オルオ「誰がために鐘は鳴る」(97)
男「よう!オルオ!」
オルオ「おう。...なんでお前はそんなに朝から元気なんだよ...」
男「だって今日からよお...壁外調査だぜ!ついに!ついにだ!壁の外に行けるんだ!」
オルオ「たっく...あのなぁ、そんなお気楽は壁の中に置いて行けよ。...壁の外は巨人の領域なんだぞ」
オルオ「そんな心構えじゃすぐに巨人の餌に...」ヤレヤレ。
オルオ「!?...いねぇ...。こらっ!てめぇ!人の話は最後まで聞けよ!!」
男「あん?なんか言ったか?早く行こうぜ!置いてくぞ!」
タッタッタッタッ...
オルオ「待てって!」
タッタッタッタッ...
ーーー
ーー
ガヤガヤ...ガヤガヤ...
調査兵「各自装備を整え次第持ち場につけ」
調査兵「ゆっくりしている時間はないぞ!急げ!」
ドタバタドタバタ...
男「よしっ!これでいいな」
オルオ「おい。これお前のじゃねぇか?」
男「おおっ!わりぃなぁ!信煙弾一発忘れるところだった」アハハ
オルオ「しっかりしてくれ...。」ハァ..
男「オルオ」
オルオ「今度はなんだよ?」
男「しかしあれだな。どっかのバカがウォールマリアの扉をぶち破ったせいで元『壁の中』に進行しないと行けないなんてなぁ...。皮肉なもんだな」
オルオ「は?どっかの能天気野郎はそれを喜んでたが?」
男「違うんだ...俺が行きたかったのはよぉ...マリアの外のもっと広い世界に行きたかったんだ」
男「見てぇんだよ。壁の外の世界を」
男「俺は思うんだ...きっとそこには壁の中には無い自由があると」
オルオ「何度も聞いたよ。ほら行くぞ」
オルオ「...まあ、ウォール・マリアでも取り返せりゃそれも叶うんじゃないか?」
オルオ「...またいねぇ..。」ポツーン
男「ペトラちゃーーん!おっはよ~」
ペトラ「また...」クルッ
ペトラ「あんたねぇ...同期だからって気軽に呼ばないでよね」
男「冷たいなぁ。でも...そんなところもキュートだぜ!」
ペトラ「...。あー、はいはいどうも。気が済んだならあっちへ行って」
男「そうそう!壁外調査から帰って来たらさ俺とデートしてくれよ!」
ペトラ「は?なんで私があんたなんかと。私、あんたみたいなふわっとしたヤツ好みじゃないから。」フンッ
ツカツカツカ...
男「あーあ...今日もだめか...。」
オルオ「...てめぇはこんな時に何してんだよ」
男「え?..だってもう帰って来られないかも知れないだろ?」
オルオ「お前はな。俺は...生きて帰ってくるぞ」
男「あー!ひっでぇなオルオ!俺も帰って来るさ!もう一回ペトラちゃんにデートの約束を」
調査兵「そこの新兵!準備が出来たらさっさと配置につけ!」
オルオ・男「「はッ!!」」ビクッ
オルオ「見てみろ!お前のせいで」
男「じゃあなオルオ!俺は右翼側だから!」ダッ
オルオ「聞けよ!!人の話を!!」
ーーー
ーー
「開門!開門ッ!!」
ガンゴーン...ガンゴーン...
ゴゴゴゴゴゴ...
オルオ「鐘の音か...。ついに来ちまった...この瞬間が...」
エルヴィン「進めぇッ!!」
ドォドォドォドドド!!..
オルオ「...。」
(生きて帰ってくるぞ!絶対に!)
調査兵「怖いか新兵?」
オルオ「だ...大丈夫です!」
調査兵「心配するな。いつも通りだ。訓練の成果を見せてくれよ」
オルオ「は...はいッ!!」
ドォドォドォドドドド...
ーーー
ーー
オルオ「...。」
(もうすぐ市街地を抜ける。そろそろか)
エルヴィン「総員散開ッ!!散開せよッ!!」
調査兵「よし新兵。散開の合図だ。索敵陣形をとるぞ。しっかりついてこい。」
オルオ「...!わかりました!」
(来た!...大丈夫だ。落ち着け...落ち着け...)
オルオ「...。」
(訓練通りやるんだ。...上手くいく)
シューーン... シューン...シューーン...
調査兵「右翼側!赤です!」
調査兵班長「早速か。」
オルオ「!」
(右翼側!?...大丈夫かあいつ...)
シューーン...
調査兵班長「左翼側にだいぶ進路が傾くな。...おい新兵!」
オルオ「はいッ!!」
調査兵班長「わかっているな。緑を撃て。」
オルオ「...は...はいッ!!」
オルオ「...ちょっと...あ...あれっ?」カチャカチャ
(緊張し過ぎて...指先が)
調査兵班長「...何をもたついている。まだか!」
オルオ「...す...すいませんッ!!」
調査兵「自分が撃ちます」カチャガチャ
バンッ...シュルルル...
オルオ「...。」
(チクショウ..こんなことも出来ないなんてな...)
調査兵「おい新兵。」
オルオ「は...はい」
調査兵「名前は?」
オルオ「オ...オルオ・ボザドです!」
調査兵「オルオ...気にする事はない。最初は誰でもそんなもんだ。」
オルオ「はい...」
ーーーー
ーーー
ーー
ーーー野営陣地
オルオ「...駄目だ。...水はどこだ」ハァ..ハァ...
(緊張し過ぎで...喉がカラカラだ。)
オルオ「確かここに...」
(鞍の脇に水袋が下げてあったはずだが.........無い!?)
オルオ「マジかよ。落としたか...。」
「飲めよ!」
オルオ「うおっ」ビクッ
男「水探してんだろ?」ホレ。
オルオ「...お前か...わるいな」ガッ...ゴクッゴクッ
男「どうしたオルオ?顔色が悪いぜ?」
オルオ「はっ...俺が?そんな事あるわけないだろ!いつも通りだ。調子もいい」ヘッ...ヘッヘッ
男「そうだよな!成績優秀なお前がそんなわけ無いよな!」ハハハ
オルオ「あ...当たり前だろ」ハハハ...
