艦長「キャプテンと呼んで下さい」 (58)

【20014/3/1/00:31】
【ストーンフィスト宙運社】
【辺境宙域】


【貨物船ガルマル号 艦橋】


プシュー

社員A「お」クル

社員B「お疲れ。交替だ」

社員A「うぃーす……あとどれくらいよ」

社員B「何も無ければ6時間かな。今積んでるクローン素体降ろして、次の採掘ポッド運んで終わりだ」

社員A「採掘ポッドぉ~? 搬入面倒臭そうだな……」クルクル

社員A「ロルフ号がドック入りしてなきゃあ2時間で済んだのになぁ」クルクルクル

社員B「いつも通りの二隻態勢なら俺達は今頃もうあの糞機械に糞タイムカードをファックさせておうちに帰れてる」スッ

社員B「Dの野郎に係留任せたハゲの第二部長が悪い、あいつの運転が前衛芸術だってことを知らなかったとは言わせねェー」ドカッ

社員B「知ってっか? 有給の理由」つガム

社員A「知らね」クルクルクルクルクルクルクルクルクルクルクル

社員A「あとイラネ」ピタッ

社員B「あっそ」パク




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1394700308



社員A「じゃあ俺寝るわ。着いたら起こして」スクッ

社員B「ここ最近じゃ一番の朗報だってのにな」モグモグ

社員A「マジで?」クルリ

社員B「糖尿だとさ」モグモグ

社員A「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

社員B「しかも……」モグモグモグモグ

社員B「生れつきだ」プー

社員A「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwっwwwwwwwwww」

社員B「どこ見て笑ってる?」くっちゃくっちゃ

社員A「フーセンガムのタイミングに決まってんだろwwwwwwwwwwww」

社員B「」プー

社員A「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

社員B「低いな……」クチャクチャ

社員B「笑いの沸点」プぅー

社員A「狙われるとつまんねーわ」

社員B「うん」




ビィーッ ビィーッ

社員A「あ?」

社員ビィーッ「――俺の名を呼ぶのは誰だ――」

社員A「バカか」

社員B「ジャンケンポン!!!!!!!!」グー

社員A「おわびっくりした」パー

社員B「チッ。まあいい見てくるわ。場所どこ、どうせ[ピザ]リか何かにぶつかったんだろ。こちとら前衛芸術博覧会で鍛えられてンだよ」スクッ

社員A「ちょっと待ってろ……」カタカタ ッターン

社員A「出た」ピッ

社員A「あり?」

社員B「何だよ。……あれ、接触警報じゃないのか今の」

社員A「違うな……これは」

ビィーッ ビィーッ

社員A「これは――ケツに付かれてんのか?」

社員B「ケツ? 小さいが、船か、こりゃ」

プシュー

薄い部長「おい、今の警報なんだ? [ピザ]リじゃ繰り返し鳴んないだろ……って」

ハゲではないが薄い部長「ちょおまそれもしかして」



社員B「非ハゲ部長?」

非ハゲ部長「A、スキャン掛けろ」

社員A「勝手に覗いていいんスか?」

社員A「そんなんまるで海賊みたいな――」

非ゲ「早くやれッッ!!」ぐわっ

社員A「いッ!? は、はい只今」カタカタ

社員A「出ました。国籍は……東南星系第二惑星?」

社員B「あー? ひいふう……六つか七つかくらい隣の星系だっけか?」

非ゲ「うわあキナ臭い……」

社員B「どーしたんすか?」

非ゲ「……とっくの昔に"廃星"になってる惑星だよ」

社員B「へ?」

非ゲ「お前達……」

非ゲ「遺書書いといた方がいいかも分からん」

社員AB「!?」




【???】

ビコーン

ピザ「キャプテン! スキャン喰らったお」

ノッポ「やっと向こうのレーダーに映ったのかよ、こっちはとっくにお宅を丸裸にしてるってのに。装備古過ぎだろJK」

艦長「不景気じゃあ仕方がありませんよ。助かってるんだから良しとしましょう」

艦長「積み荷と武装は」

ノッポ「バッチリです。ブツは前部貨物スペースに。武装は、背中と腹にいくつか[ピザ]リ駆除用のレーザー機銃があるくらいですね。真横にくっつければ当たりません。機関室も問題無いそうで」

艦長「操舵手」

マッチョ「造作もねえ」カララララ

『今くっつけるっつったな!? やんの!?』ザッ

艦長「はい。ですが貴方の出る幕はありません、部屋でハッパ吸ってシコってて下さい」

『こないだやってからもう三日だ! 三日もだぞ!! 俺達ゃ自転車操業なんだやり続けなきゃならない、やり続けるなら確実にやんなきゃならない失敗は死に繋がるからな』ザッ

『俺の精神もだ!!!! 走り続けなきゃ!!!! 倒れッちまうんだよ俺の精神の!!!! 安定も!!!! 早いとこヤらせろ!!!!!!』ガンガンガンガンガンガン


ピザ「ハゲ、今日もキまっちゃってるお」ヒソヒソ

ノッポ「この艦に乗って良かったことと後悔してることの一つがあいつなんだ。ハッパは絶対やらないって心に決めれた」ヒソヒソ

ピザ「後悔は?」ヒソヒソ

ノッポ「聞くのか?」ヒソヒソ


『なぁ……なぁ頼むよォぉ……俺に戦場をくれ……部屋に監禁なんか嫌だぁ……この艦に貢献したいんだよぉキャップ……』シクシク

艦長「今回の相手は貨物船です。積み荷は筋肉ムキムキマッチョマンなうちの操舵手みたいな黒人男性クローン」

『ハッパ吸ってシコってるわ』ブツン

艦長「いっそホモだったら良かったんですがね」フッ

ピザ「!?」

艦長「勘違いしないで下さい。今回に限らず荷に手を出されては困るというだけです」

マッチョ「本当にな」

ノッポ「いや割とマジでゾッとしませんよ俺らホワイトカラー組からしたら」

『こちら砲雷室、主砲装填完了だ。ブリッジどうぞ』ザッ

艦長「目標、エンジンとスラスター。撃て」

『了解』ザッ


社員A「大砲に対空砲塔にミサイル管……しかも何だこれ、マルチプルランチャーって何? マリーダさんに会えんの?」ガクブル

社員B「多目的ランチャーだ! 大抵こいつにはビームとかレーザーとか電波に対するチャフが積まれてる! こんな小せぇ艦に詰め込み過ぎだろッ……」

社員B「つまり完全な戦闘用だ!! 部長!」

非ゲ「54歳。息子と娘も独り立ちできた。妻には申し訳ないが、何、あの器量良しなら再婚だって十分に――」

社員B「ウスラァァァァーーーッッッッ!!!!」


ズ ガ ン ! ! !


