まどかマギカ本編終了後のSS
※オリキャラ多数
※不定期更新
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1350140261
円環の理――巴マミがそう言っていた。
あれは紛れも無くまどかの願い。
新しい世界の概念、ルールそのものに成り果ててしまったあの子が、美樹さやかの元へ訪れて、また遠くへ連れ去っていく。
その過程に、鹿目まどかの存在を、私は確かに感じ取ることが出来た。
だけど私以外の誰も気付かない。覚えていない。
私が命をかけて救おうとした相手は、いまでは私以外の全ての人にとって、元々存在しないものと同じということになってしまった。
あの子は確かにここで生きていたのに。
私が魔法少女として存在する理由、私の命の対価は、この世界から永久に消え失せてしまった。
うなだれるマミ・杏子と別れ、私は自室に帰ってきた。
「いったいどうしたんだい? ほむら」
「お前は……」
キュゥべえ!
まどかを苦しめた全ての元凶。
許せない、よくも、よくも。
「よくも――」
「?」
無表情の顔。冷ややかな猜疑。
……あー。そうか。
この宇宙人も結局、一切の記憶を失くしてるんだ。
記憶も無ければ感情も無い。
となると、いくら怒りをぶつけても一人相撲にしかならないわね……。
「消えなさい。私は一人になりたいの。お前の顔なんて特に見たくない」
「そうは言っても、今の君は明らかに様子が変だ。
こんな状態で放っておくわけにはいかない。僕にも役目があるからね」
「…………」
「美樹さやかが消滅してから、急に君の様子がおかしくなった。確かに彼女は仲間だったけれど」
「聞こえなかったのかしら。消えなさい。さもないと」
「そういった言葉遣いも、奇妙だ。
少なくとも、仲間の死に動揺してるだけじゃない、そうだろう?
なにより――」
もういい、追い払おう。
……と思ったけど、武器が無い。
というか、盾が無い。
あれ? ええっと、それじゃ私さっきまで、どうやって戦ってたんだろ。
なんだか、記憶が……
「なにより今の君は、魔翌力も、因果も、まるで別人みたいじゃないか。
いったい君に、何が起きたって言うんだい?」
「私は、弓で戦ってたの?」
「どうしてそれを僕に聞くのさ。
どうも君は、本当に別人になってしまったと、そういう事なのかな」
「ええっと、なんというか、その」
別人。
確かに、そうとも言えるかもしれない。
この世界での私は、あの子と同じように、弓を使って魔獣と戦っていた。
何度も繰り返したこの一ヶ月の経験の中に、弓で戦った私もいて、だけど時間の流れや私の主観を無視して、急に今日、今の私と記憶が繋がって、いる?
「……なんというか、その、ちょっと記憶が混乱しているというか……」
「少し状況を整理した方が良さそうだね。
知っての通り、僕の役目は君達魔法少女をサポートする事。
事情を話してくれれば、力になれるかもしれないよ」
「私は違う世界から来たの。
この世界と良く似た、それでいてルールの違う世界」
「どういう意味だい?」
「そのままの意味よ。そこには魔獣なんて居なかった。代わりに魔女が人を襲っていたわね」
「君の言っている事は、俄かには信じ難いね。
まず魔女って何だい?」
魔女って何、って。
インキュベーターが、それを私に聞くの?
……駄目だ、この話はやめにしよう。
このまま続けるとイライラに負けてしまう。
「その話は、また今度。
それより今は私の知りたい事を教えて」
「そうか。残念だね。
それじゃ、知りたい事って何だい?」
「魔獣についてイチから教えて。
それから私が今までどうやって戦っていたのか。
それから……」
「それから?」
「この世界のこと、前の世界と何が変わったのか。
何が変わっていないのか。
この先、この世界はどうなるのか。
魔女がいないなら、ワルプルギスの夜は」
「待ってくれ。僕には“何が変わったか”なんて分からないよ。
君の言う“前の世界”の事も分からないし、魔女なんてそもそも知らない」
「まあ、そうでしょうね」
「調べたい事があるなら、一つずつ、個別に挙げてもらうしかないね。
一番気になるのはとりあえず、魔獣の事でいいのかな?」
「勿論、それも気になるけど……」
「?」
「もういいわ。これはあなたに聞いても仕方ないから。
明日学校へ行き、それから帰りに寄り道をして、それで確かめる。
そうしましょう」
翌朝。
いつも通り支度を済ませて部屋を出る。
あのケダモノは朝から我が物顔で居座っていた。
一人になりたいと言ったはずなんだけど、まるで聞く気が無いわね。
「ほむら、今日は随分急いでいるね」
「え?」
そんなつもりは無かったけど……
ああ、そういうことか。
「別に急いでないわよ。
そりゃ昨日の私はちょっとドン臭かったかもしれないけど……
今の私は、これが普通なの」
登校するなり、真っ先に教室を確認する。
やっぱり、まどかの席は無くなっていた。
当たり前といえば、そうなのかもしれない。
だけど、願わくば全部悪い夢であってほしい、そう思う私もいた。
それから生徒達が集まって、ホームルームが始まっても、不意にあの子が現れるような奇跡は、勿論起きなかった。
クラスメートが減った教室で、だけどそれ以上何も変わらない生活。
「さやかさん、今日はお休みですのね」
志筑仁美は何も知らない。
さやかが消えてしまった事も、私が変わってしまった事も。
元々、私には友人と呼べる人間が極端に少ない。
まどかも、さやかも居なくなってしまった今、多少なりとも交流のある人間はもう志筑仁美だけ、ということになる。
今後、彼女とはどう付き合っていくべきなんだろう。
というか、私の態度が変わった事を不審がられないかな。
そういう意味では、目下警戒するべき対象なのかもしれない。
彼女は今日に限ってよそよそしいと言うか、口数の少ないままに終始した。
放課後になって、どっと疲れを感じた。
肉体の疲労などはソウルジェムの魔力でどうにかしてしまえばいい。
だけど、この倦怠感はそういうわけにもいかない。
無理やり足を進めて、一人で下校する。
確認したい事はまだまだある。休んでいる場合じゃない。
そう、確認しなければ。
今日みたいに、私はこれからずっと、あの子が消えてしまった証拠を一つ一つ確認しなきゃいけない。
「寂しい……」
思わず独り言が漏れて、それから自分が今、一人じゃない事を思い出した。
「寂しい? それで君は悩んでるのかい?」
独り言に食いつく無神経さは、例え感情が無くても許されるべきじゃないと思う。
返事はせずに弓のリムで叩きつける。
別に当たっても良かったけど、ケダモノらしい俊敏さでかわされてしまった。
「仲間が欲しいなら、マミを頼ってみたらどうだい?
同じ学校に通ってるという事は覚えてるだろう?」
「そういう意味じゃないんだけど……」
まあ、いいか。
言われてみれば、今一人で戦うのは不安だ。
巴マミと連絡をとっておくのは正解かもしれない。
テレパシーの範囲内には……いない。
携帯の番号は……登録してあるわね。よしよし。
「もしもし、マミ?」
「暁美さん? どうしたの?」
「待ち合わせは――」
「――時に――の前で」
「オッケー。それじゃ、よろしくね! またあとで」
これでよし、と。
昨日別れた時よりマミの声が元気だった。
さやかの件で落ち込んでいるはずだけど、ひとまず心配いらない、かな。
……そういえばアッチは大丈夫だろうか。
「杏子にも携帯持たせるべきかしら」
「彼女は制度上、携帯電話を購入できないんじゃないかな」
マミと会う前に、寄り道をする。
通学路沿いにある河川敷。
ここは時々、あの子の家族が散歩に来る。
遺された家族に会って何かしようってわけじゃないけど。
ただ遠巻きに見て、あの子がいない事を確認する。
それだけの用事。
河原を見渡すと、案の定、父親とタツヤ君がいた。
洵子さんはまだ仕事だろうな。
あの両親は、我が子が消えてしまったという記憶さえ無い。
悲しむ事もできない。
それもあの子の優しさなのかもしれないけど……
もし、あの子をこの世界に連れ戻す事が出来たら。
それは私のためだけじゃない。
この家族だって、喜んでくれる。
マミも、杏子も、さやかだってきっと、喜んでくれる。
どうしてあの子は消えなきゃいけなかったんだろう。
そうまでしてあの子が守ろうとしたのは、この光景なの?
独り言が漏れそうになって、堪える。
周囲を確認すると、やっぱりケダモノが後をつけてきていた。
「記憶が無い?」
マミは小さいノートを片手に、待っていた。
受験勉強が忙しいらしい。
この人は以前、魔法少女に無駄な時間は無いとか言っていたっけ。
“やり直し”の出来なくなった今なら、彼女の言うことも分かる気がする。
まあ、まだノートを持ち歩こうとは思わないけど。
「記憶が、無いんじゃなくて。区別が付かなくなったというか」
「?」
「説明がしにくいんだけど、とにかく魔獣退治の手ほどきをしてほしいの」
「彼女の記憶に異常が認められるのは確かだ。
マミ、僕からもお願いするよ」
ケダモノが口を挟む。
異常扱いされた事は、この際不問にしましょう。
「良く分からないけど……やる事は分かりやすいわね。
いいわ。もう一度暁美さんに、イチからレクチャーしてあげる」
そう言ってウィンクするマミは妙に活き活きとしている。
ウィンクが許されるのはこの人くらいでしょうね。
こういうの、男子なら少しドキドキしたりするのかもしれないけど。
「ええ、お願いするわ、巴さん。
一度教わった事なのに申し訳ないけど、本当にイチからお願い」
すっかり日も暮れて、空には蝙蝠が舞い始めた。
今日、魔獣の出現が予想されるのは街郊外にある共同墓地。
この場所で魔獣を待ち構える。
「予想通りだね。魔獣達の登場だ」
辺りに瘴気が立ち込める。
「十分に瘴気が広がるのを待って。
あの中に侵入して戦いが出来るくらいに、広さを確保するの」
だんだん思い出してきた。
そうだ、あの霧のような瘴気は、内側に結界のようなものを持っていたはず。
瘴気が広がり、そこかしこに魔獣の影が浮かび始めている。
「頃合いね。行きましょう」
マミの合図で、一斉に変身する。
瘴気を潜ると、見覚えのある亜空間が広がっていた。
瘴気があった範囲が、ドーム状に、元の墓地と同じ地形を形どる。
逆に瘴気の外側は、今は霧がかかったように見通せなくなっている。
「ここが魔獣の領域。彼らが住む別次元と、私達の世界との中間にある場所よ」
「景色は瘴気の外と同じ。ただしここには私達以外の生物が一切いない」
「そう、そう。思い出したかしら?」
「おかげさまで」
墓地の一角がひしゃげて、モザイクがかった不安定な空間から魔獣の群れが現れた。
数は五体。
どれも体長4メートルほどの巨躯、白い体に白い衣、節々をモザイクのような歪みに蝕まれて、苦悶するかのような鳴き声を上げる。
「気をつけて。来るわよ!」
魔獣が一斉に手をかざし、何かを飛ばす。
無数の細い糸だ。
これは覚えてる。魔獣の基本的な攻撃で、直接的な威力は無い。
「生気を吸い取られるわよ。避けて!」
「了解」
かわしきれない糸に左腕をとられる。
けど、これも問題無い。
手にとった鏃でこれを切断する。
要は捕まらなければ良いのだ。
「小手調べは終わりね」
「マミ、お願い」
露払いをマミに任せて、私は撃ち漏らしを狙う。
弓を番え魔力を込めると、鏃から炎が立ち昇る。
マミが何故かこちらを振り向いて、きょとんとしている。
? ……もしかして、聞こえなかった?
