

狼少女「……なぁ」

勇者「どうした?」

狼少女「あのときも、こんな感じだったな……」

勇者「あのときって? この森に俺が初めてきたときか?」

狼少女「ちがう。変な人間がたくさんいる町で、お前と出会ったときだ」

勇者「ああ。お前が俺を掴んで離そうとしないから、無理やり肩に担いだんだったな」

狼少女「お前はあのときも、守ってくれたな!」

勇者「守った?」

狼少女「あいっ」

勇者「守ったって……」

「グルルルル……」

狼少女「で、でたっ」ギュッ

勇者「ラッキー。いてくれたか」

「ガルルルル……!!」

「グルルル……!!」

勇者「(頭数が少ないな……。もっといて欲しかったけど……)」

狼少女「あ、あれ! あれあれ!!」ペシペシ

勇者「なんだよ」

狼「……」

勇者「よう。会いたかったぜ」

狼「グルルル……!!」

狼少女「あぅぅ……」

勇者「やるきかぁ!? こっちにはお前の娘がいるんだぜ!?」

狼少女「多分、父親じゃない!!」

狼「グルル……」

勇者「ほら、ちょっと頭撫でてきてやったらどうだ?」

狼少女「ぁえ!? かまれるぞ!! 絶対!!」

勇者「なぁーに言ってんだよ。お前は仲間だと思ってたんだろ? なら、こいつらも同じじゃないのか?」

狼少女「でもぉ……」

勇者「行ってやれよ」

狼少女「か、かまない?」

勇者「お前以上に噛み付いてくるやつはいねえだろ」

狼少女「……」

狼「……」

狼少女「あ……ぅ……」

狼「クゥーン……」

狼少女「あっ……。えと……ごめんなさい……」ギュッ

狼「クゥーン……」

狼少女「ごめんなさい……」

勇者「……お前らはどうするつもりだぁ!?」

「ガルルル……」

「……」

勇者「来るならこいよぉ!! おらおらぁ!!」

勇者「この薬を飲ませて……」

狼「ガルルルル……!!!」

勇者「飲めよ!!」グイッ

狼「ガァァ……!」

狼少女「がんばれ! がんばれ!」

勇者「おーし。こんなもんだろう」

狼「ガッ……ウゥゥ……」

勇者「で、俺に……いや、こいつを助けるために一緒にきてくれないか?」

狼「……」

勇者「いいのか!? よーし、たすかるぅ。狼畜生にしては良いやつだな!」ナデナデ

狼「……ガウッ」ガブッ

勇者「噛むなよ。甘噛みでもいてぇよ」

狼「ガウッ」

勇者「分かったのか?」

狼少女「これから仲間も一緒か!! うれしいな!!」キャッキャッ

勇者「おし、んじゃ、そろそろ行くか」

狼少女「どこいく!?」

狼「ガウッ」

勇者「戦力の補充はまだ終わっちゃいねえよ」

狼少女「そうなのか!?」

勇者「しかも次は確実だ。というか俺のお願いを断れるわけがない!!」

狼少女「よし! じゃあ、いくぞ! しゅっぱーつ!!」ペシペシ

狼「オォォォン!!」

勇者「お前、そいつに乗っていく気か?」

狼少女「あいっ!」

狼「ガウッ」ダダダダッ

勇者「待てよ!!」

狼少女「お前も早くこい!! 置いていくぞー!!」

狼「ガァァウ」ダダダッ

勇者「てめぇ……!! さっきまで俺に抱かれてたくせに!!! このビッチがぁぁ!!!」ダダダッ

農村

シスター「兄さん、どこまで行ったのでしょうか」

戦士「すぐに帰ってくるわよぉ。心配性ねぇ」

シスター「心配はしますよ。大切な家族ですから」

戦士「あんた、お兄さん一筋なの? 男は?」

シスター「わ、私は修道女ですよ!? そ、そのようなふしだらなことは……」

戦士「照れちゃって。可愛いわねぇ。てことはあんた処女ね」

シスター「うぅ……」モジモジ

村長「うぅむ……これは、一大事だ……」

農夫「勇者様の言ってた事はやっぱり本当だったんだなぁ……。信じたくなかったけどよぉ」

村長「この村に勇者様を遣わせてくれた国王様が魔女と……」

シスター「どうかしたのですか?」

村長「農村から城下町へ移り住んでいた者から今朝手紙が届いてな。三日前、国王様と魔女が正式に結婚したらしい」

戦士「祝福されてるわけ?」

村長「町民の殆どは不安がっているようだが、手紙を読み限りでは城の兵士たちは賛同しているようだな……」

シスター「それって……」

戦士「薬で操られてるんじゃないの?」

医者「――だとすると、殆どの兵士は正気を失っている可能性もありますね」

戦士「あらぁ。どうして?」

医者「魔女が使っているのは興奮剤、幻覚剤の一種ですからね」

戦士「王様の傍にいるのは魔女なんかじゃなく、普通の女ってことなのね」

医者「ええ。恐らく」

シスター「な、なら! 貴方の薬で……!!」

医者「私もできるなら早く治療を行いたいですが簡単には……」

村娘「た、大変!! おじいちゃん!!」

村長「どうした?」

村娘「こ、この村に兵隊が向かってきてるの!!」

村長「なんだと!?」

医者「まさか……」

戦士「……」

兵士長「……」

兵士「隊長……」

兵士長「言うな」

兵士「……」

戦士「はぁーい。良い男たちぃ。ピクニックにでもいくのかしらぁ?」

兵士長「お前は勇者と共にいた者だな」

戦士「(5人か。少数精鋭ね。まぁ、村を焼くには十分な人数だけど)」

兵士長「勇者を出してもらおうか」

戦士「どうしてぇ?」

兵士長「国王陛下の命令だ」

戦士「勇者狩りってわけぇ? 狙いは勇者様にくっついてるガキンチョのほうじゃないのぉ?」

兵士長「出してもろうか」

兵士「……」シャキン

戦士「魔女の言いなりなんて恥ずかしくないわけ?」

兵士長「……いいから、出せ」

戦士「嫌よ。強引な男はお、こ、と、わ、り」シャキン

兵士「きさまぁ……」

戦士「魔女との結婚に諸手を挙げて祝福したらしいけど、どういうつもりなのぉ? それともやっぱり貴方たちにとっては普通の妃なの?」

兵士長「奴は確かに魔女だ」

戦士「(あら……。薬で操られてるわけじゃないのかしら?)」

兵士長「勇者と姫を連れて帰らねばならないんだよ。なんとしてでもなぁ」

戦士「なんでよ」

兵士長「魔女が薬をばら撒いてたんだ。つまり全ての町の民を人質にしているんだよ。この任務に失敗すれば、町民同士に殺し合いをさせるといっている」

戦士「そうなの。それなら薬で操られているほうがよかったわね。あ、そうだ。薬持って帰る? ここにはそれなりにあるけど?」

兵士長「町民全員分の薬を今すぐ用意できるってか? あの町にどれだけの人が住んでいると思ってやがる」

戦士「まだ無理ね」

兵士長「だからよぉ……。今はこうするしかないんだ」

戦士「でもねぇ。今、村にいるのは勇者様の妹だけだしぃ」

兵士長「あいつの妹を連れていくだけでもいいかもしれねえな。それだけでも今日死人がでることはない」

戦士「悪いけど、こっちの準備が整うまでは多少の死人は出るわよ。だって、私の仕事は勇者様の妹を守ることなんだものっ。あんたたちの任務は失敗ね」

翌日 農村

狼少女「ついたー」

狼「ガウッ」

勇者「お前は仲間のところにいてくれ」

狼「……」

狼少女「仲間のとこいって!!」

狼「ガウッ」タタタタッ

勇者「あいつらを村の中につれてはこれないからなぁ。家畜たちが大騒ぎしちゃうし」

狼少女「あい」

勇者「行くか」

狼少女「はらへったな!」

勇者「そうだなぁー」

村娘「ゆ、勇者さまぁ!!」

勇者「うぃーっす。ただいまっすぅ」

村娘「どこに行っていってたんですか!? 昨日、大変なことが……!!!」

民家

戦士「……」

勇者「生きてるっすか?」

医者「ええ。ただ意識が戻らなくて」