社員AB「うわぁあああッ!!」

ビィーッ ビィーッ ビィーッ ビィーッ

《クリティカル!! メインエンジン、第一第二共に損傷。第一エンジン停止、第二エンジン出力大幅に低下!》ズガガガガン トュルン ズガガガガン

《別の区画に貫通した! 後底部サブスラスター損傷。全壊!》ズガガガガン トュルン ズガガガガン

《別の区画に貫通した! 後部貨物スペース、ハッチ損傷。後部貨物スペース大破!》ズガガガガン トュルン

《航行不能のマイナス症状! 慣性航行に強制移行!》ゴガッ

社員B「このふざけた警告メッセージは何だよ!!」

社員A「Cがやった! 知らないが、ガルマル号が機能停止してねぇことだけは確かだ!! うるちが何も言ってねぇ!!!」

社員B「何で米の話になる!?」

社員A「法則で言やぁ多分酒だ!!」

社員B「訳分かんねーよ落ち着け!!」バキィッ

社員A「テラカドッ」バタッ

非ゲ「暴力は止せ! 落ち着くんだお前達!!!」

社員B「発端はあんたなんだよ!!」

ピコーン

社員B「通信? こんな時に何だ!?」

非ゲ「いや、状況から察するに――」ガチャ

社員B「ウ……部長! 大丈夫なんですか」

非ゲ「静かにしていろ。これでも私は君達の上司だ」

非ゲ「間違いなく狙いは積み荷。優先すべきは人命、そんなもので助かるなら幾らでも擲ってやる」

非ゲ「任せておけ」グッ

社員B「部長……!」


『あー。あー』ザッ

『前方の貨物船、聞こえますか。こちら、パーサーナックス』

『海賊です』

【海賊船パーサーナックス号 艦橋】


非ゲ『……女性?』ザッ

艦長「単刀直入に言います。積み荷の試作クローンを下さい」

艦長「それさえ頂ければ何も要りません」

非ゲ『我々の命は保証してくれるのか』

艦長「これからそっちの船へパーサーナックスを付けます。機銃の回塔やエンジンの再起動等は抵抗と見做し、主砲・大口径実体弾投射砲により艦橋部へ焼夷弾をぶち込みます」

艦長「熱いですよ。……何か質問は」

非ゲ『……いいえ』

艦長「では後ほど」ブツン

艦長「総員へ。例の積み荷を回収します。白兵斑は出撃翌用意」

『キャプテン、本当に焼夷弾使うのか?』ザッ

艦長「冗談ですよ冗談」フフ

艦長「焼夷弾では弾代が高くつく」

『ああ……了解。変更無し、通常弾再装填で待機してる』ザッ

艦長「はい」

ノッポ「まず間違いなく警察がすっ飛んで来ます。怪しい動きがあり次第お知らせしますので、お気を付けて」

ピザ「キャプテン、大漁を!」ビシッ

艦長「あいよ」

艦長「……いや、笑えない送り出しですね」

ピザ「キャプテンはフラグブレイカーですお」

【20014/3/1/01:20】
【海賊船パーサーナックス号】
【帰路】


【貨物スペース】


『発射』ザッ


ドゴォーン……


ノッポ『勿体ねえなあ……。貨物船って言ってましたけど、ありゃあ採掘用のタンカーでしたよ。容量目当てで改装して使ってたみたいで』ザッ

艦長「ええ。古い船でしたが、壊れる度に何度も手を入れて使い続けてたように見えました。会社の気骨を感じる良い船でしたね」

ピザ「(でも呆気なく沈めたんだお)」カタカタ

艦長「何です?」じろ

ピザ「えっ?」ビクッ

艦長「間もなく宇宙警察が追って来ます。撃沈ではなく確保を狙ってくる彼らの基本戦術はこちらの手足をもぐ電子戦がセオリー」

艦長「勿論ケツを捲って逃げますが、逃げてる間は貴方が頼りなんですよ。無駄口は叩かないで早くやる」

ピザ「ま、まだ何も言ってねーお!」カタカタ

艦長「案外簡単に男は背中で語れるもんなんですよ」

下っ端A『キャプテン、いいですか』ザッ

艦長「何でしょう」

下っ端A『拘束して乗員室に閉じ込めときましたが、あの二人どうしやす? 相当悔しいみてぇで、さっきからドアに体当たりしまくってますが』

下っ端B『黙らせましょうか』ザッ

艦長「殺してですか?」

下っ端B『確実でしょう』

艦長「それでしたら、今ノッポに掛け合って貰ってます」

下っ端B『?』

ノッポ『メッセージは送りました。待ちですね』ザッ

艦長「だそうです」

下っ端A『いや分かりませんって』

ピザ「!」ピピピ

ピザ「キャプテン、コンテナのロック解除出来たお!」

艦長「グッド。ピザ、お願いします」チャキ

ピザ「なんじゃらほい」グッ

ガコン

ピザ「お、おおッ……」

艦長「これは……」スッ


少女『――――』


ピザ「全裸の銀髪美少女キターーーー!!!!」ktkr

下っ端A『豚! 歳は!!』

下っ端B『豚スタイルは!!』

ピザ「見たとこ10歳前後、至高の絶壁つるぺたロリだお!!」

下っ端B『SHIT!』

下っ端A『HOLY SHIT!! すぐ行く』

艦長「仕事サボんな」

下っ端A『はい』ブツン

ピザ「こんなデカいコンテナにおにゃのこ一人とかすげー厳重だお……とりあえず写真撮っとくお」スチャ

艦長「構いませんよ」

ピザ「やばいおwwwカプセルが試験管型だからお尻とかも撮り放題wwwwwテラエロスwwwwwwwww」パシャパシャパシャパシャ

艦長「(速攻手ぇ出そうとするんじゃなくズリネタにしようとする辺りが流石というかなんというか。あのハゲなら喰い散らかしてたところだ)」

艦長「(証拠写真を撮る手間が省けた)」

ノッポ『キャプテン、急ぎブリッジまで来て下さい』ザッ

艦長「警察ですか? それとも賞金稼ぎ?」

ノッポ『そのどちらでもありません』

艦長「もう嗅ぎ付けましたか……いや」

ピザ「おっwwwおっwwww」パシャシャシャシャ

艦長「ちょっとどいて下さい」ズイッ

ピザ「キャプテン?」

艦長「…………あった」ゴソゴソ

ピザ「それは……発信機かお」

艦長「してやられましたね」ポイ

『主砲副砲に撹乱幕はいつでも使用可能だ。しかしキャップ、あいつが裏切ったってことなのか?』ザッ

艦長「あのメガネデブ、今回は脅しか何かで抱き込まれてたんでしょう。連中のやりそうなことです」グシャ グリグリ

艦長「ったく……」グリグリグリグリグリグリ

ピザ「(めっちゃ踏んでるお。キャプテンは共和国関係のことになるといつも苛立つお。触らぬ神に祟りなしだお)」

艦長「ピザ、ご苦労様でした。もうひと頑張りですよ」

ピザ「了解ですお」

艦長「カメラは後で提出して頂きます」

ピザ「」




【艦橋】

ピコーン

艦長「繋いで下さい」

ノッポ「いや、こいつはさっきの返答ですね。そっちの端末に送りました」ピッ

艦長「どれ……おやおや」ピッ

艦長「あらまあ、どこも不景気なんですね」ピピッ

艦長「ノッポ、奴らの方は?」

ノッポ「少々お待ちを。おいまだか」

ピザ「あと5秒……よし! うわやべぇ。データそっちに回すお」カタカタ

ノッポ「来た。うわやべぇ。キャプテン、ピザにハックさせて今居る隣の星系の端っこの惑星から観測衛星のデータを失敬したんですがこいつは……」カタカタ

ヴン

艦長「……戦艦三隻に巡洋艦二隻に駆逐艦八隻? たかがフリゲート一隻相手にどういう風の吹き回しなんですか」

ノッポ「それなんですが、こいつら名目上はこないだやってた例の軍事演習の帰りらしいんです」ピッ

『ああ、分かった。いい加減俺達を消しておきたい、だが共和国の腰抜け共は軍事アレルギーと雁字搦めになった憲法でおおっぴらに討伐隊は結成できない』ザッ

『で、最近お隣の王国がちょっかい出してた領宙問題の牽制で出払ってた連中にもう一つおつかいを頼んだ訳だ』

『俺らのタマをってことかァ、ホチ(砲雷長)ぃ? 上等だ俺に任せろ。全員ぶち殺して喰ってやる』ザッ

『連中ぶち殺してやるから早く出せよぉぉぉぉぉぉ!!!! 接舷しろ!!!! 千人までならイケる!!!!』

艦長「ハゲ部屋のチャンネル繋いだ馬鹿は誰です? 正直に言えばメシ抜きで勘弁してあげましょう」

『キャップ話を聞』ブツン

ノッポ「殆どホチの予想通りです」

ホチ『やったぜ』ザッ

艦長「ノッポ。そこまで事情通な理由が「貴方がスパイだから」でないことを祈りたいものです」

ノッポ「キャプテンがさっきコンテナ開けに行ってた時、メガネデブから電子メールが届きまして。"海賊船パーサーナックス号"宛でしたので、見たら……っと、見て貰った方が早いっすね」カタカタ




ヴンッ

艦長「……」ピ ピ

艦長「……相分かりました」削除

マッチョ「なんて言ってた?」

艦長「ノッポが言っててホチが当てた話が、大分申し訳なさそうな謙譲語に修飾語を付けまくってズラズラと。我々が嫌いになったという訳ではなさそうで安心しました。落し前は付けて貰いますが」

ピザ「キャ、キャプテン……脅されたんだし軽めにしてやって欲しいお」カタカタ

艦長「分かっていますよ。貴方の友人に酷いことする筈ないじゃないですか」

艦長「私はそんなに鬼に見えますか?」

ピザ「(はい)」カタカタ
ノッポ「(はい)」カタカタ
マッチョ「(大分)」
ホチ『(筋金入りだ)』

艦長「息の合った沈黙。頼もしいチームワークですね……ともあれまずは目先の蝿を払いましょう」

艦長「状況を」

ピザ「艦隊構成の詳細な情報が分かったお。戦艦はグレートピース級が一隻、ロングゲート級が二隻」カタカタ

ピザ「巡洋艦二つはトールバリアント級で、駆逐艦はブリザード級とアイルブリーズ級がごちゃ混ぜになってますお」カタカタ

ピザ「観測衛星が質量スキャンも掛けてくれてて、それによれば補給も十分みたいですお」カタン



ノッポ「旗艦はグレートピースで間違いないでしょうね。航路はここの宙域を寄り道して大回りで共和国に帰る……という名の一直線です」

ノッポ「ただ、グレートピースにはアレがあります……」

ホチ『異名の由来、か』ザッ

マッチョ「まだ足並みを揃えたがってる段階だろ。こっちの土俵で戦おうとはしねぇ筈だ」

マッチョ「それにエラく電力を使うって聞いたぜ」

ホチ『専用の燃料もだ。それこそ帝国との時みたいな大規模会戦でなきゃ割に合わん。まあ俺達がそれだけ奴らにとって不倶戴天の存在だというなら分からんが……』ザッ

艦長「この仕打ちがその答えな気もしますがね」

マッチョ「どうするキャプテン」

艦長「面舵一杯」

マッチョ「直帰かよ」

艦長「正面突破でもいいですよ?」

ピザ「早いとこ帰るお! こないだの仕事ん時からシールド出力が安定してねーし、万全でも共和国艦隊と真正面で撃ち合ったら光が逆流するお!」

艦長「電子担当はこう言ってますが」

マッチョ「冗談だよ」カラララ

艦長「では、全速前進でお願いします」スクッ

ノッポ「キャプテン、花でも摘みに?」

艦長「ええ、摘みに」スタスタ

プシュー

ノッポ「……」

ピザ「何を?」

マッチョ「ピザ、カメラまだ持ってるか?」

ピザ「え? ……ああ! いやこれがまた最高だったんだお……」

ホチ『そいつは多分遺影になる』ザッ

ピザ「えっ? ……え゛っ」

ホチ『可哀相にな』ザッ




【20014/3/1/01:34】
【海賊船パーサーナックス号】
【海賊連合との干渉宙域へ向け航行中】


【居住区 隔離独房扱いの乗員室】


カチャカチャ カチャカチャ
カチン

「!」

ピーッ プシュー

ハゲ「YEEEEEEEEEEEEEES!!!!!! 開ァ・いィ・たァ・ぜッ!!」

ハゲ「いつの時代も最後に頼りになんのは己の腕だ!!」

ハゲ「凄いや! 電子ロックだったのに、一体どうやって!?(裏声)」

ハゲ「カードリーダー外して原チャリの直結みてーにコード弄ったのさ。実を言えばこの宇宙に存在する懲罰房がアナログな鎖と鍵になってるのは俺様が脱出しまくってそのザルさが証明されたからなのさジョン」キリッ

ハゲ「さすが白兵長! ただのヤク中にできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ! ハゲだけど(裏声)」

ハゲ「ハゲじゃねぇぇえええぇええええええええええええええええええええよまだ!!!!!! 頭頂部に爆撃喰らっただけだクソが!!!!」ガスッ

ハゲ→頭頂部ハゲ「ハゲじゃねぇ!!!! ハゲじゃねぇ!!!! ハゲじゃねぇ!!!! ハゲじゃねぇハゲじゃねぇハゲじゃねぇ!!!!!!!!!!!! 俺はまだハゲてねぇぇええええええええ!!!!!!」ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ

頂ハゲ「AAAAAAAAAAggggggggggggggaaaaaaahhhhhhhhhhhhhh!!!!!!」ガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガス

頂ハゲ「……ぅぅぅぅぅぅぅぅう」charge

頂ハゲ「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガス

ピー…ィ…
プシューッ

ハゲ「この手に限る」



【居住区 客用乗員室】

ハゲ「入るぞー(嗄れ声)」

社員A「ひィッ!!」ビクゥッ
社員B「ド、ドアがッ……凄ぇ音してたぞ!?」

ハゲ「問題無ぇ、ロック周りは知らねえがこいつァ元々軍艦だ。内装、特にドアなんざロケランぶち込まれたって一発二発じゃ歪まねえし穴空かねえしビクともしねえよ」

社員A「(そんなドアを蹴りでイカれさせたのかよ)」ガクブル

ハゲ「よお、お前ら捕虜だろ? さっきの船の。一緒にトイレ行かね?」

社員B「はぁっ?」

社員A「あ、あんたも捕まってるのか?」オロオロ

ハゲ「んん~? ……おう」

ハゲ「おう……おうそうだ」

ハゲ「そうなんだよ!! 俺も捕まってんだ!! でも今出れた。一緒に逃げよう!!!!」

社員A「ああ、ああそうだったのか! あんたを一瞬でもイカれてると思った俺を許してくれ」

社員B「(いや、いや絶対マトモじゃないだろコイツ……目ぇギラギラし過ぎだし)」

ハゲ「いいんだよ兄弟。いいんだ」ポンポン




ハゲ「そいつは手錠か? 外してやる。後ろ向けよ」

ハゲ「ほゥあたァ!!!!!!」ブンッ

バギャアッッ

社員B「マ、マジで壊しやがった……」

社員A「凄ぇ……COOL! 超COOLだよアンタ!!」

社員B「(Aの奴……極限の緊張状態で頭が回んなくなってやがんのか)」

ハゲ「よし行こうぜ!!!! ついて来い!!!!」ダッ

社員A「おうよ旦那!!」ダッ

社員B「ええい、もうどうにでもなれ!」ダッ




下っ端A「白兵長ー、そろそろ出てもいいそうっスよ。食堂行きますか……ってまた破られてんじゃねーか!! あんのハゲ!!」

下っ端B「捕虜部屋もだ! おいやべーぞ、キャプテンにバレたらぶっ殺される!!」

下っ端A「大方ハゲが面白がって連れ回してるんだろ……ブラスター持ってるか? あの人を素手で止めんのは霊長類じゃ不可能だ、アンドロイドとサイボーグでも厳しい」

下っ端B「スタンモードにしはするが二三発じゃ倒れねーからなあのストロングハゲ……とにかく追うぞ!!」

下っ端A「報告は!?」

下っ端B「殺されてーのか!?」

下っ端A「いや、報告すりゃあ最悪四分の三殺しで済む!」ピピピ

下っ端B「違ェねえ……あああチキショー」




【貨物スペース クローン入りコンテナ内】


少女『――――――』

少女『――――』

少女『――』

コポ……

少女『――……』

ピピ
ウィー……ン

ざばっ

少女「……」ポタポタ

少女「……」キョロキョロ

「お目覚めですか? と言っても、多くの可住惑星では真夜中に当たる時間ですが」

少女「……」くる

艦長「おそようございます」

少女「…………」

艦長「喋れませんか」

艦長「基本知識の刷り込みもまだなんでしょう? 言葉どころか、コイツが何かも分からないんでしょうね」チャキッ

少女「……」じっ

艦長「ブラスターです。ブ、ラ、ス、タ、ァ。カッコイイでしょう、さっきコンテナ開けた時にも構えてたんですよ? 船荷というのにはたまにデカいゴキブリが紛れてますから、その備えで」

少女「……?」こく?