「オッケー! 任せて」
もう一度同じ事を言おうと、口を開けたのと同時、何故かマミは満面の笑みで返事をした。
無数のマスケット銃を浮かべて“必殺技名”を叫ぶ。
「ヴァロット・ラ・マギカ・エ・ドゥー・インフィニータ!!」
いつ見ても馬鹿げた火力。
強い魔力が込められたそれは、銃の一斉射であるのに大爆発を引き起こす。
「お墓が荒れちゃったじゃない」
「いいの。瘴気の外に出れば元通りだから」
逃げ遅れた魔獣が塵と化す。
生き残ったのは三体。
散開した位置で各々に攻撃準備を始める。
魔獣達が自らの頭部、モザイクのような歪みから“武器”を取り出した。
巨体に相応しい大剣がひとつ。
それから見覚えのある弓、シンプルな形のマスケット……
「銃?」
「魔獣は私達のマネをするの。性能は同じとは限らないけど」
「ああ、それじゃ、あの剣は」
「美樹さんのつもりかしら」
その大剣持ちがいち早く突進してくる。
息を合わせるように、残り二体の援護射撃。
「良いチームワークね。だけど!」
私が矢に込めた魔力は十分。
とっておきのそれを一斉に放ち、魔獣の射撃を弾き返す。
矢の一つが、剣を持った魔獣を貫いた。
残り二体。
それぞれの得物で、射撃戦を交わす。
残りの魔獣はなかなか倒れない。
もう何本も矢を撃ち込んだのに、どうもあの巨体に相応しくタフらしい。
「魔獣ってね。結構あたまが良いのよ」
銃撃戦を繰り広げながら、世間話のようにマミが話し始める。
「さっきみたいに武器だけじゃなく、戦術やチームワークまでコピーしようとするし……
こちらが同じ技ばかり使っていると、的確に弱点を突いて反撃したりもするの」
喋りながらも攻撃の手を緩めない。
マミの銃弾も既に相当な数が撃ち込まれている。
「だけど、ちょっと表面的過ぎるのよね」
突然、魔獣が二手に別れた。
私とマミを一直線上に捉える位置。
――前後からの同時射撃!
友軍相撃を招くその位置取りは、人間同士の戦闘なら有り得ないはずのもの。
ここぞとばかりに高出力の攻撃が、来る!
「しまった――」
「暁美さん!」
向かい合った魔獣が、互いに面制圧を成し得る大量の矢弾を射出する。
おそらく、マミは避けない。
敢えてリボンの防御壁を使い、弾を受け止めるはず。
私に背後からの弾を浴びせないために――
「やるしかない!」
弓を番えて、迎え撃つ。
こんな早撃ちでは十分な威力を出せないかもしれないが、それでも。
命中する軌道にあった矢を何本か相殺。
全部は弾ききれない。残りの矢は甘んじて受ける。
矢を体に浴びる瞬間。
咄嗟に左手が動いた。
もう盾を出す事は出来ないのに。
条件反射でしかないはずの、その動作で――
「私の武器が銃だけだと思ったのが間違いね」
私の背後で、マミは魔獣の銃弾を全て文字通り“弾き返して”いた。
マスケットの魔獣は自らの放った銃弾と、弓の流れ弾を浴びて四散している。
それはいい。それは予想通り。
予想だにしなかったのは私自身のほう。
どういうわけか、私に迫った魔獣の矢は止まった。
と、いうより、叩き落された。
私の左手、いや、左手の先で、固い感触と共に矢を叩き落したものがある。
白い翼。
私の意思に呼応するように現れたそれは、光の粒子を煌かせて、悠然とはためいている。
「暁美さん、それは?」
「私が聞きたいくらいだけど、あなたにも見覚えが無いみたいね」
魔獣がまたも、矢を放つ。
今度は迎え撃つ必要は無い。
最小限の動きでかわし、反撃を――
「えええ!?」
少し跳んだだけのつもりが、勢い余って木の幹に激突してしまう。
「うぐー」
「危ない!」
魔獣の攻撃を庇って、マミの防御壁が私の前に割り込む。
「落ち着いて、暁美さん。
もう一度集中して、跳んでみて」
うーん、そうは言っても……
この翼。
多分あの子の力だ。
前の世界で最後の魔女を倒した時、あの子の背中にも翼があった。
それだけ強い力を持った翼を、私なんかがコントロールできるんだろうか。
「暁美さん!」
「もう、分かったわよ!」
魔獣の攻撃に合わせて、跳ぶ。
いや、跳躍ではなく、私は飛翔していた。
「凄い……!」
魔法の力の塊である翼。
この翼が生み出すのが、ただの浮力ではないという事はすぐに理解できた。
ひとつはためかせるだけで有り得ないほど急激な機動もすれば、空中停止さえ出来る。
この翼があれば決して魔獣の攻撃を受ける事は無い。
絶対的優位。
最後の一体は、空からの射撃を浴びせて難なく撃破した。
「ありがとう。巴さん」
グリーフシードを分けながら、私達は腰を落ち着けて話す。
場所が墓地でなければ紅茶のひとつでも欲しくなる所、かもしれない。
「礼には及ばないわ。
暁美さん、凄い力を持ってるのね」
「ほむら、君はやはりあの時から、別人のような魔力を手にしているね」
「たしかに、これは私の力じゃない」
「どういうこと?」
「私の、大事な友達が使っていたの」
「?」
「私にも理由は分からないんだけど……こういうこともあるのね」
「ところで、暁美さん?」
「なに?」
「魔獣と戦ってる時、私の事マミって呼んでくれたでしょ?」
「? そうだったかしら」
言われてみれば、以前の癖で呼んでたかもしれない。
この世界の私、昨日までの私に合わせて、名前は苗字で呼ぶようにしてたんだけど。
「呼んでたわよ。
私、なんだか凄く嬉しくって。
良かったらこれからも下の名前で呼んでほしいなあ、なんて……」
「え、ええ。
あなたがそう言うなら構わないけど」
「ホントに?」
「嘘なんてつかないわよ、マミ」
「ありがとう! これからもよろしくね、暁美さん!」
私の事は苗字呼びなんだ……。
しかも、本当に嬉しそう。
うーん。
この人は、これでいいのかな。
マミと別れて、帰宅。
色々あったけど、だんだん分かってきた。
どうもこの世界では、前の世界であった事が、何かしら“すり替わっている”らしい。
あの子がいなくなって、代わりが私。
魔女がいなくなって、代わりに魔獣。
だとすると、魔女が呪いを生んだその時期・場所に、魔獣も現れる?
ワルプルギスの夜が現れるのは約一週間後。
同じ時期に、同じ規模の魔獣が現れるとしたら……。
何か対策を打たないといけないわね。
投下終了
次は明日投下、できればいいな
目欄test
乙
コピーか
乙、映画見終わってすぐに改変後のSS見れるのが嬉しい
乙
>>22
>「うぐー」
なんかワロタ
かなり面倒だな、魔獣
「うーん」
「さっきから何してるんだい」
「リボンの結び方を考えてるの」
今更おさげには戻せないし、ツインテールはちょっとイメージが違うかな……
「君達の年頃の子はそういう事に拘るって知ってるけど、随分と時間をかけるね」
「ええ」
「リボンを結ぶ事がそんなに大事なのかい?」
「まあね」
私にとっては大事な事。
あの子の形見を身につけて、あの子の代わりになる。
この街が危機にあるなら、私が代わりに守るんだ。
「キュゥべえ、あなたは魔獣の発生を予想できるのよね」
「ある程度はね」
「一週間後、見滝原に大規模な数の魔獣が発生する。
間違いない?」
「確かにその可能性は高いけど、断言は出来ないね。
霊脈の流れや過去のデータから言ってほぼ間違いない、とはいえ予想はあくまで予想さ」
「結構よ。それだけ聞ければ十分」
……うん、やっぱりいつもの髪型が落ち着く。
リボンはカチューシャの代わりに結べばいいかな。
「これでよし、と」
「良いのかい? あまり変わってないように見えるけど」
「いいの。
さ、出掛けましょう」
「どこへ行くんだい?」
「となりまち」
「佐倉さん、元気かしら」
「珍しいな、アンタが私に会いに来るなんて」
佐倉杏子。
今の彼女は私達と協力関係にある。
魔獣に対抗する戦力としては欠かせない一人。
「あなたこそ、公園で子供と一緒なんて、珍しいわね」
「キョーコ、おともだち?」
この子は知っている。
千歳ゆま。
今の私は知らない事になっているけど、何度か杏子と共に戦う姿を見ている。
「あぁ、まあそんな感じだ。
ゆま、ちょっとあっちで遊んで来い」
「はーい」
「あの子はどうしたの?」
「あーその……。
ちょっと前に、ゆまが魔獣に襲われてた所を助けたんだ。
色々あって、アタシのとこに戻ってきちまった」
「あの子も魔法少女なの?」
「! なんでそう思う」
「違うなら別にいいけど」
「いや、そうなんだ。
ゆまはつい昨日契約しちまった……クソッ」
見るからに苛立ってる……。
まあ、さやかの事があったばかりでコレじゃあ、無理もないわね。
「ひとつ頼みがあるのだけど」
「……今、そんな余裕があるように見えるのかよ」
全然見えない。
けど、杏子は助けを欲しがるタイプでもないし。
言う事は言っておきましょう。
「一週間後、見滝原に魔獣が大量発生する。
あなたにも協力して欲しい」
そっぽを向かれてしまった。
でも話を聞いてないわけじゃない。
「私とマミだけじゃ敵わないかもしれない。
それでも、あの街を見捨てる事はできないから」
返事は無い。
喋る代わりにお菓子を放り込んで、口を動かしている。
「お願い、佐倉さん」
「半分」
「?」
「グリーフシードの半分はアタシんだ。それから」
話しながら、ゆまの方を見る。
「あいつには、この話はするな」
「それはそうとアンタ、ずいぶん雰囲気が変わったな」
「そう?」
「あぁ。
そういやさやかが死んじまった時も、アンタちょっと変だったな」
「私にも色々あるのよ。
というかね、佐倉さん。
むしろあなたの方こそ大丈夫かしら」
「杏子でいい」
お菓子を一包み渡された。
……“やっちゃんイカ”?
「どのみち落ち込んでる場合じゃない。
ゆまのことも魔獣のことも、何とかしてやるさ。
死んじまったやつのためにも、な」
杏子と別れて、帰宅。
杏子は千歳ゆまを巻き込まないようにしている。
気持ちは分かる。
あんな小さい子を危険な戦いに連れて行くのは、普通なら神経を疑われる行為だけど。
だけど、あの子は一人の魔法少女として、軽視できない戦力でもある。
猫の手でも借りたい今、ゆまの参加を断られたのは痛手になるかも……。
……あ。
そういえば、あの二人組みはどうしてるんだろう。
美国織莉子と、呉キリカ。
以前の時間軸では、ゆまが契約した裏では織莉子が糸を引いていた。
既にゆまが契約しているということは、織莉子も魔法少女として、能力を使っている?