オルオ「それよりお前、よく無事だったな。」
男「8人だとよ」
オルオ「何がだよ?」
男「右翼初列で殺られた人数。さっき先輩方が話していた」
オルオ「...。」
男「...なんだよオルオ!俺の事心配してくれてたのかよ!俺が女なら彼女になってやるぜ!」ダッハッハッ
オルオ「ふざけんな。こっちから願い下げだ!馬鹿か!バーカ!」マッタク
男「おっと!そろそろ出発だ。死ぬなよオルオ」
オルオ「...おう。」
ーーー
ーー
ドォドォドドド...
調査兵班長「オルオ撃て。」
オルオ「はいッ!!」カチャカチャガチャ
バンッ...シュルルル...
調査兵「オルオだいぶ慣れてきたな。」
オルオ「はいッ!」
シューーン...
調査兵「班長!左翼側後方、黒です!」
調査兵班長「まずいな。」
オルオ「...げっ。マジかよ」
(黒い煙弾...奇行種だ...)
ドドッドドッ...
調査兵「口頭にて伝令!左翼側後方より奇行種が接近!中央に進行!交戦中です!」
調査兵班長「聞いたか。」
調査兵「自分が伝令に行きます」
ドドッドドッ...
オルオ「くっ...」
(よりによってこっち側かよ。頼む...来るな...来るな...)
シューーン...
調査兵班長「右翼側に逸れるぞ!続け!」カチャガチャ
バンッ...シュルルル...
調査兵「班長。戻りました」
調査兵班長「姿が見えたら殺りにいくぞ」
調査兵「はい」
オルオ「...!!」ビクッ
(ついに...た...戦うのか?巨人と)
調査兵「大丈夫だ。心配するな。もしここまで来ても俺達がなんとかしてやる。オルオ、前を向いて馬を走らせ続けるんだ」
オルオ「は...はい」
(そうだよな...ここまで来ないかも知れないよな)
...ズンッ... ズンッ...
オルオ「?...地鳴り?」クルッ
ズンッズンッズンッズンッ
オルオ「!」
(巨人だ!こっちに来る!)
調査兵班長「8m級か...おい新兵!このまま全力で隊列について行け!」
オルオ「あの...自分は何をすればいいですか!?」
調査兵班長「平地での戦闘は新兵には荷が重いからな。...おい!やるぞ!」
調査兵「はい!...心配するな。任せておけ。」
ドドッドドッドドッ...
オルオ「ご...御武運を!」
(マジかよ。すぐそこまで来てんじゃねぇかよ!...落ち着け。落ち着け。...俺の今やるべき事は...)
オルオ「...隊列について行く事だ!」
ドォドォドドド...
ーーー
ーー
ー
まだ続きます。
でわ、また。
いいね
オルオ好きの俺得SS
緊迫感あるな
期待
お待たせしてます。
でわ、続き。
ーーー補給地点予定地
調査兵「各班辺りを見張れー!」
ドドッ...ドドッ...
調査兵「馬を繋いで立体起動に移れ!建物の陰に巨人が潜んでいるかも知れん!くまなく調べろ!」
オルオ「...なんとかここまで来たぞ..」
(もう夕方じゃねぇかよ。)
オルオ「しかし...ここは?...」ウマヲツナグ
調査兵「山あいの小さな街だ」
オルオ「先輩!...ご無事でしたか!」
調査兵「心配かけたな」ハハハ
調査兵「オルオ。お前もなかなかの働きだったぞ」
オルオ「自分...何の役にもたって無いっすよ」
調査兵「命令を守り、死なずにここまで来れたからな。自信を持てよ。」
オルオ「はい...」
調査兵「そら、馬を降りたらさっさと上に...だ。
訓練兵からやり直すか?」
オルオ「い、いえッ!!」
カチッ...パシュパシュ...
調査兵「オルオ。ついて来い。あっちの通りの索敵だ」パシュパシュ...
オルオ「はい!」パシュ...パシュ...
ーーー
ーー
ーーー夜
オルオ「やっと終わった...」
男「オルオ!」
オルオ「おわっ!!...なんだよ...お前か...。」
男「貰って来てやったぞ!そらっ」ポイッ
オルオ「おっと...」パシッ
男「お前の分だ!しっかり食えよ」
オルオ「野戦食料か...」カサカサ...バリッボリッ
(苦手なんだよなこれ...)
男「固いパンと味気ないスープがありがたく思えるよな。それ食うと」ハハハ
オルオ「ほれで...どうだったよ。ほとのへかいは」バリッボリッボリッ...モグモグ
男「食うか喋るかどっちかにしろよ」
オルオ「...悪かったな」...モグモグ..ゴクッ
男「もっと怖いとこだと思ってたけど案外そうでもねぇな。ほらよく言うじゃん、壁の外は地獄だーって」
オルオ「それは先輩方の活躍と団長の指揮の賜物だぞ...お前ひとりじゃ五分も生きれん」
男「そっか。それ忘れてた」ハハハ
オルオ「...。」ヤレヤレ
オルオ「そんなんじゃ、巨人の討伐すら危ういな...お前は。」ヘラヘラ
男「ん?馬鹿野郎!俺だってなぁ!...やるときゃ...やるん...だぞ」モゴモゴ
オルオ「立体機動の成績が下から数えた方がはやいお前がか?」
男「それは訓練兵時代の話だ!巨人の二体や三体わけねぇさ!......たぶん。」
オルオ「ブフッ...よく言うぜ」ダッハッハッ
男「てめぇ笑うんじゃねぇよ!...人がマジに悩んでんだぞ!」
オルオ「すまんすまん」
男「よぉし...俺はお前より討伐数多く稼いでやるからな!そん時はさっきの謝れよな」
オルオ「勝負だと?へっ...お前じゃ相手にならねぇよ」フッ...
男「実戦になったらどうなるかわからねぇじゃねぇかよ!」
オルオ「一緒だ。バーカ」
男「おっと...やばい!見張りの交代の時間だ!じゃあな!」
タッタッ...クルッ
男「後で吠えずらかくなよオルオ!」
タッタッタッタッ...
オルオ「うるせぇ!とっとといきやがれ!」グヌヌ
オルオ「...あいつの根拠のない自信は何処から来るんだ?」
(ちったぁ分けて貰いたいもんだ。...実戦か...)