艦長「ふ……。その方がいい。人生なんて、得られる喜びより引っ被る泥と塗り付けられる糞の方が遥かに多いんです」

艦長「割に合わな過ぎ。で、悲嘆に暮れてたらもう32ですよ私。笑えてきます……ああもう何言ってんでしょうね本当」

少女「……」

艦長「さようなら――」チキ…


ノッポ『キャプテン! もう済みましたか?』ザッ

艦長「……もう0.01グラムでも引き金に力を入れれば終わりますが。ピザがこれを使いたいというなら5分だけ待ちますよ」

ピザ『いくらなんでももうちょいかかるお。それに』ザッ

艦長「YESロリータNOタッチ?」

ピザ『お兄ちゃんって呼んでくれそうかお?』

艦長「そんなんだから童貞なんですよ」

ピザ『右手が恋人ですwwwwwww』

ノッポ『話の腰を折るんじゃねえ。ともかくそっちにハゲが――』ザッ


プシュー


ノッポ『――今の開閉音は?』

艦長「下っ端AB聞こえてますか? 後でお話があります」

ノッポ『切れてますね』

艦長「大方電波暗室の機関室でしょう。親っさんにシメとくよう言っといて下さい」




ハゲ「YOOOOOooooooキャッピー会いたかったぜぇ、相変わらずアディオス二十代&三十の大台突破して気付いたら早二年&家計火の車のトリプル・パンチでやつれ気味だけど三十路過ぎ特有の脂が乗ってきて女盛ってんなァデラべっぴんだがや」

ハゲ「アラサー結婚しよまいか羊水腐る前に」

艦長「……」バヒューン

ハゲ「うぐああぁぁあああああッ!!!!」バタッ

社員A「旦那ァァァーーッッッッ!!!!」ガシッ

社員B「ああついにハイテンションエクスクラメーションマークデフォ四つ病がAにまで……っててめぇは!!」

少女「……!!!」

艦長「ハゲ、状況を説明して下さい。というか旦那って?」ジャキ

社員B「チィッ、よりによってさっきのクソ女かよッ……」

少女「……っ……」びくびく




社員A「てめぇ、てめぇ……部長に続いて旦那までも!! 許さねぇ!!」

社員B「よせ!」ガッ

社員A「止めんな、このアマ絶対ェ殺してやる!!!!」ジタバタ

艦長「Aさんと言いましたか? 冷静な相方に感謝しそして落ち着き、動かないでいることです」

艦長「部長さんは残念でしたが、ブラスターを持ち徒党を組んだ犯罪者相手に消火器一つで立ち向かうというのは得策ではありませんでしたね」

艦長「先程、そして今、貴方達二人の体に風穴が空かなかったのは私が部長さんの蛮勇に敬意を払っているからです……が、綺麗事で引かれた閾値というのは気持ちが良いだけに実にあっさりしたものです。腹立たしい程に」

社員B「何が言いたい……」

艦長「あちらで部長さんに叱られたくなければ両手を背へ回して跪きなさい」チャキ

社員A「くッ……、くッ!」スッ

社員B「A……堪えろよ」スッ

艦長「ありがとうございます……」つ拘束バンド

社員A「どの口が……!」ギッ

社員B「…………」ギッ

艦長「それともう一つ。貴方がたの会社、ストーンフィスト宙運社と連絡が取れました」

社員B「!」

艦長「蛮勇と言いましたが……部長さんは分かってたんですね、日頃の待遇が良く窺える返答でした。聞きますか?」

社員A「……」

社員B「……部長……」

艦長「理解して下さったのなら、暫く待っていて下さい」

ハゲ「…………」グッタリ

艦長「いつまで寝てんです」バヒューン

ハゲ「ぐおおおああああ!!」ビクンビクン

少女「……っ……っ……」フルフル




艦長「ビームはスタンに変えてありますが、象は倒せても貴方には効かないでしょううに」

ハゲ「まあね」ムクッ

社員A「うぇっ!?」

社員B「あ、アンドロイド!?」

ハゲ「違うしサイボーグでもねぇ、正真正銘の生身だぜ。じゃなきゃハッパなんか効かねぇだろ普通に考えてよォー!!!!」

ハゲ「俺が一人居りゃあキンカクテンプルのニンジャから忍たままでネギトロじみたネギトロに実際変えてやれるぜ!!!! 突然変異の亀でもボム+カッターでも超忍でもリルムの親父でもなんでも来やがれってんだ!!!!!!」

ハゲ「…………止めろよインターセプターてめェもよォ主人だろ……あんまりじゃねーかよお前よぉぉ……名乗り出れなくたって影から見守ることは出来たろうがよォぉぉ……嫌だぁ……シャドウぅぅ……」グスグス

社員A「黒ハリネズミの話か……?」

艦長「やめて戻って来なさいヤク中ハゲ」バヒューン

少女「……て……」ブルブル

ハゲ「それで? そこの嬢ちゃんは喰っていいのかよ」ビシィッ

艦長「それは痩せ我慢ですね」

ハゲ「我らがゴキブリの巣まではまだなんだろ?」ジンジン

艦長「帰ってから風呂にでも行って下さい。これは今ここで壊します」チャキ

少女「……めて……やめて……」フルフル

艦長「……?」

少女「いや……いやいやいや!!」

艦長「!!!」




少女「いや、いや! ブラスター、いや!!」ポロポロ

艦長「何が……」

ノッポ『キャプテン、そいつは例のクローンの声ですか?』ザッ

ピザ『やめるお白兵長!! 仕事以外で襲うのはいくらあんたでも許さねぇーお!!』ザッ

ハゲ「俺じゃねえよ童貞。キャップのブラスターに反応して勝手に喚き出しやがったいきなりだ。ドラッグか何かキメてた奴がフラッシュバックで暴れんのと同じようなのに見える」

ホチ『刷り込みもまだのクローンがフラッシュバックだと……?』ザッ

マッチョ『製造工程でヤクでも混ざったんじゃねえのか? クローンには詳しくない』ザッ

ホチ『ハゲ。キャプテンは?』ザッ

ハゲ「ハゲじゃねえっつってんだろコラ」チラ

艦長「………………」

マッチョ『キャプテン!』ザッ

ハゲ「キャップ。おいキャップ。呼んでるぜ」

艦長「……はい、大丈夫です、が……」

少女「いや!!」タッ

社員A「うわっ!」

社員B「に、逃げた?」

艦長「ピザ」

ピザ『貨物スペースのドアをロックしましたお』ザッ ピピピ

少女「……っ?」




少女「っ……」バン バン

少女「ドア? ……いや?」バンバン

ハゲ「やるなら早くやれよ」

艦長「分かってます……分かってますよ」チャキ


少女「……tpjkngjarfzjaptwmjgtajjtajagwgptjnvbjp」ブツブツブツブツ


ピピピ

ハゲ「……?」

艦長「人のように振る舞うなッ……!」バヒューン

ピピピピピ プシュー

少女「!」タッ

ピザ『い゛っ!? ハッキングってどこから……』

壁「」バチュンッ

艦長「ッ……ピザぁッ、何をッ!?」

ピザ『ち、違うお! 今一瞬そこのドアだけ制御を奪われたんだお!』

ノッポ『何やってんだお前らしくもない』ザッ

ハゲ「違う。嬢ちゃんがやった」




マッチョ『サイボーグだったのか?』ザッ

ハゲ「知らねぇ。キャップ追わねぇのか」

艦長「一体……一体何が……」ダッ

社員A「あ、あのコンテナ……ウチで運んでた奴だよな」

社員B「ああ……中身が少女型一体だけとは知らなかったが……」

ハゲ「(嫌な予感は的中……こいつらに調べさせるって方は当てが外れたが)」

ハゲ「ブリッジ、脱出した捕虜を拘束。誰か寄越しといてくれや」

マッチョ『お前がやったんだろ!(笑)』ザッ

ハゲ「白兵長は悪くない! 僕が唆したのがいけなかったんだ!!(裏声)」

ハゲ「いいんだよジョン。とにかく俺も追う、後頼む」ダッ

ノッポ『手早く頼むぞ』ザッ

ハゲ「それはキャピターノ次第やな」ダッ




【機関室】


ゴンゴンゴンゴン……

下っ端A「ひぃ、疲れた……」バタ

下っ端B「親っさーん、終わりやした!」ゼェゼェ

親っさん「……良し。ま、働いたって言えば、キャプテンにも申し訳が立つだろうよ」ガチャン

親っさん「大体はあの火の玉小僧のヤンチャが原因なのだろうしな」ガチャガチャ

下っ端B「すんませんいつもいつも」

親っさん「頼んでいるのは雑用だ……こちらこそ、いつも助かっているよ」

ピピピピピピピピピ

親っさん「……?」

下っ端A「ゲッ、直接来たのか!?」

プシュー ガコン

下っ端A「すんませんでしたキャプ……ってあれ?」

少女「……はぁ、はぁ」

下っ端A「この子……さっきの通信にあったロリっ子じゃねーのか!?」

下っ端B「本当だ。全く生えてないぜ」ジロジロ

下っ端A「何か息荒いのはこれそういうことでいい訳?」

親っさん「ここでおっ始める気か? お前達……」

下っ端B「いや冗談っスよ。花は愛でる。YESロリータNOタッチ! パーサーナックスじゃあ俺とピザくらいですけど、海賊連合でなら密かに広く伝わってる愛の信仰、ロリータ・コンプレックスの基本にして絶対なる鋼鉄の教義っスよ」

下っ端A「キモいわ。穴がありゃいいんだよ、ロリコン共だってぶち込みてぇから興奮してんだろ? 花を手折って何が悪ぃ」

下っ端B「んなもんサルだ」

下っ端A「効力射より無駄弾の方が高尚だってのか? お前らこそ、自分達が性欲の猿じゃねぇって自信を持って言い切れるのかよ?」

下っ端B「努力はしている!!」

下っ端AB「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

親っさん「仲の良いことだがな」

親っさん「置き去りは良くない」

少女「…………」フルフル




親っさん「……嬢。何か、用かな?」

少女「……」びくびく

親っさん「ここは機関室といってな、この艦の心臓と言っても過言ではない大事な部屋なんだ。エンジンが火照っちゃならんから、ここだけこんなに冷たい。無理をさせるとすぐ熱くなるがね……」

