雪ノ下雪乃「神話大系」 (116)
第一話
義務教育課程終了までの九年間、私が得られた友好の輪は一つ足りとも存在しなかったことを断言しておきます。私欲にまみれた異性の好意を袖に降り、嫉妬に狂った同姓の僻みに目もくれず、社会的有為の人材となるための自己研鑽に明け暮れた結果として、私が孤立の立場に追い込まれたのは、なにゆえであるか。
責任者を問いただす必要がある。責任者はどこか。
私は誕生以来真っ直ぐに生きてきた。生後間もない頃の私は純粋無垢の権化であり、姉共々その邪念の欠片もない微笑で親類を愛の光で満たしたと言われる。それが今ではどうだろう。
集団から弾かれている己を自覚するたびに怒りに駆られる。なにゆえ私はこうなってしまったのか。これが現時点における私の総決算だというのか。周囲のねじまがった価値観と同調意識が私を異端であると弾劾するならば、私にだって考えがある。世界を変えるのだ。まだ若いのだからと言う人もあろう。人間いくらでも変わることができると。
そんな馬鹿なことがありえない。
三つ子の魂百までと言うのに、当年とって十と五つ、やがてこの世からは成人として扱われようとする立派な淑女が、いまさら己の人格を変貌させようとむくつけき努力を重ねたところで何となろう。第一それは私にとって敗北を意味する。どんな抵抗にも耐え抜き虚空に屹立していた私の人格が報われない。
よって今ここにある己を引きずって、生涯をまっとうせしなければ、私の過去から目をつぶってはならないのだ。
私は断固として目をつぶらぬ所存である。
でも、いささか、見るに堪えない。
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これは期待
またループの環に入る者が現れたのか
あの文体で書き続けるのしんどそうだけど頑張ってほしい
比企谷君と私は同学年である。それなりの進学校であるはずの総武高校普通科に所属するにもかかわらず、数学を捨てて文系科目を決め打ちしている。一年生が終わった時点での成績は恐るべき低空飛行の末に墜落したらしく、年度末に補習および追試をしているさまを鼻で笑ったのことは記憶に新しい。しかし本人はどこ吹く風であった。
野菜嫌いで惣菜のパンばかり食べているから、なんだか月の裏側から来た人のような顔色をしていて甚だ不気味だ。それに彼の目は腐敗した魚類のそれに似ているから、夜道で会えば十人中八人は不審者と間違って通報する。残りの二人は妖怪と間違えて卒倒するだろうと践んでいた。弱者に鞭打ち、強者にへつらい、わがままであり、傲慢であり、怠惰であり、天の邪鬼であり、休暇に勉強しかすることがなく、誇りの欠片もなく、他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える。およそ誉めるべきところが一つもない。もし彼と出会わなければ、きっと私の魂はもっと清らかであっただろう。
それを思うにつけ、一年生の春、「テニス部」へ足を踏み入れたことがそもそも間違いであったと言わざるをえない。
行間開けろ
当時、私はぴかぴかの一年生であった。すっかり花の散りきった桜の葉が青々として、すがすがしかったことを思い出す。
新入生の部活勧誘は合格発表の頃にビラ配りとして終えており、先輩方はえっちらおっちら歩いて校内を見回す後輩を無理矢理連れ出すようなことはしなかった。
姉の陽乃が卒業生であることを総武高校の志望理由に上げられる私であったが、何から何まで姉の足跡をなぞる必要はない。私は私の道を行き、世界を変えて見せると決心していたのは先述の通りである。私は過去にコーチを引退させた才覚を生かし、再びラケットを握ることを決意した。
テニスコート周辺は湧き上がる希望に頬を染めた新入生たちと、それを餌食にしようと手ぐすね引いているテニス部の勧誘員たちで賑わっていた。幻の至宝と呼ばれる「薔薇色の青春」求めて群がる蚤のようだったと比企谷君が語っていたが、私も同感である。
ここでは私の目的意識に釣り合わないのではと危惧したが、運動部に所属すればあわよくば挨拶のする人間が出来るかも知れないという淡い期待を募らせ、枯れ木として森の賑わいに加わった。しかし眉目秀麗たる私に枯れ木は似合わなかった。下卑た視線が集まってきたため、やはり今日のところは引き上げようとした矢先、私が目にしたのは新入生を対象にした体験入部も兼ねた実戦を行っているというポスターである。
「これ、やってみたいのだけれど」
私の言葉に場にいた全員が目を丸くした。
凄く読みにくい
クソワロタ
期待してるから頑張ってくれ
面白い
テニスというスポーツは相手コートの定められた範囲にボールを打ち込み合いながら切磋琢磨し合うま紳士の遊びである。得点の名称には状況に応じた変化が存在する。決してサービスエースとリターンエースだけで終わるスポーツではないのだけれども、終わってしまったのだから仕方がない。部長と呼ばれる終始私の脚部に着目していた男が膝から崩れ落ちたのはゲーム開始から二十分後のことである。自然と湧き出たギャラリーは私の勝利を讃えていたが、部員連中は固唾を飲んで部長氏の反応を伺っていた。結局彼は一言も発せず、次の日顧問の教師に退部届けを提出したという。