「キュゥべえ、いるんでしょ?」
「なんだい?」
「美国織莉子について教えて。
彼女は既に契約してしまったの?」
「僕達にもルールがあるんだよ。
相手の同意無しに情報を漏らす事はできない」
「その言い方だともう契約は済んでいるみたいね」
「別にそうとは限らないよ。
向こうが普通の人間でも、魔法少女でも、僕達は必要以上に干渉しない。
そういうルールだからね」
「融通の利かないやつね。
仕方ない。直接会うしかない、か」
「ただ、これだけは言えるよ。
織莉子も君に会いたがってる」
「……それ、答えを言ってるようなものじゃない」
投下終了。
次月末になるかも
興味
乙
ただ
>>13
>洵子さんはまだ仕事だろうな。
×洵子
○詢子
乙
魔女が消えてマミは生き残ったのにゆまは契約か……
いまのとこさやまど以外は消えてるのは居ない感じか
最近改変後増えたからごっちゃになる
どうなるんでしょうねぇ?ここの未来は
乙乙
結構面白いから期待
更新できねえ! 上で書いたとおり月末まで待って
なけなしの時間で作ったMAD風予告↓
「私はあの子を一人にしたくないし、勿論、あの子を裏切る事もしたくない」
「私は大切なお友達を取り戻したいんです。どんな目に遭っても構いません」
「――悪魔ですって?」
「君達人間の宗教や死生観で言えば――“煉獄”という概念が近い」
「君達は、手塩にかけて育てた植物を間引きするよね」
「望むなら、そう、ある概念を打ち消す事だって、出来るかもしれないよ」
「最期に少しだけ、少しでいい、時間がほしい」
「あたしの命に意味があるとすれば、それが今」
「アタシの命に意味があるなら、アイツを死なせちゃダメなんだ!」
「例え私の命が燃え尽きても、あいつだけは――」
「ようこそ、黒い翼の魔女さん?」
前回までのあらすじ
魔獣が何か武器とかコピーして襲ってくるSS
近々、魔獣大発生
杏子と共同戦線の約束
ゆまちゃん契約済み
織莉子も契約済み?
正直言ってあの二人に会うのは、あまり気乗りがしない。
繰り返しの中で、あの二人は時々私の障害となっていたし。
まどかの命を奪った事も忘れたわけじゃない。
なにより今の私にとって、私の敵となり得るという意味では最大限に警戒すべき存在。
以前、織莉子が私達と敵対した動機、魔女の存在自体は失われている。
とはいえ、さまざまな真実を見通してしまう彼女の能力と。
救世だ何だと大言壮語を大真面目に言い放つ、あの思考。
彼女が何らかの未来を視た結果、私に敵意を持つ可能性はゼロじゃない。
そして、その動機はもとより、その能力が大問題で。
あの二人は私を殺し得る数少ない魔法少女だ。
時間を操る事の出来ない今、私は彼女達に勝てないかもしれない。
だから、出来る事なら、極力あの二人には接触したくない。
というのが本音なんだけど……。
「織莉子が私に会いたがってる、ですって?」
「そうだよ、ほむら。
彼女は彼女の魔法によって、暁美ほむらという特異な魔法少女の存在を知っている」
「彼女は今も私を探しているの?」
「それは違う。彼女は君が自分から会いに来るのを待っているんだ。
というより、知っていると言えばいいかな」
私がいずれ会いに行くのを、知っている?
「確かに、魔獣に対抗する戦力は欲しい。
だけど、敵か味方も分からない相手に、のこのこ会いに行くとは限らないでしょう」
「君がなぜ織莉子に対して殊更に警戒心を見せるのか、分からないけど。
もし彼女を敵視するのであれば、尚更、すぐにでも会いに行くべきじゃないかな」
「どうして?」
「君は普段人間として生活している以上、どうしても隙がある。
学校に通う時、家で休む時、魔獣と戦っている最中。
敵対する魔法少女がいて、それを放っておくなら、遅かれ早かれ寝首をかかれる事になる」
「それは、確かにそうね」
「尤も、彼女も君と争いたいと思ってるわけじゃない、と僕からも言っておくよ。
君が心配事を解消したいなら、君がするべき努力は、織莉子を避ける事じゃない。
織莉子に会って、早いうちに協力関係を取り付ける事だ」
「――で、どうして尾行なんかしてるんだい?」
「呉キリカは手っ取り早く織莉子に辿り着くための手がかりなの。
同じ学校に通ってるのも好都合ね」
「だから、どうして尾行なんかしてるのさ」
「面と向かって織莉子に会わせろ、なんて言えないでしょう」
「どうも君は、猜疑心が強すぎるみたいだね」
そうは言っても、あの二人組みに対して、警戒しても警戒し過ぎるという事は無い。
下校途中、キリカはなにやら落し物をしたらしく、道端を捜索し始めた。
素っ頓狂な奇声で「愛は死んだ」とか喚き散らしつつ。
すぐ足元には明らかに今落としたらしい猫のストラップが顔を覗かせている。
なんというか、これは。
なんとなく全体的にわざとらしいというか……
マヌケの振りをして、尾行してる私をおびき出そうとしているんだろうか。
落し物を拾いたくなる気持ちをグッと堪えて、身を潜める。
芝居がかった捜索を小一時間は観察した後、ようやく目当ての物が発見された。
織莉子の自宅。
高い石塀と申し訳程度の防犯装置。
必要以上に広い庭を横切って、キリカの姿が屋敷の中へ消えていく。
塀を越えるまでもなくテレパシーの圏内には入った、と思う。
隣家の屋根によじ登り、屋敷内を見渡す。
……まるで不審者みたいだけど、魔法少女にはこういう努力も必要なんだ。
うん。
『美国織莉子、聞こえる?』
『やっと来てくれたのね。
そんなところにいないで、どうぞ屋敷までいらっしゃって。
今、お茶を用意しているの』
それは、困る。
いざ戦いになったら、私は逃げる事を前提に考えてる。
退路を断たれないように、これ以上近づく事は避けたい。
『折角だけど、お断りするわ。
話をするならテレパシーで十分でしょう』
『客人。
織莉子は一緒にお茶をしたいと言ってるんだ。
礼儀を弁えない客人は、客として認めないぞ』
『ちょっとキリカ、やめなさい。ね?
ごめんなさい、この子、気が短くって……』
『ああっ! またそうやってキミは私のこと子供扱いして!』
ウーだの、アーだのと、キリカの呻き声が聞こえる。
なにかじゃれ合っているようだけど……
こういう間の抜けた振る舞いをしてる当人が、一皮剥けば残虐な殺人者になるという事を、私は知っている。
それを思えば薄ら寒い気持ちこそあっても、
『でも、ね。
出来れば直接会いたいというのは、私も同じ。
それが私達の友好のしるしになると、貴女もそうは思わないかしら?』
同じ卓に着こうだなんて、とても。
「…………」
「ほむら、君は彼女達と戦いに来たわけじゃないんだろう?」
「出来れば、ね」
「友好な関係を望んでるのは双方同じだ。
たかがお茶くらい、応えてあげればいい。
むしろ好都合じゃないか」
「そのたかがお茶が、私にとっては命がけなの……」
( ・ω・)モニュ?
結局、織莉子の招待を受けて、屋敷内へあがらせて貰う事にした。
手入れの行き届いた薔薇園。
庭の中央には白いテーブルセットと、織莉子が行儀良く収まっている。
傍らのキリカは従者のごとく、仏頂面でこちらを見つめている。
二人とも魔法少女の姿を解き、くつろいでいる格好。
という事は、おそらく。
あの遅延魔法も“仕込まれていない”。
一応の安全は確保できる、と思って良さそうね。
「ようこそ、黒い翼の魔女さん?」
「魔女ですって? 私が?」
「いつか、そんな風に呼ばれる未来が来るわ。
気を悪くしないでね。
どんな未来でも貴女は貴女のままなのだから」
「その言葉の意味を、あなたは知ってるのかしら」
「?」
この世界に魔女はいない。
織莉子が魔女の存在を知っているはずも無い。
魔女呼ばわりされるのは不本意だけど。
どうも織莉子の反応を見る限り、深い意味は無いのでしょうね。
「分からないなら、いいの」
「そう?
そうね、それじゃ、どうぞお掛けになって」
「挨拶が遅れたわね。
私は美国織莉子。
この子は呉キリカ。
知っての通り、二人とも魔法少女よ」
席に着くと、どうにも、ますます落ち着かない。
かつて殺し合いを演じた相手とお茶会だなんて。
正直言って、生きた心地がしない。
ただ挨拶を返すだけでも引き攣ってしまいそうで、もどかしい。
「…………」
「今後とも宜しくお願いしますわ、暁美ほむら、さん?」
「……ええ、こちらこそ」
「それで用件は……そう、魔獣の大発生、ね……」
こういう時の彼女に調子を合わせて喋るのは、酷く骨が折れる。
私が切り出す前に、予知で話の内容を察してるんでしょうけど。
どうも予知が断片的らしく、内容が飛び飛びで。
「確かに、私は貴女の力になれる。
けど、それには条件を付けさせてもらうわね」
「条件?」
「まず、情報交換をしましょう。
貴女の事を教えて。
それから、今後先々の将来まで、末永い友情を誓い合いましょう」
「織莉子!」
突然、キリカが声を上げた。
「織莉子! キミがこんなやつに興味を持つなんて!
私だけじゃ満足できないのか!?」
「あらあら、嫉妬させてしまったかしら」
「織莉子、私はキミ以外の情報は何もいらない。
キミ以外の友人もいらない。
キミに私と同じようにしてほしいとは言わないけど」
「けど?」
「できればそうであってほしいんだ!
その、つまり、なんだ」
「心配しないで、キリカ。
私が貴女を思う気持ちも、未来永劫、変わる事はありませんよ?」
「うぅー」
「コホン」
わざとらしく咳払いをひとつ。
二人だけの世界に居た二人が、一斉にこちらを見て居住まいを直す。
「キリカ、貴女はいつだって私の事を理解してくれる。
協力してくれる。
今度だって、そうでしょう?」
「んぐ」
慈母神のような、とでも言うべきかしら。
織莉子の柔らかい笑顔。
それと私の顔を交互に見比べてから、キリカは私を思い切り睨んだ。
「やいやい! 私と織莉子の邪魔をしようたって無駄だからな!
覚えておけよ、この“間女”め!」
「ええ、まあ、そんなつもりは、別に」
織莉子はニコニコしながら、慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。
巴マミの部屋で見るものより、どことなく高級な感じがする。
「暁美さん、私達が手を組む事には大きな意味がある。
貴女の存在は私という協力者を得て、初めて意味を成すのよ」
「それは、随分と眉唾ね」
「私はこの世界の未来を何度も繰り返し視て、私の“意味”を探した。
現在を動かしては変わる未来を視て。
未だ現在と繋がる事の無い、可能性の未来をも探し続けた」
……ご苦労な事ね。
だけど、この世界にあの子がいない以上、その探し物には終わりが無い。
「それで、あなたの探し物は見つかった?」
「いいえ。
だけど、これまでずっと、私の知るどの未来にも“貴女”は居なかった」
う。
「貴女はある時を境に、突然、現在に現れて、あらゆる未来を覆い尽くした。
他のどんな魔法少女にも出来ない芸当よ。
私の能力でも識る事の出来ない何かが、貴女を現在に連れてきた……そうよね?」
「貴女はあらゆる未来で、世界の中心にいる。
貴女の意志で世界を変えることだって出来る。
私のこの能力、私が生きる意味もまた、貴女の行く末にあると言っていい」
世界を、変える?
