ソーマ「学園都市、か」 (74)
初めての方ははじめまして、そうでないかたはお久しぶりです
まず、いくつか注意事項を。
・ゴッドイーター×とあるシリーズのクロスです。
・前スレとの関連は一切ありません。
・主はゴッドイーターのほうはバースト、2ともに何週かクリア、とあるのほうはアニメ全部、後はwiki見ただけですので、キャラ崩壊あるかもしれません
・更新は不定期なうえ、一回の投下量は少ないです。が、一区切りつくまではエタることはしません。
・時間軸はゴッドイーターはマガツキュウビ討伐後くらい、とあるのほうは適当です。
・ブラッドはクレイドルに異動になって結構いろんなとこに散らばって活動してます。
・ゴッドイーターの主人公はキャラがつかめないので二人とも出ません。
・主の妄想によるいささか勝手なカップリングが含まれます。
・学園都市の外は荒廃している設定。で、学園都市の学生の家族はフェンリルにかくまわれてるという設定です。
・これでまだ2作目ですので、いろいろつたないですがご指摘のほどお願いします。
以上のことがいやな人はそっとじorブラウザバックでお願いします。
では、次から投下行きます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1394247242
学園都市。
日本のかつて関東と呼ばれた地域の大部分を占める形で存在するそこでは、超能力の開発が進められている。
そして、科学技術が都市と外界を隔てる壁の外と数十年の開きがあったとされたゆえか、その出入りは厳しく制限されている。
そんな都市の唯一の空港に虎とも狼ともつかぬ動物のマークがついたヘリが着陸し、中からひとりの青年が出てきた。その青年は地面に降り立ち、周りを見ると一言
「ここが学園都市・・・か」
そうつぶやいた。
青年の名前はソーマ・シックザール。フェンリルから派遣された特殊部隊クレイドル所属のゴッドイーター、通称神機使い兼研究者である。もっとも、本人に言わせれば、研究者といってもまだ見習いらしいが。
(まったく榊のおっさん・・・忙しいのは分かるが俺じゃなくてもいいだろうが・・・)
内心つぶやきながらソーマは案内されるままやや早足で歩いた。
フェンリルと学園都市という二つの比較的閉鎖的な二つの組織が手を結んだのにはわけがある。
元フェンリル局地化技術意開発局所属の特殊部隊ブラッドの活躍により感応種のコアも着実に集まり、またキュウビのレトロオラクル細胞の分析も進んだ結果、対アラガミ装甲壁の強化もわずかずつではあるが着実になされている。それにより、人類がアラガミの恐怖にさらされることは今までより少しずつではあるが減ってきていた。
が、しかし。そんな状況だからこそ、技術をほしがる場所は多かった。その中の一つが学園都市である。
約230万の学生を擁し、科学技術の発展した学園都市にとって最大の防御能力のため、喉から手が出るほどほしいものだったのだ。またいままででもフェンリルから技術提供を受けていたとはいえ、それはやはり最新鋭の技術に比べれば幾分か劣ることとなる。ゆえに最新鋭の技術というのは研究の対象でもあったのだ。
ゆえにフェンリルは、学園都市の技術支援要求並びにゴッドイーターの常駐要求に答え、対価としてそれ相応の報酬、金銭単位の統一、学園都市の技術の一部を要求した上で、フェンリルの技術ノウハウの一部を伝達することのできる技術者を派遣するという形での協力に応じたのだ。
そこで極東地域から白羽の矢が立ったのがソーマだった。研究者でありゴッドイーターでもある彼なら、ということだった。むろん、他支部からもゴッドイーターや研究者が一支部あたり合計各数名ずつ輩出されるらしいが。
そういうわけで、ソーマは学園都市へ降り立ったのだった。
流れ作業でフライト後の手続きを終えると、ひとりの男がやってきて話しかけてきた。
「すみません、あなたがソーマ・シックザールさんでよろしいですか?」
「・・・そうだが」
見たことのない相手に警戒心を軽く向けていると、その男は続けた。
「ようこそ学園都市へ。私は学園都市統括理事長の使いのものです。すみませんが一緒に来ていただけますか?」
その言葉で納得がいった。到着後、学園都市のトップである統括理事長から直々に説明がある、とういうのは事前に榊支部長から伝えられていた。
「わかった」
その返答を聞くと、相手の男は背を向け歩き出した。
どうやらついて来いということらしい。
依然として周囲を警戒つつ相手の後ろを歩いていくと、黒い車がとめてあった。男はその後部座席のドアを開けると言葉を発さずに手で中を指し示した。言われるままに車に乗ると、やがて扉が閉まり、車が発進した。そのタイミングを見計らいソーマは今助手席に乗っている自分を案内してきた男に尋ねた。
「なあ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「なんでしょう?」
「こっちでもアラガミの研究は多少なりとも行われてるんだろ?なら、なんで今さらフェンリルの技術をほしがるんだ?お得意の最新技術を使えば再現くらいは可能なんじゃねえのか?」
「それはそうなのですが・・・。すみません、我々にはそれはわからないとしか・・・。できれば理事長に直接お聞きくだされば分かるかとおもいますが・・・」
「・・・そうか、分かった。すまねえな」
謝辞を伝えながらソーマは分析をしていた。
今の男の様子からは何か知っているような雰囲気を感じた。だが、話さないということは考えられるのは二つ。確証が無いか、それとも口止めをされているか。どちらにしても、情報操作には余念はないらしい。それが分かっただけでも十分収穫だった。
前置きが長い
しばらくして車が止まってドアが開いた。そのまま下りると目の前に見たこともないビルがあった。
もっとも、これをビルと呼んでよいのなら、だが。
なにせ、それには窓がなかった。それどころか、窓も含め入り口といえるところは一切なかった。それに対し、案内してきた男たちが驚かないところを見るとこの状態は当然の状態なのだろう。
ソーマがあまりにも不思議そうにしていたのだろう、案内してきた男たちの一人が近寄ってきて声をかけた。
「どうかされましたか?」
「まあな。これはいったい何なんだ?」
ソーマは目の前のものを指し示しながら言った。
「ああ、あなたは初めて学園都市に来たのでしたね。こちらに至らぬ点がありました、申し訳ありません。これは、学園都市の統括理事長がいる部屋です。一般的には『窓のないビル』と呼ばれています」
「窓のない・・・か。確かにそうだな。だが、それならどうやって中に入るっていうんだ?」
「案内人、と言われる空間移動能力者、通称テレポーターの手を借りることとなります。そろそろくるはずですが・・・」
テレポーター。つまりは瞬間移動を可能とする人間、ということか。
そうソーマが考えているとき、視界の端に今までなかった何かが映ったように見えた。そちらのほうへ目をやると、それは決して錯覚ではないと確信できた。なぜなら、そこには今までいなかった赤毛の少女がいたからだ。
「ああ、彼女です。彼女こそが案内人です」
いままで話をしていた相手は彼女を指し示してそういった。少女もこちらに気付いたようで、こちらへと歩いてきた。
やがて、近くまで来ると、少女はその口を開いた。
「あなたが今回の人ね。あ、自己紹介はとりあえずはいいわ。お互いこれくらいでしか接点を持たないでしょうし」
「・・・そうかよ」
「ええ。無駄な接点は増えすぎると面倒くさいだけだから。さて、早速だけど行くから、できれば動かないで。ちょっと気分は悪くなるかもしれないけど、そこは勘弁してね」
そして、いつの間にか細身の棒状のものを取り出した少女の合図で空間移動をすると、二人は暗い空間にいた。