この衝撃の高校デビューを受けて放課後の呼び立ての増加や下駄箱が恋文に占領され、「雪ノ下さん凄いや」となにやら星の瞬きを目に秘めた女の子の容姿をした男の子になつかれたのが私の利点であると考えるなら、いささか頭が痛い。
この発想はなかった
面白い・・・期待
その後私は部長を追い込んだ責任感から、テニス部へ入部した。来るべき変革の際、盾となる人材の一人でも見つかればいいなとたかをくくっていたが、テニス部は腹立たしいほどの和気藹々とした仲良し集団であり、同部員である事実が高翌嶺であるはず私を囲う垣根を低く見せるためか、男子生徒が入部しては私にフラれて退部するという半永久機関が成立した。
可愛いは正義でも美しさは罪である。私は女子部員から村八分の不当な扱いを受け、味方は女の子のような容姿の男子生徒、戸塚彩加さんだけとなった。
そうして暗がりに追いやられた私達の傍らに、酷く縁起の悪い顔をした不気味な男が立っていた。繊細な私だけに見える地獄からの使者かと思ったが、どうやら戸塚さんも同じ景色を見ているらしい。
どっちも好きだから期待
「八幡?なにしてるの?」
どうやら戸塚さんと謎の妖怪は知り合いのようである。少なからずの信用を寄せていた私の中の彼の株価は大幅な下落をみせていたが、戸塚さんは妖怪になついているようで、街中で見かけたら仲睦まじい恋人であるかのように錯覚するほど、一人と一匹は密着していた。
「昼に飯が食えなかっただろ?せっかく買ったんだし、戸塚のウェア姿をおかずに食べてみようかなって」
「もう、八幡たら・・・」
一体どこに顔を紅潮させる言葉があったのか。人身掌握に長けた私の常識が揺らいでるのを尻目に、妖怪は戸塚さんを離した後に、私に語りかけるような仕草をして硬直した。
「げ、雪ノ下」
紡いだ言葉はそれだけである。私はこの犯罪者予備軍に分類されているであろう腐った目をしたなにかにすら距離を置かれているという事実に辟易して表情を曇らせる。次に憎しみの感情が溢れ出でた。戸塚さんをこんな男に取られたということが私には許しがたく、必要以上に男を咎めてしまった。
「何かしら。それとあなた、私に自己紹介が済んでいないのだけれど。何者なのかしら?それに目が腐っているわ。早急に改善しないと警察に通報するわよ」
「・・・お前なんてこと言うんだよ。ほっとけ俺はただのぼっちだよ。その証拠に男の友達がいない」
「あの・・・八幡。僕男の子なんだけど」
これが私と比企谷君のファーストコンタクトでもありワーストコンタクトでもあった。
明石さんはガハマさん?
比企谷君と私の出会いから時は一息に一年後へ飛ぶ。二年生となった五月の半ばである。
私と戸塚さんは愛すべきテニス部室のパイプ椅子に腰掛け、地べたに正座する比企谷君を尋問していた。議題は「比企谷八幡の身元請負としてテニス部が適切か否か」というものだ。
「俺は悪くない。周囲が悪いんだ」
「それはあなたの近くいる私達を侮辱していると受け取っていいのかしら?」
「八幡、後少ししたら三年生は引退するし、八幡が心配してることなんて何もないんだよ?だから、一緒にテニスしようよ」
甘い口調で誘惑する戸塚さんであったが、彼は意固地にも首を縦に振らなかった。停滞した事態に私はため息を漏らし、比企谷君を睨み付けた。
「言ってみなさい。何が不満なのかしら」
「いや、だってお前らガチでテニスやってるじゃん。俺の居場所としてはありえなくね?」
「そう仕向けたのは他ならないあなたでしょう?責任という言葉を知らないのかしら」
「いや、団体戦でIH出場確実と噂されるまで頑張れとか言ってないでしょ?」
そう言って比企谷君は目を逸して腐った。そう、この一年間で私と戸塚さんを取り巻く環境は激変していた。キューバ危機に匹敵するほど私の堪忍袋がパツンパツンに膨れ上がった去年の夏。当時の三年生の引退を期に、私独自のカリスマ性を存分に発揮して総武高校テニス部の転生計画を打ち立てたのだ。端的に言えば堕落しておちゃらけた雰囲気を醸し出す部員を全員叩き直し、ガチガチの体育会系強豪チームへと変移させた。この善行の褒賞として私は隙のない完全独占体制を敷いたのである。
面白い。
体力ないのにがんばったなぁ
元より立場が弱者側であった私と戸塚さんの反乱に、三浦優美子さん率いる反対勢力との内部抗争などが勃発したが、顧問の先生と先輩方の協力のお陰で現在は鎮火している。その平和の代償に三浦さん他数名が部を去り、我がテニス部は少数精鋭の体を成していた。故に比企谷君の勧誘である。このままでは我々の世代が団体戦に出る為に、来年からの新入生を二人ほど採用しなければならないという、雪ノ下政権始まって以来の危機を迎えているのだ。
追い出すような真似をしてしまった三浦さん他数名の心情を考慮するなら、残された私達に中途半端な真似は許されない。私は比企谷君に最大限の譲歩を提示することにした。
「比企谷君、私達に協力してくれた暁にはそれなりの待遇を用意させてもらうのだけれど、どうかしら?」
「待遇?」
「ええ、放課後私があなたとデートしてあげるわ」
「喧嘩売ってんのか」それは私の台詞だ。
「では戸塚さんではどうかしら」
「えっ!?マジで!?」
「八幡!?」
この女、さらっと同志を売りやがったww
期待
