玄「ようこそ松実館百合の間へ!」(710)

いらっしゃいませ!ようこそ松実館へ!

当旅館は、お客様の日頃よりの疲れを癒し明日への活力を生み出します!ゆ~っくり休んで、心よりほんわかしていって下さいね?

あったかお風呂においしいご飯、素敵なお部屋。どれも私達の自慢の一品ですよ!阿知賀の豊かな自然の中でのお散歩もとってもお薦めです!

由緒正しいこの旅館は…えっと…築何年だっけおねえちゃん…え、わかんない?え~っと…

あ、そ、そうだ!えっとですね、ところでこの旅館、由緒正しいだけあって結構不思議なお話があったりするんですよ!特に今年の夏は豊作です!

会っても特に幸せになったりしない座敷わらしとか、やたら元気に暴れまわる小さな妖怪猿とか、怪獣ツインテールとか。あと、凍死した女子高生の幽霊!これが一番目撃情報多いです!

ほら、夏でもいつも寒そうにモコモコの…ってこれおねえちゃんだ~~~~!!?

うう…今気付いたよ…もしかして他の妖怪とかも私の知ってる子の事だったりして…え?あと、妖怪はあんまり嬉しくない?そうですか…座敷わらしとか可愛いと思うんですけど…

あ、もういいですか?あ、はい。それではお部屋にご案内致しますね。お荷物を…はあ、いいですか

…えーっと

あ、そ、そうだ!

あと一個ありました。当旅館に伝わる不思議な話!

実はうちの旅館のある部屋はですね

ある条件を満たす二人が一緒に泊まると、絶対に幸せになるって言い伝えがあるんです!

ふっふっふ~。喰い付きましたね?

では、その条件とは。…こほん




女の子同士なのです!!





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1351272548

スレ立て乙!
京子ちゃんは女の子ですよね(提案)

玄「…はれ?」

宥「玄ちゃん…」

玄「なんでお客様、ズッコケられたのです?」

宥「玄ちゃん」

玄「はい、なんでしょうおねえちゃん」

宥「お客様、男性だよ…」

玄「…おお!!」

これは、なんでもない私達の日常のお話

お客様が来て

私達が出迎えて

お客様が宿泊されて

私達は学校へ行って

お客様が帰って

また別のお客様が来て

そんな、私達にとっては今までずっと当たり前だった日常

そして、お客様にとっては、恐らく非日常

誰かの何でもない一日が、誰かにとってはとんでもない一日だったりするのだと

私達は幼い頃から知っていた

私達はお客様の事情など知らず、ただ迎え、送る。そんな日々

…けど

そのお客様が

私達にとって他人では無かったりしたのなら

私達の日常は

非日常に変わったりするのだろうか

宥「玄ちゃん?」

玄「ふっ…なんて、私ってば今日はちょっとアンニュイなのです…」

宥「…」

玄「それではお客様、どうぞごゆるりと…」サササ

宥「キャラぶれぶれだよ玄ちゃん…」

おもち病院とか占いシリーズの人?


照「京ちゃん、カッコよくなったね」京太郎「えっ!?」  EURO優勝国トトカルチョ企画、優勝国的中景品ss

玄×灼→晴絵

玄「ようこそ松実館百合の間へ!」

>>6
違うよ

あぁ、カンちゃんの人か。

コケシ支援しておこう。

アラフォースレのイッチ、カンちゃんの人だな

なお、取り敢えず立てただけで、まだはじまらん模様
本格始動は月曜以降です。すみませんねわざわざプレオープンに見に来て貰っちゃって

実はあんまり百合とか書いたこと無いんだけどね。折角なんで玄達中心にしつつも、この機に乗じて何組か百合カップルのSS書いてみようかなと
それも原作無視の変わり種もありかなと。もしかしたらどんなカップルにするか安価するかも?

で、アラフォースレの◆VzYRYPi6rjR6(EUROで得点王当てた人)みたいにこっちの人(野球の人)にも特典を付けようと思ってます
どんなのかって言うと、だ

好きな百合カップルを指定してね。百合カップルならなんでも有りです。どんな感じの希望かも有ったら言ってね
野球スレで書いてるの知ってるから、そっちのスレのIDで書き込んでくれたらわかるんでお願いします
って言うのを、後ほど野球イッチに伝えます。それがお客様第一号


今回は行動の安価とか無しでしかもゆっくりやる

ってことで、今日はここまで。おやすみなさい

この人の書くのどっちやクロチャーは可愛いから期待してる

楽しみにしてる

こっちに書き込むのをすっかり忘れる痛恨のミス。
期待期待。

ワイのせいで止まってるのが申し訳ない野球の人です。
リクエスト、してもええんやろか。
俺だけ得なのと単純に好きなのと折角だからと無茶なの投げるのとネタに走るのどれがええんやろうなあ。

クリケットかソフトボールあたりにしよう(適当)

ここのイッチならフットサルやな

最近どこか更新してる?
ちょっと心配

すまねえ。今までちょっと立て込んでたんだ。どこも更新してない。家にすら帰れてなかった
明日が正念場なんで、今週中にはボチボチ再開出来ますよ

野球の人、良かったら最初のお客様指定お願いします。女の子二人ね。学校は同じでも違っても構わん

イキトッタデー

お疲れ様です頑張ってください。

では、無難にちゃちゃのん&愛宕洋榎でお願いします。
期待して待ってますが無理はなさらないでくださいね!

そこは胡灼やろ!なんか故事成語みたいだけど

アラチャーははるちゃーと幸せにしてあげたい。
胡桃ちゃんは可愛いけど片思いが似合う気がするので、勝手にお一人様として灼に会いにこればいいんじゃないだろうか。

遅くなりました
ちょっとだけやりますね
ククク…今までちょっとやったことない試みするんで、このスレは俺の実験の犠牲になるやもしれん。前もってぺっこりん

ヨロシクオネガイシマスペッコリン、ヨロシクオネガイシマスペッコリン

はよしろぺっこりん

まってた

それじゃあ一個目
ちゃちゃのん×洋榎

第一話

コンプレックス・ガール (←タイトル)

それは、日常から始まった非日常のお話

例年のこの時期より、ちょっとだけ…そう、ちょっとだけ宿泊客が多くて
まるで秋の行楽シーズン繁忙期が早まったかのような、お父さんも「これは予想外だったなぁ」って困った顔で言ってたくらいの、だけど言ってしまえばその程度の非日常
これくらいの非日常は、私達のような生活をしている家族にはそれでも日常の範疇…みたいな程度

これまでもっと大変なことは山程あったし、すっごく悲しいこともあったし、辛いことも、あった
それに比べたら、本当に何てこと無いくらい
今でも、引き摺る想いがあるあの出来事に比べたら、本当に。そう、本当に…

…いきなり暗くなっちゃったね

けど、私の人生はそれだけじゃないっていうのも、わかってる
これまでの私の人生はきっと他の同年代の子たちと比べても本当に波瀾万丈で、悲しいことも辛いことも多かったけど、それ以上に楽しいこと、嬉しいことが沢山あったと、私は思う
特に今年は…本当に、色々あった
大好きな人達に囲まれて大好きな事をやってこれたから、トータルでは、私はきっと凄く幸せ者なんだろう

…話が脱線しちゃってますね

あ、そうだ!あとあと、これだけは言っておかなければ!
従業員の方々が言うには、この盛況ぶりは私達阿知賀女子麻雀部が全国大会で活躍したその宣伝効果かもって、よく褒めて下さったりするんで、最近ちょっとおうちで鼻が高いのです!!えへへ

…こほん

さて。それで、何が起こったかというと
実はお客様の少ない時期の間にと、老朽化してきた幾つかの部屋を簡単な補修がてらリフォームにかけてしまっていて
中々こんな事はないんですけど、お客様からの問い合わせも予約もいっぱいで…
流石にこれではお客様にも申し訳ないし、うちもこんなチャンスは滅多に無いし勿体無い事は出来ないって事になって…

それで

灼「大掃除?この時期に?」

がたがた。部室の掃除用具箱に箒とちりとりを仕舞い込みながら、灼ちゃんがちらりと私を見やり、疑問を口にする
最近立て付けの悪くなったそのスチール製の用具箱は、簡単にその役目を全うする事はありません。開こうとすれば頑なに口を閉ざし、閉じようとすれば中々口を閉めない、我儘モンスター
がたがたがた。灼ちゃんも苦戦しています

玄「うん。そうなんだ」

灼「へ~」

がたがたがた。がたっ。相槌を打ちながらもちょっとづつ彼女の意識が会話から用具箱へ移行しているのがわかります
無理もありません。彼は彼女の永遠のライバルなのです。…ちょっとジェラシー
今日は他の皆は用事だったり家の手伝いだったりでもう帰ったしで、二人きりだったんだけどな

玄「って言っても、従業員の皆さんはお客様の対応で忙しいので、私とお姉ちゃんだけで…って事になったんだけどね」

灼「それは…っ!大っ変っ!…宥さん、受験生なのに」

玄「私もそう言ったんだけど…私一人じゃ大変だろうって」

がったがったがった…灼ちゃんの鋭い目つきがいつにも増して鋭くなっててちょっと怖い
背も高くて力がある赤土先生や、ちっちゃいけど気合満点な穏乃ちゃん、意外にパワフルな憧ちゃん、そしてなんかよくわかんないけどお姉ちゃん、以上の人達は結構簡単にいうことを聞かせられるんですけど
私や灼ちゃんのような非力な人間が彼奴を従わせるには、ちょっとしたコツが必要なのです。ところで、うちの2年生を情けないと言わないように

灼「っていうかっ!!」

げしっ!

灼「…ふう」

あ、今灼ちゃんがコツを使いました。ちょっとやり遂げた顔をしています。かわいい

玄「お疲れ様。灼ちゃん」

則ち、結構な力を入れてのキック。最近は腰も入ってきていい感じの破壊力です。ついに彼奴も力尽き、その顎を閉じました
ちなみに私は体当たりでやってます。私一人で掃除してた頃は従順な子だったので、いったい何が彼をこんな悪い子に変えてしまったのか…
関係ないけど、私は過剰な体罰はその対象に反骨心を植え付けると思うのです

灼「…っていうか、二人で大掃除って無謀じゃない?しかも明日中に…だっけ?」

玄「うん。それで、申し訳ないけど私とお姉ちゃんは、明日の部活お休みさせてくれないかなと…」

灼「それは別にいいけど…あと、前々から気になってるんだけど、宥さん受験なのに部活来てて大丈夫なの?」

玄「あはは…」

灼「笑い事じゃなくて…まあそっちは置いとくとしても、大掃除の話。大丈夫?」

玄「大掃除って言っても、別に旅館全部を掃除するって訳じゃないから」

灼「ふうん…」

玄「一部屋だけ」

灼「そうなの?」

玄「うん」

灼「一部屋だけなのに大掃除?」

首を捻る灼ちゃん。言いながらもてきぱきと帰る準備をしています
雀卓の上に置いてあった学生鞄を手に取ったので、私もそれに習って学生鞄を手に取ります

玄「もう十何年使って無いからね~。結構大変そう」

ちょっとあの部屋を思い出してゲンナリしてしまいました

灼「へ?」

玄「今は物置になってるのです」

灼「物置?」

玄「はい!」

灼「使ってなかった部屋を復活させるの?」

玄「その通りだよ。リフォームがまだ終わらないのにお客様が増えてきてて、このままお断りするのも申し訳ないからって、お父さんが」

灼「…まさか、古い旅館にありがちな、なんか出る訳ありの部屋とか…」

じとーっ。灼ちゃんがこっちを怪しいものでも見るような目で見やって来ます。心なしか立ち位置もさっきより離れてるような…

玄「いやいやいや。ないない。そんなことないよ」

苦笑しながら否定します。そんな大した理由は無いってば。無いはず…無いよね?物心付いた時にはもうあの部屋は物置部屋でした
そう言えば、いつ頃あの部屋は使われなくなったのかな?

灼「…なんか呪われそうで怖いな」

信じてくれてない!?ああー!灼ちゃんがどんどん後ずさりながら離れてく!?
そしてそのまま流れるように手を持ち上げて…シュタッ!っと手をこっちに振ったと思ったら

灼「じゃ、そういうことで」

あ!逃げた!うわわわ!?もう外も暗いし怖いよ、置いてかないで!うちの旅館より暗くなった学校のほうがよっぽど怖いよ!

玄「待ってよ~!」

たたたたたたっ!走れ!頑張って追いつけ私!…って、あれ?教室出たらもう居ない。灼ちゃんってこんなに足速か

灼「さて、施錠完了」

!?

灼「じゃ、職員室に鍵返して、帰ろうか。玄」

教室を出て灼ちゃんの姿を探し、数秒。後ろで鍵をかける音に振り返るとそこには灼ちゃん
どうやら逃げたと思わせて追いかけてきた私をやり過ごし、きっちり施錠してくれたみたいです。流石頼りになる部長はどんな時もしっかりものでした

玄「…」

あまりの事にカチコチと固まった私の顔を見て、彼女は…

灼「…くすっ」

謀られた!!

それはいつもの放課後

いつもの部室

いつもの会話

いつもの光景

いつもの


友達


それは日常

そして

ちょっとした非日常への入り口

そう

全ては、あの部屋を再び使うという決断を、お父さんがしたから

それだけ

だけど

あの部屋を使う必要が出たのは、お客様が増えたから

お客様が増えたのは、私達が全国で活躍したから

そう考えると

私は

私は…




















あ~~~~~~~!!腹立つっ!!!

ペコン!

奈良へ向かう電車の中、間抜けな音が車内に軽く響く。やった後に少し周囲が気になったが、喧騒溢れる車内にその程度の音では誰もこちらを見やるような事は無かったようでホッとする
ホッと息をつく、と言うよりはため息を一つ吐いて、うち、『ちゃちゃのん』こと佐々野いちごは自分の頭に叩きつけた空の烏龍茶のペットボトルを旅行用鞄の奥に閉まった
我ながら阿呆みたいな行動をしたのは、とにかく何かに全力で八つ当たりたい気分だったからだ

いちご(ほんっま最悪や!なんじゃの?これ!)

さっきは心の中で叫んだので、次に頭の中で明確に言葉にして呟く
正直に言ったならば、声を大にして叫んでやりいくらいだった。この電車に乗ってる人間全員に聞こえるくらいでっかい声で
けど出来ない。やったらアカンもん。奴らに気付かれるもん。呪詛のように細い声が自分の喉から漏れてくるのを自覚する

いちご「ほんま…ほんまについとらん…ついとらんよ…よりにもよって、まさかあいつらとおんなじ電車とか…ううう…」

本当に最悪だ
もう二度と会うこともないんじゃないかと思ってたのに。こんな、全国終わってまだ2ヶ月と経っとらんのに…
大阪駅でどかどかと乗り込んできた奴らの座っている席の方を睨みやる

いちご「こんなんなら、週末に一人旅なんて思いつくんじゃなかったわい…」

思わず頭を抱えてしまう。頭痛がする。まだ出発から2時間程度なのに、既に帰りたい
喧騒が聞こえる。うるさい。イライラする。家族連れの笑い声が聞こえる。耳障りだ。おどりゃ黙らんかアホ。ボケ
アイドルにあるまじき暴言まで頭に浮かぶ

いちご(いかんいかん…『ちゃちゃのん』は優しい子、優しい子…笑顔が素敵な可愛い子…)

頭を振るって、天を仰いで深呼吸。最近よくやる行為だ
なんでも、首を見上げる角度に持ち上げるとネガティブな思考をし難くなるらしいのだ。逆に下を向くと気持ちが落ち込みやすくなるらしい
ほんとうかどうかは知らないが、いつだったか誰かに聞いてから、何となく意識して上を見上げるようにしている

いちご(うっし、落ち着いた…)

深呼吸の効果なのかプラセボ効果だか知らないが、徐々に落ち着いてきた。冷静になってから考える

いちご(連中は…うちの事気付いとらん…よね?)

恐らくそう…だと思う。なぜなら、連中はえっちらおっちらでっかい荷物を持ってしんどそうに乗り込んできた上、うちは奴らからは死角に当たる部分…後ろの席に座っているからだ
連中を見た瞬間に『ちゃちゃのん』は(情けなくも)慌てて身を隠したし、第一連中は鈍そうやしな。特にあの馬鹿っぽい姉の方

…くそう

いちご(惨めや)

当たり前だった。この旅は逃避行だ。世間の目からの逃避行
実力派アイドル雀士として次代のはやりんとまで目されとったうち『ちゃちゃのん』が、その器にはなかったと思い知らされた現実
今まで持て囃してくれとった世間の期待に応えられなかったという現実
「所詮アイドル」という、もっとも受けたくなかった声

そういった一切合切から耐えかねて、僅かな時間でもそういったものから逃れようと計画した一人旅だったのに

だったのに

だったと言うのに

女子高生アイドル雀士『ちゃちゃのん』が、華々しい全国デビューでおもっくそ泥団子顔にぶちまけられた当の相手

愛宕洋榎がそこに居る

いちご「…っ!…おえっ!」


あの女の名前を思い浮かべた瞬間


いちご「…っ!けほ…っ」


胃から何かが込み上げる


いちご「ぐっ…!?」


酸っぱ…


いちご「う…!」


やっばいのう、これ…


いちご「んぐ…」


ぐぬぬぬ…


いちご「うぐ…」


ぐぅ…


いちご「…は」


…ふぅ。良かった


いちご「…はぁ」


なんとか抑え込めたけん。気合で


いちご「…ほんま、惨めじゃ」


決め手は、ここで吐いたら連中に気付かれるって思ったから…なんて、な


















絹恵「楽しみやねぇ、お姉ちゃん」

洋榎「ん?」

絹江「松実館」

洋榎「お~」

絹江「あの阿知賀女子の松実姉妹の実家やってねぇ」

洋榎「ほ~。そうやったんか~」

絹江「もう…お母さんの言っとった事覚えとらんの?」

洋榎「いやぁ…旅行楽しみ過ぎて、おかん何言っとったか覚えとらん」

絹江「もうっ!」

洋榎「ええやん。どーせ絹が覚えててくれるって思っとったし~」

絹江「ふふ…そんな事言ったらどっちがお姉ちゃんかわからんやん」

洋榎「へっへっへ」

絹江「けど、お母さんも粋やねぇ」

洋榎「ん?」

絹江「3年間頑張ったお姉ちゃんに、ご褒美で奈良への旅行プレゼントしてくれるなんて」

洋榎「ふふん♪ま、それもこれもうちがインハイで良い成績残して、全国に姫松高校ここにあり!ってぶちかましてやったからやな」

絹江「おかげさんでうちもそのご早晩にお預かることになりまして」

洋榎「絹江も頑張ったからやで?」

絹江「あはは…私なんてまだまだ」

洋榎「…ま、実際そのとおりなんやけどね」

絹江「あうん」

洋榎「絹」

絹江「はい」

洋榎「これからは、絹達が頑張れよ」

絹江「うん!」

洋榎「ん。じゃあ、この旅は楽しむで!」

絹江「おー!」




がたんごとん がたんごとん

線路は続くよ どこまでも

3人の目的地まで

あと1時間

それはすなわち

阿知賀のホームに『ちゃちゃのん』の悲鳴が響くまで

あと1時間

だったりもするのです


早いけど今日の分おーわりー

投下中すまんが絹ちゃんの名前が一部…
「絹恵」やからな

おつー

あらら。ごめんね絹恵ちゃん

なんもかんも予測変換が悪いって事で一つ

おつおつ
ちゃちゃのん…

乙乙

照咲の姉妹百合をお願いしたい

照怜期待し照

きてたー

おお、きたか
相変わらずテンポよくて期待ですわ
おつー

ゲ○展開は野球イッチのためかな?

投下乙です!
次代のはやりんwwwwwwwwwwww
ちゃちゃのんは涙目がよく似合うからしょうがないね。
導入部が凄いワクワクしました。


旅館の朝は早い

早いです

早いけど…

お姉ちゃんはあんまり朝得意じゃないです

私は結構得意なんですけど



なんですけど…

…うみゅ

最近急に寒くなってきたので

もうちょっと微睡んでいたい気分

…部屋の掃除が嫌だから、とも言います

長年放置してきてるし埃っぽいだろうなぁ

「チュンチュンチュン」

…はぁ

…雀が鳴いているのです


「チュンチュンチュン」

ああ、なんて爽やかな朝。今日は学校はお休み、部活もお休み貰って…

多分朝から掃除やっても夕方まではかかるよね

天気もいいし、お出かけしたいなぁ

「チュンチュンチュン」

…わかってるよぉ。ちゃんとやります

「チュンチュンチュン」

けど雀さん、お願いですのでもうちょっとだけ眠らせてくださ…

「ピャー!」



「ピャー!ピャー!ピャー!ギャーース!」

これはヒヨドリの鳴き声だね。主食は果実食のくせにやたら凶暴でアグレッシブな鳥です。可愛いけど

「ケーーーーーーーン!!」

玄「雉まで…」

甲高い和笛のような鳴き声に眉を顰め、もぞもぞと布団に潜り込む私。かなり反社会的です。チキンな私にはこれが精一杯の不良行為なのです。鳥が鳴いてるだけに

「ピーヨピーヨピーヨ!」

「チュンチュン」

「ケーーーーーン!!」

「ギャー!!ギャー!!ギャー!!」

むぅ…うるさいオーケストラになって来ました。これは起きるより他ないかも
都会のお客さんには美しい囀りでも、私には生まれた時から変わらない目覚ましに過ぎないのです

こう、起きた後に憂鬱な事が待っている事が分かってる日は特に、ちょっとブルー入っちゃいますね
逆に気分の良い日はやっぱり綺麗な歌声だなーって素直に思えるんだけど

「ブッポウソウ」

!!?

ガバッ!!

玄「…何いまの」

謎の鳴き声に思わず飛び起きてしまいました
なんだか、うさぎが「うさぎ」って鳴くとかそんな感じのとんでもないことが起こった気すらします

玄「…」

謎が謎を呼び、寝直すにもそんな気分は消し飛んじゃいました

ま、まあ。起きちゃったし仕方ないから行動開始しよっと


玄「あれ?」

洗面所に行ったら、なんと先におねえちゃんが居ました。私より早く起きてるなんて珍しい
パジャマ姿+半纏&どてらで身を固めたおやすみスタイルですけど、パチャパチャと顔を洗っています。湯気がたっているので、あったか~いお湯を使っているのが遠目にも見えます
取り敢えず近づいて挨拶します

玄「おはよー」

宥「あ、玄ちゃん」

ちょうど顔を洗い終わったおねえちゃんがタオルで顔を拭きながら応えてくれました

玄「珍しいね、こんな早く起きてくるなんて」

宥「雉の鳴き声で起きちゃって…」

玄「あはは…私とおんなじだ」

宥「あと、『ブッポソウ』って」

玄「…」

宥「コノハズクが鳴いてて」

玄「コノハズクなのアレ!?」

宥「本物のブッポウソウはゲッゲッゲッって鳴くんだよ」

玄「そうだったんだ…」

宥「長らく謎だったんだけど、綺麗で神秘的な姿の鳥だから昔の人はその鳥が仏・法・僧っていう仏教における3つの宝物を表す鳴きの持ち主はそういう鳥に違いないって考えて…」

玄「…」

こうしてこの朝、私はムダ知識一つ分賢くなりました

なんとなく会話が途切れ、歯を磨いたり顔を洗ったり、寝癖を直したり…顔を洗い終えたタイミングで私専用のタオルを手渡してくれるおねえちゃんの気遣いが素敵です

玄「ありがとうおねえちゃん」

宥「どういたしまして」

ニコッと笑ったおねえちゃんの優しい笑顔を見て、憂鬱だった気分が吹き飛びました

うん、今日もやっぱり良い日になるかも!

玄「…ふう」

ひと通り朝の支度が終わって一息付いたタイミングを見計らって、既に支度を終えて待っていてくれたおねえちゃんが話しかけてきました

宥「ところで、覚えてる?玄ちゃん。今日」

玄「うん。わかってるよ、おねえちゃん。百合の間の大掃除だよね?」

おねえちゃんもやっぱり気にしてるみたいです。大仕事ですもんね

宥「埃溜まってるだろうから、マスク用意しておかないとね」

玄「後で掃除用具取ってこなきゃ」

宥「今居るお客様は今日は皆さん、朝ご飯食べたらまたお出かけされるんだよね?皆さんお出かけになったら始めようか」

玄「うん。今日は古墳とか大仏を見に遠くまで行かれるから遅くなるって…あ、でもそうだ。お昼から新しく2組お客様来るって聞いてるよ」

宥「そうなの?対応は従業員の方に任せるとして…私達は新しく来たお客様の迷惑にならないようにしないとね」

玄「そうだね。汚いもの見せられないしね」

宥「どんな人が来るのかなぁ」

玄「ねー」

これも、いつもの事
その日来るお客さんの話を、二人でちょっとする
お陰でおねえちゃんとの会話の話題は尽きません

あ、あとですね

実は

私達姉妹は、まだ学生ということもあって実家の経営にはあまり携わって居ません
お手伝いは、今日みたいに頻繁にするんですけどね

けど、お金の管理とかお客様のチェックとか、従業員の管理とか…
そういった大切な部分にはあんまり触れさせてもらってないのです

いえ、お姉ちゃんは最近ちょっとずつ教えて貰ってるみたいなんですけど
私はまだまだですね

早く一人前になりたいものです!がんばらねば!

宥「…玄ちゃーん」

玄「はい?」

宥「どうしたの?ボーっとしちゃって」

玄「いや、少々決意を新たにというか、所信表明というか…」

宥「?まあいいけど」

玄「そ、それより、どうしたの?おねえちゃん!」

宥「どうしたのって言うか…」

玄「うん?」

宥「終わったなら、早く居間に行こうよ。ここ寒い…」

カタカタと小刻みに身体を震わせ、お願いされてしまいます。相変わらず寒がりなおねえちゃんなのでした
ところで、シバリングって言うらしいですねこれ。北海道の方言しばれる(寒い)と何か関係あるのでしょうか

…閑話休題。朝ごはんを食べに行きましょう

玄「あ、ごめんね。それじゃあ参りましょう!」

宥「うんっ」

クロチャー実はごく最近まで家の手伝いを全くしてなかったらしい






さて

朝ごはんです

朝ごはんです

朝ごはんなのです

炊きたてのおいしいご飯、のり、卵、汁物、お漬け物の朝食定番メニュー

今日のお味噌汁は油揚げとネギ入りのオーソドックスなもの
たっぷりとお味噌汁を吸った油揚げは口に入れると旨みをじゅわ~っと広げてくれて、ネギはアクセントとしてシャキシャキとした食感と爽やかな香りを与えてくれます
肝心のお汁は米麹味噌を使ったすり仕立ての滑らかな一品。出汁はハラワタをしっかり取った澄み切った煮干出汁

料理にまろやかな味わいと優しい甘みを加えてくれる地元のお味噌に、力強い魚の香りと深いコク。こくんと一口飲めば、おねえちゃんじゃないですけど「あったか~い」って幸せな気分です
あ、今おねえちゃんも一口飲みました。ほわわんと幸せそうな表情です。あったか~い

次はお漬物。炊きたてのご飯によく合います
今日は旅館の板前さん手作りの白菜の浅漬け、カブの千枚漬け、そして胡瓜の柴漬け。どれも大好きです

お野菜は地元の農家の方から頂いた旬の新鮮な物を使って、自家製で漬けているものです。栄養価も高くとってもヘルシー
程よい塩分と昆布の出汁が効いた浅漬けはサクサクとした食感で、カブの千枚漬けはコリコリ。それぞれの小気味よい歯ごたえと噛む度にじわりと染み出すお野菜本来の旨みが楽しいっ!
柴漬けは普通のものより少し酸味が柔らかく、程よい酸っぱさが起き抜けの頭をシャッキリさせてくれること請け合い。フワリと鼻腔を抜ける紫蘇の香りも素敵な一品です

卵も美味しいですよ
これまた近所の養鶏場と契約している無精卵です。…有精卵の方が美味しいって思うんですけど、こっちは駄目って人も多いので…
でも、この無精卵も最高ですよ。黄身が甘くて盛り上がってて、白身も弾力があってしっかりしています。割り箸で軽く突いても割れない弾力っていうのが、都会から来たお客様によく感動して戴けるポイントですかね

今日は生卵ですけど、生で卵かけご飯のほかにも、卵焼きにしたらふっくらふわふわ。これもとっても美味しいです

と、ここまでは大体いつも一緒

大事なのはここからです

焼き魚

今日は鮭の切り身です

正に今が旬です

勿論お客様にお出しするのはオスのシロザケです
この時期メスのサケは筋子に栄養がいっちゃうので、あんまり美味しくないです(主観)

とは言っても、うちでもよく雌雄ペアで仕入れてイクラの醤油漬けとか作ったりするんですけどね
手作りのイクラの醤油漬けは、作るの楽しいし食べて美味しいし市販で買うより断然安いしなので、やってみると良いですよ

市販の筋子を買ってきてタライに汲んだ塩入りのぬるま湯でほぐして、ザルにあけて、お酒、みりん、お醤油、あと昆布を突っ込んで暫く置くだけです。ぶきっちょでも一発です
ぬるま湯でやると卵の色が白くなって最初グロいですけど、しばらく置いといたら元に戻ります。ぷりっぷりです
筋子を取ったメスは寒風干しして鮭とばにします。とばは身が痩せてる方が美味しいです。脂があるとくどいし日持ちしないので。カチカチの身をペンチで切って食べると最高のおつまみ…だそうです

鮭の切り身は西京漬けや吟醸漬け、ムニエルなどなど色々食べ方はありますが、クセのない身、食感を楽しむのにおすすめは断然甘塩!と言っても、その塩すらほとんどかけません
魚の臭みを取るのにちょっとかけて向い分をキッチンペーパーで取るくらいです

網焼き機でじっくり焼いて…
焼きたてをお出しして、足りない塩分は備え付けのお塩やお醤油でお客様に自由に味付けして頂く方針です

皮の焦げ目まで美味しそうな鮭の赤身は餌のオキアミなどに含まれるアスタキサンチンの色で、本来は白身のお魚
だから身に癖がなく、それでいて甲殻類由来の独特の風味を持っているのです

玄「それと余談ですが、鮭に限らず魚って皮が一番美味しいと思います。パリパリに焼いた鮭の皮なんて至高です。究極です」

玄「なんと彼の伊達政宗公も鮭の皮が大好物で、「皮厚さ一寸の鮭を持ってきたら、35石と取り替える」と言ったとか何とか…」

宥「玄ちゃーん」

玄「…ほえ?」

宥「得意げに薀蓄語ってるところ悪いんだけど、出来たらちょっとだけ早めに朝ごはん済ませてくれないかなって…」

玄「…」

玄「!!」

気付いたら1時間経ってました。今日の洗い物当番はおねえちゃんです
ごめんなさい

クロチャー


玄「んがぐっぐ」

宥「あ、そこまで急がなくてもいいよ?けどお客様達もうお出かけされたみたいだから…」

玄「おねえちゃん!残りの洗い物は食べ終わったら私が済ませておきますので、おねえちゃんはお掃除の準備してて貰ってもいいですか!?」

宥「う、うん。わかった。…慌てないでもいいからね~」

玄「ごめんなさ~いいいぃ」

あむあむ…美味しいけど、今はちょっと味わってる時間がありません。何たる失態
結局、それから5分で残り全て食べ終わり、その後6分で洗い物を終え、学校指定のジャージに着替えて「ふんっー!」と息巻いて
物置と化した部屋の戸を開けたのは、食後きっちり10分後の事でした

先に来ていたおねえちゃんにお詫びの言葉をかけ、キッとこれから掃除する部屋を一睨み。ごちゃごちゃした部屋の惨状に、気合が入ります

さあ

大掃除を開始するのです!!

取り敢えずここまで

夜来れたらまた来るのです

乙なのです

腹減ってきた。訴訟
おつおつ

一体なんのSSだよこれはwwwwwwwwwwww


昼食がファミマのハンバーグ弁当とモンスター1本と板チョコ1枚の俺は早死にしますね

おつおつ
今度いくら漬けてみるか…

パンと麺のローテのワイを[ピーーー]気か!!
クッソ腹減ってきた。

玄のズボラ飯スレでもかまわんのよ?

宥姉が人間火力発電所になるのか

魔法女子の方はまだかな(小声)

パタパタパタ

宥「よいしょよいしょ」

パタパタパタ

宥「よいしょよいしょ」

玄「…」

パタパタパタ

宥「よいっしょ。よいっしょ」

玄「…」

宥「ん~~~~っ!」

玄「…代わろうか?おねえちゃん」

宥「ううん。まだ大丈夫~。それより玄ちゃんは、荷物のほこり落としお願いね」

玄「…わかりました」

パタパタパタ

宥「ほっ!…ととと」

玄「おねえちゃん!?」

宥「…ふぅ」

玄「…ほっ」

宥「…えへへ。ちょっとよろめいちゃった。でもまだ大丈夫だから」

玄「けど…」

宥「ダメ~。だって、玄ちゃんってばさっき…」

玄「あう」

ついに帰ってこられたか…

待ってました

大掃除開始から既に2時間
私達は、現在ミッションを分担作業にて遂行中です

取り敢えずお客様が来る午後までに荷物だけは運び出さなければ、という事でこの方法でやっています
廊下に全ての荷物を出した後、最後に二人で、まとめて裏にある倉庫に運ぶのです
最初の1時間は、それぞれ交代ではたき係、荷物運び係をやっていました

が、あれはちょうどその1時間が経過し、時計の針が10時を回った頃

やってしまいました

なんだかとても大きな花瓶を運んでいた私

畳と畳の間に生じた不陸(段差の事です。ふっふっふ。専門用語なのです)に、足を引っ掛けてしまい、盛大に転んでしまいました

一瞬空飛ぶ私

もっと空飛ぶ花瓶

目を見開くおねえちゃん

倒れる私

顔面の痛み

古いい草の匂い

飛んでいく花瓶

舞い散る埃

飛んでいく花瓶

慌てたおねえちゃんの声(珍しい)

花瓶の割れる音

私の血の気が退くさっと音



…事故です




すみませんでした

音を聞きつけてやってきたお父さんが飛んできて、呆然としていた私達と花瓶を見比べて言いました

『玄かな?』

…その通りだけど、ちょっと理不尽だと思うのです

勿論すぐに素直に謝りました。それでその後、ちょうど持っていた宿泊客の名簿でペチンとおでこを叩かれました
その後怪我は無いか聞かれて、お父さんが花瓶の後片付けをして、割れ物は私に扱わせない事に
なんだか情けないなぁ…

それでお父さんは帰っていったのですが、お父さん以上に心配していたのはおねえちゃん
私が怪我したら大変だからって、荷物は全部おねえちゃんが運ぶ!と、言って聞きません
『それはさすがに過保護だよ』と言っても、さっきやってしまった手前、きっとまっすぐに睨みつけられては、私も強く出ることが出来ず

結局、私が荷物の上に溜まったほこりをはたきで落として、おねえちゃんがその荷物を一旦廊下に出す
その代わり、倉庫まで運ぶ時は私も一緒に荷物を運ぶ

と、こういう事になったのです
…ううう~

玄「おねえちゃん、ごめんね…」

宥「大丈夫だよ~。私、おねえちゃんだもん」

玄「でも…」

宥「それに、私寒がりだから。こうやって荷物持って運動してた方が、あったかいし」

玄「…」

確かに、そう言うおねえちゃんの額には汗が滲んでいます

幾らあったか~い格好をしても寒がっているおねえちゃん
けど、運動は大の苦手です
重くない荷物を中心に運んでいるのに、もう大分しんどそう

これで結構頑固なところがあるので説得は難しそうですが、ここはなんとか説得して私と交代してもらわなくては、おねえちゃんが第二の私になってしまうのです


…あ、そうだ!

玄「おねえちゃん、疲れない?ちょっと休憩しようか」

宥「ううん。まだ大丈夫」



玄「でも、おねえちゃん、もう1時間も荷物運びしてるし…」

宥「玄ちゃんは休憩してもいいよ」

玄「…」

宥「私はまだ大丈夫だから」

玄「…」

宥「よいっしょ…」

玄「…」

説得に失敗しました

宥「う~~~んっ!」

玄「あっ、それは…」

おねえちゃん、大きなダンボールを抱えて運ぼうとしています
さっき私が持った時、とても重かったので、後でおねえちゃんと二人で運ぼうって思ってたのですが…

宥「お~も~い~…」

ぷるぷる震えるおねえちゃんに、遂に私も限界が来ました

玄「おねえちゃん、それ私も持つから…」

宥「ん~~~~!」

玄「おね…」

宥「よいっしょ~!」

玄「うわっ!?」

宥「わっ!?」

ドサドサッ!

おお!?凄い!ダンボールを頑張って持ち上げました!
けど、なんとそのダンボールの底が抜けてしまったのです!!

宥「あわわわわ」

玄「おねえちゃん、大丈夫!?」

何やら、箱の底からボトボトと紙の束…何かの記帳でしょうか?が、次々に落ちてきています
…って、おねえちゃん!

玄「おねえちゃん!大丈夫!?」

宥「あ、う、うん。私は平気だけど…」

足元に散らばった記帳の束に肩を落としつつ、おねえちゃんが応えます
…ほっ。どうやら、おねえちゃんには何も被害はないみたい。腰を痛めたり、紙が足に当たったりとかも無いようですね

宥「ああー…また片付けるものが増えちゃった…」

玄「まあ、嘆いても仕方ないよ。もうダンボールが古くなって劣化しちゃってたのかな?」

宥「そうかもね。待ってて、玄ちゃん。今おねえちゃん、新しいダンボールとガムテープ持ってくるから」

玄「あ、それじゃあ私が行ってくるよ」

宥「そう?」

玄「うん。おねえちゃんは休んでて」

宥「じゃあ、。他の荷物を…」

玄「だーめ!おねえちゃん、もういい加減つらそうだったよ!私が頼りないのはわかるけど、おねえちゃんだって休憩入れないと、怪我しちゃうんだからね!」

宥「ううー…」

玄「あと、私にも荷物運びやらせて?おねえちゃんが私を心配してくれてるのと同じくらい、私だっておねえちゃんの事が心配なんだから」

宥「玄ちゃん…。…うん」

玄「うん!それじゃあ、待ってて。すぐ戻ってくるから!」

やった!どさくさに紛れて、おねえちゃんとの交渉成立!さあて、ダンボールとガムテープを取りに行こうっとっ!




















玄「たったった~♪」

有ったあった♪みかん箱!2箱!
愛媛産の、うちがよく買っている温州みかんは、この時期、早生特有の皮や薄皮が薄さで剥きやすく、それでいて驚くほど実がぎっちり!
しっかりとした甘みとコク、絶妙な酸味が美味しい、ジューシーなみかんなのです
ダンボールの中身は既に空っぽですが、柑橘類特有のお日様のように人を元気にしてくれる、甘酸っぱい香りは健在です

さっきまでのダンボールよりやや小ぶりですが、二つに入れれば重さも軽くなるでしょうし、荷物を詰める作業中も柑橘の香りが漂って楽しい事請け合いでしょう
ふふふふふ

ガムテープも持ったし、完璧!部屋の荷物も、さっき見た感じもうあんまり無さそうだったし、なんとかお昼までには倉庫まで荷物を持って行ける目処が立ったかな…って

玄「およ?」

宥「ああ、おかえり、玄ちゃん」

玄「うん、ただいま…」

宥「ダンボールありがと」

玄「うん」

部屋の戸の前に座っていた(埃っぽい部屋の中での休憩は嫌だったのかな?)おねえちゃんが労ってくれました
ちゃんと私の言ったとおりに休憩してくれてたのが嬉しかったです

ところで…

玄「おねえちゃん、それ読んでたの?」

宥「ん?ん~…うん」

おねえちゃんは、さっきダンボールから出てきた帳簿を読んでいたのです

玄「なんだった?それ」

宥「うん…」

玄「?」

おねえちゃん、返事を返してくれながらも、ちょっと生返事。面白いの?

宥「これね、昔のお客様の…交流ノートみたい」

玄「へ?」

宥「宿泊されたお客様からのメッセージが色々書いてて」

玄「え~!」

まさか昔はそんなものをやっていたなんて!…最近は、やってないよ?
驚く私に、おねえちゃん、帳簿の1部分を指さして私に見せてきてくれました

宥「ほら、これこれ。これなんて」

玄「えっ?この人の名前、1年に一度は必ず来るお爺さん!」

その名前を見て、身なりの良い、優しそうなお爺ちゃんの顔を思い出します
毎年うちの旅館を贔屓して下さっている方です
この方のように、私達が小さい頃から何度もお会いしている常連さんは、他にも数名居らっしゃいます
何度も何度も訪ねてきて下さるうちに、なんだか遠い親戚のような気さえしてくるのです

宥「日付見て?」

玄「1980年の………嘘…それに、なんで泊まってもこの旅館は素晴らしいって…」

顔を近づけると、古本のような紙の匂い、くすんだインクの匂いが当時の想いをセピア色に伝えてきます
流暢な字でそこに書いてあったのは、この旅館を絶賛するコメント。なんだか、ちょっとくすぐったい気分です

宥「もう30年以上も前からこの旅館に泊まって下さってるんだね」

玄「凄いなぁ…私達が生まれる前だ」

宥「下手したら、お父さんが生まれる前から来てたりして」

玄「あはは…そうかも」

本気かどうかイマイチ判断の付かないおねえちゃんの冗談(?)に、思わず顔が綻びます

と、おねえちゃんが別の帳簿を取り上げて

宥「こっちは1981年、82年…」

おねえちゃんの真似をして私も別の帳簿を捲るとそこには、ずっと新しいものも

玄「こっちは1990年だ」

宥「一番古いのはこれかな?1970年。一番新しいのはどれかなぁ」

玄「う~ん…これかな?えっと…あれ?」

宥「え?どうしたの玄ちゃ…!」

私の手元の帳簿を覗いたおねえちゃんが、驚いたような顔になりました
無理もないでしょう。多分、私だって同じ顔をしています

玄「…ねえ、おねえちゃん」

宥「…うん」

玄「…この年って」

宥「…うん」

玄「…」





                            おかあさんが




                            亡くなった年


























その日、阿知賀の空は快晴じゃった


清々しいほど…否。アホみたいに快晴じゃった


否。アホじゃ


脳天気な色し腐りおって、うちの事馬鹿にしとんのかこのボケー!


…と、天に向かって咆哮したいほどの抜けるような蒼。雲ひとつなし


正直、今朝までなら、喜んで歓迎したことだろう


色んなしがらみ忘れて、一緒に脳天気にハシャゲておったじゃろう


だが、それもさっきまで


気分が落ち込むと何もかもがネガティブに映るもの


例えば、美しく清々しいこの青空も、朝になったら放射冷却で冷えるんやろなぁ…とか


情緒と趣ある駅のホームも、無駄に税金掛かってるんやろなぁ…とか


『ちゃちゃのん』、この旅でストレスで死ぬかも…とか


「いや~それにしても奇遇やなぁ!まさかまさかのおんなじ旅館とか~」


主に、今隣でカラカラと笑っとるこいつのせいで

絹恵「お姉ちゃん、佐々野さん、ちょう困った顔しとるよ」

洋榎「あっはっは~。そんな顔ようすんなや。旅は道連れ世はなんとか~ちゅうてな。折角おんなじ電車乗っておんなじ旅館泊まるんやし、インハイで対局したもの同士、仲良くやろや」

いちご「はは…」

どなたか

助けて

私、『ちゃちゃのん』佐々野いちごは

今、愛宕姉妹に絡まれています

絹恵「お姉ちゃん。確かに対局はしたけど、それだけやん…清澄のとこの部長さんみたいに連絡取り合うような仲でも無いし」

洋榎「ん~?あー、まあまあ。久らはな。なんか友達になってんなー」

絹恵「だから…」

洋榎「対局した奴と仲良くすんのもええなーって思ったもんや」

絹恵「けど、トラッシュトークは相変わらずするんよな…」

洋榎「だって対局するなら楽しくやりたいやん!?」

絹恵「本気で嫌な人だって居るかもしれんやん…」

はい。うちの事です

訂正。うざいのは姉の方だけや

絹恵「佐々野さん、なんやエラいすみません…うちの姉が、その…」

いちご「はは…いや…ええよ」

洋榎「な?な?佐々野って、アレやろ?『ちゃちゃのん』って言って芸能活動もしとるんやろ!?ええな~。芸能人に会ったりした事もあるんやろ!?」

お前の前に居るのがその芸能人じゃ

いちご「はは…まあ、それなりにな…」

洋榎「おおおお~~!!」

くっ…!目キラキラ輝かせてからに…

洋榎「な!な!誰に会った!?誰に会った!?」

いちご「誰て…」

興奮して耳元で怒鳴るような声で聞いてくる姉の方

絹恵「あ…それ、うちもちょっと気、に…な…る……」

絹恵「…なんでもあらへんです」

最後の方はソッポを向き、消え入るような声で呟く妹の方
申し訳ないような、恥ずかしいような、それでいて期待に満ちた目で『ちゃちゃのん』をチラ見しておる



…はぁ

いちご「そうやねぇ…最近だと、はやりんとか」

洋榎絹恵「「おお~!!」」

別に隠すほどの事でも無いし、黙っていると姉が煩そうなので素直に答えてやる
すると姉妹から歓声が上がった。少しだけ、そう、ほんの少しだけ気分が良くなったので、もう少しだけ教えてやる事にする

いちご「この間出たのは、○○さんの番組やったかなぁ」

絹恵「それってあのワイドショーの人気司会者の!?」

いちご「あと、共演したのは歌手の○×さんとか」

洋榎「おお!?うち、むっちゃファンやし!」

いちご「お笑いの××も居ったっけなぁ」

絹恵「ええな~ぁ。生××会ってみたいわぁ~…」

洋榎「うちもや!」

…そんなもんかな?
うちが言うのもなんやけど、コイツら結構テレビっ子?

洋榎「そんで、ツッコミ入れてみたい!」

絹恵「それはアカンて…」

洋榎「なんでや!」

いちご「…」

なんじゃこれ

…まあええわ。大阪のノリにはよう付き合っとれん
そう言えばもうすぐお昼やな。旅館からは遠いし、こいつらはどっかでランチ食べてくやろ

うちもチェックインの予定は2時やし、本来ならお昼食べてから旅館行く予定やったけど…
先チェックインだけ済まして、それからご飯食べに行こ。それで少なくとも日中はこいつらとオサラバじゃ

洋榎「な!な!『ちゃちゃのん』!」

いちご「…何?」

重い展開があるのか、と思った所で軽い展開を見せてくれるちゃちゃのんは大天使。
本人的には重い問題かもしれねーけども。

姉。まだ何か用か

洋榎「他には!?他には!?」

いちご「…なんか勘違いしてそうだから言っとくけど、うち、そんな芸能活動しとらんよ?学生やし、なんでか麻雀やってたら準芸能人扱いされ始めたってだけやし」

洋榎「そんなんどーでもえーねん!」

いちご「どーでもって…」

洋榎「大事なのは、『ちゃちゃのん』が誰に会った事あるかや!」

いちご「…」

洋榎「な!な!他になんか凄い人…」

いちご「言うても…麻雀繋がりの人か、取材に来るアナか、たま~にワイドショーに呼ばれて麻雀の番宣する時の共演者か…」

洋榎「そん中でええねん!ほら、例えば…阪神の選手とか!」

絹恵「あ、うちもガンバの選手とか会ったって聞けたら嬉しい。同じ元キーパー繋がりでガヤさんのファンやねん」

いちご「言っとくけど、知ってても紹介とかせんよ?」

洋榎「わかっとるって!」

絹恵「そんなぁ…二川さんとおねえちゃんトークさせる夢が…」

いちご「ってか、スポーツ選手とは基本共演せんわい」

洋榎「そっかー…」

絹恵「コンちゃん…加地さん…」

洋榎「じゃあ、ちゃちゃのんが最近会った一番有名な人って誰やと思う?」

絹恵「ヤットさん…明神…」

いちご「う~ん…」

いちご「アイドルの□△…かな?」

絹恵「おおー!!超有名所来た!ね!ね!お姉ちゃん!」

洋榎「ん~…?」

いちご「…なんじゃその渋い反応は。CD出せば毎回オリコン上位にだって入る、スーパーアイドルやろ」

絹恵「…お姉ちゃん?」

洋榎「…ん~」

いちご「…」

イラッ

自分から聞いてきてこの反応。やっぱこの女好かん
別に負けたからとかそういう部分でじゃなくて、煩いところといい、人柄として

いちご「…気に食わんならもう『ちゃちゃのん』、行くよ?これ以上のネタはもう出ん」

絹恵「あ、ちょ、さ、佐々野さん!…『ちゃちゃのん』さん?」

いちご「…佐々野でええよ」

絹恵「あ、あの!楽しいお話聞かせて頂いてありがとうございました!それで、良かったら…」

いちご「『一緒にお昼食べてきません?』ってのなら丁重にお断りじゃ。うち、もう予定入っとんねん」

絹恵「あ…」

いちご「もうお昼時やし、あんたらはこの辺で食べてくやろ?それならここで一旦サヨナラ」

絹恵「…そうですか。残念です」

いちご「ん」

絹恵「あの…そ、それじゃ」

いちご「…また宿で会ったら、その時はよろしう」

絹恵「…!」

絹恵「はい!!」

いちご「…」

いちご「…じゃあ、また」



チラリ


礼儀正しい妹との挨拶に適当に応え、未だうんうん唸っとるバカ姉の方を見やる


わざとらしく首まで捻りおって、このタレ目が


心の奥で毒づき、踵を返す


やや大股で


やや足早に


見知らぬ街(という程の都会ではない。…里?)を『ちゃちゃのん』は行く


後ろを振り返ることもせず、ずんずんと


歩く


歩く


歩く


ようやく姉の方が小声で何か喋っとる声が聞こえた気もしたが、それも意に介さない。耳には入らない


元よりあの女の言葉に興味等無いし…第一、離れ過ぎてて聞こえない


普段無駄にでっかい声で喋っとる癖に、こんな時だけ小声で喋るあの女が、心底気に食わない


…首を振る


数分歩き


ため息一つ


天を仰ぎ見る


見上げた空は


なんだか


さっき見た空よりは、マシな気がした

洋榎「う~ん…う~ん…」

絹恵「…おねえちゃん、まだ唸っとるの?佐々野さん、もう行ってしもうたよ?」

洋榎「ん~…」

絹恵「もう…お別れの挨拶も言わずに。そうやって失礼な事するからお母さんにも礼儀がなってないって怒られるんよ?佐々野さんも気分悪くしたかも…ちょっとお姉ちゃんの方見とったよ」

洋榎「いや、だってな…」

絹恵「うん?」

洋榎「アイドルの□△って」

絹恵「ああ。そういえば、□△の名前出てから唸りだしたよね。…お姉ちゃんあの子嫌いやったっけ?」

洋榎「いや、そうでも無いけど」

絹恵「…じゃあどうしたん?」

洋榎「いや。だって」

絹恵「…」

洋榎「どう見ても」

絹恵「うん」

洋榎「□△より、あいつのが美人やろ」

絹恵「…」

洋榎「納得いかん。なんで『ちゃちゃのん』より、□△が売れとるん?」

絹恵「…さあ」

洋榎「う~~ん…」

絹恵「…」

洋榎「ま、ええか」

絹恵「ええんだ。そんなに悩んどいて」

洋榎「絹」

絹恵「なんや?お姉ちゃん」

洋榎「おなか減った。ご飯食べに行こ」

絹恵「せやね。何食べる?」

洋榎「勿論、ラーメンと唐揚げや!!」

絹恵「またそれ…折角奈良まで来たのに…まあ、賛成やけど」

洋榎「へっへっへ~♪」

絹恵「えーっと、それじゃあこの辺で評判の良いラーメン屋は…」

洋榎「あかんあかん!絹!」

絹恵「どうしたん?」

洋榎「スマフォで調べたらつまらん!こういう時はな、直感で選んだ適当な店に入るのが礼儀であって…」

絹恵「はあ…」

洋榎「すなわち!今私の目に入った、そこの貧乏臭いラーメン屋こそが大正義や!行くで!突撃や!」

絹恵「そんな失礼な…」

洋榎「うおおおお!こういう寂れた店にこそ究極のラーメンが…」

絹恵「お姉ちゃん好きやね、こういう店」

洋榎「おう!…あ、あとな、絹」

絹恵「なに?」

洋榎「…後で、『ちゃちゃのん』、会うやろうけどな。その、宿で」

絹恵「うん」

洋榎「…相手、芸能人やからね」

絹恵「…うん?」

洋榎「その…あんま、失礼って言うか、図々しく絡んでくの、したらアカンよね。やっぱ」

絹恵「…何を今更。まあ、図々しいのNG言うのは賛成やけど」

洋榎「…後、あれも無しな」

絹恵「…あれ?」

洋榎「…うちが言ったこと言うの」

絹恵「…?なんか変なこと言ったけ?いや、変って言ったら全部変だったけど」

洋榎「…」

絹恵「…どれ?」

洋榎「うちが、あいつの事、美人って言った事」

絹恵「…はあ」

洋榎「…」

絹恵「お姉ちゃん?」

洋榎「絹」

絹恵「今度は何?」

洋榎「…」

絹恵「…」

洋榎「芸能人って、やっぱ凄いね」

絹恵「…」

洋榎「スタイルええし」

絹恵「そう?」

洋榎「…訂正。絹はアスリート体型やから」

絹恵「…」

洋榎「後、やっぱ美人…」

絹恵「それはやっぱそうやねぇ。うん、なんかオーラ有ったわ」

洋榎「…」

絹恵「それに、良い人っぽいし」

洋榎「そうかぁ?」

絹恵「え?」

洋榎「なんか苛ついとらんかった?感じ悪かったわぁ」

絹恵「…珍しいね。お姉ちゃんがそんな事言うなんて」

洋榎「…」

絹恵「けど、そう思うならお姉ちゃんだってあんなに突っかかってかなきゃ良かったのに」

洋榎「…」

絹恵「インハイで対局しただけならまだしも、あんだけバチバチやりあった上に自分に役満直撃した相手といきなり仲良くするとか。大人げないって言われても、うちだったらそう簡単に割り切れんよ…」

洋榎「…」

絹恵「フォローしようにも、し切れへん」

洋榎「…」

絹恵「お姉ちゃんに限ってまさかとは思っとったけど…」

洋榎「…」

絹恵「わざとなん?」

洋榎「まさか。んな訳あるかい」

絹恵「…」

洋榎「…」

絹恵「…だよね」

洋榎「ん」

絹恵「ごめん、お姉ちゃん。変な事言って」

洋榎「…」

絹恵「ご飯、食べ行こか」

洋榎「せやな」

洋榎「…」

洋榎「…」

洋榎「…」

洋榎「…」

洋榎「……ちぇっ」

今日の分終わりー

…随分とお待たせしてすみませんでした。色々有ってさ、ここ最近モチベが上がんなくて…
そして明日から予定が入ってて、また数日来れないです。明日はギリギリ来れるかも?25日には帰ってくるよ

投下乙!
洋榎はアホの子に見えて色々あるみたいやねえ。
>>1の書くキャラの内面描写好きだから、こっからどう転がっていくのか期待よ!