勇者「そうっすか」

医者「どうやら貴方の妹さんを利用して、城まで来させようとしていたようです」

村娘「村にきたのは、あの馬車を用意してくれた隊長さんでした」

勇者「(先輩っすか)」

医者「彼らを責めてはいけません。城下町の人間全てが人質になっているようです」

勇者「薬はあげたっすか?」

医者「いえ、渡せませんでした。私たちは隠れているように言われていたので……」

勇者「なるほど……」

医者「それと気になるのが。この村にきた兵士たちは正気を保っていました。あの町の人たちのように突然凶暴化するというわけでもないようです」

勇者「でないと、脅しにはできないっすからね。都合のいいときに凶暴化させないと」

医者「凶暴化させるための合図か何かがありそうですね。やはり魔女の薬は着実に性能をあげていることに……」

戦士が見た目予想がユーベルブラッドのゲランペンで落ち着いたw

ヤバイ
戦士さんが思ってたよりもかっこいいんだが

このハードボイルドさ、格好良さ…
ACVのNo.3ピスケスの声で再生される

ハードボイルドなオカマの強キャラっていいよね
しかし更新速度早いな

やべぇー
続きが早く見たいwwww

やっぱりオカマは正義だよね

村長の家

勇者「……すみませんでした。俺の所為で村の人たちに恐怖を与えてしまって」

村長「ゆ、勇者様。顔を上げてください」

勇者「今晩にもここを出ます。これ以上俺が留まるとこの村が、貴方たちがどうなるか分かりませんから」

村娘「で、でも、薬がまだ揃っていないのでは……」

勇者「魔女と国王を討てばいいだけの話です。それに最初から薬の数が揃うまで待つつもりはありませんでしたから」

村長「確かに。魔女によって操られている者を救いながらでは手遅れになるかもしれませんな」

勇者「各地の犠牲者も増える一方でしょうからね」

村娘「大丈夫、なのですか?」

勇者「心配はいりません。貴女の旦那さんには本当にお世話になりましたし、ここからは俺の仕事です」

村長「これより先、何もできない我々をお許しください」

勇者「十分すぎるほどの援助を受けました。感謝するのは俺のほうです。それと……」

村長「分かっております。もしものときは村を捨てる覚悟もあります。元より村人の減少も歯止めが利かない現状です。遅かれ早かれ村は滅びる運命ですから」

勇者「そう言っていただけると、ありがたい。それでは、失礼しました」

村娘「勇者様……お気をつけて……」

馬小屋

勇者「マジでいいっすか?」

医者「勿論です。勇者様に使って頂けるのなら、喜んでお貸しします。それに、こいつも貴方に協力できることを嬉しく思っているはず」

勇者「本当かぁ?」

馬「……」ペロペロ

勇者「頼むぜ」

医者「車と幌も準備は出来ています」

勇者「あざす。では、行ってくるっす」

医者「勇者様」

勇者「なんすか?」

医者「また、この村に……」

勇者「もちろんっすよ。結婚式、絶対に呼んでくださいよ」

医者「はい!!」

勇者「行くか」

馬「ヒヒーン!!!」

農村

勇者「……こんなもんだな」

シスター「兄さん」

勇者「よう」

戦士「あらぁ、勇者様。つれないのねぇ。あたしをデートに誘ってくれないわっけぇ?」

勇者「意識、もどったんすね。にしてもまだ寝てないとダメじゃないっすか?」

シスター「止めたんですけど、どうしてもって聞いてくれなくて」

戦士「なによぉ。勇者様のためにがんばったのよぉ。あたしの体なんだも、あたしの我侭ぐらい聞いてくれるわよ」

勇者「そっすか? 倒れないでくださいよ。まだ妹を守る仕事、続いてるんすから」

戦士「ごめんねぇ。本当ならあたしも……」

勇者「いいっすよ。貴方を傭兵として雇ったのは正解でした。また、お願いしてもいいっすか?」

戦士「もっちろんよぉん!! 勇者様の依頼なら二束三文、ううん、無料でうけちゃうぅ! あ、でも、体では払ってもらうかしら。うふふ」

勇者「ははははは。勘弁してくれ」

シスター「兄さん……。お願いします」

勇者「任せろ。最高の妹に恥じない程度には働いてくる」

勇者「いくぞぉ!!」

馬「ヒヒーン!!」

狼少女「えい! えい! あーい!!」

勇者「降りろ」

狼少女「いやだ。私もいっしょに――」

勇者「足手まといだ。鬱陶しい」

狼少女「え……」

勇者「早く降りろ」

狼少女「な、なんでだ!? お前!! 一緒にこいって……!!」

勇者「お前になんかあったら困るって言っただろ? 今回ばかりはダメだ」

狼少女「そんなの私だって同じだ!! お前になんかあったら困る!! 困るぞ!! いいのか!?」

勇者「帰ってくる」

狼少女「……いやだ。一緒にいく。いかせてくれ」

勇者「言うことを聞けよ。今度ばかりはお前を守ってやれるかどうか微妙なんだよ」

狼少女「お前のこと、私が守る。それでいいだろ? ……ダメなのか?」

勇者「お前に守られるほど弱くねえよ」

狼少女「じゃあ、守らない! それならいいか!?」

勇者「無理だ。大体、俺はお前の親を殺しに行くんだぞ? 確かに最低な親だ。俺の親父が聖人に見えるぐらいのな。なのに、ついてきたいのか?」

狼少女「……」ギュッ

勇者「おい。遂には実力行使かぁ」

狼少女「もう……いやだ……」

勇者「え?」

狼少女「こわいの……いや、だ……」

勇者「……」

狼少女「お前、いなくなったら……わたし……こわい……。仲間、いても……お前がいなくなるの……こわい……だから……」

勇者「おい……」

狼少女「いっしょに、いっしょに……いたいんだぁ……!!」

勇者「……」

狼少女「どこにも……いくなぁ……傍にいろ……」ギュゥゥゥ

勇者「――ダメだ。降りろ。お前は邪魔なだけなんだよ」

狼少女「あぇ……!?」

勇者「ほら」ヒョイ

狼少女「なんでだー!? 今までだって……!!!」

勇者「しゅっぱーつ!!」パシーン

馬「ヒヒーン!!!」ダダダダッ

狼少女「まてー!! おいてくなぁー!!!」タタタッ

勇者「戻ってくる!! お前を一人には絶対にさせない!!!」

狼少女「ほんとうか!? ぜったいかぁ!? わたしをみすてないかぁ!?」

勇者「みすてねーよ!! 余裕ができれば面倒ぐらいみてやるよー!!」

狼少女「ぜったいだぞー!! やくそくだぞー!!!」

勇者「おーう!」

狼少女「うそついたらー!! おこるからなぁー!!!」

狼少女「うぅ……がんばれよー!!! まけるなよー!!! いってらっしゃーい!!!」

勇者「いってきまーす!! 良い子にしてろよー!!」

狼少女「あーい!!」

面倒を見てやる=結婚の約束
になってそう

城内 謁見の間

王「勇者と我が娘を取り戻せず、おめおめと逃げ帰ってきたのか?」

兵士長「申し訳ありません……」

王「使えぬ男め」

兵士長「……っ」

王「何だ、その目は?」

魔女「反抗的ね。いいのよ? 貴方の手で自分の妻と娘と殺したいっていうなら……」

兵士長「や、やめろ!! それだけは……!!」

王「ならば、行け。お前の責は民に償わせよう」

魔女「いい考えね、アナタ。素敵よ」ギュッ

王「フフフフ。だろう?」

兵士長「ぐっ……」

魔女「ふふ……」

魔女「(この国の兵隊は完全に傀儡と化したわね……。問題はあの坊やがどんな手で来るかだけど……)」

王「取り逃がした勇者が噛み付いてくるかもしれんな。手は打っておかなければ」

通路

兵士「――終わりました」

兵士長「そうか」

兵士「隊長。やはり我々で陛下と魔女を……」

