如月千早「私は、アイドル」 (23)


「ちーはーやーちゃんっ」

頭のリボンと、いつも明るい笑顔が印象的な天海春香。私の、大切な友達…。そして、仲間。
この子がいなかったら、今の私は無かったかもしれない。

「おはよう、春香…」
「どうしたの?私の顔、なんか付いてる?」
「そんなこと無いわ、大丈夫よ」

安心した様子で笑う春香の顔に、私も頬が緩む。
このこの笑顔は、見ている人達を和ませたり、元気にする力があると思う。


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「ねえ、千早ちゃん。ニューヨーク行きの話が決まったって、本当?」
「ええ…。でも、まだ信じられないの」
「そんなこと無いよ、千早ちゃんの実力だよ」
「そうだとしたら、春香のお陰でもあるわ」

首を傾げた春香の手をとる。

「春香が、私が歌えなくなった時に手を差し伸べてくれなかったら、私は…」

思い出すのは、あの薄暗い部屋での日々。歌うことが出来なくなった時、春香や皆は、私を信じて待ってくれていた…

「みんなのお陰だよ…。ね、千早ちゃん…もし、私がアイドルを辞めるって言ったら、どうする?」
「そうね…。春香じゃない、って思うかもしれない」
「私じゃない?」

春香が、アイドルを辞めるなんて言うことは、私には考えられなかった。誰よりも「アイドル」というものに憧れを持ち、頑張っている春香だから…
私は?
私は、歌か歌いたかった、歌を届けたかった。
何よりも、歌を聞いてくれた人が、笑顔になって欲しかった。優のように。

「千早ちゃん、どうしたの?」
「い、いえ、なんでもないわ」


「春香は明日はJHK教育の番組収録。美希とやよいはBBSで歌番組、それに――」

プロデューサーが今日のスケジュールを発表していく、皆忙しいわね…。

「千早は…。今日は午後に吉澤さんからのインタビューがあるだけ、あと、雑誌に載せる原稿があるくらいだな」
「はい。分かりました」

私は事務所の古いパソコンを立ち上げると、文書の作成ソフトをダブルクリックする。少しは私もパソコンを使うのに慣れてきた気がしてきた。


「…アイドルとは?」

出版社からの依頼は、音楽雑誌に載せる私のコラム。テーマは「アイドルとは?」らしい。
キーボードを前に暫く考え込んでいた。

「どうした?難しそうな顔をして」
「プロデューサー…いえ、何でも」
「アイドルとは?…雑誌のコラムだな」
「はい、自分がアイドルをしているのに、いざそれを言葉や文章に表すとなると、分からなくなってしまって」

私の後ろからパソコン画面を覗き込むプロデューサー。思ったよりも顔が近いところにあって、その…

「んー…。アイドルとは、か。きっとこの事務所の皆に聞いても、みんな違う答えが帰ってくるんじゃないかな」
「そうでしょうか?」
「そんな気がするんだ。皆のアイドル像が皆同じである必要はないさ。締め切りまでまだ時間があるんだし、な?」

プロデューサーの言葉に、私も少し肩の荷が降りた気がした。

「アイドル…」



「あの…。社長、少しお聞きしてもよろしいですか?」

滅多に入ることのない社長室に入ると、私は社長にそう聞いた。

「ふむ、アイドルとは、か…。こういう事務所の社長をしていると、いや、芸能界という場所に身をおいていると、何度もそう言うことを考えてしまうよ」
「社長はどうお考えですか?」
「そうだねぇ…。ファンがあってのアイドルだ、アイドルは待ってくれているファンの皆さんが笑顔になるような、そういう存在であって欲しい。とまあ!これでは私の願望だね」
「いえ、そんな事は」
「如月君は、もう答えを持っている気がするのだが」

社長の言葉に、私は首を傾げる。

「はっはっはっ、人間、意外と自分の本音に気づかないものさ。まぁ、肩の力を抜いて、いろんな娘から話を聞くのもいいかもしれないよ、そして、答えは一つかもしれないし、沢山かもしれないよ?」