そこには大きなビーカーのようなものがあり、中には囚人とも、聖人とも、また大人とも子どもともつかない人間がいた。そして、その人間はまずソーマを運んできた(という形容が正しいのかは分からないが)少女に向かって口を開いた。
「毎度ご苦労、結標淡希。今回は少し残って話を一緒に聞いてほしい」
その言葉に少女は頷き、立ち去ろうとはせずにソーマの横に立った。
「さて、改めて学園都市へようこそ、ソーマ・シックザール。私はこの都市の統括理事長を務めるアレイスター・クロウリーだ。さて、まずはフェンリルに協力を要請した理由を話そう。君の疑問も、それである程度は解消されるだろう」
「・・・あの車の中での会話を聞いていたのか?」
別段聞かれて困ることを言った覚えはないが、例の使いの様子を見るに盗聴器などは仕掛けられてなかったのだろう、というのを直感的に感じていたソーマは驚いた。が、アレイスターはこのような反応は慣れているのか、淡々と続けた。
「この街で私の監視下にない場所など存在せず、それはいかなる交通手段においても例外ではないのでな。さて、協力を要請した理由だが、確かにこの街の技術をもってすればフェンリルの持つ技術に勝るとも劣らないものを造ることが可能であるということは認めよう。しかし、それは大本となる情報があってこその話である、という点に尽きる。ゴッドイーターに関しては、学園都市はアラガミに対して防衛力がないのでそれを欲しただけのこと。これでよろしかったかな?」
「ああ、十分だ」
淡々と話すアレイスターに嘘をついている様子はない。が、本当のことも言っていない。直感的にそう思ったが、こういった地位の人間など大概こんなものだろう。ゆえにソーマは一応納得した。
「それはよかった。さて、これからのことを説明しようか。これから君はある研究所で今までどおりオラクル細胞の研究を行ってほしい。ああ、その場所は彼らに伝えてある。また、アラガミ襲撃があった際には、君もゴッドイーターとして出撃し、これを撃破する。以上だが、疑問点はあるかな?」
ソーマとしては質問はなかったのだが、隣にいる少女が軽く手を挙げながら質問をした。
「ここまでの話を聞く限り、私を残した理由が見当たらないのだけど、その点ちゃんと説明してもらえるかしら?」
「心配しなくとも今から説明するよ、結標淡希。君を残したのは他でもない、彼をサポートしてほしいのだよ。幸いなことに、君の移動能力は彼らの武器である神機の分を差し引きしても余りあるほどの能力を持つ。適任だろう?」
「・・・まさかと思うけど、彼も含めて複数人のサポートをしろ、とか言い出さないわよね?」
「さすがにそれは言わないよ。私も一応人間だからね、そんな現実的にかなり難しいと分かりきっている要求は端からするつもりはない。もちろん、それ相応の報酬も出す。悪い話ではないとおもうが?」
「・・・そう、分かったわ」
「期待しているよ、二人とも。では、結標淡希、お客人をお送りしなさい」
会話を終え、少女はソーマに顔を向けた。
「じゃあ、もう一度行くわよ。準備はいい?」
「・・・ああ」
少女はまた例の棒状のものをとりだすといくわよ、と一声かけた。
その後一回瞬きをすると、元にいた外にいた。
「なんかただの他人じゃすまないみたいね?」
「そうだな。こっちの上司からはこんな話は聞いてないんだが・・・」
「アレイスターがちょっと強引な要求をしてくるのはいつもよ。さて、自己紹介するわね。私は結標淡希。よろしく」
「フェンリル特殊部隊クレイドル所属、ソーマ・シックザールだ。こちらこそ、よろしく頼む」
お互いに名乗りを交わしたところで、ソーマたちを送ってきた男たちのひとりが結標に声をかけた。
「話とやらは終わったのか?」
「まあね」
その反応を確認すると男はどちらともなく一般的なビジネスバッグを渡してきた。
「君らあてのものだ。中身は今後の行動についての指示に必要なものだ、と聞いている。だが、それ以外は何も知らない」
それに対し結標は一言謝辞を述べるとバックを受け取ったソーマのほうに向いた。
「時間もそろそろちょうどお昼時だし、場所を変えて話すとしない?」
「そうだな。場所とかは任せる」
「分かってるわよ。さすがに今日来たばかりの人間にそこまでやらせるほど悪女じゃないわよ、私。・・・じゃあ行きましょうか」
そういって結標は先導して歩き出した。
結標の先導で歩いていく間に結標はいろんなことを聞いてきた。
ゴッドイーターとなるには、フェンリルとはどんな組織なのか、いまどんな研究をしているのか、など、それはフェンリルやゴッドイーターについてがほとんどだった。それに対し、ソーマはうかつにはしゃべれないこと――――マーナガルム計画やアーク計画についてだが――――はうまくごまかしつつ、それ以外のことにはできるだけ答えていった。
そうこうしているうちにいわゆるファミレスについた。ちょうど席は空いていたので店員の案内で席に着くと、二つあるメニューのうち一つを取り広げてメニューを考え始めた。それを見てソーマもメニューを決めだした。
二人ともメニューを決め、メニューが来るまでどころか自分の頼んだ料理を食べ終わってもなおソーマへの追求は終らなかった。
「そういえば、例の指示とやらには何が書いてあるんだ?」
いつまで続くのか分からないような追求の返答に交えてようやく料理を食べ終わった結標に問いかけると、結標はようやくそちらのほうに気を向けたようだ。
「さあね・・・って、例のバッグ、ソーマさんが持ってたでしょ」
「呼び捨てでいい。それと、バッグを持ってたのはそっちが持ってるより俺が持ってるほうが自然だからだ」
そういいつつバッグの中から多きめの茶封筒とはさみを取り出し、封を切って中身を確かめる。中にはコピー用紙数枚が入っているようだった。一枚ずつみて確かめると、一枚は学園都市のどこかの地図のようだったので、そちらは結標に渡す。他は学園都市に移るにあたっての届出のコピーのようだったので、そちらはもう一度封筒に戻した。
「どうやらこの後行く場所の指示みたいね」
「場所は大丈夫か?」
「特に問題はないわ。ここからそこまで遠くないみたいだし」
その言葉を聞き、二人は立ち上がった。
その後、二人は指示された場所である神機保管庫、ソーマが所属することになっている第十学区の研究所などを回ったあと、新居である寮に向かったのだが。
「いくら受取人がいねえからってもう少し置き方ってもんがあるだろ・・・」
「それには全面同意するわ・・・」
二人が戻ってくる前にソーマの荷物が届いてしまったらしい。そこまではいい。
問題はその荷物が入り口を塞ぐように置かれていることだ。これでは部屋に入れない。
仕方ないわね、と一言結標はつぶやくと、一度消えて、少し経ってからまたもともと居た場所に現れた。
「とりあえず、この荷物をどうにかしましょうか」
そういって例の棒状のもの―――ここにいたってソーマはそれが懐中電灯だと分かったのだが―――を取り出し、一振りすると目の前の荷物が消えた。
「さて、鍵は持ってるのよね?」
「ああ、バッグのなかに入ってたこれが多分そうだろ」
そういってソーマはカードキーを取り出してスキャンすると、カチャリという音とともに鍵が開いた。ドアを開けてみると中には先ほどまで入り口前で山積みになっていた荷物が中に入っていた。
どういうことか、と一瞬思ったが、人を移動できて物が移動できないということはないということに気付き納得した。
「とりあえず、この荷物を片付けるか」
「そうね、手伝うわ」
短い応酬の後二人は荷解きにかかった。
数時間の後、二人はすべての荷物を部屋に配置することができた。
「さてと、これであらかた片付いたかしら?」
「ああ、そうだな。助かった」
「この程度お安い御用よ」