親っさん「どうやって入ったかは、まあ、いい。……小汚くて悪いが、これを着ていなさい。女子が腹を冷やしちゃならん」バサッ

少女「っ!」バフ
少女「……??」

親っさん「……ツナギの着かたが分からないのか? どれ。ここに袖を通してだな――」

ジリリリリン

親っさん「すまない、出てくれ」

下っ端A「ROCK SCISSORS PAPER!!」チョキ
下っ端B「甘いわ!」パー

下っ端B「あるぇーッ、なんで!?」

下っ端A「観念するんだな」

下っ端B「キャプテンじゃありませんようにキャプテンじゃありませんようにキャプテンじゃありませんようにキャプテンじゃありませんように」ガチャッ

艦長『親っさん、今いいですか?』ザッ

下っ端B「キャプテン、何か用か(声真似)」

艦長『やはりここに居ましたか下っ端er's。あれが来ていますね? 毎度のことですし、開ければ不問にしますよ。ソースがこれなんですが』

ハゲ『ここだ。ここしかねぇ。俺の鼻が辛気臭え培養液の匂いと乳臭え処女膜の匂いを嗅ぎ当ててややがる』スンスン

親っさん「構わないが」スッ

少女「いや!!」ガシッ

親っさん「どうした?」

少女「ブラスター、いや! いや!! ドア!!」

艦長『――それはクローンです。例の』

親っさん「……」


プシュー ガコン

少女「……なんで……」

艦長「さあ、追いかけっこは終わりですよ」

親っさん「キャプテン」

艦長「何です」

親っさん「直接会ったことはない、断言は出来ないのだが」

親っさん「この子は本当にそうなのか? 似てはいる」

艦長「情報屋によれば、"掛け合わせた"とのことです」

艦長「つくづく忌ま忌ましい。通商破壊にも今後一層力が入るというもの」ギリッ…

親っさん「成る程……しかし待って欲しい」

艦長「しがみつかれて愛着が沸きましたか?」

親っさん「子供を可愛がらない老人などいないさ……」

親っさん「おい。内線、ブリッジに繋げてくれ」

下っ端A「うぃっス」カチ

ノッポ『こちらブリッジ。なんすか親っさん』ザッ

親っさん「クローンとキャプテンが来た」

ノッポ『ロリっ子そんなとこまで行ってたんすか?』

ピザ『あー、その……さっき機関室のドアに貨物スペースのと似た感じのハッキング痕があったお』ザッ

艦長「言わなかったのは何故です」

ピザ『は、早過ぎて……ドア古いし誤作動かと』

親っさん「この子、愛玩用ではないな」

ホチ『試作、と言ってたからな。それを元にコピーするなりして商品を造るつもりだったんだろう』ザッ

マッチョ『要は試供品ってことか?』

ハゲ「いや問題はそこじゃねえ」

艦長「……ええ」

ハゲ「気付いたか?」

艦長「今し方」




ハゲ「おいガキ。さっきのはなんななんだ」ズイ

艦長「それに……喋りだしてる」ズイ

少女「……っ」ギュッ

親っさん「怖がらせるな」

艦長「言い出したのは貴方ですよ」

ホチ『ハゲ、さっきのってなんだ』ザッ

ハゲ「うるせぇビールっ腹。貨物スペースを出た時、このガキは念仏みてーなのをブツブツ唱えてやがった」

マッチョ『ハゲ、あんたの見解は?』ザッ

ハゲ「うるせぇニガー! ありゃあ頭にチップ埋められてる人造人間の得意技」

ハゲ「三分ハッキングだ!」ドヤァ

ピザ『ハゲ、三分っつーか三秒だったお』ザッ

ハゲ「……うるせぇぞ童貞……言葉の綾だよ……とにかく軍用のアンドボーグとかサイロイドだよ……使えんのは……あれ? トムキャットリュウセイだったっけ」

ノッポ『ハゲ、流石だな』ザッ

ハゲ「うるせぇぞ……うるせええええぇぇ……何で皆してハゲって言うんだよぉ……」グズ

ハゲ「あああああああぁあああぁぁぁぁ~~……ぁぁあ」ブワー

少女「……」オド

ハゲ「ぁぁぎゃははははははははは!!!!」バッ

少女「……っっ!」ビックゥ




艦長「時間切れですね」チャキ

少女「!!」

艦長「違います、スタンビームでヤク切れの白兵長を撃つんですよ。怖いなら耳と目を塞いでなさい」

少女「……」ぐっ

艦長「(やはり、理解している……)」

艦長「フルオート、っと」カチ

ヒュバババババババババババババババババババババババババババババババ
ドシャアッ

ハゲ「」ピクピク

下っ端A「普通はショック死なんですがね」

艦長「彼が白兵戦で無双しまくれる理由の一つに、トリップのし過ぎで痛覚がイカれてるからというのがあります。ハイになってれば戦場の全てが快感になるとか何とか? それについていける実力と体のタフさも本物なだけに質が悪い……」

艦長「下っ端er's、片付けておいて下さい。きつーく拘束した上で見張りを付けて」

下っ端B「……了解しやした」

艦長「何ですか……ええ、ええ、不可解な点が多過ぎますからね」

艦長「これの処分は一旦保留とします」スチャ

下っ端B「マジですか! 聞いたかよ豚!」

ピザ『豚じゃねーお! けどやったお兄弟!!』ザッ

マッチョ『はは、遺影にならずに済んだな』ザッ

ホチ『喜ぶのはいいが、考え事は増えるばかりだぞ』ザッ

艦長「ですね……はあ」チラ

少女「……?」フイ

艦長「女の腐ったような共和国軍のふざけた囮かと思ったら、軍用クローンの試供品? どうりで刷り込み前でも学習能力の高い……」

ノッポ『安くはない筈ですよね』ザッ

艦長「そう。造形に関しては私をおびき出すに相応しい"タイプP"の系譜なんですが、割に合わな過ぎる」

艦長「何が何やら……」




少女「……」ギュ

親っさん「こら、あまりくっつくんじゃない」

ピザ『は?』ザッ

艦長「私と白兵長が怖いみたいで、親っさんにしがみついてますよ」

親っさん「キャプテン……」

下っ端B「しかも親っさんの予備ツナギ着てんぜ。裸オーバーオールとか親っさんマジ分かってるわホッチビかわいい」

親っさん「馬鹿な物言いはよせ!」

ピザ『は? はァ?? はぁぁ!?!? 意味分かんねーお親っさん、何であんたに懐いてんだお!!』

親っさん「嬢。そのツナギはやろう、人気のようだからな」

親っさん「早く行け仕事の邪魔だ」トン

少女「あ……」

艦長「……一緒に来て下さい。大丈夫、取って食いやしませんから。もう」

下っ端A「じゃ、俺達はハゲ押し込んできやす」

ハゲ「」ズルズル


【機関室前通路】


艦長「ノッポ、とりあえずこれに適当な服を着せてから向かいます。今のところはどうです」

ノッポ『田舎宙域を離脱。連中はもうそろそろ差し掛かる頃でしょうが、追い付きゃしないでしょうね』ザッ

マッチョ『操舵手の腕がいいからな』ザッ

ピザ『という訳で今んとこ異常無しですお』ザッ

ホチ『いや、砲雷室で緊急事態発生だ!!』ザッ

艦長「どうしました?」




ホチ『誰か助けてくれ。もう駄目かも分からん』

ホチ『煙草切れた』

ピザ『んなこったろうと思ったお』ザッ

ホチ『キャプテン、また葉巻分けてくれ』ザッ

艦長「一本1000zです」

マッチョ『また値上がりしてる。そして?』ザッ

ホチ『足元見やがって……買った』ザッ

マッチョ『はい、またカモられる』ザッ

ピザ『ああクソ負けたお!!』ザッ

ノッポ『俺もだ。まーたニガー野郎の一人勝ちかよ』ザッ

ピザ『ノッポは大穴狙い過ぎなんだお』ザッ

マッチョ『♪~(口笛)』ザッ

ホチ『聞いたかキャプテン、俺のお口淋しさ事情に一喜一憂してる艦がここにある。ここじゃ俺がキングだぜ』ザッ

艦長「それだと女王が白兵長になりますよ、砲雷長」

ホチ『SHIT!! 陽気な国になるな』ザッ



艦長「……ほら」スッ

少女「……」

少女「……っ……」フルフル

艦長「……まあ、いきなり水に流せというのも虫の良い話ですよね」

艦長「小さい艦ですが、中は入り組んでいます。迷いますので離れないで下さいね」スタスタ

少女「……」テクテク




下っ端A「まるで姉妹だな」

下っ端B「あ?」ズルズル

下っ端A「並んだ。後ろ姿がだよ」

下っ端B「お前ちゃんと引っ張れよ」ズルズル

下っ端A「引っ張ってるよ」

下っ端B「嘘だな。鈎括弧のケツに"ズルズル"って付いてねぇ」ズルズル

下っ端A「チッ。ハゲ重ぇんだよ……」ズルズル


なかなか面白そう



【20014/3/1/01:59】
【海賊船パーサーナックス号】
【海賊連合西の公宙】


【艦橋】


ラジオCM『宇宙航行の際は海賊船に注意しろ! 奴らはゴミのように汚く、サルのようにずる賢い』

ラジオCM『ヘドロのように粘着質でゴキブリのようにどこへでも住み着くが、ネズミのように人通りの多い所へは近付かない。本質的には街角のチンピラ共と変わらん――』


ピザ「……喋ってる奴変わった? 台詞変わんねーのに前のバージョンより腹立つCMだお」

マッチョ「これ、喋ってんのって共和国系のどっかの惑星支局の署長で、今度議院選に出馬するんだろ? アピールだアピール」カラ

ノッポ「赤ら顔で唾飛ばして胸の前で拳握ってるのが目に浮かぶな」

ピザ「どうせアピールならもっと面白い話して欲しいお。お題はそうめん」

マッチョ「ウチの艦砲射撃もそうだって吐かすなら投票してやるよ」

マッチョ「記名は地球教徒でな」

ピザ「扇グループ」

ノッポ「リー・ハーヴェイ・オズワルド」

ホチ『タスクフォース141……は違うか』ザッ

マッチョ「途中で国際指名手配されるし似たようなもんじゃないか?」

ノッポ「しかしキャプテン遅いな……」

ピザ「マフティー」

ホチ『アサシン教団』ザッ

ピザ「あー確かに向こうテンプラーっぽいお」


ラジオCM『――餌をやらない為にも、宇宙港指定の航路から外れないこと。レーダーは常に故障がないかチェックし、オートパイロット時は何かあったらすぐに対応出来るようコックピットを離れないでおこう。星系間を移動する際は必ず正規のワープゲートを使え!』