戸塚さんの犠牲を払い、話は纏まった。さぁこれからとっておきのデートプランの為に妹と侃々諤々の大論争を繰り広げるぞとの意気込みを洩らす比企谷君に、テニス部室であるにも関わらず来客が訪れた。名を平塚といい、どうやら比企谷君に課した作文の内容に物申す為ここに来たらしい。懲罰として私達の前で朗読され、比企谷君は顔を両手で覆い隠した。恥ずかしいなら初めからまともに書けばいいのにと思った。
「リア充爆発しろ。・・・君は一体何を考えているのだね」
「・・・改めて読むと、我ながら拙い文章ですね。これは教師が悪いのでは?」
「それは私だっ!!」
平塚女史の鉄拳が比企谷君の鳩尾を打ち抜く。当然の仕打ちなので私は苦言を出さなかった。
むしろ日頃の鬱憤が晴れたかのように思え、私は心の中で先生を讃えた。不死の亡者である比企谷君が再び人並みの滑舌を取り戻す間に、私は彼女が総武高校に在学していた頃の姉の担当を受け持っていたことを知った。世の中狭いものだ。
「やはり姉妹だな。君と陽乃はよく似ている。ただ君の方は陽乃に比べて優等生の一面が大きい。私は君が好ましいよ」
平塚女史の慧眼に私は脱帽した。能ある鷹は爪を隠すというが、能ある姉の爪は常に剥き出しで、障害構わず強引に獲物を拐う剛爪であり、相対的に私の可愛らしい爪が劣っているような印象を凡人は感受する。彼女の評論は実に的確であった。さらに比企谷君を従わせるだけの地位を持っており、話の分かる太平洋がごとき心の広さも垣間見た。私はかねてから画策していた案件を平塚女史に相談することにした。
「先生、折り入ってお願いがあるのですが」
「ん?」
「比企谷君はこの通り、人の気持ちがわかりません。ですから影で平塚先生を行き遅れと罵倒したり、他人の不幸を心安らぐクラシックとして聞き入れます」
「最低な男だな。ホモサピエンスの面汚しだ」
平塚女史は床に這いつくばる比企谷君に追い討ちをかけるため、テーブルに置いてあった雑誌を丸めて棒状にした。一発殴るのを確認した後に、私は会話を繋げた。
勧、誘…?
あれ、俺の知ってる勧誘となんか違う…
元がそういうもんなのか知らないけど、地の文の所も改行して、行間キチンと空けてくんない?
読みにくくて読む気になんねぇわ
んじゃ読まなくていいよ
面白いから続きはよ
元ネタがこんなんだからしょうがない
合わないのならさようならすればいい
>>27
元ネタがこういう感じ
読みにくいかわりにそれが面白さに繋がるから
地の文たっぷりの小説を読まない人は合わないよ
「まさにその通りです。現に比企谷君はテニス部の急場をどこからか聞き付け、『大丈夫なのか?』と心配する素振りだけ見せて、私達が頼ろうとした瞬間『助けたら何をしてくれるんだ?』と見返りを求めた外道の極みなのです。私は泣く泣くそこの隅っこで怯えている戸塚さんを差し出すことになってしまいました」
言葉尻に夫に先立たれた若き未亡人のような色気を交えて私は顔を押さえた。これは半分本当のことである。つまり四捨五入して厳然たる真ということだ。私の証言に何故か戸塚さんが身を乗り出して反論しようとしてきたので、巷で比企谷君に邪眼と揶揄されている冷えきった眼差しで彼を威圧した。戸塚さんは再び体育座りで比企谷君と同じ階層に沈んでいった。
「比企谷・・・そこまで堕ちたのか」
平塚女史の視線は幼い子どもの前で煙草を吸う父親を責める母親のようなものになっていた。いつになるかはわからないがきっと良い母親になるだろうと思ったけれども、そもそも彼女自身が喫煙者であるため、結婚すること自体に難しいではないかと自己完結した。
「比企谷がどうしようもない子悪党だということは知っていたが、そこまで見境がないとは失望したぞ。それで雪ノ下、私に何を頼みたいのだね?この歩く不埒を君達に近付けさせないようにすることか?」
「違います。むしろその逆、比企谷君を私から離れないようにして欲しいのです」
こういうの読めない人って普段何読んでんの?
まさか台本形式SSしか文章読めませんなんてことないよね?
どうでもいいけど読みにくい
私の要望に平塚女史は理解できないという考えをそのまま表情として張り付けていた。存外にも鈍い人だ。過度の加齢で乙女心を無くしてしまったのかしらと推察した。
「どういうことだ」
「つまり、この学校には比企谷君の被害者が沢山いるので、その防波堤として私を起用してくださいということです」
「まてまて、余計意味がわからないぞ」
「要するに今の比企谷君は総武高におけるワイン樽に入り込んだ塵・・・腐った蜜柑・・・これも言い過ぎかしら、ええっと・・・出荷されない未熟の果実です。よって優等生かつ模範生である私に、彼の加工を命じて下さい。ちゃんと最後まで面倒を見ると約束します。ですから・・・」
「雪ノ下、君は比企谷が気持ち悪くないのか?誰かを助けるのは君が傷付いていい理由にはならないぞ」
改行して整えてくれないと読めない人は、自分はマンガとラノベしか読めないレベルの頭なんだと思って諦めたほうがいい
改行して整えてくれないと読めない人は、自分はマンガとラノベしか読めないレベルの頭なんだと思って諦めたほうがいい
まさか、明石さん役って……
この程度で読みにくい言ってたらでかい写真を見出しに貼ってる新聞の活字とか解読不能なレベルだよな?どうやって生きてんの?