はぐらかすような笑い声の高木社長にありがとうございましたと頭を下げ、私は社長室を退室した。


「いろいろな人から…」
「どうしたの?千早ちゃん。はい、コーヒー」

口元の黒子が印象的な事務の音無さんが私の前にコーヒーを差し出す。

「すいません、音無さん…音無さんは、アイドルってどういうものだとお考えですか?」

私の問いに音無さんは少し考え込んでいた。

「そうね…。私の今の立場、という点から見ればだけど…。私の希望、かしら?」
「希望…」
「皆のことを見ているとね、私も頑張らなくっちゃって思えるの。そんな皆を私は凄く近くで見ている、すっごく幸せなことだって思えるの」

希望。音無さんにとってのアイドルは希望なんだ…。

「ありがとうございます、なんだか一人で考えてると堂々巡りで」
「自分のことでも、案外そういうものよ…。でも、きっと千早ちゃんなら答えを見つけることが出来る、そんな気がする」
「ありがとうございます、音無さん」


「あっ!千早お姉ちゃん、おはおはー」

真美がいつもの調子で私に抱きついてくる。このこは、どう思ってるのかしら?

「ねえ、真美はアイドルってどういうものだと思う?」
「えーっ?んーとねー…。そんな難しいこと、考えたことないや」
「そう…」
「でもでも!真美達はいっつも楽しいよ~、真美達が楽しいと、ファンの兄ちゃんや、姉ちゃん達もめっちゃ楽しそうだしね!」
「そうね、真美達のステージ、会場もすごい盛り上がるものね」
「真美達が楽しくない時はみんなも面白くないっしょ?だから真美達は全力でアイドル楽しんじゃうよ!」

真美にとってのアイドルは「楽しいもの」らしい。
それは決して自分のための物じゃなくて、ファンの皆が楽しくなれるように自分たちも楽しもうということなのかもしれない。


「ありがとう、真美」
「お礼なんていいよ?多分亜美もおんなじ事考えてると思うよ!じゃーねー!」

そのまま走って音無さんに抱き着いていった真美の姿を見送りながら、私はまた思案に耽った。


「千早ちゃん、どうしたの?」

のんびり間延びした澄んだ声。あずささんだ。

「珍しいわね?。千早ちゃんがパソコンを使うなんて」
「あずささん、実は――」

今書いている原稿のこと、皆の意見をあずささんに話してみた。

「そうねぇ…千早ちゃん、私が何故アイドルを目指したかは知ってるでしょう?」

「運命の人に出会う、でしたよね?」

「そう…運命。何て言うのは自惚れかも知れない、自分が無いみたいでっしょう?でもね、こうしてみんながここに集まった事は、偶然じゃなくて、必然だったと思いたいの…だって、こんなにも皆が輝いているんだもの」
「じゃあ、あずささんは皆がこうしてアイドルをしているのは運命だと言うんですか?」
「さあ…どうかしら、だとしたら、ロマンティックじゃないかしら?うふふっ」
「…運命」
「でもね、違う考え方もできるのよ。アイドルになったことによって、今までできなかった生き方が出来るようになったのよ?運命を、自分で変える事が出来る…そんな気がするの」

あずささんのアイドル像は、運命を変える力を持った物、という事でいいんだろうか?

「あずささーん、そろそろ行きますよー」
「はーい、律子さんが呼んでるから、またね、千早ちゃん」
「ありがとうございます。あずささん」


「…分からないわね」
「どうしたの?千早さん」

美希か…この子だったらどう考えるんだろう?

「ねぇ、美希」
「なぁに?千早さん」
「美希は、アイドルってどういうものだと思う?」
「え?…んー、ミキそう言う難しい事考えたことないな」
「そう…」

そう言った美希が、私の顔をまじまじと見ている。

「…どうしたの?」
「…千早さんは、どう思ってるの?」
「分からない…」
「…ミキね、難しい事、よく分かんないけど、アイドルってすっごくキラキラなの、ステージの上で踊ってる時の衣装も、サイリウムも、照明も、ぜーんぶ、キラキラしてるの」
「キラキラ…ふふっ、美希らしいわね」
「うんっ!だからミキね、もっともっとキラキラしたいって思うな」

嬉しそうにくるりと一回転して見せた美希が私に笑いかける。
この子は、本当にアイドルらしいアイドルだと思う。
でも、美希の「アイドル」と私の「アイドル」は多分違う。
そんな気がする…

「ありがとう美希、参考になったわ」
「あはっ、千早さんの参考になったなら良かったって思うな、じゃぁミキ、お昼寝するから、じゃーねぇー」



「…キラキラ…運命…希望…楽しむもの…」

今まで聞いてきた皆の答えはどれもバラバラ、どれが正解なんだろう、それとも全部正解かも知れないし正解なんてないかも知れない。
だけど…私は…

「あれ?千早、今日はオフじゃ無かったの?」

今ランニングから帰って来たような格好で、真が事務所に駆け込んできた。でも、この子は誰よりも女の子らしいのかもしれない。真なら、どう思うのかしら?