ソーマの礼に対し、軽く手を振りながら結標は答える。が、その顔はすぐに真剣なものへと変わった。
「ところで、あなた、何か隠してるわよね?」
「・・・なんで分かった」
確かに隠していることには違いない。が、それは他人においそれと言ってはいけないような内容であることは誰より自分が分かっている。
「確かにあなたの話に矛盾はなかったわ。けど、どこか考えながら話してるような節があったのよね。あと、一応これでもいろんな人間と接してきた経験上、そういう空気ってなんとなく感じ取れるの。まあ、ぶっちゃけた話が直感よ」
直感で隠し事をしているのが分かるのか、と内心突込みが入ったが、おそらくそんなことを言ってたらキリがないし、自分も人のことは言えない。
「なるほどな・・・。で、あんたは俺にどうしてほしいんだ」
「別に?話したくなったら話してほしいってだけ。別に今すぐでもいいんだけど・・・ま、その感じから察するにかなり重たい内容みたいだしね。あ、そうそう、これ私の連絡先。と、さっき入ってた地図。一応渡しとくわね」
そういってメモとコピー用紙を渡ししつつ結標は立ち上がった。それを見てソーマもメモを渡す。
「・・・そうか、分かった。こっちの連絡先はこれだ」
「さて、そろそろ私はお暇するわ。すぐ戻るって言ってたから、世話焼きな同居人が心配してるかもしれないしね。じゃあ、また」
そういうと結標は文字通りその場から消えた。
さて、このスレの初投下はこれで終了です。
なんというか、よく一回当たり20レスとか投下できたよな昔の俺・・・。
次回の投下は例によっていつになるかは分かりません。
が、できるだけ早くしたい。けど忙しくなる。多分。
ではでは、また次回。
乙したー
ジャンプの方かと思った
食戟じゃあねぇのかよ…(落胆)
ていうかゾーマかと思った
また佐天との絡みはあるんかね?とりあえず乙です
>>20
おまおれ
大魔王かよってwktkしたわ
どうも、yossiです。
とりあえず、生存報告だけ。
近日中に次の投稿ができるとおもいますが・・・。
ミスって何が起こったのか、書き溜めが吹っ飛びました。
書き直してますので暫しお待ちを。
食戟の方じゃないのか……(落胆)
インデックスとの絡みとか凄そうだったのに
さて、たいへん長らくお待たせしました。
投下分を思い出しながら書いてたら遅くなりました。
そのうえ大学の生活に慣れずなかなか書けない始末…。
とりあえず長い前置き&紛らわしいスレタイでごめんなさい。
次から投下行きます
数日後、学園都市に警報が鳴り響く。
『警告、第七学区にアラガミ出現、研究者は続報に注意し、ゴッドイーターはこれを撃破してください。繰り返します…』
その警報を聞くや否やソーマは出口へ向かって歩き出していた。その道中でソーマの携帯が鳴る。それに気づくと誰からかを確認することもなく出た。
「もしもし」
「結標だけど、そっちいまどこにいる?」
「自分の研究所だ。今出口に向かってる」
「わかった、こっちは今から向かうから、出口で拾うわ。どの辺まで送ればいい?」
「合流したら伝える。その時には指示が出てきているはずだ」
「了解、じゃあまたあとで」
その必要最低限のやり取りをしつつソーマは出口へ急いだ。
出口に出た瞬間、景色が一変した。
「戦闘地点は私のほうに指示が来たわ。とりあえず神機保管庫まで飛ばすわよ。いい?」
その直後に少女の声が聞こえた。うなずくことによってそれに承諾の意を示すと、結標はもう一度懐中電灯をふるった。
神機を回収し結標のもとに戻ると、彼女は無線をつないでいた。
だが彼に気づくと、素早く懐中電灯を取り出し、無線を切った。
「相手はウコンバサラ。そっちは何度か相手したことがあるって聞いたけど?」
「ああ。あいつなら何頭もぶっ倒してる」
「ならいいわね。飛ばすわよ」
そういって結標は懐中電灯をふるった。
2,3回ほど転移してたどり着いたのは大通りのビルの屋上だった。
かなり遠いが、青いワニのようなアラガミ―――ウコンバサラが我が物顔で闊歩しているのが見えた。
「目標の場所はここから…」
「約100mってとこか?」
「…なんでわかるの?」
結標が言い切る前にソーマが言ったことに結標は驚きつつ問いかける。
「一応これでも長いことゴッドイーターをやってるんでな。これくらいはできる」
「…すごいわね。じゃあ、あとはよろしく」
そういうと結標はソーマをウコンバサラの死角に飛ばした。当の本人は安全圏である屋上に留まったのだろう。彼女がアラガミに対してできるのはせいぜい足止めが限度だ。
それを悟るとソーマはウコンバサラに接近し、いまだ気づいていない敵に対し自らの武器である純白のバスターをチャージクラッシュの位置に構えた。
「目障りだ…消えろ!」
その一言と刀身が青く輝いたことを合図にバスターは振り下ろされた。尻尾を結合崩壊させられた一撃でウコンバサラが気づき一声あげた。それに対しソーマもバスターを構えなおした。
口に電撃をため噛みついてきたウコンバサラに対しそれを左にかわすことで対処し、尻尾を振って攻撃を仕掛けてくればパリングアッパーでカウンターを仕掛けるかいったん引いて応戦する。放電に対してはガードして、突進は横に回避してこれをかわす。
いくら弱い部類のウコンバサラとはいえど念のために、と持ってきた回復錠の出番もなく、あっさりとウコンバサラの討伐にソーマは成功した。
ウコンバサラの骸の横に立つと、ソーマは神機を捕食形態に変形させた。そして、間もなく神機の咢がその刀身に戻ると、アーティフィシャルCNSが輝いた。コア剥離が成功したのだ。
それを確認してから結標に連絡を取る。ほとんど間をおかずに結標が近くに転移してきた。
「もう終わったの?」
「まあな」
「早くない?こっちからも一応見えてたけどさ」
「なら話は早いだろ。今回は相手も雑魚だったから楽だったってだけだ」
「そう。とりあえず神機保管庫に飛ばせばいい?」
「ああ」
「じゃあ、行くわよ」
その数秒後、二人は神機保管庫にいた。
その後、ソーマはあらかじめ持ち込んでいたコア保管容器に摘出したコアを保存し神機を安置すると外へ出た。
まだ結標は外で待っていた。
「へえ、その中にコアっていうのが入ってるの?」
「まあ、な」
「へえ、ちょっとみせてよ」
興味津々といった風情で結標が聞いてきた。
「構わないが、絶対に触るなよ」
「それってネタふり?」
「死にたいのなら触ればいい」
「…わかったわ」
軽く問い返した後のソーマの口調で危険度を察したのだろう、結標が真剣味を多少は帯びた声音で返答した。
そしてケースのふたを開けるとそこにあったのは澄んだ色をした柔らかそうな球体の物質だった。
「へえ、意外と普通なのね」
「見た目はな。だがこれがなければ神機はできないし、これを研究して初めてアラガミのことのよくよくわかってきた、とてつもなく重要なものだ」
「え、そんなに?」
「そんなにだ。…もう閉じていいか?」
「ええ、ありがとう。一目だけでも見れただけで十分だわ」
そうかよ、と言いながらソーマは容器のふたを閉じた。
「で、次は研究所に飛ばせばいい?」
「ああ、このコアを置いてこなきゃいけないからな」
「わかったわ。じゃあ飛ばすわよ」
そういって結標はもう一度テレポートをした。
「ありがとうな、今日」
次に研究所についたときにソーマが口を開いた。
「礼なんていいわよ、別に。こっちも指示だしね」
「それでも、だ。俺が勝手に言いたいだけだ」
「…そう、ならありがたく」
「ああ。改めてこれからもよろしく頼む」
そういわれて差し出された手を見て、かつての同僚だった3人を思い浮かべた。どいつもこいつも胡散臭い上に一癖も二癖もあり、しかもなおかつ自分も含めて何かしら隠し事をしていた。それでもなんだかんだでうまくやっていけたのはあくまで仕事上の関係だったからかもしれない。