兵士長「陛下はともかく魔女は無理だ。何人も返り討ちにあってるじゃねえか」

兵士「それは……」

兵士長「俺たちはもう毒に犯されてる。俺が今すぐお前を殺しても不思議じゃねえんだ」

兵士「しかし、このままでは」

兵士長「分かってる。俺たちの希望は最初から一つしかねえのさ」

兵士「勇者殿……」

兵士長「そういうこったな」

兵士「我々にできることはないでしょうか。勇者殿に頼りきりというのも」

兵士長「あの馬鹿がどうするかわからんが、それに合わせる――」

衛兵「隊長!! 大変です!! 遠方より見たことのない隊が近づいてきます!!」

兵士長「……すぐに行く。各兵に通達。戦の準備をしろってな」

見張り台

兵士長「見せてくれ」

門兵「は、はい!!」

兵士長「んー……?」

兵士長「(どこの一個小隊だぁ……? あんな人数で戦争しようってか? 魔女とくっついた国王を殺しにきたにしては戦力不足だろうが。しっかりしやがれ)」

兵士「隊長!! 隊の後方より馬車が……!!」

兵士長「んぁ? ありゃぁ……」

兵士長「(あの村にいたバカでけぇ馬じゃねえか……。まさか……)」

兵士「誰が乗馬しているのかわかりませんね。布をかぶっていて顔が……」

兵士長「(あのでけえ荷台にゃなにが積んである……? 武器? いやぁ、あんなちいせえ村にんなもんはなかったし、他からかき集める時間なんざない)」

兵士長「(姫か? いやいや、あいつがそんなバカなことするわけねえし……)」

兵士長「(兵隊だって揃えられるわけねえし……だったら、あんなでけえ荷台はいらねえよなぁ……)」

兵士長「(あいつが考えそうなことといやぁ……。待てよ。そういやぁ、魔女から獣の臭いしなくなってるよなぁ……)」

兵士「隊長?」

兵士長「おい。火だ。火を用意しろ。今すぐだ」

あらやだ兵士長有能

草原

勇者「先輩、こっちの考えわかってくれてるっすよね……」

狼「ガウッ」

勇者「顔出すな」

狼「クゥーン……」

勇者「しっかり頼むぜ?」

馬「ヒヒーン!!」

隊長「勇者殿!!」

勇者「あんたもしっかり罪滅ぼしするっすよ」

隊長「はい。この穢れた手でも大切なものが守れるのなら……!!」

勇者「けっ!!!」

隊長「は? な、なにか気に触るようなことを……?」

勇者「うるせぇぇぇ!!! さっさと先行しろぉい!!! 駄馬にでものってんのかぁ!? はぁぁん!?」

隊長「も、申し訳ありません!! 行くぞぉ!! 俺たちの力、魔女に見せ付けてやるんだぁぁ!!!」

「「おぉぉぉぉ!!!!」」

城内 謁見の間

王「なに? どこの賊だ?」

兵士長「それはわかりません。しかし、あの統率の取れた動きは賊ではないでしょう」

王「……わかっているな?」

兵士長「……陛下の命は、我が身に代えても守ります」

魔女「私も守ってくれるわよね?」

兵士長「無論です」

王「いけっ!!」

兵士長「はっ!」

魔女「……信用して、大丈夫なの?」

王「お前の力があれば心配はないだろう?」

魔女「そうだけど……」

王「お前には傷一つつけさせやしない」ギュッ

魔女「ありがとう、信じてるわ」

魔女「(正面から来るつもりかしら……?)」

城下町

兵士長「民間人の避難は済んだか?」

兵士「いえ! まだ完全ではありません!!」

兵士長「急げよ。どうなるかわかんねえぞ」

兵士「はっ!!」

兵士長「(さぁて……次は……)」

門兵「隊長!! 準備が整いました!! 点火しますか!?」

兵士長「俺が合図を出すまで待ってろ」

魔女「――火でどうするつもりなの?」

門兵「な……!?」

兵士長「貴女は城の中にいてください。危険です」

魔女「ねぇ、どうするつもりなの?」

兵士長「狼は煙に弱いそうですから。まぁ、獣の殆どは火を恐れますが」

魔女「……へぇ。そういうこと」

兵士長「さぁ、早く。城の中へ。町中を戦場にするつもりはありませんが、万が一ということもありますので」

城内 妃の部屋

魔女「ふふふ……」

魔女「(可愛い娘だけでは飽き足らず、ペットまで盗むなんてね……)」

魔女「(まぁ、あの狼たちに実験台以外の価値なんてなかったから、壊れるまで使ってくれても構わないけど)」

魔女「(でも狼を手懐けたってことは、私の薬を無効化させたってことよね。どうりで娘も帰ってこないわけだわ)」

魔女「……」

『入ってもいいか?』

魔女「どうぞ」

王「間もなく衝突する。危険はないだろうが、一応私の傍にいたほうがいい」

魔女「ごめんなさい。用意しておきたいことがあるから」

王「何をするつもりだ?」

魔女「飼い犬に手を噛まれたくないもの」

王「しかし、先日町で使用したばかりだ。あの濃霧は出せないんだろう?」

魔女「そっちは作るのに手間が掛かるもの。でも、これなら……」

王「おぉ。もしや改良を加えたのか?」

城下町 

隊長「敵は近いぞ!!! すすめぇぇぇ!!!」

「「おぉぉぉぉ!!!!」」

門兵「止まれぇぇ!!!」

兵士「貴様たち!! どこに属する兵だ!?」

隊長「我々はこの呪われた町を救うためにやってきた!! 道をあけてもらうぞ!!!」

兵士「できぬ相談だ!! 賊めが!!」

隊長「お前たちもわかっているはずだ!! 魔女が世界を混乱に陥れようとしていることは!!!」

兵士「……っ」

兵士長「負けんな。ここで退けば、俺の嫁と娘がどうなるかわかんねえだろ? んで、お前のカーチャンもな」

兵士「た、隊長……」

兵士長「どこのバカなのかはこの際、きかねえ。でもなぁ、俺たちにも守りたい家族がいることは知っておいてくれ」

隊長「私にも守りたい大事な人はいる!!」

兵士長「だったら、お互いに戦うしかねえだろ? ほら、かかってこい」

隊長「――かかれぇぇぇ!!!」

「「うぉぉぉぉ!!!!」」

「「おぉぉぉぉ!!!」」

隊長「はぁぁぁ!!!」

兵士「このぉぉ!!!」

兵士長「(始まったか……。あいつは……)」

勇者「ふんふーん」

兵士長「なーにしてやがる?」

勇者「どうも先輩。でも先輩の相手をしている暇はないっすよ」

兵士長「つれねえなぁ。ゆっくりしていけよ」

勇者「先輩はこいつらと戯れていてくださいよ」バッ!!!

狼「グルルルル……!!」

「「ガルルルル……!!!」」

門兵「お、狼……!?」

兵士長「てめぇ……!!」

狼「ガァァァァウ!!!!」

隊長「勇者殿!! お願いします!!」

勇者「うっす!!」

兵士「行かせはしません!!!」

勇者「なんでっすかぁ? 俺が折角ボランティアで町を救おうっていってるのに?」

兵士「魔女は民を人質にしているのです!! 我々が貴方を通してしまうと……!!」

勇者「はぁ? んなのしらねーっすよ」

兵士「な……!?」

勇者「あんた恋人は?」

兵士「な、なんですか、いきなり……」

勇者「いるのか、いないのか?」

兵士「……います」

勇者「はぁぁぁ!? じゃあ、お前の大切な人なんて死んでよし」

兵士「なぜですかぁ!?」

勇者「恋人がいるやつなんて助けるかぁぁぁ!!!!! ボケェェェ!!!! アホー!!! しんじまえぇぇー!!!!」ダダダダッ

兵士長「(病んでるなぁ、あいつ……)」

勇者「どこだぁぁぁ!!! 魔女ぉぉぉ!!! でてこいっすぅ!!!」

兵士「勇者殿を取り押さえろ!!」

勇者「俺を誰だと思ってるっすかぁ!!」

兵士「このぉ!!」

勇者「誰よりも強い兵士、それが俺だぁぁ!!!」ザンッ!!!