ーーー
ーー
ー
... ... ... .........
...... ...
男『オルオ!どうだ!俺は討伐数5体だぜ!』
ーーマジかよッ!!?
男『巨人なんか余裕よゆう』ハッハッハッ!
ガシッ...
男『やばいッ!!助けてくれオルオッ!!』
ーーお前!?待ってろッ!!今俺が
バクッ...
ーーそんな...
ガシッ...
ーーなに!?...俺も......食われるのか!?
バクッ...
「オルオ」
オルオ「ッ!!...」ビクッ...ハァ...ハァ...
調査兵「大丈夫か?うなされていた様だが?」
オルオ「だ...大丈夫っす」
(夢か...いつの間にか寝てたのか俺は...)
調査兵「見張りの時間だ。行くぞ」
オルオ「はい」
ーーー
ーー
ーーー南側・見張り台
調査兵「交代だ。異常は無いか?」
見張りの調査兵「おお。待ってたぜ。今のところは特に無い」
見張りの調査兵「このまま俺が仮眠をとり終わるまでおとなしくしていて欲しいもんだ」
オルオ「巨人って夜は動かないんじゃ無いんっすか?」
見張りの調査兵「なんだ?新兵か?」
調査兵「ああ。そうだが?」
見張りの調査兵「お前も大変だな...新兵のおもりとは...」
調査兵「そうか?なかなか悪くはないもんだ」
見張りの調査兵「お前も変わったやつだよ」ハハハ
オルオ「...。」
見張りの調査兵「おい新兵!」
オルオ「はい!」
見張りの調査兵「しっかり見張れよ。特に右手の森には気をつけておけ...」ユビサシ
見張りの調査兵「あいつらの中にもまれに夜も動くヤツがいるからな」
オルオ「!!」ビクッ
調査兵「おいおい...新兵をあんまり脅かすなよ。」
見張りの調査兵「見たかよ!こいつのびびった顔!」ダッハッハッ...
オルオ「...。」
見張りの調査兵「じゃあな。頼んだぞ」
調査兵「ああ」
オルオ「先輩...巨人は夜...動くんすか?」
調査兵「俺は今まで出くわした事はない。それだけだ。」
オルオ「...それはつまり」
調査兵「だからこうして夜も交代で見張りを立てている。わかるな?」
オルオ「...はい」
ーーー
ーー
調査兵「オルオ。お前は何故調査兵団に志願した?」
オルオ「じ...自分は!人類の反撃の糧となり...つまり...その」
調査兵「そんな大義を聞いているんじゃないさ。もっと簡単な理由だ」ハハハ
オルオ「実は...訓練兵時代の馴染みが壁の外の世界に憧れを持っていまして...そいつが
調査兵団に志願したので...自分も...」
調査兵「そうか」
オルオ「だからと言って適当にやっているわけでは決して無いっすよッ!!」
調査兵「さっき班長に聞いたよ。お前、10番に入るほど成績優秀だったんだろ?」
調査兵「憲兵団に行きたかったんじゃないのか?」
オルオ「...そうです」
オルオ「でも!...俺は...あいつの事が心配で...本当にどうしょうもないヤツなんすよ!」
オルオ「調子よくって、直感的に行動するし、詰めもあまけりゃ、立体機動も下手くそで...」
オルオ「でも...そんなヤツでもほっとけ無いんすよ...。自分でもなんでそうなのか解らないっすけど...」
調査兵「お前に無い物があるんだろうその友人には。人はそういう部分に惹かれるもんだ」
オルオ「自分は!...ひとりでも大丈夫ですけど...あいつはひとりじゃ何も出来ないっす...だから」
調査兵「オルオ...人はひとりでは生きては行けない。協力し、信頼の出来る仲間が必要だ。自分がひとりで生きて行けると思うなら、この壁の外で経験した事を思い出せ。」
調査兵「人ひとりの無力さを痛感出来る。」
オルオ「...。」
調査兵「すまんな。なんか説教臭くなった。」
オルオ「いえ。そんな事はありません...」
調査兵「まあ、理由は人それぞれだ」
調査兵「友人を大切にな」
調査兵「それと...自分自身をもっと信じろ」
オルオ「え...」
調査兵「本当のお前はそうではないはずだ。時には感情を押し出して生きていいと思うんだが?」
オルオ「そうですか...」
ーーー
ーー
オルオ「...眠い」ボーッ。
調査兵「おい。大丈夫か?」
オルオ「大丈夫っすよ...これくらい」アハハ...
調査兵「もうすぐ夜明けだ。交代が来るだろう」
オルオ「...」
(早く来ねぇかな...代わりの奴は)
ドサッ...
調査兵「!?...おい!...寝ちまってやがるな」
オルオ「...大丈夫っす...らいじょうぶれす...」Zzzzz...
調査兵「フッ...壁外で居眠りか...なかなか度胸のあるやつだ。」
ーーー
ーー
「起きろッーー!!巨人だッーー!!」
オルオ「!!!」バッ
オルオ「...巨人!!...どこだ!?どこに巨人が!?」
男「よう!起きたか?最高に目が覚めただろ?」ブフッ...
オルオ「ここは?」ミハリダイニイタヨウナ...?
男「とっくに交代させられたみたいだな」ハハハ
オルオ「...おまえ...」グヌヌ...
男「そんなに怒るなって!見張りの途中で寝ちまったお前が悪いんだからな!新兵は仕事が待ってるぞ。行こうぜ」
オルオ「わかったよ...」
(やばいな...後で先輩に謝っとこう...)
ーーー
ーー
まだ続きます。
でわ、また。
乙!面白い
続き楽しみにしてます
お待たせ。
でわ、続き。
調査兵「引き続きお前たちには貯蔵庫の設置及び建設を行って貰う!手筈は訓練の通りだ!迅速に行ってくれ!」
新兵一同「「「はっ!」」」バッ!!
モチバニツケー!
ジカンガナイゾー!
ドタバタ ドタバタ...
腕っぷしの良い 調査兵「よし!そこの資材持ってこい。上に上がるぞ」
オルオ「はい!」
腕っぷしの良い調査兵「そこにその板を固定だ」
オルオ「はい!」
トントントン...
オルオ「...」トントントン...