隠し事があるのは前も今も同じだ。ましてや、目の前の青年に比べればあの年中金髪グラサンアロハや素顔を知らない魔術師のほうがよっぽどか胡散臭いだろう。それに、今回は4人でなく2人なのだ。きっとうまくやっていける。
「ええ、こちらこそよろしく」
目の前のこいつとは、うまくやっていける。だから、私は私のこいつのためにできることをやる。そんな確信と覚悟にも似た意志を覚えながら、結標は差し出された手を取った。
はい、これにて本日の投下終了です。
やっべえレス数にしたらちょっとありえないレベルで少なかったwww
ほんとにごめんなさい、久しぶりとはいえ明らかに俺の見込みが甘かったです
これからはひと月一回更新くらいを目標としたいです。
少なくとも今回みたいなざまにはならない…はず。
ではでは、また次回に
さてさて、投下のお時間です。
できればこっからは月一更新くらいにしていきたいと思っています。
今度は書き溜めはまだ8000字くらい作ったから一回の量が少なくなるということはない!・・・はず。
ということで投下行きます
「働け、だァ?」
ある事情で世話になっている黄泉川愛穂の言葉に一方通行は疑問たっぷりに問い返した。
おうむ返しで帰ってきた言葉に黄泉川はうなずいた。
「そうじゃん。お前は今高校も通ってない。今までは仕事みたいなこともしてたみたいだし大目に見てたけど、どうやら今はそれすらもやっていないっていうことくらいはわかるじゃん。ちょうど第十学区に研究所っができて、優秀なら学生でも雇うってはなしだから、物は試しってことでやってみるといいじゃん?」
「けっ、どうせろくでもねェ研究所なんだろォがよ。だったら俺じゃなくてもほかにも優秀な研究員なんていンだろォが。なンでわざわざ俺がやンなきゃなンねェンだよ」
「建前だとなんかそれっぽいけどそれってただ単純に面倒くさいだけなんじゃってミサカはミサカは……」
ほとんどいつも変わらないけだるい顔のまま返答をすると、横にいた打ち止めが口をはさむ。言いかけたセリフを無言で頭に手刀をいれ黙らせると、黄泉川のほうに向きなおった。
「でもまァ、とりあえずその研究所の話だけは聞いておこうか?」
「そうそうその意気じゃん。なんでもアラガミっていうのを構成するオラクル細胞っていうのを研究していて、それをもとにしたアラガミに対抗できる唯一の手段である生体武器の開発、およびそれの適合検査、武器の担い手の訓練所などを備えた研究所って話じゃん」
「アラガミっていうのは前でてきたやつだよね?ってミサカはミサカは確認をとってみる」
「そうそう。少なくとも青いワニみたいなやつは確認されてる。それで、それができたのはついこないだで、一部は学園都市上層部で手配したそうだけど、それでもまだまだ人手が足りないから優秀な人間なら学生でもいいって話じゃん。しかも書類検査とかだけで、いわゆる面接みたいなものはなし」
「へえ、いい物件じゃないの」
「桔梗、何他人事みたいに言ってるじゃん?そうだと思ったから紹介したじゃん」
まるで自分は関係ないといった風情でつぶやいた芳川桔梗に黄泉川が切り返す。どういうことかわからないという風情の芳川に黄泉川がさも当然といった風情で言い放った。
「働いてないのは桔梗も一緒だし、働き先は研究所。どう考えても桔梗向きじゃん?」
「えー、面倒くさいわよそんなの」
「それでもじゃん」
そのやり取りに横やりを入れるように少年が問いかけた。
「それよりよォ、適合検査ってなァどォいうことだ?」
「なんでも、細胞によっても好き嫌いがあって、そのマッチングが高いとそれに選ばれるらしい。とはいっても、私も詳しいことはしらないじゃん」
「唯一の手段ってのは?」
「普通の武器―――銃火器とかのことだが―――だと有効な攻撃にならないらしいというのは知ってるじゃん?それは細胞間の結合?が強いからで、ならその相手の細胞を使った武器を使えば、みたいなことらしい。私も詳しいことは知らないが、なんでも普通の武器をナイフとして例えると、普通の細胞の結合はロープみたいなもので、強い力を加えると切れる。だけど、これが金属の棒だったらどんなに力を加えても切れない、みたいなことらしいじゃん。それに、アラガミはなんでも食らうって性質も相まって、核廃棄物ですらその身に取り込むことができるのが確認されてるじゃん」
「なるほどなァ、それで面接とかがないわけか」
「え?つまりどういうことだってばよってミサカはミサカは最近知った言い回しであなたに聞いてみる」
納得したという表情でつぶやく一方通行に打ち止めが問いかける。
「良くも悪くもここはマッドサイエンティスト連中が多い。木原なンかがいい例だな。そういうやつは書類で突っぱねれる。それに、正直こっちではそンなもン今まで出てきてなかった、つまるところ研究とかも全く進ンでなかったわけだ。とりあえずよっぽどぶっ飛んだ連中じゃなければ優秀な奴をわんさと集めたいって腹だろォよ」
「なるほど、そういうことか。納得じゃん。で、桔梗は確定として、・・・」
「ちょっと待ってなんで私は確定なのよ」
「働かざる者、じゃん。一方通行はさっきも言ったように少し前まで仕事をしていた上に一応学生だから大目に見てたじゃん。だけど桔梗は少し前に研究所首になってそのあとはそのままずっと居候。いい機会だし、働くといいじゃん」
黄泉川の言葉に芳川がツッコミをいれる。が、高校教員はそれを至極まっとうな理屈で跳ね返した。一応昔馴染みの仲で、黄泉川の気質もわかっている芳川はややしぶしぶながら首を縦に振った。
「・・・わかったわよ」
「いい返答じゃん。で、一方通行はどうするじゃん?」
笑顔とともにかけられた言葉に少年が答えるまでは少し間があった。
「・・・物は試し、か。だまされたと思ってやってやらァ」
「いい返答じゃん。んじゃ、仕事ついでにそっちのほう寄ってくるから、ちょっと今日は遅くなるじゃん」
「いってらっしゃーいってミサカはミサカは元気よく仕事に向かうヨミカワを見送ってみたり!」
「おう、いってくるじゃんよ!」
見送りの声にこたえながら黄泉川は家を出た。
家を出てから、ふと一方通行の答えた時の苦悩と願望が入り混じったような表情を思い出して思った。
(あいつもいいカオするようになったじゃん)
少年が過去にどのようなことをしていたのか、その過程でどんな信念を持っているのか、黄泉川はそのほんの一端しか知らない。それ以上のことを知ろうとすれば、その時は本人が全力で止めるだろう。
どのようになっても彼は根がやさしいのだ。ゆえに、一人で抱え込もうとし、自分の痛みは他人に漏らそうとしない。
だが、あの時。あの答えたとき、ようやく少年は自分自身に課した枷をどうにかしようとしたのではないのか。
その枷の中でもがこうとしたのか、その枷そのものを外そうとしたのか、それはわからない。だが、自分自身に課したものと立ち向かう努力をした。それを成長と呼んでもいいのではないか。
そこまで考えたところでうれしくなってしまうのは、自分が教師だからか、それともあの少年の保護者だからか。
「……たぶん両方だろうな」
誰にともなく、黄泉川はつぶやき、通勤のために自家用車を発進させた。
黄泉川に働けと言われたとき、一方通行は最初面倒くささしか感じなかった。
だが、聞かされた研究所の内容を聞いて、心中は少しずつ変化していった。
あのアラガミというのには通常兵器は意味をなさない。それは一方通行も知っていた。だが、それに対抗する手段がよもやアラガミを構成する細胞と同種のものを使った武器を用いることだとは知らなかった。
だが、そんなことはどうでもいい。そのオラクル細胞を研究すれば、ほかの手段も見えてくるのではないのか。ましてや、自分はこの都市で最強の能力者で、いかに難しい計算でも暗算でできる自信がある。そんな自分なら、ほかの対抗手段を見つけることも可能ではないのか。そう考えたのである。