「ですから、情報交換をしましょう。
私は魔獣の発生も、魔獣以外の脅威も、あらかじめ識る事が出来る。
私の能力で貴女の未来を、より善い方向へ導いて差し上げますわ」
紅茶が私の手元に差し出される。
配って回るのは織莉子。
従者のような佇まいのキリカは、実際には突っ立ってるだけだった。
私に目を光らせてるのは相変わらずだけど。
「美味しいわね」
「あら、ありがとう」
「私の身の上は、出来ればあまり話したくない。
おいそれと信じてもらえる内容ではないし。
いちから話すと私自身がウンザリしてしまいそうだもの」
「話せる事からで、構わないわ。
お茶を飲む間だけでも、少しでも。
私達が会うのも、これが最後というわけではありませんから」
随分、甘い話に聞こえる。
今の彼女からは、敵意どころか、好意さえ感じられる。
演技かもしれないけど、少し試してみようかな。
「魔獣がいつ発生するのか、まずそれを教えて。
私の話はその後」
「貴女が気にかけている魔獣の発生は、三日後。
貴女が予想した一週間よりもずっと早く、彼らは現れるわ」
あっさり返ってくる答え。
どうも本当に信用されてる?
いや、でも、それより。
「三日?」
そんなはずは。
その魔獣がワルプルギスの夜の代わりだとしたら。
もともとのワルプルギスの夜が、何日も出現時期を早めることなんて、一度も無かった。
私の知る未来と、ズレてきている?
「規模は、私達が今までに見た事も無いほどのもの。
“貴女”も同じかは、分からないけど」
「私の知っている通りなら、その戦いで多くの魔法少女が命を落とし、見滝原は壊滅する。
あなたの予知でも同じかしら」
「? いいえ。
確かに犠牲を出す可能性もゼロではないけど……
決して貴女達が敵わない相手じゃない。
街が壊滅するだなんて、まず有り得ないわね」
拍子抜けだ。
どうも命懸けの戦いになると思ってたのは私だけで。
蓋を開けてみれば消化試合もいいところ、だったらしい。
「取り越し苦労だったみたいね」
「安心できた?
でもね、貴女はもっと先の未来で、より多くの魔獣と戦う事になる。
まるで貴女が魔獣を惹きつけるみたいに。
だからこそ、貴女には私の予知が必要なのよ」
織莉子はニコニコしながらこちらを見ている。
約束通り私の事を話せという、無言の圧力だ。
キリカの目も一層、ギラギラし始めた。
「それじゃあ話すけど……」
深呼吸をしつつ、考えをまとめる。
突拍子も無い話になるのは避けられない。
できるだけ簡潔に、脚色をせずに話す事にする。
「私は違う世界から来たの。
この世界と良く似た、それでいてルールの違う世界」
庭の隅でキュゥべえが尻尾を振っている。
こいつも私の素性が知りたくて付き纏っているんだろう。
こちらとしても別に隠す理由もないけど、説明が難しいのよね……。
「是非また、いらしてね」
魔女の事。
ワルプルギスの夜の事。
同じ時間を繰り返した事。
掻い摘んだ話を済ませて、そそくさと屋敷を後にする。
それにしても。
「穏便に事が済んで、良かった……」
溜息が漏れる。
緊張から解放されたからか、自分が脱力してるのが分かる。
「君は本当に疑り深いね。
生き残るためにはそういう覚悟も必要だけど、度を過ぎれば害になるよ」
「あなたには分からないのよ」
というかこれでも、有り得ないほど歩み寄ってみせたと思う。
以前の私なら、ほんの少しの危険だって見過ごす事はしなかった。
私やまどかの命を少しでも脅かす敵がいれば、迷わず排除する事を考えたはず。
今の私は違う。
自分でも不思議なくらいに、変わってしまった。
きっと、命の価値が変わったんだ。
私の命も、他の魔法少女も、命の意味が変わった。
そう、私だけが生き残る事を考えても、もう意味は無いわけだし。
他の誰かの命を軽く扱えるわけも、無くなった。
第一、今の話相手に限って言えば、また別次元の問題で。
「まったく、個体の生存本能が合理的判断を妨げるだなんて。
つくづく人間は不便な生き物だね」
「宇宙が何度ひっくり返っても、あなた達とは分かり合えないでしょうね」
このケダモノに限って言えば、人間の死の概念自体、理解できているかどうか怪しい。
こいつにだけは私の心労をとやかく言われたくは、ない。
今日の投下終了
次は来週末かな
遅筆でスマン
一応今までエタったことだけは無いから、待てる人は待てばいいとおもうよ!
乙
やはり改変後は強い魔法少女は魔女と呼ばれる運命か
(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら
乙
>>70
単に強いだけじゃなく、比類なく長く活動してるとか、伝説級の英雄とか、
よほどの特別な魔法少女だけが魔女と呼ばれるんじゃないかと考えた方が燃える気がする。
逆に、災厄を呼び寄せる特異点のような立ち位置を持ってしまい、
災厄の象徴のように魔女と言われる設定だと、悲劇性が高まって、別の意味で燃えるかもしれない。
日付変わった後、深夜に投稿します
前回のあらすじ
オリキリとお茶会
織莉子がデレ気味
魔獣の発生を予知
魔女、ワルプルギス、ループについて話す
クッキー忘れてageてしまった
ゴメン
wwktk
「ふうん、なるほどね……。
確かに君の話は、一つの仮説としては成り立つね」
「仮説じゃなくて、本当のことよ」
夜も更け、頭上には星の見えない真っ暗な空。
代わりに、眼下には街の灯りがきらきらと踊る。
この見晴らしの良い高層ビルの屋上は、魔獣の影を探すにはいかにも好都合だ。
「だとしても、証明のしようがないよ。
君が言うように宇宙のルールが書き換えられてしまったのだとすれば、今の僕らにそれを確かめる手段なんてない訳だし」
織莉子の屋敷を後にしてから、キュウべえはしきりに“前の世界”の話をしたがる。
特にまどかの事、宇宙のルールを書き換えたというところに、とりわけ食いつきが良い。
そのわりに人の言うことを信じようとしないのは、腹立たしいけど。
そうこうしているうちに、瘴気が辺り一帯に広がった。
そこかしこに魔獣の影。
そろそろ奴らも動き始める頃合かな。
魔獣退治。
今や私の存在意義、それそのものと言っても良い。
あの子の代わりに弓を引く、そのために私はここにいる。
ビルから身を投げ出し、戦いに身を投じようという刹那。
胸のどこかで、喜びにも似た感覚があった。
命を賭した魔獣との戦い。
人知れず繰り返す血みどろの殺し合い。
後ろ暗いその運命に喜んでいるなんて、我ながらどうかとも思う。
だけど、理解はできる。
今ではこれが、あの子と私を繋ぐ絆だから。
だから、嬉しい。
そういことなんだろう。
「敵の数が多い。
気をつけて!」
現れた魔獣の数は六体。
対する私は一人。
先日、マミと一緒に戦った時は五対二。
それと比べると確かに今日は、ちょっと不利なのかもしれない。
だけど。
「この弓にとって多少の数の違いなんて、問題にもならないわ」
一度の射撃で六体全てを、射抜く。
狙いは足。
動きを止めて更に、追撃。
「マジカルスコール!……なんてね」
あの子の真似をしてみる。
イメージ通りの矢の雨が降り注ぎ、イメージ以上の破壊力が魔獣の群れに浴びせられた。
「ほむら、まだだ!」
矢の雨の中、魔獣は互いの体を盾にした。
生き残った、二体。
共に長柄の得物、刃の大きい十字槍と、反りのきつい薙刀。
すかさず距離を詰め、私の喉元へ迫る、刃!
髪を掠めて、かわす。
続けざまに繰り出される攻撃を横っ飛びに避けて、飛び上がる。
それで魔獣の攻撃は終わった。
接近戦をするチャンスも、ひとたび空を飛べば無に帰してしまう。
この魔獣は杏子のように槍を変形させる事もしなければ、伸ばす事もしない。
彼女ほど使いこなせていない。
空を飛び回る私を捉える術が無い。
有効打にならない糸の攻撃をかわし、矢を浴びせる。
そうこうして、危なげの無いままに残り二体を撃破した。
「終わった、わね」
密かに抱いていた喜びは、戦いの終わりと共に消えて、微かな喪失感が残った。
「私は、戦いを楽しんでいるの?」
「そうなのかい?
あまりそんな風には見えないけど」
魔女と戦っていた頃とは明らかに違う。
あの子の真似をしている時、やはり嬉しいような気持ちがあった。
「楽しんでいたとしても、別にいいじゃないか」
「?」
「全ての物には役割がある。
道具には道具の、人には人の役割がね。
もともと魔法少女は魔獣と戦うためにある。
ほむら、君がその役割を果たそうという時。
自らの意義、本領が発揮されようという時。
そこに喜びがあったとしても、不思議は無いんじゃないかな」
「相変わらず、一言多いやつね」
「どういう意味だい?」
「まるで、道具呼ばわりされたみたいじゃない」
瘴気が次第に晴れていく。
「魔法少女が戦うためにいるとして、それを全面的に認めてしまうと……
普段の生活がまるで蛇足のように思えてしまうじゃない?」
この微かな喪失感。
これがそのまま膨らみ続けたら。
それを思うと、怖くなった。
「実際、君達にとっては必要無いものだからね。
学校も、人間社会そのものとも、一切の関わりを絶って生きていく事だって可能さ」
「そんなこと、しないわよ」
そんなこと、できっこない。
瘴気が払われ、視界がすっかりクリアになる。
ふと、広い交差点の隅に、うずくまる人影を見つけた。
「瘴気にあてられたようだね」
「まさか、生気を抜かれてはいないでしょうね」
「あれだけ手際良く倒しただろう?
大丈夫さ」
念のため確かめようと、様子を見る。
それで、気付いた。
「……う、ううん……」
「この子は……」
志筑仁美、だった。
投下終了
携帯で投下したら思いっきり誤字してしまった
次はまた来週末予定
(・ω・`)乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!