地の文は一息で無感情にやや早口なイメージ、てかアニメがそうだった
面白い。期待してる
みなさん荒れる原因になりますからほどほどに
マンガも読めない高校生が増えてるってニュースで見たことあるし、そういう人はスルーしたらいいのさ
ましてここはVIPじゃなくて文章を投稿する専用の掲示板なんだから
「勿論この提案は私にもうまみがあります。ですがそれは平塚先生とっては大変下らないことなので公表は避けたいと思います。それで、いかがでしょうか。最低でも休日の拘束権までは頂きたいのですが」
「駄目に決まっているだろう」
「・・・・・・本当に?」
「当然だ。教師をなんだと思っている」
その後童心の頃を思い起こさせるだだっ子ぶりで平塚女史の説得にかかる私であったが、流石に年の功か、狙いをひた隠しにしたまま彼女を丸め込むことは出来なかった。「優等生かつ模範生であるなら比企谷とは関わるな」その完璧な論理の牙城を崩すための材料を持ち合わせていなかった私は、平塚女史が去ったテニス部室で呆然としながら比企谷君にやつあたりしていた。
「この作文、随分誤字が多いわね。期日ぎりぎりまで放っておいたのかしら?まるで徹夜で書いたように読めるのだけれど」
「その通りですよ。わかりきったこと確認してんじゃねえよ、たくっ・・・」
戸塚さんは予定があると言って早々に帰宅したため、部室には私と比企谷君の二人だけである。心臓の高鳴りで緊迫した空気に押し潰されないよう、私は不自然に口を回していた。
「部活で疲れたから、帰りは自転車で送って欲しいのだけれど」
「おう、そんくらいならやってやんよ」
「・・・いつもそのくらい素直でいればいいのに」
「ほっとけ。平塚先生のいう通り、いつまでも俺に構ってくれるな。自立しろ、じ・り・つ。大体何でそこまで俺のことを気にするんだよ?」
「私なりの愛よ。ありがたいでしょ?」
「そんなもんいらんわ」
激しい練習の最中に千切れたガットの弛みを指で遊びながら、比企谷君は答えた。
ワロタ
ネタバレ兼テスト投下
全4章構成
明石さんは三浦
第n次玩具流行
スマホだから毎回ID変わる筈なんだよな?>>40誰だよ。怖いんだけど
繝?せ
うるさいのいるけど気にせずどうぞ
一般的な親子愛が子どもに対してどの程度の干渉を及ぼすのか。私はそれを測るだけの「経験」という名のものさしを持っていなかった。私と母は不仲である。支配者たる素質を、姉と私に血という形で継承させた母を尊敬はしていたが、彼女には母性という本能的な感情が薄いのではないかという疑念を幼心からも抱いてきた。確信に変わったのは小学生の頃に起きた、ある事件が発端にある。これはあまり思い出したくないので割愛させてもらう。少なくともこの事がきっかけで、私達の関係に亀裂が見え始めたのは間違いないとだけ言っておこう。
私と姉もまた不仲である。雪ノ下本家には覇道を極めんとする豪気を内に秘めた人物が三人、ひとつ屋根の下で暮らしていた。すなわち母と、姉と、私である。姉はとても優秀な人物で、私が噛み付いてはにこやかに顎を外して手懐けようとする愉快な人柄をしている。
この表現は当然比喩的なものであるが、彼女の人物像としては十分的を射られたものであると自負していた。
父と私は普通である。特に語ることはない。
しかし父は地位と名誉と金を持っていて、私達の姉妹にはかぐや姫を見つけた竹取りの翁のごとく子煩悩を発揮しており、私は高校入学当時から父に与えてもらったオートロックの高層マンションを拠点に一人暮らしをしていた。
一般的な親子愛が子どもに対してどの程度の干渉を及ぼすのか。私はそれを測るだけの「経験」という名のものさしを持っていなかった。私と母は不仲である。支配者たる素質を、姉と私に血という形で継承させた母を尊敬はしていたが、彼女には母性という本能的な感情が薄いのではないかという疑念を幼心からも抱いてきた。確信に変わったのは小学生の頃に起きた、ある事件が発端にある。これはあまり思い出したくないので割愛させてもらう。少なくともこの事がきっかけで、私達の関係に亀裂が見え始めたのは間違いないとだけ言っておこう。
私と姉もまた不仲である。雪ノ下本家には覇道を極めんとする豪気を内に秘めた人物が三人、ひとつ屋根の下で暮らしていた。すなわち母と、姉と、私である。姉はとても優秀な人物で、私が噛み付いてはにこやかに顎を外して手懐けようとする愉快な人柄をしている。
この表現は当然比喩的なものであるが、彼女の人物像としては十分的を射られたものであると自負していた。
父と私は普通である。特に語ることはない。