だが、少年は悩んでいた。今隣で少し涙目になって頭を押さえる少女のためなら、自分はなんでもする。
だが、これは彼女らとともに大衆のためのものであることも理解できた。そして自分が血なまぐさい道を歩んできたことも事実。そんな自分が今更人助けなど虫が良すぎるのではないのか。何より、一流の悪党であるという矜持に反するものではないのか。そうも思えたのである。
だが結局は了承した。打ち止めのためなら。その意思が彼に決断させた。
もし仮にその研究所の建前がすべてダミーで、実態は人体実験場でした、とかいうことなら自分がちう直々につぶす。そういう覚悟も秘めてだった。
ウコンバサラが出現した数日後、研究所に新顔が二人入ってきた。一人は杖を突いた白髪赤目の青年で、もう一人はミディアムカットの女性だった。青年は一方通行、女性は芳川桔梗と名乗った。
ソーマがふたりにオラクル細胞についていろいろ教えると、二人とも呑み込みが早く教えたことについて質問を飛ばしたりしてきた。
少年のほうの頭の回転の速さを痛感させられた出来事があった。
しばらくたったころにホストコンピューターの一台が故障し、計算ができなくなるというトラブルが発生したのだ。むろん、多数の研究者は数値の計算ができなかった結果どんどん仕事がたまる結果になっていたのだが、青年の仕事は一向にたまることはなかった。
いったい何事かと思いのぞいてみると、一方通行はあろうことか計算をすべて暗算で行っていたのである。しかも、これがのべ乗ならまだ理解の範疇だろう。だが、対数や4桁以上同士の除法や乗法、しまいには三角関数まで暗算で出してそれをもとに計算をしていたのである。
ホストコンピューターは少々ののちにまた正常に稼働しだしたのだが、そののちに件の数値をコンピューターを使い再検証を行ったところ、なんとただの一つとして間違いが見つからなかったのである。これは研究者たちを大いに驚かせた。もっとも、芳川はこの程度予想の範囲内といった様子だったが。
また、この時には芳川のほうも優秀な研究者であることも分かった。
なにせ、このホストコンピューターの故障原因を突き止め、速攻で応急措置をし、それの効果が切れる前にすべての修理を終わらせていたからだ。
ちなみにこの故障の原因などをほかの研究者にも説明しつつ対処にあたっていたのだが、ほかの研究者は時にわからないような表現や用語が出てきたらしく、こういうときにも役に立つであろう一方通行がほかの分の仕事も請け負っていたことも相まってのちに「あの子がいれば10倍は早かったわね・・・」と軽くぼやいていた。
二人の優秀さが際立ったこの事件から数日たったころ、例の芳川がソーマを呼んだ。
「どうした?」
彼女の仕事が遅れている様子もなく、全く呼ばれた原因がつかないままにソーマは聞いた。
「これってつまり・・・そういうことよね?」
そういってパソコンの画面をソーマに向けた。そこには偏食因子の適合率の画面が映し出されていた。
ちなみに敬語は堅苦しい言葉遣いを嫌ったソーマが芳川のほうが年上ということもあいまってなくていいといった結果、ソーマのほうが位としては高いのだが使っていない。
閑話休題。件の偏食因子の適合率は95%以上となっていた。
「まあ、たぶんそちらが考えている通りだが・・・確かか?」
「ええ、あの子のお墨付きよ」
「そうか・・・」
万が一、数値の入力ミスなどのことも考慮してソーマは聞いたが、返ってきたのはそんな回答だった。なるほど逆三角関数まで暗算でやってのける人間のお墨付きならほとんど心配はないだろう。
「よし、後でこっちもしっかり目を通したい。プリントアウトしておいてくれるか?」
「了解」
そういってまたパソコンを操作すると、ほどなくして近くにあったプリンターから用紙が出てきた。プリントされたレイアウトから察するに先ほどの画面のものだろう。
それを手に取り、画面に映っていた内容に間違いないか確認した後、
「佐天涙子、か」
ソーマはそこに書いてあったこの都市初の例となる名前をつぶやいた。
それから数日後、佐天涙子は学園都市から呼び出され、ある研究所に来ていた。
なんでも、特殊な例に自分が適合する可能性が高いと判断され、それの確証を得たいから、それに協力しろ、とのことらしい。
やがて、研究所から白髪で褐色の肌の男性が出てきた。こちらを見ると迷いなく歩いてきて、佐天に問いかけた。
「君が佐天涙子さんか?」
「あ、はい。そうですが・・・」
とりあえずこの場にいるということはおそらく研究者の方なのだろう。学校で入り口で待っていれば迎えが来ると説明を受けていたから、たぶんそれだ。そう思いつつ一応は警戒しながら答えた。
「一応身分の確認をしたい。今から答える質問に正直に答えてほしい」
「あ、はい」
その答えを確認してからソーマは様々なことを聞いてきた。とはいっても、それは自分の血液型、生年月日、家族構成と家族の誕生日だった。確かに本人確認としては普通だろう。
「よし、妙なことを聞いてすまなかった。ついてきてくれ。話しながらある程度説明する」
そういってソーマは先行して歩き出した。
そこで受けた説明は驚くべきものだった。かいつまんで言うと、ゴッドイーターになる素養があるからそれを受けろ、ということだ。
「・・・それってもしかして強制ですか?」
「すまんがそうだ。失敗の確率なんざ考えんのも下らねえレベルで低いから気にしなくていい。面倒かもしれねえがな。っと、ここだ」
そういうと彼は目の前の扉をICで開けると、中の赤い髪の女性に話しかけた。
「すみませんね、忙しい中」
「いえ、こっちも妹が実用化したものだもの、私が来ないと」
「無理は禁物ですよ。フライヤも大変なのでしょう?」
「大丈夫よ、私がちょっと抜けたくらい」
どうやら二人は知り合いのようで、ソーマのほうが敬語を使っているといえど打ち解けている様子だ。
「ところで、その子が?」
「はい」
「初めまして、佐天涙子です」
ソーマが肯定したところで佐天は女性に自己紹介すると、女性も柔らかい表情で答えた。
「初めまして、レア・クラウディウスよ。今日はよろしくね。とりあえず、そこに寝てくれる?で、ソーマ君は・・・」
「わかってる。準備しておく」
「ええ、よろしく」
そういうとソーマは出ていき、レアも何やら準備を始めた。キーボードを打ちながら、顔を佐天に向けてレアは言った。
「気を楽になさい。あなたはもうすでに選ばれてここにいるのだから。それに、緊張してたらいい結果は出ないわよ?」
「・・・そういうものなのですか?」
「そうそう。オラクル細胞も生き物なんだから、感情があってもふしぎじゃない。だから、リラックスしてそれを受け入れるくらいがちょうどいいのよ」
「・・・そうですか」
「そ。悪いけど、私ももう行くわね。別室から放送で指示を出すから、それに従って動いてね」
「はい」
そういってレアは部屋を出ていった。
それからしばらくして、レアの声がスピーカーから聞こえた。
「さて、じゃあ今から対アラガミ討伐部隊、ゴッドイーターとしての適合試験を始めるわね。何度も言ってるけど気を楽になさい。もうあなたは選ばれてここにいるのだから」
そうはいってもやはりこういった場面だと体は硬直するものだ。そう思っていると、横に何やら黒い金属製と思われるケースが出てきた。
レアの指示通り、そのくぼみの部分に手首が来るように腕を当てた。すると、手首に腕輪のようなものがはめられた。
「しばらくそのまま。動かないでね。―――――あなたに祝福があらんことを」
その言葉と同時に、天井から降りてきた装置によって腕輪に何かがつけられた。
その瞬間、手首を中心として体全体に激痛が走った。その痛みはいくら絶叫しようと、転げまわろうともなくならなかった。もしかしたら永遠に引くことはないのではないか、このまま死ぬのではないか。そう頭をよぎったとき、痛みが徐々にではあるが和らいでいった。