「ねえ、真、アイドルって、何?」
「え?…そりゃあ、アイドルって言ったら、可愛くって皆の人気者で女の子の憧れの的で、男の子から大人気の女の子だよ」

ある意味、真らしい答えだった。

「真らしいわね」
「あっ!何が面白いんだよ!」
「いえ、何でも無いわ…でも、そうね。その位簡単なものなのかもしれないわね」
「?」
「ありがとう、真。参考になったわ」
「え?な、何の事?」
「ふふっ」
「あっ!ちょっと待ってよ千早!何のことか教えてよぉっ!」

「…アイドルって、何なのかしらね」
「えっ?」
「萩原さんはどう思う?」
「…その…うまく言えないんだけど…私は、アイドルになって、少し臆病なのとか、犬が怖いのとか、引っ込み思案なのが治った気がするし…その…なんていうか、勇気、かな?」
「勇気…」
「私なんかでも、アイドルをやれるんだってことで、皆が自分に自信を持ってくれたらいいなぁ…って、何かごめんね私なんかが偉そうに」
「そんなこと無いわ、萩原さんは本当に頑張ったと思う…。ありがとう、萩原さん」
「えへへっ、ちょっとでも参考になったなら嬉しいな」

萩原さんは、自分を通じて勇気を与えたいと言っていた。とても素晴らしいことだと思う。
それなら自分は…?


「千早さん、どうしたんですかー?」

少し舌っ足らずな明るい声、気遣わしげな目線、高槻さんだ。

「ええ、ちょっと原稿の内容をね」
「アイドルって何か?」

高槻さんに皆の言っていた事を話してみると少しだけ高槻さんの表情が険しくなる。

「私、家が貧乏だからアイドルしてたんですけど…それって変なんでしょうか…」
「そんなこと無い!」

暗い表情で俯いてしまった高槻さんに、私は思わず声を上げていた。

「高槻さんの明るい笑顔や頑張る姿を見て、皆頑張ろうって思えるもの、高槻さんが頑張る姿は、皆に元気を与えてくれる…ご、ごめんなさい、突然大きな声を…」
「千早さん、ありがとうございます、。何か私、もっと頑張って皆が元気になってくれたら嬉しいかなーって」
「ふふっ、そうね…。高槻さんなら出来るわ」
「えへへっ、これからも元気200%で頑張っちゃいまーす!」

そう言うと、高槻さんは給湯室の掃除をしに行った。
高槻さんにとってのアイドルは、両親の手助け、でもその姿を通じてみんなに元気を与えているのね。



「どうしたの千早…パソコン使えるのか?」

我那覇さんが不思議そうな顔で私の事を見ている。バカにしないでと言った後、私は例の質問をしてみた。

「へえ、なんか難しいなぁ。普段考えもしなかったぞ」
「我那覇さんはどう思う?」
「そうだなあ…うーん…」

大袈裟にも見えるような悩み方に私は思わず吹き出しそうになった。

「んがー!笑わないでよ!真面目に考えてるのに!」
「ふふつ、ごめんなさい…」
「そうだなあ…自分は、自分がどこまで出来るのかを試したいんだ。自分の力でどこまで行けるのか…」
「…挑戦するもの?」
「そうだな!でも自分完璧だからな、絶対トップアイドルになってみせる」
「そうね、我那覇さんなら…きっと」

我那覇さんにとってのアイドルは、挑み挑戦するもの。
ここまで聞いてきたけれど、やっぱり皆違うものね…


「アイドルとは何か…私達自身の存在の理由とでも言うのでしょうか?」

何時の間にか私の後ろに居た四条さんの声に、心臓が跳ねる。

「お!脅かさないでください!」
「ふふっ、余程悩まれているようですね」
「聞けば聞くほど、アイドルというものが何なのかがよく分からなくって」
「ふむ…勇気、希望、挑戦、家族のため、そして運命…キラキラ、楽しい…皆、自分らしい答えを持っているものですね」
「四条さんは、どう思いますか?」