しかし父は地位と名誉と金を持っていて、私達の姉妹にはかぐや姫を見つけた竹取りの翁のごとく子煩悩を発揮しており、私は高校入学当時から父に与えてもらったオートロックの高層マンションを拠点に一人暮らしをしていた。
この部屋の敷居を跨げる人物は限られている。私の知る限りでは家族と、戸塚さんと、比企谷君だけである。この中で誰が最も多く訪問しているかというと、比企谷君・・・ではなく、姉の雪ノ下陽乃だ。こと私達姉妹に関しては心配性の父から、私の一挙手一投足、下着の色に至るまで逐一報告する仕事を請け負っていると言っていたが、本当にそんなことがあってたまるか。
恐らく個人的な面談のつもりでやってくるのだろう。その周期は二週につき一度程度のものである。つまり来客は殆ど無い。
先日、「雪乃ちゃんさあ、せっかく親の監視がない所にいるのに、なんではしゃいだりしないの?友達がいないの?」と姉から放たれた詮索の矢は、おろしたてのタオルのように柔らかな私の心臓を貫き、「ぎゃあああ」と叫びたくなったが淑女らしく耐えた。これが私と姉の最新のメモリアルである。
この記録は比企谷君愛用の自転車『エグチDT』の荷台に揺られて玄関口まで送迎してもらい、その場で解散した直後に更新されることになる。
春とはいえ夕暮れになれば肌寒い。運んでもらったお礼も兼ねて、お茶でもどうかしらと比企谷君を誘った結果、見たいアニメがあると断られた。がっくりと肩を落とす私の視界に、まるで血のように赤い薄手のコートを着込んだ姉が、エレベーターホールのソファーに襲来しているのが写った。はじめ私は無視したのだが、好奇心の権化となった姉に矢継ぎ早に迫られ、強引に話を展開されてしまった。
「雪乃ちゃんってああいう子が好みだったの?隼人とは真逆って感じだね?」
「姉さん、何か用事でもあるのかしら?」
「つれないなあ。せっかくだし、部屋でお茶飲みながら恋ばなしようよ。一度やってみたかったんだ。雪乃ちゃんむっつりだから、全然尻尾を見せてくれないもんね?」
そう言って姉は私の腕を絡み取った。
「くっつかないで」
「私ってば寂しがり屋さんだから」
「どの口が」
私は吐き捨てるように唸った。
読みづらい
鯖復活記念カキコ
応援してます!
読みづらさを感じさせるぐらいに圧縮されてるのがたまらんな
アニメの方しか『4畳半』知らないのだが原作がこうならゆとりには読みづらかろう
面白いので続きお待ちしております
指摘されてわざわざ改行の後一行空けまでしてるというのに
本来のパロ的にはそれすら無いほうがいいだろうに
こういう作品なんだから本当に嫌なら読むなだよ
この文体も含めてのパロなんだと思ってる。別に読みにくいとも思わないし。
結局二人でエレベーターに乗り込み、私はこれからどう姉をしめだすか思索していた。姉が部屋のある階を指定すると、私達姉妹の他には誰もいないのに耳打ちするかのように顔を近付けてきた。
「二人はいつから付き合っているんですかあ?」
「まだ付き合ってはいないのだけれど」
更に言えば連絡先も知らない。私が比企谷君の個人情報として本人から得ているのは妹さんがいること、妹さんが今年受験生であること、妹さんがとてもかわいらしい容姿をしているらしいことの三つだ。傷付くだけの事実確認に酷く憂鬱な気分になっている私とは裏腹に、姉は珍しい玩具を見つけた児童のように目を輝かせ、矢継ぎ早にしゃべくり始めた。
「まだ?・・・ふーん。じゃあさ、作戦立てようよ。戦略はとっても大事なのでーす。まず拉致のやり方だけど、どうする?カツアゲとか?でもあの子、見た目からしてカモっぽいから手馴れてそうだよね」
「・・・。まあ、否定はしないけれど」
「だよね。となると」
「待って。姉さんには悪いけど、これは私だけの問題なの。口を挟まないで」
「ええー」
姉は口を尖らせ、目を細める。顔に不満を目一杯表していた。だが私もまた顔に不愉快を示すよう努めていた。一歩も譲歩しない心積もりで姉を睨め付ける。
ポンというエレベーターが鳴るまで、私達は互いを牽制しあっていた。
こういうスレで、こういう形で表現しようという試みは買うけど
読みやすいか否かで言えば、仕方ない評価
読みにくいと思ってるけどこれは仕様だろうな、と思って黙ってた。
内容は面白いから問題ない
また阿呆なものを作りましたね。しかし嫌いではないです。
フローリングの掃除は毎日行っているため埃一つない。戸塚さんは綺麗好きと誉めてくれたが比企谷君は生活感がなくて落ち着かないと言っていた。そのうちモデルハウス並みに掃除しにいくと約束したことを思い出してにやける。まずは姉を追い出さねば。
「紅茶でいいかしら」
「うん。アッサムでお願いね」