(ハァ...なんで壁外まで来てやぐらの上で大工仕事なんだよ...)
男「次の材料持って来ました」
腕っぷしの良い調査兵「そこの角に置いてくれ」
男「はい!」
オルオ「...いでっ!...」
(指をハンマーで打っちまった!)
腕っぷしの良い調査兵「おい新兵!気をつけろ!小さな怪我も命取りに成りかねんからな」トントントン...
オルオ「大丈夫です。気をつけます」
(痛てぇな...チクショー...)
腕っぷしの良い調査兵「よし。新兵、そっちは終わったか?」
オルオ「も...もうすぐです!」
(やべぇ...もう終わったのかよ?早すぎだろ)
腕っぷしの良い調査兵「そうか。俺は一度下に降りて屋根の資材を上げるからな。それまでに完成させておけよ」
オルオ「わかりました!」
男「これは何処に置いたらいいですか?」
腕っぷしの良い調査兵「それはもう足りている...」ヤレヤレ
男「あれ?...すいません」アハハ...
腕っぷしの良い調査兵「新兵。それは俺が持って降りるから、お前はこいつを手伝ってやれ。」
男「わかりました!」
オルオ「てめぇ...足ひっぱんじゃねぇぞ」
男「お前が遅いから手伝ってやるんじゃねぇかよー。」ヤレヤレ
オルオ「...」ムムム...
男「考え込んでんじゃねぇよ。手がとまってんぞー。とっととやるぞー!」
オルオ「チッ...」
トントントン...トントントン...タンタンタンタン...
オルオ「ん?...おい!それ!」
男「お?...あー!!大きさが違う!」
オルオ「何をやってんだよ...それじゃあわざわざ切り分けて運んで来た意味が無いだろうが!組み立ての手順覚えて無いのかよ!?」
男「わりぃわりぃ...」
オルオ「まったく...手伝ってんのか邪魔してんのか」
男「ごめんって言ってるだろ」
オルオ「お前は下に降りて手伝って来いよ。ここは俺がやっとくからよ」ホレ。イケイケ。
男「そうか。そうする」タッタッ...
男「...え!?......オルオ!!」
オルオ「あー!!今度はなんだよ!捗らねぇだろうが!」
男「...赤だ。あっちの方」
オルオ「赤?.........!!」クルッ
(信煙弾!...巨人か!?)
腕っぷしの良い調査兵「お前ら!このまま作業を続行しろ!俺は前衛の加勢に行く。」
男「自分も行きます!」
腕っぷしの良い調査兵「駄目だ!お前らは残りの兵とこれを完成させろ!酵母の設置と物資の搬入も残ってる!」
男「...」
腕っぷしの良い調査兵「限界を迎えたら東側に本隊を移動する。撤退の合図があったらすぐに行動しろ」パシュッ...
オルオ「はっ!」
男「はっ!」
男「...」グググ...
オルオ「おい!ぼさっとすんな!組み立ての続きだ!」
男「わかってるよッ!!」
オルオ「...」トントントン...タンタンタンタン...
(そうだよな...こんなに平和なわけねぇよな...これが現実だ...)
ーーー
ーー
調査兵「これが最後だ」シッカリモテヨ
オルオ「はい」
調査兵「全部運び込んだわね。扉を固定するわよ」
男「自分がやります」
トントントン...タンタンタンタン...トントントン...
調査兵「なんとか間に合ったな」
調査兵「ええ」
男「出来ました」
調査兵「さあ、あなた達。本隊に合流するわよ」
オルオ「はい」
調査兵「おいお前!ちょっと待て!何処に行く気だ!?」
男「前衛の加勢に行きます!!」パシュ...
オルオ「...!...あの馬鹿」パシュ...
調査兵「戻りなさい!二人共!!」
ーー
ー
パシュパシュ...ギュイイ...
オルオ「待てよ!おい!」
男「もう追い付かれちまったか」
オルオ「お前!今、何をやってるかわかってんのか!?」
男「わかってるさ。巨人を倒しに行くんだ」
オルオ「馬鹿が!命令に従えよ!お前が行ったところで何が出来るんだよ!」
男「でもさ...あのままだったら何もできないだろ?」
オルオ「...。」
男「お前は本隊に戻れよ。俺だけで大丈夫だからさ」
男「あとさぁ...無事にここを切り抜けたら話があるんだ。聞いてくれよな」
男「じゃあな。また会おうぜ!」
オルオ「...バカが。そりゃあ俺に逃げろと言ってんのか?」
男「え?」
オルオ「バカか!バーカ!お前なんかに討伐数を先にこされてたまるか!!」
オルオ「...付き合ってやるよ」
男「お前...」
オルオ「約束しろ。死ぬなよ」
男「お互い様じゃねぇかよ」ハッハッハッ
ーーー
ーー
ーーーー最前線
ズシン...ズシン...ズシン...
調査兵「10m級が九時方向より二体来ます!!」
調査兵班長「左側は俺とこいつでやる!おい!行くぞ!」
調査兵「はい!」
調査兵「了解!俺たちは右のヤツをやるぞ!」
調査兵「了解!」
ズシン...ズシン...ズシン...
ズシン......ズシン...
調査兵「クソッ!数が減りやしねぇッ!!」
調査兵「補給はまだか!?」
調査兵「もう刃が無くなるぞッ!!」
調査兵「おいッ!!そこを離れろッ!!」
...ガシッ!!...ガブッ...ゴクッ。
調査兵「またかよ......チクショウッ!!人間なめんなぁぁァァッ!!」ギュイイイイイ
ザクッ!ザクッ!
...ズゥゥゥン... ...
ギャァー...
ダメダ!タスカラナイ!ハナレロッ!!
...ズシン...ズシン...
ズゥゥン...ドシャ...ガラガラ...
...ヤッタゾッ!!
アブナイッ!!...
バクッ!...
アシダッ!!アシヲソゲッ!!
...コノヤロウッ!!
... ......
オルオ「なんだよ...これ...」
(明らかにこっちがやられてる...)
男「マジかよ...調査兵団がズタボロだ...」
ズシン...ズシン...
男「!?...オルオ後ろだッ!!逃げろッ!!」
オルオ「!?...」クルッ
(うそだろ!?...巨人の手がッ!)