ラジオCM『何かあった時の為に。保険や護身装備も、今なら我々宇宙警察とタイアップした会社が西側各星系で急成長中だ。この機会に一番高いやつどう?』

ラジオCM『"まさか私に限ってそんな……(裏声)"』

ラジオCM『そォ のォ ゆゥ だァ んン がァァァ 奴らをのさばらせる糧となる!!!! 日頃からの心構えを、忘れるんじゃあ、ないぞッッ!!!!!!』キーン




ホチ『うおっ! 最後の何だ、通信でブリッジのラジオ聞いてたからか?』ザッ

マッチョ「多分そうだな。ラストだけ向こうで勝手にボリューム上げてくれてたよ」


ラジオ時報『2時を、お知らせします……』

――【03:01:01:59:58】―― ピッ…

――【03:01:01:59:59】―― ピッ…

――【03:01:02:00:00】―― ピッ…

――【03:01:02:00:01】―― ピッ…


ピザ「宇宙警察タイアップ版の時報分かり辛いお」

ノッポ「四回鳴る。三回目のピッで時が変わるんだ、覚えとけ」

ピッ

ピザ「五回鳴ったお?」

ノッポ「違う。これはレーダーに反応――」

ノッポ「――こいつは!」カタカタッ


ビィーッ ビィーッ ビィーッ


プシュー

艦長「ノッポ、警報鳴らした理由を聞かせて下さい」タッ

ノッポ「グッドタイミングでしたねキャプテン、あなたを呼んだんですよ」

ピザ「遅かったおキャプテン……」クル


少女「……」じー


ピザ「うわおぅッ!? ななななんでパツギンちゃんがここに!? しかも髪アップになってるお!!」ビクッ

マッチョ「つーか結局ツナギかパツギン」チラッ

艦長「パツギン?」スチャ

マッチョ「ここに居る以上は呼び名が必要だ。で、候補挙げてあんたとジャンキーを除いたメインクルーによる投票が行われた」

艦長「船長抜きで勝手に……。ていうか海賊船で選挙が成立したんですか?」

ホチ『綺麗に割れた。1:1:1:1:1』ザッ

艦長「でしょうね。……え、五個?」

ピザ「最終的に抽選になって、結果、親っさん命名のパツギンに大決定したお」カタカタ

艦長「親っさんが!?」

ホチ『ナウいだろ。俺なら絶対嫌だ』ザッ

艦長「親っさんがそんな馬鹿な……」

少女→パツギン「……?」




ノッポ「……そろそろいいですか? レーダーが捉えたのは――」カタカタ

艦長「却下」

ノッポ「ちょっ」

艦長「すぐ終わります。パツギンなんざあんまりです」

艦長「ただでさえ貴方達太陽に吠えろみたいなむさ苦しい面構えに字面だってのに、しかも私を通さず決めときながら言うに事欠いてパツギン? 増やす気ですか!?」ガーッ

艦長「せめて…………そうですねせめて! 銀髪と呼びなさい」

ピザ「あんま変わってねーっつーかひっくり返し返しただけだお」ボソ

マッチョ「まんまだな。最初からまんまだったが」

ホチ『一時保留じゃなかったのか? 名付け親に早変わりとはお優しいことだな』ザッ

マッチョ「シャツ着させて愛着が沸きましたか?」

艦長「……それ聞いたんですか」

マッチョ「へ?」キョトン

艦長「なら良い。はいこの話は終了! 銀髪、……貴方のことです。そこに座ってて下さい。ちゃんとベルト締めて」

パツギン→銀髪「……」こくり ストン

艦長「お待たせしましたノッポ。状況を説明して下さい」

ノッポ「本当ですよまったく。そりゃ慌てるよりはいいですがね、結構切迫してますよ。ホチ、ピザ、データを送った」カタカタッ

ホチ『来た。……おっと、これはこれは』ザッ

ピザ「デカい航空戦艦、ってコイツかお!」カタカタ

銀髪「……」まじまじ




ビコーン ビコーン ビコーン

ノッポ「先制攻撃を仕掛けるべきです」カタカタカタカタ

ヴン

艦長「ユニバーサル・センチュリー・ウィットネス号……。まだ見つかってないんですか?」

ノッポ「見つけようとしてますね」カタカタ

ピザ「レーダー波ガンガン来てるお。今は装甲に備わってるH&Kシステムとレーダー波吸収機能ONにしてるんで、ステルスついでに艦内電力補充中でうまうまだお。けど……」カタカタ

艦長「気心知れた仲ですからね。じき熱探知か人海戦術に変えてくるでしょう」

艦長「操舵手、距離を保ちつつ奴の背か腹、主砲向けつつ早い方へ」

マッチョ「じゃあ潜り込もう。半速潜進」カラララ グッ

ゴゴォ……ン

銀髪「!」ビクッ

艦長「砲雷長」

ホチ『装甲貫徹弾装填完了。奴が相手ならいい加減核とか撃ち込んでやりたいもんだがな』ザッ

ホチ『それから、本日のメインディッシュになり得る副砲の準備も完了していますオーナー』

艦長「完璧です料理長」

ピザ「? レーダーに混じって変なの飛んできたお。ああ……メールだお」カタカタ

マッチョ「そういやそんな奴だったな」

ピザ「毒味良し。ウィルス、スパイウェア、ブラクラ、頼んでもない広告画像にデコメパーツの類は無いお。ホログラムとボイスが多分うぜぇけどどうするおオーナー」カタカタ

艦長「奴の一分を立ててやりましょう。こないだ片腕を落としてやった筈なんですがね」ピッ




ヴォン

銀髪「!!」


若海賊『やあ、キャプテン。僕だ。久し振りだね』キラキラ


艦長「相変わらず海賊にあるまじき爽やかな営業スマイルですね」

ホチ『カメラに向かってニヤつきながら喋ってるってことか?』ザッ

艦長「そうなります」

ピザ「腐れ金持ちイケメンリア充の効率厨が」ペッ

銀髪「………………」

艦長「ピザ、後で拭いておくように。除菌も忘れず」

ピザ「ひでェお!!」


若海賊『生憎だが、今回はいつもの貴方達を手に入れるための決闘じゃないんだ。仕事さ。場合によっては血生臭くなる、ね』

若海賊『知っての通り、日だまりに住む連中からの追撃を免れるため、僕ら日陰者の中でも取り分け海賊達が主立って築いた"海賊連合"という集まりは、宇宙中の交通の難所や廃星にその支部を備えている。根底に根差す「捕まりたくない」という一念こそ同じだが、当然僕らは一枚岩でない』

若海賊『分かって頂きたい。"抑止力の七隻"が次席である貴方とパーサーナックスを僕の艦隊に迎えることもしたいが、平和の為には力が必要なのさ』

若海賊『いつかきっと、理解してくれると信じていますよ』

若海賊『では……』ブンッ




艦長「銀髪。私は"ホログラムだから殴れない"というただ一点だけの理由で今の映像投射技術の進歩状況を恨んでるんですよ」

艦長「どう思います?」

銀髪「……」

艦長「そうですか」

ノッポ「なんて?」

艦長「無言・無表情・瞳にはまだ若干の怯え。これでコミュニケーションが取れたというならそいつは大したプロデューサーだと思います」

マッチョ「違いねえ。っと、キャプテン、ホチ、そろそろどうだい。UCWの木馬だかアーガマだかみてえなシルエットがくっきりだ」

艦長「ほぼ真下……転針してなければ首が痛くなる位置取りですね。砲雷長?」

ホチ『レストラン・パーサーナックスごっこは終わりか? 合図をくれればスタートだ』

艦長「コネと金が欲しいと吐かす癖に金食い虫を運用するような阿呆に思い知らせてやりなさい。狙い、両舷カタパルトの根本どちらか」

艦長「撃て」

ドゴゥン!! ガコン

銀髪「!!!!」ビクッ

艦長「ああ……基本的に"撃て"と言ったらドゴゥンと来ますから。油断しないように」

ノッポ「惜しい、UCWから今何機か発艦しました。こいつは……まるでモビルスーツだ、いつもの艦載機隊じゃないな。前やり合った時あらかた死んだのか?」カタカタカタカタ

ノッポ「ホチ、着弾確認。流石だ」ピピピ カタカタ

ホチ『やったぜ。成果が見たい』ザッ

ノッポ「今拡大映像を出す」カタッ

ヴン

艦長「これは……企業連盟の警備空母が使ってるドローン(無人機)に似ていますね、最新型……? 発艦状況は」

ノッポ「速いな、4-4-4で12機。全部自動だからスクランブルだろうがパチンコの出玉みたいに滞りなく発艦してます。左舷カタパルトは中破、ハンガーも逝ってるんじゃないですかねコレ」

ノッポ「そっちでビビったのか今発艦止まってますが、脚部が動きさえすればカタパルトなんか無くたって発艦出来ますよ」カタカタ

艦長「砲雷長。ARTにとどめを刺して下さい」

ホチ『了解。ボーナス終了だ』ザッ

ホチ『台パンでな!』


ドゴゥン!!




【20014/3/1/02:06】
【海賊船ユニバーサル・センチュリー・ウィットネス号】
【海賊連合目と鼻の先 現在戦闘区域】


ズガァァッ!!!!


【海賊船UCW号 艦橋】

ビィーッ ビィーッ ビィーッ

UCW船員1「続けて披弾ッ!! 右舷カタパルト大破、まともに喰らいました!! 衝撃で右舷側ハッチが開きません!!!」

UCW船員2「毎回毎回、恐ろしく精緻な砲撃だ……流石、帝国戦史の闇を駆け抜けただけのことはある」

若海賊「その装甲とフリゲート規模故の小ささからくる随一のステルス性で宙域に潜み、狙い澄ました精密長距離砲撃でアウトレンジから敵艦隊を狙撃する……」

若海賊「エネルギー反応を曝さないため、この宇宙時代に"火砲"を採用。東西戦争中期、戦艦の肌に物理装甲を思い出させた奇襲艦、ギブワン級。まさに初見殺しの名を欲しいままにする艦だと言えるだろう」

UCW船員3「若、大丈夫ですか!?」

副官「慌てる必要はありませぬ、最初の砲撃を良く耐えた。ドローンは何機出られました?」カラララララララ

UCW船員1「アルファ、ブラボー、デルタチームの操縦機が無事に発艦! チャーリーチームは最初の砲撃で三機が大破、隊長機が中破! エコーチームは待機中につき全機無事!!」

若海賊「ということは十二機か。それだけ居れば十分だろう」

アルファ1『若、これからパーサーナックスに取り付く』ザッ

若海賊「大将。ありがとうございます、付き合って貰って」

アルファ1『本当にな。まあ、シミュレータだと思うことにするさ』

若海賊「辟易しますよ。先方も何を考えているのやら……まったく、ね……」

アルファ1『将軍は若、あんただ。どんな作戦だろうがやると決めた以上は胸を張っていろ』

アルファ1『各員続け、散開して囲むぞ! レーダーに映らねえ上に紛らわしい塗装、おまけにインターバルのある機体だ。見失うな!』

若海賊「砲雷斑はドローン隊の援護を! パーサーナックスに砲撃を撃たせ――」


ズドッッ!!!!


若海賊「――もう撃たせるな。損害は!」

UCW船員1「大丈夫です、掠らせました!!」

副官「反転完了致しました。号令を!」

若海賊「砲雷斑、制圧砲撃開始!」

UCW砲雷斑『斉射開始します!!』ザッ




【海賊船パーサーナックス号 艦橋】


ビィーィイーッ
ビィーィイーッ

銀髪「」ビクビクビクビク

マッチョ「do a barrel roll !!」カラララ

ノッポ「を完遂したUCWから高エネルギー反応、検索してる場合じゃないぞニガー!」カタカタ

マッチョ「回避運動ならもうやってる。キャプテン?」カララララ

艦長「ホチ、狙撃銃から蝿叩きに持ち替えて下さい。ノッポ――」

艦長「……いや」

艦長「ノッポ。引き続きレーダーに気を配りつつ、ピザと協力して敵ドローンの解析をお願い出来ますか?」

ピザ「お? シールド制御の合間なら簡単だけど、ノッポの方はどうなんだお」カタカタ

ノッポ「それはお前だけだろ……頭がフットーしそうだが、キャプテンがやれと言うなら必要なんだ。無理くりにでも揃えるまでさ」カタカタカタカタ ピピピ

ノッポ「さてまず何から……ああっと、連中囲みに来ましたよキャプテン! ホチ!」

ホチ『準備出来てる。あいつらまたエクスペンタブルズの雑魚敵側をやろうって気なのか?』ザッ

艦長「銀髪、耳を塞いでなさい。さっきよりもキツめにです」

銀髪「?」こく?