四条さんはふっ、と笑うと唇に人差し指を当てる。

「それは、とっぷしぃくれっと、です」

はぐらかすような声の後、四条さんは、続けた。

「千早、人は皆、己の中に答えを持っているものです。心を見透しそれを見つけた時、それが貴女の糧となりますよ」

四条さんはそのまま、高槻さんが用意していたお茶を飲みに給湯室へ入っていった。


「答えは私の中に?」

どうなんだろう、私はそんな気がしない…

「たっだいもー」
「其れを言うならただいまでしょ、亜美」
「もー、千早おねーちゃんは硬すぎだよー。もっといちごババロアみたいになろうよ?」
「ねえ、亜美」
「な、なに?そんなに真剣に」

亜美と真美で考えている事が違うのかが気になって、私は聞いてみた。

「んー、真美と同じかなー、めっちゃ楽しいよね」
「そう…」
「あーっ、なんか期待はずれみたいな顔だにぃ」
「そんなこと無いわ」
「んでもさ、最近真美、なんか違うっていうか」

どういう事かしら?

「何かね、最近真美さ、すっごく楽しそうなんだよ」
「亜美は、楽しくないの?」
「ううん、めっちゃ楽しいよ、でも違うんだ、そう言うんじゃなくて、んーとね、何かこう、生き生きしてるっていうの?」

亜美に言われて、私は真美の様子を思い返す。
確かにその通りかもしれない。

「…なるほど」
「…亜美は、竜宮小町に入ったから、先に人気が出たでしょ?その時の真美、何か元気なかったんだ…でも、最近は本当に楽しそうで、見てて亜美も嬉しいよ!」
「本当に、2人は仲良しなのね」
「そりゃーもっちもち!」
「うふふっ、これからも2人で仲良くね」
「あいあいさー!…それにしても」
「え?」

亜美が、首を傾げながら私の方を見ている。
大きな目をクリクリとさせて、私の顔を覗き込む。

「…千早お姉ちゃん、難しい事考えてるんだね、もっと簡単じゃ駄目なの?アイドルって楽しーぃっ!とか、歌ってると最高にハイって奴だよ!みたいな」

「…簡単…?」
「ほら亜美、アンタ帰ってきたらすぐに明日のレッスン予定を見ときなさいって…千早?どうしたの、パソコンの前に座って」

律子までそんなことを言うから、少しむくれて見せた。

「私がパソコンを使っているとそんなに不思議?」
「い、いえ、そう言う訳じゃないけれど…アイドルって何か?って聞いて回ってるそうね」
「ええ…雑誌の原稿なんだけれど」
「…私は、アイドルはやっぱり夢ね」
「意外だわ」
「…何よ」
「いえ…律子にしては抽象的と思っただけ」
「私がいつも数字で動いてると思ってるなら、あなたもまだまだよ、千早」
「ふふっ…でも、夢って?」
「アイドルって、小さい女の子から見れば、夢でしょ?そんな感じよ…でも、プロデューサーになってからは、何だか違う見方もするようになったわね」
「違う見方?」

律子は、書きこみだらけのホワイトボードを見ながら微笑んでいた。

「プロデューサーとして、あの子達をもっともっと活躍させてあげたい…そして、あの子達のパフォーマンスや歌やダンスで、皆に夢を与えて欲しい…夢を与えられる立場から、与える立場になるのがアイドルなのかしらね?」

律子の表情を見ていると、プロデューサーとしての責任感と、アイドル時代のあの笑顔が最近両方混ざったような、生き生きとした表情をしているように思う。
律子も、まだ夢を見ているのかしら?