おつ
前回のあらすじ
魔獣退治
さくっと片付ける
良く見たら仁美が倒れてました
「ほむら、君のクラスメートじゃないか」
「ええ。
目を覚ます前に退散しないと、面倒な事になるわね」
それにしても、妙だ。
「こんな時間に外をうろつく子じゃ、ないはずなんだけど」
志筑仁美はコテコテのお嬢さまだ。
放課後は習い事に忙しく、門限も厳しい。
習い事が終わった後はほとんど寄り道せず帰宅するのが常、だった。
「この子は美樹さやかと仲が良かったからね」
「それが、なに?」
「ひょっとすると、彼女の足取りを調べていたのかもしれない」
「そんな」
さやかは既にこの世にいない。
死体だって魔獣の領域に置いてきた。
となれば、どこを探しても見つかるはずなんて無いというのに。
「ひどく不毛な行為だよね。
なんなら、真実を伝えてみるかい?」
「馬鹿言わないで」
「……うーん」
「あ」
まずい、目を覚ましそう。
「ほむら、まずいよ」
「分かってる」
「うーん、ん……ん?」
寝ぼけ眼の眼前に手をかざす。
催眠魔法。
昔マミにかけられたことがある。
抵抗力の無い一般人なら、これでまた眠りこけてくれるはず。
「…………」
「うまくいったみたいだね」
「ええ。
それじゃ、今度こそ長居は無用ね。
帰りましょう」
翌朝。
通学路のいつもの場所で仁美が待っていた。
この交友関係も、本来あの子のものだったんだけど。
「おはようございます、ほむらさん」
「おはよう、志筑さん」
「あらあらあら、ほむらさん?」
くちに手を当てて、芝居がかった驚き方をする。
彼女の中で何かスイッチが入ったのが、分かる。
「今日はまた随分と、可愛らしいリボンを着けていらしたんですのね?
もうっ!
ずるいですわ。
髪を下ろしてから、ただでさえ殿方の人気を独り占めだと言いますのに。
ずるいですわ~」
身をよじる姿に、美樹さやかの影響を感じずにはいられない。
「独り占めだとか、聞いたこと無いわ」
「御謙遜なさらないで。
今やほむらさんの人気は男子女子を問わず。
メロメロになる者が後を絶たずですのよ」
「そ、そう……」
「それはそうと、お身体の加減はいかかですか?」
急に“スイッチ”がオフになった仁美は、真面目な顔で質問してきた。
昨日、杏子に会いに行く間、学校には仮病を使ったので、それを心配されているんだろう。
心配なのはむしろ仁美の方なんだけど。
「ええ、おかげさまで。
すっかり良くなったわ。
あなたこそ調子はどう?
少し顔色が悪いかも」
「えっ、そうですの?」
「……何か悩みでもある?
良かったら相談に乗るけど」
「それは……」
言葉を詰まらせながら、通学路の一方、下校する側を見る。
待ち合わせの時間。
美樹さやかが生きていれば、手をぶんぶん振りながら大慌てで走り寄ってきたことだろう。
そんな光景も、もう二度と見ることは無い。
「相談したいことなら、ありますわ。
是非とも」
「そう。
それじゃ、歩きながらで良いかしら」
「さやかさんの事ですの」
「やっぱり、そう」
「家にも帰っていないそうです。
私、さやかさんに酷いことをしてしまったかもしれない、そう思って」
「酷いこと?」
沈黙。
しばらくの後に、トーンを落とした声で話は続いた。
「さやかさんが上条恭介君に想いを寄せていた事は、ご存知ですよね」
「ええ、それは」
「私は、長い間お二人に、その……
横恋慕、ですね。
横恋慕をしていました」
仁美の顔が俯く。
「私はさやかさんに……
自分の気持ちを伝えました。
次の日には、上条君に伝えました。
さやかさんが居なくなったのはこの時からです」
「私はさやかさんを追い詰めてしまったのかもしれません。
私は確かに上条君の事が好きでした。
だけど、さやかさんの事も、紛れもない親友だと……。
……勝手な言い分だとは思います。
だけど私は、こんな形で友人を失いたくなかった」
「彼女を探したいの?」
「はい。
少し悔しいですが、私よりもほむらさんの方が、彼女と親密にしていたと思います」
「そんなことは……」
「ほんの些細なことでも良いのです。
少しでも知ってることがあれば、どうか」
「残念だけど、私は何も知らないわ」
再度の沈黙。
仁美は俯いたまま、こちらを見ない。
「私、昨日夢を見たんです」
「夢?」
「夢の中で、私はほむらさんを見ました。
それから霧の中に、大きな人影。
白い奇妙な動物」
「不思議な夢ね」
見られてた。
でも夢の中だと思い込んでるのは好都合ね。
このままさらりと流してしまいましょう。
「実は私、昨日さやかさんを探し回っていたんですの。
さやかさんの写真を片手に、刑事さんの真似事をして」
「すごいじゃない。
道理で、今日はちょっと疲れてるわけね」
「夢を見たのは、その刑事ごっこの最中ですの。
私ったら、いつの間にか街中で倒れてて……
そうしたら、ほむらさん、あなたの夢を見ましたわ」
「倒れてたって、ただ事じゃないわね」
「はい。
でも倒れてなかったのかもしれません」
仁美が、私の方を直視した。
「どういう意味?」
「ことによると、私が見たものは夢じゃなかったのかもしれません。
どうも記憶が混乱して、曖昧なのです」
「志筑さん、あなた凄く疲れてるでしょ」
「はい。
道端で昏倒するなんて、自分でも不安なくらいですわ」
「夢の内容は夢でしか有り得ないもの。
となれば疑う余地も無く、夢でしょうね」
「その通りですわ。
ただ」
「ただ?」
「夢の中のあなたは、リボンを着けていました」
……しまった。
「リボンを結ぶほむらさんを見るのは今日が初めてなのに。
なぜか私は昨日、同じ姿を夢で見ていますの」
「予知夢みたいな話ね。
それともデジャヴかしら」
「ですから、夢じゃなかったのかもしれません」
「夢よ。
私は昨日、志筑さんに会ってない」
「そう、ですか……」
「ほむら、事情を話してみたらどうだい?」
横やりが入った。
最悪な奴の、最悪なタイミングで。
私がそちらを睨むと、仁美も釣られて目線をやっていた。
投下終了
目は口ほどにって奴か流石お嬢
見えるのか?
(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら
火曜更新予定
できれば毎週末更新したいんだけど
どうも予定通りにいかないスマソ
それにしても毎度メール欄入れ忘れる1の学習能力は猿並みだと言わざるを得ない
生存報告とかはむしろ外すくらいなんだけどsage
なんかID変わっちゃってるからアレだけど
>>99も1が書いてるんでフォローとかしないで(赤面
いや、知ってる
いや、俺は知らなかった
前回のあらすじ
仁美を救助したり一緒に登校したり
失踪扱いのさやかについて悩む
QB見えてる?
「ほむら、事情を話してみたらどうだい?」
『……話せるわけないでしょ』
仁美に聞かれないように、テレパシーで返事。
「彼女には知る権利がある。
ほむら、君だって彼女の力になりたいだろう?」
『話にならないわね。ちょっと黙ってなさい』
相変わらずこのケダモノの発想は、人の気持ちというものをあらゆる意味で一切考慮していない。
こんなこと、さやかが生きていればどう思うか。
仁美だって、知ってしまえばどんな気持ちになるか。
「……まあ。
まあまあまあ」
仁美がこちらを見ている。
口に手を当てて、さも驚いたというリアクション。
「その動物さんは何ですの?」
……何ですって?
「お話が出来るなんて。
ほむらさんとお知り合いですの?
いえ、それより、なにより」
「待って。
仁美、あなた」
「やっぱり、夢じゃなかったんですわ!
昨日と同じ。
私が見たものは、夢じゃなかった」
「……見えてるの?」
「?
良く分かりませんが」
「僕の姿は素質のある人間にしか見えないんだ」
「素質?」
「そうだよ、志筑仁美。
僕は君の力になってあげられる。
僕と契約すれば何でもひとつーー」
首根っこを捕まえて、黙らせる。
「これ以上何か言うなら、この場でミンチにしてあげるわ。
それから、ひとみーーじゃなくて。
えっと、志筑さん?」
「あ……は、はい」
「早く行きましょう。
急がないと、遅刻しちゃう」
「僕の名前はキュゥべえ。
君は、さやかのことが知りたいんだね?」
教室で、それぞれ自分の席に着き、机の上でキュゥべえを取り押さえる。
伏せの姿勢のまま、キュゥべえはまた喋り始めた。
『黙りなさい、キュゥべえ。
そんなにミンチにされたいの?』
『キュゥべえさん、ですのね。
よろしくお願いしますわ』
仁美までテレパシーを使い始めた。
『あなたは適応力あり過ぎね』
『そうかもしれませんね。
なにしろ、素質があるそうですし』
『そうだとしても、これ以上はもう首を突っ込まないで。
あなたには関わってほしくない』
『それは、どうしてですの?』
『それは……』
当のさやか本人が、知らせない事を選んだから。
命を賭した彼女の遺志を、今更あばくような真似。
出来るはずもない。
「…………」
『……何か並ならぬ事情がある、それは私にも分かります。
ですがこれは私にとって、あなた方が……
さやかさんと、ほむらさんが、大事なお友達だと信じているからこそ。
どんな内容であれ、聞かせほしいのです』
大事な、友達?
私にとっては、どうなんだろう。
私は彼女のことを、どう思ってる?
『どうか、お聞かせください。
そうでないと、私は本当の意味で友達を失くしてしまう。
そうではありませんか?』
確かに、友人として親しく接してきた記憶もある。
だけど、それは私の全部じゃない。
今の私のことを、彼女は知らない。
まどかなら。
私じゃなくてあの子なら、こんな時どうしていただろう?
「ほむら、さっきも言ったけれど、彼女にも知る権利がある。
そうは思わないかい?
彼女は既に、普通の人間とは違う」
『どういう意味かしら?』
「決まってるじゃないか。
魔獣が見えてしまう以上、最低限の説明は必要だ。
彼女が自分の魂と天秤にかけるものは、彼女ひとりの問題じゃない。
ンヌーーンップイ」
唐突に、ヘンな鳴き声をあげる。
……ああ。
思わず力が入ってしまっていた。
首を締め付けられながらも、まるで意に介さず喋り続ける。
「考えてもごらん。
彼女は夜ごと自分達を脅かすものの姿が、形となって見えてしまうんだ。
彼女はそれに抗う力を手にするか、目を瞑り逃げていくのか、決断しなきゃいけない。
美樹さやかの事とは無関係に、ね」
『最低限の説明というけど、あなたはどこまで話すつもりなの?』
「魔獣のこと。
契約と願い、魔法少女のこと。
少なくともそれくらいは必要だね」
だけど、それじゃ……。
それじゃ結局、さやかの顛末も自明になってしまう。
秘密を守るためには、キュゥべえに一切喋らせず、口封じを続けるしかない?
『ちょっと、考えさせて』
席を立ち、授業を始めようとする先生に申し出る。
体調不良を理由に保健室へ。
仁美が付き添いを申し出たが、断った。
「……上手くいかないかもしれないわね」
ひとり廊下を歩きながら、考えを巡らせる。
どうしても明るい見通しは立たない。
私は結局、何度繰り返しても、まどかの契約を阻止出来なかった。
あの子は最後まで魔法少女として祈り続け、決して後悔もしなかった。
結局は、魔法少女の祈りを抑えつける事なんて、出来ないのかもしれない。
だけど、だからって、美樹さやかの祈りを蔑ろにも出来ない。
どうすればいい?
まどかならどうしただろう?
本当の友達のために、あの子ならどんな方法を選んだだろう?
いつまでもキュゥべえを掴まえているわけにもいかない。
……考えなきゃ……。
投下終了
遅筆過ぎて困る
早く先進めたいな
(・ω・`)乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!
乙
ほむ!
乙!