艦長「こう、ぎゅっと」ギュッ

銀髪「ぎゅっ、と」ギュッ

艦長「……そうです」

ノッポ「ホチ、来るぞ! ええと映像から見れる装備は……」カタカタ

ホチ『対空砲塔発射!!』ザッ

ガギャギャギャギャギャギャギャギャギャ……

銀髪「……! ……!」うる

艦長「また張り切っちゃって……。対空散弾砲塔、弾は人型兵器の携行装備の物ですから安く済むんで幾ら撃とうと構やしないんですが、如何せん発砲音とアレの音がうるさ過ぎる」

ホチ『こいつか?』ザッ

ジャッキン

艦長「それです。リロードの」

ノッポ「命中命中命中命中、撃破確認」

ザ ザザ ザザザザザザザザザ

ピザ「な、何だお? モニターが……」

ホチ『何だ!? 機…が爆……たら妙な……こいつは!』ザッ ザザザ

艦長「……そう来ましたか」

艦長「操舵手、バレルロールを。ホチ! 聞こえますか? 砲の作動には影響しません、撃ち続けて下さい!」

マッチョ「了解」カララララ

ホチ『…解!』ザザザザ

ピザ「キャプテン、解析できたお!」ガタ ピッ

ヴ ッン

艦長「!」
艦長「……銀髪。初仕事です」カキカキ

銀髪「……?」



【海賊船UCW号 艦橋】

UCW船員2「アルファチームが特攻、撃墜されると同時にEMPボムの起爆を確認!」

若海賊「やったのか?」

UCW船員3「その筈ですが、パーサーナックスのH&Kシステムは波動に対する一種の防御手段として使うことも可能です。それに、元は軍用。電装系統には加負荷への対策が為されていてもおかしくはありません」

若海賊「成る程な……つまり、航行不能に陥らせるとまでは行かないと」

アルファ1『おい、操作ポッドのモニターに"GAME OVER"って出てるぞ!? このふざけた仕様も企業の連中がやったのか!?』ザッ

副官「茶目っ気というやつでしょう」ホホホ

若海賊「畳み掛けるチャンスだ。大将、残りのEMPボムを全て投げ付けさせて下さい!」

アルファ1『一機替わらせた、こんな味気の無い戦いはとっとと終わらせるに限る』

アルファ1『ショットガン砲塔の旋回が鈍くなってる! ボムをぶち込んだらブラボーとエコーが前で陽動、デルタは射角を見極めてケツから狙うぞ。ついて来い!』ザッ


【海賊船パーサーナックス号 船外】


バシュゥゥーン バシュゥゥーン バシュゥゥーン

エコー1『大将、残存ドローン全機ボム捌けたよっ』

アルファ1『これで仕事の半分は終いだな』

エコー1『ぶー。3分の1! 残り二つはほら、このオモチャとオプションのテスト。あのくっさい挨拶メールで血生臭くなるっつってたっしょ?』

アルファ1『謹め。行くぞ』ゴォッ

エコー1『「謹め」ってことは薄々そう思ってたってことじゃんか。でしょ? でしょ? あ着拒してる』

エコー1『戦闘中に通信切っちゃいけないんだー! ポッド開けて直接話し掛けに行っちゃおうかな? 行くよ皆ー!』ゴォッ ゴッゴッゴッゴッ




【艦橋】


ジャキン
ガギャギャギャンッ ガギャンッ ガギャンッ


マッチョ「あーチョロチョロすんなうぜえ!」カラララ

ノッポ「ドローン散開! パーサーナックスの前後に別れて挟み撃つ気か……何だあのデカブツは」カタカタ

ノッポ「前の4機の中に落書きみたいなエンブレム付きを確認。ビーム撃ちながらスラスター使って器用にシャゲダンしてます」カタカタ

艦長「あのガキでしょうね。人を煽る為に生まれて来たような性格です、クソです」

艦長「バレルロール+対空牽制での分断は成功しました。やはり、本命は後ろ……大将が来てる筈」

キュィーン! キュィーン!

ピザ「シールドは不調だけどドローンの豆鉄砲程度ならなんともないお、バッチリそげぶ出来てるお」カタカタ

ピザ「さっきの目くら艦砲も当たったらまずかったけど、まあ沈みはしないお。浪漫は否定しねーけど航空戦艦ってやっぱ中途半端だお」カタカタ

マッチョ「目くらじゃねえ。俺が避けたんだ」カララ

ノッポ「ホチが撒いてくれてた撹乱幕も忘れてやるなよ」

マッチョ「余計なことしやがって」

艦長「……まだですか銀髪」

プシュー

ハゲ「はァァァァーーーーいはいはいハイはいはいハイはいハイはいハイハイはイはいハイはいハい呼びましたかキャァァァァーーーッッップ!?!?!?」ハツラツ

銀髪「……ベコって」ボソ

艦長「何故ブリッジに? しかし、無事に部屋まで行けましたか……どうして貴方達まで?」

下っ端B「心配でしょうが!!」

下っ端A「俺らの仕事は白兵長の見張りなんで」

艦長「まあ好都合ですが」

ハゲ「それでぇ? はじめてのおつかいに俺様をお選びになった理由は?」

艦長「あれが見えますね」

ハゲ「ジェガン? ヘビーガン? ガンイージか? 雑魚っぽいMSだな……まさか!!」

ハゲ「ついに宇宙のどこかでボヘミアン・ラプソディが発現したのか!!!!!! 僕はペギーさんがいいです!!!!!!!」

バヒューン




ハゲ「短気は婚期の損気だぜ」guard

銀髪「……」耳guard

ピザ「抜き撃ちめっちゃ速かったのに何で防げんだお」カタカタ

艦長「ヤクの補充は十分なようですね。手短に言います、現在敵の電磁攻撃により通信等の電装系統が弱体化中。後部搬入口からユニバーサル・センチュリー・ウィットネス号のドローン共が侵入して来ます。これを迎撃、排除して下さい」

ハゲ「!!!!!!!!!!!!」ぱあっ

銀髪「っ……」ヒキ…

艦長「"白兵戦"になる恐れがありますのでそのつもりで」

ハゲ「何でもいい、SATSUGAIするチャンスだ!!!!!!」ウズウズウズウズウズウズウズウズ

艦長「ただ」ポイ

ハゲ「? こいつはマスターキーか」パシ

艦長「武器庫からアレを取ってって下さい」

ピザ「待機してるお! 一機は確実に。チョーシこく余裕があったら他も何機か頼むお」

ハゲ「ピザが待機って事ァ……チッ、ああ了解」ダダッ

下っ端A「俺達も行くぞ!!」ダッ

下っ端B「パツギン、ナイスランだったよ!」ダッ プシュー

艦長「ナイスラン?」

銀髪「……」

ノッポ「電装系復旧80%! キャプテン、艦内無線通信ライン復活します」カタカタッ

下っ端C『……おっ、復旧したか? こちら貨物スペース前エアロック! 対ハードスキン装備で待機中!』ザッ

下っ端D『ロケラングレラン浮遊機雷リモコン爆弾と銃座に対物ライフル! バグが来たってビルギットのようには行きませんよ!!』ザッ

艦長「パーサーナックスのケツをボロボロにする気ですか。というか何でそんな集まりが良いんです?」

下っ端B『親っさんがパツギンと一緒に指示の書かれたレシート持って走り回ってたんすよ。あれキャプテンのすか?ww』ザッ

下っ端A『真っ先に機関室へ行ったんでしょうね。ていうか良く行き方覚えてましたね』ザッ

ハゲ『叩き起こされたぜぇ。あとキャップ、なんか後で話があるっつってたぞ親っさん』ザッ

艦長「仮にも戦闘中に機関室を離れる機関士なんて聞いたことありませんよ……こちらこそ言いたいことがあります」

艦長「あとパツギンやめい」

銀髪「…………」




【海賊船パーサーナックス号艦尾 後部搬入口前/貨物スペース】


ゴォッ

アルファ1(デルタ機)『よしいくぞ、やれ』

デルタ2『えぐるァせてもらうで!!』ガッギュォン!!!

デルタ3『怖い奴は消してしまえばいい!!』ギュゥィィィィイイイイイイイ!!!!

デルタ4『あァいしてるんだァ実地テストをぉァッハッハッハ!!』ゴシカァン!!

アルファ1『エンジン狙えばお釣りが来るんだが、なッ』ギュオッ

ガィィーンッ
ゴバァァアッッ

下っ端D『!? ハッチが爆はt……ぐわぁ破片がッ!!』ドゴシャ

下っ端A『来たぞ撃てッッ!!』バシュッ

下っ端C『確かに雑魚っぺぇフォルムだな! 企業連は出淵裕をデザイナーに据えるべきだッ!!』ドンッドンッ

下っ端D『違え無ェ……すまん下がる! 左腕ミンチなのはともかく服破れた』

下っ端B『お前抜いてこっち16人か? グレネードランチャーは置いてけよ!』ズドドドドド

下っ端A『一つ勘定を間違えてんぜ。あの人は人間じゃねえ』バシュッ

ハゲ『そーいうこったァ……』

下っ端D『白兵長はどこにいやがんだッ?』

ズガガガガガガガガガガガガガッ
ドゴンドゴンドゴンドゴン

デルタ4『ちィッ、待ち構えてやがったな!? 物凄ぇ集中砲火だ大将動けねぇぜ!』

デルタ2『ワシが前に出る、その隙に"降ろせ"!』

デルタ3『お願いします!』ガゴン

デルタ2『うおらッ!!』ゴォッ

アルファ1『!! いや待てッ』

ズガァーン!!

デルタ2『機雷ッ? 連中自分の船がのうなってもええんが!?』ドガーン

デルタ3『何やってんすか!』ズドッ

デルタ3『? 今何か……』シャキン ピピッ

ハゲ『ピザ』チャキン ピピピ




【艦橋】

ノッポ「クラックアンカー着弾を確認! かましてやれピザ!」カタカタ

マッチョ「映像チラチラ見てるが、また凄いゲテモノだな。杭打ち機に連装チェーンソーに最後のは何だこりゃ……ブースター付き鉄筋コンクリートってとこか? こんな重いの背負ってよくハッチまで来れたもんだ」カララ

艦長「パーサーナックス貨物室の修理代減額高は貴方の双肩にかかっていますピザ。頼みますよ」

ホチ『急いでくれ。砲撃してるすぐ隣でドンパチやられてちゃ心臓に悪い』ザッ

ピザ「急かされちゃ焦っちまうお」カタカタカタカタ



【貨物スペース】

デルタ3『何だ……何だ、勝手に』スチャ

デルタ4『あ? 何やってんだロメオ、もうデロリアンは要らねぇだろ……』

デルタ3『いや機体がなんか勝手に……ハッキングだ!?』グァッ

ピザ『はい私がやりましたwwwwww』ザッ

デルタ3『その声はッ……ヤバい避けて!!』ギュゥィィィィイイイイイイイ!!!!

デルタ2『うおおおおッ!』チュィィィィィンバリバリバリバリバキバキバキバキ

デルタ3『動かない、動かない……! は、話が……違うっすよ……!!』

ピザ『ははは……まるでテレビゲームだお。"無敵モード"だ……!! あ、いや分かってますおキャプテン今やってるお』ピピピピピピ

デルタ4『ぶっ壊して止める!』

ハゲ『ああ、俺がお前をなぁァ!!』ポチポチポチポチ

ドガガガガガァァン!!

デルタ4『リモートボム! ハッハァ、上だったか! すまねぇ大将後頼むわ!』ドガァーン

下っ端D『いつの間に爆弾なんか? つーか最初いきなり爆発したのってそのせいかよ!? ふざけんなハゲ!!』

ハゲ『どうする? 後はてめぇだけだぜタイショーくん』

アルファ1『問題ねえよ。間に合った』ガゴッ ビコーン




下っ端B『何かする気だ止めろ!!』

ピザ『任せるお!』ピピピピピピ

デルタ3『強制停止も受け付けないのかよ!!』ギュゥィィィィイイイイイイイ!!!!

