勇者「割と皆常識的」(23)

側近「陛下、神々の天啓を賜った若者、勇者が見えました」

陛下「通せ」

勇者「陛下、私に魔王討伐のご指示を!」

側近「……」

陛下「最低限の支度はしてやろう。勝手にするがいい」

勇者「へ、陛下?」

陛下「例え神々の天啓を受けていようとも、戦術が戦況を覆せると思っているのか」

陛下「故に勝手にするがいい。だがしかし、我が軍、いや我々連合軍の邪魔だけはするな」

勇者「君達がこの旅の同行者か」

戦士「一応な」

魔法「陛下から聞いているわ。敵戦力への陽動」

僧侶「少し攻撃したら退けばいいとのお達しです」

勇者「え……」

戦士「ま、戦力として期待されていないのさ」

戦士「随時、戦況の情報が入ってくる。俺らはそれに合わせて敵を退き付ければいいんだよ」

勇者「えー……」

現実は非情だ

騎士「北西の泉の国の防衛線が下がっている」

騎士「大きく西から回り、敵戦力を挟撃せよ!」

兵士「西部に敵防衛線を確認!」

兵士「弓兵、魔術兵の部隊を集めろ! 正面突破だ!」

騎士「弓兵を南北に配置。射撃後、騎兵を前面に押したて突撃!」

騎士「魔術兵は騎兵散開後、集中砲火!」

勇者「! 敵の大群!」

戦士「数40……半端だな。遊撃か?」

魔法「北東に進行……泉の国への支援部隊を叩くつもりかしら」

僧侶「友軍に伝達完了、通り過ぎた後攻撃し、私達は南下し友軍に対して敵の背後を向けさせましょう」

勇者「え……?」

戦士「この先は深い茂みだ。はぐれない様注意しろ」

魔法「各自に認識魔法をかけておくわ。ある程度の距離なら味方の位置を知覚できるようなるわ」

勇者「み、皆……なんで?」

戦士「今時、訓練受けていないのって地方の町や戦線から通いところぐらいだろ」

戦士「よし、このまま南に転進!」

魔物「人間だー! 殺せー!」

魔族「少なすぎる……斥候か?」

魔族「敵は全て排除しろ! イレギュラーは残すな!」

勇者「どど、どうしたら」

僧侶「意外と早いですわね」

魔法「この先に開けた場所があるわ。そこまで進めば敵を一気に焼き払えるわよ」

騎兵「全部隊突撃!」

騎兵「うおおおおお!!」ドドドド

魔族「敵戦力、背後に出現!」

魔物「謀られたか!」

魔族「先の人間は捨て置け! 後方部隊の戦力の方が危険だ!」


戦士「友軍に気付いたか」ガササ

魔法「魔法により攻撃を開始するわ」

戦士「弓により支援攻撃も開始する」ギリギリ

僧侶「敵の襲撃に備え、索敵魔法にて周囲を警戒」

勇者「……」

騎兵「貴官らの協力に感謝する!」ザカッ ザカッ


戦士「初陣にしてはまずまずの戦果だな」

勇者「あの……俺って何をすれば」

僧侶「何ができるんですか?」

勇者「え……け、剣と魔法を少し」

魔法「孤立した時には有用な器用貧乏ね。団体行動中じゃ活躍できないわね」

勇者「……」

僧侶「それでしたら物資運搬を中心にしていただきましょう」

勇者「……」

戦士「やっぱ平均的に強いよか特化してくれた方がいいよな。互いでフォローすればいいんだし」

戦士「もうすぐで町に着くぞ」

勇者「……」ズッシズッシ

魔法「勇者、水筒」

勇者「あ、はい」

戦士「そう落ち込むなよ。お前は言わば……そうあれだ物資補給課だ」

僧侶「無くてはならないですよね」

勇者「そういう慰めいらないから」


勇者「魔物が南の洞窟を占拠!? 我々に任せて下さい!」

町長「周囲にいる魔物の数は15、交代などで確認できているだけども40」

町長「既に支援は要請してあり、50人ほどの兵士が向かっている」