兵士「ぐぁ!?」

勇者「憎い……恋人がいる全ての男が憎い……!!」

勇者「今の俺を突き動かすのは憎悪だけなんだよぉ!!! あと妹の願いもちょっとだけ」

「とめろぉ!! 城の中にはいれるなぁ!!」

勇者「邪魔だ!! 邪魔だ!!! うわぁあああああ!!!!」

兵士長「勇者は俺が引き受ける!! それよりも火だ!!! 点火ぁ!!!」

門兵「了解!!」

狼「ガァァァァウ!!!!」

兵士長「狼を町にいれるなよぉ!!!」

門兵「はい!!」

城内

衛兵「止まってください!!」

勇者「とまるかぁ!!」ザンッ

衛兵「ぎゃぁ!?」

勇者「魔女はどこだ!!」グイッ

衛兵「ぐっ……む、むこうに……」

勇者「よしっ」

衛兵「……お願いします」

勇者「うすっ」

勇者「……ん? なんだ、この匂い……?」

勇者「(この香り、どこかで……)」

衛兵「ガ……イ……ゆ、ウシャ……!!」

勇者「ちっ!?」

衛兵「ウアァアアアアア!!!!!」

勇者「眠ってろぉ!!!」

王の部屋

王「いつ嗅いでも素晴らしい香りだ。幾億の花を揃えようがこの芳香には敵わんだろう」

魔女「あまり褒めないで。照れるじゃない」

王「さて、そろそろ城内にいる者はこの香りに誘われ、狂気しているはず」

魔女「町のほうへももうすぐ流れていくわね」

王「そうか……」

魔女「よかったの? 下手をしたら町民が全滅する場合もあるけど」

王「構うことはない。お前さえ居れば兵力も町民もいくらでも増やせる」

魔女「ふふ。そうね」

王「理想の世界を創ろうではないか」

魔女「私のこと、本当に愛してくれているのね」

王「前の妻に子どもができなかった。そして奴は私のことも愛しておらず、欲していたのは王族の椅子だけだった」

魔女「そうだったの」

王「妻に見限られた私は、私のことを愛してくれているお前に私は恋をした。それだけのことだよ」

魔女「嬉しい……」

通路

兵士「ガァアアアア!!!!」

勇者「ふーん!!!」ドガァ!!!

兵士「ギィ!?」

勇者「(魔女がつけていた香水か何かが凶暴化の引き金になってたのか……)」

勇者「狼たちが言うことを聞いていたのも同じ理由か」

衛兵「オォォォオオオ!!!!」

勇者「うるせぇ!!!」ドガァ!!!

勇者「さっさと魔女を倒しにいかないと……。この臭いが町のほうまで流れたら……」

勇者「あぁ……もう……面倒だなぁ……」

兵士「オォォオオオ!!!」ガキィィン

衛兵「ォォアアアア!!!!」ガキィィン

勇者「おーおー。ああいう風に同士討ちしてくれてたら楽――」

兵士「ガァアアアア!!!」

勇者「こっちに来るなよ!?」

城下町

兵士「こっちでいいのか!?」

門兵「指示ではそうだ!!」

兵士「しかし、これでは風の影響で……!!」

狼「ガッ……ウゥゥ……!!」タタタッ

「ガァァァ……!!」タタタッ

隊長「狼たちが町のほうへ……」

兵士「ほら見ろ!!」

門兵「だが!! 命令どおりに火は配置したんだぞ!!」

兵士「狼を町に入れないようにとも言っていただろう!!」

門兵「俺がしるかぁ!!」

隊長「(向こうの兵が混乱している……!! 今のうちに……!!)」

隊長「お前たち!! 急げ!!! 攻め入るぞぉ!!!」

「「おぉぉぉぉ!!!!」」

隊長「(勇者殿、こちらは任せてください!!)」

王の部屋

王「ふふ……」

魔女「もうこんなときに……だめ……」

王「いいではないか……」

勇者「ここかぁ!!!」バンッ!!!

魔女「あら。いらっしゃい」

王「痴れ者が。場を弁えろ」

勇者「兵士たちがあんたらのために血を流してるのに、ちちくりあってんっすかぁ?」

王「勇者よ。お前は死罪が確定している。その前に答えてもらおうか。娘の居場所を」

勇者「てめえらみたいな超絶ハッピーどもに教えるものはなにもないっす!!!」

王「……そうか。まぁ、想像はついているがな」

魔女「どうせ、あの農村でしょう?」

勇者「それはどうっすかねぇ?」

魔女「バカな男ね。勇者は皆、死に急ぐ」

勇者「ああ、死に急いでるかもなぁ。俺はもうこの世界に絶望してるっすからぁ!!」

王「頼むぞ」

勇者「あぁ!?」

兵士長「……」ブゥン!!

勇者「おぉぉう!?」ギィィン!!!

王「さぁ、行くぞ」

魔女「ええ」

勇者「なんだ!? 今からベッドインっすかぁ!?」

魔女「気をつけてね。凶暴化しているから」

勇者「くっそ……!! せんぱぁい!!!」

兵士長「ウァァアアオオオ!!!!!!」ドガァ!!

勇者「ごぉっ……!?」

兵士長「ユ……う、シャ……!!」

勇者「先輩、恨まないでくださいよ」

兵士長「オォ……ガ……!!」

勇者「俺、先輩には手加減できねえっすからね。何故なら……先輩のことずっと前から羨ましいって思ってたんだぁぁ!!! 幸せそうな家庭築いちゃってぇぇぇ!!!!」

王「勇者といえど、あの男には敵うまい。狂人化させれば無敵だ」

魔女「可愛い娘を迎えに行く準備もしないといけないわね」

王「すぐに会えるよ」

魔女「ええ」

狼「ガルルルル……!!!」

王「何……!?」

魔女「どうして……狼たちへの対処は……」

魔女「(煙が風に流れて城のほうへ……。あの男……!!)」

王「下がっていろ」

魔女「あなた……」

王「獣一匹、私の敵では――」

「グルルルル……!!」

「ガルルルル……!!」

王「くっ……!! 何匹入り込んだ……!!」

魔女「……」

勇者「ずっ……!?」

兵士長「フゥー……フゥー……!!」

勇者「つえぇ……。流石、先輩……」

兵士長「グァアアアア!!!!」

勇者「でも、俺だって負けられねぇぇぇ!!!!」ガキィィン!!!

兵士長「ギギ……!!」

勇者「女の子にモテるために、勇者になったのに。結果、妹や拾った野生児のためにこんなことしている……」

勇者「こんなはずじゃなかったんだ……こんなはずじゃ……」

兵士長「オォォォオオオ!!!」

勇者「おぉぉぉぉ!!! 先輩の大嘘つき野郎ぉぉぉぉ!!!!!」ザンッ!!!!

兵士長「ガァ……!?」

勇者「はぁ……はぁ……。ちょっと、休んでてくださいよ」

兵士長「グ……ゥ……」

勇者「魔女、どこいった……」

勇者「もし魔王と子作りしてるなら、容赦なく後ろから差し込んでやる。剣を」

通路

兵士「オォォォオ!!!」

勇者「どけぇ!!」ドガァ!!!