おつー
またゆっくり待ってるでー

おつー

見てるよー
まったりやってくださいな

おつー
楽しみにしてんでー!
























………………

…………

………

「…ちゃん」

……



「玄ちゃん!」

…え?

宥「玄ちゃん!」

玄「あ…」

少し考え事をしていた私は、おねえちゃんのちょっと強めの声(珍しい)で我に返りました

考えていたのは、帳簿のこと

昔のこと

…お母さんのこと

案の定、帳簿に書かれた書き込みはおかあさんの命日の前日で途切れていて
そこまで確認して、私は最後の文を読まずに帳簿を閉じました

今はその帳簿を抱きかかえ、目を瞑って色々と考え事をしていたんですが…先程もお伝えしたように、おねえちゃんに呼び戻されたところです
おねえちゃんの物哀し気な表情を見て、胸が痛みます。きっと、私も同じ顔をしているだろうから

宥「大丈夫?」

玄「…うん」

悲しい目をしたまま、おねえちゃんが私を心配して聞いてきてくれました。自分も悲しいだろうに、やっぱりおねえちゃんは強い
私なんか、なんとか返事をするのに精一杯でした
…もうとっくに振り切れてたと思ったのにな

なんでこんなに悲しいかっていうと、きっと数日前までの文章は読んでしまったから

おかあさんが無くなる数日前から、内容はちょっとずつ物哀しい文章が目立つようになっていました
まるでおかあさんが亡くなるのをみんな、悟っていたかのように

その前から、次第に当時旅館の表に中々出なくなっていたおかあさんの身を案じるような書き込みも目立つようになっていて
それが別れの予感を感じさせるかのように、帳簿にも物悲しさを伝えていたのかもしれません

その時のお客様や従業員、そして松実館の建物そのものの想いが、蘇ったように私達を包んだかのようで
思わず、私は顔を覗きこんできたおねえちゃんの袖を握ってしまったのでした

宥「…」

宥「ねえ、玄ちゃん」

玄「…うん?」

そんな頼りない私を見て、おねえちゃん

宥「寂しいね」

玄「…」

私の想いを代弁するかのようにゆっくりと

宥「辛いね」

玄「…」

はっきりとした口調で

宥「悲しいね」

玄「…」

私の目を見つめながら

宥「私達は、きっと、ずっとこの想いを抱えて生きていくんだよね」

玄「…」

言葉を

宥「私は、それが嬉しいな」

玄「…」

優しげに

宥「だって、それは私達のおかあさんが素敵な人だった証拠だから」

玄「…」

宥「だから」

玄「…」

宥「抱えて生きていこうね。お母さんの分も」

玄「…うん」

力強い声でした

儚げな女の子であるおねえちゃんらしくない、珍しい声
けど、何を今更驚くことがありましょうか
今日さっきまでで、そんなふうな珍しいおねえちゃんには、沢山出会ってきていたんですから

玄「そうだね。いつまでも凹んでられないよね」

宥「そうそう。玄ちゃんは元気が一番だよ」

玄「よーし!頑張るぞー!」

宥「うんうん!その意気!」

玄「お掃除も頑張るぞー!」

宥「うんうん!お掃除もがんばろうね!」

玄「休憩終わりー!」

宥「うんうん!休憩も終わったし、荷出しもそろそろ終わりだから…」

玄「…おねえちゃん?」

宥「ああああああ!?」

玄「ふえ!?」

さて

ここにきて、遂に今日一番珍しいおねえちゃんが出現です。その名も絶叫おねえちゃん

玄「ど、どうしたの!?おねえちゃん。いきなり大きな声を出して…」

宥「時間!」

玄「へ…」

その致命的な指摘に、思わず時計を見やります
すると…

玄「…」

宥「…」

玄「ああああああああああああ!!?」

時計の針は既に午後1時…
お客様がおいでになる時間まで、後1時間しかありません!!

玄「うわわわわ。ど、どどどどうしようおねえちゃん!」

宥「あう、あうあうあ」

変な声をあげながらあたふたと慌てる私達
交流ノートを読み耽ってる間にとんでもない時間が経過していました
こ、これはまずい!

玄「と、とにかく!急いで荷物を運び出さなきゃ…」

宥「あっ!玄ちゃん待って…」

言って、焦りながら部屋に有った大きな壺を持ち上げた私
勢いに任せて小走りの速度で廊下まで駆け出します!

おねえちゃんが後ろで緊張した声をあげていたのがちょっと心配ですが、今の一番の懸念事項は時間との戦いです
急いで残りの荷物を部屋から出して、お掃除を済ませ、廊下に出した荷物を倉庫に…



…うわっ!?


玄「あっ…!」


宥「玄ちゃん!!」


瞬間


足が


何かに引っかかりました

玄「う」

宙を舞う私

玄「わ」

手から離れる壺

玄「あ」

強烈なデジャブ

玄「あ」

飛んでいく壺

玄「あ」

全てがスローモーションで

玄「あ」

襲い来る絶望と焦燥

玄「あ」

また割ったら

玄「あ」

お掃除終わらない

玄「あ」

おねえちゃんにもがっかりされる

玄「あ」

一人前になれない…

玄「あ…」

嫌…

玄「あ…」

ううう…あ、あの時小走りなんかしなければ

小走りなんか…

小走り…

誰か…

助けて…

嫌!

誰か!!

「よっ」

…へ?

ポスッ

何か、柔らかいモノに受け止められる私

謎の小走り推し

玄「…へ?」

「大丈夫か?玄」

玄「…その声は」

聞こえたのは声

それも、ずっと上からの

お父さんじゃない。女の人の声

「まったく…お前は相変わらずそそっかしいな」

玄「えっと…」

聞き慣れた声でした
けど、あれ?なんでこの人がうちに…

「『なんでうちに』って声だね?」

玄「あの…」

「まあ、取り敢えずは顔退けてよ。胸がくすぐったい」

そういって、私の顔面ダイブを未然に防いでくれた恩人は、きょとんとして胸に顔を埋めたままだった私の肩をそっと掴んで、優しく引き離してくれました
そうすると自然、声の主の顔が見えてきます。思った通り、そこには背の高い、いろんな意味で恩人な、大好きな人の顔
いつものように、若干見上げる形でその人の顔を見る私

玄「…赤土先生」

晴絵「よっ。お手伝いご苦労様。玄。お手伝いじゃなくて宥の足引っぱってないだろうね?なんて、あははは」

宥「玄ちゃん大丈夫…って、あれ?なんで赤土先生が?」

部屋から慌てたおねえちゃんが出てきました
私と同じようにきょとんとした顔です

「私もいるよ」

玄「へ?」

灼「やっ」

玄「灼ちゃん…」

声に振り向くと、赤土先生の後ろには灼ちゃんも

憧「ふい~、びっくりした。穏、ナイスキャッチ」

穏乃「へっへーん!軽い軽い!」

玄「!!」

宥「憧ちゃんに、穏乃ちゃんまで…」

さらに灼ちゃんのその後ろには、さっき私の手から離れた壺をがっちりと抱え込んだ穏乃ちゃんと、横で驚いたように胸を抑えている憧ちゃんの姿

灼「二人で掃除、大変そうだったから。今日は早めに切り上げて、午後は松実家の手伝いが部活」

宥「え…」

玄「あ、灼ちゃん!」

ガッカリだよ!!!

ああ、ニワカ先輩くると思ったのねww

宥「みんな…今日おやすみなのに、いいの?」

赤土「良いって良いって。どーせみんな暇だったんだしさ。ね?」

穏乃「いえ~~!」

憧「誇るな!」

玄「みんな…」

宥「ごめんね…」

灼「もしかして迷惑だった?」

玄「とんでもない!」

灼ちゃんの粋な計らいに感動の私
流石部長です!二年生同士、同期のよしみですね!ありがとう!ありがとう!!

灼「それに、玄が宥さんの足引っぱって掃除間に合わなくなってたら可哀想だしね」

玄「うえ!?」

…と、思ったら上げて落とされました。無表情で意地悪な発言をする灼ちゃん。弄られ体質な上に何にも言えないこの状況では、私に反論の余地などありません
そしてどれだけ信頼無いの私。…危うくその通りになるところだったのですが

晴絵「ちなみに、手伝い灼の提案なんだぞ?結構な迫真の説得だったなぁ」

灼「ちょ…晴ちゃん!」

晴絵「あはははは。そんな照れんなって」

ニヤニヤと意地悪な笑顔を浮かべて流し目で灼ちゃんを見やる赤土先生
真っ赤な顔で慌てる灼ちゃん。そうなのです。灼ちゃんが私を事あるごとに弄るのに対し、灼ちゃんは赤土先生に事あるごとに弄られているのです
すなわち

私<灼ちゃん<赤土先生

の構図が我が部には既に出来ているのです
まあ、平部員<部長<顧問と考えれば当然のパワーバランスなのかもしれませんが、何かが引っかかるような…

灼「…ま、まあ。その、一応。同じ部だし、それに…」

晴絵「はいはい」

玄「…」

モゴモゴと口の中で歯切れの悪い言い訳をする灼ちゃん

灼「そ、それに」

晴絵「うん?」

灼「麻雀部は、みんなが揃ったほうが楽しい」


























  










                        心

                        か


心かクッソワロタ

そして30分後

穏乃「終わったー!!」

最後の荷物を倉庫へ運んで行っていた穏乃ちゃんが、元気いっぱいに腕を振り回しながら百合の間に帰ってきました

憧「こら!だからって飛び跳ねんな!!」

さっきまで畳の拭き掃除をしていた憧ちゃんが、スキップしている穏乃ちゃんを諫めます

灼「お疲れ様。みんな」

バケツの中の水を捨ててきた灼ちゃんも帰ってきました

晴絵「ふい~。久しぶりに大掃除なんてしたわ。…今度うちの部屋も大掃除すっかな~」

赤土先生は、その長身を生かして高いところの埃取りや部屋の蛍光灯の交換をしてくれました

私はというと、お部屋に卸したてのお布団を運んだり、備え付けのアメニティを運んだり
今日来られるお客様をお迎えできるように、色々と下準備をしていました
最後に畳んだ浴衣をここに置いて…と

任務完了!これでもう、いつお客様が来られてもばっちりです!!

玄「みなさん、本当にありがとうございました!お陰で間に合いました!!」

灼「よしてよ。頭なんか下げないで」

感謝のお礼をすると、灼ちゃんが静止してきます
けど、そんな訳にもいきませんよね。こうやって深々と腰を折って最敬礼をして、皆さんに感謝の気持ちを示さねば

玄「そういうわけにもいきません!こういうのは誠意を示さないと…」

穏乃「や、やめてくださいよ。上級生にこんな真似されるとなんかちょっと…」

穏乃ちゃんはこういうところ礼儀正しいよね

憧「まあ、感謝の気持ちだけ受け取っとくわ」

…憧ちゃんは、ちょっと敬語くらい覚えたほうがいいのかもしれません。私に対しては別に構わないけど、インターハイの江口さんとかとの会話見てると

晴絵「まあまあ、玄。礼儀正しいのは良いけど、そんな畏まんなくても良いよ」

玄「けど…」

晴絵「憧の言うとおり、あんたらの気持ちは十分伝わったからさ。そろそろ頭上げな?ね?」

玄「…はい」

晴絵「ん」

赤土先生にそう言われては、私も頭を上げざるを得ません
渋々頭をあげます

晴絵「大体、ガチガチの体育会系は私も苦手なんだよ。礼儀正しいのは良いけど、何事もバランス良くね?」

玄「はあ…」

灼「そういえば宥さんは?」

玄「え?」

あれ。言われてみれば
灼ちゃんの言葉に、さっきまで憧ちゃんと一緒に畳掃除をしていたおねえちゃんが居なかった事に気づきます
何処に行ったのかな?

憧「ああ、宥姉ならついさっき畳掃除終わって、もう大体終わったねって言って部屋出てったよ?」

穏乃「あー。私もさっきすれ違った。なんかお父さんに用事があるって言ってました」

晴絵「うん?どうしたんだろ」

玄「う~~ん…」

おねえちゃん?どうしたんだろ

宥「みなさん、お疲れ様です~」

あ、帰ってきた

玄「おねえちゃん」

晴絵「おー。おかえり」

穏乃「お疲れ様です」

憧「宥姉どこ行ってたの?もう掃除終わったよー」

灼「もうすぐお客さん来るんでしたっけ?邪魔したら悪いですし、私達もう帰ります」

晴絵「ん。そうだね。それじゃあみんな。ぼちぼち帰ろっか。帰りにご飯奢ってあげるよ。玄達もこれから何もなかったら…」

宥「その事なんですけど」

晴絵「…ん?」

宥「お父さんにお願いしてきました」

ふわり
柔らかく微笑んでおねえちゃん
一息吐いて、嬉しそうに続けます

宥「みなさんに、今日のお手伝いのお礼を」

晴絵「へ…」

宥「お掃除でお肌汚れたでしょう?温泉に入っていってらして下さい」

穏乃「やった!」

灼「いいの…?」

宥「勿論。いっぱい手伝ってもらったから」

憧「さっすが宥姉!」

晴絵「なんか却って悪いなぁ…30分くらいの掃除で」

宥「いえいえ。本当に助かりましたし」

晴絵「そう?それじゃあお言葉に甘えて…」

宥「あと」

玄「…!」

晴絵「お?どうした?」

宥「えへへ」

晴絵「えーと…」

宥「良かったら皆さん、今晩うちに泊まっていかれませんか?」

お父さんとの交渉がどんなものだったのか
そう言ったおねえちゃんの顔は、珍しくちょっと得意げなのでした

今日の分終わりー

乙ー

乙ー

これどんな話だったけとなんとはなしに>>1を見て
ほのぼのはここまでかと戦慄した

おつー

>>123
なんでほのぼのここまでだと思ったの?>>1読んでも分からん…

乙です!
ゆっくりと序章が進んでいくこの感じが素晴らしい。
タメの期間なのにワクワクするわ。

おつおつ

>会っても特に幸せになったりしない座敷わらしとか、やたら元気に暴れまわる小さな妖怪猿とか、怪獣ツインテールとか。あと、凍死した女子高生の幽霊!これが一番目撃情報多いです!

ここから怪談になるんじゃね?




























かぽーん

桶をひっくり返したような音が大浴場に響きます
ちなみに犯人は穏乃ちゃん。本当に桶をひっくり返して音を響かせています。なんでも、この音が無いと温泉に来た気がしないとのこと
6人の内、一番最後まで身体を洗っていた憧ちゃんが、シャワーで泡を洗い流しながら呆れた顔でつぶやきます

憧「穏乃ったら…ガキっぽいんだから」

それから元気に走り回っている穏乃ちゃん(早々に身体を洗い終わったのに、まだ湯船に浸かってもいないのです)をチラリと見やり、一度肩を竦めて我々の浸かっている湯船に歩いて来ました
ツーサイドアップを解いた憧ちゃんの髪は長くて綺麗です。それと、なんだか実に女の子っぽい。色気の点で、私の方がお姉さんなのに負けてる気がします…

と、そこで穏乃ちゃんに声をかける赤土先生

晴絵「穏乃~。憧も身体洗い終わったし、お前もいい加減お湯に浸かりなよ~」

穏乃「あ、憧終わったの?は~~い」

軽快な返事を一つ。穏乃ちゃんは近くのひっくり返った風呂桶で湯船のお湯を汲み、一度身体を流しました。走ってかいた汗を流す配慮なんでしょうか

灼「そこ配慮できるなら、今私達以外誰も居ないからって、浴場で走らなきゃいいのに」

灼ちゃんの呟きも、ごもっともです。そして…

憧「ふう…やっぱり玄と宥姉の家のお風呂は気持ちいいわ…」

ちゃぷんと音を立て、お湯に浸かった憧ちゃん…に向かって…ええ!?

晴絵「うわっ!?」

宥「きゃっ!?」

灼「うわ…」

玄「うわわわわ!?」

憧「…へ?」

慌てる私達4人にきょとんとした表情の憧ちゃん

憧「どしたのみんな…」

憧「…!!」

そう言って後ろを振り向いた彼女の目の前に写った光景は、恐らく

穏乃「どーーーーーーーーーーん!!!」

憧「ぎにゃああああああああああああ!!!!?」

全速力からのダイビングプレス!!


ざっばーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっっっっっっ!!!


穏乃「ごぼごぼごぼ」

憧「がぼがぼがぼ」

派手な水しぶきを立てて穏乃ちゃんと憧ちゃんが湯船に沈んでいきます。ああ…

灼「うわ…危な。避難して良かった」

見ると、さっきまで憧ちゃんの近くに居たはずの灼ちゃんがいつの間にか私とおねえちゃんの隣に避難してきていました
ということは、被害にあったのは憧ちゃんと…

晴絵「ぺっ!ぺっ!げっほげほ!こら!穏乃!!」

近くにいて巻き添えの水飛沫をもろに受けた赤土先生だけですね

晴絵「ゔえ゙え゙え゙え゙。鼻゙に゙お゙湯゙入゙っだぁ…げっほ」

灼「晴ちゃん涙目」

涙目です

晴絵「痛たたたたたたた…穏乃の奴ぅ…」

灼「悲惨」

悲惨です

穏乃「ぷはあっ!あっはっは!どうだ憧ー!まいったかー!」

憧「…ブクブク」

あっ。二人共浮いてきた

晴絵「しーーーずーーーーのーーーー?」

穏乃ちゃんを恨みがましい目で見て、すかさず両手でほっぺを挟み込む赤土先生

穏乃「あっ!ふ、ふみまへん、あはほへんへー(赤土先生)!」

晴絵「この馬鹿!」

穏乃「いへっ!」

挟んだほっぺをぷにぷにしてます。怒ってるけど、なんだか平和な光景

晴絵「あのなぁ穏乃!元気なのはお前の良いところだけど、何事も限度ってものがある!今日という今日は叱らせて貰うからな!」

穏乃「うええ…」

さすがに怒ったのか、赤土先生が穏乃ちゃんにお説教モードです

晴絵「お前普段は気遣いもちゃんと出来る奴なのに、テンション上がるとそうやって…」

おー。これは長くなるかも?お風呂の中だし、のぼせる前に止めたほうが良いんでしょうか

憧「はい、ちょっとタンマ。ハルエ」

晴絵「…ん?」

と、思ったら憧ちゃんがお説教を制止します

晴絵「どうした?憧」

憧「私に言わせて」

…憧ちゃん、目が釣り上がってませんか?

晴絵「…まあ、被害者のあんたが言うなら任せるけど…やりすぎんなよ?」

赤土先生まで思わずたじろいじゃいました。穏乃ちゃんをはさんでいた手を離して一歩後ろに下がります
憧ちゃんのこういう強気なところ羨ましいなぁ…

憧「穏乃」

穏乃「…はい」

名前を呼んで、じっと穏乃ちゃんを睨みつける憧ちゃん。彼女の目つきは元々キツ目なので、こうやって藪睨みするととっても怖いです

憧「…」

穏乃「…」

沈黙

憧「…」

穏乃「…」

沈黙

憧「…」

穏乃「………えっと」

黙って穏乃ちゃんを睨む憧ちゃん
案の定、穏乃ちゃんもタジタジです。凄い量の冷や汗をかき始めました

憧「何よ」

言い方もとげっちいです

穏乃「…すみません。もうしません」

憧「ふーん」

穏乃「…」

憧「…」

穏乃「…うう」

晴絵「お、おいおい憧。なにもそこまで冷たくしなくても…」

憧ちゃんのまるで圧迫面接のような(いや、私は受けた事無いですけど)プレッシャーに思わず彼女を諌める赤土先生
穏乃ちゃんは半泣きです

憧「後悔するくらいならしなきゃいいのに」

穏乃「…ごめん」

憧「怪我したらどうすんのよ」

穏乃「…」

憧「それに、ここ玄達の家だよ?迷惑だって思わなかったの?」

穏乃「…ごめん」

憧「私に謝るだけじゃなくてさ」

穏乃「…みなさん、御迷惑かけてすみませんでした…」

私達の方を向いて頭を下げる穏乃ちゃん。目がうるうるしてて、今にも泣き出しそうです
憧ちゃんが怖いからって、意外と気が弱いのかな?

玄「へ?…あ、う、うん」

宥「き、気にしないで…」

灼「反省してるなら許すよ」

晴絵「ま、まあ、これに懲りたら暴れるのもほどほどにな?」

穏乃「ありがとうございます…」

憧「…ったく。ふざけないでよね」

穏乃「…」

謝っても反省しても、一向に許す気配のない憧ちゃん。穏乃ちゃん、どんどん落ち込んでいきます
すっかり普段の元気の無い様子で、しょんぼりしてしまっています

と、なんだか妙な空気になったところで赤土先生が立ち上がります

晴絵「あ…あああー!なんだかのぼせちゃったなー!みんな!そろそろお風呂あがろうかー!」

玄「へ?」

それに同調するように立ち上がる灼ちゃん

灼「そうだね。うん。私ももういい加減暑いや」

玄「灼ちゃん…」

灼「みんな、お風呂上がろ?」

宥「そ、そうだね。みんな、飲み物あるよ。それ飲んですっきりしよ?」

晴絵「おっ。気が効くじゃん宥~。ほら、玄?」

玄「あ…は、はい!わかりました!」

これは…空気を変えるための提案…だよね?やっぱり
私も同調して返事をします。更衣室に向かうおねえちゃんと灼ちゃん。顔を俯かせた穏乃ちゃんの肩を掴んで、マッサージするように揉みながら連れていく赤土先生
残った湯船に、憧ちゃんが一人。いえ、私も居るので二人、か

玄「…」

憧「…ふん」

玄「あの、憧ちゃ…」

憧「…喉乾いちゃった。私達も上がろう」

玄「…」

憧「ごめんね」

玄「え?」

憧「…折角好意でお風呂貸してくれたのに、雰囲気悪くしちゃって」

玄「…それなら、穏乃ちゃんと早く仲直りしてね」

憧「…」

玄「行こ?」

憧「…うん」

ちゃぷ…
湯べりに足をかけ、控えめな音を立てて湯船から上がる私と憧ちゃん

玄「ねえ、憧ちゃん」

憧「…何」

玄「喧嘩するほど仲がいいって言うし」

憧「…」

玄「あんまり深刻にならない方がいいよ?」

憧「…うん。ありがと」

玄「いいえ。どういたしまして」

憧「…」

玄「だって」

玄「私は仲の良い親友な憧ちゃんと穏乃ちゃんを見てるの、好きだから」

憧「…うん」

玄「…ふふ。最近、喧嘩多いよね」

憧「だって穏乃が!」

玄「…」

憧「…あ」

…ちょっとだけ、お説教モード

玄「けど、ちゃんとすぐに謝ってくれるじゃないですか」

憧「…そうだけど」

玄「憧ちゃんも、嫌なんだよね?喧嘩」

憧「…うん」

玄「だったら、どっちが悪いとかじゃないよ。憧ちゃんも…」

憧「…うん。わかってる。後で私も謝る…」

玄「えへへ」

憧「…何よ」

玄「憧ちゃんはいい子です」

憧「…子供扱いしないでよ」

玄「たまにはいいんじゃないですか。お姉さんなんだから」

憧「…それなら普段からそれっぽい振る舞いを…ああ、うん。わかったわよ。私も悪かったから…」

玄「よしよし♪」

憧「…はあ」

…うん。憧ちゃんはやっぱりいい子です。お説教モード解除!

さあ、早くお風呂から上がって…おや?

灼「二人共ー。早くおいでー」

玄「あ」

憧「…」

あらら。しびれを切らした灼ちゃんが入り口から声をかけてきました。慌てて入口へ向かいます

玄「あ、ごめんねー!今行くよ!さ、憧ちゃん、行きましょ…」

と、歩きながら振り返り憧ちゃんの顔を見た瞬間
憧ちゃんの顔が視界から消えました

玄「うわっ!?」

憧「玄!?」

つる~~~ん


ばっしゃーーーん!!


玄「ブクブクブク…・」

憧「うええええええええええええ!!?」

不覚にも足を滑らせた私は、ひっくり返って再び湯船の中にダイブ・イン!

憧「く、玄!?大丈夫!?」

ぶくぶく…

灼「く、玄、どうしたの?」

晴絵「なんだ、どうした!?」

宥「玄ちゃん?なんか大きな音がしたけど、だいじょう…」

穏乃「…」

その音を聞きつけて駆けつけてきてくれた、灼ちゃん始め赤土先生、穏乃ちゃん、おねえちゃん
取り敢えず酸素が欲しいので、湯船から頭を出します

玄「す~…はぁ…ううう…災難でした…」

本当、その一言に尽きます
なんであんな所に風呂桶が…桶…あれ?

私、滑った時に風呂桶を蹴り上げた…よね?その風呂桶はどこに…

憧「…あ」

かぽ~~~~ん

考え事をしようと湯船で顎に手を当てた瞬間、憧ちゃんの気の抜けた声
そして、直後。絶妙のタイミングで頭に衝撃

私がその足で天高く蹴り上げた風呂桶は、私の頭と共に郷愁を誘う風情有る音を浴場に響かせて、その場の全ての人々の爆笑を誘ったのでした
おねえちゃんも灼ちゃんも、赤土先生も
さっきまで落ち込んでた憧ちゃんや、穏乃ちゃんまでも、お腹を抱えて笑っていたのです

…ふっ

ふふふふふ。計算通り。これで変な空気は一掃されました
やはり我が阿知賀女子高麻雀部には笑顔が似合う…

………………

………

…は~~~あ






























いちご「…」

うお

想像以上に立派な旅館

確かに結構いい値段しとったけど、これすっごいのぉ…



…はっ!

いかんいかん。圧倒されとった。『ちゃちゃのん』芸能人(仮)やし、この程度でビビっとるのも情けない
さっさとチェックインだけ済ましてご飯食べに行こ。思ったより時間掛かっちゃったしな
えっと、まずは受付行って、と…

いちご「こんにちわ~」

いちご「はい。予約していた佐々野です」

いちご「ええ。2泊3日の。…ええ」

いちご「チェックインの時間、予定より早くなったけどええですか?…ども」

いちご「あ、これに名前と住所書くんですね?」

いちご「わかりました」

いちご「……」

いちご「はい。これで」

いちご「………」

いちご「どーも。これが部屋の鍵じゃね?」

いちご「えーっと…」

いちご「はい。ども。…え、案内?あ、ども」

いちご「…」

いちご「…」




いちご「あ、この部屋ですか?どーも」

いちご「あ、はい。ありがとうございました」

いちご「…ん?これなんですか?はあ。地元の名水入りのペットボトル。おお。どーもありがとう様です」

いちご「はい。ではまた」

いちご「…」

ふむ

いちご「…」

いちご「なかなかいい部屋じゃね」

うん。気に入ったわ。この…えーっと、なんだったっけ

確か鍵に書いてのう。あ~…

いちご「…」

…うん、そうじゃったそうじゃった。この…







いちご「立葵(たちあおい)の間」





今日は早いけどおわり~

おつー

おつおつ
































(お、イッチか?)

                 






                    心

                    か









ふい

お風呂上りです

すっきりしました

今は、みんなで私の部屋に居ます。ちなみに全員浴衣です。あ、おねえちゃんだけどてら着込んでますけど

穏乃ちゃんが瓶の牛乳を一気飲みして、憧ちゃんがフルーツ牛乳をちびちび飲んでて、おねえちゃんは自分の部屋から持ってきたマグカップでホットミルク

赤土先生はコーヒー牛乳。灼ちゃんもコーヒー牛乳

私は普通の牛乳です

なんていうか、統一感の無いカオスです。主におねえちゃんが原因だと思うのですが

みんなで牛乳瓶片手にお喋り。和やかで楽しいなぁ

穏乃「いいな~。いいな~。憧~。フルーツ牛乳どんな味?私にも一口ちょうだいよ~」

憧「や・だ!あんたもう自分の分飲んだじゃん」

穏乃「私が飲んだのノーマル牛乳だもん!」

憧「ええい図々しい!さっき叱ったのにまたか!」

穏乃「うう~…」

憧「…ったく。あんたは反省が足んないのよ」

…とか言いながらちょっぴり分けてあげてる憧ちゃん

晴絵「宥は相変わらず寒がりだよな~」

宥「さむい~」

晴絵「あはは、秋とはいえホットミルクとか。そういえば、小さい頃はレンジで暖めた牛乳に膜が張るの不思議だったな~」

宥「お砂糖入れてるから美味しいですよ?赤土先生も飲みます?」

晴絵「いや、いいや。まだ私は身体火照ってるし」

おねえちゃんの人体の不思議に首を捻る赤土先生。うん。やっぱりうちの部は個性的!

灼「そういえばさ。玄」

玄「へ?」

と、みんなを観察してると灼ちゃんから声がかかりました

玄「なんですか?灼ちゃん」

灼「さっき私達がお風呂上がった時」

玄「うん?それがどうしたの?」

灼「玄関の方…話し声聞こえたよね?」

玄「え?そうだっけ?」

灼「うん。お客さん来てるみたいだった…」

玄「気付かなかった!」

灼「あらら」

玄「そっかぁ。もしかして、今日のお昼からって聞いてたお客さんが来たのかな?」

灼「そうなの?なんだか若い人達の声だったけど。この旅館、結構高級志向だからあんまり若い人来ないのに、珍し…」

玄「ふっふっふ~。だと思うでしょ?」

灼「?」

玄「最近ね、学生プラン始めたんだ」

灼「へえ」

玄「お父さんのアイディアなんだけどね。これからの時代、若い世代にも本当に良い物を体験して欲しいって、お金の少ない若い人の為に、何部屋か学生割やってるの」

灼「そうなんだ」

玄「まあ、それでも普通の旅館よりは割高になっちゃうんだけど…」

灼「まあ、仕方ないんじゃない?ここ、部屋とか凄いし」

玄「ちなみに、学割する部屋はランダムです」

灼「はあ」

玄「だから、最近結構若いお客さんも来てるんだよ~」

灼「ふ~ん」

玄「これからは、若い頃から長い事うちをご贔屓にしてくれるお客さんを開拓しなくちゃだもんね!」

灼「おお、経営者っぽい」

玄「えへへへ」

こういう事言うと、なんだか働いてる人っぽくて格好いいですね
…さっき読んだ交流ノート参考にしましたが

灼「ねえ。どんな人が来たと思う?」

玄「ん~…」

灼「私達と同い年くらいだったり…?」

玄「ふふ。珍しいね、灼ちゃんがうちのお客さんに興味示すなんて」

灼「だって、同い年くらいの人なんて、この辺には全然居ない…」

玄「…確かに」

灼「どんな人なのかなぁ」

言われてみれば、灼ちゃんの言うとおりなのです
過疎化の進む我が阿知賀は、子供が全然居ません。クラスも少ないし…

その意味で、この間のインターハイで行った東京は衝撃的でした
こんなに同年代と一同に会したのなんて、あれが人生で初です。カルチャーショックです

そんな訳で、灼ちゃん。他所から来た同年代(推定)に、ちょっとウキウキしてる?

玄「今日みんなうちに泊まるんだし、もしかしたら会ったり出来るかもね?」

灼「ん…いや、そこまで気になるわけじゃないけど」

玄「そっか」

ちょっと拗ねたように顔を膨らませて、控えめに目を逸らす灼ちゃん
まるで『そんなの気になんてしてないよー』って言ってるみたいで、子供っぽい表情に可愛いなって思ってしまいます

穏乃「玄さん!」

玄「うわわ?」

…と、そこで突然穏乃ちゃんが声をかけてきました。灼ちゃんを観察してたので気付かなかったのでビクッとしちゃいましたが

憧「ちょっと、穏!玄びっくりしてるでしょ」

穏乃「あ、ごめんなさい」

玄「う、ううん。大丈夫だよ。どうしたの?」

ちなみにまだ心臓がどっきんこどっきんこ言ってます
そんなチキンな私に、穏乃ちゃん。満面の笑みで

穏乃「探検したい!!」


































洋榎「おおおお…」

絹恵「わあああ…」

感動

今、うちら姉妹は、感動してます
というのも、なんていうか…予想を超えてきたからや

松実館

なんて凄い旅館や

まず、風情がええ。静かで自然溢れる閑静な坂道を歩いてると、ゆっくりと見えてくる木造のやや歴史を感じさせる建物
テンションの上がるお姉ちゃん

中に入ると、趣きのある高級感溢れる内装や備品が上品に飾ってあり
ますますテンションの上がるお姉ちゃん

チェックインの受付さんも親切で丁寧。しかも、荷物を持ってくれて、部屋まで案内してくれるという親切っぷり
恐縮するお姉ちゃん

案内の人から去り際に地元の名水のペットボトルをプレゼント
喜ぶお姉ちゃん

部屋に着くと、こじんまりとしてるけど清潔感溢れる和室。普段見る機会のない和室と、畳の匂い
感動するうちら(冒頭)

洋榎「ええな~!この部屋ええな~!なー絹ー!」

ごろごろ~。
早速寝転がるお姉ちゃん

絹恵「お姉ちゃん、取り敢えず着替えて荷物整理しようや」

洋榎「お?なんやこれ?」

聞いとらんし

絹恵「何か見っけたん?」

洋榎「お~。絹。見てみ。見てみ」

嬉しそうなお姉ちゃんの声に薄手のコートを脱ぎながら振り返ると、テーブルの上には高級そうな箱が
早速開けるお姉ちゃん

洋榎「ん。これ、地元のお菓子やん!しかも和菓子」

絹恵「え?え?マジで?」

和菓子大好き

洋榎「良かったな~。絹ー」

絹恵「食べてええんかなぁ」

洋榎「ご自由にどうぞーって書いとるで」

絹恵「やた!じゃあ、着替えたらお茶入れるから、一緒に食べよ」

洋榎「…」

絹恵「…ん?どしたん?お姉ちゃん」

洋榎「いや、絹は和菓子好きやからそんなスタイルええんかな~って」

絹恵「…何言うとるん?」

洋榎「いや、その。ほら。うちと絹の食習慣の違いって言ったらそれくらいやん」

絹恵「…和菓子にそんな成分あるなんて聞いたことあらへんけど」

洋榎「せやねぇ~…」

絹恵「…」

洋榎「もぐもぐ」

絹恵「!!?」

洋榎「あ、これ美味し」

絹恵「ちょ、お姉ちゃん!?何先に食べとるん!?」

洋榎「うはは。絹も早いとこ着替え終わらせんと、全部食べてまうで~」

絹恵「んなぁ!それはずるいって、おねえちゃ~~ん!」


数分後
私がトレーナーに着替え終わった頃には、お姉ちゃんはロンTにとっくに着替え終わっとって
お茶まで淹れて待ってくれとった

早っ

…と思ったら、脱ぎ散らかしとるし。お姉ちゃんの分の服を畳んで旅行鞄にしまっていると、ニコニコうちを見とるし
元部として、なんとなく言ってみる

絹恵「お姉ちゃん?」

洋榎「うん?」

絹恵「お姉ちゃん、サッカー部でも活躍できてたと思う」

洋榎「あはは。無い無い」

絹恵「そう?」

洋榎「運動は苦手よ」

絹恵「けど、すばしっこいし。頭もええし。サイドバックとかやらせてみたいわ。…いや、性格的にフォワードかな?」

洋榎「いややん。疲れるし」

絹恵「むう…」

洋榎「うちは麻雀だけやで」

絹恵「…それもそっか」

洋榎「そ」

絹恵「あー。この和菓子おいし~」

洋榎「うちは、麻雀だけやで。な?絹恵」

不敵な笑みでお姉ちゃん

絹恵「…」

けどね?お姉ちゃん

胸のとこ伸びきった変なネコのプリントTシャツ着て、お菓子の食べかす顔にくっつけて、じゃ締まらへんよ…

はい、今日はここまでー
遅くて少ない。ごめんね
けど、来れる日はこっちは絶対更新します

先にアラフォーの方完全に終わらせちゃった方が捗るかも

ところで、関係ないし興味ない人にはどうでも良過ぎで申し訳ないんだけどさ
昨日の日中ケータイで芸スポ見てたら、↓こんなスレ見っけてさ。着々とフラグが立ってる…

ガンバ大阪降格用警備!現役プロレスラー10人らで暴動阻止…磐田

って訳で、12月1日は今年最後のJリーグ
みんな!J見ようぜ!!

地上波もあるよ!

NHK総合 15:25 Jリーグ「ジュビロ磐田」対「ガンバ大阪」~ヤマハスタジアムから中継~
キックオフ:15:30 / 試合会場:ヤマハスタジアム(磐田)

乙です

Jか・・・イッチの心はもう癒えたんか・・・

プロレスラーが一番かわいそう

あっち終わったか。おつかれっす

次はこっちだね(ニッコリ)

テスト

よっしゃ
なんか県名表示無くなったし、以降このスレはこのトリップでいきます

あと、先程アラフォースレが完全終了致しました
むこう読んでくれてた人いたら、ありがとね


じゃあこっちもやるよー

待機中

やはりカンちゃんは偉大だったか…































『探検したい!!』



この言葉は我が部に思わぬ波紋を投げかけました
なんていうか、衝撃的な事態です

憧「はぁ!?何ガキっぽいこと言ってんのよ」

予想通りの憧ちゃんの反対

灼「面倒くさ…」

折角まったりほっこりしてたところを脅かされそうで嫌そうな顔の灼ちゃん

玄「ええ…」

流石にお父さんに怒られそうでちょっと心配な私

宥「お部屋の外寒いよ~?」

寒いおねえちゃん

穏乃「うう~…」

流石にチームメイト全員に渋られては元気印の穏乃ちゃんも怯みます
ウズウズしながらちょっとしょんぼりした顔が可哀想
だけど、ごめんね?ここはちょっと譲れないとこであって…

晴絵「いいね!楽しそうじゃん」

ええええええ!!

まさかの赤土先生の裏切り!?

穏乃「赤土先生!!」

え…いや…あう…えっと…

玄「え…いや…あう…えっと…」

考えてたことそのままに口から意味の無い言葉を紡ぎ、おろおろと戸惑う私

憧「何言ってんのよ晴絵まで」

灼「年考えてよ。ガキっぽい」

灼ちゃんの辛辣な口撃が光ります

晴絵「なにを~」

灼「ひはふひゃふは」

速攻武力鎮圧されました
灼ちゃんのほっぺがおもちのようにこねくり回されます。ああ…なんてやわら…こ、こほん!!

穏乃「流石赤土先生!わかってらっしゃるっ!やっぱり探検は果てしない浪漫ですよね!100万ドルでも夢は買えないですもんね!紅い地平線に日は昇りますもんね!」

憧「どんな大冒険をする気だあんた」

穏乃「GOLD RUSH !!」

此処ぞとばかりに赤土先生に着く穏乃ちゃん。前から思ってたのですが、この子意外としたたかなのです
あと、うちは金鉱ではありません

晴絵「まあ、探検って言ったら大げさだけどさ」

灼「ひはふへほひ」

あまりのテンションに流石に苦笑いを浮かべる赤土先生は未だ灼ちゃんを捉えたままです
灼ちゃんの頭にちょっと青筋が浮かんできてるのが見て取れます

晴絵「インハイ前に合宿した時は麻雀ばっかだったし、今はちょうどまったりした時期だし」

玄「はあ…」

晴絵「この際、『友人である』玄と宥の家の人達とちょっと交流しとくのも悪くないんじゃない?ああ、勿論迷惑かけないの前提でね」

宥「交流…ですか?」

きょとんとした表情のおねえちゃん。多分私も同じ顔。赤土先生の意図が読めません

晴絵「ん。…松実館は、この辺でも有名な旅館でしょ?」

憧「そりゃそうだけど…」

晴絵「旅館なんて普通は泊まるくらいでそんな交流図れるもんでもないしさ。こいつらの家は、結構面白くて珍しい客商売してる家庭だって言ってんの」

玄「おふ…」

宥「むきゅ」

灼「むー!むー!」

なんだかざっくばらんに乱暴なことを言って、乱暴に私達を引き寄せ、乱暴に頭を叩いてくる赤土先生
さっきまで捕獲されていた灼ちゃんは、今は小脇に挟まれてヘッドロックみたいにされています。顔が二の腕で拘束されているのでちょっと苦しそう

憧「だからなんなのよ…」

言いつつちょっと赤土先生から離れる憧ちゃん。自分も乱暴されるのを恐れているのでしょう。助けて欲しいんだけど

晴絵「ん?だから?…へっへっへ」

悪そうな笑いです

晴絵「社会勉強してこい」

憧「…はぁ?」

…はぁ?

さて

穏乃「とおおおお~~~~!!」

憧「こら!走るなシズ!!」

今、我々阿知賀女子麻雀部総勢5名は、松実館が誇る大広間におります

どたどたどた…

穏乃「うおおおおおおおお!!ひ~~~ろ~~~~い~~~~~!!!」

憧「聞いてんのシズ!!」

穏乃「うわーーーーー!憧が怒った逃げろ~~~~~!!」

憧「し~~~~~ず~~~~~~~!!!」

どたどたどたどたどたっ!!

玄「…」

灼「…」

宥「…」

案の定大変なことになってます

憧「おらぁ!!」

穏乃「うひゃー!捕まった!」

灼「誰も居なくって良かった…」

宥「今は大半のお客さんはお出かけされてる時間だから…」

玄「…この大広間は、宴会が入った時の夕食とか、イベントとかを開催する時に使うのです」

灼「へえ」

宥「ふ、ふたりとも~。遊ぶのはいいけど、調度品だけは壊さないでね~…」

憧「くのくの!」

穏乃「ぎゃああああ」

どったんばったん…じゃれあう二人は微笑ましいけどちょっと怖い…

ちなみに赤土先生は同行していません
なんと、うちの従業員の中に彼女のファンが居たのです
で、今は従業員の方がちょうど休憩の時間で、そのまま拉致連行。お茶やらお菓子やらを振舞われつつ「お前らは行ってこい」

その際聞いた話ですが、既に赤土先生は私達のお父さんに挨拶を済ませていたそうです
で、社会勉強云々というのも、穏乃ちゃんに感化された思い付きではなく、折角宿泊させてくれるなら社会勉強も、と

当然お父さんは快諾
私達阿知賀女子麻雀部は先のインハイでの活躍で旅館の従業員にも受けがよく(この松実館での合宿がその躍進の一助になったというのは、うちの従業員の密かな誇りなのです)
だからこそ、みんな揃って色んな所に顔を出してくれれば働いている皆のモチベーションにもなるだろうから…だそうです


灼「それにしても…へえ。大広間ってこうなってたんだ」

玄「灼ちゃん?」

灼「ふう…」

玄「…あは」

1年生コンビのじゃれあいを尻目に、灼ちゃん。穏やかな顔で大広間の畳の上にころりと寝転んでしまいました。意外と彼女もフリーダムです
まあ、暴れられるよりよっぽど素敵です。もはや社会勉強関係ないけど

灼「修学旅行も名目は社会勉強だけど、真面目に勉強してる子なんて居ないし…」

それもそうなのです

灼「ああ…気持ち…」

目を細め、ふわふわした顔で天井を見つめる灼ちゃん
ふっふっふ。お目(?)が高い。当旅館の使用している畳はとっても高級品で、驚くほど素敵な寝転がり心地。鎮静効果があるイグサの香りはまるで森林浴をしているかのようで
私達姉妹も小さい頃はよく、この大広間で寝転がってそのまま眠ってしまったものです

…実は、最近でもたまにやってしまいますが

灼「ふあ…」

ころんと寝返りをうつ灼ちゃん。…寝ちゃわないでね?

灼「ん…」

和室の調度と畳が灼ちゃんの黒い髪に妙にマッチして、彼女が日本人形みたいに見える…って言ったら怒られるのかなぁ

宥「寒い…」

おねえちゃんの声に振り返ると、さっきより数倍着膨れしたおねえちゃんが立っていました
耐え切れなくなって部屋に上着を取りに行ってたんだね?…いつの間に
いつもながらに思うのですが、なんだかイエティみたいなのです

憧「きっしゃあああああああああああああああ!!」

穏乃「うきょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

声に1年生組の方を見やると、遂にしずちゃんが憧ちゃんに討ち取られていました
憧ちゃんにぐりぐりと梅干しをされて哀れっぽくも謎の奇声をあげるしずちゃんは、さながら緊箍児に締め付けられる孫悟空
穏乃ちゃんを窘めるという当初の目的を忘れ大暴れの憧ちゃんは…瞳の紅さも相まって全身攻撃色でした

なんていうか…実に日常です
普段は苦労人ポジのは灼ちゃんの役目なんですけどね

灼「今日は部活お休みだし、ツッコミもおやすみ」

…さっきから、私の心読んでる?灼ちゃん

灼「くぅ…」

うわああああああああん!!

しかし

天網恢恢疎にして漏らさず

なんだか人の家でとってもとっても好き放題やらかしてきた我が阿知賀女子麻雀部にも、遂に天罰が下る時が来ました

晴絵「お前らなにやってんの…」

憧「へ?」

穏乃「ひょっ!?」

灼「ん…むにゃ…」

宥「あ」

玄「赤土先生!」

晴絵「はぁ…お前らなぁ」

肩を竦めて先生

「はは…」

の、後ろに何人か従業員の皆さんも。苦笑いっていうか「しょうがね~なこいつらは」みたいな、悪戯盛りの子猫や幼児を見るような生あったか~い視線が逆に痛いです
おねえちゃんでさえこれなら冷たい視線のほうがマシなレベル

晴絵「まあ、お前らだけで行動させた私も馬鹿だったよ」

玄「あう」

…みんなでお説教
1年コンビは勿論。止めなかった灼ちゃんと、私と、おねえちゃんも

あははははは

…はあ



これは後日談になるのですが


この数日後、実はこの時間お客様が近くのお部屋にいらした事が判明


従業員さんに何かあったのかを尋ねられ


本当のことを言うわけにもいかずお茶を濁した従業員さん


何を勘違いされたのか、お客様


意味深に頷かれ


同時期、あるインターネット掲示板で


うちの旅館には


『出る』


という噂がががががががが


…なぜか、客足は遠のくどころか増えました

く~…く~…

んむにゃむにゃ…

んん…



…ハッ!?

絹恵「今何時!?」

跳ねるように起き上がる

辺りを見回す

掛け時計を見つける

ああん!焦点が合わない!これだから寝起きは…

そこで思い出し、テーブルの上に置いて充電していた携帯に手を伸ばす

良かった…30分くらいしか立ってない

冗談やないわ。折角旅行に来てんのに1日寝たまんまで過ごすとか。もったいない

ほっと胸を撫で下ろし、立ち上がって伸びをする

絹恵「ん~~~…っ!」

…ふう

備え付けのお菓子お茶飲んで食べてまったりして、気付いたら畳の上で寝とった
ああー。それにしても気持ちえかったなぁこれ。植物の優しい肌触りとイグサの匂いが心を癒してくれる
寝てまうのも無理ないわ

絹恵「ふふ…お姉ちゃんもぐっすりやし」

ちらりとお姉ちゃんの顔を見る

洋榎「く~…くか~…うえへへへ…」

まあ幸せそうなこと。涎垂らしとるし。畳に染み作んないでね?

…けど、なんか起こすの可哀想やなぁ
一息吐いたら二人でその辺ぶらぶら適当に流そ(長旅で遠くに行く気力は尽きた。出かける前は色々遠出も計画しとったのに)って話とったけど、まだええよね?

確か、お風呂はいつでも入れるんやったよね?

絹恵「先お風呂行ってこよかな」

勝手に行ったらお姉ちゃんには悪いけど、どうせ出かける前には風呂に入らなきゃアカン。それにうちの方が長風呂やし。起きたら来るようにメモ残しとけばええやろ

絹恵「先お風呂行っとるよ…っと」

アメニティのメモ帳を一枚破き、簡単なメッセージをテーブルの上に残しておく

絹恵「ふふふ~ん♪」

お風呂大好き。温泉もっと好き♪
窓の外ではスズメがちゅんちゅん楽しそうに鳴いとって、こっちまで自然、上機嫌な鼻歌が漏れる
浴衣はまだ置いといて、着替え用の下着等準備完了!さあ行くで!

絹恵「楽しみやなぁ…」

なんだか、こっち来て心底気分の良いウチなのでした!!

洋榎「んむぅ…」

洋榎「んにゃう…」

洋榎「にゅむにゅむ…」

洋榎「くぅ…」

洋榎「…」

洋榎「…すぅ」

洋榎「…」

洋榎「ふごっ!?」

洋榎「…おおう。ゆ、夢か」

洋榎「び、びっくりした」

洋榎「まさかガンバ大阪が降格する夢を見るなんて」

洋榎「あはは。ありえへんありえへん。だってあのガンバやで!?」

洋榎「親会社に天下のパナソニック抱えて再来年には新スタジアムのこけら落としも控えとる西の名門が、まさかそんな…」

洋榎「日本代表だって二人もおるんやぞ?代表の心臓遠藤に守りの要今野」

洋榎「二川さんだっておるし、家長のアキちゃんも来てくれた」

洋榎「レアンドロは1試合1点ペースで点取る怪物やし、加地さんや明神だっておる…」

洋榎「せや!降格!?アホ抜かすな!どころか優勝待ったなしの布陣やろ!!」

洋榎「黄金期や!ガンバ優勝待ったなし!クラブワールドカップで世界3位は取ったから、今度は2位、1位目指していくで~!?」

洋榎「なはははははははははは!!」

洋榎「はははははははは!」

洋榎「はははは…」

洋榎「はは…」

洋榎「…」

洋榎「死神には勝てんかったかぁ…」

洋榎「前田とか言う隊長クラス」

洋榎「なんやのんあいつ。早く尸魂界行けや」

洋榎「卍解すんの代表戦だけにしろやマジで」

洋榎「くっ!あんな奴、ガヤさんが完聖体になって静血装さえ使っておれば…」

洋榎「…」







虚しい…         (←ガンバサポ血の叫び)





ガンバ、どうしてこうなった……

なんもかんも前田が悪いよ、前田が……
あと新潟の狙い済ましたかのような連勝もな

ファッ!?

と、妹のおらんことに気付く

洋榎「…おりょ?絹?」

辺りを見回しても(っても、そんな広い部屋でもあらへんけど)おらんし

洋榎「…なんや、どっか行ったんか?」

薄情な奴め。お姉さまが寝とるのほっといて何処ほっつき歩いとんねん。ったく…

洋榎「…ん。なんやこれ、メモ?」

あ、テーブルの上になんかあった。絹からかな?