厚かましい。しかし私と姉は食べ物の趣味だけは一致しているため、とかく嫌味を垂れることをしなかった。比企谷君相手なら「あなたは施しを受ける立場なのだから黙って飲みなさい」と顔にティーカップを押し付けていただろう。
十分ほど時間をかけて準備をこなしキッチンからリビングに戻ると、テレビデッキの下に隠してあるはずのDVDが姉の膝に乗せられていた。
「妹のプライベートを漁るだなんて、良い趣味しているのね。知らなかったわ」
私はテーブルに茶器とお菓子を並べながら怒気を込めて姉に申し立てる。姉は軽く流してDVDの箱を開け、ディスクを取り出して天井にかざした。
「これ実家にはなかったよね?新しく買ったの?」
「ちょっと待って。どうして姉さんは私の部屋に入っているのかしら。鍵がついているはずなのだけれど」
「あれくらいなんてことないよ」
復帰してたー
地の文が癖になるわぁ
悪びれもしない姉の態度が私の癪をつつき回す。だが私は怒りに震える唇を固く締め直し、
可能な限りの笑顔を姉に向けた。
「そう、次からは声紋認証でも取り付けようかしら」
「・・・それいいね。私もお父さんに頼んでみようかな」
そう言って姉も笑った。でも私は見逃さなかった。姉は一瞬、驚きの表情を露呈したのだ。仕返しに成功した私は機嫌良く駅前で買ったクッキーをつまむ。美味しい、カラメルでコーティングされた洋菓子は紅茶と良く合う。心が幾分か穏やかになった矢先、再び姉が私の平穏を乱そうと語りかけてきた。
「雪乃ちゃん、変わったね。なんて言うか・・・大人になった?もしかして先越されちゃったかな?」
「それは姉さんの勘違いよ。私は昔からずっと同じままで、変わってなどいないわ。ただ、もう少ししたら年齢の差が無くなって姉さんに追い付けるかもね。私はそのつもりだけど」
「・・・・・・そっか」
「ええ、そうよ」
その後の私達は傍目から見れば仲の良い姉妹だったに違いない。だが私のお腹の中は黒々とした野心と理性が決死のおしくらまんじゅうをしているのである。おそらく姉もそうであろう。
姉を立件すれば雪ノ下の名を落とし、ひいては私の順風満帆な人生に多大な悪影響を及ぼすことは明らかである。しかし、だからと言ってこの女の横暴をひたすらに許容し続けるのは私の主義に反する。私は煮えたぎる復讐心と華々しい将来を天秤にかけた。
自分は改行なし好きなんだがのぅ、いや原作を知らないけれど
なんか読みづらいって注文つけてるの1人だけっぽいな
>>1のやり易いスタイルで構いませんが、個人的には改行なしのほうがガツンときましたねえ
結果として私は勝った。比企谷メソッド『人を怒りに駆り立てる108つの行動』に、役に立つどころか姉にまで多少の効果が見込めるとわかったのは思わぬ収穫である。日記に書き残して苛々した時の精神安定剤として活用するとしよう。
○
ティーポットが空になる頃には時刻は六時を過ぎていた。そろそろパンさんの番組が開始するため、私は視線を姉と時計で往復させた。無言の圧力に姉は苦笑いした。
「じゃあ今日はおいとましようかな。それとも泊まっていこうか?雪乃ちゃん一人で寂しくない?」
「いいから帰って」
私が食い気味に答えると姉はまた笑った。なんだか今日の姉は一段とよく笑う。なにか良いことでもあったのだろうか。
「やっぱり変わったよ。柔らかくなってる」
「私は前から柔軟性には自信があるのだけれど」
「おうおう。そこまでしらばっくれるなら身体に直接聞いてやるッ」
「ちょっと、姉さん!!どこ触ってるの」
私にひとしきりの猥褻行為を終えた後、姉は選別と称して若者向けの雑誌を私に渡して帰っていった。ちなみに、パンさんの番組は録画をしていなければオープニングを見逃すところであった。絶対に許さない。
そういえばわたりんも森見信者だったな
比企谷が私じゃないとは意外だな
テニス部に入ってからの私の生活習慣はえらく機械的で、今日のように姉が来襲したり、戸塚さんと比企谷君が遊びに来たりすることがない限り誤差は生じない。
その日は遅めの夕食と入浴であった。私の場合、浴場で一日の疲労を溶かした後は長い黒髪の介護に奮闘しなければならない。いっそ短くしようかと頭を悩ませたこともあったが、ここまで手塩にかけて世話してきたことを考えるとなかなか実行には踏み切れずにいた。
私はドライヤーで丁寧に乾燥させた髪を首から胸元に流した。髪の塩梅を確かめながらリビングに戻り、柔らかい皮のソファーに身を任せ、テーブルに置かれた雑誌を手に取る。姉の置き土産だ。表紙には私と同世代らしき娘がはにかみながらポーズをとっていた。
「・・・この服、私の方が似合うわね」