ブンッ...バリバリバリッ!!バラバラバラ...
オルオ「くそッ!!..」
(あっぶねぇッ!!捕まってたまるかよッ!!)
男「うおぉぉぉッ!!」ギュイイ...ザクッ!
オルオ「やったか!?」
ズシン...ズシン...シュゥゥゥ...
男「駄目だ!浅かった!」
オルオ「おい!そこから逃げろ!」
男「もう一度だッ!!」パシュ...
ズシン...ズシン...ブォンッ!
オルオ「やめろッ!!無理だッ!!」
ドガッ!...ゴロゴロ...
男「ぐあっ!......」
オルオ「くそッ!!人の話聞けよお前ッ!!」パシュ
オルオ「俺のツレに何しやがんだこのッ!!」ギュイイイイイ...
(目に刃ごとくれてやるッ!!)
パシッ...
オルオ「ぐおっ!...」
(やべぇ!!!!...)
...ニタニタ...ニヤニヤ...
男「オルオーッ!!...てめぇオルオを放しやがれッ!!」フゥーフゥー...ウググ...
オルオ「バカ野郎ッ!!...刺激するなッ!!狙われるぞ!!」
(くそッ!なんて馬鹿力だ...体が潰れるッ!!...)
...ジロッ...ニヤニヤ...
オルオ「...!!......こっち見んな......」
(俺が!?......食われる...)
ニタニタ...カパッ......アーン......
オルオ「ひっ...やめろッ!!やめてくれッ!!嫌だッ!!死にたくないッ!!誰か...誰か助けてッ!!うあぁぁぁぁッ!!」ジワッー...ポタポタ...
男「オルオッ!?オルオーッ!!やめろーッ!!」
...ギュイイン!!!!...ザンッ......
ズゥゥン.........
...スタッ
「間に合ったか」
男「オルオッ!!」ダッ
オルオ「..................。」ヨロヨロ...ヘタッ
男「大丈夫か!?怪我は!?何処か痛いところはねぇかよ!?なあ!?おい!オルオッ!!しっかりしろ!おい...」
ツカツカ...
「おい新兵。...なぜ前衛にいる」
男「巨人を倒すためですッ!!そんなの誰だって」
ドゴッ...
男「痛てぇなッ!!あんたッ!!いきなり蹴らなくたって......えっ...」ギロッ...ハッ!?
リヴァイ「新兵は本隊に集めている筈だが?」
男「リヴァイ兵士長ッ!!......あのっ...さ...さきほどはしつれいしましたッ!!
」バッ!!...ケイレイ!!
リヴァイ「おい...お前。命令違反とはいい度胸だな」
リヴァイ「そんなに巨人を殺したいか?...それならそうすればいい。」
男「え?...それでは...自分も戦いに」
リヴァイ「ただ、お前の横のそいつは戦えそうにないが?」
オルオ「......。」ガクガク...ブルブル...
男「......」
リヴァイ「命令だ...小便臭いそいつを何とかしろ。」
男「了解しました...」
リヴァイ「いいな。必ず生きたまま本隊まで戻れ...さっさと行け。」ジロッ...パシュ...
男「はッ!!」
男「...。」
男「大丈夫か?肩につかまれ。兵士長の命令だ...戻るぞ...」
オルオ「...触るなッ!!...自分でいける。」
男「...」
パシュ...パシュパシュ...
ーーーー
ーーー
ーー
ーー本隊に合流する事ができた...
ーー必死で市街地を飛び回って。
ーーそれ以外は覚えていない...。
ーーあいつが何か言っていたかも知れないが...
ーーその時の俺には...
ーーその言葉を受けとめる余裕が無かった...
「総員撤退ッ!!」
「撤退ッ!!撤退だッ!!」
「各班、索敵陣形を組めッ!!」
ドォドォドォドォドドドド...
ーーーーー
ーーーー
ーーー
まだ続きます。
でわ、また。
やっぱ単騎行動はいかんね…
こんばんは。
お待たせしてます。
でわ、続き。
ーーーーー野戦陣地
エルヴィン「明朝、壁内へ帰還するッ!!周囲の警戒を徹底せよッ!!」
ドタバタ...
「怪我人の救護にあたれ!」
「物資は無事かーッ!?」
「ガスの補給を怠るな!!刃の補充もだ!」
ドタバタ...
オルオ「...。」
(最悪だ...人生の終わりを見ちまった...)
調査兵「オルオ...」
オルオ「...先輩...。」
調査兵「よく生きていたな。お前、前衛にいたそうじゃないか?」
オルオ「巨人に...喰われかけました...」
調査兵「!!...そうか。それで生きているなら上出来だ」
オルオ「自分は...小便漏らして...叫ぶ事しか出来ませんでした......」
オルオ「こんなのが...こんなのが上出来なら...戦って死んでいった先輩達が浮かばれませんッ!!」
オルオ「...悔しいんですよ...無力な自分が...」グスッ...グスッ...
調査兵「...班長が死んだ。目の前で喰われたよ...」
オルオ「!!...そんな...」
調査兵「助けてやることができなかった。でも...俺は生きてる。」
オルオ「...」グスッ...
調査兵「オルオ...この戦いに死はつきものだ。生きているならその意味を考えてみろ。生きているお前に何が出来るのかを...」
クルッ...ザッザッザッ...
オルオ「...俺に...何が...」
男「オルオ...」
オルオ「...なんだ...お前か」
男「すまんッ!!あんな目にあわせてッ!!バカな俺を許してくれッ!!本当にすまんッ!!」
オルオ「気にすんなって...お前がバカやるのはいつもの事だ。それに付き合ったのは俺だからな...」
オルオ「俺があの時...ぶん殴ってでも止めときゃあよかったんだ...危うく二人とも死ぬところだった...」
男「オルオ...お前...」
オルオ「はっ...ざまぁねぇよな。...実戦じゃ俺もお前と同等なんだからよ...」
オルオ「もうお前の事バカにしたりしねぇよ」
男「俺ももうお前を巻き込んでバカやらねぇよ...」
オルオ「...さっきは...俺も悪かったよ」
男「気にしてねぇよ。」
オルオ「あー...早く帰りてぇ...」
男「俺もだ。...初めて地獄...見たからな...」
ーーー
ーー
ー
ーーーーー明朝...