勇者「(先輩のことだから、上手いこと狼たちをこっちに嗾けてくれてるはずなんすけど……)」

「ガァァアアアア!!!」

勇者「おっ! いたいた――」

王「……」ザンッ

狼「グゥゥ……」

勇者「な……!」

王「……」

魔女「ウフフ。狼のエサに私たちを選んだのはいいセンスね。私以上に美味な肉もないでしょうし」

勇者「なんで……」

魔女「何を驚いているの? 狼ごときに私の夫がやられるわけないでしょう?」

勇者「陛下に何をしたんだ?」

魔女「貴方も見たでしょう? この薬を使ったの」

王改造されてたのか、だっきみたいやな

勇者「それは……」

魔女「私の愛娘が協力してくれて完成した究極の薬。どんな人間でも限界以上の力が引き出せる魔法の薬」

勇者「それは結構危ない薬品っすよね? 成長がとまるほどの」

魔女「子どもに使えばね。でも、大人に使用する分には平気よ。まぁ、使い続ければ死んじゃうだろうけど」

勇者「ずっとそんな頭のイカれた研究ばっかやってたんすか?」

魔女「そうよ。この馬鹿で糞な国王に捨てられてから、ずっとね」

勇者「……」

魔女「お腹を痛めて産んだ子を寄越せといってきた。国のためには必要だからと。国のために……。国のためなんかに差し出すのなんて馬鹿らしいでしょう?」

勇者「それはそうっすね」

魔女「だから殺したのよ。こいつの妻をね。そして娘をつれて逃げたの。いつか復讐してやると神に誓ってね」

勇者「復讐ってあんたは妃を殺した。それで十分じゃないっすか」

魔女「何を言っているの? そんなことで私の気持ちが治まるとでも? 坊やには一生分からないわ。私の気持ちなんてね」

魔女「愛した男に裏切られ、その間に生まれた子どもまで奪われそうになった私の気持ちなんて……!!」

勇者「そんなに大事にしてるなら、一緒に隠れて住めばよかったんじゃないっすか?」

魔女「大事? 確かに大事にしていたわ。愛していたわ。実験台として狼と同じように愛情こめて使ってやったわ」

いまのあんたがいちばんみにくいぜ!

勇者「なんすかそれ」

魔女「あの娘をただの一度も人間として見たことなんてないわ。だって、この男の血が流れてるのよ?」

王「……」

魔女「人間じゃない。悪魔よ」

勇者「(ダメだ。目がいっちゃってるっすね……)」

魔女「だから、使ってやったの。壊れないように気を遣ったのよ? 手軽に使える実験台は中々手に入らないからね」

勇者「そっすか」

魔女「あの子はまだまだ使えるの。子どもをどこまで兵器として使えるのか。試してみたいのよ。だから、あの子が私には必要なの」

勇者「……」

魔女「ズタボロになるまで使ってやるのよ。簡単には死なせないわ。この男もあの娘も!!!」

勇者「あんた、俺と似てるっすね。俺も色んな女性に裏切られてきたっすよ」

魔女「ふんっ。そうなの。なら、少しぐらいは分かるかしら、私の気持ちが」

勇者「いーや。わかんねえっすね」

魔女「なんですって?」

勇者「女性に裏切られて怒りはしては、恨んだことなんて一度もねえっすから」

>>367
勇者「女性に裏切られて怒りはしては、恨んだことなんて一度もねえっすから」

勇者「女性に裏切られて怒りはしても、恨んだことなんて一度もねえっすから」

クライマックスであるな

魔女「真性の馬鹿なのね」

勇者「馬鹿で結構。あんたは何もわかってないっすねぇ」

魔女「……」

勇者「一度でも惚れた相手っすよ? 振られても嫌いになんてならないでしょう、普通」

勇者「まぁ、あのときああしていればとか思うときはあるっすよ? 例えば、馬を助けなかったらもしかしてーとか、ずっと傍にいればよかったなぁーとか」

勇者「でも、そのあとに幸せそうにしていたり、元気そうにしていたりするなら、それでいいじゃないっすか」

魔女「坊やはそれで満足できるの? 他人の幸せを祝福できるの?」

勇者「できねーっすよ。死ね!って思ってます」

魔女「だったら……」

勇者「だからって、相手の幸せを壊す権利はない。奥歯かみ締めて拍手してやるんすよ。結婚おめでとー!! お幸せにぃー!!って」

魔女「他人の幸せのために自分が泣けばいい。そういうことね」

勇者「あんたちょー美人なんだし、子連れでも男はよってきたはずっすよ。俺とか俺とか。なのに子どもの幸せを考えずにこんなことして、これじゃあ……」

勇者「あんたをナンパする気もなんねーっすよ」

魔女「言わせて……おけば……!!」

勇者「お前、ブスっす。俺がこの世で一番嫌いなブスっす。あんたなんか金もらったって抱きたくねえっすわぁ。あーやだやだ。ブスは死んでいいっす」

魔女「……言いたいことは言ったかしら?」

勇者「うっす。ブサイク魔女。かかってこいよ」

魔女「――行け!!」

王「ゴォォオオオオ!!!!」

勇者「……」シャキン

魔女「フフフ。人間の限界を超えた力の前に絶望すればいいわ!!」

王「オオォォォオオオオ!!!!!」

勇者「はぁぁ!!!」ザンッ!!!

王「ギィ……!?」

魔女「え……」

勇者「……何、驚いてるっすか?」

魔女「ど、どうして……」

勇者「どうして? あんたの目の前にいるのは勇者っすよ?」

魔女「……っ」

勇者「伊達や酔狂で勇者やってねえっすから」

勇者△

魔女「そんな……!! 前の勇者は試作品の薬で十分だったのに……!!」

勇者「観念しろっす。逃げ場なんてねえっすよ」

魔女「まだよ!!」

勇者「なに……」

魔女「こいつを使えば……!!」グイッ

狼「グルル……」

勇者「やめろ!!」

魔女「もう遅いわ!!」

狼「ガルルル……ガ、ガ、ゥゥウウ……!!!」

勇者「往生際わるいっすねぇ」

狼「ガァァアアアアア!!!!」

勇者「おぉい!! ちょっと待て!!」

魔女「フフフ!! 狼と戯れていなさい!!」タタタッ

勇者「まてこらぁ!!!」

狼「ガァァァウ!!!」

城下町

魔女「はぁ……はぁ……!!」

魔女「(何よ……何よ……!! 忌々しい!! まぁ、今回はあの男を始末できただけでも良しとするしかないわね……!!)」

魔女「(また一から初めてやるわ……。どこかの野生の獣を捕まえて……私の兵隊にして……!!)」

魔女「私は諦めないわ……!! あの男が治めていたこの国を壊してやるのよ!!! そして、あの悪魔の娘も!!!」

魔女「アハハハハハハ!!! 見てなさい……!! 必ずやり遂げてみせるわ……!!!」

勇者「待てぇ!!!」

魔女「しつこい男ね……。でも……」

勇者「この――」

女性「ウゥゥオオオ……」

男性「アァァァオオオ……」

勇者「ちぃ……!! どこまでも腐ってるっすねぇ!!!」

魔女「さようなら!! 勇者様!!! アハハハハハ!!! 優しい勇者様には一般人を傷つけることなんて――」

勇者「一般人がなんだぁ!!!」ドゴォッ!!!!