何とか手にしていた剣形態の神機を杖代わりにして立ち上がると、いまだ腕輪からは黒煙が上がっているものの、何とか立ち上がることができた。
「おめでとう。これで適合試験は終了よ。結果はむろん成功ね。今は体力を回復することに努めなさい。それに、こちらとしても少しデータを取りたいし。さっき横になってたところに横になってて。すぐ行くから」
言われた通り横になっていて、しばらくするとレアとソーマが入ってきた。
「改めてお疲れ様。神機はそこにおいて。データといっても、いわゆるバイタルデータ――――心拍数とか、血圧とか――――をチェックするだけだから安心して。で、その関係と体力回復のために、一回あなたには寝てもらうわね。大丈夫、仮眠をとるようなものよ」
レアはそういいながら注射針を取り出し、佐天の腕に刺した。その瞬間、意識が遠のいていくのを感じた。佐天は睡魔にあらがわず、意識を手放した。
佐天が目を覚ましたのは保健室のような場所だった。
いつの間にか佐天は病院服のようなものに着替えられていた。たぶん、そちらのほうがデータがとりやすいという理由から着替えさせられたのだろう。
手首には黒い腕輪がつけられており、それを見て自分もゴッドイーターになったのだ、ということを改めて実感した。
保健室のようとはいっても、保健室ではないのだろう。とすればここはどこなのか、と思ったところで、レアがコップを片手に持って入ってきた。臭いからして、中身はコーヒーだろう。
「目を覚ましたみたいね。うん、体調もよさそう」
佐天の顔を見て、穏やかに笑いながら言った。
「ここは研究所の仮眠室。やっぱり泊まり込みで研究とかする人も少なくないからね、この手の施設には余念がないの。まあ、そんなのは置いといて。気分はどう?」
「・・・ちょっとまだけだるいですけど、悪くはないです」
「まあ、寝起きのそれ、ってところかしら?」
「あ、まさにそれです」
最初こそ初対面ということで警戒はしていたが、同じ女性であり、レアの人柄も幸いして警戒心は和らいでいた。
「そう、ならよかった。ところであなた、ゴッドイーターについてはどのくらい知ってる?」
「ごめんなさい、ほとんど何も知りません・・・」
「いいのよ、謝らなくて。女子中学生ですもの、逆に詳しかったらこっちがびっくりだし。一応確認のようなものだから、気にしないで」
「そう、ですか。わかりました」
「うん、素直なのはいいことよ?」
レアは穏やかに笑いながら言った。つられて佐天も笑う。
コーヒーを一口飲み、ところで、とレアが切り出した。
「これからのことなのだけれど、今説明していいかしら?いやならまた別の機会に、ってことになるけど」
「大丈夫です。お願いします」
「わかったわ。それじゃ、これを」
そういって近くに置いてあったファイルを佐天に渡す。中にはプリントが数枚入っていた。
「それの中の文章が一番上にあるやつを見て頂戴。そこにはフェンリルについての通り一遍のことが書かれているわ。といっても、その実態は目にしたほうが早いけどね。この紙についてはそのままだから、家でゆっくり読んでおいて。で、その次の紙には、学業とゴッドイーター業の両立について。新米のゴッドイーターには座学―――つまり授業のようなものだけれど―――も必須で受けることになってるから、それ関連の説明もそこに載ってるわ。で、その次からは地図。この研究所と、神機保管庫、あとゴッドイーターのブリーフィング・・・って言ってわかんないわね、まあ平たく言ってしまえば打ち合わせを行うための施設周辺の略地図と見取り図が載ってるわ。その他もろもろの煩雑な書類は後で落ち着いたときに渡すわ。通帳とか、いろいろと用意してもらうことになるし。ここまでで質問は?」
「・・・特には」
「じゃあ、続けるわね。一枚目はまあさっき言った通り、フェンリルについて通り一遍のことが書いてあるだけだし、特に解説する必要もないから飛ばすわね。―――」
そういってレアはひとつずつ丁寧に説明していった。
しばらく説明を受けたあと、佐天はふと思い出したように言った。
「そういえば、外って・・・」
「もしかして帰りの心配をしてる?」
「・・・はい」
「寮監さんにはもうすでに連絡済だから心配しないで。それに、こんなくらい中女の子を一人で帰らせるほどうちも非常識じゃない。ちゃんと送らせるから、安心して?」
「ありがとうございます」
「当然の処置よ、気にしないで」
そういうとドアがノックされ、ソーマが入ってきた。その手には透明なビニールに入った何やら黒い服と思われるものがある。
「頼まれた品を持ってきました」
「ありがとう、助かるわ」
「・・・えっと、それは?」
「ああ、これは制服。その腕輪じゃ、今までの制服を着るのは難しいでしょう?だから、専用のものを、ってわけ。サイズが変わったらまた言って?」
言われて確かにこの状態では伸縮の利く体操服はともかくとして、今までの制服は着るだけでも難しいことに初めて気づいた。
「・・・で、どうやって着るんですか?」
そう聞くと、ビニールから新しい冬服を取り出した。袖の部分は両方とも中途半端につながっており、これはどうやったら見慣れた制服になるのだろうか、と疑問に思った。
「面倒くさいから実演しましょうか。ソーマ君は席をはずしてもらえる?」
「さすがに年下の女の子の裸見ようと思うほど変態ではありませんので」
そういってソーマは部屋から出ていった。
それを確認してから佐天は上半身の服を脱いだ。
レアは佐天の手を取ってどのようにこの制服を着るのか教えていった。なんでもあの中途半端につながった袖を巻き寿司のように腕の回りを覆わせ、そして両端をボタンで留めることで固定する、ということだった。なるほどこれなら確かに比較的伸縮が利かない制服でも腕輪に邪魔されることなく難なく着られるだろう。
そして、ゴッドイーターの報酬の振込先のもろもろのための書類はまた後日ということになり、佐天は研究所側が手配した車で帰路に就いた。
さて、今回の投下はこれにて終了です。
はいまたまた来ました佐天さんゴッドイーターになるの巻。
芸がなくてごめんなさい。だってとあるキャラの誰をゴッドイーターにするよ?ってなった時に自分の知ってるキャラからだと佐天さんくらいしか候補が・・・orz
あと、黒い腕輪から察せられると思いますが、佐天さんはP66偏食因子、つまりブラッド偏食因子の適合者です。
血の力は一応考えてはありますが・・・半ばチートだな、と自分でも思ったのでテコ入れあるかも。
それはそれとして、まさか復活分にさらに追加したのを含めて作った8000字を一瞬で使い切るとは思ってもみなかった・・・。
ひとつのレスの字数を考え直さなくてはいけないかもしれませんね
ではまた次の投下の時に。
乙です
サテンサンはどんなゴッドイーターになるのかな…極東の地獄をくぐり抜けるとアラガミに対する感覚がおかしくなるからなぁ…
保守
先に宣言しておきます
明後日、昼か夜に投下しに来ます。
ただ今主は金欠なので追加エピが出来ないという。ちくせう。
というわけでまた
はい、宣言通り投下に来ました。
今回は前ほど敵さん祭りにはしないつもりですが・・・まあ、その辺は。
それでは行きます。
「まあ、そんなわけで私も晴れてといっていいのか、ゴッドイーターになったわけです」
その後日、佐天は風紀委員177支部でゴッドイーターの適合試験の話をしていた。
「・・・まさか、そんなものだったとは思ってもいませんでしたわ」
「そうですね、少なくともアルコールパッチテストと同等のものではありませんね」
それに反応したのは彼女の友人でありこの支部の一員でもある白井黒子と初春飾利だ。
その言葉に佐天も笑いながら答える。