オルオ「!....もうすぐ夜が明ける」
(やった...これで帰れる!)
男「間もなく出発だな...」
男「ようやく帰れるな」
オルオ「ああ...」
(全然眠れやしねぇ...)
ザッザッ...
調査兵「オルオ出発だ。行くぞ」
男「俺も班に戻らねぇと。後でなオルオ」
オルオ「おう」
オルオ「おはようございます。昨日は心配かけてすみません」
調査兵「気にするな。...少しは落ち着いたか?」
オルオ「はい...自分の力量を知りましたから...もう無茶苦茶な事はしません」
調査兵「また帰ってからゆっくり考えるといい。ただし...」
オルオ「ただし...?」
調査兵「帰る迄が壁外調査だ。」フフッ
オルオ「はい!」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
...ドドドド...
壁上の駐屯兵「お?...帰って来たか!」
駐屯兵「さあ、仕事だ」
「開門準備だー!帰って来たぞー!」
「扉のまわりの巨人を排除しろー!」
ガンゴーン...ガンゴーン...
ゴゴゴゴゴゴ......ズズン...
オルオ「か...帰って来れた...」
(もう...クタクタだ...それにしてもなんだよ...この人の多さは?)
...ガヤガヤ...ガヤガヤ...
...今回もだいぶ減ったなー。
......何人喰わせて帰って来たんだ?
...こんな事いつまでやるんだろうな?
...本気でマリアを取り返すつもりか?
......まったく税の無駄なんだよ...
...こんな目にあってまで...
...ガヤガヤ...ガヤガヤ......
......彼等は勇敢だ...人類の為に戦ってるんだよ
...わぁ!へいたいさんがかえってきた!
......おれもおおきくなったらきょじんとたたかうんだ!
......団長!今回の成果をどうお考えですか!?何かコメントを!!
...ガヤガヤ...ガヤガヤ...
オルオ「...」
(...何も知らないやつらが...好き放題言いやがって)
オルオ「...」
(どれだけ仲間が死んだと...)
『...生きているならその意味を考えてみろ...』
『...生きているお前に何が出来るのかを』
オルオ「くっ.....」
(俺は...俺が出来るのは...)
ーーー
ーー
エルヴィン「皆、御苦労だった。今は鋭気を養い、怪我の回復に努めてくれ。これにて解散とする」
調査兵達「「「はッ!!」」」
「よーし、装備を返却しろ!」
「おーい!どいてくれ!怪我人が通るぞ」
「今作戦で巨人と対峙したものはハンジ分隊長に報告を!」
ガヤガヤ...ガヤガヤ...
...オワッタナ。コレデカエレル。
...カゾクニアエルゾ!
...トリアエズフロダ!フロ!
......コンヤノミニイコウゼ。アイツノブンモ
... ...。
ガヤガヤ...ガヤガヤ...
男「オルオッ!!やったなッ!!生きて帰って来たぜッ!!」
オルオ「ああ。」
男「これで...ペトラちゃんにデートの約束をとりつけに行けるぜ!」
オルオ「...まったく...お前は」ヤレヤレ。
男「おっ!いたいた!」タッタッタッ
オルオ「本当に反省して......あれ?...またかよ」ポツーン
男「ペトラちゃーん!俺とデートの約束を...」
クルッ...
ペトラ「なんでよ...」グスッ...
男「え...どうしたの?」
ペトラ「なんでなのよ...あんたが代わりにッ!!」ギリッ
パチン......
ペトラ「...」タッタッタッ...
男「...。」ポカーン...ヒリヒリ
オルオ「お前ッ!!あの子に何したんだよ!?」
男「わからねぇ。いきなりビンタもらった。」ポカーン
オルオ「もうやめとけ。これが答えなんだよ...」
男「...おう。」シュン
調査兵「お前達」
オルオ・男「「はい!」」ビクッ
オルオ「自分たちに何か御用でしょうか...?」
調査兵「ハンジ分隊長がお呼びだ。ついてこい。」
オルオ・男「「はッ!!」」
...ツカツカツカ......
男「やべぇぞオルオ...これって」ヒソヒソ
オルオ「ああ...覚悟はしていたが...」ヒソヒソ
コンコン...ガチャ...
調査兵「ハンジ分隊長。連れてきました。」バッ...ケイレイ
ハンジ「来たか...御苦労。君は下がっていいよ」
調査兵「はッ。失礼します」
ガチャ...バタン...
男「...」バッ...ケイレイ
オルオ「...」バッ...ケイレイ
(この人がハンジ分隊長...兵団の奇行種と噂されるあの...)
ハンジ「緊張してる?」
オルオ・男「「いえッ!!」」
ハンジ「いや、緊張してるね。二人とも額の汗がすごいよ...呼吸も安定していない。」
ハンジ「とくに君。さっきから目がおよいでるぞ!」ズイッ
男「す、すいませんッ!!」ビクッ!
ハンジ「アッハッハッハッ...まあ、これくらいにして本題だが」
ハンジ「君たち...なぜ前衛に行ったんだい?巨人でも見に行ったかい?」
オルオ「...」
(やっぱりか...どんな処分が待ってんだろうな...)
男「自分が勝手に行動しました!隣のこいつはそれを止めようと行動しただけです!」
オルオ「分隊長!こいつの勝手な行動を止められなかった自分にも責任はあります!自分にも同等の処分をお願いします!」
ハンジ「違うな...」
男「な......何が違うので...しょうか?」
ハンジ「そうじゃない!私が聞きたいのは巨人に興味があるかどうかだ!」
オルオ「は!?...巨人に?...」
男「え!?...それはいったい?」
ハンジ「君たちは命令に反してまで前線に出向いたんだろう?巨人に興味があるに違いないと踏んだんだが...」
オルオ「自分は...特に興味があるわけでは...」
男「...自分もです」
ハンジ「そうかぁ...やっぱりなぁ...新兵のなかに巨人好きはいないか?興味があるだけでもいい。もしいるなら私のところを訪ねて来るよう言っておいてくれ。」
オルオ「...はぁ」アセアセ
(やっぱり...普通じゃない...)
男「分隊長!...失礼ですが、ほかに御用件はありますでしょうか!?」ビクビク..