一人暮らしを始めてわかることによく独り言が増えるといわれる。私も例外ではない。一頁に最低五つ、コーディネートやメイクに茶々を入れて読み進めていると、やがて本能的に怖気が走る。原因は見開いた頁にあった。使い古された語り種で詐欺の匂いを醸し出し、全体的に桃色でチープなレイアウトから胡散臭さを演出している。泣く乙女も刮目する『恋の星座占い』がそこにあった。
読みづらいって言ってる人は多分ブラウザの設定がこのスレにはあっていないんじゃないかと
例えばスレ本文の横幅を思いっきりとってるとこのスレは読みづらいと思う
私は憤った。くだらない、恋とは一種の錯乱状態でしかない。一時の感情で動くことは誰にでも、勿論私にだってある。だが経験上、女性の大半は『恋』を免罪符に携え、幼さ故なのかやけに攻撃的になるのだ。また持ち主が成熟していない子どもなら、その感情はいつ爆発するのか、どれだけの範囲を巻き込むのか分からない危険な爆弾と形容できよう。私はそんな、世界の中心が自分であると言わんばかりの主張で、他者を排斥する者を棄唾している。エゴの塊にしか見えない恋も恋心も、私には好ましくない。『偽物』は必要ないのだ。
今すぐ本を閉じて、捨ててしまおうと思った。しかしその頁は嫌でも目についてしまう。おそらく姉の仕業であるが、対色のマーカーで私に該当する項目が囲われていたからだ。
「一体何がしたいのかしら?」
私は指でなぞりながらマーカーで潰れている文字を読み解いた。彼氏とすれ違う。そもそも彼氏が存在しない。女友達と不穏な空気。戸塚さんとは円満な筈だ、無用の心配である。好機は常に箱の中?意味が分からない。ラッキーアイテムはレアカード・・・。
「全く役に立たないわね」
私は嘆息した。もう寝よう。明日は平日だ。
ふう追い付いた 地の文多いss最近減ってたからこれは嬉しい
あとエグチDTでワロタw
戸塚は女友達扱いなんだなwwww
月曜が一週間の中で最も気だるい曜日という考えは間違いだ。現代社会においては休み自体が不規則で、労働基準法すら盾に出来ない人々が大勢いるのが現実である。つまり、月曜でなくとも人間の意欲は削がれている。よく報道機関を駆使して、時代を把握できない老人達が人生を語っているが、聞く耳を持つ必要はない。何故ならレガシーシステムに取り付かれた文明は崩壊の一途を辿る。これは歴史から学べる自明の理だ。
「よって私は働かない。仮に働くならいつでも休憩出来て、家でこなせるものが良い。だから私は専業主婦を希望します」
「どうだ?わりと説得力あるだろ?」
「リテイク」
「ですよねえ」
比企谷君は溜め息をつく。朝一番にこれを読まされた私に何か言うことはないのだろうか。
二年F組は生徒の入りが遅いことで有名で、主に比企谷君と、もう一人の女子生徒が平均を著しく下げていると戸塚さんはむくれていた。
珍しく今日は早くに登校している理由は定かでないが、テニス部の朝練を終えて教室に戻る途中に比企谷君を捕まえたのは僥倖である。
これを平塚女史の目に触れたら彼の評価は地に潜り、地獄を通り抜けてどこか別の異次元へと到達してしまうだろう。
「あなた、自分の行動があなた自身を貶めていることにまだ気付かないのかしら?」
「ばーか。俺だからこそやるんだよ」
比企谷君はそう言って不気味に目を落とした。腐ったものに蓋をして、見れる顔になったかと思いきや、顔全体から余計に腐乱した雰囲気を纏い始めた。何かの病気なのだろうか。
普段ラノベの中でもページの空白が多い物ばっかり見てるような奴が批判するの見てると滑稽
比企谷君とは沈黙でいる方が好きだ。口を開けばろくなことしか言い出さないが、私の疑問には余計なものを加えないで、答えを返してくれる所が好印象であった。何より彼は私に告白してこない。これは対私のコミュニケーションにおいて絶対かつ必須の条件である。
だが、朝の教室で、周りには誰もいない今の環境は、少しばかり緊張の糸が張り詰めた。私は舌の根が乾いて喋れなくなる前に、唾液を飲みこむ。
「と、ところで、あなた今日は随分と早い出勤よね。何か善からぬことでも企んでいるのかしら?」
「わかるか?最近何もやらなかったからな」
「三年生に追いかけ回されて酷い目にあったから自粛していただけでしょ」
「あいつら家にまで電話かけてきてんだせ。母ちゃんにしばらく受話器取るなって説得すんのすげえ大変だった。もう、根掘り葉掘り聞いてくんの。エロ本見つかった時以来だよ」
「当たり前でしょ」
戸塚さんによれば、比企谷君は仲間の大男組んで総武高校の生徒に手広く嫌がらせを行っているらしい。動機などは一切不明であり、比企谷君が平塚女史に目をつけられた理由はここにある。
やばいツボった
ラノベ600円ででたら買うぞコレ
ラノベまだ俺ガイルしか読んだことないんだけど俺ガイルって地の文多い方なんかね?
>>79
800円でも買うだろ?