「まあ、結構痛かったですけど、一過性のものですし、何とか耐えれました」
「そういえば、万が一失敗したらどうなるの?」
ふと質問したのはこの中で最年長の固法美偉だ。
「ちょっとわかりませんけど・・・。でも、多少なりともリスクはあるとおもいます」
ごめんなさい、なんか酉違うと思ったら#と文字列の間にスペースが入ってました。
>>1ということを示すために書いておきます。
「そのリスクの量によっては確かにアルコールパッチテストくらいということでも納得ですわね。あくまでリスクの量によりますが」
「まあ確かにそうですね」
「というか、その腕輪邪魔じゃない?外せないの?」
「まあ確かに邪魔ですし、外せないのは不便ですけど・・・。でも、必要なものですから」
そういって佐天は笑う。それを言って自分で気づいた固法は聞いた。
「ちょっとまって、制服ってどうやって着るの?」
その言葉に二人も気づいた。あんな腕輪があったのでは制服など着られない。今日は休日で今は袖の広い私服を着ているが、制服など入らない。
「あー、えっとですね・・・」
そういって周りを見渡すと、ちょうど丸めたポスターのようなものがあった。
「これ、借りていいですか?」
「え?いいけど・・・」
念のため固法の了承を得てから佐天は手に取った
それを横に向けて佐天は言った。
「ちょうど服の袖って横から見るとこんな感じですよね?それを・・・」
そこで切ってポスターを広げる。もともと丸まっていたポスターは広げても丸まろうとし、インボリュード曲線を描く。佐天が狙っていたのはそれだった。
「こんな感じにして、切った両端をボタンで留めれるようにしてあるんです」
その言葉にほかの二人も納得する。
「確かにそれなら袖口に何があろうと関係ないですね」
「ちょっとまってください、なら今後買う長袖の上着とかって全部そういうことをしなきゃいけないのですか?」
「そうらしいです。先輩方も面倒だけど、慣れるしかないと言ってました」
「佐天さん、家事一般は大丈夫だから、そこが不幸中の幸いよね」
「そうですね。本当にそうですよ」
「ところで、私たちと年が近い子っているんですの?」
「研究所の人によれば、ここから一番近い極東支部には私と年が近い子がいるって言ってました」
「へえ、そうなんだ」
そんな会話をしていると、佐天は時計を見て顔色を変える。
「あ、もうこんな時間。私今日研究所いかなくちゃいけないので、そろそろ失礼しますね」
「・・・そもそも、ここはあなたたちの休憩所じゃないんだけどね・・・」
「でも、ここじゃなきゃ伝えれないじゃないですか。では私はこれで」
その言葉に軽くため息をつきつつ固法は指摘する。それに軽く笑いながら佐天は出ていった。
完全に姿が消えたことを確認してから残った3人は話す。
「まさか佐天さんがゴッドイーターになるとはね・・・」
「ほんとですよ。夢にも思ってなかったっていうのを好みで体験するとは思ってませんでしたよ」
「同感ですわ。けれども、夢ではないのですわよね・・・。ところで初春、さっきから何をしているのですの?」
そう、初春は先ほどからしゃべりながらせわしくキーボードをたたいているのだ。目も複数あるモニターに順次目を向けている。
「え?ただ単にその、オラクル細胞?とアラガミについて情報を入手しているだけです」
「どうやって?情報規制が敷かれてるんでしょ?」
「情報の大本にクラッキングかけているので無問題です。さて、そろそろ手を引きますか・・・」
そういってさらに数分せわしなくキーボードをたたいた後、初春は手を頭上にくんで伸びをした。
その様子を見て固法が問いかける。
「で、どうだったの?」
「とりあえず、そこそこ情報はとれたはずです。クラッキングが思っていたより簡単だったのがちょっと気になりますけど。とりあえず、表示しますね」
そういって今さっき入手した情報を開く。残りの三人は後ろに顔を寄せ合って画面を見た。
ファイルを開くと、そこにはずらずらと文字が並びたてられていた。
「・・・交代しつつ整理しましょうか」
さすがに量が多いと判断したのだろう固法が言った言葉に反対するものはいなかった。
ちなみにこのひたすら情報を整理するという作業だけでのべ2時間ほどかかり、終わった瞬間全員が机などに突っ伏したという。
その数時間後、佐天は研究所へ来ていた。
まだゴッドイーターとして未熟な彼女は本来極東支部に送られ、座学、戦闘訓練などを受けるのだが、今回は佐天が学園都市の学生であるということを鑑みて特例としてここで座学を受けることとなったのだ。
時間ぎりぎりに研究所について腕輪でゲートを開けて入った佐天をソーマが迎えた。
「・・・来たか。もう少し早く来れるようにしろよ?まあ、遅刻しなかったからいいが」
「・・・ごめんなさい」
それに対し軽く息の上がった様子で答える。
「気にするな。ついてこい」
そういってソーマは歩き出した。まだこの研究所の地理がわかっていない佐天はただただついていくしかできない。
ついたところである程度座学が終わり、戦闘訓練に移行する。見た目だけならそこそこ大柄に見える剣でダミーを倒していくだけだが、それだけでも今の佐天には集中しないと倒せないレベルだった。
ある程度の数のダミーを討伐したところで別室のソーマから声がかかった。
「よし、今日はここまでだ。後ろの扉から出て神機を置いて来い」
そういって神機を置いて来ようとしたとき、警報が鳴った。警報自体はすぐやんだが、やや焦りを含んだソーマの声が少し経ってから聞こえる。
「佐天、今そっちに行く。待っていろ」
宣言通り、ソーマはすぐ来た。時間にして一分とたっているかいないかといったところだろう。そんなソーマに佐天は問いかける。
「何が起こったんですか?」
「アラガミがでた。お前は雑魚討伐部隊に加わってもらう。俺は別の部隊だが、・・・死ぬなよ」
その顔にまだ多少の焦りはあったが、嘘はなかった。まさかこんなところで初陣が来ると思っていなかったが、行くしかあるまい。
「あ、それと。これをつけておけ」
そういって渡されたのは黒い小さな機械だった。
「無線機だ。片耳につけておけ。何かあったら連絡する」
「わかりました」
短い返答とともに佐天はそれを耳につけた。使い方も歩きながら教わる。
ソーマは途中から誰かに電話をかけていたが、それでもすたすたと歩いていく。その後ろを、佐天はついていくしかなかった。
出口には赤毛の少女がいた。その少女に対しソーマは話しかける。
「相変わらず早いな」
「当たり前よ。こっちが時速換算で何キロで飛んでると思ってるのよ。・・・それより、その子が?」
「ああ」
「初めまして、佐天涙子と言います」
「初めまして、佐天さん。私は結標淡希。一応ソーマさんのサポートをしてるテレポーターよ」
お互い自己紹介が済んだところでソーマが結標に言った。その言葉でもしかして先ほどソーマが電話していたのはこの少女なのか、と思った。
「早速だが結標、今回はちょっとルートを変えてくれ」
「どんなふうに?」
「小型のアラガミが第七学区に集まっているらしい。能力者が戦闘してるらしいが、まあ長くはもたんだろう。だからそこにこいつを送る。もちろん、援護はつけるがな。俺を神機保管庫に送るのはそのあとだ」
「最初に飛ばすところの座標は?」
聞かれてソーマは自身の端末を出して結標に見せる。
「了解。じゃあ、早速行くわよ」
その直後、三人はその場から消えた。
時は少しさかのぼり、10分ほど前、別の場所にて。
「それにしても暇ねー・・・」
御坂美琴は歩いていた。寮にいても何もすることがないからと言ってゲームセンターに繰り出したはいいものの、だいたい攻略法も編み出している身としてはすぐ暇になってしまい、こうして歩いている次第である。
(誰か話す相手でもいれば話は別なんだけど・・・)