男性「グェ……!?」

躊躇いが無さ過ぎるwwwwwwww

魔女「あなた……!!」

勇者「……」シャキン

魔女「く、狂ってるわ……」

勇者「言ったはずっすよ? 俺は国のためや王のために勇者になったんじゃない。力なき人たちのためでもない」

魔女「……」

勇者「女の子にモテるためになった。だから国が滅びようが、善良な民が殺しあおうが関係ねえっすよ。寧ろ、ありがたいっす。俺に優しくない世界なんて滅べばいいんすよ」

魔女「だったら、どうしてこんなことを……?」

勇者「可愛い妹と……」

魔女「(こいつに薬を……)」スッ

勇者「姫様の――」

魔女「くらえぇ!!!」

勇者「ためだぁぁ!!!!」ザンッ

魔女「ぎ……ぁ……」

勇者「ふぅ……」

勇者「ハラヘッタっすね。早く帰りたいっす」

隊長「勇者殿!!!」

勇者「うぃーっす。怪我人は?」

隊長「多数出ています。陽動のためとはいえ、すこし暴れすぎてしまいました」

勇者「あんたたちのお陰ですんなり国王と魔女のところまでいけたんすよ。あざした」

隊長「お役に立てたのなら光栄です」

勇者「狼たちは?」

隊長「重傷ですが生きています。すぐに治療を施せば助かるでしょう」

勇者「お願いできるっすか?」

隊長「勿論です!! 彼らがいたからこそ敵の隊も混乱したわけですし!! 既に同志といってもいいほどです!!」

勇者「そうっすね」

勇者「(先輩の気遣いも多分に含まれてるっすけど)」

隊長「勇者殿も治療を……」

勇者「こんなの唾つけてればなおるっす。他の人を優先してくださいっす」

隊長「はっ!!」

勇者「……はぁ。先輩とこいくか」

城内

「包帯を持ってきてくれー!!」

「わかりましたー!!」

勇者「うわぁー。皆派手に怪我しちゃってぇ」

兵士長「いよぉ」

勇者「先輩。生きてたっすね」

兵士長「魔女は……?」

勇者「倒したっすよ」

兵士長「殺したか?」

勇者「生きてんじゃないっすか? 致命傷にはなってないとおもうっすけど」

兵士長「そうか……。残念だったな」

勇者「はい?」

兵士長「あの魔女がお前の糞親父を殺したんだ。仇、取り損ねたな」

勇者「あんな親父の仇なんて取るまでもねぇーっすよ。どーせ、魔女の色香にやられて自滅したんすから。自業自得っす」

兵士長「ハハッ。ああ、あいつならありえそうだぁ……」

勇者「それにしても、これからが大変っすね」

兵士長「陛下はもう王座に座ることはできねえからな」

勇者「残る王族は……」

兵士長「姫だけだな。なってもらうか、女王に」

勇者「ダメダメダメ! あんなの! 国が三日でおわるっすよ」

兵士長「優秀な夫がいれば問題ないんじゃないか?」

勇者「狼の王っすか? 斬新っすねぇ」

兵士長「馬鹿野郎。お前だよ」

勇者「俺? いやっすよ。あんなガキの旦那になるなんて」

兵士長「おまえなぁ」

勇者「それより先輩。俺、この国どころか世界を救った英雄なんすけど、もう世界中の美人が黙ってないっすよね、これ。ヤバくないっすか? マジヤバくないっすか?」

兵士長「世界の危機だったなんて誰が信じるんだ? 魔女は世界進出していたわけじゃねえんだぜ? 精々、この町の女が騒ぐぐらいだろ」

勇者「マジっすか。……この町には見切りをつけたけど、騒いでくれるなら……グフフフ……フフフハハハハハハ!!! よぉーし!!!」

兵士長「まてまて。俺の話をきけ」

勇者「もー!! なんすかぁー!! 女の子が俺のことまってんすよぉー!!」

ちょっと落ち着きさえすればモテモテになれるだろうに…

兵士長「悪いことはいわねえ。姫とくっつけよ」

勇者「だーかーらー、俺にそんな趣味はないんすよ」

兵士長「よーく考えろよ。姫は誰が産んだ? ええ?」

勇者「魔女っすけど?」

兵士長「その魔女。容姿はどうだったよ」

勇者「すげー美人……はっ……!?」

兵士長「やっと気が付いたか」

勇者「あ、あの野生児が……あんな絶世の美女に……!!?」

兵士長「しかも、グラマラスなエロボディになること請け合いだ。流石の俺も嫉妬しちまうぜ」

勇者「しかも姫、いや女王となるなら、俺は国王に……!! それって……!!!」

勇者「側室とかもオッケーってことっすよねぇ!?」

兵士長「あ、ああ……まぁ、なぁ……」

勇者「うっひょーい!!!! やべぇー!!! テンションあがってきたぁー!!! それってもう合法ハーレムじゃないっすかぁ!!! 今が人生のピークっすぅぅぅ!!!!」