洋榎「…」

洋榎「…あー」

風呂行ってんのかー

洋榎「好きやな~あいつ」

…ま

洋榎「そしたらウチも行くかな~」

ウチもやねんけどな!

今日の分終わりー

ところでガンバサポさん、もしこのスレにいらしたら、勝手に弄ってごめんなさい

そして

藤ヶ谷と今野の元所属を言ってみるのです!!
いつぞやは播戸貸してくれてありがとうなのです!!
また来年も偽ミランダービーよろしくなのです!!
ふひひひひ J2はいいぞ~楽しいぞ~~~~なのですッッッ!!!

        / :/  ...:/:′::/ :.:.:.....:./.:/:!:.:.:.i:..!:.:.....:{:.:.:.:.:.:ハ
     .  /.〃/:...../:′'.::|:: i .::.:.:.:| :i:_{__|:.|:.:.:.i :|:.:...:.::.::..}
       '://:′::/斗:十 |::.::.::.:.:.:.: :}}ハ ::ハ:{:≧ト|::::.:..:::.:.:.|
      {//::{: /|i:八::{=从:{ i::::: :N孑弐{ミト∨:::|:::::|:.:::ハ::i 
   ((  i :从 ::::{イァ:う{ミト爪ト::::. ! ん):::::ハヽト、:{::::::i::::||:::::}

     .  |.::| : \《 { ::::::: }::::::ヽ\{ { ::::::::: リ | :::ヽ:::::|::i|:::::}
     .  | ::!::|ハト.乂 ノ::::::::::::::  丶 ノ  | :::|:::::::::|:||:::::|
      八::| :|::::i   ⌒:::::::::::::::::::   ⌒   }:::}i:::::::::|:||:::::| | |
       (__):::l:::::.    (_人__)       i.:/::::::/:::「{::::::{ ノノ
      / :{ | :V:入    )vvノ        }/}::::}/::::/|::/
      { ::|人::∨:::人... (__ン      ィ升|:::/::::::/ ソ



…3年くらいJ2でのんびりして育成に力入れてもいいんじゃないかな(震え声)

阪神はアレだしガンバもアレだし、大阪人のメンタルはボロボロ

死神に降格させられて翌年昇格したチームはいないらしい

>>177
我らの近鉄バッファローズがいるではないかフハハ
フハハ…
ハハ…

あの身売りはなんやねん…


一晩経ったら受け入れられた(達観)
遅くなったけどあっちの方も乙!


オリックスバファローズ(核爆)

アラサー乙っすよ
いやーいいもん見たわ

「どう云うつもりとよ!菫!!」
「ふん。良い様だな。哩」
インターハイで親友になった筈の菫に拉致監禁、調教されるぶちょー

「許さん。覚えておれ。その首、直に掻っ切ってくれる」
「ふふふ。相変わらず苛烈な女だ。九州の女は怖いな」

ドM故すぐに陥落するかと思いきや、姫子へ操を立てているが為にこの仕打に激怒。苛烈な反発

「はは…強情な奴だな。それでこそ見初めた甲斐がある」
「くっ…!舐めるな。裏切り者!!」

嬲られ快楽を感じながらも気丈に反発し、言葉によって牙を剥き続けるぶちょー。それを見て悦に入る菫。膨らむ憎悪

「殺してやる」
「出来るものならどうぞ。楽しみにしているよ」
「がっ!?」

吐き捨てる哀れな犠牲者を嘲笑いながら、失神するまで彼女を嬲り、やがて満足したのか執行者は部屋を去る

「…あいつめ」

数時間後に意識を取り戻すと、菫が居なくなっていることに気付く。一先ずは、勝った。あの忌まわしい女に。裏切り者に
しかしその数分後再び菫が部屋に入ってきた時、その安堵は絶望に変わる

「なっ!?」
「やあ。気が付いたか。さっきはやり過ぎたのではと心配したよ」
「…ぶちょー」
「姫子!?」

敵の傍らには重く冷たい鉄の首輪を嵌め、服従と心酔の表情で手ずから寄り添う恋人の姿

「貴様ぁ!!姫子に何をした!!」
「別に。ただ、煩わしい豚が付き纏うのに辟易していた少女を…助けたのさ」
「なんだと!?」
「…」

憤怒と憎悪に塗れた呪いの視線を鼻であしらい、冷たく一瞥する菫。嫌悪と蔑みの入り混じった表情で元恋人に別れを告げる姫子

「貴女はもう、要らんとです。さようなら。汚い雌豚」
「ふっ…さあ、姫子」
「んっ…」
「あっ…!あああああああああ!!!?」

目の前で魅せつけるようにキスをして、振り向くことも無くあっさりと部屋を出ていく二人

「ま、待て!!」

追いかけようにも、手首を拘束され、犬の様に鎖に繋がれた自分にはどうすることも出来ない
取り残された惨めな女の、血を吐くような叫びが無機質な部屋に虚しく響く

だがそれはこの世界の日常。暴力と欲望が支配するこの街では、誰もが迎え得る当然の喜劇の一幕に過ぎない
守れぬ者は泣き寝入るしか無いのだ。己も。周りも。愛する人でさえ

「なんもかも政治が悪い」
「…」
「すばらっ!」

羊が鳴き、鳥は困る。大スバラはなんか飛ぶ

人は言う。ここは地獄。日本のゴッサムシティ

絶望こそ隣人。憎悪が友。恋人を狂気に。裏切りは愛人に。抗争と戦争が日々を鉄色に彩り、破壊と怨嗟渦巻く悪徳の中心
悪が正義を制して久しく、修羅が全てを支配するその街の名は、FUKUOKA
人が人として生きること能わぬならば。否。なればこそ。我もまた悪鬼へと身を貶そう

夜が明ける
朝焼が訪れる
今日も誰かが泣くのだろう。それも日常

「…何故」

何故、こんな事になったのだろう。それは、本来幸せな一生を送る筈だった女の、人としての最後の疑問
鬼へと変貌せねばならぬ者の、怨嗟に満ちた嘆き。答など求めていなかった。だがその独白にしかし、意外にも回答は有った

「なんもかも政治が悪い」
「そうだったのか」

風に乗って運ばれてきた海の香が、棄てられ無人になった海運倉庫群を優しく包む。この街の唯一の慈悲。かつて人だった鬼の、その恋人だった女の、愛したこの街の横顔
白く濃い霧が黒い闇に浮かぶ港に立ち籠める。薄い光が差し、夜の暗闇が徐々に塗り潰されていく。日が昇り、朝が来た

「今日は、雨が降るな」

遂に黒を喰らい尽くした白い闇。その中でゆらり、蠢く影が呟いた

「いいだろう」

削いで無理やり拘束を引き剥がした手首の肉の周りから、どす黒い水滴が滴り落ちる。痛みは既に無かった。放っておけば乾くだろう。それで良い
地平線より昇る一筋の光に目を細め、誰が言い出したのか、いつからか囁かれ始めたこの街の都市神話を思い出す

「降らば降れ」

曰く。朝と夜は憎しみ合っている

「黒い雨も。紅い雨も。存分に降れ」

この街に降る二つの色の付いた雨は互いの流す血で

「存分に地を潤せば良か」

昼夜がそれぞれ入れ替わるのは、二つが殺し合っているからだ

「天より来たる黒き雨よ。我が心、貴様が色に塗らせ」

夜は朝を殺し、成り代わる。空から降る雨は呪いだ。金持ちの玩具と化した重化学工場では汚染物質は垂れ流しとなり、その排ガスが溶け込んだ雨は、人体を侵す、幾千もの奇病を起こす

「地より来たる紅き雨よ。我が手を貴様が色に浸せ」

朝は夜を殺し、成り代わる。鮮血という名のこの雨は、いつだってこの街のどこかを彩っている。…恐らくは、今この瞬間においても

「夜ば憤怒に染めよ。朝ば哀しみに染めよ」

悪意の夜と、喪失の朝。この街に安寧の昼は来ない

「この我を突き動かせ」

そうやって輪廻にも似た延々の死の連鎖が、唾棄すべきこの世界を作っているのだと
それはまるでこの街の構造を顕しているようで、影はつまらなそうに一つ鼻を鳴らす

「そして」

尚も呟き続ける。言い聞かせるように。吐き捨てるように。切り捨てるように。決別するように

「我が街よ、全て滅びよ」

沈み行く紅い月と、昇る蒼い太陽の見下す中、今日も一人の復讐鬼が新たに生まれた。それさえもこの街の日常

復讐の対象はなんなのか。真に憎むべきはなんなのか
変貌した親友か。裏切った恋人か。それともこの呪われた街なのか

今の彼女にはそれすらもわからないけれど

「なんもかも政治が悪い」
「やっぱりそうなのか」



『MILEMAN』


FUKUOKAに生きる、FUKUOKAでしか生きられない、哀れな人間達を揶揄し、貶しめる単語
この街で歩くなら心せよ。それは既に死出の旅路。その距離、僅か1マイル。この街には死神が多過ぎる
これは、死神を狩る死神の話


だが


一体どうすれば


「待っておれ。菫」

「待っておれ。…姫子」


憎しみで人を救えるのだろう




ガチレズドマゾ変態女から逃げ切ったら10万円



「必ず復讐してくれようぞ」



114514年893月19日 ロードショー



「必ず」



「なんもかも政治が悪い」


洋榎「…なんやこれ」

呆然と呟き、テレビのリモコンを見つめる

あ~…

その~…

旅館ったらあれやん。その…えっちな有料放送

絹追っかけて温泉行く途中、偶然。そう。偶然カード売っとる販売機見っけてな

たまたま財布も持ってきとってな

たまたま誰も周りにおらんでな

…たまたま手が滑って千円札が自販機に吸い込まれてな

たまたま急に部屋に戻りたくなって、たまたまテレビのなんか怪しげな機械にたまたまカードが入って~…

…………

……

……

で、たまたま写ったチャンネルが、これ

なんやこれは

洋榎「…」

言いたい。声を大にして言いたい

『ウチのドキドキ返して!!』

どうせ絹は長風呂やし、と思ってウッシッシとわざわざ初お小遣い使うたんが、これって(あ、お昼ご飯に使ったか。旅費とそれは別としてな?)…

洋榎「マジ脱力やわ…」

世界中で、今のウチ程上手にがっかりを体で表現しとる人間はおらんと断言出来る。世界3大がっかり人間とか、がっかりオリンピック金メダリストとか、なんかそんな感じ
盛り上がっとった気分、完全に死亡

くそう。何が悪かったんや。R18?こちとらギリギリとっくに18や!もっとごっついえっちいの見せんかい!!      (※学生はまだ見ちゃいけません)
絹恵に黙ってた事?あいつはアカン。免疫無いし。洋画の濡れ場とかでも嫌がって消そうとするくらいやし…      (※この子もありません。ただちょっとムッツリなだけなんです)
…そうかぁ。政治かぁ。政治がアカンのか。くそっ!ウチはなんて無力なんや!選挙権すらまだあらへん!!      (※20歳を超えたら選挙にはきちんと行きましょう。国民の義務です)

洋榎「はぁ~あ~…」

ドサリ。思わず脱力し、畳に五体投地。完全無抵抗の構え。テレビは既に消した

洋榎「…」

天井を見やる。蛍光灯が眩しい

洋榎「風呂、行くか…」

のろのろと立ち上がり、時間と金をアホほど無駄にした事を後悔しつつ風呂へ行くウチ

そう

それがあの悲劇に繋がるとも知らずに…

晴絵「なんだこの手の込んだお笑い番組は」

しかもつまらん。笑えん

これはあれか

罰か

聖職にして保護者にして引率者にして監督の立場でありながら、一人で部屋に居る時にこっそりエッチなビデオ見ようとした私への、罰か

晴絵「なら受け入れざるを得ない」

なんもかも政治のせいにするには、私は些か歳を取りすぎた。有権者には現在の政治に対する責任がある。無責任に文句だけ言える立場にはないのだ

晴絵「…はあ」

でも、溜息くらいは許されるよね?だって、女の子だもん

晴絵「…」

ちなみに、ここは私達阿知賀麻雀部に用意された大部屋。今日はここにみんな泊まる。夜にはお菓子パーティーもあるよ
百合の間の掃除が間に合ったおかげで、本日最後に予約されていた二人組をそっちに泊める事にして(この部屋はお客さんが来るまでに掃除終わってなくても大丈夫なように空けておいたらしい)
人数の多い私達は空いたこの部屋を使わせて戴く事になったという次第だ

松実姉妹の家でもあるこの旅館は非常に良い宿で、こんな機会に泊めて戴けるのは恐縮な気持ち半分、なんていうか役得ラッキー!って感じ半分ってところだ
…大暴れしていたガキンチョ共に説教する羽目にならなきゃ尚良かったんだけどね

で、なんで私がそんな大部屋で一人こうして寛いでいるかというと、なにも説教し過ぎで避けられたとかそういう訳じゃない

教え子達は、また温泉に入りに行った

というのも、あの説教の後、次に見学して良いか確認した上で調理場にお邪魔したのが悪かった

私の説教が効いたのか、静かに調理場に入るあいつら
上機嫌で迎えてくれた調理師の皆様

流石に反省したのか、大人しいあいつら
綺麗どころの登場にテンションの上がる皆様

控えめに作業を見学するあいつら
材料の切れ端とか持ってきて準に餌付けをはじめるみなさん

おいしそうに食べるあいつら(特にシズ)
喜ぶおじさん達

殊勝にもお手伝いを買って出るあいつら(言い出しっぺは、やはりシズ)
ちょっと笑顔が引きつるおっさんども

真剣な目でおっさんども見つめるあいつら
ほだされる馬鹿な男達

…もう知らん
自業自得という言葉を思い浮かべつつ、まあプロの見てる前だし、と調理実習の実地訓練をお任せ。てか丸投げ

時間的に割りとまったりしていたはずの調理場は、鉄火場と化した
宥はともかく、初見であろう穏乃にも火と刃物を使わせなかった判断をしたあの人達は、やっぱりプロフェッショナルだと思う。…見る目あるな~

で。まあなんとかポテトサラダとシーザーサラダとオニオンサラダとラーメンサラダを作り終えさせ(あいつらサラダばっかで疑問に思わなかったんだろうか)、ようやく事態は収束
けどなんか魚臭かったりドレッシング臭かったりで、もっかい風呂入ってこいと私が直々に命じたのだ

…疲れた。見てただけなのに

後は、あいつらが戻ってきたら一緒に夕御飯だ。…いやあ、本当、いいのかなぁこんなまでして貰っちゃって

晴絵「…」

取り敢えず、チャンネルを適当な民法に合わせておく
受信機に挿していた有料カードを抜き取って、財布のポケットの、免許証の裏に押し込んでおく。証拠隠滅完了。これ超大事

晴絵「さって、とー」

あいつら風呂行ってから、まだそんな時間経ってないな~

ゴロンと転がり、リラックスモード

おおう…座布団を枕に畳に転がるこの喜びよ

晴絵「これからどーっすかねぇ~」

決まってる。あいつら帰ってくるまで一眠り。大人は疲れるのだ

今日の分終わり

ゴンが引退したショックでバグりました

磐田サポさん、すみませんでした。彼に相応しい花道を用意してやれなかった
J1でゴンゴール見たかったよ…ってか、このタイミングで引退発表ってマジ勘弁くれよ…
引退試合と知ってたら万難を排して見に行きたかったって人も居ただろうに
本当に申し訳ない

おつー ゴンはもう45歳だからねえ・・・

おつー
最初開くスレ間違えたかと思ったww

ゴン引退か…全盛期にリアルタイムで見てなかった世代だけども目頭が熱くなるわ、日本サッカーの歴史よ

某ストラックアウトで1枚しか取れず 「金払うからよ~」とゴネて2回目を
やったのは凄い記憶に残ってる

カンちゃん1から読み直してるけど
やっぱり腐部屋チャットのてるてる姫とアミバが秀逸すぎてヤバイ

ゴンさんは普通に走ることすらつらそうな状態だったからねえ…
残念だけど引退は仕方が無いよ

規制解除まだかよ
定期的に別なss書かんとモチベ上がらん
いや、このssも書いてて楽しいんだけどさ。作風違うのも書かないとバグるっていうか…

ちょっとやります

キタデー

キタデー

絹恵「ふう…」

チャプン…と、静かな音を立てて、ウチは松実館の温泉の湯に沈む
旅館ならではの広~い風呂は、せまい私らの家の風呂と違ごうて、手足を思う存分に伸ばすことが出来て実に素晴らしい
風情があって、湯船が広くて、しかも今は貸切!

眼鏡は脱衣所に置いてきたんで、湯船のトコに書いてある説明書きが見れへんのはやっちゃったなぁ
こういうとこの文章って、なんか気になるよね

絹恵「ん~」

湯に手を入れて掬ってみる。ゆっくりと指と指の隙間から流れていく透明な液体に、泉質を適当に考察することにする

泉質はちょっと粘り気がある…っていうか、ねっとりしとる?う~ん。なんて言えばいいのか、お湯が重いっていうのかな
体を動かすと、お湯が絡み付いてくるような感覚を思わせる。身体の隅々を温かいお湯が包み込んでくれて、強張っていた身体が普段のストレスとともに、和らぎ、溶けていく
そのままどんどん身体が溶けて、温かいお湯と交じり合う。気持ちいい…気持ちいい…
やがて湯の熱が皮膚や肉を通り抜けて、骨の芯まで染み込んで行ってくれるような…

絹恵「はぁ~…」

もう泉質とかどうでもええわ

絹恵「気持ちええわ~…」

きっと、今のウチは、ものすっごい緩んだ顔しとる

絹恵「ふい~…」

こういうのも…ええなぁ

絹恵「…お姉ちゃん遅いなぁ」

まだ寝とるんやろうか。もう身体洗って髪洗って…だから、かれこれ30分はたったと思うけど

絹恵「やっぱ起こしてきた方が良かったかな?」

けど、あれだけ気持ち良さそうに寝られてたらなぁ

絹恵「…」

絹恵「…」

絹恵「…ま、ええか」

あと30分くらいしても来なかったら、起こしに行こ

絹恵「ふぅ~…」

何度目かのため息。と、同時にお湯の中で肩を軽く撫でてみる。なんだか、いつもよりスベスベになった感じがするなぁ

絹恵「…顔にも掛けてみよ」

手にお湯を溜め、顔にお湯を掛けてみた
あったかい。お湯が流れ落ちた後、その流れでなんとなしに指で目の辺りを押さえてみる。お湯の熱がその辺りの神経をほぐしてくれたのだろうか?ごっつい気持ちええ
普段目酷使しとるからなぁ。ご苦労さん。私の視神経。マッサージマッサージ。もにゅもにゅ

絹恵「…うん。なんだか目まで良くなった気がする。遠くが見やすくなった。ちょっとだけ。0.001分ぐらい」

…それに、顔もやっぱりスベスベになった気が…するよう、な…?

絹恵「…はぁ」

温泉、いいなぁ…

絹恵「…ん?」

湯べりに肩を預け、思う様に足を伸ばしてリラックスしていると、脱衣所の方に気配を感じた

絹恵「お姉ちゃん来たかな?」

…いや、これちゃうな

絹恵「んー…」

複数人おるわ。なんか結構騒がしい?声も若いし、同世代かな
あ、もう来る。脱ぐの早っ。さっき脱衣所来たと思ったら、もう扉の前やん
ま、しゃーない。これで貸切もこれで終わりやね。隅っこ行っとこ

絹恵「さてさて、それじゃ移動を…」

穏乃「いっちばん乗りー!」

ガラッ!!

威勢の良い少女の声と、勢い良く擦り戸の開く音。お嬢ちゃん元気ええな
微笑ましさと、興味本位で、どんな顔か気になってそっちの方を見る

絹恵「…」

…うん。見えへん。視力、欲しいなぁ

穏乃「いえー!」

憧「こらっ!他にお客さん居たらどーすんのよ!」

灼「っていうか、服有った。他のお客さんに迷惑かけちゃ駄目だよ。ほら、そこ。湯船の端っこ」

穏乃「あっ!、す、すみませんー…」

絹恵「あ、いえ…」

…ん?

玄「ほら、おねえちゃん。行くよー」

宥「う、うんうんうん。うう…お風呂は好きだけど、このお湯に入る前の裸の瞬間だけは辛いよぉ~…」

絹恵「…」

…この個性的な声…会話…メンツ…

絹恵「…」

穏乃「と、とりあえず、身体魚臭かったり煙臭いの、とっちゃおか」

憧「…ま、そうだね。魚臭いのヤだしね」

灼「身体洗お…」

宥「く、玄ちゃん…お、おねえちゃん寒くてもう駄目かも…」

玄「お、おねえちゃん、しっかり!かけ湯までもう少しです!頑張って!」

宥「さ、さむ…さむ…寒い…」

絹恵「…相変わらず大変そうやねぇ」

玄「…へ?」

宥「え…」

絹恵「…おおきに。お久しぶりです。阿知賀女子の皆さん」

そうやったそうやった。いやぁ忘れとったわ
ここ松実館は確か、阿知賀女子の松実姉妹の実家やったっけ。お母さんが言っとった
いつか会うかもな~とは思っとったけど、このタイミングで会うとは面白い

とりあえずウチは先挨拶しとくけど、お姉ちゃん、早く起きてちゃんと来てね?

玄「…!貴女は…」

穏乃「ん?」

憧「なになに?どうした?」

灼「え、なに?玄、もしかしてその人知り合い…」

最初に気付いたのは、松実…えーっと、玄ちゃん、やったか。ウチのタメ。阿知賀のドラゴンロードって言われとる、阿知賀のエースや
流石エースだけあって、鋭いわ。他の子がまだよくわかっとらんのかポカンとしとるのに、一人だけ目つきが変わった

玄「貴女は…」

まるで、獲物を狩るような目や。怖い怖い。けど、ウチは今日は泊まりに来ただけやで?殴りこみとかそんなんじゃあらへんから、そうピリピリせんといてーな
そんな感じのことを言おうと、けどちょっとだけ同じ関西の高校のライバルとしての意識も心の中で感じつつ。無難な台詞を返そうとするウチ

絹恵「お?ウチの事覚えてくれとりました?。そうです。ウチは…」

だが

玄「あ、貴女は…!!」

その、ウチの台詞を遮るように

玄「姫松高校の結構おもちな方!!」

絹恵「…」

玄「おもちな方!!!」

絹恵「…」

玄「おも…」

灼「玄うるさい」

玄「おもち…」

…なんやねん。これ

同じ女子高生、同じ麻雀部。ウチらは、すぐに打ち解けた
今は一緒の湯船。みんなでゆったり語り合い

玄「いやぁ。それにしてもお久しぶりですね~」

ニコニコと玄ちゃんが語りかけてくれる
なんか、視線がさっきからチラチラ胸の方に刺さってる気もするんやけど…まあ、女子同士やし危険はなかろ

絹恵「せやねぇ~。なんか、皆さんの顔見てたらまたインハイ思い出すわ」

灼「今日は観光で?」

部長の灼ちゃん。タメで部長って凄いなぁ

絹恵「せやせや。2泊3日の観光でな~」

穏乃「お一人ですか?」

穏乃ちゃん。1年ながらに、あの清水谷竜華や大星淡ら、とんでもないバケモン共とバチバチやりあっとったとんでもなく凄い子

絹恵「ううん。お姉ちゃんも一緒よ?けど、さっき宿に着いて、のんびりしとるうちに二入共気付いたら寝ちゃってなぁ~。先起きたから先来ちゃった」

憧「勝手に置いてったら心配するじゃないの?」

穏乃「あ、また年上にタメ語使った!」

憧「う…し、心配すんじゃないです…か」

絹恵「ん。あはは。タメ語でも別に構わへんのに」

穏乃「いいえ!これは教育の問題ですので」

憧「お前が私の教育を語るなー!」

穏乃「わぷっ!?」

絹恵「あはははは!」

憧ちゃんは…ちょっと口悪い子キャラなんかな?けど、お姉ちゃんとか含めて、大阪のきつめな子らと比べたら全然可愛い可愛い
あ、今穏乃ちゃんに掴みかかった。仲ええな~。末原先輩と漫ちゃんみたい。二人が同級生だったらこんな関係になってそう

宥「ぶくぶく…」

…松実宥さんは、相変わらず寒そうやなぁ。温泉でも口元まで浸かっとるし。この人、夏でもあんな寒そうやったし冬生きていけるのかと心配なんやけど

憧ちゃんから解放された穏乃ちゃん。開口一番ウチに聞いてきた

穏乃「あ、ところで、愛宕先輩!」

絹恵「あ、絹恵でええよ。お姉ちゃんも後で来るし、ややこしくなるから」

穏乃「絹恵先輩!」

絹恵「なーに?穏乃ちゃん」

そこで立ち上がる穏乃ちゃん。…前隠し

穏乃「今日はこの後どこか観光に行かれるんですか!?」

あ。憧ちゃんに無理やり座らされた

絹恵「せやねぇ~。お姉ちゃんが起きてくる時間にもよるけど、二人お風呂上がったら、その後適当にこの辺散策しよか?って」

穏乃「おお、なんだか大人っぽい!」

…そうかな

灼「まあ、もう今から遠出は無理だもんね」

玄「むっ。確かに、もう4時近いのです」

玄ちゃんの言葉に、遠くに霞む掛け時計を見やる。…アカン。やっぱ見えへん

絹恵「むむむ…」

宥「絹恵ちゃん、メガネ掛けてたもんねぇ。私もあまり良くないから、あそこの時計よく見えないんだよ~」

ううう…目の悪い者の苦しみは、目の悪い者にわからんですもんねぇ

憧「ってか、近場で散策して面白いもんとかあったっけ」

穏乃「何言ってんのさ憧。色々あるじゃん~」

憧「…そーだっけ?」

穏乃「あったりまえじゃん!」

憧「うむむむ…」

絹恵「…あ、そうや。せやったら聞いてもええ?この辺でオススメの散策スポット。適当に歩くより、折角なら面白いもん見たいし~」

穏乃「まっかせて下さい!」

玄「お任せあれ!!」

おお、頼もしい!!

憧「…ねえ、大丈夫だと思う?」

灼「ん?ん…ん~…」

宥「き、きっと大丈夫だよ。二人ももう高校生だし…」

憧「でっかいアリの巣とか、変な形の石ころとかの場所教えないでしょーね」

灼「間違った道筋教えたり、大阪人にたこ焼きの屋台の場所紹介したり…」

宥「だ、大丈夫だよ。多分…」

…た、頼もし…い?

玄「むっ!そこ!なんだかヒソヒソと失礼なことを言っていませんか!?」

穏乃「そ、そうだよ!私達だって地元人の端くれ、この辺で面白かっこいいスポットくらいちゃんと抑えてますー!」

灼「へえ」

憧「ほう」

宥「ん…」

玄穏乃「「全然信用されてない!?」」

漫才みたいなやり取りの後、ガビーーン!っていう擬音が嵌りそうな顔でショックを受ける二人。玄ちゃんなんか、泣きそうになっとるし
うん、なんだか阿知賀の人間相関図が見えてきたで?

憧「へー!?そー!?じゃあどっか面白そうなスポット紹介してみなさいよ!穏乃のセンスとか疑わしいもんだけどねー!」

穏乃「い、言ったなー!?見返してやる!」

憧「出来るもんならやってみろ!」

えっと…ウチらへオススメの散策スポットの紹介…やったよね?趣旨

穏乃「絹恵先輩!!」

急に真剣な表情でウチの目を見てくる穏乃ちゃん

絹恵「は、はい!?」

思わず敬語を使ってしまう。というのも、彼女の目にまるで炎のような情熱が灯るのを見たから
悔しいけど、彼女のこういう気迫というか、一途さというか、熱血っぷりにはちょっと勝てる気がせえへんなぁ

…と、真剣だった穏乃ちゃんの顔がふっと緩み、急に表情を変えた

穏乃「まずこの辺のお土産には非常においしいおいし~い、オススメの和菓子屋がありましてですね…」

なんでかゲス顔に

絹恵「え?ホント?ウチ和菓子好き…」

でも、まあええわ。和菓子好きー…と、言おうとしたところでー

憧「初っ端お土産かい!!」

絹恵「!!?」

憧「しかも自分ちのステマかい!!」

憧「むしろステマですらなく普通に宣伝かい!!」

憧「ってか、それはどっちだ!?ボケか!?それともマジなのかぁあ」

憧「わかりにくいんじゃああああああああああああああああああああ!!!」

絹恵「…」

憧「はぁ…はぁ…はぁ…」

怒涛のツッコミ入りましたー

穏乃「…半分本気」

憧「たち悪いわボケエエエエエエエエエエエ!!!」

穏乃「なんだよー。そしたら絹恵先輩。えっとですね、ここからちょっと行ったところに吉水神社っていうそこそこ立派な神社があるから…」

憧「ウチ紹介すな!!!」

絹恵「ええ!?」

憧ちゃんち神社なん!?

灼「ボーリングがしたくなったら、鷺森レーンよろしく…」

絹恵「えええ!?」

ここぞとばかりに!?

玄「松実館へようこそ!!」

絹恵「えええええ!?」

宥「玄ちゃん。そこで対抗しなくていいから…」

なんやこのフリーダム!?
くっ…こ、ここはやはり、大阪人としてウチも何か返さんとアカンような…

絹恵「え、ええと…」

う…け、けどアカン。とっさに思い浮かばん。どないする?どないしたらええ!?たっけてお姉ちゃん!!

憧「ほら!絹恵さん困っちゃったじゃん!」

ちゃうねん!いや、困ってるのは確かやけど!

絹恵「あ、えっと…えっとな?えーっと…」

穏乃「あ、す、すみません。そんなつもりじゃなくて…」

謝らんで!なんか居たたまれへん!大阪モンとして!

絹恵「あううううう…」

灼「ふざけすぎた。反省」

反省もせんといて!

玄「え?え?何がどうしたのです!?私達何か変なこと言いましたっけ」

もうやめて!これ以上ウチを苦しめないで!

宥「玄ちゃん…」

絹恵「…」

絹恵「あ…」

穏乃「ん?」

絹恵「あー…」

絹恵「…」

絹恵「大阪来たら奢ったる!!」

憧「へ?」

穏乃「え!?いいんですか!?」

灼「何を突然」

玄「ほえ?」

宥「…」

絹恵「…」



面白き ボケ返そうと 滑りより


       沈みゆくウチ 羽根をもがれた 鳥のよう


                               愛宕 絹恵




























廊下でフラフラしとる絹に会った

洋榎「お?絹ぅ~」

絹恵「あ…お姉ちゃん。起きたんやね」

洋榎「おー。こっから風呂行くとこやねん。なんやお前はもう風呂上がったんか」

絹恵「はは…うん。まあ」

煮え切らん態度

洋榎「そかそか。そんなら、ウチは風呂入ってくるで」

絹恵「うん…」

身体は火照ってポカポカしとるし、湯気まで立っとるのに、顔の表情はアンニュイ

洋榎「?なんか元気ないなぁ」

絹恵「大丈夫やで。大丈夫…うん。ウチ、何も悪うない…うん…はは…」

なんか変なの~

洋榎「?まあ、ええわ。それじゃ、ちょっとひとっ風呂浴びて汗流してくるから、上がったら一緒にこの辺流そうか」

絹恵「ん…りょーかい」

洋榎「すぐ戻るから、絹は部屋でお茶でも飲んで、テレビでも見てて待っててな~」

絹恵「ん…そーする…そーさせて…全てを忘れさせて…」

洋榎「…」

…なんかほんま、フラフラしよりおうぞアイツ。無事部屋帰れるよな?

洋榎「なんや?」

なんか、自己嫌悪~な顔しとったけど

洋榎「…ま、ええか」

そんな深刻な感じじゃないし。どーせギャグで滑ったとかそんなくだらん理由やろ。ほっといたら回復するわ。行こ

洋榎「ふっろ~ふっろ~おっふっろ~♪」

あー。それにしても

洋榎「ふ~ろ~ふ~ろ~ふろふろふっろ~♪」

温泉

洋榎「おんせんせんせんおんせんせ~ん♪」

楽しみやなぁ~

今日の分終わり
進まねー

規制されてる時に限って、他の小ネタばっかアホみたいに浮かんできて集中できん
hayabusa鯖以外には書き込めるのに、なんでや!一体どうすればええんや!

乙ー
禁断の課金…

おつ!
アコチャーがイカ臭いとか言わなくてホッとした(小並感)

書き溜めればいいんじゃねーの?(適当)

ネキは絹ちゃんが滑ったのもお見通しなんやな…

温泉にて

洋榎「はぁ~」

湯船に浸かるウチ

洋榎「あ゙あ゙~…」

しかも貸切

洋榎「生き返るわ~…」

広くて気持よくて、あったかい

洋榎「え~…なになに?当温泉はアルカリ性で~。冷え性頭痛腰痛リウマチ他なんかいろいろ効くんか~」

湯船の前に置いとる説明書きを適当に読む
こういうとこの文章って、なんか気になんねんな

洋榎「ま、どーでもええんやけどね~。あははははは」

洋榎「…」

洋榎「…ふぃ~」

…絹居ないと、ちょっと寂しいな

洋榎「…って、アホか。別に風呂くらいいっつも一人で入っとるわ」

洋榎「ま、まあ温泉は普通の風呂とは違うけど…」

洋榎「…それに」

洋榎「…」

…絹と風呂入るのは、ちょっと、な

抵抗有るわ

洋榎「ぶくぶくぶく…」

なんとくなく、湯船の中に潜ってみる。顔にお湯が纏わりついてくる
当然のことではあるんやけど、息ができへん
目をつぶっとるから真っ暗や。耳の中には水が入ってきて、奥でゴボゴボゴボ…

洋榎「ぶくぶくぶく…」

少しずつ、少しずつ

ゆっくりと、肺の中に溜まっていた空気を外に出していく
口から。鼻から

洋榎「ぶくぶくぶく…」

息が、苦しくなってくる

洋榎「ぶくぶく…」

肺の中の空気が減ってきて

洋榎「ぶく…」

もうこれ以上は、逆さになっても出ーへんってくらい酸素が抜けて

洋榎「…」

苦しくて堪らん

洋榎「…」

苦しくて堪らん

洋榎「…」

苦しくて…堪らんよ……

洋榎「…ぷはっ!」

遂に我慢の限界が来て、勢い良く水面(湯面?)に顔を出すウチ

洋榎「ぜっ!…ぜっ!…ぜはっ!ぜっ!」

荒い息を吐き、必死に酸素を求める

洋榎「ひゅっ……んぐっ!?」

せやけど、忘れとった。ここは温泉
湧き立つ湯気が求めていた気体と別なもんを肺に届けて来おって、逆にウチは激しく咽てしまう

洋榎「けっほ!えほっ!けっぽけっぽ…」

フラフラと湯船の端っこへ行き、まともな酸素にようやくありついた

洋榎「ひ…ふー…すぅ~…」

やっとこさ落ち着いて、最初にしたのは時計の確認。

洋榎「…どやった、かな。結構自信あんねんけど」

脱衣所から温泉の入り口の真上に掛けてある、でっかい掛け時計を見てみると

洋榎「おおー」

よっしゃ!!

洋榎「新記録達成!息止め、1分19秒ー!!いえ~~~~!!」

どんどんぱふぱふ~

洋榎「やったで!」

ガッツポーズなんかもしてみちゃったり

飛び出てからセリフまでの間で5秒くらいありそう

洋榎「いや~。なんや、今日は行けそうな気がしたんよな~」

一人呟きながら立ち上がる。絹恵が待っとるし、この辺で上がろうと思ったからや

洋榎「さっきまでぐっすり寝とったし?温泉効果でリラックスもしとった。ついでに温泉で一人ってシチュも滅多ないもんやで?」

タオルを適当に頭にぺったん
そのままのっしのっしと、熊が威嚇するように出口へ向かうウチ

洋榎「息止めるの苦しいし、最近は家でも練習しとらんかったけどなんとなーくでもやってみるもんやね。まさかここに来て大幅な記録の更新とは。ふはははは」

尚も独り言は続く
なんか急に恥ずかしくなってきて、誤魔化すように言っとるのが自分でもわかる
一人だってのにな。むしろ一人なのに何アホやっとんねん

洋榎「ま、まあ、折角の旅行やし?こうやって普段あんまやらんような事も。あ、そういえば絹恵も居ったら証人になってくれたのに。いやぁ~勿体無いことしたわ~」

誰も居ないとこでこんなボケ、むしろ滑稽やん!
ツッコミおらんとアホやん!寂しい女みたいやん!ないないノーウェイノーウェイ!
ああー!インハイん時の戒能プロのあの台詞、語感良すぎて洗脳されたやん!!

洋榎「これじゃ公式記録にならんやん。うわ、勿体無いことした参考記録にしかならんなら貴重な時間と肺の負担が・・って、絹恵居らんと何考えててもツッコミも入らへーん!」

ペシッ
宙に一人ボケツッコミ。必殺。空中洋榎ちゃんチョップや

洋榎「…うあ」

駄目や。恥ずい。これも外した。完全にから回っとる

洋榎「うう~…アカン。はずい。…アカンアカン。アカンこれ」

さっきの絹じゃあらへんけどな。なんか、風呂に来てからずーっと滑っとる
いや、正確には、松実館に入ってから…ですらなくて、アイツに会うてから、やなぁ。多分

洋榎「…」

…ちぇっ





洋榎「…まあええわ。切り替えてこ」





口から出た声は、思いの外機嫌の悪そうな声やった


…ははははは


アカンやん


全然切り替わっとらへんやん


こんな洋榎主将、みんなにはよう見せられん


漫ちゃんあたりだったらどえらいビビるでぇ?ククク…こんなダーク格好いいウチ見せたらなー


絹には心配かけそ。切り替え切り替え


ゆーこあたりは、ウチの気持ち察してきそうで怖いな。あいつよーわからん子やからなー


恭子は、どーかなー。ビビりつつも、説教してきそ。くわばらくわばら


…はー


ばーかばーか


洋榎「『ちゃちゃのん』のアホー。ざこー。いいとこなしー」

「悪かったね」

洋榎「!!?」

聞き覚えのある、ついさっき聞いたばっかの腹立たしい声。首の千切れそうな勢いで振り返る
声のした方向を見れば、そこには今まで身体を洗っとたんか(気付かんかった!)ボディーソープの泡で半分身覆っとる女

人違いを期待して目を凝らしても、均整の取れた、きめ細やかで白い肌。細い腰。長い手足が、同じような女がそうそう何人もいて堪るか、とウチに本人である事を証明してくれとる
ふわりとウエーブのかかった、さわり心地がやたらに良さそうな髪の毛が乗った顔。同年代なら誰もが憧れる、可愛らしい顔。今はちょっと嫌そうな、それでいて呆れたような顔

ぶっちゃけ、しかめっ面

洋榎「あ…う…」

いちご「…悪かったね。アホで」

洋榎「あ…あう…」

ポトリ
『ちゃちゃのん』の機嫌の悪そうな表情に、思わず一歩後ずさる。その拍子に、頭の上に乗っけていたタオルが、背中の方へ落ちていった

いちご「…悪かったのう」

洋榎「え…えと…」

『ちゃちゃのん』の顔が、目が、険しさを増す。愛らしくも、端整な顔故に、迫力がある

いちご「…悪かったのう?ええ?雑魚で」

洋榎「あ…」

怖いわ。広島弁

いちご「なあ。愛宕洋榎」

洋榎「あ、あの…」

いちご「おどりゃそないな事わしに対して思っとったんか」

洋榎「いや、その…」

あ、これアカン

いちご「愛宕洋榎」

洋榎「ひゃい!」

怖いの嫌い。意外とチキンハートやねん。ウチ

いちご「ちょっと」

洋榎「 」

いちご「こっち来て」

洋榎「 」

いちご「お話しよか」

…どないしよ

今日の分終わりー
1話目終わり見えてきたかな

乙乙
洋榎ちゃんチキンカワイイ

こんなのんびりマイペースでやっても、あと7回以内には1話終わりそう
次、2話目そろそろ何するか考えはじめまーす
ぶっちゃけ1話は序章的な立ち位置ですので、2話以降は玄灼レジェンド分も増えてくと思います

今んトコ考えてんのは
1.まこ←Bブロック2回戦次鋒組(ちょっと友達)
2.憧→穏乃(ちょっと子供)
3.代行×善野監督←末原ちゃん(ちょっと大人)

こんな感じで始まるどれか。全体的におもち分が足りない

なんか他にこんなのどう?とか、1~3のうちどれに興味ある!とか、あったらご意見下さい

以上、ゆるやかにアンケートでした

1が珍しいから……2だな

SSではキンクリ以外にほとんど出番のないワカメさんが見たい

おつー
1が見たいかな、タイムリーなのは3なんだろうけど

個人的には一番キテる代行×善野監督でオネシャス

おつー
3が見たいけど善野監督のキャラが分からんし1かな

空気を読まずにMILEMANが読みたいです
その中なら…2かなあ


3が気になる…

2が見たい
もしくは3

3やな

(ちょっと友達)ってどんな感じだろう…
友達の延長みたいな展開なら是非1が見たいんだけど、百合成分多めになりそうなら、3に一票かな。

1かな、まこさんあんまり出番なくて寂しい

2は他で見ることも多いからなあ
1か3…迷うけど1でどうかいの

設定が固まる前に善野監督の話が読みたいので3でオナシャス!

乙ー
あんな儚そうな美人が代行とイチャイチャするのが想像出来ないから3で

まこさんが見たい、1で

折角なら3が見たい

ROM専こんなに居たのか……
どういうキャラ付けにするのか期待を込めて3

1

塞さんと初美ちゃんのコンボはどうですかね?

まこさんのエロシーンオナシャス!

3に興味津津だが、まこが出ると聞いて1

3かなー
そういえばレジェンドはプロの誰かにNTR可能性はあるんですかね?(ゲス顔)

フララとしてる代行が実は裏で一生懸命善野監督を支えてた、みたいなのオナシャス!
でもまこのよエイちゃんはみんなキャラがいいから期待できるのも事実、なによりヒロインしてる巴さんが見たい

2は本編追ってれば自然に見れるやろ(無茶振り)

ファッ!?
なんやこのレス数(驚愕)

はじめます

3で大人百合をが見たいです(真顔)

さて

ドス効いた広島弁に気圧されて、なんや大人しく言うとおりにすごすごと『ちゃちゃのん』の言う事聞いてあいつんとこに行ったウチ
身体に付いた泡々をシャワーで落としながらウチを待つ『ちゃちゃのん』

…絹~。堪忍な。姉ちゃんちと戻んの遅れそ

洋榎「…」

いちご「…」

足取りが重い。それでもなんとか、ぺったらぺったら足を動かして、10mもない『ちゃちゃのん』のトコまで、たっぷり1分はかけたか

洋榎「…」

いちご「…」

こいつも喋らんし

洋榎「あー…」

いちご「…」

うう…空気重い

洋榎「そのー…」

いちご「…前くらい隠さんか阿呆」

洋榎「…」

いちご「…」

おおう。言われて気付く
せやったわ。やりたい放題してた上に頭の上に乗っけたタオルはどっか落っこちとるし、今うち全裸やん

洋榎「なっ!み、見んなや助平!」

いちご「はー…」

洋榎「ぐっ…!」

慌てて前隠す。右手で股間。左腕でおっぱいも

いちご「…」

洋榎「…」

…また沈黙とか。せめてなんかもうちょっと、こう、なぁ?反応をばしてくれんと敵わんやん

洋榎「…え、っと、な」

いちご「ああもうっ!」

洋榎「おおう…!?」

こっちに向き合う用に立ち上がり、しっかりと目を見てくる『ちゃちゃのん』。な、なんや!?や、ややややややるんかワレェ!?(震え声)
あと、いきなり大きい声出さんで下さい。びっくりするんで(小声)

洋榎「な、なななな、なんよ!?」

あ、ちょい裏返った

いちご「愛宕洋榎!」

洋榎「お、おう!」

いちご「…」

洋榎「…」

もう沈黙はいやああああああああ!!

いちご「…サウナ」

洋榎「…へ?」

え?今、なんか言った?

いちご「…サウナ」

洋榎「えっとぉ…」

サウ…え?

いちご「…そっち、サウナあったから」

洋榎「…」

いちご「そっちで、ちょっと話、せん?」

洋榎「…」

いちご「…」

洋榎「…ええよ」

1やで

そんでもってサウナん中
…純和風旅館なんで、サウナあるとは思わなかったわ。これってフィンランド文化やん
なんてどーでも良いツッコミしようと思ったけど、なんだかそんな空気でも無いし

…ってか、『ちゃちゃのん』とサシでサウナとか。重っ苦しい空気になりそうで本当は嫌。だけど、拒否したらなんか逃げたみたいだし…

それだけは絶対に嫌!!!!

いちご「…何やっとん?」

洋榎「え?あ、いやいや。なんでも」

いちご「そ」

洋榎「ん」

なんとなく端っこ座った私と、そこからちょっと距離開けて横に座っとる『ちゃちゃのん』
微妙な距離感と微妙なぎこちなさと微妙な緊張感を持って会話中。良かった。喧嘩とかになんなくて

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「…ふー」

気持ち良さそうに深呼吸する『ちゃちゃのん』
相変わらず…いや、こういう場だからこそ一層。美人さが際立つ
やや薄暗いサウナの明かりの中、ストーブに照らされてじっとりと汗ばんだ肌が赤く色付く。エロい

洋榎「…サウナ、好きなん?」

沈黙に耐えかね、何となく聞く

いちご「…まあ。そこそこ。汗かくから美容にもええしな」

洋榎「ふ~ん」

メモメモ。心のノートに書き留めておく。使うかはしらん
大体、絹恵ならともかくウチなんかが今更そんな美容だなんだってやっても、焼け石に水やし…

いちご「…ここのサウナは結構ええわ」

洋榎「…そか」

いちご「ん。よーけ汗かける」

事実。まだ入って1分もしとらんのに、二人共汗びっちょ。美容はどうでもいいけど、この悪いものが身体から出てってる感じは凄くいい
あ、ちなみに専用のバスタオル脱衣所から持って来ました。いくらサウナとはいえ、全裸は流石に恥ずかしいわ

いちご「すー…」

また深呼吸

洋榎「…すー…」

何となく真似して、ウチもしんこきゅ…

いちご「…で、さっきのはアンタの本音だと思って構わんのじゃね?」

洋榎「っ!!?げほっ!?」

不意打ちで来た!?

洋榎「えふっ!?けっほ!けっほ!」

アカン。唾変なトコ入った…

いちご「ああもー…何しとん」

洋榎「こっふけっほ…」

トントントン。近寄ってきて背中を優しく叩いてくる『ちゃちゃのん』
…なんかすんません

洋榎「けっほこほ…ん。んーんー」

いちご「…はあ」

洋榎「…ふう」

やっと咳が収まった、と同時にこっからが本番か。奴さんも本題に移って来たしな
まあ、本人に聞かせからぶっ飛ばされても文句言えんような事言ったのは確かや

自分で倒した相手に「雑魚」は、なぁ…
別に本音で思ってた訳じゃないけど、口にしちゃアカンよね

いちご「ウチの事、『雑魚』やったっけ」

洋榎「うい…あ、いや、それは…」

本心じゃありません
そんな一言を告げようとする

けど

洋榎「あ、あの…」

つまらん感情が、その言葉を飲み込んだ

いちご「…」

洋榎「あ。あう…」

ここで反論しなかったら、それはどう思っとってもそう言ってるのと同じや。…ひっどい女

いちご「…」

さっきのキレ気味な『ちゃちゃのん』の顔を思い出す。反撃くるだろうなーと、ちょっと身構える。広島弁で畳み掛けられたら怖いやろなぁ~…
…あ、痛いのは止めてね。ホント止めてね。止めて下さいね?覚悟は一応しとくけど、泣いたら簡単には泣き止まんからね?(脅迫)

暫くオドオドびくびくしながら『ちゃちゃのん』の反応を待っとると…あれ?

いちご「…ふふ」

なんで苦笑いしとんの?

いちご「…だよねぇ」

…はい?

いちご「『ちゃちゃのん』、言われとる程麻雀上手くないよねぇ」

えー?クスクス笑い始めたでこの子

いちご「アンタには完敗したし」

洋榎「…」

次に自嘲気味に笑って

いちご「個人戦でも思ったより振るわんかったし」

洋榎「…」

なんか卑屈っぽく笑って

いちご「宮永照とか、清水谷竜華とか。アンタとか」

洋榎「…」

寂しそうな顔で笑って、最後に…

いちご「バケモンみたいな連中と張り合ってくのは…これ以上は無理じゃろうなぁ」

洋榎「…なんの、話しとるん?」

いちご「…さあ」

掠れた声が出た

洋榎「なあ」

いちご「…」

思わず立ち上がっている自分に気付く

洋榎「なあ、アンタ?」

いちご「…」

責めるような口調で話していることを自覚する

洋榎「なあ、『ちゃちゃのん』!」

いちご「…」

心臓がバクバク鳴って、サウナん中やのに身体の芯が寒くなって…『ちゃちゃのん』の肩を掴んで、揺さぶるようにして

いちご「揺らさんでよ…」

洋榎「アンタな、そ、その言い草…」

だって

洋榎「まるで…」

まるで

洋榎「もう麻雀やめるみたいな…!!」

泣きそうな顔で笑って

いちご「…とりあえず落ち着きんしゃい」

洋榎「これが落ち着いてられる…」

いちご「うるさいとオチオチ話もできん」

洋榎「…」

いちご「それにサウナん中で暴れたら、倒れるよ」

洋榎「…」

いちご「そ、そ。座って、な」

洋榎「…」

覇気のない顔で薄く笑って、座れと椅子に指を指してくる。仕方ないので座ってやる事にした

いちご「…はぁ~」

洋榎「…どういうつもりやねん」

いちご「…ん」

洋榎「…」

また深呼吸…って、今気付いたわ。これただのため息やん
ビクビクが逆にイライラに変わってきた頃、『ちゃちゃのん』、ポツポツと語り出してきた

いちご「…薄々気付いとったんじゃよね」

洋榎「は?」

訳が分からんので聞き返す。返って来たのは、また鼻につく答え

いちご「ウチな、アイドルみたいなもんやん」

洋榎「…あ、なんかイラッとした」

素直に口に出す

いちご「はは…ま、なんつうか…女子高生で、なんでかマスコミに人気出て、麻雀でそこそこ活躍して」

洋榎「…」

いちご「テレビとかでもインタビュー受けたり、インハイの番宣でテレビ出たり」

洋榎「…ええやん」

これは本音や。インハイはお祭りみたいなもんやし
盛り上がるためには一人でもスターは居ると良い。注目される選手が多く、またメディアなどで宣伝してくれれば、より一層盛り上がって大会は派手になる
普段麻雀なんか関心ないって層を引っ張ってくんのに、アイドル雀士なんてのも居てくれていい。スターはスター
今年は注目の大スター宮永照が外面ええ癖に積極的には番宣してくんなかったお陰で、実力派選手への注目はほとんど一点集中やったしなぁ

…ま、なにはともあれ。お祭り盛り上げるためのスターの一角に大抜擢されたんは、名誉なことやん?

いちご「で、気付いたら全国区で人気者になってて、蓋開けたらコテンパン」

洋榎「…」

いちご「惨めじゃったよ~?それはもう、消えてなくなりたいくらい」

洋榎「…そーいうもん?」

いちご「ん。そーいうもん」

洋榎「…」

いちご「潮時かなーって」

洋榎「潮時?」

いちご「高校3年間。頑張ってな」

洋榎「…おう」

いちご「アイドルみたいな扱いも受けて、芸能人とも御知り合いになれたり」

洋榎「心底羨ましい」

いちご「ふふ…あんまええもんじゃなかったわい」

洋榎「…」

いちご「あと、一応な。プロのお誘いも来てたりするんじゃけど」

洋榎「おお!?ならアンタもプロに…」

いちご「…やっぱ、断るわい」

洋榎「はあ!?」

いちご「さっきも言ったじゃろ?…あんたらと渡り合ってける自信、無いけん」

洋榎「…」

いちご「アンタがさっき、言ってくれたやろ?うち、雑魚じゃけん」

洋榎「ち、ちがっ!」

いちご「ふー…あっつ。そろそろ出よっか…」

洋榎「ちょ、ちょっと!待って!『ちゃちゃのん』!」

いちご「…」

洋榎「あ、あれ、本心じゃあらへんし!」

いちご「けど、ウチの事気付いとらんかったよね?それで出るって言ったら」

洋榎「き、気付いてなかったけど…それでも!」

いちご「…」

ちゃちゃのん・・・

「プロ(ダクション)」?