遅筆でもエタらなければ問題なしです。
ゆっくり確実に進めて下さい。
久しぶりに再開
ここまでのまとめ
世界改変によるビフォーアフターを確認するほむら
オリキリゆまが契約済み
織莉子が何故か協力的
三日後に魔獣大発生
仁美がQB見えてる
仁美にさやかの事を話す?
『――ですがこれは私にとって、あなた方が……
さやかさんと、ほむらさんが、大事なお友達だと信じているからこそ』
『――どうか、お聞かせください。
そうでないと、私は本当の意味で友達を失くしてしまう。
そうではありませんか?』
仁美の言葉を思い出す。
私にとって、その意味は重い。
「……どうしよう」
保健室のベッドで、つらつらと考えを巡らせる。
もちろん、具合が悪いわけではない。
ただの仮病なので、ベッドに入るでもなく腰をかけて。
ただキュゥべえが逃げ出さないように押さえつける。
このケダモノは、世界が変わった今も相も変わらず私を苦しめる。
どこまでいっても結局、こいつは私の敵でしかないのね……。
「随分と悩んでいるみたいだけど、君らしくないね」
「あなた、自分が原因だって分かってるの?」
「それは違う。
そもそも僕や魔獣が見えるのは、彼女の才能によるものだ。
僕は彼女のような者の案内役に過ぎない」
「志筑仁美には、もう関わらないで」
「それは無理だね」
「許さないわよ。
私はお前たちを何匹殺しても、構わない」
「それは僕達にとって何の脅しにもならないと、君だって知ってるだろう?」
まあ、そうでしょうね。
「逆に聞くけれど、ほむら。
君は彼女に何も伝えないのが最善だと、本当にそう思ってるのかい?」
「そうよ」
「人間の死者を悼む感情というのは、理解は出来なくとも、知ってはいるよ。
だけど今回の件で重要なのはそこじゃない」
「勝手に決めないで。
重要だとか重要じゃないとか、それは私が考える事でしょう」
「何も伝えずに志筑仁美を放っておけば、それで丸く収まると思うかい?」
「それは……」
「僕が何もしなくとも、彼女は自分から瘴気に近づいていく。
親友の消息に関わるとなれば尚更だ。
昨日のように、魔法少女が助けに入ればまだ良い。
そうでなければ、最悪の場合」
「やめて」
「……正直に言えば、僕にとって志筑仁美はそれほど重要な人物じゃない。
僕にとって重要な案件はほむら、君のほうさ。
君がここまで聞いた上で尚、志筑仁美に近づくなと、そう言うのなら。
僕はその通りにしても構わない。
だけどそれは本当に君のためになると言えるかな?
僕は最初からずっと、君のために助言をしてるつもりだよ」
手の中からキュゥべえがすり抜けて、椅子の上に逃げていった。
振り返り私を見る、冷ややかな赤い目。
「答えは出ているんだろう?
ほむら、君とって重要な事って、何だい?」
「ほむらさん、お身体の方は?」
教室に戻ると、仁美が話しかけてきた。
ちょうど休憩時間だったらしい。
「大丈夫よ。大した事無かったから」
『それで、お聞かせ頂けますの?』
『……随分とせっかちね』
テレパシーを使い始めたのは人目を気にしての事、でしょうけど。
緊張した顔が隠せてない。
黙って睨み合う形になるから、傍目には喧嘩してるみたいに見えそうね。
『からかわないでください。
あなた方は、さやかさんについて何か知っている。
となれば、どうしても私はそれを教えてほしい。
そうお願いするほかありません』
『ひとつだけ、約束して』
『なんですの?』
『絶対に後悔しないで。
上条恭介との事。
さやかとの事。
あなたが後悔すれば、さやかも悲しむし、私の大事な人も悲しむの』
『?
……大事な人、ですか?』
『そう。
だからあなたが後悔すれば、私も悲しい。
美樹さやかを本当の友達と思うなら、彼女のした事を受け入れてあげて』
『……分かりました』
そう言って俯くと、今度はまた少し違う顔を上げて。
肉声で、はっきりと声に出して告げた。
「お約束いたします。
私は決して後悔しません。
何があっても、ありのままに、受け入れると誓いましょう」
こちらを振り返る人が数人。
……別にそこはテレパシーで良いのに。
「ありがとう。
それじゃあ、今夜、私が指定する場所に来て」
「夜ですの?」
「百聞は一見にしかず、でしょ」
「はぁ」
「連絡はメールでいいかしら」
投下終了
モンハンHDの誘惑が強くて困る
オラにモチベをわけてくれ
分けてあげたいモチベ
モンハンはP2Gで止まってるなぁ
仁美さんはどう反応するかな……
HDはいいぞお
まず絵が綺麗
音源が変わるからか?音もよくなる
セーブが圧倒的に速い
そしてなんと言ってもオン対応
「マミ、ちょっといいかしら」
「あら、暁美さん。
どうしたの?」
「ひとり、魔法少女候補がいるの。
案内をお願いしてもいいかしら」
「!
そう……」
「魔法少女の見本としては、今の私より、マミ、あなたの方が相応しい。
あなたさえ良ければ、今夜さっそく魔獣退治に――」
そこまで話すと、マミは俯いてしまった。
二つ返事で了承すると思ったけど、意外にも何か、渋ってる?
「どうしたの?」
「……気が進まないわ」
「そう?
あなたらしくないわね」
「なんというか、その……」
「どうしたの?」
「本当のこと言うと、私、美樹さんの事をどう考えていいか。
まだ気持ちの整理がついてないのよ」
……ああ、そういうことか。
この世界でもさやかは相変わらず、マミの手ほどきを受けて契約している。
同じようにまた、魔法少女候補が現れたとなれば。
先行きを案じるのも、まあ当然といえば当然の反応ね。
「私がこれから会わせようとしてる魔法少女候補は。
彼女は、美樹さやかの親友よ」
「なんですって!?
あなた、まさか――
いや、でも……
ということは……」
「私も巻き込みたくは無かった。
だけど、彼女はさやかを探してる。
素質がある以上、隠し通す事はできないわ」
「……そう。
そうなのね。
……ああ、なんてこと……」
「マミ、僕からもお願いするよ」
「あなた達の言いたい事は分かるけど……。
それにしても、ああ……なんて残酷なのかしら。
神様に文句の一つでも言ってやりたいわね」
「神様だって万能じゃないのよ。
今は後輩を危険な目に合わせないために。
私達が出来る事をしましょう」
「はじめまして、志筑さん。
あなたが例の魔法少女候補ね?」
「はじめまして、巴さん。
ご面倒をかけまして大変恐縮ですが、どうぞ、よろしく、お願いします……」
夜も更け、人気の無い工業団地。
家を抜け出した仁美は、礼儀正しいというより、もうほとんど萎縮しきっている。
「気にしないで。
あなたのような子の力になるのは、私にとっても嬉しい事よ」
「ありがとうございます。
私、どうしても知りたいんです。
本当にどうか、よろしくお願いします」
「二人とも、そろそろ良いかしら」
「あら、随分せかすのね」
「よく見て。
瘴気の発生が予想より早い。
ぐずぐずしてると街まで届くわよ」
その日の魔獣退治は終始、淡々とした射撃戦に終わった。
私はあの翼の力を使わなかったし、マミもいつもの“必殺技”を使わなかった。
翼を使わないのは、ただ、典型的な魔法少女の戦闘として、仁美に見本を見せたかったから。
あの力は、普通の魔法少女には無縁のもの。
仁美が見ても何も参考にならないと思うから。
マミが本気を出さなかった理由は、良く分からない。
気乗りしないのは分かるけど。
二人揃ってジリ貧の戦闘をして、おかげで随分と魔力を使ってしまった。
「これがグリーフシード、彼女たち魔法少女にとって無くてはならないものさ」
キュゥべえがいつもの説明台詞を聞かせている。
魔獣、魔法少女、グリーフシード。
ソウルジェムと願い、契約。
私達はあくまで仁美を、新しい魔法少女候補として扱った。
別に何か打ち合わせたわけでもない。
ただ、さやかの友人として知らせるべき、彼女の顛末というものは。
ここではすっかり棚上げにされたまま、契約に関する事務的な案内だけがなされていた。
仁美も辛抱強くそれを聞いていた。
「今日は本当に、ありがとうございました」
固い挨拶を交わして、マミと別れる。
今日の魔獣退治体験ツアーは終了。
仁美は最後まで緊張した顔を崩さなかった。
帰りの道すがら、仁美が口を開く。
「ほむらさんも、今日はありがとうございました」
「あなたも、お疲れ様。
突拍子も無い話ばかりで、ごめんなさいね」
「……私は今日信じがたいようなものを沢山見ました。
信じがたいようなお話も沢山聞かせていただきました」
「信じられなくても、別に構わないわ。
あの瘴気と、魔獣の危険性さえ知ってくれれば、それで十分」
「いえ、信じがたい内容ばかりでしたが、信じられそうなのです。
どうしてだと思います?」
「…………?」
「さやかさんがこの世界に関わっているからです。
彼女がこの世界に足を踏み入れて、何を考えて、何をしたか。
そう考えると、この話はある場合においては、私達の今の状況を裏付けてくれます。
ある可能性において、この話はいくらかの信憑性を帯びるのです」
「さやかさんは契約して、魔法少女になった。
そうですね?」
……とうとう触れられたくない所に、触れてしまった。
これには頷く。
「さやかさんは契約の際、何を願ったのですか?」
これは、迂闊には答えられない。
「さやかさんは今、どうしているのですか?」
答えにくい。
黙っていると、向こうもこちらを真っ直ぐ見つめたまま、微動だにしない。
答えを予期して、恐れつつも、こちらの反応を窺っている。
魔法少女の仕組みを知れば、さやかの顛末は自明だ。
彼女を良く知る人間にとって、彼女の願いを想像するのは容易い。
願い、契約した者が消息不明になった。
その理由もまた、自明だ。
やっぱり、隠し切れない。
分かってたことだけど……。
「志筑仁美、私は約束通り、教えるつもりよ。
これから一切包み隠さず、全てあなたに教える。
いいかしら?」
「はい」
「……正直言って、私にとってあなたはそれほど重要じゃない。
私にとって重要なのは、まどかが悲しむかどうか、ただそれだけ。
それ以外の事、あなたの事も、さやかの事も。
本当は何もかも全部切り捨ててしまったとしても、私はそれで構わない」
「……まど、か?」
「だけど、あなたはまどかの友達だったから。
だから私は、あなたも、さやかも、悲しみから遠ざける事にする。
あの子は今も私達を見てるから」
「ちょっと待ってください、何を言ってるのか、よく……」
「だから、約束したの。
あなたはさやかの事を知っても、悲しまない。
さやかの願いが何だったとしても、後悔しない。
そうでしょう?」
「……約束……」
「……はい、私は確かに、お約束しました。
そう、その通りです」
「まどかなら、きっと。
自分をかなぐり捨ててでもあなたの助けになろうとするでしょう。
だから私もそうする。
あなたがこの先契約しようとしまいと、私はあなたに力を貸す事を惜しまない。
だから、その代わり、あなたも絶対に自暴自棄になったりしないで」
「覚悟は出来てますわ。
構いません。
どうか、お聞かせください」
「そう。
それじゃあ。
キュゥべえ、あなたから話してあげて」
「えっ?」
「前も言ったけど、私は記憶があやふやで、上手く話せる自信が無いのよ。
こういうのはキュゥべえ、あなたのほうが適任でしょう?」
「やれやれ。
僕は構わないけど、いいかい? 仁美」
「お願いします。
ところで、場所を変えませんか?