勇者「こうしちゃいられねぇ!!! 未来の側室たちを今から選出してこないと!!! まっててねぇーん!!! 俺のハニーたちぃー!!!」ダダダッ

兵士長「……ダメだな、あいつ。ま、姫が女王になるのにも色々問題は多いからな。簡単にはいかないぜ?」

農村

村長「なんと勇者様が……!? そうですか……。わかりました」

兵士「はい。ですので、勇者殿の妹君と保護している女の子を連れてくるように言われて」

シスター「兄さんが……」

狼少女「あいつ、魔女……倒したのか……」

戦士「複雑よねぇ。仮にも自分の産みの親なんだし」

シスター「どうする?」

狼少女「……いくっ!」

シスター「よかった」

狼少女「あいつには私がいないとダメなんだ! 私もあいつがいないとダメなんだ!!」

戦士「生意気なこといっちゃってぇ」

医者「治療に専念するためにも都会にいったほうがいいでしょう。私も賛成です」

村娘「少し寂しくなるけど、仕方ないですね。また、勇者様と一緒に遊びにきてください」

シスター「はい。必ず」

狼少女「おい!! 早く行くぞ!! あいつ、待ってるからな!!!」

街道 馬車内

狼少女「まだかー? なぁなぁ?」

戦士「もうちょっとよ」

狼少女「うぅー……」

シスター「兄さんのこと、本当に好きなのね」

狼少女「あいっ」

戦士「どこに惚れたの? やっぱり顔? 勇者様、可愛いもんねぇ」

狼少女「ちがうっ。顔は気持ち悪いだろ。あいつ、いつも一人でニヤニヤしてるしな」

シスター「まぁ……そうね……」

狼少女「……あいつ、私のこと必死に守ってくれたんだ。へんな人間が私を奪おうとしても、あいつは嫌だっていってくれた」

戦士「それだけで惚れちゃったのぉ?」

狼少女「あんなに優しくされたのは初めてだったんだ……。私、いつも……」

シスター「そっか……。うん。兄さんは優しいから、きっと貴方のこと大切にしてくれるはず」

狼少女「そうか!? えへへ。実はな、あいつ私のこと面倒みてくれるっていってくれたんだ!! それってつまり……」

戦士「つまりぃ……?」

城下町

「キャー!! 勇者様ぁー!!」

勇者「やぁやぁ。みなさん。お元気ですか?」

「勇者さまー!! サインしてください!!」

勇者「いいですよぉー。アッハッハッハッハ」

「勇者様、私にもサインお願いします!!」

勇者「はぁーい。いいですよぉー」

勇者「(ブワァーッハッハッハッハッハ!!! これが恋愛マニュアルにも書いてあったモテ期ってやつかぁ!!!)」

勇者「(いやぁー。愉快愉快。時代が俺に追いついた瞬間を垣間見たな)」

勇者「(そして、子猫ちゃんと戯れつつ……大本命のあいつを……)」

狼少女「おぉぉーい!!!! わぁぁぁー!!!」テテテッ

勇者「おぉー!! やっと来たかぁ!! まってたぜぇ!!」

狼少女「あう……? こいつら、誰だ?」

勇者「俺のファンだ。さぁ、ご挨拶して」

狼少女「ガルルル……」

シスター「兄さーん!」

戦士「勇者さまぁーん!!」

勇者「おー!」

シスター「よかった……。無事だったんですね」

戦士「うふふ。この分だと、今夜は大フィーバーねぇ」

勇者「約束、あとで果たすからな」

シスター「うんっ。本当に無事でよかったぁ……」ギュッ

勇者「妹を置いて兄が死ぬわけないだろぉ?」

シスター「もう……」

狼少女「ガルルル……!! くっつきすぎぃ!!」

勇者「そうだ。なぁ、聞いてくれ」

狼少女「なんだ?」

勇者「お前、俺のこと好きだよな?」

狼少女「あいっ!」

勇者「実は、俺もお前のこと好きなんだ」

狼少女「おぉぉ!! 本当か!?」

勇者「ああ。両思いってやつだ」

狼少女「お、おぉ……!! ま、まぁ、知ってたけどな!!」

勇者「(これでよし……。ククク……ガキは単純でいいぜぇ……)」

「あのぉ、勇者様、こちらの方たちは?」

勇者「ああ、紹介しておきましょうか。どうせあとで有名になっちゃうんだし」

勇者「こちらの屈強な男性は、傭兵です。中々つよいんすよ」

戦士「うっふん。女はお断りよ。可愛い男にしか興味ないのぉ。ごめんねぇ」

「は、はぁ……」

勇者「で、こっちが妹です。可愛いでしょう?」

シスター「ど、どうも」

「確かに……。綺麗な人ですね……」

勇者「で、こいつが――」

狼少女「娘だ」

勇者「そう娘……娘?」

「む、娘って……勇者様の……?」

勇者「いやいや、何をいってるんだ? ちがうだろー?」

狼少女「パパだろ?」

勇者「いや……」

狼少女「パパー」ギュッ

勇者「……」

「勇者様って子持ちだったんですね……」

「なーんだ……がっかりぃ……」

「奥さんいたんだー」

勇者「ちがう!! 娘なんかじゃ……!!!」

狼少女「パパぁ。あいしてるぅ」スリスリ

勇者「ほぉぉぉぉ……!!!!!」

狼少女「もう離さないからなぁー」スリスリ

シスター「(す、好きって……)」

戦士「(ラブじゃなくて、ライクのほうなのねぇ……)」

酒場

兵士長「ハーッハッハッハッハッハ!!!! そいつはとんだ大誤算だなぁ!! ハーッハッハッハッハッハ!!!!」

勇者「わらいごとじゃねえんすよぉ!!! せんぱぁい!!!これじゃあ俺……!!!」

兵士長「結婚は無理。つまり、国王にはなれねえなぁ」

勇者「ガァァアア……!!!」

兵士長「すっ……ぱぁー……。まぁ、まだわかんねえだろ。今はパパ扱いでも、一人の男としてみてくれるはずだ。そのうちな。諦めるなよ」

勇者「お、おれのモテ期が……瓦解していく……!!」

兵士長「おっかしいなぁ。てっきり、姫はお前に惚れてるとおもってたんだがなぁ」

狼少女「はむっ……はむっ……!!」

シスター「あの、ところでこの子が姫……女王になるという話は本当ですか?」

兵士長「王座が空席だと色々と面倒だからな。まぁ、姫にその気があればの話だが」

戦士「こんな獣っぽい子が女王様になれるわけぇ?」

兵士長「それは教育次第でどうにでもなるだろう。んで、薬のほうは大丈夫か?」

シスター「中和剤のほうは間もなく用意できるとのことです。それさえ飲めば、この町の人たちも凶暴化することはまずありません」

兵士長「あぁ。体の中の毒がぬけねえと、安心して嫁も抱けねえからなぁ。よかったぜ……」

勇者「……おい、お前」

狼少女「なんだ、パパ?」

勇者「どうする、これから?」

狼少女「お前、面倒みてくれるんだろ? 私はそれでいいぞ」

勇者「この国の姫になることになってもか?」

狼少女「姫にならないとお前が困るっていうなら、姫になる!」

勇者「本気か?」

狼少女「あい。そのかわり、お前が一緒にいるのが条件だ! これは譲らないからな!!!」

兵士長「パパ、だもんな」

狼少女「そうだ!! パパだ!!」

勇者「ぐっ……ぅぅう……!!!」

狼少女「パパ、どうした?」

勇者「うわぁぁぁぁぁぁあああ!!!! 俺はこんなガキからもモテねええのかよぉぉぉぉぉ!!!! うわぁぁぁあああ!!!!」

兵士長「ある意味、モテてるぞ。よかったな」

勇者「ぢぐじょぉぉぉぉ!!!! 女なんて……!!! 女なんてぇぇぇ……!!!! あぎゃぁあああああ!!!!!」

数日後 傭兵所

受付嬢「今日の記事はっと……」ペラッ

受付嬢「魔女の裁判が近いうちに始まるみたいですねー」

戦士「そうなのぉー」

受付嬢「どうしたんですか? 元気ないですね。折角、大きな仕事がはいったっていうのに」

戦士「だってぇねぇ……」

受付嬢「怪我が完治するまでの間もお金払ってくれるっていうんですから、景気のいいはなしですよね」

戦士「それは嬉しいわよぉ? お城で働ける傭兵なんてあまりいないものぉ」

受付嬢「だったら……」

戦士「でもでもぉ。勇者様と一緒になれる時間がないなんて、やだやだぁ」

受付嬢「仕方ないじゃないですか。勇者様は今現在姫様の教育係なんですし」

戦士「つまんないわぁー。あたしもお姫様の教育係になりたぁーい」

受付嬢「姫様がおかしな道へ行ってしまいそうですね」

戦士「勇者様も勇者様よ。こんなに素敵な女がいるのに、会いにもこないんですもの。ぷんぷんっ!」

受付嬢「ここにいる傭兵は男性しかいないんですが……」

墓地

シスター「兄さんから聞きました。貴方は滅多に家には帰ってこず、半ばお嫁さんも子どもも放置していたと」

シスター「やはり、貴方は最低の父親です。私は貴方のことが大嫌いです」

シスター「でも、たまに帰ってきたときには貴方が息子に付きっ切りであったというのは驚きました」

シスター「息子が好きだったのか、それとも本当に愛したお嫁さんの子どもだから好きだったのか。それは分かりません」

シスター「それでも貴方が最後までここを、この町を、兄さんの待つ家を帰る場所にしていた。それが答えかもしれませんね」

シスター「そんな兄さんに私は妬いています。羨ましいと思っています。それもこれも全ては貴方の所為です」

シスター「兄さんのこと大好きなのに……。こんな気持ちにさせて……バカヤロー!!!!」ドガッ!!!

兵士長「過激だねぇ、墓を叩く修道女なんて聞いたことねえよ」

シスター「あ! こ、これは恥ずかしいところを……」

兵士長「ま、蹴りたくなるのも分かる。こいつはそれだけクズだったからな」

シスター「貴方も父になにか……?」

兵士長「こいつ、俺の嫁さん寝取ろうとしたんだぜ? 親友の妻をよく狙えるなって言ったら、親友の嫁だから抱けるんだよってぬかしてやがった。あぁー。腹立ってきた。俺も蹴っていい?」