「夢、ね。律子にしては気の利いた事を言うじゃない」
「何よ伊織。文句あるの?」
「別に~」
「じゃあ聞くけど、あんたはどう思ってるの?」

私が聞く前に、律子が伊織に聞いていた。

「私?私は決まってるじゃない、私の力がどこまで通用するのか見てみたいのよ。お父さまやお兄様達の力じゃなくて、私の力がね」
「響と似ているわね」

そう言うと、少し不満げな顔をした伊織がでも、と続ける。

「最近はもっと別の事も思うの。私達がステージに居る時、ファンの皆は凄く楽しそうでしょう?それを見るのが、私は楽しみなのよ」
「伊織、まともなことを言うわね」
「私は何時だってまともよ!律子、あんた」
「はいはい、これからも期待してるわよ、伊織様」
「何かこう、小ばかにされた感じね」
「はいはい、千早、まああんまり固く考えない事よ、ニューヨーク行の件もあるんだから」
「ふんっ、まあ見てなさい。アンタがニューヨークなら私はハリウッドよ!」
「ふふっ、期待してるわ」
「…何か、その余裕の笑みね…」


結局みんなに聞いてみたけど、答えは出ないままだった。

「どうだ?千早、答えは出そうか?」
「いえ…それが…」
「んー…まだ、聞いてない子がいるんじゃないか?」
「えっ?…そう言えば、プロデューサーにとって、アイドルというのは、何ですか?」
「俺か…?そうだな…俺から見たアイドル像、でいいんだよな?」
「はい」
「…そうだなぁ…女の子、かな」
「…えっ?」
「アイドルだからと言って、何も普通の女の子と違う訳じゃない、皆普通の女の子なんだなぁって」
「…」
「どうした?」
「…いえ、女の子…普通の…?」
「ああ、皆笑って泣いて悩んで…それでも皆、一歩ずつ前に進んでいる…皆、本当に成長してくれたよ、千早もな」
「私は…」

プロデューサーの言葉に、私は少し顔が熱くなるのを感じた。

「そうか…春香に、聞いたか?」
「いえ、まだです」
「春香なら、また面白い答えを持ってるかもしれないぞ、あと少しで帰ってくるはずだが…」


「ただ今戻りましってっとわぁぁっ!」

事務所に入るなり転びそうになってる春香。
この娘ならなんて答えるかしら?

「春香、お帰りなさい」
「あっ見てたの?恥ずかしいなあ」
「ところで春香、ひとつ聞いてもいい?」

キョトンとした春香に、私は今日の疑問を投げつけてみた。

「アイドルって何?かぁ…」
「春香は?どう思う?」
「私は…憧れかな」
「憧れ…」
「昔からずっと、ううん、今でも…!私はアイドルに憧れ続けるんじゃないかな」

目を輝かせながら春香は話していた。
春香らしい答えだ。
じゃあ、私は…?


「千早ちゃんは、どうしてアイドルをやってるの?」
「えっ?」
「…千早ちゃんは、きっともう答えが出てるんだよ、でも、難しく考えすぎてるだけなんだと思う。だから…ね?大丈夫だよ」
「春香…ありがとう、少し見えてきた気がするわ」
「えへへっ、千早ちゃんの助けになれたなら、私も嬉しいなあ」
「春香…私ね、優が歌って、お姉ちゃんって言ってくれるのがものすごく嬉しかった…何でかなって、最近考えてたの。今日、その答えが出た気がする」
「…なに?」
「歌うのは、好き…。でも私の歌で笑顔になってくれる人を見るのはもっと好きなんだって気付いたの。優だけじゃなくて、母や父も、笑顔だったあの頃の事…歌う事を通じて、誰かに笑顔を届けたい」
「そうだよ!それでいいんだよ千早ちゃん!」
「ふふっ…やっぱり春香は凄いわ」


すると春香が照れくさそうに笑う。

「そんなことないよ、千早ちゃんが思ってた事だよ、きっと…」

春香が笑うと、私もつられて笑い出す。
そうだ、私は歌う事で、皆の笑顔が見たいんだ。

「…春香…私、アイドルになるわ!皆を笑顔に出来るような!」
「ふふふっ、そうだね!何か私も頑張らなくっちゃって感じになってきた!」

何だか春香も気合が入っている。
そうね…まだまだ私達は高みを目指す途中なのだから…トップアイドルへの道は、まだまだ続いてるのだろう。

気を取り直して、原稿に取り掛かる。
タイトルは。

「…私は、アイドル…」




千早お誕生日おめでとう!(遅

それとSS速報復活、おめでとうございます、お疲れ様でした。

さっそく乙

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