いちご「…じゃあ、なんであんな事言ったんよ」

洋榎「う…!」

いちご「独り言みたいなもんだったんじゃろ?それでアホとか雑魚とか。どういうつもりで言ったん?」

洋榎「そ、それ…は…」

いちご「…」

洋榎「え、ええ…と…」

いちご「…」

洋榎「その…」

いちご「…ま、ええけどね」

洋榎「…!ほ、本当やで!?」

いちご「そ」

洋榎「う、嘘じゃあらへん!ほんまやって!」

いちご「…別にええよ。そういう事にしといたるけん」

洋榎「だーからー…」

いちご「それに、な」

洋榎「…」

いちご「…それに、な。言ったやろ。薄々気付いとたって」

洋榎「…」

いちご「ウチじゃ、プロで通用してかんけん。いつかは諦めとく必要あったんよ」

洋榎「…」



そこから先は…まるで告白やった


告白言うても、「先輩、好きです!」のアレや無くって、教会とかでするような、アレ。えーっと…懺悔


自分の弱さを嘆く、慟哭


まるで、麻雀へ対する想いを告白するような、生の感情をぶちまけられて


新米神父様のウチは、どうしていいのかわからずにそのまま立ち尽くすだけやった

いちご「けど、プロ断るのも未練でなぁ。麻雀、好きじゃったけん。プロなれるなら…なれるんならって」

いちご「アイドル扱いとか。実は目立つのあんま好きじゃなかったんやけどな?」

いちご「好きじゃなかったけど…けど、プロになった時、一芸持ってたらとか、色々コネ作れるかもとか、そんな夢見るみたいな事思っとって」

いちご「流石にいきなり一線級の活躍できる実力あるって思えるほど自惚れてはおらんかったけん。プロになるために必要な努力はなんでもやってやろうって思ってて」

いちご「だから番宣とかお誘いあったら絶対行ったし、アイドル活動みたいのも散々やった。ただのアイドル選手でも、客呼べるならチームは雇ってくれるし」

いちご「その内に力付けていつか一線級の選手になってやる。とか、な」

いちご「けど、段々全国の壁が厚く見えてきて」

いちご「年々自分の成長の遅さに怯え初めて」

いちご「自分の力がどこまで通用するか不安になってきて」

いちご「このままプロに行っても、どうしようもないんじゃなか?って」

いちご「『所詮アイドル』で終わって、『麻雀舐めてた小娘』扱いされて」

いちご「そこで終わってしまうんじゃなかとか、って」

いちご「怖くなって」

いちご「…それで、インハイ行って」

いちご「アンタにやられて」

いちご「…思ったんよ」

いちご「ああ、ウチ、やっぱアカンわ。って」

いちご「…すまんなぁ。なんか、ウチが麻雀から逃げる口実を、アンタにしたみたいで」

いちご「むしろ、清老頭なんて御大技で葬ってくれたアンタには感謝しとるわい」

いちご「これで、踏ん切りが付く」

いちご「プロ雀士になる夢とも、お別れじゃ」

いちご「それで自分慰める為の傷心旅行やったんじゃけどねぇ。ふふ。そこでアンタらに会うとか、ほんま、タイミング良い言うか、悪い言うか、なんて言うか…」

いちご「…悪かったのう。さっきは脅かして。『いちご』の愚痴は、以上じゃ」

…ふふ

吐き出したなぁ

吐き出した
腹の底から、吐き出した

抱えてたもん、全部

臆病もんな『いちご』の抱えとったもん、ぜーんぶ

アイドル雀士の『ちゃちゃのん』には、似合わない、カッコ悪い腹の中

ぜんぶ

まさか、愛宕洋榎に吐き出せるとはね。なんつーか、ちょっと気持ち良かったわい

この人も、気持ち良い人じゃったから

…嫌われてたのはちょっとショックやったけど

いちご「…ん?」

洋榎「…」

いちご「…愛宕姉?」

洋榎「…」

いちご「…おーい」

洋榎「…」

いちご「…おおう」

アカン。伸びとる

いちご「…は~あ」

よっこいせ

いちご「すまんかったね。愚痴、長かったのう」

のぼせちゃったか

せめてもの侘びじゃ。涼しいトコ連れてったる






























風が涼しい


…あれ?


ウチ、今まで何を…


ああ、サウナで『ちゃちゃのん』と話してて、フラッときて…


のぼせちゃったか~


…まあ、ええわ


この風、扇風機かな


涼しいわ~


もうちょっと横なってよ


…ん。声が聞こえる

こういう話に弱い

俺も弱い

絹恵「すみません。うちの姉がご迷惑をお掛けしたようで…」

お、絹~

いちご「いやいや。ええよ。無理に付きあわせた『ちゃちゃのん』が悪かったけん」

絹恵「いえ。姉がご心配おかけした上、脱衣所まで連れてきて下さって。ほんま、おおきに…」

いちご「ええってええって。それより、後で散歩するんじゃったっけ?どこか面白そうなとこ見つけたら教えてな」

絹恵「あ…はい…」

いちご「はは。姉妹仲良くてええのう」

絹恵「ありがとうございます…」

なんで憑き物落ちたような顔しとるんやあいつは

いちご「さ。それじゃあ、お姉さん気付かれよったようやし、『ちゃちゃのん』もう部屋に戻るけえ」

絹恵「あ、はい…あの、ほんまに、ありがとうございました」

いちご「んー。そんじゃね。愛宕姉妹ー」

…行ってもうた

絹恵「…はあ」

洋榎「おは」

絹恵「…おは」

洋榎「涼しいな~。『ちゃちゃのん』がここまで運んできてくれたん?」

絹恵「そーよ。後でお礼言いに行ってね?」

洋榎「んー」

絹恵「…大丈夫?」

洋榎「水飲みたい」

絹恵「はい。ゆっくりね」

洋榎「お、気が利くなー。流石我が妹」

絹恵「…『ちゃちゃのん』が買うてきてくれてん」

洋榎「…おおう」

洋榎「くぴくぴ…」

絹恵「ああ、そんな勿体無い。口から溢れとるよ」

参ったなー

なんか、エラい借り作っとるで?しかし

くっそー。あいつだけには借り作りとう無かったのに。ほんま、アイツだけは…

絹恵「…」

…ん?なんやねん絹恵。なんでジト目でウチの事睨んでんの?

絹恵「…お姉ちゃん」

洋榎「はい」

怖いので敬語

絹恵「また佐々野さんの事気に食わんとか思っとったでしょ」

洋榎「…いや?」

…うげ。なんで気付かれたんや

絹恵「また機嫌悪そうな顔した」

洋榎「…おう」

そういうことですか

絹恵「何があったん?お姉ちゃん」

洋榎「…」

絹恵「そりゃ実は意外とビビリなのは知っとるけど。普段オットコ前な洋榎主将で通っとるお姉ちゃんが、なんで佐々野さんにだけあんな嫌な奴なん?」

洋榎「…」

絹恵「聞いたよ?何か言われませんでしたかって。アホー言われたってね」

洋榎「…」

絹恵「なんつーか、子供っぽいっつーか…相手が相手なんやから、あんま失礼な事したら流石にウチも怒…」

洋榎「そんだけか?」

絹恵「…へ?」

洋榎「他に何か言っとらんかったか?」

絹恵「いや…別に。…あ、ヒョロいんだから無理して気分悪くなるまでサウナ付き合わんでも良かったんにって…」

洋榎「…!」

絹恵「…お姉ちゃん?」

洋榎「…いや。なんでも無い」

絹恵「そ?」

洋榎「…」

絹恵「…お姉ちゃん?」

洋榎「絹」

絹恵「何?」

洋榎「…部屋、一旦戻ろか」



…ちぇっ

今日の分終わりー

そして…

規制解除来たぞうらーーーーーー!!!
昨日のサッカー実況したかった(震え声)

今後はvipでいきなりなんかやるかもね
魔法少女と腐部屋番外編は、今月中にやりたい

後悔せんように次規制される前にはよやろうな
おつ

おつおつ
楽しみだな

おつ!
やっぱり>>1の書くこーいう雰囲気好きだわ。
うまく言語化できねーけど。

おつー
2話目はまだ決めてないのかな

ようやくか
VIPで待ってる

今VIPのハギヨシSSってもしかして?








絹恵「なんやこれえええええええええええええええええええええええ!!!!!」






イッチが来たデー

どかーーーーーーーーーーーーーーーん

絹が爆発した

原因は、テレビ

えーっとな

あのあとな

部屋戻ってな

絹がのぼせたウチ気遣ってくれて、外出る前にちょっと休もうって話になってな

で、それまでテレビでも見てよかって話になってな

絹がテレビ点けてな

点けてな

…点けて、な

『あんあんあんあん』

『あんあんあんあん』

そこに映っとったのは、見事にAV

二人の女優さんがやる気の無い声であんあん喘いどった

洋榎「あ」

やっばいわー。すっかり忘れとった

絹恵「な…ななななな…なんでこんな番組やっとんのぉ!?」

洋榎「あー…」

リモコン放り出して取り乱し、サッカーで培ったその強靭な脚力で部屋の隅っこまで一瞬ですっ飛んでく絹
自衛のためなのか、隅っこにおいてあった旅行鞄とかを目の前に置いてバリケード作り始めとる

絹恵「なう、な、ななう、あう…」

アカン。日本語喋れとらん

洋榎「ええっと…」

絹恵「いやーーーーー!不潔やーーーーーーーーー!!!」

洋榎「…」

『あんあんあん』

洋榎「…」チラッ

『あっ…やっ…い、いくーぅううううううう!!』

洋榎「…」ゴクリ

絹恵「お姉ちゃん早く消してそれーーーーー!!」

ゆでダコみたく顔真っ赤にして絹

ゆでダコなのはどっちかってっと姉だろ!

一瞬絹ちゃんが爆死したかと思ってびっくりした

洋榎「あー…うん…」

絹恵「いやああああああああああああああ!!あーーーーーかーーーーーーーんーーーーーー!!」

大粒の涙を目に貯めて、喉も張り裂けんばかりに大声で叫ぶ絹恵に、お姉ちゃんちょっとドキドキ
ぶっちゃけちょっと可愛い

絹恵「お、おねえちゃーーん!!」

洋榎「…」

も、もうちょっとだけ絹の様子見て観よっかなー…

絹恵「うえーーーーーーーーん!」

洋榎「…」

あー。マジ泣きしそうになっとる。仕方ない。そろそろ許したるわ

洋榎「ほいほい。変えるで~」ピッ

『ワーーーワーーーワーー アゲロコーーヘー!』

洋榎「お、サッカーやっとる」

絹恵「ヒンヒンヒン」

洋榎「絹恵ー。サッカーやっとるで~」

絹恵「メソメソメソ」

洋榎「絹~」

あっちゃー。泣いちゃった。すまんな。やり過ぎたか

絹恵「……ちゃ…の……か…」ブツブツ

洋榎「…絹?」

絹恵「…」

洋榎「絹?」

すくっと

無言で立ち上がる絹

…絹恵さん

洋榎「絹~…」

絹恵「…」

洋榎「…おおう」

絹恵さん。実の姉をそんな親の仇みたいな表情で睨むのは止めましょう

あとね

絹恵「お…ねえちゃん?」

洋榎「はい」

そんな地獄の底から絞り出したみたいな低っい怖い声も、止めましょう。ちびるで?(脅迫)

絹恵「これ…どういう事なん」

洋榎「ど、どう…とは」

絹恵「なんでエッチい番組、やっとるん?」

怖ッ!なんで眼鏡逆光で光っとるん?目が見えないのが余計に恐怖煽るわ!

洋榎「さ、さあ…」

絹恵「とぼけても無駄やで?」

洋榎「し、しらん…し…」

絹恵「…へえ」

そう言って自ら作ったバリケードを乗り越え、一歩前に出る絹恵さん

『絹恵。こんな時に真っ先に実の姉疑うとか、お姉ちゃん絹をそんな子に育てた覚えありません!』
…言ったら何されるかわからんから飲み込んだボケです

絹恵「へえ…知らんの?お姉ちゃん」

洋榎「お。おおよ」

絹恵「ふぅん」

絹恵「…なら、なんでそっちの受信機にカード入っとるん?」

洋榎「…」

絹恵「買ったんやね?」

洋榎「…」

絹恵「買ったんやね!?」

洋榎「…」

絹恵「んんん!!?」

洋榎「…はい」




絹恵「お姉ちゃんのぉおおおおおおおお!!」

洋榎「おおおお!?」

絹恵「どすけべえええええええええええええええええあああああああああああああああああああああ!!!!」


えろい洋榎ちゃんかわいい



こうしてウチは、妹に部屋を追い出された


パントキックでなくハンドスローだったのは、せめてもの絹の優しさだったと信じたい


廊下にべちゃっ!と潰れたカエルみたくして転がったウチに、追撃でエロカード投げ付けて入り口をシャットダウン


怒っとんのか、戸叩いても返事もしてくれんし、こりゃちっと頭冷やす時間与えんとアカンわこれ


ったく、これだから恋人居ない歴=年齢の生娘は嫌やねん


…まあ、人の事言えんが

洋榎「あーあ。ったく…仕方ないわ。適当に時間潰すかー」

洋榎「折角立派な旅館来たんやし、内部探検でもしよかー」

洋榎「はーあー。お姉さまを邪険にする意地悪妹のせいで外行きそびれたわー」

洋榎「…」

洋榎「…」

洋榎「…」

冒険にはまず、装備が必要や。なんか持っとるかな?財布とか

洋榎「…財布は…無い、か」

ケータイとか

洋榎「…ケータイも…無い、な」

ってか、浴衣一枚で放り出されたから、何も持っとらん

洋榎「…」

…あ、有った。エロカード。多分、あと2時間くらい見れる奴

洋榎「…」



洋榎「…ヘックチ!」

洋榎「…」




























いちご「…で」

いちご「…なんでこお前がここに居るんじゃ」

洋榎「来ちゃった…」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「帰れ」

洋榎「帰る部屋がありません」

いちご「そうか。お気の毒に。どっか行け」

洋榎「難民受け入れ拒否は人道に反するで」

いちご「何の難民じゃ。去ね」

洋榎「財布無いから…経済難民?あと、妹が武力で追い出してきたんで戦争難民でもある」

いちご「妹さん側を支持する。じゃあの」

洋榎「国連から非難受けるで」

いちご「知るか。ほれ、邪魔じゃ」

洋榎「まあまあ。ちゃんと土産もあるから」

いちご「要らん。もういい加減帰れ」

洋榎「まあまあまあ。せめて品を見るだけでも」

いちご「…何よ」

洋榎「じゃーん。R18。大人への片道切符…」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「帰れ」

洋榎「いや、マジお願いやから。風邪ひきそうでマジ」

いちご「…」

なんでウチんとこ来んねん…

ちょっと休憩。今日はこれで終わるかも知れん
なんか疲れた。もっと書きたいんだがね

洋榎ちゃんのコメディ力すごい。
おつかれ、無理はせんでもええんやで。

平日の真っただ中だからね。仕方ないね

ネキ寒そうだし、難民としてうちで受け入れてもいいけど?

>>296
ハギヨシ「ヌッ(迫真)」




ほんとお前らの特定能力には恐れ入るわ(震え声)

休んだらちょっと回復したんで、もうちょっとだけ続けます








「ぽ…ぽぽ……ぽ…」






「…ん?何の音だ?」


その村には、言い伝えがあった


「ぽぽ……ぽっ……ぽ…」


「どうした?」

「いや…なんか変な音が…」

「気のせいだろ」

「…」


恐ろしい神話が




「~♪」

「ぽぽ…ぽ…ぽぽっぽ……」

「…ん?」



曰く

それは災いだと




「ひっ…!」

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」

「ば、化物…!!」

「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」

「ひ、ひいいいい…!!」

「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ」

「だ、だれか…誰か助け…!!」

「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ
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とよねぇなでなで










「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」








現代

「ぽっぽっぽー♪はーと、ぽっぽー♪」

「おはよー豊音ー」

「豊音相変わらず元気だねー」

「こんなにだるい朝から歌える元気とか…」

「オハヨ!トヨネ!」

「あ、みんなー!」




「おっはよー♪」


これは、現代を生きる妖怪(バケモノ)達のお話


「ねえねえ、今朝のテレビ見たー?」

「見た見た!やっぱり東京っておしゃれだよねー。憧れちゃう!」

「ご飯おいしそう…」

「私ドーナッツ食べたい!」

「オニギリ!」

「宿題見せてー」

「この前アニメでさ~」

「え?カードゲームの大会?」

「面白そ~」

「そういえば豊音強かったよねー」

「大会優勝したら、東京行けるって!」

「やってみればいいじゃん!」




「え?」



「あれ、興味無い?」

「それは、一回でもいいからそういうのには出てみたいかな~とか思ってみたことはあるけど…」

「なら決まりじゃん!」

「でもでもでも!私そんなにお小遣いないし、ガチ勢に対抗するには補強デッキとか、あと戦術とか…」

「ほほ~。問題は資金面ですか」

「戦術とかそういう頭使いそうな話は、ブレーンにシロいればいいじゃん」

「え、なにそのだるいの…」


ひょんな事でカードゲームの大会に出場する事になった少女


「なになに?おもしろそうな話してんねー」

「え?何?トヨネ、カードゲームの大会出るって?」

「何ー?補強のカード買う金が無い?よっしゃ!みんなでカンパだ!」

「えっ?えっ?」

「みんなで豊音を日本一のデュエリストにしよー!」

「ええええええ!!」


繋がる友情


「ねえねえ、本当にいいの?」

「いいんだよ。ほら、この辺過疎化進んで娯楽も全然無いでしょ?みんな、刺激が欲しいのよ」

「…」

「楽しんで来て欲しいの」

「…」

「私のブルーアイズ、豊音に託すから」

「ありがとう…」


託される夢


「そんなつまんない事してる暇あるなら勉強しなさい!!」

「こ、今度のテストでいい点とるので…」


立ち塞がる障害


「ガンバレ豊音!!」

「村中、みんな応援してるべ!」

「宮守村此処にありって、日本中に知らしめて来い!」

「ファイト~!とーよーーーねーーー!!」

「うん!私、頑張る!!」

「だるい…」


予定調和で無駄に盛り上がる過疎村のご老人方

「行っておいで…豊音…」

「血筋なんて関係無い。お前は、私達の自慢の娘だ…」

「おとうさん…おかあさん…」

「やるなら日本一目指せ!!」

「うん!!」


取り敢えず入れておかなきゃいけない縛りでもあるかのような家族との絆


「ブルーアイズドラゴンを生贄にモンスターを召喚!」

「行くよ…」

「これが…」

「私のファイナルターンだー!!」

「いっけーーーー!!八咫烏!!!」



社会派ドラマ


豊音「わたし東京さ行くよー」


なんかプロット流してて予定してたのとずれたので、公開中止

いちご「つまらん番宣。なんも面白い番組やっとらんわー」ピッ

洋榎「ん」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「…で、いつまでお前ここにおるつもりじゃ」

洋榎「晩御飯までには絹恵も許してくれるかなーと…」

いちご「そか」

洋榎「はい」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「…」

洋榎「…」



案の定


会話が続かん


どうしようもないんで適当にテレビ点けても、面白い番組は一切やっとらんし…


そういえばと思って愛宕姉になんで追い出されたか尋ねたら、アホみたいな答えが帰ってきて脱力して、追い出す気力も失せてもうたし…


また会話が無くなってテレビのチャンネル、ガチャガチャ弄ってたら今のもっと阿呆な番宣だし


で、テレビ消したらまた沈黙


…やんなるわー

洋榎「…そう言えば」

いちご「うん?」

洋榎「さっき風呂入っとった時」

いちご「うん」

洋榎「いつの間に入ってきたん?気付かんかった」

いちご「…多分、アンタが潜水ゴッコしとる時や」

洋榎「…おお」

いちご「なんかブクブク聞こえとったから変なのーとは思っとったけん。まさか高校生にもなってあんなアホウな真似を…」

思い出して苦笑してしまうわ。愛宕姉、ちょっと拗ねた顔でこっち睨んできおる

洋榎「あー…うー…」

ククク…けど、何も言い返せんか。だよなー。アホだって自覚はあるよなー。顔が赤いけん、さっきのこと思い出しとるん?

洋榎「え…ええやろ。さっきの事はもう水に流してや」

いちご「どーするかねぇ」

ニヤニヤと意地悪な笑みが止まらん。なんて言うか、麻雀では歯が立たんかったこの女の、弱みを握ったような気分でちょっと優越感

洋榎「…」

へー。こいつ、拗ねる時は唇尖らせて拗ねるんやなー

いちご「くくくく…」

洋榎「…何がおかしいねん。シバくぞ」

いちご「はいはい」

ふはは!拗ねた!意外とメンタル弱っ!

いちご「…はぁ」

洋榎「…」

いちご「いやぁ…悪い悪い」

洋榎「…ちぇっ」

いちご「まあまあ、そう悪態つきなさんな」

洋榎「うっさいわボケ」

いちご「高校生にもなって拗ねるの格好悪いよ」

洋榎「拗ねとらんし」

いちご「拗ねとる」

洋榎「拗ねとらん」

いちご「拗ねとるー」

洋榎「うっさいなぁ…ほんましつこいわこいつ・・」

いちご「お?お?ええんか?そんな態度取っとると追い出すぞ」

洋榎「もう無理。一度部屋に入れたらそう簡単には追い出されん」

いちご「けったいな居候やなぁ…」

洋榎「やかまし。おい部屋主。喉乾いた。お茶出せ」

いちご「やなこったわ。お前が入れろ居候」

洋榎「雑巾汁でええ?」

いちご「こいつ…」

あー言えばこー言いなさる。ほんまけったいな女やわ。力づくで放り出してやろうか

いちご「ほんま、こんな子供っぽい奴だと思わなんだわい」

洋榎「…っ!どっちがガキっぽいんや!媚びたような髪型して!アイドル気取りかっ!」

いちご「いや、アイドルみたいなもんやし」

洋榎「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

おお!?

洋榎「きっしゃあああああああああああああああああああああああ!!!」

愛宕姉が壊れた…

洋榎「うがーーーーーーーー!!!ふぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!!むきょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

何が奴の琴線に触れたのか。怒りに任せてドタンバタンと暴れまわる愛宕姉
うざ

洋榎「にぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

さて、どうしたもんかね…これ

洋榎「…あ、せや」

いちご「ん?」

いい加減扱いに困り果て、同時に面倒くさくなって部屋から蹴り出してやろうかとアップを始めた頃
ピタッ。っと愛宕姉が止まった

いちご「…どうしたよ」

洋榎「へっへっへ…」

いちご「?」

洋榎「なあ、『ちゃちゃん』」

いちご「…何」

怪しいオーラを感じて一歩後ずさる

洋榎「アンタ、清純派アイドル?」

いちご「…まあ、そう…かな?」

いきなり何を聞き出すかと思えば…何を面妖な

洋榎「そか」

いちご「…そうじゃけど」

洋榎「ふひひひひ」

いやらしい笑顔でほくそ笑む愛宕姉。あ、つまりエロそうな顔って事ね。むっつりっぽいって意味

いちご「…何する気じゃ」

洋榎「この部屋はウチがいただく」

そして飛び出る占領宣言。なんやこいつ。難民が国盗りしようってかい

いちご「いい加減調子こいとると追い出すぞ」

洋榎「できるかな?果たしてお前に…」

いちご「…」

妙な緊張感がお茶の間に流れる。こうして侵略者に対する防衛戦争が静かに火蓋を切って落とそうとしてしておる

洋榎「清純派アイドルが、その白い翼を穢す事は出来んよなぁ…」

これまた妙な事を口走る愛宕姉

いちご「…だから何」

何となくいつでも動ける体勢で迎え撃つ。なんやこれ

洋榎「則ち」

いちご「…ん」

洋榎「…興味、無い?」

いちご「…」

懐から取り出したそれは、一枚のカード
さっき土産と称して提示してきた、えっちいビデオを見れるカード

洋榎「ククククク…清純派アイドルがこんなもん見てるとなったら、イメージはガタ落ちやろなぁ」

だから何

何がしたいのかさっぱりわからん

洋榎「その清純派の仮面を引き剥がしてやるでぇ…ククククク」

いちご「…はぁ」

洋榎「クククク…ククククククク…」

いちご「…で」

洋榎「クク…クククク…クックックック…」

いちご「…結局何がしたいん?」

洋榎「一人で見るの恥ずかしいから一緒に見て」

いちご「…」



…はぁ?


マジわけわからん!


何がしたいんじゃこの女は!!!

ひろえちゃんかわいい

限界が来た。ねる
あと、金曜夜くらいから魔法少女やっちゃう

おつおつ、
今夜の洋榎ちゃんはネジが何本かとんでたなwwww
魔法少女楽しみや

俺はイッチのハギヨシが大好きやねん

イッチのハギヨシは人間臭い
はっきりわかんだね

おつかれさまです
なんかvip久しぶり過ぎてか知らんけど、向こうでss書くの上手くいかんわ
魔法少女もぐだぐだだったし。楽しみにしてくれてた人いたら申し訳ない

来週末に腐部屋番外編やる予定なんだけど、今のままだとちょいリハビリと書き溜めが必要な気がする
じゃけん、誠に勝手ながら1週間ほどこちらお休みさせて下さい…
マジ申し訳ないですが

魔法少女乙
ゆっくり休んでまた書いたらええがな
マットルデー

おつおつ。
ゆっくり休んでもええんやで。
待っとるからなー。

あ、今vipではじめたよ

え、どれ?

すいーとめもりー

相変わらずの本人確認流石っす

やっぱこの人の書くのは面白いなあ

vip落ちてて見れねー
もう終わったかな

続いて良かった!
楽しみにしてるぜー

あっち規制されてるからこっちで乙
カンちゃん準備中はこっち遅くなるのかね?

(こんな事言えないけど、正直vipの不調で落とす口実出来て物凄く助かった)

>>333
あんま関係ないかも。むしろリアルが忙しいかどうか次第って感じ

(えんやで)


こっちも楽しみにしてるよー

規制なんでこっちで乙

長時間おつおつ
流石というか、楽しかったまじで

照京のと合わせて
イザナミ、月島さん、ドンッ!!!
とジャンプ三大看板漫画の名物が揃ってたな

回答thx
ゆっくりでいいから完結させてな

長いお休みいただきすみませんでした。明日の夜から再開します
なんでか2話のネタばっか書き溜めてたわ

鬼畜物が読みたい(ド直球)

腐部屋シリーズからきますた

これまでの作品って
このスレと、腐部屋シリーズとアラサースレと
他になんかある?

魔法少女すみれがある

照京

>>344
あんまり覚えてないけど
上にもある魔法少女菫さんものと、宮守ステマのために初期に何個か書いた記憶は残ってるよ

姉帯「友達100人出来るかなー」 ほのぼの
豊音「ぼっちじゃないよー…」  ほのぼの(閲覧注意)
胡桃「豊音って、ブってない?」豊音「え?」 ほのぼの

あとはなんかあったっけかな。思い出したら書くわ
もうちょっとしたらはじめます

どうしてほのぼのを閲覧するのに注意が必要なんですかね?(正論)

名作ばかりなんだよなぁ

女が喘いでいる

悲鳴のような叫びが部屋に響く

狂ったような獣の叫び

肌に肌を打ち付ける音

乾いた音

獣の叫び

悲鳴が次第に鋭さを増す

まるで獣の捕食のような激しい性交

今、うちらは人間の最も野蛮で低俗で神聖な部分を…

って…

なんで『ちゃちゃのん』、おとなしくエロチャンネル視聴しとんの?

洋榎「お、おお…えぐ…」

洋榎「アカンこれアカンこれ。うわ…え、ちょ、ちょ、そんな、アンタ…」

洋榎「うわわわわ…えッろ…」

洋榎「うお…しかもこれモロやん…」

こいつはこいつで食い入る様に見入っとるし…えっ?

いちご「うわ…え、ちょ、そ、そんな事までするん!?」

いちご「うわー。うわー。うわ…いやいやいやアカンってそんな…うわ…」

いちご「うわわわわわわ、めっちゃ舌入れとるやん!うわー…き、気持ち良さそうな顔…こんな良くなるもんなんかな…」

洋榎「…」

いちご「…ん?どしたんじゃ」

洋榎「…いや、思いの外食いついてきたんでちょっと予想外っちゅーか」

いちご「…」

洋榎「『ちゃちゃのん』、結構むっつり?」

いちご「…いや、そんな事はあらへんよ」

洋榎「え~?」

いちご「お、お前がどうしてもって言うから一緒に見てやっとるだけやし」

洋榎「この程度のエロ、歯牙にもかけんと思ったら意外に初い反応やし」

いちご「…それどういう意味?」

洋榎「テレビに出とるくらいやから、力のある芸能人に食われたり…」

いちご「ありえんわボケェ!!」

洋榎「なら脂ぎったおっさんへの枕えいぎょ…」

いちご「芸能界に偏見持っとらん!?」

洋榎「ないのかー」

いちご「少なくとも『ちゃちゃのん』周りにはおらんし!」

洋榎「そうだったんかー」

いちご「むしろ下手な部活より上下関係厳しい体育会系やからね!?」

洋榎「アイドルって大変なんやなぁ」

いちご「…」

洋榎「…はー」

いちご「…何」

洋榎「いや。なんでも」

いちご「…?」

洋榎「…」

また押し黙る愛宕姉。本当、なんか変

いちご「…どうしたんじゃ」

洋榎「…別に」

いちご「…わからん」

いつも無駄に元気で煩くて単純でウザくてパワフルな女、ってイメージだったんに
こうして話してると、何考えてるのか本気でさっぱりや。電車降りて出会った時からずっと

洋榎「…別になんでもない」

いちご「…あっそ」

洋榎「…」

まあ、別に構わんけどさぁ

いちご「…うわ…やば。ほれ、見てみ。さっき喘いでた女、痙攣しとる…」

洋榎「…」

いちご「…うわー。エロいエロいエロい…こんなの見たことありゃせ…」

洋榎「…はあ」

いちご「…」

洋榎「…ふう」

いちご「…だから。何」

訂正。こんな時でもこの女がウザい事に変わりはない

洋榎「…」

いちご「…」

洋榎「…いや。なんでもない」

いちご「…?」

結局それか!

洋榎「うん。やっぱええ。なんでもないわ。それより、もうそろそろ帰る。絹もいい加減頭冷えたやろ」

いちご「へ?あ…うん」

そして唐突な帰還宣言…

洋榎「ほんじゃ、邪魔したわ」

いちご「え?あー…う、うん。あ、はい」

洋榎「ありがと」

いちご「え…」

パタン。そして速攻で立ち上がり、部屋を出ていってしもーた

いちご「…なんやこれ」

いちご「…」

いちご「尚更気になるけん、フザケンナや!」

えろい(確信)

意外と普通の人でがっかりしたネキか…
いいね

(アカン)
ちょっと眠気ヤバイ

明日は丸一日書けるから今日ここまでにさせて。頭全然まわんない

おつ

駄目だ
なんか書けん
話の大筋は決まってるのに
自分で垂れ流して良いと思える程度の文章が出て来ない
しゅごいのぉ。こんなの始めてぇ…

ちょっと待ってね。ちょっと待ってね
もうリアルの方は今年はやること全部やったから時間はあるんだけど…
なんだこれなんだこれ

おちけつ

ぶっちゃけスランプ(?)だじぇ。たかがssにスランプもクソも無いと思うんだけど
大体いつもはスレ開いて適当に書き始めりゃ文章出てくんのに、どーも上手くいかん
魔法少女菫も尻切れトンボでやりたいことの半分もできんかったしさー!っていうかそれが一番ひっかかってるんだけど

今年中には絶対1話終わらすから、ごめん許して。調整させて。ちょっとコンサドーレの勝ち試合見て精神を安定させてくるから

なんもかんも政治が悪い

「たかがSS」だろうと創作にスランプは付き物よ
頭の中にある理想にアウトプットが追いつかない状態だからね
なんなら分岐と称して魔法少女途中からやり直してもええんやで

魔法少女は俺もまだ読みたいし、>>1がやりたいなら絶対見るし
他のも部室掃除しながら待ってる

俺も362が掃除に飽きることのないように部室を散らかしながら待ってる

違う曜日に掃除してあげようよ…

今年中に1話は絶対終わらすと言ったな。あれは嘘だ(震え声)
あとちょっとで復活できそうな気がするので数日時間を下さい。すみませんが
っていうか書く時間がねえ!!

チラッ)

チラッ)

チラッ)

         ,, _
       /     ` 、
      /  (_ノL_)  ヽ
      /   ´・  ・`  l  
     (l     し    l)  
.     l    __   l   
      > 、 _      ィ
     /      ̄   ヽ
     / |         iヽ
    |\|         |/|

    | ||/\/\/\/| |

ふんふむ

元気かなあ

きっとVIPでリハビリしてる

ゆっくりで大丈夫なのよー

ふんふむ

待ってるのよー

2月まで待っててくだされ…

待ってる

りょーかい

にがつ!(プンスコ

舞ってる

マッテルデー

ん?

世界よこれが二月だ

すんげーお待たせしました。超申し訳ない
そして更に申し訳ないけど、本格稼働は月曜日からで勘弁してつかーさい。その為に休みも取ったけん。絶対本腰入れてやるから
今日はプレ稼働って事で、ほんのちょっとだけ+終わった後に関係ないお話をばさせてーな

>>1来た!これで勝つる!

エッチなテレビ見ておった姉ちゃんを、思わずほっぽり出して早数十分
顔の火照りも消え、頭が冷えてきて、お姉ちゃんに悪いことしたかなー、と罪悪感を感じながらソワソワしておった頃

コンコン

部屋の入り口で、控えめなノックの音が響く

お姉ちゃんや

子供の頃からそうやった

いつもは明るく賑やかが信条で、部屋一つ入るにしてもボケの一個は織り込まんと生きてけへんお姉ちゃんが
喧嘩した後やお母さんに怒られた後は、ビクビクおどおど、こっちの様子伺うように遠慮がちになる
そんでもって、もう問題の事案が終わったと見るや、速攻またいつもの調子に戻るんや
なんてーか、そこが子供みたいで可愛いとこでもあるんやけど…ちょっと呆れたりもするわ

今回も、まだウチが怒ってないか、まだ疑っとるんやないかな

まあ、折角の旅行先でウチもやり過ぎたわ
早く部屋に迎え入れて謝ったらな、ね

立ち上がり、部屋の戸を開けに行く事にする
別に鍵かけてる訳やないけど、お姉ちゃんの事やし、この状況だとウチが開けるまでずっと部屋の前で立ってそう
明るい声かけて怒っとらんよアピールもしておこ

絹恵「は~い」

「…」

絹恵「もう怒っとらんよー」

声をかけながら、驚かせない様に優しく、それでいて手早く戸を開ける。…なんか、臆病な小動物相手にしてる気分や

洋榎「あ…」

絹恵「ごめんな?お姉ちゃん。折角楽しい旅行来たのに怒っちゃって」

洋榎「…ん」

絹恵「ほら、そんな格好して廊下におったら風邪引くよ。一回部屋入ろ?」

洋榎「…」

コクリ、と頷いて、のそのそと部屋に入ってくるお姉ちゃん

絹恵「…お姉ちゃん?」

洋榎「…」

…?

絹恵「…」

洋榎「…はぁ」

絹恵「?」

あれー?

いちご「…」

愛宕姉が帰ってって、気付いたことがある

いちご「…」

あのアマ、エロ番組視聴カード忘れて(いや、まさかわざとか?)いきよった…

いちご「…」

しゃーないのぉ。今度会った時に叩き返したらな…

いちご「…」

次会うったら…ん~

いちご「…」

夕食かぁ

いちご「…はぁ」

本日のお泊り用大部屋にて
今、私達は御夕飯前の休憩時間を利用して、百合の間を掃除してた時に出てきた交流ノートを読んでいます
さっきは途中までだったし、話の種にいいんじゃないかなって、お父さんにお願いして持って来させて貰いました
みんなも興味津々なようで、それぞれ思い思いに読んでます

晴絵「どれどれ」

憧「へー。いっぱい書いてあんじゃん。…うわ、見てシズ。これ、イラスト描いてる。上手っ!」

穏乃「うわ、凄い凄い。おもしろっ!」

むっ?そんなのもありましたか。後で私も確認せねば

灼「これ、今はやってないの?」

ノートの一冊を手に、灼ちゃんが聞いてきます

宥「うん。やってないね」

玄「ええ」

灼「ふ~ん。面白いからやればいいのに…」

穏乃「っていうか、なんでやめちゃったんですか?勿体無い~」

憧「そうよそーよー」

宥「そうだねぇ~」

玄「私達も面白いとは思うんですけどねー」

灼「何か問題でも?」

宥「いや、そういう訳じゃないけど…」

言葉を濁すお姉ちゃん

…無理も無いよね?
この習慣が、どのようにして立ち消えたのか。お母さんが亡くなって、それを機に、だなんて、わざわざ空気を悪くするのも嫌だったので、最後のノートは倉庫の中に残しておいたのです
敢えて説明するのも野暮でしょうし…と、ここで赤土先生が割って入って来ました

晴絵「まーまー。止めたんなら止めたんなりの理由があるんだろうさ。無理言うな」

灼「晴ちゃ…」

玄「赤土先生」

宥「…」

晴絵「部外者が他所さんの経営事情に首突っ込むのもアレだろ?灼だって、鷺森レーンのシューズがダサいから改善しろー!って言われたら色々複雑だろ」

灼「それとこれとは勝手が違…って、晴ちゃん!?そんな事思ってたの!?」

穏乃「確かに…」

憧「あれは…ちょっと…」

灼「二人共!?」

晴絵「あっはっは!!」

灼「え、ちょ、みんな思ってたの!?」

玄「…」

宥「…」

晴絵「あと、ガーターが他のレーンより広い気がする。あと、私が投げたらいっつも左に曲がってって、あれちょっと建物が傾いてるんじゃないか?アレは結構致命的な…」

灼「それは、晴ちゃんが下手なだけでしょ!」

晴絵「なに~!!?」

憧「まあ、私よりアベレージ低いしね。大人のくせに」

晴絵「憧まで!」

穏乃「あははははは!」

洋のんは神

晴絵「おいこら穏乃!お前は笑いすぎだろ!」

憧「くふっ…くふふふ…姉ちゃんから聞いてるんだよ?高校時代の話は色々と…」

晴絵「あ~こ~!?喋ったら殺す!ぶっとばす!」

憧「わー!逃げろシズ!最近流行りの体罰教師だー」

穏乃「あははは!わー!逃げろー」

晴絵「待てこらー!」

ドタドタと走り回りながら1年生コンビを追いかけ回す赤土先生
ちょっとあり得ない身体能力で赤土先生を華麗にかわす1年生コンビ
それを見て

宥「…くすっ」

お姉ちゃんが小さく笑います

灼「…ふふっ」

呆れたように3人を見ていた灼ちゃんも、遂に笑います

晴絵「ぜ…は…こ、この体力お化け共…」

そして、多分私も…

晴絵「あー…も、だめ。疲れたー。飯まだか~」

穏乃「赤土先生に勝ってしまった」

憧「若さは力ね~」

晴絵「覚えてろお前ら…」

…なんだか

宥「ねえ、玄ちゃん」

玄「はい?なんでしょう、お姉ちゃん」

宥「なんだか、あったかいね」

玄「…」

宥「この部活、とってもあったかい…」

玄「…そうですね。本当に、本当にすごく、あったかいです」

晴絵「あー。喉乾いたー」

頃合いを見計らったように、赤土先生が声を上げます

憧「確かに。私も笑ったら喉乾いちゃった」

穏乃「私も」

灼「ふふ…同じく」

晴絵「なー玄ー。そろそろ食堂いいかな?」

言われて時計を見ると、丁度約束の時間5分前。そろそろ食堂に向かわねば

玄「あ、そうですね。もうそろそろ大丈夫だと思います」

晴絵「んじゃ、行こっか」

穏乃「やたっ!」

憧「旅館料理楽しみ~」

灼「それじゃあ、行こ?玄」

玄「はい!では、ご案内します!…って、みなさんもう食堂の場所はご存知ですよね?」

晴絵「ん、まあね」

穏乃「楽しみ~楽しみ~食べるぞ食べるぞー。目一杯食べるぞー」

晴絵「はっはっはー。あんま行儀悪くない程度になー」

憧「アンタは良いわね。体型とか気にしない性格だし…」

みんな、嬉しそう。夕御飯を楽しみにしてくれてるみたいで何よりですね
なんと今日はちゃんと正規のお客さんと同じお料理を出してくれるらしいので、私もすっごく楽しみです
普段は賄いを貰うことはあっても、流石にそこまでして貰うことはありません。みんなからの、インターハイ頑張ったご褒美だよ、と板前さんがさっきにっこり笑って教えてくれました
なんだか、本当に幸せだなぁ

ウキウキしながらみんなと一緒に食堂に向かおうとしていると…

宥「…ねえ、玄ちゃん」

玄「はい?」

おねえちゃんがこっそり私の袖を引きます

玄「どうしたの?おねえちゃん」

宥「えっとね?玄ちゃん」

玄「うん」

宥「さっき、思ったんだけどね?おねえちゃんね、交流ノート、復活させてもいいんじゃないかなって思ってるんだ」

玄「へ?」

玄「どうしたの?いきなり」

宥「私、今、凄く幸せだから」

玄「…はあ」

宥「だから…今を」

玄「…」

宥「今を、形にしておきたいの」

玄「…」

宥「私は、もうすぐ卒業だから」

玄「…」

宥「だから、少しでも、多くの想い出を」

宥「確かな形で、残したいの」

玄「…」

宥「それで…ね?」

玄「…うん」

宥「もしも、交流ノートを復活させるなら」

宥「今日の、このお客様方は、最初の一ページに一番相応しいんじゃないかって」

そう言って優しい微笑みを浮かべ、お姉ちゃんが見つめた先には

穏乃「ところで、今日ってどんなご飯出るんでしょう。お肉かな?お魚かな?どっちでもいいなー!いや、どっちも!」

憧「甘いものとかも出るのかな…太っちゃうかも。…って、えーい、こんな機会滅多にないんだ!今日はリミッター解除!シズ!今日はとことん付き合うかんね!」

晴絵「お酒飲んでいいかな?」

灼「晴ちゃん、その冗談は面白く無い」

晴絵「…やっぱ駄目だよねー…」

当然のことながら、今の私たちの幸せそのものが居ました

はい、今日はここで終わりー

乙!

乙乙

さてー
ここから2,3レスくらい関係ないお話ー
興味ない人はシカトしてね








まず、本当に更新鈍くなってすみませんでした
交わした約束も守れんかったし


ぶっちゃけると、プライベートで色々忙しかったってのもあるけど、モチベが低下してた
思えば去年の6月くらいからちょこちょこss書いてて、長いこと色々書いてると色々心境的にもあるんですわ

勿論書くからには自分で見直した時にちゃんと面白いって思えるもん書きたいとは思ってるんで
妥協してこのスレのただでさえ低いクオリティを落としてお茶濁すのだけはしないけどね





今年は新しいことを色々始めたいって思ってて
あと、心残りになってるものを消化して行きたいとも思ってて

何しよっかなーって考えた時に、ssに関して一番心残りだったのが、やっぱ魔法少女菫だったのね
自分で終わらしておいてなんだけど、中途半端過ぎて自信持って持ち込んだデビュー作が打ち切りになった気分
それで百合の間やカンちゃん番外編にまでモチベの影響が出てる感じ。あと、このスレでは出来ない厨二成分補充がしたい

なんで、これはもうこっちでセルフリメイクでもなんでもして、成仏、というかちゃんとした形でやり切る方が個人的な精神衛生にいいかなと思って
2スレ同時進行になっちゃうけど、どうでしょう。許されるでしょうか(小声)

許した

いいと思いますよ。

2スレ進行OK
魔法少女スレ優先でも全然OK
イッチの判断に任せるよー

許すも何も
>>1の書きたい物を書く、それでいいでしょうに
結果的に>>1がそこらで悩んで潰れるのも本末転倒だし

あたしゃいつも通り>>1のSSを楽しみに読むだけですよ

ぶっちゃけ魔法少女スレぐらいしか、俺のはやりんが出てこないから
何でもいいから続けてくれ!
てか魔法少女はVIPで見てたし向こうでいいんじゃないの?

すまんな…すまんな…
百合って定義が曖昧で、一応俺なりに真剣に百合もの書こうって思ってるんだけど
そうするとどうしても同性間の恋愛が当然みたいな世界観は俺には納得いかないというか、否定する気はないんだけど俺には書けないというか
禁忌であるからこそ悩まざる得ない部分とか、困惑とか、迷いとか、そういう心の機微のファクター除いたら男女間の恋愛と何にも変わんねーだろうとか
ホモでもレズでも百合男子でも無いけど色々思うところがあるし。ホモではないけど

で、ほっといたらどうしてもギャグに走りたくなっちゃう俺には、それだけでやっつけるには重過ぎるテーマというか…

あと、魔法少女はもう何話も連続でやる気力と時間無いし、いい加減シリーズ物向こうでやるの悪い気がするしで、やるならこっちだって決めてました
日曜日くらいに立てて1話だけやって、そっからゆっくり進めていきます


変な話に付き合っていただき、ありがとうございました
たくさんのコメントありがとうございました。
まじ涙でました。
本当に支えられてるんだなとつくづく痛感させられました。
本当にありがとうございます。
必ずやり遂げます!
見てくれてる人たちの為に!
疲れをとる、エンブリーを飲んで、寝ます!

咲SSは同性間で付き合ってて当たり前みたいなの多いよね
それはそれでいいけど、やっぱりアブノーマルに踏み込むことへの苦悩とかしっかり書いてくれる方が好きだなあ

そこの経緯とか葛藤とか書いたものも見たいけどやはり難しそうだなぁ

例えば照→淡→尭深→照に好意をもっている
でも照は淡、淡は尭深 尭深は照の好きな人を知っているとかちょっと見てみたいかも
自分の心に蓋をして応援できるかとかね

お互い好きでやってることだし、あんま気負わずにな、楽しみにしてるよ
もしストレス溜まったらプロ、女子アナ四人組に復讐するSS投下してくれてもええんやで(ゲス顔)

モチベって大切だよね何においても
周りから期待とか重たいかもしれんが気楽に書いてくれてええんやで

すこやんssからだけどいつも楽しみにしてるし書けるときに書いてくれたらいいでー。気長に待ってます

>>407
アレ以上に何を望むんや…(震え声)

>>407
なにそれ俺知らないかも
kwsk

>>407
なにそれ俺知らないかも
kwsk

書き込めてた…orz

まぁ普段百合スレとか見てると忘れがちだけど
普通ならアブノーマルなわけで、その辺りまるで当然のように扱うのはおかしいと言えばおかしいんだよな


>>1が納得出来るように書けば良いと思うよ
あと魔法少女期待してる

>>411
「アラフォーが、京太郎を」落とす安価スレ内の、小ネタというか、裏サクセスモードみたいなヤツ、少し刺激の強い内容。

>>415
ありがとう!

なんで誰もエンブリーにツッコまないんや…

乙!

見てくれる人のために、ってのもありがたいけど
イッチが書きたいのを書いてくれていいんだぜ
ここにいる奴らはそれで見に来てると思うぞ

最後のエンブリーステマはツッコミ待ちだったんだよなぁ…

お前ら俺に優しすぎるでしょう
ろくでなしに甘くすると、どんどん調子に乗って余計な事やっちゃうよ?

一応宣伝

今から魔法少女スレ立てます

今日はそっちやって、明日から何日かはこっちを更新
そんなローテーションを考えてます。

…では





新ssスレ

菫「魔法少女シャープシューター☆スミレR」

「始まるよ!」メェー

リターンズ来た!
これで勝つる!

きやがったぜ!

エンブリーって飲み物だろ(吐血)

百合そのものは自分もよく分からんなあ
個人的に咲SSに期待するのはキャラの良さを生かした笑いありの話だから
特別な関係や感情があるからこそ成立する笑いっていうのはもちろんあると思うけど咲自体が恋愛テーマの話ってわけでもないしね
まあ>>1は書きたいように書いてください

咲を百合漫画として見れないのは人生損してる

さっきまでアラフォースレ見返してきた
この人の書くのは面白いなあ

全力待機

ここの>>1もまた長期休載か

ふむ
元気でいらっしゃるかな

明日から再開します(超小声)

待ってたぞ!約束破ったら泣くからな

マッテルデー

ひゃほー

やったー

生きてたか
良かった

おまえらどこから出てきた

呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん

マッテタデー

楽しみだし!

ただいま。ゆっくり書いてくよー

おかえりー

ふんふむ

穏乃「おおー!!」

食堂にて

晴絵「うお。こりゃ…」

今、私(とおそらくおねえちゃんも)はとても得意な気分なのです

憧「すご…」

対して、やや圧倒された感のある麻雀部の皆さん。くふふふふ

灼「…いいの?」

若干恐る恐るという感じで訪ねてくる灼ちゃんへの返事は勿論

宥「はい。もちろん…」

玄「いいんです!」

穏乃「やったーーーーーーーーーーーーーー!!」

穏乃ちゃんが目をキラキラさせながら向けるその視線の先には
我が松実館が誇る自慢の夕食コースの数々が!

お造り、お吸い物、鍋、焼き物、酢の物、栗御飯、デザートに柿

基本的に普通にお客様にお出しする晩御飯とほとんど同じメニューです。ただちょっと若い子向けにお肉多め
板前さん達の心遣いがにくいですね。多分おまけしてくれたのかな?ほんと、感謝感謝です

晴絵「おいおい。これ、大丈夫?宥。玄」

灼「なんか、これは流石に恐縮。たったあれだけのお手伝いで、こんな…」

憧「だよね。なんかかえって申し訳ないっていうか…」

玄「ううん。本当に気にしないで。これ、みんなからの好意だから」

宥「遠慮無く受け取って欲しいの」

そうです。これは、旅館の皆さんからの100%好意なのです
うちの旅館で合宿して。全国を戦って。結果良い成績を残して、地元を盛り上げて
その、ご褒美。それと、感謝

えへへ。その当事者の私が言うのもなんだけど、実際に従業員さんにそう伝えられたから、そう信じていいですよね?
そう伝えると、みんなちょっと恥ずかしそうにしながらも素直に受け入れてくれました

晴絵「ん~。そう言われちゃうとね」

灼「なんかくすぐった…」

憧「私も」

穏乃「あれ、なんか急に恥ずかしくなってきたんですけど」

玄「ふふ。まあ、そういうことですので。それじゃあそろそろお食事に…」

宥「あ。待って」

玄「…おねえちゃん?」

宥「忘れもの」

そういって一旦食堂を出て行ったおねえちゃん。タイミングを外され固まった私達が待っていると、大きなお盆を持って5分くらいで戻って来ました

宥「これ…」

ポテトサラダとシーザーサラダとオニオンサラダとラーメンサラダが乗ったお盆を

灼「これ、全部私らの作…」

晴絵「責任持って処分しろって事ね」

そのボリュームに顔を引き攣らせた二人でしたが、穏乃ちゃんが居たのでなんとかなりました

穏乃「ふー!満腹満腹」

ぽんぽん。と満足そうにお腹を叩く穏乃ちゃん。なんだかタヌキみたいです

憧「ごちそうさま。美味しかったー」

憧ちゃんも満面の笑み

灼「うん。美味しかった。ごちそうさま」

灼ちゃんの穏やかに笑います。心なしか私服にプリントされたたぬき(灼ちゃん、プライベートだとこのシャツをヘビロテしてます)も穏やかな表情

晴絵「なんか灼のシャツと穏乃、似てないか?」

灼「ひゃっ!?」

私と同じ所に着目していた赤土先生、そう言うと灼ちゃんのシャツに手を伸ばします。そして

灼「はっ!ハルちゃん!?な、ななんあななななにを…!!」

晴絵「おっ。灼、結構食べたなー。ポッコリしてる」

灼「うわうあわわわわ!!」

有ろうことか灼ちゃんのお腹を擦り始めました!