シスター「ダメです! 叩いていいのは家族だけです!」

兵士長「ハハッ。それもそうだな。んじゃ、花だけ置いていくか」

宿舎

勇者「すかぁー……すかぁー……」

『勇者殿!! 勇者殿!!』

勇者「なんすかぁ……」

『姫様が中庭で待っています!! お急ぎください!!』

勇者「まだ6時じゃないっすかぁ……」

『お願いします!!!』

勇者「起きなかったっていってくださいっすぅ」

『おきろー!! がおー!!!』ガンガンッ

『姫様!! そういう行為はお控えください!! お体にも障りますから!!』

『おーきーろ! おーきーろ!!』

勇者「あぁあああ!!! 起きたよ!!!! 今すぐ行くからまってろぉぉぉ!!!」

『あいっ』

『勇者殿……』

勇者「勇者なんだぞぉ……はぁぁぁ……この国を救った英雄なんだぞぉ……なのになんでまだ彼女ができねえんだぁ……? おかしくねえ……」

中庭

姫「遅いぞ。姫を待たせるとは何事だ」

勇者「見栄えだけよくなっても、やっぱりダメだな」

姫「まずは形からだろ? 恋愛マニュアルにも載ってたぞ!」

勇者「それとこれとを一緒にするなよ」

姫「さぁ、早く投げろ! 朝の運動だ!!」

勇者「勉強もしろよ」

姫「あいっ!」

勇者「ちがうだろ」

姫「あぅ……。はい! わかりましたわ!」

勇者「そうそう。ほーら」ポーイッ

姫「がうー!!」タタタタッ

勇者「全く……。まぁ、まだ数日だしなぁ……」

狼「ガァァァウ!!」タタタタッ

姫「おぉう!? 邪魔するなー!! これは私のだぞー!! あー!! くわえるなぁー!!」

なんだろう…
この勇者には報われてほしいのに報われないほうが面白いと思ってしまう

狼「ガルルル……!!」

姫「ガルルル……!!」

勇者「大丈夫か……この先……」

兵士長「今日も姫様は元気いっぱいだなぁ」

勇者「あれじゃあ、治療も長引きそうっすね」

兵士長「心配ないんだろ? そのうち、初潮もあるだろ」

勇者「……」

兵士長「姫に振られたの、まだ気にしてるのか?」

勇者「そうっすねぇ……」

狼「ガァァウ!!」

姫「まてー!!」

勇者「今、幸せそうにしてるから、いいっす」

兵士長「そうか。……魔女と陛下のことは俺に任せろ。姫には関係ねえことだ。もう姫の親はお前だしな」

勇者「それ、言わないでくださいよ……」

兵士長「まぁまぁ。姫も成長すりゃあお前に惚れるって。だから、見張っておけよ。他の男にとられないようにな。勇者様っ」

姫「とってきたー!!」

勇者「よし、姫。そろそろ朝食の時間だ」

姫「ナイフとフォーク使うのか?」

勇者「いつまでもスプーンだけじゃダメだろ?」

姫「むぅー……がんばればスプーンだけで食べられるぞ!」

勇者「そういう問題じゃないんだよ」

姫「……わかったぁ」

勇者「違うだろぉ?」

姫「わかりましたわ!」

勇者「それでいい」

狼「クゥーン……」

勇者「お前も、他のやつらみたいに森へ帰ったらどうだ? 中々一緒に遊べないし、寂しいだろ?」

狼「ガウッ!!」

姫「あいつは私とお前の傍にいたいんだ!」

勇者「ふぅん。ま、番犬にはなるからいいけどな」

シスター「兄さん。おはよう」

勇者「うぃーっす」

姫「おはようございます」

シスター「おはようございます、姫様」

勇者「今日はどうしたんだ?」

シスター「どうって、兄さんの部屋の片付けをしようとおもって。まだ片付いてないんでしょう?」

勇者「めちゃくちゃにされたからなぁ。もうどうでもよくなってて」

シスター「不衛生、不潔よ。私が掃除してあげる」

勇者「……」

シスター「見られて困るものでもあるの?」

勇者「……多分、ない」

シスター「よかった。それじゃ、またあとでね」

勇者「はいよぉ」

姫「ガルルル……!!」

勇者「何唸ってやがりますか、姫様?」

姫「私もお前の身の回りの世話したほうがいいか?」

勇者「俺が姫様の身の回りの世話をするんだが」

姫「そうか! 流石はゆーしゃだな! かんしんだ!!」

勇者「俺はこんなことするために勇者になったんじゃ……」

姫「何度も聞いた!! モテるためだろ? なら、もういいはずだ!!」

勇者「なんで?」

姫「私にモテてるからな!」

勇者「いや、俺はお前みたいな……」

姫「清楚で可憐で守ってあげたくなるような美人になってやるから!!」ギュッ

勇者「(でも、嫁にはなってくれるかわかんねえんだもんなぁ……)」

姫「えへへー」スリスリ

勇者「(こいつ教育係なんてしているかぎり、ナンパもいけねえよぉ……!!!)」

勇者「このままじゃ俺!!! 一生童貞じゃねええかぁぁぁ!!!! うわぁぁぁあ!!!!」

姫「うわぁぁー」

勇者「真似すんなぁ!!! 責任とれ!!! 責任!!! 可愛い嫁さんでも紹介してくれよぉぉぉぉ!!!」

うわぁぁぁー

宿舎 勇者の部屋

シスター「ふぅ……。やっと綺麗になった」

シスター「あら、この本……恋愛マニュアル……? 兄さんがいつも見てるっていう……」ペラッ

シスター「へぇー……。あ、男性を落とすテクニックまで……。私もこういうの読んだほうがいいのかなぁ……」

シスター「ん? このページ、端が少し折れてる。何か書いてるのかな……?」

シスター「ええと、年上の男性を落とす方法……。 パパと呼んであげることで……年上の男性は胸をうたれ……」

シスター「……」

勇者「おーい」

シスター「あ、兄さん。お疲れ様」

勇者「ホント、お疲れだよ。随分、片付いたなぁ。ありがとう」

シスター「ううん。いいの。姫様は?」

勇者「今はお昼寝中だ。ほーんと、気楽なもんだよなぁ。こっちはナンパを我慢してるっていうのに。これじゃあ、結婚どころか彼女もできねーよ!! 俺、勇者なのに!!!」

シスター「ふふ……。兄さんは、とってもモテてると思うけどなー」

勇者「はぁー? 誰に? もしかして酒場のバニーちゃん!? なんか言ってた!?」

シスター「秘密。でも、もう少し勇者様でいれば、きっと理想のお姫様が兄さんの前に現れると思うよ?」

勇者「絶対だな!? おーし!! なら、もう少し勇者でいるかぁ!! 女の子にモテるなら!! 早くこーい!!! 俺の嫁ぇぇぇ!!!!」


END


でもパパはねぇなwwwwww


引き込まれる面白さがあって楽しかった


報われたのか気になる
報われていて欲しい気持ちとそうでない気持ちが…


パパは逆効果だよなぁ…

乙!
勇者が途中でひよらずに、最後までリア充爆発しろのスタイルだったのが良い
爽快感ある面白さだった

乙乙
読みやすかったし楽しかったわwwwwww


後日談もあるんだよな?

乙乙
もう終わっちまったのか・・・毎日楽しみに読ませてもらったぜ

乙ー
ボリュームあって面白かった
この生産力は凄いわ

勇者は恋愛マニュアルに書かれていることを実践しても未だに年齢=彼女なしだから、その恋愛マニュアルは欠陥だらけなんだろうな
そんな欠陥ハウツー本を見て実践した姫様もまた勇者と同じ道を歩むわけか
姫様はまあ業を煮やせば文字通り猛アタック仕掛けるだろうから良いか

乙‼

ある意味信念を貫き通す勇者
カッコ良かった
楽しい話だった
ありがとう


勇者も姫もブレずにいて面白かった

乙!楽しかったぜ!

すぐに終わるかと思ったが、意外なボリュームと面白さでハマったわw
ちょっと未来のお話も見てみたいが、仕方ないかな

こういう勇魔王もいいね
魔法が無い代わりに医者が超人過ぎるのはアレだけど、とても楽しかった乙


これは名作


後日談待ってるぜ


後日談希望
超希望

乙。
姫様にはまだ奥の手のお赤飯に合わせて押し倒すがあるからな


更新もすげー早かったし面白かったぜ

おつ
妹と結ばれないとか話としておかしくね?

644 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage 2014/04/27(日) 02:50:56.18 ID:bA453CjWo
勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」
勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398060666/)

完結

乙 いいもの読ませてもらった

乙!

一般市民(リア充)を躊躇なく斬る勇者って斬新だな。乙

しかし殺してはいないからな。なんだかんだで優しいというか非情になり切れないというか
不純な動機の割にやっている事は立派な勇者なんだよな
王と魔女のなれそめやら後日談も見たかったんだが、まぁ乙

妹ルートこい!

中盤すぎるころまでずっと医者が怪しいと思ってたわ

今日見つけて一気に読んだ



>>429
何というおまおれ。あの医者も本気出せば魔女と渡り合えそうな実力だったしな。
むしろ勇者より医者の方が活躍してたような……何でもない。

医者もすごいけど薬で対抗しても改良した新薬作られてイタチごっこになるだけだし
結局は誰かが魔女を討たないと終わらないんだよなこれ

おつおつ

おつです

おつ

後日談でも
次スレで続編でもいいから続きはよ!

終わってからのスレの伸びが凄まじいな。

まとめから流れてきてsageもしないバカがいますねぇ

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