そう思ってあの少年を探してしまうのは惚れた弱みなのだろう。
「あら、御坂さん?」
だが、自分に声をかけたのはあの少年ではなかった。その声に反応して振り返るとそこには長い黒髪の少女が二人いた。二人ともがお互いを知っていた。
「婚后さん、泡浮さんも。どうしたの?こんなところで」
「ただ単におしゃべりしていただけですわ。歩きながらおしゃべりしていたらこんなところまで出てきてしまって・・・」
「・・・不良たちに絡まれたりするから気を付けたほうがいいわよ?」
「一度痛い目にあっている身ですもの、それくらいは警戒していますわ」
「そういえば湾内さんは?」
「彼女は用事だといっていましたわ」
「そうなんだ。――――」
そんな風にしゃべっている近くに黒いケロイド状のものが発生する。それの正体にいち早く気付いたのは御坂だった。
「二人とも、逃げるわよ!」
そういって御坂が先導する形で三人は走る。
御坂たちがたどり着いたのは小さな倉庫の前だった。
そして、息を整える少女たちの後ろには。
「・・・まだついてきてたのね」
小型のアラガミが数頭いた。
それを確認すると、御坂は近くの鉄骨を自分の能力を用いて引き寄せた。
「これでも食らっとけぇ!」
その掛け声とともに鉄骨を能力で打ち出す。それは数頭巻き込む形で見事に命中した。
婚后も何とか加勢したいが、自分ではあの鉄骨を打ち出すすべはあっても持ってくる力がない。
はたしてどうしようかと考えているとき、
「婚后さん、これを!」
泡浮が鉄骨を数本持ってきた。泡浮の能力は浮力操作、それを利用すればこういったこともできるのだ。もっとも、少女が鉄骨を持ち上げているというのはなかなかにシュールな光景だが。
自分のために動く後輩に対し微笑み、鉄骨に噴射点を形成すると前に立つ御坂に叫ぶ。
「御坂さん、注意してくださいな!」
そして鉄骨が射出される。回転を加えて飛ばした御坂と違い直線的だった分一頭しか当たらなかったが、それでも戦闘不能にさせるには十分だった。
そして、現在。
「はああああ!」
掛け声とともに御坂が鉄骨を能力で回収、その一部を射出し、
「婚后さん!」
泡浮が御坂の回収した鉄骨を婚后にわたし、
「おいきなさいな!」
婚后がその鉄骨を射出する、ということを繰り返していた。
だが。
「キリがないわね・・・」
そう、このループをもはや数えるのが面倒になるくらいにはしているはずなのに、一向に敵は減らない。そのうえ、
「ちょっと、まずいかも・・・」
御坂は能力の使い過ぎで疲れが来ていた。彼女に言わせると、電池切れと呼ばれる現象が起こりかけていたのだ。後ろの婚后たちを気にする暇もなかったが、彼女たちも少なからず疲弊はしているだろう。そして、疲労が原因か、少し反応が遅れ、敵に接近を許してしまった。
「御坂さん!」
二人の悲鳴が届く。彼女たちの能力では細かい照準を合わせることができないのでこの状況では鉄骨を打ち出すこともできない。
(こりゃ、やばいかも・・・)
そう思った直後、目の前のアラガミに銃弾が届き、ひるむ。そして、その射線の先には。
「・・・佐天、さん?」
御坂の友人、佐天涙子が神機をもってこちらに走ってきていたように見えた。そこまでで、御坂は意識を失った。
御坂が気を失って倒れるのを確認しつつ、佐天は自身の神機を銃形態のまま撃ち続けていた。この時ほど自身の銃が遠距離から走りながら撃つことのできるアサルトでよかったと思ったことはないだろう。
やがて、十分に近づいたところでそのまま神機を剣に変え、目の前のオウガテイルに一閃を見舞った。すると、断末魔とともにオウガテイルが倒れる。それを確認すると、後ろの婚后に声をかけた。
「婚后さん!こっちへ!」
その声に反応して婚后ともう一人―――佐天は名前までは覚えていないが―――が近寄ってきた。十分に近寄ったところでいう。
「二人は御坂さんとともに倉庫の入り口近くにいてください。ここは私たちがどうにかします」
その言葉に二人はうなずいた。
「御坂さんをお願いします!」
そういって佐天は前線に戻って行った。
それとほぼ同時刻、ソーマも大型アラガミ――――ガルムのもとに到着していた。
正直に言って攻撃が通りやすいとはいえど、バスター使いとしてはすばしっこいこいつはあまり相手にしたくない敵の一つだ。
「まあ、ぼやいても仕方がねえな・・・」
そういって自身の得物を構えなおす。こちらを踏みつぶさんとしてくる相手の前足を後ろにステップしてかわすとその前足に剣を薙ぐ。相手はすぐにその足を引くと今度は片方の足で交互に薙ぎ払ってきた。それをタイミングよく後ろにステップしてかわすと、ガントレットの爆発のタイミングに合わせパリングアッパーを発動しカウンターを成功させる。その直後突進してきた敵に対し装甲を展開し防ぎ、一回下がってからのとびかかりはもう一度パリングアッパーを発動させることで難を逃れる。それが前足にあたり結果として着地がうまくいかなかったのだろう、ガルムが転倒する。その無防備な頭にソーマは肩に担ぐように構えた青く光る剣を振り下ろした。
頭の一部が割れ、再度立ち上がったガルムに対し剣を構えなおし、遠吠えをする後ろ足に黒い咢を食らいつかせる。剣を戻すと体に力がみなぎるような感覚が来た。バースト状態だ。
そこから先は一方的だった。素早く迫る攻撃を巧みにステップでかわし、剣を振り下ろし、薙ぎ、その合間に黒い大顎で食らう。相手の攻撃を柳に風と受け流し、自身は確実に攻撃を当てる。気が付くと、北欧神話の番犬の名を冠するアラガミは地に伏していた。
ソーマがガルムを倒し終えたころ、たまに飛んでくる鉄骨も助かり、佐天たちも少なくとも目に見える範囲での小型アラガミ殲滅は完了した。
それを確認すると佐天は婚后たちのもとへ向かった。佐天が近くまで来ると、御坂も気づいたようで、三人が顔を上げた
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。佐天さんは?」
「私も大丈夫です。見ての通りぴんぴんしてます」
「あなた、もしかして・・・」
「もしかしなくてもゴッドイーターですよ。・・・ちょっとごめんなさい」
そういって少し離れると佐天は自身の耳に手を当てた。なにやら無線が入ったようだ。
しばらくして、佐天が戻ってきた。
「状況終了です。私は報告とかがあるので、積もる話はまた今度の機会に」
「・・・そうね、お疲れ様でしたわ」
「お互いに、です。じゃあ、私はそろそろ行きますね」
そういって佐天は駆け足で去って行った。
その後姿を見ながら御坂はつぶやく。
「・・・そっか、佐天さん、神機使いになったんだ・・・」
「ええ。あの様子ではまだ新人のようでしたけど、とても頼もしく感じましたわ」
それに対し婚后も答える。
「・・・すごいわね、私たちができないことをやれる、っていうのは。・・・私、どれくらい寝てたの?」
「そうですわね、だいたい5分くらいといったところでしょうか」
答えた泡浮に対して御坂は驚きつつ悔しさをにじませる。
「・・・5分、か。そっか、私たちが戦ってたのと同じくらいの時間なのに・・・
そこでいったん区切り、自分たちと神機使いたちしかいなくなった周りを見渡す。
「この差、か」
「やはり、あの、アラガミ?に対して私たちができることは限界があるのでしょうね」
「悔しいけど、そうみたいね」
そういって穏やかに笑う。その声に口惜しさは影をひそめ、ただ友人に対する賞賛が含まれていた。
はい、今回の投下はこれにて終了です。
追加エピソードの評価とかどうなってるんだろうとか思ってググってみたらPSPは直接ダウンロードできませんとのこと。
・・・ちくせう。まあ、給料日まで待つけど。そこまで金欠だから。
では、また次回。
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