晴絵「まあ、麻雀部だしなー。あんま運動してないからしょうがないか。特にお前は痩せっぽちで筋肉も無いから、食べた分すぐ膨らむな」

尚も灼ちゃんのお腹をナデナデする赤土先生

灼「あわわわわわわわ!はっ!ハルちゃ…!こ、これ、セクハ…!!」

晴絵「なーに言ってんだ。女同士で」

灼「だから…ふにゅあっ!」

顔を真っ赤にして喚く灼ちゃんと、からから笑いながら灼ちゃんを弄り倒す赤土先生

灼「ううううううう~~~!!」

晴絵「あっはっはー」

平和だねぇ

宥「ずずずずず…」

おねえちゃんはあったかそうに食後のお茶を飲んでます

灼「いっ!いい加減にするっ!」

晴絵「おっと」

赤土先生の魔手から逃れ、席から離れる灼ちゃん。私を盾にする位置取りなのが気になります

灼「信じらんない!ハルちゃんの変態教師!教育委員会に訴えるよ!」

息を切らし、顔を真っ赤にして叫ぶ灼ちゃん

晴絵「おおう…」

外人みたいに肩を竦め、余裕の表情の赤土先生。なんていうか、一枚も二枚も上手な感じです

灼「むむむむ…」

晴絵「わーかったわかった。悪かったから戻ってこい」

そう言って、さっきまで隣で座っていた灼ちゃんに、元の席に戻るよう促します

灼「むー…」

私を遮蔽物にして拗ねたような声を出し、赤土先生を伺う灼ちゃん

晴絵「あらたー」

ポンポンと、座椅子を叩く赤土先生。なんか動物を呼んでるみたいな…

灼「…はあ」

それで戻っちゃう灼ちゃんは、きっと赤土先生には一生敵わないんじゃないかなぁ、と思ってしまうのでした

穏乃「あ。絹恵さんだ」

玄「え?」

憧「あ。ホントだ」

晴絵「ん?」

宥「ああ。お二人もご夕飯かな?」

灼「ん。愛宕洋榎」

晴絵「なに?愛宕…」

穏乃ちゃんの声に、食堂の入り口を見る私達
そこには先程お風呂で仲良くなった愛宕絹恵さんと…その姉の、「あの」愛宕洋榎選手の姿

憧「愛宕…洋榎」

それは先日のインターハイでも大暴れした、姫松高校の絶対的なエースにして主将
雑誌でも宮永照や清水谷竜華らと共にプロ入りが確実視され、様々なクラブが水面下で争奪戦を繰り広げられていると噂になっている、今年の目玉選手の一人
ただ、恐ろしいほどに強い人

我々阿知賀女子麻雀部としても、同じ雀士として、目標の一人でもあります
自然、それほどの大物の登場に緊張感が高まります。争うわけでは無いですが、当然空気も張り詰め…

絹恵「ほらほら、お姉ちゃん。そろそろ自分の足で歩いてーな」

洋榎「あかーん。なんかもうウチあかーん」

玄「…」

妹さんの方にしがみついて引き摺られるようにして部屋に入ってきた愛宕洋榎さんの登場に、空気が緩みます

絹恵「おねえちゃーん。もう!恥ずかしいからいい加減に…」

洋榎「絹恵ー。このままご飯も食べさせてーなー」

灼「…」

絹恵「何アホな事抜かしとんねん」

洋榎「今なー。ウチなー。めっちゃ変な気分やねんー。めっちゃブルーやねーん」

憧「…」

絹恵「だから~。さっき部屋から追い出したのはやりすぎたって…」

洋榎「も~あかーん。もうあかーん。このままウチはカニになりたーい」

穏乃「…」

絹恵「はぁ…はい。着いたよ」

洋榎「おっ!美味そうやなー」

晴絵「…」

絹恵「…あ」

目が合っちゃった

絹恵「…ど、ども」

玄「…ど、どうも」



で、なんだかんだで時間が過ぎて。食後

洋榎「お前オモロイやっちゃな~」

穏乃「えへへへへ」

お姉ちゃん、なんか仲良くなっとるし
えっと、阿知賀の大将の、穏乃ちゃんやね

洋榎「猿みたいやし」

穏乃「何をー!そっちだってカニみたいな髪型してるじゃないですかー!」

洋榎「なんやとこらー!」

穏乃「うわー!」

キャッキャとじゃれあって。なんかレベル低いやりとり、楽しそうだこと
あ。あの…憧ちゃんやったか。も溜息吐いとる

洋榎「あっはっはー♪」

まあ、さっきみたいな扱いにくい状態よりはええけど…なんだかなー
他にもお客さんおるのに。幸い今はそれなりガヤガヤしとるから目立ってないけど

絹恵「…ふう」

お姉ちゃん…。なんか、今日はホンマに変やない?なんていうか、ハメを外しすぎって言うか、キャラが安定してないっていうか…
なんか、嫌な事でもあったん?それとも…だとしたら…

溜息を一つ。すると横から、背の高い女性が話しかけてきた

晴絵「随分面白いお姉ちゃんだね」

絹恵「…あ。えっと…」

晴絵「はじめまして。阿知賀の顧問の赤土だよ」

…この人が、赤土晴絵先生か
名前は何度か聞いたことがある。取り敢えず挨拶

絹恵「あ。ども…愛宕絹恵です。すみません、騒々しい姉で」

晴絵「うんにゃ。楽しいお姉ちゃんだねって事さ」

絹恵「はは…ども。けど恥ずかし…」

灼「まあ、「あの」愛宕洋榎が、こんなキャラだとは、ちょっと予想が…」

玄「失礼だよ、灼ちゃん」

宥「穏乃ちゃんも楽しそう~」

憧「…馬鹿シズ」

絹恵「…皆さん」

お姉ちゃんとじゃれとる穏乃ちゃんを除いて、阿知賀の皆さんがここぞとばかりに話しかけてくる
ちょっとお姉ちゃんの変な感じに疲れてたウチに、これはありがたかった。この子らみんな癒し系で話してると安らぐんで

晴絵「けど、なんか様子がおかしい…かな」

絹恵「…え?」

が、赤土先生の一言に思わず身を固くしてしまうウチ

絹恵「あの…おかしい、とは?」

晴絵「あ。いや。悪いね。変な意味は無いんだけど。どうも、ちょっと気になった事があったんで」

絹恵「気になった事…?」

晴絵「…あ~」

絹恵「…あの、赤土先生」

晴絵「ごめん。やっぱ、なんか変なこと聞きそうになった。忘れて」

絹恵「えっと…」

晴絵「あ、いや。そうじゃなくてさ」

わたわたと慌てるように手を振って、言い直してくる赤土先生

晴絵「なんか、噂に聞いてた愛宕洋榎の性格とちょっと違うっていうか、どうもしっくり来ないっていうか」

絹恵「…」

晴絵「なんか、ちょっと辛そうっていうか…」

絹恵「…」

晴絵「…そ、ん…な…気、が…し…て…」

絹恵「…」

晴絵「…な、なんか、その、だね。た、助け?に、なれることあったら、言ってくれていいからね。ほら、私一応教師だし」

絹恵「…」

晴絵「…ぐう」

絹恵「…」

困った顔の赤土先生
多分、今、ウチ、ちょっとこわい顔しとる。憧ちゃんと、灼ちゃんの顔が強張っとる。松実姉妹は怯えとる
ごめんな。別に怒ったわけやないんやけどな…

穏乃「あはははは!洋榎さんそれちょーウケるー!」

洋榎「ははははは!せやろー!オモロイやろー!」

穏乃「うん!うん!あはははは!!」

二人の笑い声が聞こえる

絹恵「…あの」

洋榎「そやったら、この話はどや?」

穏乃「えー?今度はどんな話ですかー?」

お姉ちゃんの嬉しそうな声

晴絵「ん?」

洋榎「ええか?あのな…ちょっと耳貸せ」

穏乃「ふんふん…………あはははははは!!」

洋榎「なー!なー!おもろいやろー!」

嬉しそうな…

絹恵「あとで、ちょっと二人で話せます?」

晴絵「あとで…?」

ズキン

絹恵「…お言葉に甘えて、ちょっと、相談したいことが」

晴絵「…いいよ」

…頭、痛い

最近は、大分治まってきてたんやけどなぁ






















はぁ


楽しそうに笑いおってからに


食い終わったんなら早くどっか行けーや


やっぱ顔合わせんのしんどいねん


…どっかで時間潰してくるかな


カードは…まあ、また今度返せばええか


…はあ

1時間後
穏乃ちゃんとお姉ちゃんは、他の麻雀部のみんなを巻き込んで卓球に行った
ウチは、最初の30分付き合って赤土先生と外へ。名目は、喉乾いたんでジュースとお菓子の買い出し
なんか、この後みんなの部屋でトランプ大会も決まってたんで、ちょうど良かった

わざわざ車出してもらって、二人でコンビニ行く体で、二人きり。灼ちゃんも来たいって言ってたけど、悪いけど断らせてもらった
静かに走る自動車の中で、本来の目的を果たす

絹恵「…」

晴絵「…さて、と」

ウチの方は見ずに、赤土先生

絹恵「…」

晴絵「…で、相談って?」

絹恵「…ウチの姉の事です」

ウチも先生の方は見ない。まっすぐ、暗い阿知賀の夜道を睨む

晴絵「…だよね」

外には、誰も居ない。車さえ走っていない。街灯すらほとんど無いその世界で、キューブのヘッドライトが頼りなく道を照らす
一人で歩くなら、こんなに心細い道は無いと思う

絹恵「赤の他人から見て、様子がおかしく見えましたか?」

晴絵「…あー」

片手をハンドルから離し、困ったようにボリボリと頭をかく赤土さん。ちょっと躊躇うように何かを言いかけ、一旦口を閉じる
ゆっくりと車が曲がる。気付けばそこはコンビニやった。赤土先生は駐車場に車を停め、サイドブレーキをかける。エンジンは切らない
シートベルトをパチンと外す赤土先生に習い、ウチも外すことにする。暖房の効いた車内は、少し暑い

軽く目を瞑り、少し考えるような仕草をした赤土先生。一息長い呼吸。鼻から吸い、口からゆっくりと吐き出す。コクンと一回頷いて、目を開けウチの目を見て、聞いてきた

晴絵「…これって、結構失礼な質問かもだし、あんま聞いていいもんでもないかなーって、思うんだけど、さ」

絹恵「…」

晴絵「…でも、もしかしたらちょっとくらいだったら力になってやれるかもだからさ」

絹恵「…」

晴絵「…よかったら、聞いてもいい?」

絹恵「…はい」

晴絵「…ん」

絹恵「…」

晴絵「…」

晴絵「お姉さんって、ちょっと情緒不安定の気ある?」

絹恵「…」

晴絵「…そっか」

ウチの顔を見て、納得したように一言

それが限界やった

重い~でも先が気になる

絹恵「お姉ちゃん、あれで結構気が弱い人やから」

晴絵「…そっか」

絹恵「それに気にしいで、臆病で…その癖目立ちたがり屋で」

晴絵「…」

絹恵「だから」

晴絵「…」

絹恵「本当は全然余裕が無いんです」

晴絵「…」

絹恵「最近はそれでも大分改善されてきた筈なんやけど…」

晴絵「ここに来て、また再発…でいいのかな?しちゃった、と」

絹恵「…」

晴絵「原因は?」

絹恵「わかりません」

晴絵「…ふむ。これは驚いたね。あの自信の塊みたいな愛宕洋榎が…」

絹恵「全然そんな事ないんです」

晴絵「…」

絹恵「それは、全部虚勢や。ウチは、お姉ちゃん程コンプレックスの塊みたいな人間を他に知らん」

晴絵「…」

絹恵「虚勢やけど…けど、麻雀は実際にとんでもなく強いし、頼りになる主将演じればみんなから尊敬も集めれる」

絹恵「だから…だから…」

絹恵「…だからって、なんでこんなにお姉ちゃん、苦しまなアカンの!?」

穏乃「とあーーーーーー!」

パッコーーーーン!

洋榎「ぬあーーーー!?」

灼「ゲームセット。穏乃の勝ち」

穏乃「やったー!」

洋榎「うぎゃーーー!?また負けたー!」

憧「これで穏乃、私、玄に負けだもんね」

洋榎「くっ!卑怯やで!今思ったけどここアウェーやん!お前らさては遊び慣れてんな!?」

灼「純粋に身体能力の差だと思…」

洋榎「くっそーーーー!バリバリスポーツマンやっとった絹さえおれば、お前らなんぞにー!」

宥「でも、私と灼ちゃんには勝ってるよ?」

洋榎「そうやけどー!」

穏乃「またもう一勝負します!?」

洋榎「もー付き合っとれん…」

灼「同じく」

憧「アンタ、ホント無駄に体力あるわよね…」

穏乃「えー。もっと遊びたいー」

洋榎「自分、運動系でも世界狙えるで…」

穏乃「ぶー…」

憧「あれ?玄は?」

宥「さっきお手洗い行くって」

洋榎「あー。それにしても、ほんま自分ら凄いなー」

憧「んあ?」

洋榎「だって、麻雀強いし、卓球強いし、可愛いしで。特に穏乃の運動神経半端ないわ」

穏乃「えへへ…」

憧「かっ!可愛いって…」

灼「私は負けた」

洋榎「ボーリングは?」

灼「…ちょっと自信ある」

洋榎「取り柄が複数あんのは凄い事やで~」

憧「それを天下の愛宕洋榎に言われるとはね」

穏乃「洋榎さん、麻雀で私の目標の一人です!」

宥「それに、洋榎ちゃんだって凄く可愛いじゃない。私なんて目じゃないよ~」

洋榎「あははは。おおきに~。ふはは。確かにウチ、麻雀は最強で見た目もめっちゃ可愛いそうやけど」

洋榎「…って、誰の見た目が可哀想やねん!」

穏乃「ノリツッコミだ!」

憧「本場ものだ!」

洋榎「勿論お金取るで~。今のボケで100万円や。ほれ、穏乃。はよ」

穏乃「ええ!?」

灼「いやいや。穏乃、そこはツッコミ入れてあげようよ」

洋榎「はははは。……ふ~。疲れた」

憧「私も喉乾いちゃった。晴絵達、まだ帰ってこないのかな」

穏乃「私もおなか減った」

憧「もう!?」

洋榎「ははは…」

洋榎「…」

洋榎「…」



ええなぁ。自分らは

ウチじゃ逆立ちしても敵わんわ

まあ、絹なら自分らに勝てるかもやけどー

おっぱい大きい松実姉妹

宥はまつ毛が長くて、色白で

玄はストレートな可愛い系美人

太陽見たく元気溢れる、健康美の穏乃

ピッチピチでちょっと鋭い感じの美形な憧に

さらさら髪が日本人形みたいに綺麗な灼

タレ目でやかましいだけのウチとは、全然違う

きっと、クラスの男子共に「ブース ブース」言われる事も無く育ってきたんやろなぁ…

ほんっと、今思い出しても腹立つ。中学くらいまでは言われとったっけか?

高校じゃネタキャラやし

確かに絹は美人なのにウチは不細工やけどさー

気にしてんやからそういう事言わんといて~な

あー…ええなぁ…

みんな、ウチと違って、可愛くて、性格も良くて…

ホンマ、敵わん

あーあーーーーーー

美人に生まれたかったわー

今日の分終わりー

洋榎ちゃんはかわいいよ!

洋榎ちゃんかわいい

おかしい。こんな事は許されない

初期絵だと部長やまこのようになってた可能性も

ちゃちゃのん可愛いからねぇ

昼休憩中に覗いたらイッチきてたー
こんなに嬉しいことは無い

イッチのカンちゃんやアラサー話面白かったです、カッコよくは個人的に咲ssで殿堂入りです、魔法少女も京太郎からまないのは普段あんまり読まないのに普通に楽しめました。そんなイッチのssを楽しみにしてます。かしこ

>>460
どこ縦読み?

昼こいたか…かな?
長文すんません、つい嬉しくて

本日の予定
今から書いて、料理人がなんとかするドラマ始まったら中断。ジョジョ見終わったら眠気次第で再開



ちょっとだけ、昔の話をしようと思う


ちょっとだけ、ウチには辛い話を。そして、お姉ちゃんには、きっと凄く辛い話を


言うても、別にそんな重い話でも、悲しい話でもあらへん


多分、第三者が聞いたら…ホンマ、拍子抜けするくらい。もしかしたら微笑ましいとすら思うかもな


けど、当事者にはそうじゃなかったってだけの話


どこにでもあるし、もしかしたら似たような経験のある人よーな人も、居るかも、な

お姉ちゃん…愛宕洋榎は、小さい頃からああいうキャラやった

気が強くて、お調子者で、おもろくて…

友達は男女関係なくとんでもなく多くて、小学校の頃なんて家でお姉ちゃんの誕生日会開いたらクラスの2倍近い友達が集まって、大変なことになったりもした

休み貰ってたお母さんとお父さんが料理やらの準備に奔走してヘトヘトになってたの覚えとる

あと、みんなからの誕生日プレゼントでほくほく顔のお姉ちゃんも

ウチも、そんなお姉ちゃんが物凄く自慢やった

「洋榎」、「洋榎」って、みんながお姉ちゃんに話しかけて、笑ってた

お姉ちゃんはその頃から頭の回転も早くて、面白い話沢山出来て、ボケもしまくって、あと、感情表現が豊かだったからリアクションも派手で

そんなお姉ちゃんやから、ホンマ、ホンマに男女別け隔てなく、友達が多かったんや…

で、な

正直な話

お姉ちゃんは、凄くモテた

ウチは知っとる

小学校の高学年になった頃。クラスの何人かの男子がお姉ちゃんの事好きやったって話

まあ、それ知ったのは後からだったり、友達伝いだったりするんやけどな

雑談してそういう流れになった時、いきなり、「そ~いえば、どこどこ高校の○○先輩、昔絹のねーちゃんの事好きだったらしいで~」

…みたいな

で、その人の名前を聞くと、大体ウチは顔を顰めるんや

だって、その人、大抵お姉ちゃんをいっつもからかってた人達の名前

お姉ちゃんに

「ブサイク」

言うてた連中の名前

男の子って、なんであーも馬鹿なんやろね

好きな子にブサイクブサイク言って、その反応見て楽しんでたらしい

しかも、けったいな事にフォロー無し

オマケに臆病もん共、フラれんの怖くて、あとお互いに牽制ばっかしあってて、中学卒業まで最後まで誰ひとり告白せず

それで格好付けてるつもりなんがマジ笑えるわ

なんでなん?

そんなこと言っても嫌われはしても好かれる訳無いって、ゴキブリでも気付きそうなもんなのに

で、お姉ちゃんはお姉ちゃんでいちいちそう言われるのに対して面白い返ししようってムキになって

自虐ネタ自虐ネタ自虐ネタ自虐ネタ自虐ネタ!

茶化してるつもりかしらんけど、それで尚更男子共のイジりがエスカレートする悪循環

面白い事やってるって自分誤魔化して、自分貶めて

で、一人心の中で傷付いて

人一倍繊細で臆病なくせに意地張って、誰にも相談できないで。次第に惨めなピエロになってって

…お姉ちゃんも大概アホやね

……同じ校舎通っててお姉ちゃんの事全然気付いてやれず、呑気にサッカーやってたウチはもっとアホやけど

高校になってからは流石にみんな少しは大人になったのか、そういうのは無くなったけど

お姉ちゃん、気付いたら、もう

ちょっと………

晴絵「軽度の情緒不安定性パーソナリティ…ねえ」

絹恵「はい。で、その時自尊心があまりに傷付き過ぎて、自分という存在それ自体に信頼が持てなくなって…」

晴絵「それで、自分の価値を過小評価するようになった、と」

話が終わり、そう言って赤土先生は話をまとめてくれた

絹恵「…はい。その…お姉ちゃんをイジってた子の中に、お姉ちゃんが好きだった子も居て」

晴絵「あちゃー…」

顔をペチンと手で覆い、「それはやっちゃったなー少年…」と声を漏らす先生

絹恵「…一時期は人間不信って言うか、男の人がホンマに信じられなくなって。今はそこまででは無くなったんですけど」

晴絵「…なるほど」

目を手で隠したまま相槌を打ってくれる。正直、ウチも今の顔がどんなになってるかわからんから、顔を見られずに済むこの状態のが嬉しい

絹恵「で、今度はテレビに傾倒するようになって」

晴絵「テレビ?」

怪訝そうに聞き返してくる声

晴絵「そこでなんでテレビ」

絹恵「恐らくですが、テレビっていうか芸能界って、現実なのに華やかで、自分らの住んでる世界とは別の世界みたいじゃないですか。それで、現実逃避というか…」

これは、ウチの推論やった。ついでに言うと、これはお姉ちゃんを病院に連れて行って調べた訳ではない
様子のおかしくなったお姉ちゃんの変化を調べている内に、勝手にそう結論付けただけだった
もし本当に精神病院に連れて行って精神的な疾患が有ったとしたら、きっとウチは立ち直れそうにない

なんとか解決方法は無いかと探していた時期もあったが、最近大分状態が良くなっていたので、愚かにも安心していたのだ

晴絵「ふむ…瑞原さんとか見てるとそうかー?って気もするが。…ある意味住んでる世界が違うとは思うけど、プライベートだと…」

絹恵「そうですね。結局、芸能人だって人間なんやし、ウチらと何も変わらん…」

そこでハッと気付いたことがあった

絹恵「…もしかして、今朝『ちゃちゃのん』に会ったから…?」

晴絵「ん?ちゃちゃのん?」

絹恵「あ。いえ、その、家老渡高校の佐々野いちご選手って御存知ですか?」

晴絵「あー。あの、確か高校生アイドル雀士とかいう…」

絹恵「その『ちゃちゃのん』が、今日松実館に泊まってるのは!?」

晴絵「え、そうだったの?いや、会ってなかったから初耳だけど…」

絹恵「お姉ちゃん、『ちゃちゃのん』が、生まれて初めて会った芸能人なんや」

晴絵「…」

絹恵「で、たまたま機会が有って、話も結構して…そういえば、お姉ちゃん『ちゃちゃのん』にちょっと意地が悪かった…」

晴絵「意地が悪い」

絹恵「思えば、あの時から変ではありました」

晴絵「なんで芸能人に会ったからって…いや、待てよ?今まで違う世界の住人だと思ってた芸能人、けど一方では同じ高校生雀士」

晴絵「話して、もしも自分の現実逃避の場が、同じ世界だってのをまざまざと見せつけられたりしたんなら…」

絹恵「…加えて、『ちゃちゃのん』、お姉ちゃんのコンプレックスの一番深いとこにある「容姿」が、殊更に良い」

晴絵「…おいおい。それ…」

赤土先生が顔を引き攣らせながらこっちを見てくる。ウチも、今ちょうどそんな気分になったところだった

絹恵「…なんか、嫌な予感がします」

無言でシートベルトをかけ直し、サイドブレーキを解除する赤土先生

晴絵「シートベルトはかけときな」

絹恵「あの…はい」

晴絵「…オッケー。んじゃ、さっさと帰ろっか」

絹恵「えっと…いいんですか?」

晴絵「ま、飲み物とお菓子は、買い忘れたってことで。私から謝っとくから」

ギアが、PからDになる

晴絵「なんか私も、さっきから嫌な予感してるし、ね」

旅館までの道は、あっと言う間やった







はい


はい


どうも、お疲れ様です。ごめんなさい


そして、ごめんなさい


只今、私、松実玄は


物凄く後悔をしています。ごめんなさい

洋榎「…」

いちご「…」

玄「…」

宥「…」

穏乃「洋榎…さん?」

憧「シズ。ちょっと」

穏乃「うわわ。ちょ、憧、引っ張んないで」

玄「…」

灼「ねえ、玄。どうしたの?これ」

玄「いや、私にもよくわからないんだけど…」

食後の卓球大会で穏乃ちゃんにストレート負けした後、一旦お花摘み休憩に向かった私
用を足し終え、卓球台のある部屋へ向かう途中、驚くべき方に出会いました
どうやら、お食事の帰りだったようですが…

いちご「あれ?」

玄「あっ!」

いちご「ま、松実玄!?」

玄「ええ~~~!?『ちゃちゃのん』!?」


……で、その流れで、ちょっとお話しまして
「今、みんなで卓球やってるんですよ~」とか言っちゃったりして
ちょっと複雑そうな顔してる『ちゃちゃのん』さんに、「何かお悩みでも?」とか調子に乗って聞いちゃったりもなんかして

で、言い淀んでる『ちゃちゃのん』さんに、得意げに「汗掻いたらきっと嫌な気分も吹き飛びますよ!」とか言っちゃって
この機会に仲良くなろうとかそんな下心を抱きつつ半ば強引に連れてきて、これ


今、二人のお客様を中心に、卓球場に非常に重苦しい雰囲気が流れています

洋榎「…」

藪睨みに近い物凄く険しい表情で『ちゃちゃのん』さんを睨む洋榎さん

いちご「…あー……」

その視線を受けて、最初ちょっとたじろいだものの、どうしたら良いかわからない感じの、微妙そうな表情で目を見つめ返す『ちゃちゃのん』さん

洋榎「…」

いちご「えっと、さっきぶりやね。愛宕洋榎」

洋榎「…」

どうやら先程既にお会いしているそうですが…何があったのかな?

いちご「出来ればあんま会いとうなかったけど、ついでやしお前さんがさっき『ちゃちゃのん』の部屋に忘れてったケッタイなもん返すわ」

いきなり軽口です。あれ、仲良かったりする?でもこの雰囲気は…あれれ?

洋榎「…」

いちご「ほれ、助平なカード」

そう言ってお財布から出したそれは…
あー。あのカードは…

穏乃「なんですか?あれ」

憧「…穏乃は知らんでよろしい」

穏乃「え~…」

灼「…玄?」

玄「いや、だって…」

宥「売上が…」

なんもかんも不景気が悪いのです。結構貴重な収入源なのです

洋榎「…なんの事や?」

いちご「は?」

シレッと返す洋榎さん。対して眉尻をピクッと釣り上げる『ちゃちゃのん』さん
なんだか、どんどん雲行きが怪しくなっていきます

洋榎「うわ。それ、あれやろ。18禁の、テレビに付いとるスケベなビデオ見れるやつ。うわ、高校生の時分でよう見るわそんなの。変態」

いちご「んな…」

絶句して、『ちゃちゃのん』さん。目が大きく開かれます

洋榎「おーい!みんなー!『ちゃちゃのん』、芸能人のくせに変態やでへんたーい!」

穏乃「えっと…」

いちご「はあ!?」

玄「えっ!?」

なんの事だかわからないと言ったような穏乃ちゃんの声
『ちゃちゃのん』の困惑の声
私も、思わず変な声を漏らします

洋榎「へーんたい!へーんたい!へーんたい!大スキャンダルはっけーん!」

いちご「ちょ、やめーや!わかったって。こんなとこで堂々返そうとした『ちゃちゃのん』も悪かったけえ…」

からかっているようで、表情は真剣そのもの。と、いうかムキになったような洋榎さん。まるで親の敵のような表情で『ちゃちゃのん』さんを睨んでいます
『ちゃちゃのん』さん、慌てて謝罪

洋榎「やかましいわ馬鹿!変態が!」

ですが、洋榎さんの表情はちっとも和らぎません

宥「なんだか穏やかじゃないね」

お姉ちゃんの緊張した声が聞こえます

いちご「なんじゃ、そんな怒ること無かろうが…」

たじろぐ『ちゃちゃのん』さんに、尚も激しく口撃する洋榎さん

穏乃「洋榎さん、なんか怖い…」

穏乃ちゃんの言うとおり。はっきり言って、異常なまでに鬼気迫る洋榎さんは、さっきまでの優しくて面白いお姉さんと全然違います

憧「一体どうしたのよいきなり…」

憧ちゃんも困惑しています。無意識でしょうか、震える手で穏乃ちゃんの手をギュッと握っています

洋榎「大体なんやねん!お前、馴れ馴れしくウチに話しかけてきよって、汚れの芸能人だかなんだか知らんが何様や!」

いちご「はあ!?なんじゃ、喧嘩売っとんかアンタ!?」

洋榎「だったらなんや!!」

いちご「喧嘩売っとるんなら買ったるけえ、このタレ目が…!」

洋榎「っっっ!!!」

売り言葉に買い言葉。『ちゃちゃのん』さんのその一言に、ビクンと大きく肩を震わせた洋榎さん

洋榎「うあああああああああああああああああああ!!!」

玄「うわっ!?」

灼「ちょ…!」

ヒートアップした洋榎さんが、『ちゃちゃのん』さんに飛びかかって…

いちご「っ!?」

パーーーーーーーーーーーーン

洋榎「…」

乾いた大きな音が響き、一気にしんと場が静まり返りました

真っ赤になっ左頬を、呆然とした表情で抑え、ぺたんとへたり込む洋榎さん

いちご「あ…」

信じられない表情で、振り抜いた自分の右手を見つめる『ちゃちゃのん』さん

ビンタ一閃でした

時が止まったようでした

誰も動けない

元気いっぱいな穏乃ちゃんも

意外と世話焼きな憧ちゃんも

優しいお姉ちゃんも

私も

冷静沈着な灼ちゃんさえも

それから何分経ったのでしょう

しばらくして

洋榎「うえ…」

洋榎さんの口から、呻くような声

洋榎「うええ…」

その声は

洋榎「うえええええ…」

止まった時間の中で、唯一次第に大きくなっていき

洋榎「うえええええええええええええええ…」

爆発しました

洋榎「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

絹恵「お姉ちゃん!!」

晴絵「灼!何があった!!」

灼「ハルちゃん!?」

洋榎「うわああああああああ!!ああああああああああああああ!!ああああああああああああああん!!!」

その最中、固まっている私達の空気を叩き壊すように絹恵さんと赤土先生が駆けつけてきました
この混沌の中、直ぐ様灼ちゃんに状況確認をする赤土先生の声が、とても頼もしく感じました
けど…

洋榎「うわあああああああああああああああああああん!!」

幼子のように泣き喚く洋榎さんの声の響く中

いちご「なん、だって、いうんじゃ…」

『ちゃちゃのん』の、今にも消えてしまいそうな声が

いちご「うちは、どうすりゃ良かったって…」

聞こえたような気が…

信長のシェフ始まったんでとりあえずここまで

それから

玄「…」

宥「…」

穏乃「あの」

灼「何?」

穏乃「…いや、その…」

憧「穏乃…」

穏乃「…」

私達は、自分達の部屋に戻っています


絹恵さんが取り乱す洋榎さんを連れて部屋に帰りました
絹恵さんもちょっと混乱していたので、赤土先生もそれに付き添っていっています
私達も何か出来れば、と思ったのですが…赤土先生は、「お前らは部屋に戻ってろ」…と

赤土先生達がその場を去った後もしばらくその場で私達だけで話し合っていたのですが
結局、何も出来ないという事を思い知らされただけでした

灼ちゃんが力なく部屋へ帰る事を決めた時、それまで呆然としていたはずの『ちゃちゃのん』さんも、いつの間にか居なくなっていました

穏乃「洋榎さん、大丈夫かな…」

憧「シズ…」

宥「…どうだろう」

灼「なんで急に取り乱したんだろう」

玄「…わかりません」

私達は、無力でした

灼「ハルちゃん…」

頼りの綱は…赤土先生だけ




晴絵「お姉さん、落ち着いた?」

絹恵「…はい。今は、泣き止んで眠ってます」

晴絵「そっか。ひとまずは、良かった。だったら少しそっとしておいてあげて」

絹恵「一体何があったんやろ、お姉ちゃん。幾らなんでもこんなの…」

晴絵「…灼の話だと、なんでも佐々野ちゃんに掴みかかったらしいね」

絹恵「なんでそんなアホな事…」

晴絵「わかんないな」

絹恵「…すみません。皆さんの楽しみにも水を差すような真似…」

晴絵「それは構わないけど…でも、このままにしておく訳にもいかないよな」

絹恵「…」

晴絵「まあ、あんまり上手く動けるかはわからないけどちょっと、頑張ってみるかなぁ」

絹恵「…赤土先生?」

晴絵「それじゃあ、今日はもう休みなさい。今お姉さんと一緒にいるのが辛かったら、私がここに居るからうちの生徒のとこ行ってもいいから」

絹恵「…けど」

晴絵「ああ。みんなも心配してるだろうから、さ。ちょっと行って安心させてあげてよ」

絹恵「…ホンマに、すみません」

晴絵「ん」

絹恵「すぐ戻ってきますんで」

晴絵「ああ…」

晴絵「…」






さて、と…




今日の分終わりー
わざわざ話を重くしないとシリアス風に持ってけない俺はほんと雑魚

明日で洋榎×ちゃちゃのんはいいとこまで行きたい。まだ全体の流れで言うと起承転結の起すら始まっとらん(絶望)

ちょっとくらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!
乙ー

頑張れ頑張れできるできる
おつ

明日っていつだっけ。ああ、日曜の事やな(震え声)

今日はおやすみ

代わりに日付変わった頃…

超乙!
毎日チェックしてるであろうここの住民にはイッチへの愛を感じるなあ

続き待ってます

明日っていつだっけ。ああ、日曜が明けた頃か(適当)

明日って明日さ。3月5日(小声)

約束は破るものであるを地で行ってて申し訳ないわ
本当にこんな牛歩の歩みで進んでるスレを見捨てないでくれてるお前らには頭が下がる

今日は昼間に非常にヘビーな事があったせいで心情的に重いのが書けません
ID変わるまでの小一時間ほど地の文無しの軽い小ネタ書こうと思うんだけど

なんかお題ない?

ファミレスのドリンクバーどっちが多く飲めるかとかで争うアラフォーと誰かとか?

混ぜるこーこちゃんVS飲むすこやんとか?

プロ勢アンドアナ勢ハーレム

恒子「かんぱーい!」チンッ

健夜「か、かんぱーい」チンッ

咏「乾杯ー」

えり「はい。乾杯」

ガヤガヤ

健夜(っ言っても、ジュースだけど)コクン

健夜「…ふう。おいし」

健夜「…」キョロキョロ

はい

どうも。小鍛治健夜です

只今、私はとあるファミリーレストランに来ております

健夜「…それにしてもすっごい数の人だねぇ」

恒子「インターハイの打ち上げだからね~。解説に来てくれたプロのみんな呼んで、慎ましやかだけど打ち上げをって、ね」

健夜「うーん…」チラッ

恒子「ちなみに、高校生が主役の大会だからお酒とかはちょっと…って話だけど、二次会は自由だからこの後みんなで飲みに行こうぜ~。あ、みなさんメニューを」

はやり「はやりは天ざるお願いします☆で、はやりはもちろん行くけど、みんなはどうするのかな☆」

えり「いいですね。賛成です。バーニャカウダとフライドポテトで」

咏「私ハンバーグ定食。知らんけど。確か良子ちゃん今年ハタチだっけ?お姉さんが奢ってやるよん」

良子「マジですか。それはベリーベリーサンクスアロットです。あ。私はハニトーを」

理沙「行く!ケーキ!」プンプン

みさき「私はお好み焼きをお願いします。理沙さん、飲めるんですか貴女は…」

理沙「飲める!たくさん!」プンプン

みさき(着いて行ってこっそりオレンジジュースにすり替えておこう)

靖子「カツ丼大盛り。ああ、今食べてるのは店の前のホットモットのやつだ。気にしないでくれ」ムシャムシャ

健夜(みんななんてフリーダム…特に最後)

恒子「うっし。みんなメニュー決まったね。すこやーん!ドリンクバー行こーぜー」

健夜「私!?」

恒子「だって多いし。私一人じゃいっぺんに持って来れないわん」

健夜「だからってなんで私に…」

恒子「あ。ごめん。そうだよね、こんな雑用は若い下っ端にやらせる仕事だったか。さあ、瑞原プロ」

はやり「あ、そっか。はやりの仕事だね☆」

健夜「ツッコミしにくいよ!?」

恒子「あはははは!」

はやり「え~?なんで~?」

健夜「いや、だって瑞原さん今年でにじゅうは…」

はやり「あ?」

健夜「…私、アラサーだけど行ってきます」

恒子「お伴するよん♪」

健夜(世の中は不条理で満ちている…)

良子「あの…あ、いえ。なんでもないです。すみません、今年ハタチで」

恒子「えっと、三尋木さんがミルクで、のよりんがオレンジジュース。良子ちゃんがお茶で…」

恒子「瑞原さんが野菜100%ジュースかミネラルウォーター。あ、モロヘイヤベースのがあるからこれにして。針生さんが…」

健夜(瑞原さんの目が完全に『物理的に殺す』目だった…)カタカタ

恒子「…で、最後にすこやんが」

健夜「あ、私は…」

恒子「野菜100%ジュース15mlとメロンサワー15ml、牛乳20mをチェイスして、お茶と青汁各適量を最後に加え、軽くステアして…」

健夜「カクテル!?」

健夜「どうやってステアするの!?」

健夜「っていうか、全体的に非常に緑過ぎない!?」

健夜「あと、なんで私にだけそういうことするかな!」

恒子「いや、いつだったかのリベンジをと」

健夜「何をリベンジ!」

恒子「ほら。この前みたいに意外といけるかもしれないし、飲んでみてちょー」

健夜「…」

恒子「私の愛情入り!」

健夜「愛が痛いよ…」

恒子「ささ、ぐいっと」

健夜(なんで流されてるんだろ私)

健夜(我ながら押しに弱いなぁ…)グイッ

恒子「…どお?」

健夜「…お、おいじい…」

恒子「え、マジで!?」

健夜「ほら、飲んでみなよ」

恒子「う、うん…」

恒子「…コクン」

恒子「うぼぁーーーーーーーーーー」

健夜「ふ…」

健夜(してやった…!ついに!はじめて!)

恒子「げっほげほげほ…」

恒子「た、謀ったなすこやん!!」

健夜「べーっだ!いつまでもやられっぱなしの私じゃありませんー!」

恒子「こ、このやろう!女の子だけどこの野郎!いや、やっぱ訂正!妙齢の女性であらせられますがこの野郎!」

健夜「また年齢ネタでくる!前々から言おうと思ってたけど、こーこちゃんだって大した違わないじゃん!たった数年じゃん!そんなの誤差じゃん!」

恒子「おま、女の数年を誤差で済ますとか瑞原プロにノーザンライトスープレックス(プロレス技)くらっても文句言えないぞすこやんー!」

健夜「それに私こーこちゃんより童顔だし!…あまり好きじゃないけど」

恒子「うお…自分の身体的コンプレックスまで利用して若さアピール!?なんて老獪な!」

健夜「き、気持ちだって若いもん!」

恒子「うっそだー!私がミックスジュース作ってる間嫌そうな顔してたくせにー!すこやんには夢と冒険心が無いよ夢と冒険心がー」

健夜「そういうのは男の子の特権だと思うの…」

恒子「ドリンクバーでワクワクしない奴に若さを語る資格はない!」

健夜「な、なにおう!」

恒子「ふ。論破。完全論破。本質論破。私の勝ち。さあ、そろそろテーブル戻ろうか。みんな待ってるっしょ」

健夜「…」プルプル

恒子「すこやんはそっちのコップ持って…ん?何してんのすこやん」

健夜「待って。こーこちゃん」

恒子「…すこやん?」

健夜「そ、そんなに言うんだったら…」

恒子「は?」

健夜「そんなに言うんだったら、どっちが美味しいミックスジュース作れれるか勝負だ!」ビシーッ

恒子「ふはははは!そんなら自分で作ったやつを自分で飲んでって最後に沢山飲んだ方の勝ちルールなー。美味しいやつ作れたらそっちのが沢山飲めるだろうし」

健夜「受けて立つよ!」



咏「何やってんだあいつら」

えり「さあ」

良子「喉乾きました。サースティーです。早くティーを」

みさき「ケーキ美味しいですか?」

理沙「おいしい!」プンプン

靖子「すみません。カツカレー追加で」

はやり「あの二人はまだまだ子供だね~☆」

終わり

ちょうど小一時間でしたとさ。明日は早く帰れるはずなんでちゃんと書きます

乙ー

おつ、癒される

はやりんwwwwww
プロ勢いいな!
おつっす



ちょっとだけ、昔の話をしようと思う


ちょっとだけ、ウチにとっては辛い話を。そして、同時にとても救われた話を


言うても、別にそんな大した話でも、特別な事があったって話でもあらへん


多分、第三者が聞いたら…ホンマ、笑ってしまうくらい。もしかしたら呆れ果てられてすらまうかもな


けど、当事者にはそうじゃなかったってだけの話


どこにでもありは…せーへんかもしれへんけど、もしかしたら似たような経験のある人よーな人も、居るかも、な?



……そうやなぁ


あれは、いつの事やったか


確か……


ああ


ウチが、失恋した日の事やった


…えへへ。意外やった?うちだってな。恋くらいした事あったんよ


あー。すまんすまん


「ウソや!俺のアイドル洋榎ちゃんが男なんか好きになった事あるわけあらへん!うおーーー!」って人、そっ閉じ推奨なー。あ、でもな。安心せー


告白する前に終わったから


……ホンマ。酷いやっちゃでなー


これ、お互い小学生の時分やったんけど


そいつ、クラスがおんなじで。友達の多いやつで。お互い同じお調子もんで。ウチとやたらと気があって


だったもんで、良く一緒に遊んだり、してたんや


いつから意識しとったかはよく覚えとらん。でも、気付いたら好きになってた


柄にもなくリボン付けてお洒落してさり気なくアピったり…へへ。ほんと、らしくなかった。それが悪かったんかもな


家に呼ぶ口実が欲しくって、おかんに駄々こねて家でお誕生日会なんてやってみたり、な


自意識過剰にも脈ありだと思ったりなんかした事もあったりしちゃって


さあ告ろう、いつ告ろう、いつ告ろう


今日告ろう、今日の放課後告ろう。やっぱり明日、明後日、今日は日が悪い、邪魔が入った、見たいテレビがあるから…って、伸ばし続けてた



で、気付いたらなんや変な事になっとった


訳わからん。なんでこーなったんかもわからん


でも、これもやっぱり気付いたらなってたんやけど


仲良かった男子の数人が、ウチの事虐めるようになっとった


はじめはじゃれあってただけだと思った


気付いたら、エスカレートしとった


ブスブス言われ、小物隠され、軽く小突かれたりもして


辛かった


友達だと思ってた連中が日に日にウチの知らない存在に見えてきて…


ウチより小ちゃかったあいつらの身体も、小学校も高学年になった頃には完全に背追い越されて


いわんや中学では、や。もう完全に別の生き物にしか見えんかった


…と、話が脱線しとったな


そーそー。ウチが失恋した日の話


ある日の昼休み、ウチの事ブスブス言ってからかってくる連中に、一人の男の子が加わった


…も、言わんでもわかるよね


そ。ウチの好きだった子


仲良かった男子共の中でも、そいつだけはそれまでウチのいじめに加わってなかった


だから、実はと言うと甘い期待もまだ有った


いつか、その子が白馬の王子様よろしくウチの事いじめっ子から助けてくれるんじゃないかって


結論からするとその期待は文字通り甘かったんやけどね


で、その日は、今まで保っとったなんかダムみたいなもんが遂に決壊してもーて


人生初の早退や。はっはっは。ウチって不良~


夢中で走って、走って、泣きながら誰も居ない家に駆け込んで



しばらくは部屋に篭って、布団の中でしくしく泣いとった


けどすぐに寂しくなって。不安になって


誰かに助けを求めようにも、おかんは居ない。おとんもや。絹恵にだってこんな話できるもんやない


だって、ウチは愛宕洋榎やもん。友達たくさん、元気で明るくて、うるさくて、おもろくて、格好良い絹恵の自慢のお姉ちゃん


家族に余計な心配かけさたくないってのより、見栄やったんやろなぁ……


意地張っちゃって。勝手に誰にも相談出来なくなって、藻掻いてた


クラスの友達?…怖かった。だって、一番仲良かったあいつらがウチ虐めるようになったんよ?他の子だっていつどうなるか…


救いを求めても光が見えない


人恋しくて。今すぐ誰かにそばに居て欲しくて。でも、誰を頼ればいいのかわからなくて


そこで目に付いたのが、リモコン


エアコンのな


……嘘。テレビのです。ジョーク。え?つまらん?すんません


そん時何やってたかはもう覚えとらんけど


でも、優しい番組やったのだけ、覚えとる


辛かったこと、苦しかったこと、こんなはずじゃなかったこと


全部忘れさせてくれる、優しい話


テレビっ子愛宕洋榎、爆誕や



テレビはええな~


あんな事も、こんな事も、ドラマの中では劇的で


バラエティではみんな仲良く


ドキュメンタリーは感動で


料理番組はおいしそう


スポーツは迫力あって


麻雀は華やか


お笑いも当然大好きやで?お腹痛くなるだけ笑い転げられるって最高やん


教育番組は…まあ、眠くなるけど


最近は大人になったし、もっと色々思うとこあるで


ちびっこい頃は考えもしなかった事。考えれば考える程、テレビって凄いと思うんや


一つ一つの番組に一体どれほどのお金と時間と労力をかけて作られていて、どれほどの人が携わっているのだろう。ウチなんかには想像もつかへん


そんで、どれほどの人、どんな人達が、同じ瞬間に楽しんでいるのかって


おんなじ時間、おんなじチャンネル見てれば、見てるものは一緒


その場で一緒に見てる家族も、隣の家のおばちゃんも、友達も、部の連中も。みんな、みんな。一緒


もしかしたらウチ虐めてたあいつらとだって、素直に笑って、感動して、感心して、眠くなって、おいしそうな料理にヨダレ垂らすのまで、共感出来てるのかなって


いつの間にか、考えてることがわかんなくなってもうたあいつらとも…


だから……

洋榎「…ん」

「お。目、覚めた?」

洋榎「あれ?」

ふと、瞼の裏に光を感じて目を開く。寝苦しくてしゃーない
なんかこの布団生暖かくてキモイわーと思って顔の部分を撫でてみると、そこは盛大に濡れていた
涙?泣いてたん?ウチ

っていうか、あれ。今誰かウチに話しかけたよね?え、誰?
さっきまでウチ確か、えっと、何しとったっけ?あいつらに虐められて、逃げ帰って、自分の部屋に閉じこもって~…布団被りながらテレビ見てたんやったっけ
あれ、でもだったら家には誰も…

洋榎「あ…」

そこでようやく少し思い出す
ここは奈良やん。絹と二人でここ、阿知賀は松実館の百合の間っちゅう部屋で2泊3日のご褒美旅行
ご褒美っちゅーのは、ウチがインハイで大暴れしたったから、おかんが高校3年間頑張ったからっちゅーて…
それで…

洋榎「…ああ」

完全に思い出した。なんやかんやあって、夕食食べてからの事
阿知賀のみんなと卓球やって、『ちゃちゃのん』に会ったんや
で、つっかかって、喧嘩して…

洋榎「…阿呆みたいやん。なんであんな突っかかってん、ウチ…」

「あ~…おほん」

洋榎「ひゅえ!?」

自己嫌悪に頭を抱え、独りごちていると横から控えめな声がかかった
完全に意識の外だったので、超ビビる。そういえばさっきもなんか声聞こえとったわ

晴絵「そろそろいいかね?いや、なんか色々申し訳ないんだけどさ」

申し訳なさそうに。そんで、ちょっと決まりが悪そうに、その人は声をウチに声をかける

洋榎「あ。阿知賀の…」

晴絵「赤土晴絵だよ」

さっきまであんなに昂ぶっていたっていうのに。何もかもが怖くて、恨めしくて、羨ましくて。刺々しく見えたのに
不思議と赤土センセの優しく落ち着いた声は心地良かった

洋榎「赤土センセ」

晴絵「ん。どうやらちょっと落ち着いたみたいだね」

洋榎「あの、さっきは…」

晴絵「おもいっきり泣いて、すっきりしたのかな?ま、何にせよ良い事だ」

洋榎「えっと、ウチ…」

晴絵「今、絹恵ちゃんは席外して貰ってるよ。うちの生徒んとこ行ってるんじゃないかな」

洋榎「絹恵…」

晴絵「さっきの事、覚えてる?」

洋榎「…すんません」

晴絵「…」

布団から起き上がり、立ち上がって深々と頭を下げる
せっかく楽しくやってたのに、発作的に全てを台無しにしてしまった自覚はあった

晴絵「あ~。……まあ、ドンマイ」

少し考えてから、蓮っ葉に赤土先生。なんて言えば傷付けずにすむのか、と言葉に迷っているんやろう
無理もない。教師とはいえこんなややこしい、しかも他校生の面倒なんぞよう見れるもんやない
それでまたうちは自己嫌悪に陥るんや。ああ、また迷惑かけてもーた、って

洋榎「…その、なんて言ったらいいか。みんなで楽しくやってる時に水差しまして。大阪モンとして情けない次第です」

晴絵「いや、気にしないで…ってのも変か。難しいよね。でも、そんなに気に負わなくてもいいんじゃないかな。その…みんなも心配していたし」

洋榎「…」

晴絵「あの…えっと、ね。あの…その、佐々野さん」

洋榎「…」

赤土先生の口から漏れたその名前に、顔の表情が強張るのを感じる

晴絵「……」

赤土センセの顔にも緊張が走るのを感じる
ああ、アカンなぁ。またウチはセンセに迷惑かけとる

洋榎「ええ…ちゃちゃ…佐々野さんがどうかしました?」

だから、なんでもない風を装って逆に聞き返してやったった

晴絵「いや、どうかしたっていうか…」

困惑の表情
しまった。そういえば派手に喧嘩したんやった。せやったら「どうかしました?」は却ってムキになってるようにしか聞こえんわな

でも、それを認めるのには、どうしても抵抗があった
理由は歴然。つまんないプライド…ですらない何か。とおの昔にボロボロになったそれを、守ろうとしてるウチが居てるから

洋榎「なんか気に食わんかったんです。それだけです」

晴絵「いやいや。それは通らないでしょ…いや、うーん…」

尚も困惑の表情を深める赤土センセ。申し訳ないと思いつつ、言葉は止まらへん

洋榎「それです。それだけです。気に食わなかった。喧嘩すんのに他に理由要ります?しかも向こうは調子乗った芸人崩れ」

晴絵「おいおい」

困惑の表情が引き攣りを帯びてくる。ああ、すみません。申し訳ない気持ちが湧き上がる。けど、同時に後ろめたくも暗い喜びを感じて饒舌に拍車がかかる

洋榎「調子乗る前にここらで一発かましたるのが優しさやないですか?お前、現役女子高生麻雀アイドルだかなんだか知らんが、肝心の麻雀下手っぴなんやからって」

晴絵「…」

赤土センセの顔に陰が差す。あ、これちょっとマズイ。思うけど、止まらへん。叱られる。叱られる。叱られたくない。叱られたい

洋榎「大体、JKブランドも卒業したらそれまでや。そしたらちょっと顔いいだけであんな小物が生き残れるほど芸能界は優しいもんやない」

晴絵「…本気で言ってんの?」

低い声。ああ、もうアカン。これ言ったら終わりやな。半ば諦め気味に、でも、言わな。ウチは、何がしたいんや?

洋榎「当たりまえです。あんなの旬が過ぎれば枕やら汚れ仕事やらされて脱がされて、最後はAV女優のお決まりパターンやわ。長年テレビ見てきたウチにはわかるもん」

晴絵「…」

我ながら酷い事言っとる。ああ、アカン。これ、カスやん。酷過ぎや。今時ドラマのキャラでもおらんよこんな屑。でも…

洋榎「ま、あれやね。なんかあいつの雀プロ入りの夢葬ったのインハイのウチの清老頭らしいし?もし脱ぐってんならお布施に一本買ってやったってもええかもね。顔だけは良いし」

洋榎「ね、そうは思いません?赤土センセ!?」



もし、そんなキャラ、居るとしたら………


そいつは、きっと最後は惨めに終わるんやろうなぁ。誰よりも、惨たらしく、醜く、ひっそりと。誰にも愛されずに
昔は男友達で、今は赤土センセ。いつかは麻雀部の連中にも愛想尽かされて
いずれは絹や、おかんや、おとんにも…

そしたら

ウチ、誰に頼ればいいんやろ

また、テレビに逃げるんか?