ハンジ「...それだけだ!もう帰っていいよ!」ハッハッハッ
オルオ「では...自分たちはこれで失礼しますッ!!」バッ...ケイレイ
(やった!命令違反のお咎め無しか!?)
男「同期の兵にはしっかり伝えておきますのでッ!!失礼しますッ!!」バッ...ケイレイ
スタスタ...ガチャ...
ハンジ「待て。」
オルオ・男「「!!」」ビクッ!!!
男「...どうされました?」アハハ...
ハンジ「...忘れ物だ。リヴァイから...」
ハンジ「コホン...失礼。リヴァイ兵士長から君たちに伝令だ。詳しくはこの手紙に書いてある。指示に従う様に。」
オルオ・男「「...はい」」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
まだ続きます。
でわ、また。
朝ですね。
でわ、続き。
ーーーーーー翌朝...
チュンチュン...チチチチ...
オルオ「いい朝だな...」
男「ああ...」
オルオ「さて...やるか...」ヨイショット
男「そうだな...」ヨッコラセ
ワシャ...ブチッ...ザッ...ザッ...
男「...訓練兵時代の続きをやってるみたいだな...」
オルオ「お前はよくサボって起こられてただろ?...草むしり。」
男「でもよぉ...これくらいで済んでよかったよな。本当に」
オルオ「馬鹿か?バーカ。...これから毎日二ヶ月間...兵団本部の内外の掃除だぞ。...しかも早朝にだ。しかも減給一ヶ月のおまけ付きだ。」
オルオ「これなら謹慎処分の方がまだマシだったが...」
男「兵団クビにならないだけでもよかったじゃんか。」ガサガサ...ブチッ...
オルオ「ここはただでさえ人員不足だからな。...入って来た兵士を簡単に手放すわけ無いだろ」ワシャ...ブチッ...ブチッ...
男「...そうだよな」ハッハッハッ
オルオ「お前...わかってんのか?」
男「何がだよ?」キョトン
オルオ「...要するにだ。...死ぬまで巨人と戦いに行くんだ。俺たちは...」
男「知ってる。そんなこと今更言ってんなよ。俺はそれでも外に行きたいんだ」
オルオ「...そうか」
男「オルオ...聞いてくれ。」
オルオ「なんだよ?」
男「俺さ...片親だろ?」
オルオ「...それは知ってるが?」
男「俺の父ちゃんさ...調査兵だったんだ」
オルオ「!?...そりゃあお前...」
男「俺が八歳の時...兵士が家を訪ねて来てよ...」
男「母ちゃんに何か包みを渡してた...沢山の貨幣と手紙だったよ」
男「母ちゃんが...そのあと泣き崩れてたのを今でも覚えてる」
オルオ「...」
男「でもさ...父ちゃんがよく言ってたんだ...壁の外の世界は自由だ...って」
男「立体機動装置を使えば風を切ってまるで鳥のように跳べるんだ...って」
男「父ちゃんが仕事に行く時の背中に揺れる自由の翼が俺は好きだった。...最高に格好いいと思ったんだ...」
男「母ちゃんには...物凄く反対されたけど俺は兵士になった」
男「オルオ...俺は父ちゃんの見たマリアの外が見たかった。俺は...その為に巨人を倒す力が必要なんだ。...こんな出来の悪い俺でも何とかなる事を証明したくて...こんな結果に...」
オルオ「もういい。...わかったよ」
男「つまらない話をして悪かったよ」
オルオ「そうじゃない...俺もやっとわかったんだ...壁の中に帰って来た時に...」
オルオ「...俺たちは...強くならなくちゃいけない。生きている限り強くあり続けなきゃならない。...自分を...仲間を...奪われない為に。そして...死んでいった仲間に戦った意味を与える為に...」
オルオ「俺は......」
オルオ「俺は強くなるぞ!!奴らを駆逐出来る技術を磨き、恐怖に屈しない兵士になる!!」
オルオ「それが...あの地獄で生き残った...俺の生きている意味だと思うから」
男「オルオ...お前...」
調査兵「よう。...やってるな!」
オルオ・男「「お、おはようございます!」」ビクッ!!!
調査兵「お前達強くなりたいか?」
オルオ・男「「!?」」
調査兵「立ち聞きする気はなかったんだが...お前達に強くなる方法を教えてやる。」
オルオ「本当ですか!?」
男「是非お願いしますッ!!」
調査兵「俺のツレが独自の戦術を研究しているんだがお前達にもそれを教えてやるよ。...ただ」
男「ただ?」
調査兵「基本が成功の鍵になるからな。みっちり基本の戦術を体に叩き込んでからだ。わかるな?」
オルオ「先輩......お願いします!俺なんでもやります!」
男「俺もなんでもやります!」
調査兵「そうか...決まりだな。」フフッ
オルオ「やったぞ!!お前ッ!!」
男「ああ!強くなるぜ!」
調査兵「そう言えば名を名乗ってなかったな。俺はエルドだ。よろしくな。お前たち」
オルオ・男「「はい!!エルドさん!」」
......ザッザッザッ
「おい。」
エルド「は...」クルッ
オルオ・男「「!!!!!?」」
リヴァイ「お前達、正面の草むしりは終わったのか?俺が本部に来る前に終わらせておけと...手紙に書いた筈だが?」ギロッ...
オルオ・男「「す...すいませんッ!!今すぐ終わらせますッ!!」」
リヴァイ「...」チラッ...チラッ...
リヴァイ「ここはさほど広くは無い...15分やる。終わらせろ。」
オルオ・男「「はッ!!!!」」
エルド「おはようございます。兵士長!...自分はこれで失礼します」
リヴァイ「待て。」
リヴァイ「お前も手伝ってやれ。こいつらの面倒を見るんだろう?」ジロッ
エルド「...了解しました」
リヴァイ「...あと13分しかない。」チラッ...パチッ...トケイトジル
ザッザッザッ...
エルド「なんで俺がこんな目に!」
オルオ「文句言ってる暇はないですよエルドさんッ!!残り10分切りますってッ!!」
男「エルドさんッ!!そっちから並んでいっぺんに行きましょうッ!!」
エルド「おお!お前なかなかいいぞ!それを採用だ!」
男「ありがとうございます!」
エルド「よし!並べ並べ!いくぞ!」
オルオ・男「「はい!」」
イソゲー!!