アルファ1『ッ、凄ぇ威力だな……ッ』ヂュィィイイィィィイイイイ

下っ端C『やったか!?』

下っ端B『C! それ言いやがったなこの馬鹿野郎!』

アルファ1『そういうことだ』ドガァーン

アルファ1『コアドローン分離!』シュバッ

ピザ『来たッ! 思ったより速……』ピピピピピピ

アルファ1『武装は手足のブレードとスタンガンだけか。金看板に殊勝なことだ』シャキンッ

アルファ1『十二分だがな』ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ

デルタ3『うわああ大将そんなぁ!!』ドシャアッ

ピザ『勝ったぞ!!!! ごめんなさい言ってみただけです』ピピピピピピ

アルファ1『性能? 生かしてやるさ。脅えて竦むのは貴様らの方だ』ギラッ

下っ端B『Oh My God、マジでトランスフォーマーからミクロマンがスクランブルでパージしたぞ!! レザーフェイスドローンが一瞬で最終回の百式みてーに!!』ビクッ

下っ端A『鳥山求が何だって!? つーかその例えグレンラガンじゃ駄目だったのか!?』

ハゲ『面白ぇ、スクラップにしてやんよ!!!!!!』バッ




アルファ1『白兵長! 手に持ってるのはプラズマカッターか? そんな工具頼りに生身でコイツに挑むつもりか』ギュイン

ハゲ『いつマーカーずらしちまってもいいようにきちんと改造したやつ積んどいたのさ! キモい害虫って意味じゃ今のてめぇもネクロモーフと変わんねーぜ』バシューッ

ズバァァッッ

デルタ3『チェ、チェーンソーが端っこ斬られて一口サイズに!!』

アルファ1『どこを狙ってる!』ヒュッ バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ

ハゲ『うお危ねッ』ガシィィッッ

アルファ1『コアドローンの突きを取っただと? 知ってはいるがやはり人間辞めてんな』グッ

アルファ1『ならばッ』ガッ グルンッ

ハゲ『投げ……うおおおおおおおッ!!!!』ポーイ ガッシャア

ピザ『ハゲ! 早く!!』ピピピピピピ

下っ端A『白兵長が離れた! 制圧射撃だッ!!』バシュッ

下っ端B『姉様スペシャルが火ィ吹くぜェ、空がぁぁぁ青いわぁぁぁあああああッ!!!』ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

下っ端C『クソッ 硬さがガワと変わんねぇッッ!!!』ドンドンドンドン

アルファ1『ちょこざいな、そんな豆鉄砲なぞ――』ガガガガガガガズガンドガンギィンギガガガガチュィンチュィンガガーン

デルタ3『大将、こっちです!!』

アルファ1『――生身にしか効かんッ!』シュバッ

ピザ『げッ、バレたお!? クソビビリ黙ってるお!!』ピピピピピピ

ハゲ『ちィッ!』チャキン ピピッ

アルファ1『こいつのブレードならお前の首も豆腐みたいに吹き飛ぶだろうな!』

アルファ1『くらえィィィィィィィハァアァァゲェ! 貴様にとどめを刺せるなんて! スカッとするぜーッ!!』シャキィンッ


ビィーッ


ノッポ『貨物スペース総員へ、コードG+!!』ザッ

下っ端A『え゛っ』
下っ端B『ちょおま』




グググッ
グググググググググググ……


アルファ1『その首貰っ――何だッ!?』ズガシャアッ

下っ端C『ぐおおぉぉおぉぉぉ!!』ビターン

下っ端B『内臓がッ……骨が肉が体がきしききしきししし軋むむむむむむむ』ギリギリギリギリギリギリ

アルファ1『ドローンが動かないッ……何だこれは……』ピピピ

アルファ1『……機体間接部に異常? これはッ……重力場攻撃と出ているが』ギギギギギギ

ハゲ『チッ・チッ・チッ、もっと単純なお話だ』ズン…ズン…

ピザ『ハゲ、完了だお。……えー、今、この貨物スペースにだけ艦側から重力をかけてるお。で……』ピピピ

ハゲ『次ハゲっつったら殺すぞ。待てノッポピザ当てるわ』ガシッ…

ハゲ『ん……15倍くらいだろ。……ッぅぉおこれ重ぇぇぇ……!!』グググググ

ピザ『流石、トレーニングで使ってるだけあるお』

ハゲ『ベジータに出来て俺に出来ねぇ訳がねえッ……』ググググッ

アルファ1『何!? 宙間服の保護があろうが、そんなものお前……』ギギギギギ

ピザ『そう。だからそこで正常な人類はノびてるお?』


下っ端A『』チ
下っ端B『』|
下っ端C『』ン


艦長『白兵長。急いでくれなきゃ搬入機材と貴方の戦闘について行ける貴重な戦闘員が車に轢かれたカエルのようになります』ザッ

ハゲ『もう終わる……ピザ電源入れろ』ガシン

ピザ『そいつに押し当てとくお。重力がアレだからチェーンイカれるかも分かんないけどすぐ治療出来るしいいかお?』ピピピピピピ

アルファ1『プラズマカッターで一基だけ切り取った馬鹿チェーンソーを持ち上げて……!?』ギギギギギ

アルファ1『……そうか……例のカッター、やけに杜撰な撃ち方だと思ったが……狙っていたのか』ギギギ

ハゲ『部位破壊はクラーク流工具真拳の基本中の基本ってな……』ググッッッ

アルファ1『ふん、……今回も勝てなんだか……やれ。仕方がないとはいえ、確かに兵器として人型はどうかと俺も思う。若には思うところがあったようだがな』

アルファ1『言い訳も勧誘もテストも"誘拐も"一辺にやろうとするからこうなるんだ』

艦長『待って下さい……誘拐?』

ハゲ『待たない。直接聞きゃいいだろうが』グッ…

ハゲ『よッッッッッッ!!!!!!』ブォン!!


ギュゥィィイイイイ!!!!




【20014/3/1/03:28】
【海賊船パーサーナックス号一味】
【海賊連合 廃棄星 地上ターミナルエリア近郊】


【然る居酒屋】


ガラッ

店主「らっしゃい」

店主「ああ、キャプテン。外はまた大所帯だな……あん?」

艦長「こんにちは。まだ大丈夫ですか?」ヒリヒリ

店主「……。夜中しか開いてねえ店に来といて何吐かす、こちとら今がゴールデンタイムよ」

艦長「ガラッガラですけどね。お座敷使っても?」ヒリヒリ

店主「奥か? いいよ」

艦長「ありがとうございます」ヒリヒリ

艦長「大丈夫みたいです。どうぞ」ヒリヒリ

ノッポ「ちわす」
ピザ「オヤジさん邪魔するお」
マッチョ「腹減った。何にすっかな」

ホチ「んーん。この木目の匂いが嗅げて、ついでに腕の良いコックが居ればウチの船の食堂は完璧なんだがな」チラ

店主「宇宙(そら)は船酔いが酷くていけねえ」フイ

店主「昨今は無粋だしな」

ホチ「違いない。いつもので頼むよ」

店主「あい。……しかし」

ゾロゾロ

店主「今日はまた随分多いね。それに珍しい組合せだ」


若海賊「どうも初めまして。UCW海賊団提督、若海賊といいます」

副官「同じく、副官と申します。艦隊では幕僚、旗艦UCWに於いては操舵手を務めております」

エコー1「同じく――」ゴツン

アルファ1「俺達のは要らん」つ拳骨

エコー1「なんでだよー! ッたいなー、大将は自己紹介要らないだろーけどオレとかは売り込まなきゃ名前覚えて貰えないじゃんかよー!」プンスカ




アルファ1「黙ってろクソガキやかましい。いつからアイドルになった」

エコー1「生まれた時から。つーか一番やかましかったのって大将でしょさっきの。オレ達さぁ、UCWでポッドの中に引き込もりながらコントローラー握って無人機戦わせてた訳じゃん? 訳じゃん?」

エコー1「なのに大将ったら『生身にしか効かん』!!!! wwwww」

アルファ1「……」ピク

エコー1「『くらえィィィィィィィハァアァァゲェ! 貴様にとどめを刺せるなんて! スカッとするぜーッ!!』wwwwww燃え上がっちゃったの? wwwwつい? wwwwwww」ブフゥー

エコー1「そんなんだかr」ゴツン

エコー1「いっでー!!」ゴロゴロ

アルファ1「今ので十分な自己紹介になったろうぜ」つ拳骨

副官「ほっほ……」

若海賊「隊長殿、静かにね。すいません騒がしくて……ええと……マスター」

店主「ぶはっ、マスターと来たか! そりゃあいい、そんな呼び名で呼ばれたのは初めてだが悪くないね」ゲラゲラ

店主「いいよ、いいよ、子供の内は生意気なくらいが丁度良い。噂は兼々、以後お見知り置きを、若き海賊提督殿。すぐに水を持ってくよ。口に合えばいんだがね」ノソノソ


若海賊「はい……うーん」

若海賊「喉を通ればいいんだが」

副官「ファイトですぞ、若」ホホ




【然る居酒屋奥 座敷】


艦長「ノッポ、ハゲはどんな感じですか?」ヒリヒリ

ノッポ「っと……連絡来てますね」ピッ

ノッポ「入院は確定みたいです。が、一日もあれば治ると」

アルファ1「対装甲チェーンソーの飛び散った刃を至近距離で喰らって一日で回復……?」

ピザ「やっぱ人間じゃねーお」

ホチ「今更だがな」

マッチョ「クスリかハッパが無きゃ死ぬが、あれば何でも出来るかんなあのハゲ」

エコー1「もう無理だってば大将じゃ」

アルファ1「もう一発いくか?」

副官「大将」

アルファ1「へい」


店主「水」コトッ

艦長「どうも」ヒリヒリ ピトッ

若海賊「靴を脱ぐ所で食べるのは久しぶりだ」

艦長「羽振りの良いことで」ひやー

若海賊「……」

艦長「……」ひやー

若海賊「あー……キャプテン、それは先程の戦闘で?」

艦長「ええ」ひやー

若海賊「それは……」

艦長「違います」ひやー

若海賊「キャプテン……」ガク

艦長「ちょっと、転んでしまって」ひやー




【降船前】
【パーサーナックス号機関室】


バギィッ!!