落ち着ける場所で、できれば詳しく話して頂きたいですし」
帰り道をそれて、深夜営業のファミレスへ。
キュゥべえがテーブルに乗り、仁美と向かい合う。
「ほむらが言ったとおり、僕はこういう事に関して実に適任だ。
僕は今までに見てきた魔法少女の顛末を全て記憶しているし。
さやかの事も例外じゃない」
「まあ、凄いですのね」
「それから、僕達は日頃欠かさず別の個体に記憶を共有するようにしているんだけど。
お望みなら、これは君達にも同じ事をしてあげられるよ。
言語を介するより短時間で。
さやかの歩んだ魔法少女としての軌跡を、その目を通して見せてあげられる」
「あ、ちょっといいかしら」
「なんだい?」
席を移動して、仁美の隣に座ることにする。
「私にも見せてちょうだい。
自分が以前何をしてたか、気になるじゃない?」
「ほむらさん、もしかして記憶喪失ですの?」
「えーっと、そういうんじゃ、ないんだけど」
「構わないよ、ほむら」
「じゃあ二人とも、始めるよ」
「どうぞ」
赤い目を見つめていると、次第にそれ以外の景色が溶けるように消えて。
美樹さやかの過去が走馬灯のように脳裏を駆け始めた。
さやかの五感、さやかの思考までが一体となって、彼女の半生を遡る。
魔法少女としての始まり、キュゥべえとの契約、ソウルジェムを手にしたその瞬間まで戻った時。
同化した意識もまた、覚醒していった。
投下終了
次回からさやか編です
結構な尺になるので仁美の話はひとまず放置
今更だけど、このSSのお品書き↓です
・過去編
さやか、杏子
・魔法少女狩り
・仁美ちゃん大脱走
・ほむらその後編
たぶんこんな流れになる予定
更新間隔長いから、たまにあらすじ入れるかも
魔法少女狩り←ファッ!?
おりきり参戦かな?
頑張ってくだせぇ、応援してますぜ
乙
いいスレを見つけた
こういうアフター物って好きですぜ
mada-?
すまんまさか2ヶ月放置するとは思わんかった
月末まで身動き取れんのじゃよ
ゆっくり待つよー
頑張って書いてくださいね
ま、まだかー!?
さすがにそろそろ恐くなってきた。
生存報告だけでもお願いします
生きてるしモチベもあるんだけど本当に時間が無くなってしまった
今週末久々にまともな休みが貰えるよ!
でもその後が続くかは何とも言えないよ…
生存報告だけで食いつなぐのは流石に悪いと感じるので
今週末は少しでも書きます
ごめんよー
それはありがたい。まってるよ
よし待ってる
やっほー!!
待ってるよー
「おめでとう、さやか。
君の祈りは確かに遂げられた。
さあ、ソウルジェムを手にとってごらん」
キュゥべえとの契約。
今まさに、私の魂を抜き取って、石に変えたそいつは。
あくまで淡々と、事の成果を告げている。
「これが、あたしのソウルジェム……」
これが私の祈りの代価。
自分自身の魂そのもの。
「……思った以上に、綺麗だね、コレ」
「そうかい?」
「うん」
そう、思った以上に。
「本来それは、魂のコンディションを表す装置に過ぎない。
君はその輝きを損なわぬよう、戦いに勝ち続けなきゃいけないよ」
「ご忠告、どーも」
装置、ね。
それでもこれは私の祈りの結晶なんだ。
それがとりあえず今は、どんな宝石よりも綺麗に光り輝いてる。
「だけど、ちょっとくらい浮かれたって、バチは当たらないでしょう?」
「まあ、君はそのくらいの方が良いかもしれないね」
「じゃーん!!」
あくる日、いつもの廃ビルで。
魔法少女二人に青いソウルジェムを見せ付けてみる。
「美樹さん!? あなた……」
「契約しちゃったんですか!?」
驚く二人。
しめしめ。
「えへへー。
昨日、ちょっとね」
「凄い!
じゃあ、これからは三人一緒ですね!」
嬉しそうに飛びついてくるほむら。
良いリアクションだなー。
「うんうん。
とにかく、これからよろしくね。
ほむらも魔法少女としてはあたしの先輩なわけだし」
「でも、いいんですか?
あんなに悩んでたのに……」
「いいのいいの!
あたしもこれでスッキリしたよ。
これで皆のこと手伝えるし、それに……」
「それに、上条君も立ち直ってくれる、かしら?」
う。
「……仕方ないわね、まったく」
なんとなく、マミさんの言葉が重い。
やっぱりあたしの契約を良く思ってないみたいだ……。
「後悔しても遅いものね。
今日から美樹さんも一緒に、特訓しましょう」
なんともいえない、苦そうな笑顔。
一応あたしの面倒は見てくれるつもりらしい。
なんというか、ごめんなさい。
「これで三人、魔法少女トリオですね! ふふ」
無邪気に喜ぶほむらの調子が、一層バツの悪い空気を醸し出す。
早くも変身を済ませて、バトン状の得物をくるくる振り回す彼女に倣い。
ともかくあたしも人生初の魔法少女姿に挑戦してみる事にした。
「接近戦に特化したパワー型ね。
シンプルだけど、成長次第で凄い力を発揮できるかも」
一頻りお披露目を終えたところで、マミさんの講評を頂く。
「ホントですか!?
いや~、マミさんに褒められるなんて、凄い久しぶりな気がするなぁ」
「……今のあなたを褒めたわけじゃありません。
あまり調子に乗ると、魔獣にやっつけられちゃうわよ」
「は~い」
言われた通り、今のあたしには丸っきり力が足りない。
パワー型なんて言われたって、あのでっかい魔獣達と、力任せに渡り合うなんて出来っこないしね……。
「あ、でも、凄いと思いますよ!?
だってさやかさん、初めてなのに私なんかよりずっと速く動けてますし」
つい落ち込んだ気持ちが表情に出てしまっていたらしく。
あたふたしながらほむらがフォローしてくれる。
ああ、愛いやつめ。
この娘はやっぱり嫁にするしかないな。
二人と別れて病院へ。
契約して以来、恭介にはまだ直接会ってない。
検査や何やらで引っ張りだこで、なかなか捕まらなかったんだけど。
今日も案の定、病室は空だった。
夕日の差す病室。
開けっ放しの窓と、風になびくカーテン。
「今日は暑かったからねー」
日が落ちるにつれて、風も随分冷たくなってきた。
お見舞いの花を一輪、枕元の花瓶に挿して。
(ムーンダスト? とか言うらしい)
ついでに窓を閉めて、今日はそのまま帰る事にした。
「会わなくていいのかい?」
「忙しいみたいだからね。
どうしてもだったら、メールでもいいし。
面倒事が終わって退院すれば、いつでも会えるわけだし」
「ふーん。
そういうものかな」
「そういうものなんですぅ。
あんたね、お願いだから恭介の事まで口出さないでよ?」
病院を後にして、もう一度マミさん達に会いに行く。
キュゥべえの“瘴気予報”に従って、危険区域を張り込むためだ。
……今日のあたしは忙しいな。
途中、通行人と肩がぶつかった。
狭くも無い道で、後ろからぶつかってきた迷惑なそいつを。
あたしは睨み返そうとして、逆に肝を冷やされた。
「えっ、何?」
仕事帰りらしい、スーツ姿の男。
目も虚ろに、たどたどしい足取りで、ガードレールに足を擦りながら、電柱にぶつかりながら。
まるで何かに引っ張られるみたいに、よろよろと何処かへ向かう。
「ぶつかってごめんなさいとか、それどころじゃないみたいだね」
「これはマズイ事になったね」
「どういうこと?
っていうか何なの? あの人は」
「彼は操られているんだ。
放って置けば魔獣のいるところへ誘き出されて、食べられてしまうだろうね」
「魔獣?
だけどあんたの予想だと、魔獣がやってくるまでまだ時間があるでしょ?」
「これは例外なんだ。
僕にも感知できない種類の魔獣がいる。
いや、魔獣が変異した別のものと言うべきかな。
それは結界に隠れて人を食らい、際限なく自己を増殖させる。
往々にして魔獣よりも力が強く、その性質も千変万化だ。
そう、どちらかと言えば、君達の使う“マホウ”に近い」
「……どうすれば助けられるの?
あたしは何をすればいい?」
「助けを呼ぶんだ。
マミの連絡先は知ってるだろう?
君一人で戦っても勝ち目は薄い」
「――悪魔ですって?」
魔獣の変異種、キュゥべえ曰く悪魔と言うらしい。
マミさんは戦った事があるのだろうか?
ともかくその名前を聞くと、マミさんは全てを承知した様子で応えてくれた。
「場所は――そう、待ってて、今すぐ行くから。
暁美さんには私から言っておくわね」
「ありがとう、マミさん」
「それと! 絶対に一人で戦っちゃダメよ。
キュゥべえから聞いてるだろうけど、そいつは――」
「ごめん」
悪いとは思うけど、話も途中で電話を切る。
“絶対に”と言ったって、そうも言ってられない場合もあるわけで。
「さやか。
さっきも言ったとおり、君一人では勝ち目は薄いよ」
「分かってるって。
私だって何も考えずに突っ込むつもりは無いし」
スーツの男は相変わらずよろよろと、肩や足を擦りながら歩き続ける。
良く見ると首筋に奇妙なマークが浮かんでいた。
魔獣の攻撃か何かかな……。
「とにかく、放っておくわけにもいかないでしょ?」
魔女もいるのか
投下終了
映画版までの繋ぎのつもりで書き始めたんだけどなー
こんなに遅くなるとは
乙
映画は秋だからまだ時間はあるさ(震え声)
乙
さやか円環前、つまりほむらが入れ替わる前か
三つ編みメガネっ娘で獲物はバトンとか何そのニチアサっぽい魔法少女
そろそろ生存報告がほしいです
すまぬ すまぬ
9月までには終わらせたいなぁ(震え声
待っとるで
追いついた
良いですね、続き待ってます
てすと
「例の悪魔ってやつは……こんなとこに隠れてるの?」
魔獣に操られて、ふらふらと道を行くスーツ姿の男。
その後をつけて、あたしとキュゥべえは人気の無い町工場まで辿り着いた。
日が暮れて辺りはすっかり暗い。
工場の中は同じように操られた人がごった返していて。
中央に座り込んだオジサンが何やら奇妙なうめき声をあげている。
その脇でバケツになみなみと洗剤を流し込む女の人……
「……って、ちょ」
なにしてるの、あの人!?
思いっきり“混ぜるな危険”って書いてあるんですけど!?