ジカンガナイー!!!
ザッザッザッ...ツカツカツカ...
リヴァイ「楽しみな奴等だ」ボソッ..
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ーーそれから俺は強くなるために
ーー奴らと戦う術を学んだ
ーー調査兵団の基礎訓練は革新的で
ーー苦しくて辛いものだった。
ーー新しい戦術を学ぶ時は
ーーいつも時間が欲しかった
ーー時間が必要だった
ーー立案、行動、変更の繰り返し...
ーーそれでも心が折れなかったのは...
ーー俺に信頼し得る仲間がいたからだと思う。
ーーそれから三回目の壁外調査の時だ...
エルド「右肩墜ちたぞッ!!視力を奪えッ!!」
オルオ「うおぉぉぉッ!!」ザシュッ!!
ズシン...ズシズシン...オォォオォ...
オルオ「とどめだッ!!死ねッ!!」パシュッ...
ギュイィィィィン...ザクッ!!......ズゥゥゥン...
エルド「やったか?」
オルオ「問題ないっすよ。確実に殺してますから」
エルド「お前の補佐をやるとはな...今日だけだぞ」ヤレヤレ
オルオ「エルドさんだから任せられるんすよ。」
エルド「だが...油断は大敵だ。次が来るぞ」
オルオ「わかってます。行きましょう」
ーーーーー
ーーーー
ーーーーーー壁内へ帰還後...
エルヴィン「皆、御苦労だった。また、人類反撃の布石となるだろう。今は...」
オルオ「...」キョロキョロ...
(...なんだ?...いつもと何かが違う様な...)
エルド「どうしたオルオ?...まだ団長の挨拶中だぞ」ヒソヒソ
エルヴィン「...これにて今作戦を解散とする!」
調査兵達「「「はッ!!」」」
...ガヤガヤ...ガヤガヤ...
オルオ「いや...何かいつもと違うんすよ。...何かがたりないような...」
エルド「そうか。...俺には特に何も感じられないが?」
「お前らッ!!」
エルド「?...どうした?そんなに慌ててお前らしくない」
オルオ「?...グンタさん!いやぁグンタさんの戦術のおかげでメキメキ討伐数が積み上がっていってますよ!」ハハハ...
グンタ「その話は後だ。...オルオ落ち着いて聞いてくれ...お前のツレが......」
オルオ「え...」
エルド「!?...」
...ガヤガヤ...ガヤガヤ...
......ガヤガヤ......
ーーーー
ーーー
ーー
ーーーーーー五日後...
オルオ「おっ、いたいた。間違いない!」
オルオ「おい。あんた」
ペトラ「なに?」クルッ
ペトラ「私に何か用?」
オルオ「すまねぇが、少し付き合ってくれ」
ペトラ「何よ突然...」
オルオ「頼む!このとおりだ!」オネガイシマス!!
ペトラ「?...わかったわよ」
オルオ「助かる」
ーーー
ーー
ペトラ「ちょっと...どこまで歩くのよ?」
オルオ「すまねぇ...もう少しだ。」
ザッザッザッ...
ペトラ「これって...」
オルオ「こいつの墓に...冥福を祈ってやってくれないか...それだけでいいんだ!頼む!」
ペトラ「なんで私なの?」
オルオ「あんたに断るごとにちょっかいかけてたバカ...覚えてるか?」
ペトラ「!?...まさか...」
オルオ「覚えて無くてもいいんだ。...ただ...あいつは喜ぶと思うから」
ペトラ「あいつ...死んだの?」
オルオ「覚えててくれてたか!...そうだ。中身は入ってねぇが...これはあいつの墓だ。五日前の壁外調査で死んじまった」
オルオ「誰もが劇的な最後を迎えられるもんでもないらしいな...」
ペトラ「......」
オルオ「あいつさ...あんたにしつこくするもんだからビンタ喰らったろ。だからそれからあんたに話かけるのにびびっちまってさ...それで」
ペトラ「...ごめんなさい」
オルオ「え...」
ペトラ「あの時の私はどうかしてた...」
ペトラ「..初陣で親友を失ったの...それで彼がいつも通り笑顔で話かけるもんだから..」
オルオ「...」
ペトラ「...こいつが代わりに死ねばよかった...私の友達の代わりに...って思っちゃった...」ジワッ...グスッ...グスッ...
ペトラ「...死んでいい人なんかこの世にいないのに...」グスッ...グスッ...
ペトラ「...私...彼に謝らなきゃって思ったの...でもできなかった。...私が弱かったから...自分を咎める勇気がなかったから...」グスッ...グスッ...ポロポロ...
オルオ「...そうか。あんたには悪いことをしたな...あいつの代わりだが...すまん。許してやってくれ。」
ペトラ「大丈夫。彼は何も悪く無いもの...彼の冥福を祈りましょう」
... ...... ...... ......
オルオ「手間をとらせて悪かったな。あんたも頑張れよ。お互い死なないようにな」
ペトラ「ええ」
オルオ「じゃあな」
ペトラ「待って」
オルオ「なんだ?」
ペトラ「私...ペトラ。ペトラ・ラルっていうの...あんた名前は?」
オルオ「俺か?俺は...」
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーーー
ーーーーー
ーーーーーー
...ガンゴーン... ...ガンゴーン......
ーー鐘が鳴る。
ーー遺された者の祈りの声か...
ーー死せる者への鎮魂の歌か...
ーー鐘が鳴る。
ーー鳥籠の蓋が開く...
ーー二重の翼を纏い解き放たれて行く...
ーー鐘が鳴る。
ーー勝者の歓喜の勝どきか...
ーー敗者の憔悴への嘆きか...
ーーそして今日も...
ーー鐘が鳴る。
...... ... ...... ... ...
終わりです。
最後までお付き合い
いただきありがとうございました。
でわ、またどこかで。
なかなか良かったよ
乙
切ないな…
でもオルオとペトラの出会いや新たな始まり感もあり、良い!
乙でした!
最後泣きそうになったのに烏龍茶を思い出した自分にガッカリした
このSSまとめへのコメント
オルオ主役のssははじめてだわ!!!!!
良かった乙