町長「洞窟からここまではここのルートを通らなくてはいけない」

町長「協力してくれるならここで防衛線を貼って欲しい」

町長「ここならば狭く、一度に戦う敵の数も少ない」

勇者「あ、はい」

戦士「よーしトラップ設置完了だ」

僧侶「周囲に敵影無し」

勇者「ど、どうするんだ?」

魔法「援軍到着まであと一時間ほどよ」

戦士「30分後に敵を攻撃。敵をおびき寄せトラップ網に引っ掛ける」

戦士「攻撃は俺と魔法使い、勇者は撤退準備、僧侶は対物理障壁展開準備」

魔僧「了解」

勇者「……りょ、了解」

魔物「ぐあああ!」

魔族「トラップか?!」

魔族「魔法で吹き飛ばせ!」

戦士「魔法使い相殺!」

魔法「分かっているわよ!」


勇者「……」

僧侶「友軍到着まであと15分……敵の進行が早いわ」

僧侶「少し下がりましょう」

勇者「え? ああ……うん。俺何の為にいるんだっけ」

援軍「正面突破ぁ!!」

戦士「支援攻撃開始!」

魔法「飛距離重視で撃つわよ!」


僧侶「対物障壁展開!」

魔術兵「我々はここで支援攻撃を行う! 総員的戦力を撃て!」

勇者「えっと……撤退準備中……」

しばらく後
戦士「ここから南西にある町に噂がある」

魔法「へえ?」

戦士「結構な機密事項だけどもさ」

戦士「何でも魔女がいるらしい」

魔法「へえ……」

僧侶「魔女裁判とか昔ありましたよね……」

勇者「だ、大丈夫なのかそれって」

戦士「さあなあ……ただ戦力的にはかなりなもんだろう」

魔法「あわよくば保護と言う建前で仲間にするって?」

戦士「そうそう」

町長「何度か国の役人が来ている」

町人「や、やはりあれなのでしょうか……」

町長「あの母子はきっと……」

町人「な、なんという……どうしたら」

町人「お、追い出すか? 魔女つったらあれだろ……」

町人「は、迫害でもするのか?」

町長「馬鹿もの! やる事は決まっているであろう!!」

町長「我々がすべき事はただ一つ!」

噂の娘「こんにちは~」

町人「娘ちゃん、今日も元気だねー」

噂の娘「はい!」

町人「これ持っていきな!」

噂の母「何時もありがとうございます」


町長「為すべき事はただ一つ……気付いていないフリだ」

町人「何かして怒りを買ってもな」

町人「追い出したとして魔女の力がどのくらい威力、そして飛距離があるか分からんし」

魔王「現状は」カツカツ

側近「人間側の攻撃が予想以上に激しく……」

側近「敵の推定被害状況は二割」

側近「大してこちらは既に三割に達しております」

魔王「連合軍……甘くて見ていたな」

側近「何より攻めるとなると、広範囲に戦力を展開せざるを得ませんからね」

魔王「我々の取るべき行動は一つだな」

勇者「ま、魔王軍が撤退……?」

陛下「戦線を維持できなくなったからだろうな」

陛下「これが報酬だ」

勇者「え? うわっ」

戦士「結構な量だな」

陛下「期待はしていなかったが君達も十分に貢献してくれた」

勇者(という事は勇者としてこれからも!)

陛下「隠密として十分に役割を果たしてくれた」

勇者「……」

陛下「? 下がっていいぞ。魔王軍が退いた今、こちらも体勢を整える時間もある」

勇者「……え」

陛下「軍人でもあるまいし、それ以上の手当てがつくと思っているのか?」

勇者「……えー」


   勇者「割と皆常識的」 終

おつ

終わってた

おt


そうだよな、魔女迫害とか本当に魔法のある世界じゃ出来ないよな

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