「やめやめやめーい!」
咄嗟にバケツを取り上げて、外へ逃げる。
操られた人達が追いかけてきた。
「……ふう」
建物の影に隠れて、息を整える。
「上手く撒いたみたいだね。
このままマミが来るのを待とう」
「んー。
あのさ、キュゥべえ、これも悪魔の仕業なんでしょ?」
「そうだね」
「そいつを倒せばみんな目を覚ます、そうだよね?」
「そうだよ」
「……やっぱ、やるしかないよね。
こうなったらもう、あたし一人で」
「ダメだよ、さやか。
君一人で戦わせるわけにはいかない」
「そりゃあ、あんたの言うとおりにすればあたしは安全かもしれないけど。
あの人達はどうなの?」
「操られた連中なら、またおかしな混ぜ物でもして自殺を図るかもしれないね」
「そんなの、放っとけるわけないでしょ」
「君は自分の価値を分かってないね」
「?」
「魔法少女の素質は誰にでもあるわけじゃない。
この星にごまんといる人間のうち、ごく僅かな少女だけがその素質を宿し得る。
君の素質も、その身を取り巻く環境も、無闇に使い潰していいものじゃない。
ただの人間十数人の命なんて、とても釣り合わないよ」
「キュゥべえ、あんた、分かってないね~」
「?」
「あたしがあんたに望むのは、そういうのじゃないの。
あんたはあたしのお助けマスコットなんでしょ。
あんたはあたしのしたい事をサポートする、いい?
あたしは、あの人達を助けたいの」
「……やれやれ」
「あんたの言うとおり、これは確かに、魔獣と勝手が違うみたいだね。
ここまで近くに魔力を感じるのに、肝心の敵は影も形も……
あの“瘴気”だってさっぱり見当たらないし」
「そうだろうね」
「そう言えばキュゥべえ、あんた言ってたね。
連中は“結界”に隠れてるって。
このまま魔力の方向に進めば、入り口が見えるかな?」
窓から顔を出して、中を覗いてみる。
魔力の感じる方向、向かって左側に頑丈そうなドアがあった。
「あっちかな……」
窓を割ってしまってもいいかと思ったけど、意外にもその必要は無かった。
すんなり開いた侵入口に、せっかくだから出来るだけ物音を立てないようにすべり込む。
「うわぁ」
ドアを開けると、部屋の中は一面、モニタと管制用のパソコンがズラリ。
……ちょっと面食らったけど、別にそれ以上何も無い。
ただのモニタ室のようだ、うん。
モニタ室の脇に通路があった。
あたしが感じた魔力はこっちの方だったらしい。
通路を抜けて裏口から外へ。
開けた空間には、まっすぐ渡り廊下が伸びていて。
左右の芝生と、疎らに配置された白いベンチが……
うん、申し訳程度にくつろげそうな雰囲気を作ってますね。
ベンチの向こう、片隅のつる棚に目当てのものはあった。
見るからに異様な空間の歪みが、渦を捲いて待ち構えてる。
「さやか、本当に行くのかい?」
「……フフン」
思わず俯いたけど、鼻を鳴らして持ち直す。
「ここまで来て、何もしないで帰るわけないでしょ?」
危なくなったら逃げればいいんだ。
一応あたしだって契約したわけだし。
自分の身を守るくらい出来ますって。
……出来る、と思いたい。
ふと足元に、バラの切り花が目に入った。
良く見るとそこら中に捲き散らかされている。
「花の好きな人がいたのかな……」
“入り口”に手を当てる。
と、何やらグニャリとした感触で押し戻された。
「うぅっ、何か気持ち悪いんですけど」
「自分でやっておいて、ひどい言いようだね」
「キュゥべえ、これ、どうすればいいの?」
「君がしたいようにすればいいよ」
こ、こいつ。
やる気なさそうに……というか、明らかに答える気が無いね。
「よーし、あんたがそういう態度なら、あたしも好きにやるからね。
見てなさいよー」
魔法少女に、変身。
自慢の剣を、大きく振りかぶってー。
「どりゃああっ!」
「…………」
開いた、ね。
ぱっくりと。
「……どやっ!」
「勘のいい子だね、ホントに」
結界の中。
ここには、そりゃもう筆舌しがたいメルヘンな世界がー。
道なき道が目まぐるしく移り変わって、オブジェの一つ一つがファンシーな、それでいて色の無い世界。
その上、良く分からない白い毛玉達が音も無く襲ってきて。
でもこの毛玉(良く見るとヒゲ生えてるね、白いけど)一匹ずつの力は、あまり強くない。
もっと凶悪なのを想像してたのに、これは正直、楽勝かも。
結界の中、敵を退けながら、息を切らして走り抜ける。
「さやか、油断しないで。
これはただの使い魔なんだ」
「使い魔?」
「結界の奥に本体がいる。
そいつを見つけたら、迷わず逃げるんだ」
話しながらも、また1体。
出会い頭に切り伏せる。
「はいはい! 了解ー!」
「着いた、のかな」
結界の終点は、茨に覆われた行き止まりだった。
「何もいないねー。
ハズレ引いちゃったかな」
「分かれ道はいくつもあったからね。
引き返したほうがいいよ、さやか」
「……怪しい」
「え?」
「引き返せって、あんたが言うと、何か怪しい。
ホントは逆なんじゃないの?」
「何を言ってるんだい。
どう見てもここは行き止まりだよ」
怪しい、絶対に怪しい。
何がとは言えないけど、キュゥべえの反応が何か違う気がする。
魔法の剣を握り締めて、茨の壁を切ってみる。
分厚い藪を掻き分けて――
「え、あっ、わわわわ!」
藪を掻き分けた先で、急に足元の感覚がすっぽ抜けた。
穴に落ちたらしい。
体中がチョー痛い……。
「さやか、立って、早く!」
「うぅ、ちょっと待ってよ。
あたしだって、ロボットじゃないんだから、そんな急かされても」
「早く、逃げるんだ!」
「え」
あたしが落ちたのは開けた空間のど真ん中。
藪とトンネルを抜けて明るい部屋、開放的な景色がグルグルって、落ちる瞬間に見えた。
痛みに逆らってまぶたをこじ開ける。
お尻の下に沢山のバラ。
顔を上げる。
とても大きな怪物がいた。
頭の位置に蝶、サナギのような体で、全身が色の無い白。
さっきからこっちを見つめて、ワナワナと震えている。
……あれが、悪魔?
「さやか!」
呆けてどこかに行きそうな意識を、キュゥべえの声が連れ戻してくれた。
飛び跳ねるようにその場を離れて、一目散に逃げる。
悪魔が襲ってくるのも同時。
茨のムチがあたしのいた場所を薙いでいく。
「うわ、わ、わっ!」
小さい通路に逃げ込むと、悪魔はそれ以上追ってこなかった。
代わりに使い魔の気配が増えて、耳を澄ますとそこら中で連中の蠢く音が聞こえる。
「なんなの、あれ……」
「あれが悪魔だよ。
ただの魔獣とは違う」
「そうじゃなくて、なんであんなのが居るの?
あんな化け物みたいな……」
「……あの禍々しい姿形にショックを受ける、そういう子も珍しくはないよ」
「そうじゃなくて!」
「?」
確かに、怖い。
あの姿形。
生物的な特徴があって、そのくせ絶対にこの世の生き物じゃないってハッキリわかる。
それと、真っ白な体。
魔獣と同じ、白い体。
魔獣は揃って嘆きの表情を作るけど、まるで本物の感情とは程遠く感じられて。
あの悪魔も、ホントの感情じゃないのに、“感情の模倣”をするみたいに、怒ってみせた。
そう、怒ってたんだ。
あたしに向けて、明らかに敵意を向けていた。
だけどそれも全然ピンとこなくて、まるでテレビ越しの映像を見せられてるみたいで。
そう、それが怖いんだ。
あの嘘みたいに生々しい化け物、本能にビシビシ訴える怖さがあって、なのに、それでも。
本物じゃ、ない?
「キュゥべえ、あれも魔獣の一種なんでしょ? そう言ったよね?
だとしたら、あれって」
「さやか?」
「あたしの考えは飛躍してるかもしれない。
だけどさ、キュゥべえ、あんたが今まで言ってきたことって、その」
「…………」
「魔獣は魔法少女の力をコピーしてる。
人の暗い感情を写してる。
あの悪魔も魔獣の一種で、それって、つまり――」
「…………」
「あれって、あの悪魔って存在は――いったい何をコピーしてるのよ?」
「ご名答だね、さやか。
君の考えは合ってるよ。
自分で言うとおり飛躍してはいるけれど。
そう、君が見たものはコピーに過ぎない。
そして、あれが本物じゃないって事は、僕らにとって朗報なんだ」
「朗報?」
『美樹さん! 聞こえる?』
『マミさん?』
ふいにテレパシーが届く。
この距離感はあたしにも分かる。
マミさんは丁度今、結界の入り口あたり、かな。
『無事なのね!? 良かった……
まったく、ムチャをするわね』
『さやかさん、今行きます! 待っててくださいね!』
これはほむらの声。
そうか、あの子もついてきたんだ。
『マミ、今回の敵は“もどき”だったよ。
慌てず、安全確実に進むといい』
もどき?
『さやかの手柄だね。
少々危険もあったけれど、敵の情報を得た事は大きい』
『そう。
ええ、そうね。
あとは私達が着くまで、くれぐれも用心してね。
すぐ追いつくから』
…………。
『美樹さん?』
「さやか?」
「キュゥべえ。
結局、あの悪魔って何なのさ」
「君が言ったとおりだよ。
あれは本物じゃない、“もどき”だ」
「それはもう分かったってば。
その本物ってのは、どこからどうやって現れるわけ?」
『美樹さん?
ちょっと、返事をして、美樹さん?』
「……本来の悪魔に君が遭遇する確率は、極めて低い。
一生のうちにだって、まず遭う事は無いだろうね。
今の君は、とにかく自分の身の安全を考えるべきだ」
「そういう事を聞いてるんじゃないの。
まったく、答える気があるんだか、ないんだか……。
あんたねー、今あたしの考えてる事が分かる?」
「ふむ。
さっぱり分からないね」
「あたしはね。
“あれ”をほむらに見せたくないって、思ってる」
『美樹さん、美樹さんってばー!
……もうっ。
暁美さん、行きましょう。
多分、急いだほうが良い』
『は、はい!』
「さやか、君は」
「行くよ、キュゥべえ」
冷えて、こわばった体をもう一度立ち上げる。
「ダメだよ、さやか!
マミの到着を待つんだ」
腰が抜けたみたいに体のあちこちが頼りない。
だから、片っ端から手で叩いて、気合を入れる。
「止めても、無駄だってば。
言ったでしょ? あんたはあたしをサポートしなさいって。
それで生き残ったら、あたしだってもう、これ以上首を突っ込もうなんて思わないからさ」
「本気かい?」
「あんな化け物が存在すること。
あいつらがどうして生まれて、どこからやってくるのか。
別に知らないで済むなら知らないほうがいい。
今なら、あたしだけでカタがつけられる。
だから、ね」
「本当に世話の焼ける子だね……」
投下終了
一回の投稿でまとまった量が得られないので
今回みたいに細切れ投下→たまにageる形式で行こうかなーと思います
更新久しぶりすぎて「これなんのSSだっけ?」って人も多々いそうなので
思い出したらまたあらすじとか挟むよ
>更新久しぶりすぎて「これなんのSSだっけ?」って人も多々いそうなので
>思い出したらまたあらすじとか挟むよ
期待
くっさ
工藤、それお前の部屋の臭いやで
ごめん、スレ落とします
初エタだぁ
悲しい
えっマジ
まだあわてる時間じゃない
もう依頼出てるみたいだし書けないというなら仕方ないが、
いずれ戻ってくることを期待してる
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません