「寒いね」
「……」
「外だもんね」
「……」
「もしかしてその耳あてで聞こえてない?」
「うん」
「……」
「ねえ」
「……」
「聞こえない?」
「うん」
「本当は?」
「うん」
「どっち」
「聞こえたくない」
「……」
「怒ってる?」
「うん」
「寒いから?」
「うん」
「急に呼び出したから?」
「うん」
「でも耳あて持ってきたんだよね」
「うん」
「聞こえてるよね?」
「聞こえない」
「……」
「どうやったら聞こえる?」
「聞こえてる」
「……」
「あのさ」
「……」
「なんで呼び出したと思う?」
「告白」
「正解」
「手紙に書いてた」
「……」
「告白の前にさ」
「……」
「ちょっとお話しない?」
「……」
(聞こえてる?)
「起きてる」
「……!」
(心読まれてる?)
「……」
(心の声が聞こえるのか!)
「……」
(え、えっと、無心無心……)
「……」
(ごめんなさい何か言ってください)
「何ずっとこっち見てるの寒い」
「読まれてなかった!」
「……何の話」
「……」
「えっと、お話する」
「……」
「僕の好きなタイプの子はね」
「……」
「無口で無愛想で」
「聞いてない」
「刺々しくって」
「興味ない」
「でもちゃんと話聞いてくれる女の子」
「聞こえない」
「……」
「そういうところもいいと思う」
「……」
「聞いてる?」
「……」
「まあいいや。君がタイプ」
「……そう」
「……!」
「そうそう!一目惚れしかけた!」
「……」
「実は僕、昔仲良かった子がいるんだ」
「……」
「幼馴染でね、小さな頃からずっと一緒だったんだ」
「その話長いの?」
「……うん。あっもしかして喉渇いた?や、関係ないか」
「うん。いや、いい」
「ごめんごめん、ジュース飲む?ペットボトル」
「新品なら」
「愛媛の真面目なジュースです!」
「……」
「……」
「続けるね。ずっと長い間一緒にいたから、自然とお互い好きになってたんだ」
「……」
「中学で付き合い始めてからも、僕らはずっと仲良しだった」
「……」
「事あるごとに、『僕が君を守るからね』って言ってた」
「どこの少女漫画よ」
「ははっ、彼女も同じこと言ってたや。やっぱり似てる気がする」
「そう」
「まあ、結局守れなかったんだけどね」
「……」
「腐れ縁っていうか幼馴染補正ってか、僕らは中学2年まで同じクラスだったんだけどね」
「……」
「次の年で初めて違うクラスになったんだ」
「……」
「聞いてる?」
「聞いてる」
「そう。で、別々になっても帰りは一緒だし、受けるクラスが違うだけで何も変わらないやと思って」
「……」
「中学3年生もそれまで通りに過ごしてたんだ」
「……」
「そこで彼女は、いじめにあってた」
「……」
「まあ、これに関しては気づけなかった僕も悪いんだけどね」
「…」
「元々無口な子だったからね、なかなか辛いのを見せなかったんだ」
「…」
「噂で聞いたときにはもう遅かった。本人に確かめたら、珍しく泣きながら逃げられて」
「…」
「1週間学校を休んだ」
「…」
「その後、卒業式の午後だっけ、呼び出されたんだ」
「…」
「そう、この場所に、ね」
oh
「そこで全部聞かされた。いじめの理由とか、どれだけ辛かったかとか」
「僕には聞く事しかできなかった」
「その後、僕のことをどれだけ好きかって、さんざん聞かされた」
「途中から彼女はまた泣いてた」
「僕は謝りながら彼女を抱きしめて、『気付けなくてごめん。これから先ずっと君を守るから』って言った」
「彼女は泣きながら笑って、ありがとうって」
「『でも、もういいや、ごめん』って」
「僕の腕からするっと逃げて、飛び降りた」
「僕は中高一貫のこの学校から出ることにした。高校は別のところに進学した」
「そこで、こっそり彼女のいじめの原因について調べてた」
「いじめてた子、ひどいんだよ。彼女はニュースになって新聞に名前載ってたのにさ、いじめの犯人はA子ちゃんなんだ」
「クラスメイトのインタビューでもさ、お決まりの、そんなことする子じゃない、優しい子」
「いじめがあったのは知らなかった、だってさ」
「理不尽だ、そう思ったね。犯人の子は更生して、今は大人しく過ごしている、みたいな記事で終わってたんだもん」
「仕返し、しなくちゃ」
「彼女の話と、彼女と同じクラスで本当に仲の良かった子の話から、犯人を突き止めた」
「それから猛勉強して、この高校にもう一度戻ってきた。ちょうど一年前のことだ」
「覚えてないのも無理ないよ、この学校人数多いし、僕自身あまり目立たなかったからね」
「長かったし、苦しかったね。けど」
「復讐には今みたいな卒業式の後の、この場所がぴったりだ。そう思わない?」
めっちゃ期待
「……あれ、逃げないんだ。無理もないよね、寝てるもん」
「よく効くねこの薬。使えるかもと思ってペットボトルの底から注射器で入れてみておいてよかったや」
「寒いから余計効いたんだろうね。どこから眠ってたの?」
「……」
「おーい、起きてよ」
「……ん、痛い」
「おはよう。僕の告白、聞いてくれた?」
「私寝てたの……いつの間に。聞いてないよそんなの」
「そっか。まあいいや」
「……」
「力入ってないね。それに軽そうだ」
「……何するの」
「僕は大したことはしない。するのは君だ」
「……!」
「あ、ほんとに軽い。よいしょっと」
「何!やめて!」
「うるさい。じゃあね」
「や」
「ぽいっ」
どうにか落とす……そっちか……
「……」
「はあ……死んだね」
「仇は、取ったからね。僕の大事な幼馴染」
「さて、僕も、君に会いに行くよ」
「待ってて」
僕は喉が渇いていたから残ったジュースを飲み干した。そして、手すりの上に立つ。
冷たい風が心地いい。下には既にひとだかりができている。みんなうえにむかって何かをさけんでる。
きこえない。きくきもない。
ああ、ぼくもなかなか、すなおじゃないなあ
めをつむると、かのじょがみえる
そうしてそのまま
いしきが、おちる
ぼくも、きみのところまで
おちる
おわり
ごめんなさい深夜テンションなんですノープランでやっちゃいました欝展開すみません!!スライディングドゲザ
こんなんじゃなくてもいいから、とりあえず幼馴染が欲しいですよね僕には
途中のコメント、嬉しかったです!読んでくださったありがとうございました
落ちた女の子が犯人であることが、男の子の勘違いじゃないことをみんなも一緒に祈ってあげてください。
それでは
良かった!
>>26
ほんと、ちょっと書くだけの予定だったので、期待に添えなかったと思います
次はちょっと書き溜めて長めのを挑戦してみますね
おやすみなさい
おつ
数ヶ月後に>>25を読み返すとハッピーになれるぞ
>>29
普段からこんなタイプの文章しか書けない残念人間なんで、多分大丈夫だと思います……
期待してるよ
改行もしない、マトモな文章も書けないんだからもう二度と書かなくていいよ
批判レス見たらやる気湧いてきたから
スライディングドゲザ精神でもう一個
「時間止めて色々やってた頃の話」
書き溜めよう
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