でも…

ああ、ああ、あああああ、あああああああ…

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


晴絵「アンタ」

溜息一つ

さあ、叱られる。いや、ビンタでも飛んでくるか?もういっそ、見捨てられるかも
最後のだけは嫌やなぁ、と思いながらも、それらのどれが来ても受け入れる覚悟をしていると

晴絵「そんなに『ちゃちゃのん』が気になるの?」

思わぬ言葉が飛んできた

洋榎「っっっ!!なんでウチがあんな弱っちいヤツの事気にせなアカンねん!!!」

自分でも訳がわからないくらい激高し、喉よ裂けよと言わんばかりに声を張り上げる
今までの問答の中で、いや、『ちゃちゃのん』との会話も含め、いやいや。もしかしたら生まれてこの方体験したことも無いくらい、心の中がぐるぐると暴れ、痛いぐらいや

晴絵「いや、だって」

話は終わりと言わんばかりに立ち上がり、やれやれと苦笑いの赤土センセ。その大人の余裕だかなんだかが腹立たしい
さっさと帰れや。塩撒いてやりたい。と、ビビリのウチが背が高くて年上のこの人に対して噛み付かんばかりに牙を剥いているのが可笑しかった

で、去り際にセンセ。捨て台詞



晴絵「アンタ、好きな子に構って欲しい男子中学生みたいなこと言ってるし」


洋榎「は?」

晴絵「じゃーねー」

あっけなく部屋の入り口へ向かう後ろ姿に、思わず聞き返す

洋榎「ちょ…ま、待ってーな!なんやそれ!?仮にも教師やろ!?普通教師やったらこんな下衆いこと言ってる高校生に説教だかビンタの一発でもくれてやるもんやないんかい!」

わざわざ蒸し返す意味も無い筈やのに、置いてきぼりにされた子供のような不安を覚え、言う
返って来たのは冷たいというか無責任というか、そんな言葉やった

晴絵「やだよ。体罰なんて。最近の教師の不祥事はおっかないんだぞ。ちょっとした事でもすぐ大問題になる。それも他校の生徒になんてやったら尚更ね。説教の方はアンタに効果ある説教出来る自信無いわ」

洋榎「んな…」

呆気にとられてると、入り口の手前で一度立ち止まり、背中を向けたまま、今度こそ最後に寂しそうに笑って

晴絵「まだ新任間もない新米教師のお姉さんには、君のような問題児は荷が重い。だから、さ」

晴絵「だから…当事者同士で気の済むまで話し合いなさい」

そうして部屋の戸を開き


いちご「あ…」


擦れ違い様に、立ち竦む『ちゃちゃのん』の肩を励ますように叩き


晴絵「って訳で、任せた」

いちご「…」


無責任にも程がある新米教師とやらは、振り向くこともなく帰って行きおった

居心地が悪かった

いちご「愛宕、洋榎」

気分だって最悪

洋榎「…『ちゃちゃのん』」

あの阿知賀の無責任教師追いかけて散々罵詈雑言浴びせてやりたい気分

いちご「佐々野いちご」

けど、それがよう出来へん

洋榎「…」

なんでかって

いちご「『ちゃちゃのん』の名前はな。佐々野いちごじゃ」

入り口に、この女が立っとる

いちご「佐々野って呼ばんか。愛宕のちんちくりんな方」

洋榎「…その呼び方やめーや」

いちご「今度は泣かんのな?」

意地悪そうにニヤッと笑って佐々野。こいつ、こんな顔もするんか
やっぱテレビのあれは作り笑顔で、本性は腹黒やろ。アイドルってみんあそうなんやな。かー!

洋榎「もう意地でも泣かへん」

いちご「あっそー」

洋榎「何しに来たん?」

硬い声だったのを自覚する。さっきの今でこれかい。しんどい事が続きすぎる
なんなん?今日はどんな罰ゲームやねん。もう早く寝たいわ

いちご「決まっとる」

そう言って袖に手を入れ

いちご「これ、返しに来た」

エロ番組の視聴カードを……って

洋榎「この局面でそれかい!!」

今日の分終わりー
(1話の)終わりが見えてきた!

おつー


ちゃちゃのん可愛い

あくしろよ

書けば返していただけるんですか?





もうちょっとしたら書き始めます

久々に更新キタ
期待

イッチ来たー





灼「ただいま」

玄「あ。おかえり」

灼「これ、ついでに買ってきた」

玄「あ。牛乳?」

灼「温めて貰ってきた。気分が落ち着くと思…」

玄「うん。そうだね」

灼「寝てる人の分は置いておこうか」

玄「おねえちゃん。これ」

宥「うん。ありがと」


あれから
赤土先生に言われ、私達は自分達の部屋で待機していたのですが
洋榎さんの力になれるわけでもなく、絹恵さんを励ませるわけでもなく、かと言ってちゃちゃのんさんを探しに行けるわけですらなく
まんじりともせずに、ただただ赤土先生の帰りを待っている我々の雰囲気は、はっきり言って最悪でした

そわそわと落ち着きが無く座り直しを繰り返す穏乃ちゃん
そんな穏乃ちゃんに何か言いかけ、思い直しては口を閉じ、目を背ける憧ちゃん
おねえちゃんはオロオロと戸惑うばかりで、おそらくそれは私も一緒だったと思います
灼ちゃんも、悔しそうに黙って赤土先生の帰りを待つより他は無く
しばらくはそうやって時間だけが無為に過ぎて行きました(実際はそうやって過ごしたのは1時間弱くらいだったのですが、半日くらいそうしていたような気がします)

そんな中、控え目に我々の部屋をノックする音が聞こえて来ました
真っ先に反応し、弾けるように立ち上がって部屋の戸を開けたのは、穏乃ちゃん(この子のこういう素早さはやっぱり特筆に値します)
でも、そのノックの主は赤土先生ではありませんでした

絹恵さん
こっちの部屋で休むように言われてきたそうです
「お陰様で、今は姉も少し落ち着いています」との事
お姉さんは赤土先生が居てくれているから、と。こっちの部屋で少し休むように言われてきたそうです
「お陰様で、今は姉も少し落ち着いています」との事で、みんな一先ずはほっと一息

でも、すぐに「それでは姉が心配なので」と部屋を後にしようとした絹恵さんをみんなでなんとか押しとどめ、お話をしよう、という事になりました
だって、明らかに絹恵さん、疲れてた。赤土先生がなんとかしてくれるのを祈りつつ、我々は我々で、絹恵さんを少しでも楽にさせてあげたかった
ううん。自分達も何かしないと、って思ってたから

憧ちゃんに勧められた座椅子に、戸惑いつつも「それじゃあ」と座ってくださった絹恵さん
お姉さんの話……は、とりあえず避け、いろんなお話をしました。麻雀の話、観光の話、大阪の話。好きなお菓子や、この間穏乃ちゃんが山で見かけた動物の話とかも
段々いつもの調子を取り戻し、少しづつ笑顔も見せ始めてくれた絹恵さん。最後には「男の子ってほんとダメ!」という話題でおねえちゃんと大いに盛り上がるという驚きの展開もあったりしたりして
穏乃ちゃんと憧ちゃん、灼ちゃんが珍しくちょっと興奮気味に批判を繰り返すおねえちゃんに面食らってて、その怒れるおねえちゃん誕生の真相というか要因を知っている私にはフクザツな気分

で、満足したのか、気が緩んだのか
絹恵さん、緊張の糸が切れちゃって、次第に船を漕ぎはじめ
おねえちゃんが優しく「寝ても大丈夫だよ」と言うと、「すみません」と言って、座椅子に座ったままの体勢で眠っちゃいました
そんな絹恵さんに布団を一枚かけてあげて、我々もしばし休憩
なんだか赤土先生の力になれた気がして、さっきまでとは打って変わって、少しだけ誇り高い気分

その後穏乃ちゃんまで船を漕ぎ始めちゃって、次に憧ちゃんも
「私達が起きてるから、二人にもう寝てもいいよ」と言って寝かせてあげました(なんだか年上っぽい!)
ちなみにおねえちゃんはずっと絹恵さんの肩をあやすように叩いてあげています

私と灼ちゃんはそれを黙って見守っていて
しばらくして、赤土先生から灼ちゃんにメールがあって
部屋を出て行ったのですが、30分くらいで牛乳を買って戻ってきた次第……というわけなのです

温かい牛乳を飲みながら、灼ちゃんに尋ねます

玄「赤土先生は?」

灼「どこかで時間潰すって。戻らないかもって」

玄「そうなの?」

灼「あと、伝言。百合の間は今夜、絹恵さん戻れないから…」

玄「へ?」

灼「だから、今晩はハルちゃんの分の布団は絹恵さんを寝かせてあげてって」

玄「なんで?」

灼「わかんないけど、『ちゃちゃのん』が泊るらし…」

玄「……まさか」

流石にありえないと思いました
あんな、喧嘩というか拒絶というか…原因はわかりませんが、そういうのをした両者です
その二人が何故百合の間に宿泊すると?要領を得ず、理由を尋ねてみると返って来たのはもっと要領を得ない返事でした

灼「……知らないの?」

玄「へ?」

灼「宥さんは?」

宥「うん?」

灼「…」

我々の反応を見て、考え込むように口に手を置く灼ちゃん

玄「えっと。どういう…」

更なる説明を求めて口を開こうとすると

灼「……ま、いいや。私もあんまりわかってないし」

玄「ふえ!?」

ばっさりと話を打ち切られました

灼「詳しい話は、またみんなでハルちゃんに聞こう。1年生も眠ってることだし」

玄「はあ…」

灼「…」

玄「……どうかした?」

浮かない顔の灼ちゃん

灼「……ううん。絹恵さんが起きたら、さっきの話伝えて、今晩はもうみんなで寝よう」

玄「納得するかなぁ」

こんな話を素直に絹恵さんに伝えたら、不安がって仕方ないと思うんですが…

灼「そこはぼかして話してもいいと思…」

玄「はあ」

考えを読まれました

灼「ああ。あと」

玄「?」

灼「ハルちゃんが言うには、多分もう全部大丈夫だって」





洋榎「…」

いちご「…」



今、『ちゃちゃのん』らは何してるかっつーと、二人でエロ有料放送見とる
巨乳もの。愛宕姉の胸と見比べて鼻で笑ってやったら、枕投げられた。投げ返してやったら一旦戦争になりかけたが、ご近所さんに怒られるのもあれなんで自重自重
テレビの前でJK二人、仲良く(本当かいな)並んでエロビ鑑賞。両者無言

洋榎「何しとんねんうちら」

いちご「わからん」

洋榎「…」

いちご「…」

無言ではなくなったのう
ポツポツとだが、向こうから会話を振ってくれるのはありがたいわ。話題はアレやけど

洋榎「おっぱいでかいなぁ」

いちご「ん」

洋榎「絹恵くらい?」

いちご「確かに妹さん凄かったのう。姉とは違うて」

洋榎「張っ倒すで」

いちご「…」

洋榎「…」

どうしてこうなったかって?
卓球場で喧嘩して、しばらく部屋にも戻りたくなくて外をぶらぶら歩いとったんやけど、いい加減冷え込んできたからって旅館に戻ったらなんだか無性に愛宕姉の様子が気になって
で、どうにもこうにも何していいかわからんくなって廊下を適当にウロウロしてたら、今日で聞き慣れた声がヒスってんのが聞こえてしまってのう
向こうの様子探ろうと思って部屋の前で聞き耳立てとったら、さっきのセンセに見つかってしもうたんじゃ

しかも、何を考えてんだか知らんが、まるで流れるような動きで『ちゃちゃのん』にこの女を押し付けて
さっきまでの様子見とらんかったんかい。『ちゃちゃのん』とこの女、さっきドギツイ喧嘩しとったばっかじゃろうが

でも、ここで踵返して帰るのもなんか負けたみたいで嫌じゃ。なんで、適当にエロ番組の視聴カード返しに来たって事にしてみた

……おかしいのう。でもなんでその流れで一緒にテレビ見る流れになったんかわからん
ま、ええわ

洋榎「……『ちゃちゃのん』は、やで?」

いちご「うん?」

テレビから目を離さずに愛宕姉

洋榎「卒業したらどうすんの?」

いちご「…」

洋榎「どうするん?って聞いとんねん」

聞こえなかった振りをしたら、聞き直してきおった。やけん、仕方なしに返事する

いちご「そうやなぁ…」

『ちゃちゃのん』もテレビから目を離さずに答える
えっちいテレビ見ながらなのに、なんだかやけに静かで、落ち着いた気分じゃ
会話の内容が内容だからなのか、お互い頭が冷えたからなのか

いちご「普通に受験して、普通に大学行って、普通に就職、かのう?これでも勉強はちゃんとしとるけん」

洋榎「…」

いちご「そっちはどうするんじゃ?プロのお誘いあったんやろ?」

洋榎「……迷ってんねん」

意外にも弱気な返事が来た。こいつならてっきり「うちがクラブを選ぶ!」くらいのノリで自信満々にプロ入りするのかと
けど、愛宕洋榎くらいの実力者でも迷うって聞くと、ちょっと気分が晴れるっていうか、やっぱりプロ入りのハードルって高いんやなぁと思う
ま、そんなの許さんけどな。ウチの夢、アンタには叶える力がある。ウチには無かった。だったら勝手な話やけど、その夢を打ち砕いてくれた張本人に託すくらい許されてもええやろ?
なんで、やんわりと励まし、プロ入りを煽る事にする

いちご「何を迷うことがあるんか天下の愛宕洋榎が。アンタでプロ通用せんってなったら、後はもう宮永照くらいしかプロ入り出来んやろ」

洋榎「…」

いちご「クラブチームからのお誘いは?」

洋榎「ぎょーさん有ったわ。Aクラスからも。中々の待遇やったで。ついでに言えば、練習参加してみたけどやってやれないレベルでもないと思ったわ」

くっそ

いちご「羨ましいことで。なら何が不安なんじゃ?」

洋榎「…」

いちご「アンタはうちと違うて才能がある。麻雀の才能が。正直羨まし過ぎてぶん殴ってやりたいくらいにのう」

洋榎「……羨ましいのはそっちやねん」

いちご「はぁ?」

洋榎「だって、プロになったらテレビとかも出るんやろ?」

いちご「それはまあ…」

洋榎「毎週毎試合、ドアップで全国のお茶の間晒されるんやろ?」

いちご「晒すって…」

洋榎「うちの事、いろんな人が見て」

いちご「そんなのインハイだっておんなじやん」

洋榎「全然違う!!」

いちご「…」

呆れて気のない返事を返してやると、立ち上がって反論してくる愛宕姉

いちご「……何が?」

わからんので聞いてやる

洋榎「インハイは、アマチュアやもん」

いちご「はあ」

洋榎「けど、プロは違う」

いちご「アマチュアじゃなくてプロやもんなぁ」

我ながら間抜けな返事

洋榎「そっから先は、違う世界の住人や。芸能人。うちらと何もかも違う筈の、違う世界の住人」

力無くそう言って、再びウチの横に座り直す愛宕姉

いちご「さっぱりわからん。芸能人たって、案外普通の人じゃ」

正直な感想。今まで会って来た芸能人の楽屋裏は驚くほど普通の人間じゃった。そりゃあたまに変わったのもおるけど

洋榎「はは…そりゃ、『ちゃちゃのん』美人やもん。女子高生にしていろんな芸能人にも出会ってる、スーパー女子高生」

いちご「それは否定せんけどさぁ。プロと容姿は…全くとは言わんが関係無いし」

否定しないのには理由がある。昔それで怒られたことがあるのだ。『ちゃちゃのん』レベルの容姿の人間が容姿の良さを否定するとそれは嫌味になるらしい
かと言って「そうやろ~」と言っても嫌味だし、正直言われて一番反応に困る褒め言葉の一つや。一応普段は「ありがとうございます」と言っとる
……ま、美人って自覚はあるよ?そりゃ

洋榎「ウチのブッサイクな顔が全国に毎週のように晒されるとか、ほんま放送事故もんやでこれ」

いちご「何言うとんねんアンタ」

洋榎「いや。マジで。洒落にならんやろ。そうは思わへん?ぶっさいくやし。タレ目やし」

いちご「馬鹿馬鹿しい。それがプロ入りを悩む理由だとでも言いたいんか?」

鼻で嗤ってやった。プロ入りするのに不安が容姿って
第一、そこまで見れん顔でも無いじゃろうに

洋榎「今の時代だと、ネットでも言われるんやろ?どんんだけ活躍してても、容姿さえ悪かったら不細工や不細工やって」

いちご「……本気かいな」

目がマジじゃ。麻雀やってる時は強気のトラッシュトーク全開、ヒールファイト上等の愛宕洋榎が容姿とか視聴者の評判気にしてプロ入りを悩むって
ほんに、心底つまらないしくだらない話だと思う

いちご「そんなの、言いたい奴には言わしておけばええやろ。どの世界にもそういう奴はおるわ」

肩を竦めながら一般論を語ってやる。あ、もうすぐ番組終わりそう

洋榎「なら、『ちゃちゃのん』はどうなんよ」

いちご「…」

洋榎「『所詮アイドル』扱いされただけでプロ入り諦めたアンタにそれ言う資格あるんか」

いちご「…」

洋榎「自分に出来もしないこと軽々しく言うなや」

いちご「……それとこれとは違うやろ。そっちにはその分野で活躍する才能が有って、ウチには無い。その違いはでっかいけん」

言ってて悲しくなってくる。なんでウチはこんな自分の傷を抉ってまでこの女のフォローをしているんじゃろう?
でも、この人が麻雀から離れるのだけはなんとしても阻止したいと思っておった

破れた夢を勝者に託すということ
そこに有るのは、なんなんじゃろうね?意地なのか、自己投影なのか。それとも他の何かなんじゃろうか?ウチには、わからん

番組が終わり、次の番組が始まる。今度は元アイドル物らしい。聞いたことの名前の元アイドルの名前。容姿はアイドルの中では中の上ってとこか?
この人も、最初は夢があって芸能界に入ったんかな?それが夢破れ、今は有料放送で痴態を晒す場末のAV女優。インタビューに答える笑顔の中に、陰が見えるのはうちの錯覚じゃろうか

ウチらだって他人事じゃ無いのかもしれん。夢を叶えるには、リスクがいる
愛宕洋榎にプロ入りの夢を託すって話だって、なんだかんだ言って託す方は無責任なのかもしれんのう
鳴り物入りでプロ入りして鳴かず飛ばずで消えていったプロ雀士の数は数え切れない。彼らの行方を知るものだってほとんど居ない
どんな実力者だって、それを考えればプロ入りに臆病になるのもおかしくはないと思う

洋榎「『ちゃちゃのん』、きっと伸びるで」

いちご「……はぁ!?」

テレビを見ながら考え事をしていると、意味の分からない言葉が聞こえてきた

洋榎「打ち筋見てたらわかる。癖が無い良い打ち方しとる。もっと理論学んで、闘牌時のメンタル鍛えて、ブレイクスルー何度か経験出来たらきっと一気に開花する」

いちご「適当なこと言いなさんな」

洋榎「適当やないって。オカンとも話した事あるわ」

いちご「……千里山の?」

洋榎「そ」

いちご「千里山の愛宕雅枝……」

超有名人。監督としても一流で、何人ものプロを排出してる人の名前が出て、心が揺らぐ
そんな人に伸びるって言われたって知ったら、ウチ、断ち切った未練がまた……

いちご「そ、そん、そんな、そんなこと言われてもよう信じれん」

だから、拒絶する。信じたくて堪らない心を押し殺し、誤魔化すように否定する

洋榎「…」

いちご「…」

しばし、会話が止まる

洋榎「うちな。芸能界に憧れてたんよ。華やかで、綺麗で。テレビ見てる間は、自分もそんな人達の仲間になれてた気がしてた」

いちご「…」

しばらくの沈黙の後、愛宕姉がぽつぽつと話し出す。横目で見ると顔だけこちらを見ていたので、目線で続きを促してやる

洋榎「こんなこと今更言うのもあれなんやけど、『ちゃちゃのん』とインハイで対局した時もちょっとテンション上がっとったんやで?あの『ちゃちゃのん』と麻雀してる!って」

いちご「さっきと言ってること矛盾しとらん?プロとの練習とかしてるんやろ。自分ら」

洋榎「あー。ほら。麻雀の選手とかとは確かに会った事あるんやけど、そういうのじゃなくてアイドルっていうバリバリ本物の芸能人だと初めてお近づきになれた!って」

いちご「それであのトラッシュトーク……」

洋榎「テンション上がり過ぎてなー。あと、ちょっと嫉妬も。やっぱアイドル級は可愛かった」

いちご「……どーも」

洋榎「役満ぶち当ててやった時は気持ちよかったで~?」

いちご「最悪の気分やったわ」

洋榎「へへ…」

いちご「……はぁ」

洋榎「でな。もっとお近づきになりたくて、試合後に話しかけようと思っとったんやけど…どうもそんな事できる雰囲気でも無かったし」

いちご「そうじゃなぁ。あん時は前後不覚になるくらい取り乱しとったし泣いとったし」

洋榎「残念ではあったけど、でもお陰で気が引き締まったわ。ああ、今ウチはインハイの舞台に立っとるんやなって」

いちご「で、あの活躍か。良かったわ。自分に勝った人間がちゃんと勝ち進んでくれて」

洋榎「それを言える人間は、勝つための努力を懸命にしてきた人間だけや」

いちご「…」

洋榎「それすらしとらん人間は、自分を倒した人間を妬んで負けろ~負けろ~って念じてるもんやしな」

いちご「確かにそういう人間は今まで結構会ってきたけど」

洋榎「プロにだってそういう人間はおる。悲しいことにな。でも、そういう人間は成長が止まる」

いちご「…」

洋榎「今まで話してみて、『ちゃちゃのん』は自分に勝った人間を素直に称賛出来る人間だって思った」

洋榎「全力出して敵わなかった相手に、自分の努力を認めて、その上で自分を超えたんだったら称賛してやろうって、そういう人間や」

洋榎「そういう奴はいつまでだって伸び続ける。オカンの受け売りやけどな」

いちご「……本音ではそんな綺麗な人間でも無いけん。褒め過ぎや。アンタや宮永照はじめ、いろんな雀士に嫉妬しまくりよ?」

洋榎「そう?でも、自分の力の無さは嘆いても、『ちゃちゃのん』、うちに一度も恨み節ぶっけて来ないやろ」

いちご「…」

洋榎「ウチは独り言でも悪口言いまくってたのに」

いちご「ああ。風呂で言われてたのう。雑魚って」

洋榎「……本心じゃないんやで?でもな。うちの方が嫉妬深かったんやなぁ」

いちご「迷惑な話じゃ」

洋榎「ごめん」

いちご「いいよ。もう気にしとらん」

洋榎「……はぁ」

いちご「今度は何じゃ」

洋榎「なんか、『ちゃちゃのん』には、変な話ばっか聞かせとる気がする」

いちご「迷惑な話じゃ。もう一回言うよ?迷惑な話じゃ」

洋榎「全部で三回も言わんでいいやん…」

テレビの中の元アイドルが、男に突かれて喘いどる
この人は撮影中、何を考えていたんだろう。今、何をしているんだろう。そんな事をふと思った

いちご「うちには関係ない話じゃけん……」

洋榎「まあそうなんやけど…」

独り言に愛宕姉が反応してくる。そういう意味で言ったんではないんじゃが…敢えて訂正してやるつもりはなかった

また、二人沈黙

いちご「なあ」

洋榎「うん?」

たっぷり十数分は黙って女優が喘いでるとこ二人で鑑賞しておった
番組が終わり、画像が徐々に暗く、フェードアウトしていく。また変な番組のCMがやかましい音楽とともに流れ始める

ふと、これくらいは言っておいてやってもいいかなと思って話しかけた

いちご「アンタ、そんな顔、悪くないよ」

洋榎「……またまたぁ」

いちご「愛嬌有る顔しとる。雅枝監督とも系統似とるし」

洋榎「…」

いちご「あとは、化粧覚えたら大化けするんじゃないかねぇ」

洋榎「化粧って…無い無い。柄や無い」

苦笑いと否定の言葉が返って来る。嫌がってるのを見て、もう少し突っ込んでみようと思った

いちご「バカ言うな。化粧は大人の女のマナーじゃ。どっちみち社会人になったら必要になるんやし、プロ入りするにしろ、しないにしろ、早い内に覚えといたほうがええ。特にするんならな」

洋榎「けど、絹だってしとらんし、オカンに聞こうにもなんか恥ずかしいし、部活の面々には笑われそうだし…」

弱気で消極的な返事。天下の愛宕洋榎がこんなな方が笑われるとは思わんのかね?
尚も食い下がる。と、いうか若干虐めるつもりで言ってやる

いちご「だったら」

CMが明ける

いちご「『ちゃちゃのん』が化粧教えてやろうか?芸能界仕込みの、可愛くなれる奴」

次の番組は、どうやら女性同士の絡みらしい
最近増えたのう、と思う。いや、AVなんて増えたとか言えるほど見とらんけどね?ドラマとかマンガとかでも女の子同士の恋愛みたいなのがな?

今日の分おわりー

ほんと、サボってばっかな上に話があっちこっちふらふらして申し訳ない
このスレの原因である野球イッチが頑張ってるし、俺も今月頑張るわ。魔法少女と並行してだけど、マジ頑張る宣言するわ
来週は、どうしても外せない用事出来ない限り毎日どっちかは絶対少しは更新するし、用事入って出来なかったら次の日倍以上書く
で、愛宕ネキ×ちゃちゃのんは少なくとも終わらす

口だけで終わんないように今シーズンのコンサの生観戦に誓うわ

乙ー


あんまり無理しないでね


洋榎ちゃんの化粧想像するとなぜか笑ってしまう

マジ☆頑張る宣言か、頑張れ~





洋榎「…」

いちご「ただいま」

洋榎「おかえり」

あれから

『ちゃちゃのん』、一旦立ち上がり
化粧ポーチ取りに行くって自室に戻っていった。薄い桜色のポーチ抱えて、すぐ返って来たけどな

洋榎「人の返事聞く前に部屋出てきよって。なんて落ち着きないやっちゃ」

いちご「アンタこそ、柄にもなく大人しく待っとったんじゃね?」

洋榎「……勝手に話進めんなや」

いちご「いやです。本気で嫌なら本気で抵抗しんさい。そしたら止めるわ」

言いながら、テキパキと化粧品をテーブルに並べ始める『ちゃちゃのん』
もう抵抗する権利、無さそうやね

洋榎「…好きにせーや」

いちご「なら好きにさせて貰うけん。ちゃっちゃと進めよか。妹さんまだ戻ってこんの?」

洋榎「そういや絹恵どこ行ったんやろ。まだ阿知賀のとこと遊んどるんかな?」

いちご「さっきのセンセがなんか絡んどるかもな」

洋榎「はあ…」

絹恵~。帰ってきてー。いや、でも絹恵来たら面白がって一緒に化粧させられそ。訂正。まだ帰って来んでええでー

いちご「そうじゃのう~。アンタ、どんな感じのが似合うかなぁ」

首を捻ってこちらの顔をまじまじと見つめてくる『ちゃちゃのん』
真剣な顔して、こうも至近距離で顔を見られると、なんかドキドキしてくるわ

洋榎「普段化粧なんかせんからわからん」

それが居心地悪すぎて、ぷい、と不自然で無いように顔を背けてから、吐き捨てる

いちご「ま、順当に考えればナチュラル系やろな。ギャル風にするのはまず笑えることになりそうやし、やってみてもええけど」

からかうような声

洋榎「そんな事したら[ピーーー]で」

ギャル系のうちとか、想像しただけで駄目。ギロリと相手を睨んで釘を差しておく

いちご「え~?駄目かいな。アイシャドウかけてライン引いて、アホみたくマスカラ重ねて眉マスカラ、目の周りキラキラのラメ塗って大きさ倍くらいにしてからチークとリップに…」

洋榎「いーやーやー!」

何やら楽しそうに不審な発言をする『ちゃちゃのん』に、割りと本気で抵抗を試みる
ってか、そんなん出来る化粧品持っとんのかい!

いちご「なら軽くパウダー塗って、アイメイクちょっと。最後にグロスでも塗ろか」

洋榎「むう…そ、そんくらいなら…」

妥協案来た。ま、まあ、それくらいならええかな?でも、うちマジで化粧なんか自分でよう出来ひんよ?

いちご「初心者なんやし、あんまレベル高いのやらんわ。基礎だけじゃな。基礎だけ。アンタ肌綺麗やし、ベースメイクも今は必要なかろ」

洋榎「うー…」

いちご「ってわけで、まずパフでフェイスパウダー顔に付けるよ。肌の透明感を出すんじゃ」

洋榎「わぷ」

そう言って、『ちゃちゃのん』がなんかの粉?をスポンジにつけて、うちの顔にもみこんでくる
ふわふわとした感触が顔に触れて、くすぐったい感じ

いちご「次、チーク」

そう言って、今度は別のスポンジにオレンジの粉を付けて、頬骨のあたりに擦り込んでくる。終わったら、また最初のスポンジ

いちご「うん。上手くいった」

洋榎「…」

満足そうにうちの顔を見て、今度は筆みたいのと、ペンみたいのでうちの眉に落書きをしていく。ついでにハサミでちょっと切られた

いちご「眉の色、ちょっと薄くしようか。形整えるよ?あと、薄いとこちょっと描き足すわ。アウトラインちょっとぼかすようにするのがポイント」

洋榎「…くすぐったい」

いちご「大人しくな。手元狂ったら変になるけん」

洋榎「うい」

いちご「ふう…」

ひと息ついた声

洋榎「なあ、どんなんなっとるん?」

いちご「ん?ああ、ええ感じよ」

洋榎「鏡」

いちご「待った。どうせなら一回全部やってから見た方がいいって」

洋榎「…」

いちご「その方が劇的やろ?」

洋榎「そんな変わるとも思えん」

いちご「どうかねぇ。次。まぶたを閉じて。 アイシャドウ塗るけん」

洋榎「…」

いちご「ん。いい子。素直やね。まあ、両目瞑る必要は無いんじゃが…まあええわ」

洋榎「早く」

いちご「はいはい」

くすくすと笑いながら、『ちゃちゃのん』が返事を返してきよる。右目まぶたの上をくすぐったい何かが何度も通り過ぎる

洋榎「ん…」

いちご「暴れない。手元狂う」

洋榎「でも、くすぐったい…」

いちご「我慢する。ほら、これで方っぽ終わり。もう方っぽ塗るよ」

洋榎「お願いします…」

左目のまぶたの上をくすぐる何か…多分、筆や

いちご「はい、終わり。目開けてええよ」

洋榎「…」

いちご「ビュラーでまつ毛曲げるけん」

洋榎「……それはちょっと怖いんで自分でやる」

いちご「そうそう。そうやってまつ毛を挟んで、で、手首で返して…」

洋榎「こんな感じ?」

いちご「うん。上手いのう。そんなもんでええわ」

洋榎「ふう…」

いちご「ご苦労さん」

四苦八苦しながら、なんとか自分でビューラーってのを使いこなすことに成功した
『ちゃちゃのん』曰く、これでまつ毛を大きくみせれるらしいで
使い終わったビューラーを『ちゃちゃのん』に手渡し返し、感想を述べる

洋榎「なんか変な感じ」

いちご「変な感じ?」

洋榎「うん。化粧なんて、初めてやし。しかもそれを、奈良の旅館でアイドルの『ちゃちゃのん』に教わってる」

いちご「…」

洋榎「不思議やなぁ」

いちご「うちだって不思議じゃ。なんで愛宕洋榎に化粧教えてんだか」

苦笑いの『ちゃちゃのん』。顔付きがなんだか優しいっていうか、お姉ちゃんみたいな包容力を感じた

洋榎「無駄だと思ってた」

いちご「無駄?」

洋榎「うん。どんなに頑張っても不細工は不細工やって」

いちご「だから、アンタ言うほどブスやないけ」

洋榎「そうなんかなぁ…」

いちご「…」

洋榎「……って、誰に言われても心にもないこと言いおって!って、腹立ってたもんやけど」

洋榎「なんでか、『ちゃちゃのん』の言葉だったら信じてもいいかなって思った」

洋榎「『ちゃちゃのん』があまりにも美人すぎて、うちに嘘教える意味無い!って思ったからかな?」

いちご「…」

洋榎「……化粧、終わり?」

いちご「……いいや」

洋榎「あと、なんやったっけ」

いちご「リップ…」

洋榎「…」

いちご「…」

洋榎「これも、塗ってくれるん?」

いちご「…」

洋榎「…」

いちご「……ええよ」

そう言って、『ちゃちゃのん』は、1本のスティックとチューブを取り出した。リップと、グロスや
リップのキャップを外す。薄い桜色の口紅

いちご「動いたらアカンからな?」

洋榎「うん」

そう言って、『ちゃちゃのん』がリップをうちの口元までゆっくり近づけてくる

いちご「……なんかやりにくい」

右頬に手の感触。肩に肘を乗せられ、少しだけ引き寄せられる
顔を固定するために左手で抑えられたのだとわかった

いちご「まず、下唇から塗るから」

そう言って、ゆっくり顔を近づけてくる。真剣な目付きなのは、細かい作業に移るからなんやろう
自分の下唇に『ちゃちゃのん』の真剣な視線が刺さっていると思うと、なんだかくすぐったくくて仕方ない

洋榎「なんか、キスするみたいやな」

なんで、お茶を濁そうと軽口を叩いてみた

いちご「ばっ!?」

反応は劇的やった

いちご「な、ななななな、何言っとんじゃボケェ!!」

奇声をあげた後、リップを持ったまま弾かれたみたく後ろに飛び退いたちゃちゃのん

洋榎「いや、なんとなく」

いちご「な、なんとなくで気色悪いこと言うなや!あービビった…」

ぶつくさ言いながら胸に手を当て、こっちをおぞましいものでも見たかのような目で見てきよる

洋榎「あー。すまんかったすまんかった。ちょっとした悪戯心だったねん」

いちご「ホンマ、敵わんのうアンタには…ったく、そしたら続きやるよ?」

洋榎「へへ…」

いちご「それじゃあ、ちょっと唇突き出すようにして」

洋榎「ん…」

言われたとおりに突き出すと、『ちゃちゃのん』の左手が頬から口元まで下りてきた
そのまま唇の端をなぞるように、リップの軌跡をガイドするようにゆっくりと滑ってゆく

洋榎「んん…」

下くちびるの中心に、柔らかくて硬い感触
うちの唇を押し潰しながら、ゆっくりと滑るように左頬の側へ流れてゆく

洋榎「はふ…」

くすぐったい

いちご「我慢」

洋榎「ん…」

次に、反対側も

洋榎「あふ…ふふふっはい」

いちご「だから、我慢じゃって」

洋榎「…」

下唇が終わって、上唇。これも真ん中からふちへゆっくりとリップが移動する
唇が必死にリップを押し返そうとして、擦れてくすぐったい
あまりのくすぐったさに甘い声が漏れてしもうた

洋榎「ふぅん…」

いちご「変な声出すな」

洋榎「んふ…」

取り合わずに黙々とリップを塗り続ける『ちゃちゃのん』

洋榎「はふ…」

いちご「はい。完了。最後、グロス塗って光沢とボリューム出して終わりー」

洋榎「…」

いちご「ん?どうかしたん?」

洋榎「…と、ところで」

いちご「なんじゃ?」

洋榎「これって、間接キス?」

いちご「…」

キリいいんで今日はここまでー
くそーくそー。化粧させるのってエロく書けるシチュエーションだと思ったのに全然アカン
文章力が無いのが悔やまれるわ

乙ー


露骨なのはアレだしな、色気はネキの専門外ということでww

マジレスでごめんやけど、SSの面白さに文章力とかあんま関係ないと思うの

変に気取ったわざとらしい文章書く人よりこの>>1のほうが広い意味での「いい話」を作る力があると思ってるし、今後もそういうのを期待してます

無理せずにがんばってなー

部屋にまーた沈黙が訪れる
流れるのは、AVの声のみ。五月蝿いなぁ。消してまおうかな

洋榎「…」

いちご「…ケッタイなこと抜かすなや」

洋榎「すまん」

ジト目で睨まれた。なんでこんな事言うたんやろ、うち
化粧品をポーチに仕舞うちゃちゃのんを黙って見る。手際ええなぁ

いちご「で」

洋榎「うん?」

いちご「終わったよ」

洋榎「あ?あ、ああ」

いちご「…」

洋榎「…」

で、また沈黙。いい加減にせんかい!
話題話題。話題はなんかないか?必死に頭の中ひっくり返してボケようと試みるも、なんいも思い浮かばん
ああ。さっきの間接キス発言もボケのつもりだったんかな

いちご「ほら」

洋榎「え…」

そうやってごちゃごちゃ考えとると、『ちゃちゃのん』、手鏡を差し出してくる。反射的に目を逸らしてしまう
だって、そうやん?これでぶっさいくな面有ったら、もう無理って事やん。怖いわ。態度でそう示す

いちご「だいぶ、変わったよ」

洋榎「…」

いちご「見てみればええ。これくらいなったら、不細工とは誰にも言わせん。無論、アンタにもな」

洋榎「…」

いちご「な?」

優しい口調で諌められた。でも、有無を言わせぬ力強い口調。なんだか、安心する。勇気を出してみようと思った

洋榎「……貸して」

いちご「ほい」

手鏡を受け取って、自分の顔を見る
……そこには

洋榎「あれ…」

まず、オカン譲りのタレ目にラインが引いてあって、目がぱっちりした印象になっとるのが目に付いた

いちご「どうじゃ?」

眉は優しく穏やかな印象になった。形も綺麗。まぶたのとこ、薄紫のシャドーが入っとる。ちょっと艶っぽいって、自分でも思った

洋榎「うん…」

肌は透明感が増え、うっすら頬が赤く染まっとる

いちご「我ながら上手く出来たと思うけえ。なかなかいけると思わん?」

声に顔を上げてみると、『ちゃちゃのん』が、笑ってた

洋榎「そう…やな」

口を開くと、鏡の中の桜色の唇が震える。形、ええ唇やなぁ

洋榎「……いける、やん。うち……」

あ。でもアカン。折角やってもらったのに、ちょっとこれまずい

いちご「…」

洋榎「結構……かわい、く、なれ、るん、やなぁ…。うち……も…」

ポタポタポタ
目からなんか変な水出てきよった。せっかくやって貰った化粧くずれるやん。もったいない。格好悪い

洋榎「うえ…」

いちご「…」

声まで勝手に出てきよる。嗚咽混じりの、きったない声

洋榎「うえええ…」

止めようと思っても、涙は止まらんし、声もどんどん漏れてまう

いちご「…」

けど、目の前のこの子は、何も言わずにうちの肩を抱いてくれた
ギュッと抱きしめて、頭を軽く撫でてくれおった

洋榎「ええええええ…」

格好わるいとこ、あんま他人には見せとうないんやけどね
絹にも、おかんにも、おとんにも。勿論部活の連中やクラスメートにも

洋榎「あううううううう…うううううううう……うっうぐ…ぐすっ。うううううううえええええ…」

けど、今は。今だけは、目の前の少女に甘えさせて貰おうと思って
ぎゅっと抱きついて。胸に顔埋めて。服を涙でビショビショにしてしまうくらい、泣きつかせて貰おうと、思った

いちご「変な泣き声やなぁ」

頭上で、クスクスと苦笑しながらそんな声が聞こえたけどな。やかまし





しばらくして、いい加減泣き疲れ、顔を上げることにした
見ると、『ちゃちゃのん』の来てた浴衣に化粧の後が着いておる。あちゃ~

いちご「もう大丈夫なん?」

そう言われて、相手の顔を見る

洋榎「うん。大丈夫。ありがと」

そうすると向こうも気付いたらしい。肩を竦めて

いちご「あーあ。化粧くずれちゃったわい。今度からウォータープルーフの使ったほうがええんとちゃう?自分」

洋榎「ああ…うん。勿体無かった」

我ながら残念そうな声が出て、驚いた

いちご「でも、まあええやろ。もう夜やけん。また朝にでもやってみれば」

洋榎「……そっか。うん。せやな。また化粧するわ」

そう、やね。化粧はまたすればええよね。帰ったらオカンにも化粧教えて貰うよう頼んでみようかな

いちご「うん。ほら。そうとちゃんと落とさんと。お肌に悪いよ」

洋榎「おっと。せやったか。うん、顔洗ってくる」

立ち上がり、部屋を出たとこにある洗面所に行くことにする
部屋を出る前に静止がかかった

いちご「化粧落としも貸したるけん。ちゃんと洗顔剤使ってな」

洋榎「どーも」

化粧落としを借りて、持参のビオレも持って。いざ参らん。洗面所

いちご「ふう…」

洋榎「…どないしたん?」

いちご「ううん」

洋榎「…」

いちご「ありがと」

洋榎「……どないこと?」

訳が分からず聞いてみる。それ、普通はうちが言う台詞とちゃう?

いちご「なんか、思ったけん」

洋榎「え?」

いちご「人の悩みって、くだらんな~って」

洋榎「……それは腹立つな。これでも真剣だったんやで?」

いちご「そうなんよね~」

そう言って、ばたーん。とその場に倒れ込むちゃちゃのん

いちご「でも、裏を返せば傍から見てつまらん悩みでも、本人にとっては真剣で深刻な悩みになったりもするって事じゃ」

洋榎「…」

いちご「私の悩みって、傍から見たらどうなんかなーって」

洋榎「悩みって」

いちご「プロ入り」

洋榎「…」

そこで、手のひらをヒラヒラ。しっし、とうちを追い払う仕草。早く洗面所行けって事らしい
渋々部屋を出る

洋榎「…ふう」

ばしゃばしゃ。念入りに化粧を落とし、顔を洗う。無人の洗面所はちょっと怖いし、廊下は少し寒いな
鏡を見る。いつもの顔がそこにあった。いつも通りのぶっさいくな面。でも、まじまじ見てみると、意外とそうでも無いんやない?
最近は怖くてあんまりよく見てなかったけど、よくよく見ると、おかんに似てる部分がある。絹に似てるとこもある。おとんは…うん。どっか似てるやろ
おかんも絹も美人やし、よ~く考えてみると、うちだって愛宕家や。自信、少しくらい持ってもええんかな?

洋榎「…」

ちょっと顔を引き締めてみた。キリッ。麻雀の事を考える。……おお。さっきまでよりだいぶ格好ええやん
普段鏡見る時なんかマヌケな面して見とるから気付かんかった。試合のVTR見る時も顔には極力意識を向けんようにしとったし

洋榎「…」

表情を保ったまま、容姿について考える。コンプレックスに立ち向かう。麻雀におけるうちは戦士。泣く子も黙る姫松の大エース愛宕洋榎や
だから、麻雀で考える。自信満々の堂々とした人間。自分に自信がなくてビクビクおどおどしとる人間。どっちが強い?どっちが格好良い?無論、前者や
そこに根拠なんざいらん。誰もが挑戦者であり、いつだって自分と戦っている。それなら。だとしたら。もしも同じ程度の実力の雀士が勝負したとして。どうなる?
決まっとる。自分をより強く信じられる奴が勝つ。もしかしたらそれは、麻雀だけでなくて、容姿とか、性格とか、生き方全てにおいて共通してるのかもしれんと思った

洋榎「…」

いや。麻雀はむしろ楽なもんなんかもな。だって、対戦相手が自分だけやない
相対的に相手がいるから、自分より弱い相手と戦うことで、そこで自信を手に入れることだってできる
無論トップに行くなら自分との戦いになる面はあるかもしれんが…自分より強い人を目標にするって方法もあるしな
でも、最終的にはどんな問題も一緒。自分が納得できるのかどうか。自分の目指す場所を決める事。そこからそれを目指すための努力が始まる。闇雲に強くなりたい、じゃ強くなれん
そんなんじゃすぐに息切れして、自分の足りないことを嘆くようになる。そこで蹲って泣いてるだけじゃ、落ちてく一方や
それは、数々の部員を見てきたからわかる

洋榎「…」

そんな麻雀じゃ当たり前のことを、うちは他の生き方の部分で実践して来なかったんだと思う
『ちゃちゃのん』は、化粧って手段でうちの容姿へのコンプレックスを軽減してくれた。それは、己が弱さに絶望し、蹲って一人泣いていたうちに手を差し伸べてくれた行為にも等しかった
お陰様で、今になってようやく冷静に問題を見直すことが出来るようになった
今ならわかる。顔にコンプがあるなら、美人になればええ。手段はいくらでもある
化粧だってええ。フェイスストレッチとかあるし、美容体操だって調べれば見つけられるやろうし、なんなら稼いでエステに通ったってええ
そういった努力もせずに自分の不細工を嘆くのは、ツモ切りや牌譜確認の練習すらせずに強くなれないと嘆くのと一緒や。そんな奴が居たらはっ倒したる!

洋榎「……で、はっ倒されたんやな。『ちゃちゃのん』に。いや、本人にそんな意図は無かったやろうけど」

さっき平手で打たれた頬を撫でる。痛かったなぁ

洋榎「…うし」

で、もう一回鏡を見た。うん。今のうちは格好いい。愛宕主将(元やけど)モードや。腹は決まった

洋榎「やられっぱってのも、らしくないしな」

颯爽と身を翻し、元の部屋へ引き返す
自然、背筋が伸びる。手足に力が入り、胸の奥が熱い。なんだか、大事な試合に赴くような気分やった
『ちゃちゃのん』に、やり返してやろうと思った

とりあえずここまで
明日朝から再開。昼間でやってまた夜から
で、明後日中にはおそらく次の話いきます

おつおつ
結局次の話は誰になるんだろう

洋榎もちゃちゃのんも可愛い。
こーいう話すげー好きだわあ。
次誰になるかも気になる。

洋榎「うらーーーーーーーーー!!」

いちご「!?」

すぱーーーーーーーーーーーん!

威勢のいい掛け声とともに、いきなり入り口の戸が開いた

洋榎「佐々野!佐々野はおるかー!」

いちご「いや、おるっていうか…うん」

寝転がったまま考え事してたらうとうとしておったうちです

洋榎「ありがとな。これ。返すわ」

いちご「あ。はい、どうも」

そう言って化粧落としを返される。受け取る。ポーチにしまう
その一部始終をな~んか横で見つめ…というか、睨んどる愛宕姉

いちご「な、なんじゃあ?」

洋榎「聞きたいことがあんねん」

いちご「は、はあ」

何があったんだか、いきなり威圧的になりおった
インハイを思い出す。あの時はこいつのペースに飲まれっぱなしやったなぁ
リンシャンの流れでツモ食らうかと思ったらハズレで、そりゃそんなレア役そうそう無いわって思っとるとこに役満ぶち当てられて

洋榎「聞いてもええんか?」

いちご「はいはい。なんでも聞きんしゃい」

今も、怒涛の勢いに流されてそんな事を言ってしまいおった
ああ、心地ええなぁ。この人のこのパワー。『ちゃちゃのん』の知らない境地まで連れて行かれるような感覚
あのインハイで、『ちゃちゃのん』、今までにないハイレベルな麻雀にワクワクもしておった
エースポジでもない、中堅であれだけの相手と打てるなんてって。至福の時間を過ごせておったんじゃのう

洋榎「『ちゃちゃのん』、プロになって何をやりたかった?」

いちご「へ?」

傷心抉ってくるとか、ほんとこいつマナー悪いのー!

洋榎「目標って、あったんか?」

いちご「いや…目標っていうか。もう諦めたし…」

洋榎「だから!」

いちご「……なんやねん」

洋榎「諦める前!『ちゃちゃのん』には、プロ雀士になった後どんな目標があったんかって聞いとる!」

いちご「……顔近いって」

そんなことを言いながら、ズイズイズイズイと顔も体も迫ってくる愛宕姉
思わずたじろぎ、気を緩めていた事に後悔。寝っ転がったまんまじゃよう逃げれもせんわ

洋榎「プロになりたいって気持ちはさっきのサウナで聞いた!一線級の選手に、ってのもな!けど、そんなの当たり前や!どんな選手だっててっぺん目指さずにプロ入りする奴なんておらんやろ!」

「強者の理屈や。それは」言いたくて、でも言ったら何かが終わってしまう気がして、言葉を飲んだ

洋榎「だったらお前は、どんな雀士になりたかった!!」

叫ぶ。『ちゃちゃのん』の、目の前で。五月蝿くて敵わん。ホンマ、こいつウザい

洋榎「答えんか!佐々野!!」

いちご「…」

また一段とずいっと来た。近い。近い近い。近いって

洋榎「答えてーな…」

いちご「…」

なんでそんなに必死なん?

洋榎「頼むわ…」

いちご「……」

なんでそんなにそれ知りたいん?

洋榎「なあ、答え…」

なんでそんな…あんたが泣きそうな顔しとるんじゃ

いちご「訳、わからんよ」

ああ。なんだろう、この気持は。ぐるぐると胸中渦巻くこの感情は
ありがたくもあり、腹立たしくもあり、切なくも、愛おしくも、憎たらしくも、怖くも、悲しくも、嬉しくも、楽しくも、湧き上がるこの感情の名前は、なんなんじゃろう

洋榎「でも、それ教えてくれんと、うち、借りを返せへん」

いちご「…」

洋榎「うちに希望くれたあんたに、お返し、してやれんのや」

いちご「…」

ああ

洋榎「……多分、これはアンタの為やない。これは、うちの自己満足のためなんかもしれん。救われて、その人が悩んでる事をしてて、だったら救いたい」

いちご「…」

なるほど

洋榎「アンタみたいに上手に手助けしてやれる自信は、実はあんまない。でもな。やんなきゃアカンねん。うちは愛宕洋榎やから。愛宕洋榎を取り戻してくれたアンタに、同じだけの借りをしっかり返さんと」

これは

いちご「何が言いたいんじゃ?」

洋榎「うちはプロになる」

この感情は

いちご「…」

洋榎「プロになって、王様になる」

いちご「王様」

洋榎「最強の雀士や。宮永照も三尋木咏も、小鍛治健夜にだって負けん雀士。最上位リーグで年間MVPを得て、日本代表に選ばれて」

洋榎「世界だって獲る。金メダリストや」

いちご「……眩しいのう。さっきと打って変わって自信の塊みたいじゃ」

洋榎「おう。向かうとこ敵無しや」



この感情の


いちご「……で?」

洋榎「ライバルが必要やねん。一人でそこまで歩むのには、険しい道や」

いちご「……そんなもん、プロ入ったらいくらでもおるやろ」

洋榎「足りん」

いちご「…」

洋榎「現プロのほとんどの上位陣はライバル扱いにはちょっと年が上過ぎやし、戒能プロは性格的にライバルって感じの熱血やない。宮永照はスカしてた奴で気に食わん。うちにピッタリの、馬鹿でアホで熱血なライバルが欲しい」


名前は


いちご「へえ」

洋榎「佐々野なら成れる」

いちご「……実力が足りんよ」

洋榎「成れる」

いちご「…」

洋榎「成れる」

いちご「…」

洋榎「勿論、プロになって、別な目標が出来たってんなら、それでもええ。けど、うちのライバルってのよりでっかい目標や無いと許さへんで」

いちご「待て待て待て。なんでうちがプロ入りする前提で話が進んで…」

洋榎「成れ」

いちご「無茶苦茶やん」

洋榎「だって、成りたいんやろ?道だって開けとる。例えアイドル雀士枠でも道は道や。成れ」

いちご「……失敗したらどう責任とってくれるんじゃ」

洋榎「うちが養ったる」



存在しない




いちご「……絶句」

何故なら、この感情はうち…佐々野いちごだけの物だから

いろんな感情が入り交じっての化学反応の結果出来た、史上初の化学物質。新しい感情
否。もしかしたら先人はおったかもしれん。けど、学会発表がされてない。うちも、するつもりはない。佐々野いちごだけが心に秘めた感情

いちご「どんだけ勝手で無責任やねん自分」

洋榎「そんなのわかっとる。でももし佐々野が失敗してもひもじい思いはさせんで。それだけは約束する」

いちご「もし自分が大成せんかったら?」

洋榎「ありえんありえん。もしそうなったら地獄で働いてでも養ったるわ」

いちご「アホか」

洋榎「なにぃ!?」






あー。けどなぁ。便宜上もし仮にこの感情を言葉で名付けるとしたら…




いちご「つまり、あんたの言いたいことはこういう事やろ?」

洋榎「おう。どういう事や」

いちご「なんだか知らんが、愛宕洋榎は『ちゃちゃのん』の化粧で自分の容姿に対してのコンプレックスを解消した」

洋榎「おー」

いちご「ありがたい。借りができた。借りを返したい」

洋榎「おー」

いちご「『ちゃちゃのん』の悩みってなんや?ああ、そういえばプロ入りが夢って言っておきながら自分の実力足りんことにウジウジ悩んでそれを諦めようとしとるんやった。アホくさい」

洋榎「…アホとか思っとらんし」

いちご「なら、プロ入りさせてやれば恩を返したことになる?で、万が一失敗してもプロで成功した自分が養ってやれば問題なかろー。よし、強引やけどそれでオッケー。後はどうやって誘おうか?」

洋榎「…」

いちご「せや。うちのライバルって事にしてやれ。それなら自分の勝手で巻き込むって体になるし、目標も出来るし、失敗してもケツ吹く根拠も出来るし、理論武装オールグリーン。よし、はっしーん」

洋榎「そんな言い方…」

いちご「ナメんな」

洋榎「…」

いちご「ムカツイた。本気でムカツイた。あーマジ腹立った。ここまで腹立ったのは生まれて初めてや」

洋榎「あ…」

いちご「うちの事馬鹿にしとるんか?それとも馬鹿なんか?よくもまあここまで人の事コケに出来るもんやな。はいはいわかりました。つまりはアンタはそんな女ってことか」

洋榎「いや…その…」

いちご「ムカツイた。心底ムカツイた。死ぬほどムカツイた」

洋榎「ご、ごめ…」

いちご「ムカツイたから…」






いちご「王様にはならせてやらん」


                         『こんにゃろう!』ってとこかいのう




洋榎「……え?」

間抜けな返事を返す、洋榎

いちご「ええよ。アンタの挑戦は受けた」

洋榎「へ?え?あれ?」

目を白黒させ、うちの顔を見る。うぷぷ。混乱しとる混乱しとる

いちご「そこまで人様の事挑発するってんなら、うちにだってプライドってもんがある。女としての矜持がのう」

洋榎「えーっと…」

凄んでみせる。こいつがビビリなんはさっきで証明済みや。目を逸らし、冷や汗をかきはじめた

いちご「ここまでコケにされて黙っとるわけにもいかんって訳や。舐められっぱってんも癪やし、借りの貸し借りって話ならそもそもインハイの時の借りを返せとらんのはうちの方じゃろ」

洋榎「……あれ?」

今度はこちらの番だった。逸らした目を追いかけ、顔を近づけてやる
わかってなさそうなんで、そこでつまり、と言ってやる

いちご「なってやるわい。プロ」

洋榎「……え」

……思ったよりリアクションが薄いのう
ぽかーんと口開けおって。熱々おでんでも突っ込んでやろうか

いちご「で!じゃ」

洋榎「……はい」

ええいかわまん!押し通す!意地悪そうな笑みを作って、と(演技には自信あるけん)

いちご「決めた。プロ入り後の目標も。愛宕洋榎キラー」

洋榎「……おおう」

いちご「いいアイディアだと思わん?王様名乗るんなら好きにせー。宮永照越えも、三尋木咏越えも、小鍛治健夜越えだって邪魔はせん。なんなら応援してやったってええ」

洋榎「あ。はい。どうも」

いちご「けど、MVPはどうかなぁ?」

洋榎「…」

いちご「常勝無敗!天下無敵!唯我独尊!最強の雀士の名を欲しいままにする愛宕洋榎プロも、無敵のスーパーアイドル雀士佐々野いちごプロの前には型無や」

洋榎「…」

いちご「毎回対戦で役満ぶち当てられて涙目敗走、ちゃちゃのん大勝利!不細工洋榎また終了~」

洋榎「むっ!」

いちご「大成する前にライバルに叩き潰されんよう、せいぜい頑張りんしゃいな」

洋榎「……ぬぅ」

そうや。そうや。大体、前々から思っとったんや。全国放送でいろんな芸能人と話して揉まれてきた『ちゃちゃのん』が、なんで大阪の五月蝿い方とはいえ小娘にペースかき乱されなアカンのじゃ
口喧嘩なら負ける気せーへん。お笑い芸人の弄りとか人気司会者のトークに比べたらアンタのトラッシュトークなんざ小鳥のさえずりや。言い負かしたる

いちご「なんじゃ。なんか言いたそうな顔しとるのう。言い負かしちゃるからなんとか言ってみんしゃい」

洋榎「……なんとか」

ちゃちゃのん大勝利!!

いちご「だから、アンタの扶養はいらんけえ」

洋榎「…」

いちご「ちゃんと、自分の力で戦う。責任も、自分で取る。アンタはアンタで、自分の目標に向かって走りんしゃい」

洋榎「……そっか」

いちご「ま、ちゃちゃのんに邪魔されて失敗するんやけどね」

けけけ、と笑って立ち上がる

洋榎「なら、ちゃんとうちの障害になれる程度には強くならんとな」

いちご「なって見せるわ」

洋榎「…」

いちご「なんとしてもなってやる」

洋榎「…」

いちご「だから、アンタも強くなれよ」

洋榎「言われんでも。佐々野に思い通りにさせんて言う新たな目標も出来たしな」

いちご「あはは。それはしんどくなったのう。でも、それでええ。愛宕洋榎が弱っちいまんまやったら勝ち越してもプロに残れへん」

洋榎「…」

いちご「絶対泣きっ面拝んでやる」

洋榎「めんどくさ。うざっ」

いちご「お互い様じゃ」

二人、同時にニヤリと笑った

今気付いた。テレビが終わっとる。視聴時間を過ぎたカードがデッキから出てきておる。随分と長いこと此処におった
時計を見ると、午前4時。一夜明かしてしまったらしい。アカン。今日観光できるかいのう。まあ、若さで勝負か

いちご「それじゃあ、そろそろ『ちゃちゃのん』、部屋に戻るよ」

洋榎「うん」

いちご「……また」

洋榎「……うん。また」

そう言って、部屋の戸に手をかける。半分くらいまで開いたところで後ろから声がかかった

洋榎「あの…」

いちご「…」

洋榎「……良かったら、今日、一緒に観光せーへん?」

いちご「…」

しばし、迷う

洋榎「…」

いちご「…」

たっぷり時間を掛けて、考える。ようやく結論を出し、振り返る
極上の笑みを浮かべて、言ってやった

いちご「お断りじゃ」

洋榎「そっか」

洋榎も、笑顔で言った

中断ー。ちょっとお仕事

おつ

おつー
いい関係だなあ
ちゃちゃのんかわいい

パタン、と優しい音を立てて、『ちゃちゃのん』は百合の間を後にした

いちご「さて、と」

これからどうしようか。何も考えずに自分の部屋に戻ろうとしていた足を一旦止め、考える。そして少し考えた後、方向転換する事にした

いちご「うん」

他に寝ている人を起こさないよう、静かに、静かに、玄関へ向かう

旅館を出た

周囲を見回してみる

薄暗い闇

しんと云う音が聞こえてきそうなほどの静寂

日の出にはまだ早い

外には誰もいない

今、ここに居るのは『ちゃちゃのん』一人じゃ

散歩をしようと思った

今から眠ったら昼間で寝てしまうかもしれんからのう。それは勿体無い。今晩は徹夜じゃ。何。慣れとる

いちご「ふーう」

昨日はしんどい話ばっかしてたもんで、肩が凝った

うん、と伸びを一つ。気持ちいい

一歩足を踏み出す

カラン。と、旅館で借りた下駄から小気味良い足音が鳴った

坂道を下ってみよう。もう一歩踏み出す。続いてもう一歩。もう一歩。もう一歩…

カラン。コロン。面白い

調子に乗って、わざと音を立てて歩く。カラン、コロン。カラン。コロン。もう一歩、もう一歩。坂道をゆっくり下る

まだ陽は出ない。薄暗い闇の中、歩くのは『ちゃちゃのん』一人

ぶるり、と一度、身体が震えた

ちょっと寒いな。やっぱ放射冷却したわい

でも、それが却って心地いい。もうすぐ冬が来る。それまでに秋の空気を目一杯吸い込んでおこう

カラン。コロン。もう一歩。もう一歩。確実に進む

やがて視界が開け、色々なものが見えた。景色を見回してみる。木に、川に、橋、石垣、民家、神社にお店。あ、自動販売機見っけ

いちご「面白いなぁ」

昨日ここに来る時には、気付かなかったもの。見てきたのに、見えなかったもの。沢山あった。全部きれいに見えた

いちご「ここは、ええとこじゃ。また、来たいのう」

少しそこで休むことにした。財布は…ちぇっ。持ってきとらんかったか
まあいいや、と自動販売機に持たれかけ、しばし辺りの景色を堪能。吉野の町並みはどこか懐かしい匂いのする、優しいものじゃった

いちご「……あはっ」

そうしている内に、目の前の道路。『ちゃちゃのん』の目の前数メートルの位置に、民家の隙間を縫って光の筋が差す

太陽が昇る。けど、今居る場所だと、角度からして陽の光は届かないじゃろう

いちご「ていっ!」

なら。迷わず。ピョン、っとその光の中に飛び込んでみた

カンッ!と、乾いた音が澄んだ空気に響き渡る

いちご「あははっ!」

眩しい。当たり前か。でも、あんまりあったかくはないのう。でもまあええか

だって、こんなにも空気が美味しい

いちご「すー…」

目を瞑って胸いっぱいに空気を吸い込んでみた

一緒に、陽の光も吸い込むようなイメージ。今度はあったかい。錯覚かもしれんけどな

ようやく小鳥達が囀り出した。なんの鳥かはよう知らんけど、でも耳に良い

いちご「どこにおるんかな?」

鳴き声の方をを見やり、鳥の留まってそうな木を探す。アカン。見てもわからん。まあええわ

次は、もっと上を見た。空じゃ。秋の空。真っ青な空。怖いくらい

いちご「うわぁ…」

ぐーっと首を伸ばし、見上げたそれは抜けるように高く、雲ひとつない

いちご「今日はいい天気になりそうやなぁ」

今日は、どこに行こう。考える

とても楽しみやった

いちご「あ…そうじゃ」

ふと、大事な事を思い出した

いちご「後で本屋行かなアカン」

麻雀教本、買ってかんと、な!











             




 






                        心



                        か













                                            

そして、何事も無く二日目が終わり
今日。愛宕さん達と『ちゃちゃのん』さんがお帰りになられる日なのです
で、今私達阿知賀女子麻雀部の面々は、愛宕姉妹のお見送りのため松実館の前に集合しているのですが

洋榎「いや~。世話になったなぁ」

絹恵「すみませんでした。お騒がせしまして」

洋榎「でも楽しかったわ。一日目は観光できんかったけど二日目は色々行けたし」

絹恵「大仏大きかったねぇ。鹿可愛かったし」

洋榎「あいつら凶暴過ぎやねん…」

憧「結局ド定番の観光だったわけね」

洋榎「なんや?お前んとこの神社お参りせーへんかったの怒っとるんか?」

憧「いや。別に…って、頭なでんなー!」

洋榎「へへへー」

穏乃「洋榎さん!絹恵さん!これ、うちの実家で作ったお菓子です!よかったらお土産に持ってって下さい!」

絹恵「え?いいの!?うわー。おおきに。穏乃ちゃん。嬉しい~」

洋榎「おっ!シズゥ~!お前はほんと気の利くやっちゃな~」

穏乃「えへへへ」

なんだかとても和やかなお別れムードです

灼「ねえねえ」

ちょいちょい、と私の袖を引っ張って小声で灼ちゃん

玄「うん?どうしたの?」

灼「どうしたのって…どうしたの、これ」

玄「…」

灼「一昨日のあれはどうなったの」

玄「あ~…」

そうなんです。実は、あれから私達、実は何も知らされてないのです

玄「なんなんだろうねぇ…」

ただ、私達がわかっていることは

灼「ハルちゃんは全然教えてくれないし…」

先日の深夜。私達が睡魔に負け、力尽きた時分

玄「うん…」

赤土先生の言うとおり、全てが解決していたということ

灼「絹恵に聞くのもなんかちょっと躊躇われるし」

そして、当事者二人が翌日、何事もなかったように朝食の時間を同じくしていたという事
でも、別に会話をするとか、席を同じくするというわけでも無かったという事。つまり、避けはしないけど別段仲良くという訳でもない、というか…

玄「……うん」

でもお互い無関心かというとそうでもなくてですね。たまにお互い視線合わせてニヤリと笑ったりしてるんです。その時私達も一緒に朝ごはんしてたのでわかるのですが
絹恵さんも不思議がっていました。あ、ちなみに絹恵さん、その日の晩は私達と同じ部屋で寝ましたよ。朝ごはんも一緒です

灼「いわんや張本人達にをや」

玄「ですよねぇ…」

そして朝食後に百合の間に戻った後、絹恵さんは洋榎さんに聞いてみたそうです。結局あの後どうなったのか

返事はこうだったらしいです

『うち、プロになる』

お姉さんは当然なるつもりだったと思っていた絹恵さん、結構びっくりしたそうですが
「脈絡ないですよね?」と、また私達の部屋に来て相談されました(その日の夜にも一人で遊びに来たので、多分私たちのことを気に入ってくれたんだと思います)

まるっきり蚊帳の外です

灼「なんか納得いかない」

玄「うーん…」

宥「二人共、どうしたの?」

灼「いや…」

玄「うー…」

宥「?」

説明を求むのです!

灼「ハルちゃん…教育者としての義務だと思う」

玄「せめて私達にも何があったか教えてくれてもいいと思うんです…」

未練たらたら。何がどーなって事件解決したのか、気になって気になって、お陰で私と灼ちゃんは寝不足です
「解決したならいーじゃん!」なスタンスの穏乃ちゃんと、「割りとどうでもいい」とドライな憧ちゃん、おねえちゃんは全然平気みたいですけど
ちなみに赤土先生は今日はお仕事です。なんでも、ちょっと教職関係の残務処理があるとかなんとか。先生はお休みでも大変ですね

宥「でも、良かったねぇ」

灼「え?」

玄「どうしたの?おねえちゃん」

おねえちゃん、ブルブル震えながらも嬉しそうな笑顔

宥「みんなが、喜んでくれて」

玄「…」

宥「お客さんが、うちで楽しい時間を過ごして笑顔で帰ってくれるなら、それに越したことはないよ~」

そんな事を、お姉ちゃんのふわりと優しい声で、笑顔で言われては、もう同意するしかありません

玄「そうだねぇ」

宥「だから、あんまり詮索しなくていいと思うよ?」

玄「うぐ」

灼「ぐう」

やんわりと釘を刺されてしまいました

宥「私たちが赤土先生に任せて、赤土先生が大丈夫って言って、それで解決したんだし、先生凄いでいいじゃない~」

灼「それは…うん。ハルちゃん凄いと思うけど」

玄「ですねぇ…」

それは思いました。あの凄い剣幕の喧嘩を一晩で解決した先生は凄いです
でも、本人はそれを言うと苦笑いして、言葉を濁してしまうんですけどね?謙遜しているんでしょうか

灼「でも、だからこそどうやって解決したか知りたいと思…」

宥「まあまあ~」

灼「うわわ」

そこまで言いかけた灼ちゃんを、おねえちゃんがぎゅーっと抱きしめます。たまにやる実力行使です
あれをやられると誰もが黙ってしまうのです。こう、おねえちゃんの大きなおもちがぎゅーっと押し付けられてですね…げふんごほん

洋榎「そんじゃ、そろそろ行くわ」

穏乃「え~?もう行くんですか?」

絹恵「電車少ないしな。それに、穏乃ちゃんにもろうたお菓子早くお母さん達にも食べさせたいし」

穏乃「あ…」

絹恵「またいつか、機会があったら、な。大阪来る用事あったら連絡してな?色々案内してやるから」

穏乃「はい!」

洋榎「そんじゃ、またな~!!」

穏乃「はい!また!」

そうやって、穏乃ちゃんを皮切りに憧ちゃん、灼ちゃんが口々にお別れの言葉を紡ぎます

宥「ほら、玄ちゃん」

玄「うん」

そして、勿論私達も

玄宥「「ありがとうございました!またのご利用をお待ちしております!」」

そして、洋榎さん達が見えなくなるまで見送った後
穏乃ちゃんが何か呟きました

穏乃「…あれ?」

玄「どうかした?穏乃ちゃん」

穏乃「いや…今」

玄「……?」

穏乃「誰か、洋榎さんの後をつけていたような…」

玄「え…」

穏乃「……まあ、気のせいかな?なんでもないで…」

憧「あーーーーーーー!!」

玄「うわっ!?」

灼「どうしたの憧」

そこで、一足先にコソコソと旅館の中に戻っていた憧ちゃんが叫びながら出てきます

憧「いないーーーーーーーーーー!!」

宥「え?誰が?」

憧「『ちゃちゃのん』!!」

灼「え…」

憧「折角サイン貰おうと家から色紙持ってきたのにーーーーーーー!!」

玄「……はあ」

あらら、残念。もう帰っちゃったのかな?お見送りしたかったんだけど

大阪行きの電車に揺られ、うちらは姉妹は三人座席を二人で占拠し、旅話に花を咲かせとった

洋榎「いやぁ、楽しかったなぁ。絹恵」

絹恵「うん。お姉ちゃん」

ニコニコ笑うお姉ちゃんに、うちも自然と笑顔になる
三列あるうちの、私が窓側、お姉ちゃんが真ん中。通路側の席には旅行カバン

洋榎「いやあ、楽しかった。ほんま最高やった。特にあの大仏と鹿な」

絹恵「鹿可愛かったなぁ」

洋榎「うんうん。あいつら凶暴やったけど可愛かったなぁ」

絹恵「それくらいしか奈良の知識あらへんもんね」

洋榎「いやあ!奈良は見どころいっぱいあって楽しかったなぁ!!大仏とか鹿とか!!」

絹恵「そうやねぇ!!特に大仏とか!鹿とか!!」

話に花が咲きすぎて、ちょっと興奮してたんかもな。自然、声まで大きくなっとることに気付けへんかった
それで、見かねた風に前の座席の人が立ち上がる。うちはそこで気付いた

絹恵「あ…」

洋榎「そんでな?大仏がでっかくて鹿が凶暴で、鹿せんべいばりばりーって…」

絹恵「お姉ちゃん。お姉ちゃん」

洋榎「こう、せんべいばりー!ぐしゃー!外人大喜びでいえー!って…んあ?」

絹恵「声おっきかった」

洋榎「あ…」

気付いた時には遅かった。目深に帽子をかぶり、サングラスをした女性が荷物持ったままズンズンこっちに向かってくる。あ、これ怒っとる
慌てるうちらの目の前までやってきて、ピタリ。叱られる!

絹恵「す、すみません!」

「まったく…」

洋榎「え、えらいすんません…」

「ほーんま。あんたら騒々しいやっちゃらやのう」

絹恵「あれ…?」

どこかで聞いたことのある声

洋榎「ん?」

ピクリと反応するお姉ちゃん

「公共の乗りもんでそういうのはいけんぞ。マナー違反じゃ」

絹恵「えっと…」

帽子に手をかけ、目の前の女性

「まあ、姉がこんなんじゃけん、妹さんが苦労するのはわかるけど、妹さんだって一緒になって騒いじゃアカンやろ」

絹恵「あ、はい。すみません」

洋榎「おい」

「はは。姉と違って素直で可愛いなぁ。ま、ええわ。そんなら仕方ない」

同時に、旅行カバンを勝手に持ち上げられる。上の荷物置きに上げられてしまう

洋榎「げ」

いちご「だったら『ちゃちゃのん』が、お前ら降りるまで騒がんように見張っておいてやろうかいのう」

そう言って、『ちゃちゃのん』が帽子をお姉ちゃんに被せてサングラスを外した

洋榎「こ、こら!何勝手に座っとんねん!」

いちご「別に~。ここ自由席やし~」

洋榎「なんやと~?お前みたいな三流アイドルに自由なんかあるかい~!」

いちご「なんじゃとこのブサイク~!」

洋榎「お前が性格ブスや~!」

いちご「なにをー!」

機嫌が悪そうに唸るお姉ちゃん。でも、顔が笑ってる。軽口に、軽口で返しとる

絹恵「……えへへ」

通路側の席、取られてもうた

がたんごとん がたんごとん

線路は続くよ どこまでも

2つの目的地まで

あとどれくらい?

それはわからない

行き先が違うから

でも、時に交わったり、別れたり

そうやって二人、迷いながら

互いの目的地を目指すのです



1話終わりっ!

乙ですのだ

ついに

反省点ばっかですのだ
実はどんなにいっても200くらいで終わると見積もっていたですのだ
もう自分の話作る力で手に余るテーマでは話作らないようにしようと決めたですのだ
今日はもう寝てやるるるるるるですのだ

乙ですのだ

乙ですのだ

あ。ちなみに次。代行×善野さんで決まってます

ですのだ

乙ですのだ

『幕間』

望「それで、逃げてきたわけだ」

私の横に座ってる奴から、辛辣な言葉とともに溜息が一つ漏れた。エアコンから流れる暖かい空気に紛れ、それらはすぐに霧消する。

晴絵「逃げてって…」

余りの蓮っ葉な物言いに、私は少し絶句してしまう。傷心の我が身にはこいつの物言いは少々堪えた。

望「だってそうでしょうが。で、その子の爆発しちゃったのをなんとかしてみよう!ってあれやこれや話して、自分じゃ無理だって悟ってバトンタッチしたんでしょ?逃げたっていうんだよ、それ」

晴絵「きっついなぁ望は…。流石憧の姉」

それでも容赦なくズバズバと傷を抉りに来る親友に、私は苦笑いを返す。でも心で泣いてやるかんな。

望「あの子もこんな感じなの?」

晴絵「まあ、割りと…」

ここは、車の中。憧の姉であり神社の娘であり私の親友である新子望の、自家用車の車内。私は助手席に、望は運転席に座っている。
で、その車は今、吉野の町並みを見下ろす公園の駐車場にあった。無理を言って連れてきて貰ったのだ。

望「まあそれはどうでもけど。……でも、これっきりにしてよね。わざわざこうしてアンタの呼び出しコールに応えて松実館まで来たらさ」

晴絵「…」

望「この寒い中、一人で駐車場に立ちんぼしてんだもん。何事かと」

晴絵「手間かけるね」

愛宕洋榎とのサシでの対話の後。そうだ。思わず愛宕洋榎の神経を逆撫でして怒らせた後だ。
その後、私はまるで勝ち逃げするような捨て台詞を残して、彼女の泊まるあの部屋を後にした。

望「で、話を聞いたら解決できなかったカウンセリングを丸投げでしょ?女子高生に。情けないわねぇ」

戸を開けた時に佐々野いちごが居たが、それは私はとっくに気付いていた。何度か戸に物が当たるような音や息を呑む音が聞こえていたから。
でも、それは実のところ望の言うとおりだ。自分では手に余ると判断し、任せたのだ。
咎めるような目線が刺さる。心が痛い。

晴絵「はあ…」

望「溜息じゃなくてさぁ…」

相変わらず厳しい奴め。そんなんじゃ彼氏出来んぞ。言ってやりたくて言葉を飲んだ。多分言ったら車から放り出される。
時間は草木も眠る丑三つ時。外は真っ暗。明かりは無し。人影も無し。この時間にここで置いてかれたりでもしたら本気で途方に暮れそうだ。

晴絵「なんか、あんまりにも子供の悩みすぎて、私みたいなおばさんが出てって解決できる気がしなかったんだよぉ」

情けない声でそう漏らし、リクライニングに体重を預ける。…ええい。少し倒してしまえ。

望「ちょっと。寝ないでね?」

晴絵「わかってるって」

顔に手を乗せ、表情を隠す。望があんまり虐めるもんで、ちょっと泣きそうになってしまったからだ。
お前のせいだかんな。人選間違えた。友情に恵まれない我が身を呪うぜ。
そう言っておどけてみたが、声がちょっと震えた。なんだよ。これじゃ本気で泣きそうみたいじゃんか。

望「…・・まあ、確かにアンタとその子じゃ年が離れ過ぎてたわよ」

晴絵「…」

へん。今更フォロー入っても遅いっての。少し刺のとれた望の声を聞きながら、心の中でツッコミを入れる。

望「十代には十代の、二十代には二十代の悩みって、あるのはわかってる」

晴絵「そうかなぁ…」

望「そうだよ。私達にだって経験あるじゃない。それに、私には妹がいるから尚更わかる」

晴絵「……教師だってわかるもん」

望「わかったわよ。きつい言い方したのは悪かったからへそ曲げないで」

晴絵「……ごめん」

わかってる。悪いのは私だ。愚痴零したくて夜中に親友呼び出して、車の中で格好悪い失敗談話して、一方的に拗ねて…
そんなの通らない。教師以前に大人として失格だ。このままじゃ。

望「まあ、新米教師には荷が重かったわね。子供の気持ちになってやるっていうのも、案外難しいもんだわよ」

晴絵「そんな昔だった記憶はないんだけどなぁ。JKなんて」

望「甘い甘い。最近のJKは考え方が私らの時代とはまた違ってんだから」

晴絵「そりゃ知ってるけど。時代って変わるのはえーなー」

望「ふふ…同感」

そう言って、望もリクライニングを倒す。なんだよ。お前も寝るんじゃないぞ。私の送迎はお前の仕事なのだ。
まあ、運転代わってやってもいいけど。

望「ねえ、なんか、懐かしいよね」

晴絵「何が?」

望「アンタが、こうやって私に夜中電話してきてさ」

晴絵「……ああ」

望「で、今みたいになっさけない相談してきて。で、私に説教されて」

晴絵「あん時はマジで大泣きしたわ。言葉がキツ過ぎて」

望「私も若かったんだよ。感情的になりすぎた」

晴絵「本気で絶交しようかと思った」

望「私も腹立ち過ぎて同じ事思った」

まあ、なんだかんだこうやって今も腐れ縁やってるのを見たら、そういうモンなのかもって思うんだけどね。

晴絵「あの子らは大丈夫かなぁ」

望「何。見捨てたのに心配?」

晴絵「だから!見捨ててなんて…!」

望「だったらちゃんと責任持って監督できる範囲にいなさいよ。例え力になれないとわかってても」

晴絵「…ぐうの音も出ない」

望「ったく。まだまだガキっぽいわほんと、アンタは」

そう言って、望が一気に起き上がる。怪訝に思って横目で見ると、ガチャと音がして運転席側の扉が開いた。

望「でも、アンタはそんな奴だ。いっつも大好きな麻雀の事ばっか考えててさ。他のことに意識が向かないんだ」

晴絵「…」

望「そのくせ麻雀から逃げて」

晴絵「……はは。ほんとだね。結局、私がまたプロ目指す勇気を得たのもあいつらのおかげだ。今は教師だけど、教わってばっかだった」

望「自分の一番好きなものから目を逸らしてずーっと生きてきたんだ。そんな奴がそうそう大人になるための経験積んで来れてるもんか。アンタはまだガキだよ。ガキ。一端の教師名乗るには全然早い」

晴絵「普通、逆じゃない?」

扉の向こうに、外に出ようとする望に寝転がりながら反論する。
大人になるには、好きなものを押し殺すっていうのが普通なんじゃないのか、と。

望「確かに一般的にはそう言われてるけどさ。でも、そうかなのかな?って、最近思ったりもするんだよね」

振り向きもせずに望が言う。

望「会社のために、仕事のために、生きるために、家族のために…大人になるって、そもそもどういう事なのかって。成人して、働き始めて、社会的な立場を得て、仕事しっかりやって、家族持って…果たして人はそれで大人になったのかって」

晴絵「……まあ、私らまだまだ結構子供扱いされる年代だしね。社会人としては」

望「だったら大人になるってどういうことなのかって聞かれたら、私も上手くは言えないんだけど」

晴絵「なんだよそれ」

苦笑いの気配だけが伝わってくる。けど、そんな望の後ろ姿こそが今の私には大人びて見えた。

望「でも、敢えて考えてみたら、大人って、自分の心をちゃんと見れて、コントロールできて、上手に生きられる人の事なのかなって」

だから、アンタは失格。そう言って望は扉を軽く叩いて閉めた。

晴絵「……大人になる、ねえ」

独りごち、色々と考える。まさか社会人になってからこんな話をするとは思わなかった。
前にこんな話をしたのは…ああ。そうだ。高校の頃だ。大人になるのが不安で、確かに望の言うとおり自分の心を持て余し、生き方も下手糞だった。
で、だからこそ当の望と色々語り合ったのだ。輝かしき青春の1ページってやつだ。色々思いを馳せてみる。

そこで、思い出した。そうだ。望を呼んだのは、何も自分の情けない愚痴を聞かせる為だけではなかった。
というか、こっちが本題だ。

望「んー。ちょっと寒いけど空気が良いわー。アンタも出てきたらいいのに」

晴絵「…」

外で伸びをしている望が見える。私はというと、リクライニングに背を預けたままパワーウインドウのスイッチを押した。

望「出てくる気ないんかい」

そう言ってジト目で私を睨んできた望の目を見て、私は告げる。

晴絵「今日、百合の間が復旧したよ」

望「え?」

望が驚きの表情に変わった。話を続ける。

晴絵「今日の朝さ、灼に聞いたんだ。松実館で玄達が部屋の掃除してまた人泊まれるようにするって」

望「マジで?それは…随分と懐かしい話を…」

晴絵「で、さ。入った。掃除の手伝いって名目で。部員みんなと」

望「……どうだった?」

晴絵「別に、何も。二人きりってわけでもなかったし、昼間だったし」

望「……そっか」

晴絵「だから、噂の真偽は検証できず終いだったけど…」

望「……あんた、まさか」

そこで、望の顔色が変わった。咎めるような、憧れるような、何かを願うような、そんな複雑な顔

晴絵「……そ。愛宕姉妹の泊まってたのは百合の間でしたって話」

望「……迷信に賭けたっての?だとしたらほんと、大馬鹿者じゃない。幾らなんでも…!!」

晴絵「……別に、あの噂を信じてた訳じゃないよ」

望「……言葉が出ないわ」

晴絵「多分、あのまま私が居ても、意味は無かったよ」

望「…」

晴絵「なんとなくだけどさ。そんな気がしてた。で、今一緒に百合の間にいるはずのあの二人は、きっとお互いに思うところがあるんだ」

望「…」

晴絵「だったら。迷信でもなんでもいい。それに賭けてみようって思った」

望「やっぱ信じてたんじゃない」

晴絵「そうかもね」

望「……はあ」

呆れたように肩を竦め、車から離れる望。おいおいそっちは暗くて危ないぞ。しょうがない、出てやるか。

晴絵「望~」

車を出て、名前を呼びながら望が向かった方向に数歩歩くと、闇の奥で望の影が見えた。
でっかいモミジの樹を見上げて立ち尽くしている。

晴絵「なんだ、そこに居たのか」

望「……ねえ。晴絵、覚えてる?」

私の方を見もせずに、望が尋ねる。

晴絵「ん?」

何のことかと聞き返す。

望「いつだったか、二人で悪ふざけでした話」

晴絵「えっと…」

なんだったっけな。思い出せずに頭を捻っていると、望が薄く笑って答えを教えてくれた

望「ほら、」





望「                             」



望「…って」

晴絵「……ああ」

思い出した、いや、覚えてた。そうだったね。そういえばそんな話したこともあったっけ。
なんだよ。お前のほうがよっぽど子供っぽいじゃないか。ちょっとおもしろくなって口角がつり上がった。望も笑う。

望「やっぱ、普通は忘れてるもんか」

晴絵「いや、その事なら覚えてるよ」

望「そう?」

疑わしいなぁ。と言ってこちらに戻ってくる。冷えちゃった、そろそろ車に戻ろうか、と言いながら。

晴絵「ああ。なんなら今度…」

望「いや、いい」

晴絵「…」

望「今は帰り辛いんでしょ?だったら朝まで付き合ってやるから」

晴絵「お、深夜デート行っちゃう?」

望「ば~か」

そう言って、望が運転席に座る。私は助手席。

望「どこ行きたい?」

晴絵「そうだな。海が見たい」

望「調子のんな」

晴絵「へへ。任せる」

望「あいよ」

そう言って、私と望は朝までの長いドライブへ出た。

で、翌朝。麻雀部のあいつらが起きてくる前にこっそり戻って、朝ごはん食べて解散。
家に帰ってから爆睡してしまったけどね。くそう、気持ちがまだまだ未熟でも身体は確実に老いてきてやがる…




幕間終わり

第二話

悪魔のチョコレート、天使の酒癖

玄「へっくち!」

宥「…」ガタガタガタガタ

穏乃「玄さん風邪?」

玄「ううん。けど、最近ちょっと寒いよね。うちは家があったかいから外に出ると気温差が…」

憧「宥ねえが超振動してる…」

灼「宥さん、大丈夫?」

宥「みんな…私もう駄目かも…」ガタガタガタ…フラッ

灼「あ、倒れ…」

穏乃「宥さーーーーーん!!」

憧「穏乃!ストーブ!ストーブMAX!」

晴絵「お前ら何してんだ」

はい。お疲れ様です。どうもおはこんにちばんわです。松実玄です。
只今、我々は大ピンチです。部室が寒いのです。
主におねえちゃんが死にそうです。

晴絵「あちゃー。また宥が死にかけてるのか」

穏乃「宥さん!このダウン着て!あとこのコートも!」

憧「待ちなさいシズ!先にコート着せないとダウン入んないから!」

宥「さむい~さむい~」

ちなみに今は、冬です。秋に愛宕さん達や『ちゃちゃのん』さんが松実館にいらっしゃってから随分と時間が経ったと思います。
あれからみなさんお元気でしょうか?実は、この間絹恵さんからおもしろいメールが届きました。

灼「赤土先生。これは我が麻雀部にもこたつを導入するべきかも。人命のために」

晴絵「人命って。それに第一宥はもうすぐ卒業だしなぁ」

灼「新入生に宥さんみたいな体質の人がいないとも限らないし!」

晴絵「あってたまるかこんな希少体質!」

まずは近況報告。絹恵さん、なんと主将になったらしいです。これは凄い!立派なお姉さんを継いで、二代で名門姫松高校を率いることになろうとは。

灼「それは差別的発言だと思…」

晴絵「灼ー。お前、そんな事言って実はこたつ入れる口実探してたんだろ。最近お前予算のふんだくり方随分上手になったもんな?」

灼「ぐう…」

で、次。お姉さん。洋榎さんもつつが無くプロ入り決定。大阪の名門クラブチームへの所属が決まったそうです。これも素晴らしい!

憧「っていうか、宥姉もうすぐ卒業じゃん。部室に入り浸ってて大丈夫なの?麻雀でプロ入りって訳でもないのに」

穏乃「受験期はちょっと見ませんでしたけど、でも二次試験とか…」

灼「そういえば私は勝手に家継ぐからだと思って気にしてなかったけど、卒業後どうするんですか?」

晴絵「ああ。宥は推薦で大学だよ」

穏乃「推薦!!?」

玄「あれ、言ってませんでしたっけ?」

晴絵「成績も悪くないし、何より阿知賀はインハイでベスト4だしな。はっきり言って余裕。ちょろっと勉強して、面接で通ったんだよ。勉強もだけど、麻雀の腕磨くのも大事だったって訳」

で、ここからが本題です。なんとなんと!『ちゃちゃのん』さんもプロ入りが決まったとの報告があったのです!

穏乃「ふむふむ。麻雀さえ頑張れば勉強しなくても大学にいけるのか」

憧「アンタは留年しないように気をつけないとね」

穏乃「なにー!?」

灼「穏乃ならプロ入りも出来ると思…」

なんでそこで『ちゃちゃのん』さんが?って思いますよね?それは、『ちゃちゃのん』さんの入団するクラブチーム!なんとなんとなんとー!
大阪にあるもう一つプロクラブチーム、即ち洋榎さんの入団するところのライバルクラブへの入団ということで!

穏乃「えへへ…」

晴絵「だからって学業おろそかにするのは許さん」

穏乃「はい…」

格は洋榎さんの方のクラブには少し劣るところなんですが、なんて言えばいいんでしょうか。同じ府内にあるせいでその二つのクラブはとても仲が悪いそうなんです。
で、勝率も何故か拮抗しているという。気合なんでしょうか。相手方と戦う時だけ異常な力を発揮するらしいです。
いえ、別に憎みあっているとかそういう訳ではないんですが、ダービーともなると応援の方々が発煙筒(室内競技で!?)を焚いたり小競り合いがあったりで結構凄いことになってるそうで…
話題性とかでも常に競争してる二チームは、今年は愛宕洋榎という目玉の一人を得た方のチームがストーブリーグで一歩リード!
と、思いきやアイドル雀士『ちゃちゃのん』の加入で相手チームに話題を掻っ攫われてしまい、フロントの方々は洋榎さん共々歯軋りしているそうです。

しかも、実は愛宕家はどちらかと言うと『ちゃちゃのん』チームの方に近いらしく、たまに練習参加で大阪に来ると、『ちゃちゃのん』さん、愛宕家でご飯を食べていくという…
洋榎さんは「あんなん冷えたぶぶ漬けに納豆突っ込んで食わせたったらええねん!」と鼻息荒いそうですが、ご両親が『ちゃちゃのん』さんを気に入ってしまい拗ねている、とか内部情報も入っております。

灼「玄?」

玄「はっ!」

おっと!絹恵さんのメールを思い返していたら顔が緩んでしまいました。

灼「どうしたの?ぼーっとして」

玄「ああ。いえ…」

それで、追伸

玄「あ、そういえば思い出した」

晴絵「なんだ?どうした玄」

玄「えっと、この間絹恵さんから来たメールに書いてあったんですが」

晴絵「おー」

憧「え?なになに?」

穏乃「ううー…勉強かー。勉強…うーん…」

前回、松実館にお泊りになられてから洋榎さんの様子が変わったことに、監督さんが気付かれたそうで。
何があったか尋ねられたそうです。それで絹恵さんがお答えしたところ…

玄「今度の土曜日、姫松高校の赤坂監督がうちにご宿泊に来られるそうです」

大変強いご関心を持たれたそうで、是非うちに泊まってみたい、と。
しばらくはお忙しかったようで機会が無かったそうですが、遂に今週の土曜、都合を付けていらっしゃる事になりました。
部屋まで同じ部屋をご希望なされて、本当は百合の間は二人部屋なんですが、二人分の宿泊料金を払われてはこちらも何も言えません。
あとはいつものように誠心誠意おもてなしするだけです。

で、赤土先生はちょっと赤坂監督に面識があると聞いたので、一応お知らせしておこうと…


晴絵「げ」


物凄く嫌そうな顔をされました。

今日の分終わりー

おつー
代行善野さんとか俺得です


ネキがガンバでちゃちゃのんがセレッソって感じか

>>585
ガンバ…

あっ(察し)

書き溜め中。明日の夜書けたとこまで投下するでござる




いらっしゃーい。入ってええよー。


はい、こんばんわ~。ようこそ、松実館百合の間へ~。

へへへ。なんて、今晩泊まるだけなんやけどねー。

……あら?なんや、松実姉妹だけやと思ったら、麻雀部のみんなおるんか?

え?わざわざうちに会いに来てくれたん?嬉しいわ~。

赤土さんは……なんや、急に仕事が入ったん?そら残念。

もしかして、うちが来るからって無理やり仕事入れてたりして。

……な~んてな~。あはははは。冗談冗談。ほら、みんなまずはこっち来て座り~。

今座布団用意するねー。お茶淹れるよー。お菓子もあるよー。

あ、ええってええって。今はみんながこの部屋のお客さんやから。な?うちにやらせてー。

ん。そーそー。いい子いい子。

それにしてもいい部屋やね~。

純和風で、調度も落ち着いてて、アメニティもちゃんとしてるし、のんびり落ち着ける~。

あ、勿論お風呂も良かったし、晩御飯も美味しかったで~。まさか二人分払ったからって料理の質グレードアップしてくれるなんて、サービスええな~。

あはは。ちょっと食べ過ぎてまったわ。あんたら呼んどいて、ちょっとウトウトしてしまっとった。

……ふ~。

ほんと、思ってたよりずっとええ部屋。

畳も十数年使ってなかったとは思えんほど綺麗だし、な。

はい、人数分お茶淹れ終わったよ。お菓子配るね。

ほらほら、遠慮せんと、しっかり食べ。

え?こんなに大量のチョコレートどうしたかって?

えへ。

実は、さっきここの旅館来る前にコンビニ寄って大人買いしてしまいました~。

好きなんよ。チョコ。

え?穏乃ちゃんも好き?うんうん。美味しいよな~。

あー。ええよええよ憧ちゃん。確かにうち年上やけど、今日はフランクにいきたい気分~。

ほら、あんたも食べ~。まだまだいっぱいあるよ~。新作チョコもあるよ~。なんせ今はバレンタインシーズンやからね~。

ん?どうしたん?玄ちゃん。

ああ、そらキミらの名前くらい覚えとるよ~。なんせ去年のインハイで決勝まで進んだ高校の選手やで?

決勝どころか、準々決勝ぐらいまでは全員の名前と特徴一致しとるよ。

どうしたん?宥ちゃん。え?なんでこの部屋が十数年使ってなかったか知っとるって?

……・?

え~~…

……あ~。

そっかそっかー。なるほどなるほどー。

そっか、キミらの世代は知らんのかー。

この部屋の奇跡みたいなウ・ワ・サ。

赤土さんからも聞いてへん?

そっか、聞いてへんのか。ありがとな灼ちゃん。でも、ちょっと落ち着き~。

……そうやなぁ。

そこからとなると、ちょっと話の構成変えようかなぁ。そっちのが面白そうやし。

……ああ。実はな?元から、それに関するお話はしようと思っとったんよ。

うん。この部屋にまつわる、ウワサに関する話な。ううん。都市伝説?フォークロア?ジンクス?まあ、なんでもええわ。そういう話。

昔聞いた時は本気で信じた訳やあらへんかったけど…

洋榎ちゃんの話聞いて、な。ちょっと思い出したもんだから興味持っちゃって。

一回、どうしても現地に行ってみたいって思ったんよ。

そんじゃお話するで?

……あはは。みんな、そんな緊張した顔せんといて~な。

ほら、チョコでも食べながら適当に聞いて。

あ、でも穏乃ちゃん、あんま一気に食べ過ぎると鼻血出るで。

ああ、ほら。お茶も無くなっとる。今淹れたるから。

……え?どうしたん?灼ちゃん。

私はお茶飲まんのかって?

……。

そうやねぇ。だったら…

ごめん。話しながらお酒飲んでもええかな?

あ、ごめん玄ちゃん。旅館のビール持って来なくてええよ。

実はさっきコンビニで買って来ちゃってたり…えへ。ごめんなさい。

許して~な?この、ウイスキーの小瓶一個だけやから。

うん。ごめん。宥ちゃんコップありがと。

大丈夫。弱いけどへべれけにならへん程度にちびちびやるから。

お、穏乃ちゃんあんがと。注いでくれるんか?じゃあストレートでええから、そのまんまコップに入れて。

よっ。

とっとっと~。

うん。どーもどーもー。そのへんでええよ~~。

くんくん。

っ。



……

………

……………へ?

……あ、う、うん。大丈夫大丈夫。なんでもあらへん。なんでもありませんよ~~。

さてさて。

……こほん。

じゃ、改めまして。

この部屋にまつわるウワサについて、と、私赤坂郁乃の個人的な昔話。

はじまりはじまり~~。





「こんにちわ~~。貴女が善野さんですか~~?」







そのヒトは、天使みたいに綺麗な人やった。


 





「はじめまして~。私は赤阪郁乃いいます~~」



初めてその人にあった時、私は衝撃を受けたよ~。

まるでハンマーで頭殴られたみたいにな~~。

だって、天使がそこにおったんやもん。

そりゃ誰だってびっくりするやん?

まあ、なんか悔しいから内心表に出す事だけはせ~へんかったけどね~。

へっへ~んぷー。

まず目に着いたのは全体的に色素が薄い肌。

落ち着いた静かな佇まい。

どこぞの女神も裸足で逃げてくような整った顔立ち。

小鳥のように愛らしく、優しそうな笑顔~。

ふわりと柔らかそうな長髪は絹のように滑らかで~。

抱きしめれば簡単に折れてしまいそうな儚い様は、まるで夜明けに浮かぶ白い月。

否が応にも見る者の征服欲を刺激する。けど、それ以上に不可侵なモノへの畏れを奮い起こさせる。

もうここまで来たら、こんな生き物同じ霊長類ヒト科オトナ属オンナノコ種って認めたくすらあらへん。女優とかさえブッちぎっとるやん~!って。

みんなはあの人見たことあるかな。いや、マジで見たらきっとびっくりするで?

もう人類の造形における数え役満って感じ~~。

オマケに近寄ると一日中嗅いでたいくらいに良い香りがして、女の私でさえクラクラ~っと!

この上カリスマあって。……まあ、こんな生きモンに無い方がおかしいけど、あと人望あって、麻雀も強くて、指導力まであって…

そんでな。そんでな。体弱い癖に結構えっちい身体もしとってな?

胸おっきいし、おしりもしっかり出とるし、お腹はくびれとるし、背も高くて、足も長くて、お肌もすべすべで…

その時なんて相手が女だってわかっとるのに思わず抱きしめたい衝動に駆られ…

えっほん!

まだ酔っとらんで。まだ全然。お酒一口しか飲んどらんもん。

ま、何はともあれな?つまり、善野さんは超が10個くらい付くほどの超美人。あんま身内褒めるのもなんやけどね。でも、これは見てもろうたら納得してもらえると思う。

……う~ん。

……。

…ほんま人生って不公平よねぇ~。

対する私なんて、その辺にどこでもおるよなゆるキャラで?

おしゃれとかももうすっかり諦めとるよな、干物もどき~。

そんな年行っとるつもりはあらへんけど、美人です~なんて口が裂けても言えん見た目。目も細いし。スタイル悪いし。

あ~。あとな~。空気読むのも下手っぴで天然ボケ言われるし、人に合わせるのも苦手やな~。

得意なんって言ったら、悪巧みとイタズラくらい?

善野さんとは、もう生きとるステージからして違って、ほんと一緒の空気吸っててすみませんです~って何度も思ったわ。

で、何が悪いんだかわからんけど。……悪巧みとイタズラ上手なんは美点よね?何処行っても嫌われもんやし?

行先、行先で厄介もん扱いされて、煙たがられ~。めんど臭がられるし、相手してくれんし、たらい回しの、猿回し~。

も~!嫌なら嫌ってはっきり言って欲しいねんよ?避けてんの隠すなら隠すでもっと上手にな~。バレバレなんいっちゃんキツイ~。

…くすん。

…。

……。

………ぷっ。

あはは。

な~んてな~。な~んてな~。

同情した?同情した?

みんな、そうやって深刻そうな顔してコロッと騙されるのは可愛いなぁ。扱いやすくてほんと好き。

穏乃ちゃん特にええなぁ。そのずっこけるリアクション。ドリフみたいで。次点は玄ちゃんにあげる。へにょ~ってなってて可愛い。それ骨格どうなっとるん?

どや、呆れた顔しとるけど灼ちゃん。こういうの小悪魔系って言うんやろ?セクシーなオトナ的な。宥ちゃんも進学したらそろそろこういうちょっと裏のある大人にやな…

え?憧ちゃん、違うの?

ああ、前にうちの末原ちゃんにも似たような事やったら『そういうのは小悪魔系やのうてただの悪魔です!」言われたわ。

んも~。何が違うの~?私わからん~!


さ、そろそろ話戻そか。何処まで話したっけ。え?全然話とらん?善野さんが美人だってお話だけ?

脱線し過ぎたね~。それじゃあ、私が善野さんと出会った時の話からしよか~。

私らが出会ったのは…



……まあ、私がいつどうやって出会ったとか。その時の関係がどうかとか。その辺の話はど~でもええか。

よくよく考えたら、この辺今回大事でもなかった。

今語るのもめんど臭いし。これ以上お話長くするのも疲れるし~~。

やっぱこの辺はカットカット~。

私らが出会って~。あれやこれやして~。善野さんが倒れて~。なんか私が姫松高校の監督代行やる事になって~。また色々あって~。

インハイ始まって~。終わって~。

それからま~~~~~~た時間が結構経って~。

そこから。

あ、でもでも!もっかいだけタンマ!

えっとな?これからのお話なんやけど。

ちょっと自虐風な感じだったり、気持ちええ話では無かったり、私の主観めっちゃ入ってたり、するんよ~。

それと、私ちょぉ~~~~っとだけ、嘘吐きやし?

まあ、あんま万人に受けるような気持ちのええお話出来る気はせえへんから、その辺は堪忍な~。

あと…

………

うふふふふ♪

ちょっとお子様には早いお話もするよって、耐え切れんくなったらいつでも避難してええで~。

ほな今度の今度こそ行くよ~?

まずは、去年!末原ちゃん達3年生!この冬、クリスマス頃のお話~。

その日は休日で~。寒~い日でな?朝から有志募っての朝練やったんけどな?
受験で忙しそうにしとった三年生も、なんでか集まって来たんよぉ。
レギュラー格やと、洋榎ちゃんはプロ入り決まっとったからほぼ毎日出とったし、由子ちゃんはセンター前の最後の息抜きにって。
最後にうちの前のインハイの大将務めた末原ちゃんな。この子も由子ちゃんとおんなじような理由で一緒に来とった。
でも、この子だけはなんやかんや理由つけて引退後も度々部室に顔見せとったんやけどな。

で、私はというと、その日はなんでか早起きしちゃって一番乗り。まだ部屋もあったまる前から部室に来て、仕方なくストーブ炊いて座っとったんやけど、そしたら次に末原ちゃんが来て声かけてきたんや。

「おはようございます。赤阪代行」

「…」

「…赤阪代行?」

「…つ~ん」

「代行ー」

「んも~。ちゃうやろ末原ちゃんー!」

「…」

「今の私のポジション、なんやったっけ~?」

「……赤阪…監督」

「は~い。な~に~?末原ちゃ~ん」

「…」

「えっへっへ~」

あの子、しっかりものの癖に随分抜けとる子でな~。
正式に私が姫松の監督になってもう結構経つのに、ま~だ私のことたまに代行って呼ぶんよ~。

だから、そのたんびにちゃんと訂正してあげるんやけどね?
そのたんびに苦い顔して黙っちゃうんよ。もう、自分の過ちを認めへんと人は大人になれんのよ?変なとこであの子お子様なんやから…
みんなも、ちゃんと間違ったら「ごめんなさい」って言えるようになるんやで?