艦長「ぐっ……!」ドサッ

親っさん「……」グーパン

艦長「痛いじゃないですか……親っさん」グイ

親っさん「痛くしたからな」

艦長「……確かに私は処分を保留にすると言いましたよ……言いました」

艦長「ですが保留は保留です。客人待遇をせよとも言ってません。あれに愛着を持つのは勝手ですが、押し付けないで下さい」ぺっ

親っさん「あの子がメモ書きを持って走って来た時、私は銃の整備をしていたのだが」

親っさん「それを見た瞬間、あの子の縋るような目が怯えに変わった」

艦長「……」

親っさん「来させるのにブラスターを向けただろう……脅したな」

艦長「いけませんか」

艦長「"言っても分からないならしょうがない"、それが一般的な家庭とやらの教えなんでしょう。私は貴方に教わりました」

艦長「……過去に」

親っさん「……」はぁ

親っさん「何故だ」

艦長「何が」

親っさん「いいか、徹するというなら私もこんな風に貴様の頬を張ったりはしないんだ。キャプテン」

親っさん「何がだと? こちらの台詞だよ。何だ、あの目は。パツ……」

艦長「」ギ ロ リ

親っさん「……銀髪を見る貴様の目だ」

艦長「目を開けてなければ眉間に当てられませんからね」

親っさん「それだよ」

艦長「だから何が!?」

親っさん「どちらかにしろ」

艦長「……」




親っさん「痴がましい物言いかも知れないが、動揺する気持ちは察するに余りある。十余年間、そういえばこんなことはなかった」

親っさん「生かしてやりたい、しかし申し訳が立たないというなら、納得する言い訳でも探せばいい。心の平定に必要ならばな」

親っさん「だが、見栄を張る必要はないんだぞ。別にいいんだ」

艦長「……黙って下さい」

親っさん「殺すというなら早くしろ。傷は浅くて済む」

艦長「黙って……」

親っさん「断る」

親っさん「公憤と私憤を履き違えるなよ。今のままでは押し付けているのは貴様の方だ」

親っさん「指揮に影響が出ては困る。指揮官がそんなんでは務まらないが、貴様の場合は有能な癖に信用ならない」

艦長「それ……それ、まだ言うんですか、もう十年も経つのに」


プシュー


艦長「!」

親っさん「?」

銀髪「…………」じー…

下っ端E「ああっ、こら! また勝手にハッキングして開けたのね? キャプテンに知られたら……」タタタ

下っ端E「ってキャプテン!! まだこちらに居たんですか!?」ビクゥ

艦長「……E。貴方には親っさんとの話が終わるまでそれのお守りを命じた筈ですが」

下っ端E「いえその、私がトイレに行っている隙に……すいません」

下っ端E「ほら行こう銀髪」くい

銀髪「……」ぐっ


銀髪「おやっさん」


親っさん「!」

艦長「…………学習が早いですね」

艦長「(いや、本当に早過ぎる……刷り込み前のクローンは誇張抜きに赤子レベルの知能なのに。だから始末出来ていた。この十年間……)」

銀髪「……」トコトコ ぎゅ

親っさん「……しがみつくなと言っているだろうに」

艦長「(……)」

下っ端E「す、すいません親っさん……」

艦長「親っさん。またの機会にしましょう」

親っさん「何をだ」

艦長「二度は言いません」

艦長「これからUCWの彼と話をして来ます。恐らくはそれについての、妙なことを口走っていましたので。内容如何では今度こそそれを消します」

艦長「行ってきます」

親っさん「……」

銀髪「……」

親っさん「……さあ、Eに着いていなさい」ナデ


【現在】
【然る居酒屋】


艦長「……」ひやー

若海賊「……キャプテン?」

艦長「いえ。ごめんなさい、ついぼーっと」ひやー

艦長「どうです?」くるり

若海賊「えーと……?」

艦長「ああ、すいません、普段一緒に居る海賊共は察しが良過ぎるもので……つい省いてしまうんです」ひやー

若海賊「それは、分かるよ。部下が優秀な証拠だ。僕が誇っていることの一つだ」

艦長「……そうですか」ひやー

艦長「言いたいのはこの店のことです。いい所でしょう。我々の行き着けなんですよ」ひやー

若海賊「へえ……」

艦長「この畳が気に入ってましてね。料理とお酒も言う事なし、お勧めは……そうですね、何か食べられない物とかありますか?」つ品書き

若海賊「特には。アレルギーも」つ品書き

艦長「でしたらユッケが良い。生肉が当たるというのは、ケチの過ぎた真糞野郎が頭の下げ方もロクに弁えてなかったが故に誇張された事実ですが」じっ

艦長「ちゃんとした物がお酒のよき肴である、ということまで心配性に敬遠されるのは悲しい話です。是非どうぞ」パタ

若海賊「じゃあ、それにしようかな。あとは……そうだな、どれも安くて美味しそうだ……」

艦長「(まあ安いことは確かに安いんですが。この若造が金周りの話を口にするとイラッとくるぜ!!)」ひやー

艦長「(貧乏だし。主に弾薬と居住区の修理で)」ひやー

若海賊「うん……決めた」

艦長「オヤジさーん!」

若海賊「…………」

艦長「ええ。店を気に入ってる理由は他にもあるんです」ひやー

若海賊「(来たかな……)」

艦長「基本、誰も来ないんですよね。ここ」ひやー

若海賊「……」

店主「決まったかね」





ピザ「キャプテーン! 早くして下さいお、船長対談優先なのは分かるけどこっちは野郎オンリーのメインクルー懇親会なんだお! 腹の虫が鳴いてるおー!!」

ノッポ「分かってんなら黙ってろ、それに懇親会って俺達ゃ一応敵同士だろ!」

アルファ1「顔を覚えといた方が、障壁・装甲・キャノピー越しにぶち殺した時の手応えも捗る。白兵長も居れば是非是非飲み交わしたかったもんだがな」

エコー1「変態だーーーーーー!!」◇

ホチ「物騒だなまったく。傭兵上がりでまともな奴に会った試しがない」シュボッ スパー

副官「ほほう、貴方がそれを申されますか」

マッチョ「分かってるな爺さん。俺とホチとハゲの中じゃ、実際んとこキレると一番ヤバいのはこのビールっ腹さ」

ホチ「おいちゃん傷付くなぁクソガキー」フゥ

ホチ「そりゃあお前、この爺さんはそう言うだろうよ」トントン

副官「そういうことですな……」

ホチ「そういうこった」スパー

マッチョ「……?」



艦長「……向こうも待ち兼ねているようですし、とりあえず注文しちゃいましょうか」

若海賊「ああ……」

艦長「話は後で」

若海賊「そう、だな」

艦長「オヤジさん、一升瓶」

若海賊「ああ、僕は――」

艦長「一本ずつ」

若海賊「!?」ビク

艦長「(初な。……おっと)」ククク

艦長「飲みますよね?」

若海賊「い、いや」

艦長「?」

若海賊「僕は、遠慮するよ」

艦長「そうですか……そう」

艦長「それは、弱りましたね……」

若海賊「すまない」

艦長「ではオヤジさん、お酒は取消しで……」

店主「キャプテン一人ででも飲みゃあいいじゃない、そうすりゃ喉もウチも潤うんだがね」

若海賊「そうとも、僕の事は気にしないで」

店主「若殿もこう言ってる。久々だし、ちったぁ安くするよ」

艦長「ありがたい申し出ではあるんですが……あるんですがねオヤジさん、そういうことではなく……」

艦長「……ま、いいでしょう。では一本だけお願いします。料理はいつものと……若さんは?」

若海賊「(初めて名前呼ばれた! って今そんなことはどうでもいいんだ)」

若海賊「さっきのこれと……これとこれとこれを」




店主「……んじゃ、お待ちを」スタン


艦長「……」ひやー

若海賊「……」

艦長「ん……」コクコク

タンッ

艦長「まずは聞かせて頂けますか」ぷは

艦長「誘拐。誰を?」

艦長「或いは何を? ……話によっては譲渡してあげなくもありません」

若海賊「口振りからすると、コンテナの中味はもう見たんだな」

若海賊「そして殺さなかった」

艦長「話が違ったので」

若海賊「と言うと」

艦長「事の発端は、先日信頼している情報筋が寄越してきた垂れ込みでした」

艦長「曰く、『"タイプP"の試作品が一山幾らの小さな運送会社で何処かへ輸送される』……」

若海賊「……新型の軍用を? ガチガチのコンテナを用意するような代物と聞いたが」

艦長「(やっぱり)」

艦長「通信にホログラムを使わないのはいつものこととして、その時の声色がやたら硬い感じでしたので……まあ、警戒はして臨みました」

若海賊「執着しているんだな」

艦長「怪しさ満点だろうが手の届く範囲にあるならぶち壊すまでです」

艦長「例え囮と分かっていても」

若海賊「僕が件の共和国艦隊と手を組んでいたと言いたいのか」

艦長「"鎚と鉄床"? でしたっけ。ファッキン・リパブリックの方が役不足気味でしたが、立場と場所的にはどうしてもこの形にしかならないでしょうね」

若海賊「断言しよう。違う」

艦長「ふーん?」

若海賊「……だが、クライアントは同じな筈だ」

艦長「企業連盟ですか」

若海賊「そうだ」

艦長「企業からの信用を得てる海賊なんて、一握りどころか一抓みもいるかどうかって話ですからね。少なくとも私は貴方しか知りません」

若海賊「……平和のためさ」

艦長「平和ね」

艦長「本当好きですねそれ」

若海賊「嘘は言ってない」

艦長「そうでしょうとも。気に入ってるのならどうぞ吐かし続けて下さい」

若海賊「……」

艦長「と……そう、あの新作ドローン。調べさせてみたら、特殊部隊向けの新作だそうじゃないですか」

艦長「人間の兵士の拡張版と言える人型兵器の柔軟性を持って敵兵器を叩き伏せ、ちょこちょこ残った敵が立て篭もりでもしようものなら内蔵した人間大ロボットの直接白兵で制圧……みたいな感じでしょうか」

艦長「浪漫ですねえ。馬鹿みたい」

若海賊「色々と都合を合わせた結果なのさ」




艦長「都合」

若海賊「聞いてくれるのか? 愚痴になるけれど」

艦長「無人機とはいえ、殆ど自爆特攻でしたからね。件の囮じゃありませんがコストに見合っていない」

若海賊「わざとさ」

艦長「……負け惜しみの愚痴ですか?」

若海賊「違う」

若海賊「先方からの依頼はこうだ。『君の艦に乗っている要人を奪還しろ』、『新型兵器の実地テストも兼ねて』」

若海賊「"沈めろ"ならまだしも、だ。企業は拿捕というものと君らパーサーナックスというものを、共和国軍は仕事の頼み方というものを、それぞれ分かってなかったのさ」

艦長「企業の方はまあ、サラリーマンですし。……しかし、共和国軍もクライアント側でしたか。てっきりどちらも雇われたのかと」

若海賊「結果的にはそうなったんだろうが、その場では体裁を気にしたらしい。居丈高に端金を提示して、僕と副長が座る反対のソファに踏ん反り返りながら名誉がどうとか言っていたよ」

艦長「ああはい」

若海賊「企業連盟の人間の隣に座って、必ず企業連盟の人間の後に追随して喋りながらね」

艦長「ふふっ……」

若海賊「だから共和国の方の金は突き返して、無理解には相応の仕事で応えてやったんだ」

艦長「少しはやるようになった、ということですか」

若海賊「日時の指定までされていたから、準備が出来たことが大きい。適当な都合を付けさせて、まず控えの艦一隻以外は余所へやった」

艦長「(レーダーには引っ掛かっていなかった……かなり遠い所に居たか、近くの小惑星帯にでも潜んでいたか)」

艦長「(何にせよ薄ら寒い話だ)」

若海賊「メールは届いたか? 発信記録にやれるだけのことはやる気があるというスタンスを残しておきたかったんでね」

艦長「毎回毎回……」

若海賊「テストの方は必要最低限のデータを取った。流石に全滅なんてことになったら我が艦載機部隊の沽券に関わるから全部は出撃させず少し残したが」

艦長「貴方の沽券はどうなるんです?」

若海賊「……」


若海賊「そちらも問題ない」


艦長「……」

若海賊「……」

艦長「(合図は無い)」

艦長「年上をからかうもんじゃありませんよ」

艦長「若さん」

若海賊「…………」

若海賊「はは……そうみたいだ」

若海賊「(さて、頼むぞ……)」




【パーサーナックス号機関室】


銀髪「……」じー

親っさん「……」ペラ

銀髪「……」じー

親っさん「……まったく。字など読めないだろうに、邪魔だ」パタム

親っさん「向こうへ行け」

ハゲ「なんであんたに懐くンだろぉーなぁー爺さん。まだ半日と経ってねぇこの短時間で何しやがったんだ」

ハゲ「早漏?」

親っさん「お前に懐かん理由はそこだろうな」ニアなげる スパナ

ハゲ「」ゴィーンッッ

ハゲ「そのスパナの銘を思い付いた。エクスカリパーだ」スリスリ

親っさん「護衛なら護衛らしく入口に立っていたらどうだ、火の玉小僧」

親っさん「というか、怪我をしたのではなかったのか?」

ハゲ「処置はしてある」

親っさん「……無理はするなよ」スク

銀髪「あ……」

親っさん「休憩し過ぎた。仕事に戻る、下っ端共の搬入の段取りを見てくるとするよ」

ハゲ「ここはどうすんだ」

親っさん「いいかハゲ、クスリを吸うなら逐一外で吸え。そのオンボロエンジンと肺に煙一粒の粒子でも付着させることは許さんぞ。分かったな」

ハゲ「粉塗れにしといてやんよ」

親っさん「フン」スタスタ

プシュー ガコン

ハゲ「いってらっしゃぁーい……」フリフリ

銀髪「…………」しゅん

ハゲ「ようパツギン。二人きりだな」

銀髪「……う」ビク

ハゲ「成長がクソ早ぇみてーだが、もう本は読めんのか? 本。これだこれ、さっきウチの老アストナージが読み耽ってたこれよ」ス

銀髪「……いや」フルフル

ハゲ「そうかい……んだよ、大丈夫だよ。クスリが入ってりゃ俺ァ馬鹿になんねーから。良識あるアラフォーがいるだけだ。……分かんないか?」

銀髪「……」こく

ハゲ「(自分が"分からねぇ"ってことは分かる訳か)」

ハゲ「どれ……チッ、フリーのジャーナリストが書いた戦争のインタビューか。爺さんなんでこんなもん読んでやがんだ……」ガタ ドカッ

ハゲ「隣来いパッツィ、読んでやる。膝でも良ぃーけどやだよね?」ポンポン

銀髪「……パ……?」

ハゲ「お前のことだってんだよ。銀髪、パツギン、頭取ってパッツィ~よ」

銀髪「……」ストン

ハゲ「よォし」


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