「いえ…その。特に用事って訳ではなかったんですが」

「ほいほい」

「他にまだ誰も来とらへんのですか?」

「うん。末原ちゃん早かったね~~」

「いえ。私はいつも通りです。だいこ…監督こそ」

「なんか目が覚めてまったんよ~。やること無いから早く来たら誰もおらんし、寒かった~」

「あ、ストーブ炊いとってくれたんですね。ありがとうございます」

「末原ちゃん、てか、まだ寒いんやけどストーブ壊れてたりせんよね?」

「ボロいストーブですから。部屋が暖まるまで30分くらいかかりますんで」

「そんなにぃ~?」

「我慢してください」

末原ちゃん、いつも通りやった。普通受験生ってこの時期焦っとるもんやけどね?
まあ、ちょくちょく部活に顔出せるって事は余裕あるって事でもあるんかな。
そう思ってそれとなく聞いたら、この間の模試A判定だったって。流石やなぁ。

「…」

「ん?どないしたん?末原ちゃん。そないそわそわして」

「いえ…」

「…」

「ま、まだ、誰も来ないんですかね」

「何?私と二人きりがそんなに嬉しいん?」

そしたら末原ちゃんなんて言ったと思う?
「ふざけないでください」やって~。ちょっとしたお茶目やん~。くすん。怒られてもうた~。

「そしたら何待っとるんよ~?」

「いえ。別に特別に誰かを待っとるって訳では…」

「…」

「あう」

「……ああ」

「ちょ、だい…監督!?なんか勘違いしとらんです…」

「善野さんは今日お休みやで?」

「か………」

「そうですか」って言って、その後椅子に腰掛けてな?牌磨き始めたんや。
も~露骨過ぎて内心笑ってもうた。急に俯いて黙々と牌磨きて。自分知っとるやろーが。いつも部活の最後に牌磨く時間設けとるから朝一で磨く必要無いって。
まあ、なんか可哀想だったから補足情報だけはあげたわ~。

「病院の定期検査やで。別にどっか悪くなった訳ではないって」

「…」

「むしろ、最近は快方に向かっとるってお医者さんの太鼓判付きよ~?」

「そうなんですか?最近あまり部活に顔を出せて居ないので、善野かんと…監督補佐の容態について聞いてませんでしたので」

「普通この時期の受験生は部活になんて顔出す余裕あらへんのやけどね~」

「…」

「ま、末原ちゃんなら万が一受験落ちたらプロ入りって手もあるよ?私が口利いてあげようか~~」

「縁起でもないこと言わんといてください」

また怒られた~。しかもその後で「それに監督の口利きってなんか怖いです」って付け足してな。末原ちゃんも言うようになったわ~。
でも、明らかにさっきより嬉しそうな顔しとったから、まあええかな。って思った。

ん?ど~したの?灼ちゃん。

ああ、善野さんの事?あの人ね、ちょっと前まで結構アレな病気でな。今は退院しとるんやけど、まだ通院しとって。
あ、そっちじゃなくて?ああ、うん。そう、今は私が監督で、善野さんはその補佐。善野さんは流石に病気の事とかあって監督業は務まらんって事になって。
で、今は私が正式に監督やってん。まだまだぺーぺーやから、善野さんが補佐やってくれとる、実質監督二人体制でな。

末原ちゃん、善野さんに随分懐いとったから、それ決まった時は嬉しそうやったなぁ~~。

「あははは。すまんすまん。冗談やから堪忍な~~」

「まったく…言っていい冗談と悪い冗談というものがですね…」

「なー末原ちゃん」

「……なんです」

まあ、それも当然って言えば当然なんやけどね。
あんな美人で、優しくて、指導が上手で、麻雀も強いお姉さん、憧れないほうがおかしい。
だから…

「末原ちゃんて、善野さんに惚れとるように見えるな~~」

「はぁ!?」

「駄目やで~~?そういうのは。仮にも生徒と教師なんやから。例え女同士でもバレたら善野さんしょっぴかれてまう」

「だっ!な、何言っとるんですか!!」

「え~~?だから末原ちゃんが…」

「アホですか代行!?わ、わわわわわ私が善野監督に惚れてるって!?」

「いや、まるでそんな感じに見えたってだけで~…」

「だ、第一!私達二人共、女同士やないですか!!人からかうのも大概にしてください!!」

「すんません」

「全くです!!!」

ちょっと、からかっちゃった~~。えへへ。

……うえ。このお酒、苦。
あ、大丈夫大丈夫。苦いのが美味しいんよ。
え?さっきから減っとらん?ええのええの。ちびちび飲むのが格好ええんやって。
でも、おつまみも食べたいな。チョコ一個パクー。

「でもな?末原ちゃん」

「なんです」

「もー。そんな拗ねた様な目で見んといて~。からかったのは謝るから~~」

「私別に女性好きや無いですからね」

「わかっとるわかっとる。末原ちゃんが彼氏居ないのは女の子好きなんやなくて出会いが無いだけやもんね?大丈夫、うちはちゃ~~~んとわかっとるから」

「死ぬほど余計なお世話です!」

「あっはっは~」

「本当にこの人は…」

「でもな?末原ちゃん」

「……なんですか。またからかってきたら流石に今度こそ怒りますからね」

「もう怒っとるくせに~」

「な・ん・で・す・か!」

「真面目な話。善野さんとそんな関係になったら大変だと思うで~?特に惚れたれたりなんかしたら絶対痛い目見る~~」

「あのですねぇ。だから私は女性好きでは…」

「いやいやいや。別に今回は末原ちゃんがそうだって言っとらんやろ」

「じゃあ、なんでそんな話するんですか?」

「いや、なんとなく」

「…」

「…」

「馬鹿馬鹿しい」

「…」

「あの人に愛される人は、きっと世界一幸せものですよ」

「やっぱ女性好…」

「一般論としてです」

「…」

「あんな綺麗で優しい人に愛されて、不幸になる訳があらへんやないですか」

「…」

そ~言って、末原ちゃん、立ち上がった。話はここまでって感じでな。
多分本気で怒ったんやと思う。私の言いたいこと誤解して。
きっと、善野さんは病気だから、愛されたら愛されるほど失った時の痛みが大きいとか、そんな感じの酷いことを私が言おうとしてるって勘違いしたんや。
その証拠に、声が悲しそうに震えとった。

「そうです。あの人に愛されて、不幸なことがあるはずが無いんです」

「あのな?末原ちゃん。末原ちゃんちょっと誤解しとるようやから…」

「さっき私は女性好きではないと言いましたけどね」

「うん?」

「それでも。……それでも、善野監督補佐のような天使みたいな人に愛されるなら、それでも良いかもって思ってしまいます。善野監督補佐は、そういう人です」

「……それも一般論?」

「ええ」

「…」

そこまで話して、お互いちょっと黙ってもうた。
今のうちに誤解解いておかなと思ったんやけど、なんだか言葉が出てこんで。

で、そうこうしとるうちに外から話し声が聞こえてきて。

「もー!洋榎、強引すぎるのよー!私受験生だって言ってるじゃない!部活やってる暇あったら勉強しないと落ちたら洋榎のせいなのよー!」

「なーに言うとんねん!自分煮詰まって自習室でぼーっとしとった癖に!こういう時は気分転換や気分転換!で、スッキリしてからまた勉強した方が効率ええんやでー」

「まったく…仕方ないわね。それじゃあ今日がセンター前の最後の気分転換って事で~」

「切り替え早っ!か~!由子お前うちに言われんの待ちやったろ実は!」

「ふふん♪何のことかさっぱりなのよ~」

声に気を取られてそっち見とる間に、末原ちゃんは切り替えてしまっとった。
「遅いわ二人共!」とか言って部室の戸開けて仲良し三人トリオになってもーてな。もうさっきの話の続き出来る雰囲気や無かった。
やってもうたって思ったわ。そっからはお互い本格的に忙しくなって、会うことも少なくなってもーて。誤解も溶けず終いで年を越す羽目になった、と。
私の気にし過ぎかもしれんけどね?ふふ。ごめんな~?湿っぽい話して。

くぴ…うえ…

ん?どないしたん?灼ちゃん。
ああ、私がなんで善野さんと付き合ったら大変とか、好かれたら不幸になるとかそんな話したかって?
それは……ん~、ちょっと待っとってな?

どういう順番で行こうかな。え~っと…

……うん。そうやね。決めた。

またちょっと時間を早送りして~。

時は昨日!うん!実にタイムリー!

あはは。その時に色々あって、変なこと思い出しちゃったんでこうやって宿泊先でぐだぐだキミらに管巻いとるってのもあるんやけどね~。

そ。昨日。

センター終わって一段落して、今度は二次試験対策の今現在。
プロ入り決まっとる洋榎ちゃん以外の三年生は頑張ってお勉強しとったんやけど…
バレンタインにな。また久しぶりに部室に顔出してくれた。

気分転換がてらの一大イベント。即ち、バレンタインや。

キリが良いので今日はここまで
プロットが最後まで出来てるって素晴らしい
ていうか無計画って怖い

おつおつ
次回も待ってるデー

乙ー

ぱく。

もぐもぐ。

こくん。

ふう。

うん。やっぱりチョコレートはおいしいなぁ。

これはコンビニのやけどね~。

……はい。それじゃあ話を再開しよか。

うんとね。それじゃあ、昨日。授業が終わってな。1,2年生が部活にボチボチ集まり出した頃、
3年生がさっき言ったとおり、チョコレート持って遊びに来てくれたんや。

洋榎ちゃん筆頭に、由子ちゃんと、末原ちゃんも勿論。
で、みんな思い思いに友チョコ配り始めて。絹恵ちゃんが「お姉ちゃん今日はクラブの練習行かんでええの?」って聞かれて、たまにはこっちにも顔出さなな~」とか言ってたり。
由子ちゃんが漫ちゃんにセンターの結果聞かれて「ちょっと上手くいかなかったから志望の大学には二次で挽回頑張るのよー」って疲れた顔で答えてたり。
微笑ましかったな~。

で、末原ちゃんな。久しぶりに見た。
私はその時ちょうど別の子の指導に回っとったんで遠目からやったんやけど、明らかに誰か探しとった。
一発でわかった。善野さん探しとるんやろな~って。

あんまりそわそわしとるもんだから可哀想になってな?
指導してた子に断りいれて、ちょっと末原ちゃんかまったる事にしたんよ。
後ろから話しかけたらや~っぱりどこか固い表情で返事返された~。

「善野さん、資料取りに行っとるだけやで」

そう言ってあげたら、一気にホッとした顔になったけどな。おもしろ~。

「なんか用事やった?」

わかっとったけど敢えて気付いとらんふりして聞いたった。

「あ、いえ。ちょっと…」

煮え切らん顔で、煮え切らん返事。なんやねん。そんな隠すこと無いのに~。
ちょっとむっとして、やっぱり気付いてたってバラしたった。

「そうなん?私てっきりそのおっきい箱に善野さん用の手作りチョコでも入っとるんかと思った~」

「なっ!なななななんでそれを!!?」

大慌てで箱を後ろ手に背中に回して隠す末原ちゃん。ホンマわかりやすい子~。

「なんや、ホントにそうやったん?」

「ブッ!ブラフですか!?」

その後すっごい癇癪起こされてな~。
人をからかうのもいいかげんにしろとか~。生徒に絡まないでくださいとか~。身体の弱い善野さんにお使いさせるなとか~。
結局、善野さん帰ってくるまでずぅ~~~~っと、お説教~。

さて。やっとこ善野さんがプリント抱えて戻ってきて~。

末原ちゃん、すぐさまそれに気付いてな~。もう正式に監督なんですから色々しっかりしないと云々ってとこで私の事ほっぽり出して、善野さんとこ駆け寄ってって。
「1年の頃からお世話になりました!」って。たかがバレンタインなのに、まるで別れの餞別でも渡すような感じで、チョコ渡して。
対する善野さんはちょっと驚いた顔。でもすぐに笑顔に戻って、その場で「食べて良い?」って聞いてな?
「是非!」って頷く末原ちゃんの嬉しそうな顔確認して、包装開けた。私もちょっと興味あったから、首のばしてぐい~んって覗いたんよ。
凄かったで~?トリュフ。しかも手作り。そんなスキルあったんか~ってな。

「食べてもいい?」って聞かれて、もっと嬉しそうな末原ちゃん。一口食べて「美味しい」って言われた後は、もうその場でスキップしそうなくらいやった。
その様を薄く笑って見てた善野さん、「ありがとう」って言って末原ちゃんの頭撫でてな。
多分私がそんなことしたら「子供扱いするな!」って叱られるのに、目細めて猫みたいにされるがまま。

「良かったです。初めて作ったからお口に合わなかったらどうしようかと」って言う末原ちゃんに、
「本当に美味しい。食べてみる?」ってあ~んでトリュフを食べさせる善野さん。

後輩の何人かの子がわざとらしく「キャーーー!」って黄色い声上げて、顔真っ赤にした末原ちゃんがそれを睨んで黙らせたり…

ん?どうしたん?憧ちゃん?ああ、百合の間と全然話が繋がんない?
もうちょっと待っとってな~。

……くぴ。

……こくん。

ふ~~~。

……でな。そうこうイチャイチャしとる内に、私は寂しそ~に……あはは。うん、寂しそうに二人を見てたわけやけどね?
これちょっとアカンよな~って、思っとったんや。

いや、別に嫉妬とかやなくて。

え?ああいや、別に末原ちゃんがガチでそっちの気あると思った訳でもなくて…

も~!何言うとるん灼ちゃん~!

違う違う。

私が思っとったのは…

ううん。

思い出したのは…ね。

そんな昨日から、さらに昔。何年も、何年も前のバレンタイン。

あれは…そうやねぇ。

うちが、や~っと合法的にお酒飲める年になった頃~。




「ぜ~んのさん♪」


私は善野さんにめっちゃ懐いとった。
そらもう、末原ちゃんにだって負けないくらい。ううん。末原ちゃん以上や。

だって考えてみ~?あんな美人で優しい人や。運良くお知り合いになれて、お近づきになれて…
そりゃあ誰だって喜ぶよ。理由もなくくっついて、後追いかけて、犬っころみたいにベッタリ。

善野さんも善野さんで、内心はどうかしらんけど私のこと他の人みたくうざったがらないで、ちゃんと相手してくれて。
その頃は周りでも評判の仲良しコンビって呼ばれてたりもして。
それが誇らしくもあって。

本当に、大好きやった。
一緒に遊びに行ったり、一緒にご飯食べたり、旅行したり。何するにも一緒。
お互いの家行き来するのも日常茶飯事で、料理ごちそうになったり、お風呂借りたり、お話したり。

えへへ。善野さん、料理も上手でな。あの人の家に行ったら私は食べる専~門!
……一度私が作った料理はアカンくて、それ以降は私の家に遊びに来た時も善野さんが作ってくれるようになったけど。

色々やったなぁ。あの頃は。

お互いの家を行き来と言いながらも、実は善野さんの方が良い部屋に住んどってな~?
交通の便も良いこともあって、段々向こうの部屋に遊びに行くことが増えた。
多分、半年くらいはほとんど家に帰らずに入り浸ってた時期もある~~。

一緒にテレビ見たり、勝手に雑誌読んだり、ソファーで二人居眠りしちゃったり。
特に会話もなく一緒に居ても、全然苦にならなかったんよ~~。
凄く居心地の良い距離感と、相性だったんやと思う。

親友、ってやつだったんやろね。今思えば。
お互いにお互いの足りないものを見出して、尊敬と憧れを感じあってたんやと思う。
ちょっと自意識過剰かな?でも、きっとこれは自惚れやあらへん。そんな自信がある。

嗜好も随分気が合ってな~。
お互いインドア派で~。……まあ、善野さんはこの頃から内々では体弱ってたてのも有ったんかもだけど。
甘いものが好きで~。
麻雀が好きで~。
ちょっと人見知りで~。
好きな雑誌も、小説も、ドラマも、漫画、果ては小物の趣味でさえ、おんなじ。

ただちょっと違うとこがあるとしたら…

善野さんは車の運転がからきしで、私は得意。
私はお酒が全然飲めないのに、善野さんは身体弱いくせに酒豪。

そんくらい?

ああ。また話が脱線しとったね。そうそう。話は数年前のバレンタインデー。

二人、その日は、日が落ちる頃には善野さんの家に居た。確か、日曜日だったんやと思う。
ダイニングで二人、椅子に腰掛けて他愛もない話をしとったんや。
近所のアンティークショップで可愛いティーカップが有ったとか、今度ちょっと奮発して高級文房具を買おうと思ってるだとか、
オリーブオイルがそろそろ切れるから買いに行かなきゃとか、そんなん。……あれ、ゴマ油やったっけ?まあその辺は忘れた。

若いくせに格好付けててな~。会話内容ちょっと背伸びしとったんよ~。お話してるBGMに買ってきたジャズのBGMとか流して。
今思うと噴飯物やけど、でも善野さんが余りに綺麗で、絵になるからそんなんでも様になってしまった。
私は背伸びしてそんな自分に酔ってたとこもあるけど…あの人はどうやったんろうねぇ?もしかしたら素だったかも。

で、緩やかな音楽が流れる中で、会話しつつ何してたかというと。

私はホットミルクにシナモン入れて、つまみにチョコ食べとった。
善野さんはウイスキー。琥珀色の…アイリッシュウイスキー。銘柄は覚えとらんけど、今私が飲んどる安モンとは違って、結構高そうなやつ。
勿論善野さんもつまみはチョコ。ウイスキーとチョコって合うんやで。

「善野さん、ほんとお酒強いよな~~」

そんな事言いながら、半ば呆れた顔で言ったの覚えとる。

「女の子でそんな度の強いの飲む子あんまおらへんよ?」

そう言って包装開いて食べたチョコの味も。
ちょい苦ビターチョコ。あんま好きな味や無かった。顔を顰めたら薄く笑われた。

「むう…笑わんといて」

拗ねたようにそう言って、可愛さアピール。やった後に、子供っぽかったと反省した。
何故なら、善野さんがその後すぐに私と同じチョコを美味しそうに頬張ったから。

「はあ…まあええわ」

そう言って次に食べたチョコは最高やった。とろりと口の中で解けるように溶ける、甘いトリュフ。
すぐに消えてく優しい味を名残惜しいと思いながら、唾を飲み込んで言った。

「お陰様でこうしてご相伴に預からせて頂いておりますんで~~」

その日はバレンタインやったから。
チョコ、いっぱい有ったよ。

善野さんのファンから貰ったバレンタイン・チョコ~。

あんだけ綺麗やったら性別も無いんやね~~。老若男女、ファンは幾らでも居た。あの人に出会ったら、成らざるをえないもん。
結構お姉様って慕ってた子もおったんや。そういった子らがみんなで寄ってたかってバレンタインにかこつけてチョコ渡したのも、何も不思議なことでもなかった。
中には本気の子も居たかもな。で、そういう子らには悪いけど、食べきれないってんで親友の私も一緒に処分させていただくことに~~。

……今思えばこれ知られたら怖い事になってた~?

「でも、今日ちょっとピッチ早くない~~?」

私の前でカパカパロックのウイスキーを空けてる善野さん見て、ちょっと不安になった。
本人にその事を話したら、今日は機嫌がいいからお酒が進むって~~。
チョコがたくさん手に入ったからってさ~~。

「あ、そ」

またちょっと呆れて、それだけ返したんよ~~。

で、バレンタインの話はそこで打ち止め。
私も善野さんも、あんまりバレンタインみたいな行事に積極的なタイプやなかったからね~。
友チョコとかもお互い準備しとらんかった~。

また取り留めもな~い話に戻って…
私が車のパーツ欲しがってるって話とか~。今度近所に新しくパン屋さんが出来るらしいとか~。
そうしてる間もず~っと善野さんはお酒飲んでてて

「……善野さん?」

しばらくして、なんかちょっとだけ善野さんの様子が変だってのに、気付いた。
初めて見たな~。善野さんが酔っ払ったとこ。顔を少しだけ赤く染めて、潤んだ目が扇情的やった。
で、そんな感じで切なそうにこっち見てきて、ゆ~っくりその顔近付けてきてな?

「えっ……」

面白いな~。これは明日からかうネタ出来たわ~。……な~んて呑気に思っとったら

「なにを…」

押し倒された。

今日はここまでー
今のとこ考えてるやつの中では、この話だけはちょっと大人風味でいくつもりなんですが…
あんまり本気でガチレズ描写書くと生理的に引かれそうでちょい怖い。あと本気なのに文章力のせいでうんこになりそうでもっと怖い
読んでくださってる皆様的にはどこまで大丈夫そうですかね?(小声)

そして今までトリ忘れてたよ畜生

乙ー

乙やで~
大人の恋愛ならイっちゃうところまでイっていいんじゃないですかね(直球)

乙ー

乙ー
個人的には割とどこまでもウェルカム

ガチレズならわた原村さんと咲さんが良いと思います!!!

初めはそこで崩れ落ちただけだと思った。
ダイニングテーブル挟んで向い合って座っとったんやけどな?
柄にもなくはしゃいで~。テーブルの上に飛び乗って~?
で、派手に動いたせいでお酒が回ってばたんきゅー。

私にもたれ掛かるように意識落ちた?って。
二人、椅子ごと後ろに倒れてって~~。私はとっさになんとか善野さん庇うように抱きしめてコケたんよ~。
おしり痛かったけど、なんとか守りきれてな~。二人共怪我は無さそうで……あ、おしりは痛かったけど……だから、ホッとして。

いきなり奇行に出た善野さんにちょっとめっ!しようかな~って思って、不機嫌そうな声で言ったんや。

「善野さん、危ないやろ?も~。何しとるん?」

あんまり怒ったような声出せんかった~~。
普段からのんびり屋しとるとな?とっさに叱れないんかな~って。今でも私、人叱るの苦手やねん~~。

そしたら善野さん、私の顔じ~~~ーっと見つめて来て。
今の衝撃で目、覚めたかな?とか思って。

「善野さん?私の顔になんか付いとる?」

そこで、言われたんや。はっきりと。「ごめんなさい」って。
だから抗議した。今度こそお説教のつもりで。

「ほんまやわぁ。いきなり飛びかかってきたからびっくりしたよ~~?駄目やで?もしどっちか怪我でもしたら…」

そこで……

唇を塞がれた。

「ふぇ?」

何が起こったんか、わからんかった。
頭の中がぐ~るぐる。

善野さんの形の良くて、柔らかくて、いい匂いのする唇が私の唇を塞いでた。
鼻筋に鼻息が当たって、熱かった。ふーっふーって、興奮してるのがわかって。
怪我させまいと抱きしめてた筈の腕から力が抜けるのを感じて。
そうしたら、今度は逆に抱きしめられて。力が強くて、ちょっと怖くて。

何が起こっとるんかまだ理解出来んくて~……ほんとは理解したくなかっただけかも……な?
なんかに助けを求めるように目を泳がせたらほっぺに冷たい床の感触を感じて、顔を背けようと首を横に振ったら善野さんが唇ごと追いかけてきて。
もう逃さまいとでもいうんか、今度は顔を両手で抑えこまれて。舌、入れられた~~。
熱い熱い、善野さんの舌。ちょっぴり甘い、チョコレートの味。それと、ウイスキーの、樽の匂い。

「あふ…んむっ!」

恥ずかしいことに~、私はそれまでキスの経験なんて無くって~~。
初めてのキスの味に、テンパッて、怖くて、ちょっと泣いとった。

「ふぁっ!はふ…ふ…」

思わず善野さんを押し退けようと腕に力を入れようとしたけど、力が入らんくて~~。非力な善野さんさえ押し退けられないで~~。
口の中にヌルヌルとした生き物が入ってきたような錯覚に陥って、それが私の舌をむしゃぶり尽くそうと食いついてるように思われて~~。
自分が食べられちゃうんじゃないかって怖くて、怖くて、怖くて…。

「んむ~~~~!!んんん~~~~~~~!!んん~~~~~~~~~~~!!」

我も忘れて嫌々って首振ろうとして、足バタバタさせて、大粒の涙で顔ぐしゃぐしゃにして、抵抗して。
善野さんの背中の掻きむしって、必死に逃げようと藻掻いて。全部無駄で、怖くって…!

「うう…」

ちょっと、全てを諦めかけた。いきなりこんなことされて~、抵抗するのも無理で~、もう全部が嫌になって~~。
舌から逃げようと首に入れてた力も抜いて、足も暴れさそうのやめて、腕に込めてた力も、指に入れてた力も抜いて。
一分一秒でも早く善野さんが許してくれるように祈って。されるがままに……。
そしたら、善野さん、やっと解放してくれた~~。

「ふあ…あ…あう…」

顔離して、立ち上がって、善野さんがこっち見てくる。
対して私は腰が抜けちゃって床に転がったまんま。

その体勢のまんま、はぁはぁ、って二人共物凄く荒い息吐いて、お互いの顔見つめ合って。
善野さんが、そんな私に物凄く辛そうな顔で「ごめんなさい」って、もう一回謝ってきて。
私は、色々と聞きたいこととか、文句とか、いっぱい有ったのになんにも言えんかった~~。

逃げるように部屋を後にする善野さんに、混乱しっぱなしの私は「待って」の一言も言えず~~。
しばし久しぶりに見るダイニングの天井をぼ~~~~~っと、見つめてたんや。

でも、その時の天井の色がど~~~しても思い出せん。
涙で視界がぼやけてたからかな?一晩中見つめてたのに、思い出せへんの~~。

横になったまま、色々考えて。外が明るくなり始めて。
ほっぺがパリパリになってちょっと痛いなって思い始めた頃、

「あ。そういえば今日月曜日……」

日常に帰ることを決めた。
善野さんに会わずに自分の家に戻って、すぐに2時間だけ寝て。その後シャワー浴びて、浴びながらもう一回泣いて。
着替えて、お化粧して。涙で真っ赤になった目、鏡で見て。また泣きそうになって。
まだちょっと早かったけど、愛車のエンジン起こして八つ当たりで乱暴な運転しながら日常に帰って~~。

それからしばらくは、善野さんと顔合わすのも避けるようになった。

アカン。酒の飲み過ぎで気持ち悪いわ
ちょっと休んで回復したらもう少しだけやる
でも今日はこんだけかも

乙やで~
楽しみにしてるっす

乙ー!
続き期待してますー!

いくのんがメインてなかなか無いよね

確かに

こっちも更新無いかなー

カンちゃん完結させてほしい
あの後どうなったのか

続き期待やし!

イッチは日常へ帰ってしまったのだ・・・

はずかしながらかえってまいりました
いやね、いろいろあったんよ
さんびゃくまんえんばかし借金背負ったり家財差し押さえの危機に陥ったり独立することになったりvipの半年規制くらったりまさかのリアルBL作家とお知り合いになってしまったり
他にも話せないような事がいろいろと

今、なんかやたらと働いておりますので中々来れませんが、そろそろ一段落つきそうな気配を感じていますので、今月中にはなんとか復活したいとおもってます
こんだけスッとろいとそろそろ飽きられてきてるような気がせんでもないけど、けじめだしちゃんと完結はさせるよー

カンちゃんの方は、いつかやっちゃいたいけど時間がない上に半年規制くらってるから今は無理ー
もういっそ今やってるのが終わったら速報でやるかねー
いつになるんかしらんけど

とりあえず生存報告でした

おいおい人生の危機じゃねえか

なんというハードモード…
それでも無事でなにより
SSSの方も期待してる

あ、そういうリアルの報告はいらなかったです

半年規制か
待ってるでー

気長に待ってるでー

まあ、よくある話だな

リアルBL作家との出会いにより更に濃厚なハギ京の絡みが見られるとはたまげたなぁ…
でも正直土日で終わるような短編を色々書いて欲しいわ

ふぅ~。キリいいとこまでは話したかな?…って、どないしんたん?みんな、そんな顔困った顔して。
へ?あ~。あはは。そーやね~。うん。女の子同士でキス、やもんね。それも、無理やり。

何?憧ちゃん。うん~こんな話してもいいんかって?あはは。言ったやろ?私嘘つき。嘘つき。
創作やってほら。こんな事現実でされて今みたいに笑ってられるわけあらへんやん?
それより灼ちゃん、エラいことになっとるよ?顔真っ赤に染めちゃって。あ、もしかしてエッチい話に耐性あんま無い子だったりする?
うんうん、真面目そうやもんね~。

ん?問題ない?またまた意地張っちゃって~…あ、うんうん。わかったわかった。大丈夫って事にしといたる~。
でも、耐え切れんくなったらこっそり席外してもええんやで?

あはは~。喋っとる本人が言うとか、おかし~。

ぱく。モグモグ。こくん。

……うん。うん。それでな。私が善野さんを避けるようになってからの話。
それでも顔合わす機会は多かった。気まずかったけど、周りにそれを悟られるのも嫌やったから、普段はそんな変わらんように、とも努めた。
けど、やっぱりすぐバレるもんやね~?「仲良しコンビ、どうしたん?」って、聞かれること、増えた。あんな事、正直には話せんよね。適当にお茶濁したわ。

そうこうしてる内に、噂は勝手に広まった。仲良しコンビ解散の噂。私と善野さん、喧嘩別れ、って。
もともと天使みたいな善野さんと、子だぬきみたいな私じゃ全然釣り合わんかったし、まあ順当、って。

そしたら、すぐに善野さんは揉みくちゃや。
空いた善野さんの親友ポジに収まろうって、あの人の周りにいつも以上に人が殺到するようになった。
そので~っかい輪の外で、一人ぽつーんと突っ立ってた私。
これでもう、あの人とまたじっくり話し合う機会なんて一生なくなるんやろな~って、思って、その輪に背中向けた。

それで良かった。
あの日の真意はわからんかったけど、別に知りたくは無かったし。
だって、怖かったし。

それで、ずーっとそのまんま。

wktk

と、行けばここでお話は終わったんやけどね~。

ここですっぱりといける程、私、人間出来とらへんかった。
て言うか、思った以上にアカン子やった。

そうやって善野さんと距離置いて~。一日目~。二日目~。三日目~。四~。五~。ろ~く、しーちのは~ちのきゅっ!

……あれ?

そう言えば、最近全然外出とらんくない?
最後に人とおしゃべりしたの、いつやったっけ。
お昼誰かと一緒に食べたのは?大好きな車のパーツ集め、オークションの期日過ぎとるし。
そもそも、なんで車が好きなんやったっけ?

朝からず~っと被っとった毛布の中で、いきなりそんな事思い浮かんだ。
カレンダー見たら、あれからもう10日。

折角それまで小奇麗にしとった部屋はゴミでぐっちゃぐちゃで、お化粧も全然せんで、それどころかスキンケアも、お風呂すら入っとらん日さえあった。
布団の中でゴロゴロしながら「なんでこうなった」って色々考えてるとな?やっぱあの日に行き当たっちゃうわけや。
そうすると、遅ればせながらよ~~~~やく、心の中にモヤモヤっとした黒いもんが浮かんできて。それがどんどん膨らんで。
それもこれも全部善野さんのせいや~~!って段々イライラしてきて、ベッドの上で立ち上がり、その辺にあった時計みたいな小物とかポーンって放り投げて八つ当たり~。
そこからはもう、怪獣の徘徊や。寝室の小物落っことしたらリビング!ありとあらゆるものに八つ当たりがおー!って気分でのっしのっし。後先考えとらんかったね~。
あ、そうだ。アカンよ?こういう物への八つ当たり。後で冷静になった時にすっごい後悔するから。私は忘れた頃に放り投げた髪留めガッツリ踏んづけて2針縫ったんやで。

……コホン。
で、そんなゴジラみたいにして大暴れすることしばらく~。ふと見たリビングの、真っ黒なテレビな。画面に反射して、見ちゃったわけや。
子供みたいに鼻水垂らして、鼻真っ赤にして、目腫れぼったくして、ほっぺ浮腫ませて、グシャグシャに泣いてる、自分の顔。目が、合った。
そしたらその瞬間妙に冷静になってまってな~。

「あ、私、今寂しいんや」って。

その瞬間いきなり一人で居るのが凄く怖くなってな~。腰が抜けて、その場で崩れ落ちちゃった。
俯いて、誰かに愚痴を聞いて貰いたくなって。我儘言いたくなって。泣き付きたくなって。
でも、聞かせられるような友達居ないし、って~。
家族とかにも居ないし~……って……。

こういう時、嫌われもんってほんと辛い……。

しばらく座り込んだまま、ぼーっとして。
奇跡的に被災を免れとったケータイに、目が行って。
ちょっと考えるふりをして。そんで。


私は、何かの感情を、天秤に掛けた。


「もしもし。善野さん?今から、ちょっと会えへん……かな?」


結局。


友達の居ない、その癖寂しがりの私には
相手に何されたとか、そんなんで友達を選べる余裕は無かった……って、そんだけの話。

待ち合わせの場所は、どこだったかの小洒落たBAR。時間は夜の11時くらいかな。どっちかの家に、って気は流石に起こらんかった。
地下へと降りていくその隠れ家みたいなお店の、内装とかもうあんま覚えとらんけど、ただ入った席の近くに折鶴蘭の鉢植えが一個だけ置いてあったん覚えとる。
チラッと見ただけやけど、なんか意味もなく印象に残ったんや。

「なんやお久しぶりです~」

少し、居心地の悪そうな顔で、善野さん、来た。やっぱり居心地が悪そうで、私が座ってたテーブルの前まで来ても、座ろうともせずにソワソワソワ。
「座ったら?」って言ったら、ようやく頷いて、やっぱり居心地悪そうな顔で、着てきた厚手のベージュのコート脱いだ。
その下は白いタートルネックのセーター。ビロードみたいに滑らかな高そうな生地で、ふわっとした奴やつ。昔に一緒に買いに行ったやつ。
善野さんの白い肌に凄く馴染んで、綺麗やった。お店のオレンジ色の照明があったかくそれを照らしてて。
長い足を包んどったんは濃いグレーのスキニージーンズ。これもブランドもんやし物は良いけど、結構全体的にラフな格好やなと思った。こういうところに来るにしては珍しいな、とも。

善野さんが座ったとこで、ウェイターが来た。いつもならこういうとこだと、二人最初は格好付けてドライマティーニとか頼んじゃうんやけど、私はアルコールって気分になれずにウーロン茶。
そしたら向こうも同じの頼みます、って…なんや大酒飲みが珍しい、と目で尋ねたったら、無言で俯かれた。
一応、この間の事相当気にしてるってのだけは伝わってきて、ちょっとだけ嬉しかったな~。
それで、なんとなく和解っていうか、許してあげてもええかな~みたいな気分になって。
おしゃべりもちょっとずつ調子が戻ってきて、気付いたら二人いつも通りに会話出来るようになってったんや。

……こうやって振り返ると、私ってチョロすぎるかな~?

……ふう。チョコパクリ。あれ、もうあんま無い?

今日はここまでー
久しぶりだしリハビリがてらでしたが、ようやく復帰します
魔法少女の方も、少しは進めんとねー
そして、ほんと読んでくれてる人何度も待たせちゃってごめんね

俺も短編も書きたいなーとは思うんだけど、最近は土日も時間取れないんでなかなか難しいです
やってみたいネタは色々あるんですけどね……

乙です

いくのん善野さんの関係は前から気になってたから復帰嬉しいぞ

乙ー

乙やで

乙ー!

乙っす

いろんなお話したな~。
たった10日しか距離おいとらんかったのに、もう話題は積もるようにあった。
その当時二人が好きだったドラマの話とか。
もうすぐ3月だって話になって、そろそろ春物買わなきゃな、とか。
いつも行く服屋さんから割引券付きのダイレクトメール来てたよ、とか。
どんなアイテムが欲しい、とか。

善野さん、そろそろケータイ機種変の時期だ、とか。
私は夏の機種出るまで様子見したほうがええと思う、とか。
郁乃、いつもそうやって様子見るよね。とか。
ええやん。私は慎重派やねん~。とか。

そしたらな?そしたらな?
真面目な顔で「のんびり屋」って言われて。
ちょっとムッとして。
思い立ったら、早いうちに行動したほうがいいよ。って、言われて。
ちょっと黙ってもうて。
ごめん、て謝られて。

「そ、そういえば~!」

変な空気、強引に断ち切ろうと思って声張り上げたんよ~。
だってだってー。善野さんまで寂しそな顔して黙りこくってもうて。
私も何にも言えなくなってて。
いつまでもこの沈黙が続きそうな感じやってん。

「そういえばな?そういえばな?あー…さっきから気になっとったんやけどな?」

これ、嘘な。声張り上げたはええけど、なーんも話題が出んかったから何でもいいから話題探して、
喋りながら考えまくってたらたまたま思い付いた話題だったってだけ。

「今日は善野さん、なんやえらいラフな格好やなー」

だから別に咎めるとか、意味を求めて、とかや無かったんや。無かったんや、けど。

「へ?理由?聞きたいかって?あ~…う、うん。理由あんなら教えて貰えたら嬉しいかなー」

善野さん、ちょっと考えた風にしてからそんな事尋ねてきてな。せっかくだから教えてーって、軽い気持ちで頼んだ。
……聞かなかったら、その瞬間ちょっと気まずい思いして終わりだったんかなーって思うと、今でもちょっと後悔しとる。

「……?」

そしたら善野さん。

溜息。

苦笑い。

急に目瞑って。一回大きく深呼吸。優しく目を開いて。私の目を見て。すぐ逸らして。

「あー…」って、困ったような声出して。

顔俯かせて。

顔上げて。私の目見て。またすぐ逸らして。

もっかい顔俯かせて。

曰く。

デートだって、思いたくなかったんやって。

わけわかる?

おしゃれなカッコしてきたら、嫌でも意識しちゃう、て。

ちょっと冗談めかした声で。

怯えきったような、震える声で。

蚊がなくように小さ~な声で。言ったんよ。

ね。わけ、わかる?

「はぁ…」って、わけわかっとらん声出して、話の続き待った。

そしたら「わかんないか」って、ちょっと傷付いたような声で言われてな。
そんなんでわからんっちうに。

「いや、わからんー?」

補足促した。
そしたら、今度は諦めたような溜息。また苦笑い。
「郁乃は女心がわかってない」なんて気の抜けた声で言われて、女の子に女心がわかってないとはこれいかにー?

きょとんとしとったら、調子取り戻したのか、今度は幾分いつもみたいな声に戻ってな。
あー。おほん。

「『つまり、私が郁乃を好きだって事』」

……これ、その時の声真似なー。

「はあ」

私のこと察しが悪いとか言わんといて~。

で、その後な?

「だから好きなんだ」

「はあ。うん、ありがと…」

「女の子として」

「……はあ?」

「……私、その……レズビアン……なんだ」

「…」

「…」

「…………はあ!?」

「……はあ」

こんなやりとりやってから、私もようやく理解してな?
善野さんがつまり、同性愛者で?私のことを好きだった、って。

キスされといて避けるようになって尚、私、そんなの想像だにしとらんかった。
酔った勢いで善野さんに遊び半分でファーストキス奪われた~とか、そんな想像はしとったけど。
その割には善野さん、キスの仕方が執拗やったな~とも、思っとったけど。
あの時の善野さん、ちょっと必死過ぎて怖かった、とも、思っとったけど……。

……やっぱりちょっとは想像しとったかも。

善野さんかわいすぎてやばい

でもでも?人間、想像の範疇外のことって、実際目の当たりにしても容易に受け入れることって出来ひんのよ?
なんだか現実感がなくってポワポワしてるっていうか……。
善野さんに同性愛者告白と私の事好き告白同時にされても、なんかまだきょとんとしながらウーロン茶ちびちび飲んどった。

善野さんはまた黙っちゃって。
私もお茶飲んどって。

ずーっと黙ったままの善野さん。
お茶飲みながら善野さんの言った事を反芻する私。

俯いたままの善野さん。そのまま溜息。なにやらブツブツ言い始めてな?
さっき言われた意味を考えあぐねる私は、いつの間にやらウーロン茶飲み干しとった。
それ見て、善野さんまた溜息。今思えば私、ほんとマイペースやったね~。

そこからまたしばらく時間が経って…
ストローで溶けた氷の水分吸っとった私に、善野さん、スクっと立ち上がってこう言ったんよ。

「『そういうわけだから、本当にごめんなさい。もう貴女の前に顔は出さないわ』」

リアルに飲み物吹いたのこれが最初で最後やったわ~。

「ちょいちょいちょい!ま、待った待った!なんでそーなるん!?なんでそーなるん!?」

立ち上がって伝票とコート手に颯爽と勝手に会計へ向かう善野さんに、慌てて私も立ち上がって言った。
歩みを止めないから小走りで前に回りこんでな。でもそのせいでつんのめって躓きそうになって。
あっ!って思ったら足がもつれて、転ぶ!って思ったら善野さんが慌てて抱きとめてくれて。
ホッとしたんだけど、後悔もした。「ああ、カッコ悪いなって」、ほんとはそれどころじゃなかったんやけど。

転ばずに済んで、御礼言おうと顔上げてな?善野さんの顔見たら、ものすごく辛そうで。
顔背けてこっち見ずに、「早く立って」って、それだけ言われた。
その声があまりに冷たくてちょっと怖くてな。のろのろと足、立て直したんよ。
そしたら軽く突き飛ばされるように引き離されて。

それで「ああ、この人本気で私の前から消えるつもりなんや」って気付いて。
そしたらなんだか無性に悲しくなって。
抱かれた時に強く掴まれて、ちょっと指が食い込んでたとこが少しだけ痛くて。
それが物凄く怖くて。
そんな私に、見透かしたように「今、怖いって思ったでしょう?仕方のない事だけれど、少し悲しいわ」って。

「今まで隠していてごめんなさい」って。
「でも、貴女の事、友達としても好きだったから」って。
「友達としても、親友だと思ってたから。一緒にいたかったの」って。
寂しそうな顔で。多分、私とおんなじような顔で。

あーあ。あん時小走りしなかったら、また色々変わっとったんかなー?もう少し軟着陸っていうかー……
そう思うと、小走りしたのどーだったんやろなー?しなかったから今よりマシだった?それとももっとアレな事になっとった?
今思えばあそこで小走りせんでも、どうせお会計してる内に先回りで入り口通せんぼできたんよなー。
あの小走り、良かったんか、悪かったんか。私にはわからんなぁ。小走りなー。小走り。ほんと小走り……

ニワカッ

その時の私は、一体何を考えとったんやろね。

「だっ…ちょ、えっと、ま、ままままった!」

ただただ、善野さんを繋ぎ止めるのに必死になっとった。

「待って!悪いけどごめんな、、ちょっと待って!」

後のことも、先のことも、なーんも考えずに。善野さんが別れの言葉を紡ぐ前にって、言葉遮ろうと必死になって。

「その前に一個!一個だけ言わせて!」

だって、嫌やった。

「な?お願いやからな?お願いや!」

知ってしまったから。

「さっきから善野さんばっか喋ってずるい!」

例え彼女が私の事をどう愛そうが。

「な?そんな顔せんと。ちょっとだけ私に先に喋らせてな?」

善野さんが、私の事、親友って……

「いい?うん、ええね?よっしゃ、それじゃあちょっとだけ待って。少しだけ話すことまとめさせて」

私なんかの事、それでも親友って。

「いや、またそんな複雑そうな顔せんといて。ええやろ?こんくらい」

善野さんも、私と同じようにそうやって思ってくれてたんなら……

「えーっと…」

思ってくれてたんなら。

「……」

もう、一人ぼっちは……



「……嫌や」


「離れたく無い」


「ねえ、善野さん」


「私、善野さんが同性愛者でも構わへん」


「どこも行かんといて」


「もっと一緒にいたいんや」


「せから」


「お願いやから」


「……」





出ない!

そこまで言って、それ以上はもう言葉が出んかった。
何を言ってるんや自分って思って。
何を言おうとしてるんか。何を言えばええんか。さっぱりわからんくなって。
あの時、私はなんて言えば良かったんやろね。今もわからん。
でも、ここで止めてしまったせいで物凄く酷い事を言った事になってまった。

案の定、こーんな感じのこと言われたんよ。

「『貴女は残酷だ』」

「『貴女に同性愛者の気持ちはわからないでしょう』」

「『はじめから好きな人に好きと伝えられない人間の気持ちは』」

「『伝えてはならない人間の心は』」

「『そんな私に、貴女はそれでも尚側に居ろと言うのか』」

「『そんなの、私が耐えられない』」

「『……言うべきでない事を言ってしまったことは謝る』」

「『でも、これ以上想いを伝える事はしない』」

「『今ならそれで済む』」

で、結びに一言。

「『さよな…』」

途中から言ってくるやろなーって思っとった言葉来たんで、遮った。

「だったら」

もう、話聞いとる内に腹は決まっとったし。
いや、ほんとは覚悟なんて決まっとらんかったけど、それでもどうしてもこのまま彼女とお別れしたくなかってん。

だから、こう言ったったんや。



「付き合おー?」


「同性愛者の善野さん、受け入れるよー」


やーい。ばーかばーかばーか。

今日の分終わりー
こんな時間かけといてお話として普通過ぎてヤバイ

乙ー

おつー
何だかんだでイチャイチャしててええのぅ

善野さんかわええのう

乙ー!
ええなー

上の方でカンちゃんの完結うんぬん言ってたけど、去年とは違う真シリーズが始まったん?

乙です

スイートメモリー以外にあったっけ

向こう落ちたか

やってしまいましたなぁ

今日このss読み始めて、一気に読み進めてしまった
文章から伝わる空気というか緊張感がすごいわ
まったり待っております

(2ヶ月ルール、明日の昼くらい書きますって言ったら間に合いますか)

キター?

おーお帰り
大丈夫なんじゃね

確か自治スレかどっかでhtml化する前に作者が書き込めばhtml化はしないって言ってたような

良かった
魔法少女に関してはすまんかった
今日は体力限界だからもう寝るけど、起きたら明日は昼まで書くです

了解です

さってとー。
それから私らはどうなった?

なんにも変わらんかった。
うん。少なくとも、傍から見たら。

周囲の人間からして見れば、喧嘩かなんかしとったん?って感じの仲良しコンビがいつの間にか仲直りしてたって風で。
外にバレるわけにはいかんから形式上は付き合うって事になってもそんな事誰にも言っとらんかったしね?

私らの関係も、はじめは流石にちょっとぎこちなくってお互い距離感を探り合ってる風だったけど、それも次第に収まって。
結局はあの日の夜のキス以前と変わらんような距離感で落ち着いてしまったんや。

私は元の関係に戻れたみたいで満足で(ちょっとだけモヤモヤは残ったけどまあええかなーって)。
善野さんはあんな形とはいえ告白を受け入れられちゃって満足で。

私らどっちもヘタレだったんかな?いや、ヘタレなのは善野さんだけやもん。
結局、グダグダとお互いの家に行ったり、一緒に遊びに行ったりする関係に戻って、それでしばらくそのまんま。
恋人っぽい話題とか一切なし。

……あえて二人共それだけは避けてたんやけどね。

はい穏乃ちゃんから肩透かしいただきました~。
ええね、ええね。自分いいリアクションするね。洋榎ちゃんが気に入るのもわかるわ~。
…あ、言わんかった?あの子、こっちに旅行行ってから穏乃ちゃんの事たびたび話題に出しとるんよ?「あいつはおもろいやっちゃ~」って。

自分、頑張って腕磨いとき?そしたら2年後、洋榎ちゃんがあの子のクラブのフロントに自分の事推薦してくれると思うで?
うん。プロの。

あははー。驚いた?めっちゃ気に入られとったんやねぇ~。みんなも覚えとき?人間、こうやってコネ作ってくんよ~?へっへっへー。

……こほん。

で、や。
ヘタレ女二人が恋人という名のグダグダな友人関係に戻ってからしばらく。
しばらく経って。

私はあんまり気付いとらんかった。
善野さんの心遣い。

あの人は、二人のその関係を維持する為に、物凄い苦痛を伴いながら努力してくれてたんやな。

対して私はご機嫌で。
善野さんがあまりに今まで通りに振舞ってくれてたせいで、恋人関係とかキスの事とか、夢か幻でも見てたのかって気分になってきとった。
今思えば、私は本当に残酷な事してたな~って、ちょっとだけ反省。

……ああ、つまりな?何がどうしたかって言うと……
いろんな事があって、随分と季節は過ぎて。気付いたら夏になってて。
その日は息が詰まるくらいに蒸し暑い日で。

そんでもってその日は朝から二人で遊び呆けて、夜には私が善野さんの家に泊まる事になっとったんや。

楽しい仕事タイムが始まるので、取り敢えずここまで
続きはまた夜にでも

乙です

乙ー

今日これ初めて読んだけど咲SSの中でもずばぬけてるね
読みやすいし面白いわー

やっぱりな?一度狂った歯車を、無理やり直して使ってみてもやっぱりそれはガタの来た歯車でしかないんやな。
私はその日、彼女の家でそれを思い知ったんや。自業自得なんやけどね?
でも、哀しかったなぁ…自分の身勝手さを思い知ったし、それ以上に善野さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
このまま消えてしまいたいってすら思ったけど、それすらも出来へんかった。

……え?結局何があったかって?
うん。それはな……


「ふぅ…今日も暑っついな~。あエアコン涼し~」

朝から遊んでた、って言ってもな?体力のない善野さんがそんな長時間暴れとったら夜にはばたんきゅ~やから、思いの外大人しいデートコースやったんよ
最初は私の車で牧場に行って、牛とか見て。小動物と触れ合って、お昼にカフェでランチして。そこでしばらくダベったり。
夕方涼しくなってから、近場のショッピングモールで買い物したり。そんくらい。
移動の車の中ではエアコンキンキンに効かせて、善野さんはよくうつらうつらしとった。

本人は申し訳ないからって起きてるように努めようとしとったけど、私は一人で運転するの平気やし、なにより彼女が体弱いの知っとったから
「寝ててえ~よ。むしろ夜辛いから、今のうちに寝とき~」とか言たりな。

それで安心したのか、静かに目を閉じた善野さん。静かな寝息すら色っぽくて、寝顔はやっぱり天使やった。
なんか不思議な気分だったなぁ…

綺麗で、綺麗すぎて。
この人に性欲みたいなもんがあるって、なんか信じられへんかった。
多分、ずっと心の中にそういうのがあり続けたから、レズビアンってカミングアウトされても私はこの人を友人として諦めきれへんかったんやと思う。
この時もミラー越しに彼女の顔を見て、頭に浮かんだのは「やっぱり綺麗やなぁ」程度の感想やったから。
……あ。あと、ちょっとだけお母さんみたいな優しい気持ちになれたよ~。

「あ、お構いなく~」

でな?二人、善野さんちに辿り着いたのはもう夜中になってからやった。晩御飯も向こうで済ませとったからな?
ショッピングモールで買い込んだ戦利品を適当なとこにおいて、最新式のエアコンの冷風を直に浴びながら私が一息ついとると
善野さんが冷蔵庫から缶ビールとジンジャー・エール、そしてコップを2つ持ってきてくれたんや。

それで取り敢えず定形の言葉返しながら、手招きされるままにいつものダイニングテーブルに向かってな。

「珍しいね?今日はビールなんや?」

な~んてな。
瓶入りの辛口なジンジャー・エール、乾いた喉にめっちゃ美味しかった~~。


それからちょっとの間、二人静かに飲んどった。
1本目を早々に飲み干した私に、善野さんは優しい目で二本目を取りに行ってくれてな~~?

「ありがと~~」って言って2本目受け取って、瓶の蓋開けようとしたら全然開かへんのね。
で、苦笑いしながら善野さんが私から瓶を優しく取り上げて、栓抜きであっさり開けてくれた~~。

「おおきに~」

そう言ってコップに液体を半分くらい注いだところでな~~。「ねえ」って声かけられてん。
そんで「ん~?」って返したら

「美味しいカクテルを教えてあげる」って、私が何か言う前にコップの残り半分をあっという間にビールで満たされてまったん~~。
シャンディ・ガフって言うらしいんやけどね?飲みやすくって美味しいよ?

でもあの子卑怯やよね~~?きっと、これするためにわざわざビールとジンジャー・エールなんて持ってきたんやで。
あはは、見た目のわりにせこいよな~~。

「お酒か~…」

正直、あんまりその時はお酒、って気分でもなかったんやけど……
でもどっちみち善野さんと夜通し語り明かすなら(すくなくとも私はそのつもりやったで~~)、後々お酒にシフトせんとな~って思っとったし。
出来ればお風呂借りてからにしたかったんやけど、ま、ええか!って思ってな。
ありがたくいただくことにしたんよ。

「くぴ…」

でな?これがな?

「なにこれむっちゃ美味い!?」

私的にすっごい大ヒット!

でな?

その日はむっちゃ暑かった。
めちゃくちゃ暑かったんや。
部屋のエアコンは効いとったけど、それでも善野さんの身体の事考えたらあんまり気温は下げられんし、
ある程度部屋温下げたら冷たい風も来ないようなって。

とにかく喉が乾いて。

シャンディ・ガフは美味しくて。

もう遠慮なんて今更な関係やったし、私は素直に善野さんに勧められるまま何杯もお酒を飲んだ。
対して、善野さんは珍しーことにビールを早々切り上げてミネラルウォーターなんか持ってきてチビチビやっとったけど。

私はゴキゲンやった。

今日の朝からの出来事を振り返って、談笑して。最近あった面白い話を交換したり。愚痴を言い合ったり。
最高に楽しい時間を最高に大好きな親友と共有できとると思っとったから。

「ひっく…」

で、家に着いてから2,3時間もした頃かな?
私はすっかり出来上がってしもーた。

「あ~…いかんな~~。まだお風呂入っとらんのに~~」

ピッチ早すぎたよ、って窘められた。

「うるさいよ~。そう言うんなら善野さんが途中で止めてくれたら良かったやん~~」

溜息吐かれた~~。

「む~~…」


「……そういえば、今日はあんまり強いお酒飲まないんやね?」

何気なく。そこでふと思って、そう口にしてしまったんや。
ああ、まぁねーみたいな感じで軽く受け流されたけど~~。

「なんやそれ~~」

酔っぱらいはアカンな~~。そこで意味深な返しをされて、尚突っ込んでまう。

「なんか隠し事してるんとちゃう~~?」

コップ持って、対面に座っとった善野さんの目の前までふらふら歩いてった。

「私寂しいわ~。愛しの善野さんが私に隠し事しとるなんて~~」

そうやってよよよ、って感じで泣き真似したりして。
もっかい溜息吐いた善野さんに「やっぱり飲ますんじゃなかった」なんて言われたりして。

「なんやとこら~~!」

そう言って善野さんの華奢な肩を荒っぽく揉んだら、痛がられて。
気が大きくなっとった私は、それでも止めなくて。

「こらこらやめなさい」なんて珍しく善野もちょっと怒った風に言ってきて。
私はそれでも面白がって止めなくて。
「ほら。ちょっと臭うよ。シャワーでも浴びて頭冷やしてきなさい」みたいな事言われて私は「なんやとー!」って尚更肩を揺さぶるようになって。
3度めの溜息を吐いた善野さんが、ちょっと声に詰まった後

「ああもういい加減にしないと」って、小さな声で。

「やめないとキスするよ」って、震える声で。

一気に酔い、醒めた。

思い出した。私は。善野が。同性愛者。レズビアン。私を好き。
混乱して。息が詰まる。頭が冷える。体が震えた。彼女の肩掴んでた手を、慌てて離した。

離して後悔した。突き放すような事やってまった。
善野さんは動かず、私は動けず。
静寂の中、エアコンの控えめな稼動音だけが聞こえる部屋で

ようやく発された「ほら」って、冷たい声に恐る恐る善野さんの顔を見たら
「やっぱり後悔した」って言いながら、泣きそうな天使の顔があった。

久しぶりすぎて調子が出ないので今日はここまで
うーん…

正直こっちより魔法少女を立て直してほしいがまあ支援

同時進行は無理だって悟ったから魔法少女は凍結します
あっちもちゃんとやりたいんで、いずれは復活させたい。まずはこっちちゃんと終わらしてからね

アニメ2期でまた人が戻ってきたらいいねぇ

乙です


アニメニキでアラサースレぐらいの盛り上がりが欲しいねぇ
最後の方はコンマが呪われてたけど

これともう一つ終わったらもうVIPで短編だけやっててくれ
地の文もいらね

復活してたか。
楽しみにしていたのでうれしい。

保守

2ヶ月か…














いずれ帰ってくるから(震え声)


ほな、また……。

無理せず、また暇ができたらでいいんやで
マットルデー

いつまでも待つ
もし落ちても書けた時に立て直してくれればいい

まだまだ待ってるぞ

待ってるでー

無理せず

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