地の文はわからねえ。少なくはないと思うが
そうなんか、、まああれで多い方だったんならラノベしか読めん奴にはキツいだろうな
800...まあ買うなw
「今日は三年生にとって大事な模試の日じゃない。大人しくしていないと停学になるわよ」
私がどう諭しても比企谷君が従うとは思わなかった。だが一応でも、彼を押さえる真似をしておかねば私に飛び火する。比企谷君もその辺りの思惑は勘づいているようだった。不敵な笑みを浮かべて私に情報を流し始めた。
「どうやってもバレやしないさ。それにやるなら平等に、期末テストの時にでもやるね。当然、犯人が俺であると断定できないやり方でな」
「一体どうやるのかしら?」
「例えば放送室に忍び込んでテスト中はモスキート音を流しっぱなしにするとか、休憩時間にトイレに入れないよう内鍵かけるとか」
「最低ね」
「まだあるぜ。テストの問題を秘密裏に仕入れたってデマと出鱈目な問題をチェーンメールで拡散するんだ」
数々の悪事を暴露する比企谷君の目は純粋な子どものようでいて、その腐った瞳は奥底で渦巻いていた。端的に言えば気味が悪い。
「まあ、実行に移すのは止めておきなさい」
「あ?なんで」
私は比企谷君の背後を指差した。比企谷君は壊れかけた人形のようにゆっくり首を回していく。平塚女史が青筋を立て、まるで虫を見る目付きで仁王立ちしていた。
>>79
俺ガイルのはもっと砕けた文だ
この硬さを読みたいなら森見さんの本でいいんじゃないか
>>83
いや、俺ガイルは俺ガイルで好きなんだ。特にあのマニアックなパロディとか大好き
多分一人称の小説全般好きなんだろうな
森見さんのも買うことに決めた
>>84
じゃあ敬愛するフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」とか「流れよわが涙、と警官は言った」おすすめ、途中で一人称の人物変わるけど
「ひ、平塚先生、おはようございまふ。今日もお綺麗ですね」
「おべっかを使う必要はないぞ。私と君の仲だ、今の言葉が君の本心でないことくらい、簡単に見抜ける」
平塚女史は固く組まれた両腕を外し、左手全体を使って比企谷君の顔面を固定した。比企谷君は「ふぎゅ」と小さな悲鳴を上げた後、鼠取りに引っ掛かった鼠のようにキーキーと泣き始める。どうやら私に助けを求めているようで、彼の手が私に差し出された。私は大統領と外交官を思わせる熱いハンドシェイクを交わした後、平塚女史に件のレポートを渡してお辞儀をした。
「では失礼します。比企谷君、今日の放課後はまた部室に来て頂戴ね」
「比企谷、可愛い雪ノ下に誘われて青春を謳歌するのは結構だが・・・。さっきの話は聞き捨てならないんだよ、生活指導としてはね。放課後はまず私のところへ来たまえ、材木座も一緒にな。雪ノ下もそれでいいよな?」
有無を言わせない物言いはパワフルハラスメントですよと心の中で反論しながら私は頷いた。
棄唾←これどうやって変換してるんだろう
だ、唾棄と間違えただけだから・・・(震え声)
>>85
フィリップ•K•ディックか そういやアンドロイドは~の方は表紙に惹かれてちょいと読んだんだよな まだ殆ど読めてなかったし買うか
流れよ~の方は知らないな…アンドロイドは~を読み終えたらそっちも読んでみる
ありがとな
外野がうるさいスレだな
おもしれえ
続きはよお~
○
平塚女史の怒声とともに比企谷君の断末魔を廊下にいた生徒全員が耳にした頃、私は自分の机に向かって英語の予習をしていた。
特別進学コースである私達のクラスはホームルームの前に本格的な問題演習を毎回行う為、級友達は示し合わせたかのようにこぞって登校してくる。
彼らと事務的な挨拶を交わしては教材とのにらめっこに戻る。この繰り返しが私のささやかな日課であるのだが、今日はその頻度が少なかった。
さらに日頃から受けている崇拝の念ではなく、どこか腫れ物に触れるかのような扱いすら感じられる目線が体中に突き刺さり、私は過去に受けた傷を思い起こして身を強張らせた。
針の筵で過ごしてしばらくすると、日常では談笑すらしない他のクラスの女生徒が教室に入り、そのまま私に近づいてきた。彼女には見覚えはある。何度か比企谷君のクラスに行った時にすれ違った子だ。入り口には彼女の友人らしき群れが、密談を交わしながらこちらを窺っているのが見えた。私は隠しようもない苛立ちを極小サイズにまで押さえて、彼女に相対した。
「なにかようかしら?」
「あの、雪ノ下さん、ヒッキーと付き合ってるんだよね?」
私の声音に怯えた女生徒はおどろおどろしく私に質問をしてきた。だが私はあまりに突飛な話題に硬直した。まずヒッキーと呼ばれる人物が誰なのか見当もつかない。きっとろくな人柄ではないことしか推察できなかった。
森見さんこんなとこで暇つぶししてないで仕事しろよ
>>93
全くだな はよ出版してくれ
おどろおどろしくって、たぶん由比ヶ浜のことだろうがおどおどしての間違いじゃないのかな
おどろおどろしくって平たく言うとホラーチックってことだよな
あ、でもホラーチックに振舞う由比ヶ浜も有るかも知れんね
私の知り合いにひきこもりはいない旨を伝えると、彼女はわたわたと手を振った。
「いや、あの、ちがくて、ヒッキーっていうのはあだ名で、ていっても私しか使ってないんだけど。それで、ほんとは比企谷って名前なんだけど、雪ノ下さんと仲良いよね?」
唐突に比企谷君の名が出てきたことに私は目を剥いた。英和辞書を閉じて彼女と向き合う。彼女は怯えたように体を震わせた後、不自然な笑顔でお茶を濁しにかかってきた。私はなんとも煮え切らない彼女の態度にある仮説を立てる。見るからに気弱な少女、遠目からこちらを見張る取り巻き、やがて私は嘆息した。脳裏に浮かんだのは「ああ、あれか」という諦観の念である。幼少の頃に全く同じことをされた記憶があった。これはいわゆる宣戦布告だ。
「誰に頼まれたの?」
「ふぇ?」
間の抜けた返事が私の琴線を掠めた。
「あなたに私と彼について探るよう命令した人は誰と聞いたの」
「ゆ、雪ノ下さん、もしかして怒ってる」
「怒ってないわ」
「そ、そっか」
彼女はまた、歪に笑った。彼女の仲間が蠢く。
「比企谷君に仕返しするのは構わないけれど、私を狙うのは良い作戦とは呼べないわね」
「あの、何の話・・・?」
今の言葉が彼女の本心でないことは予測できる。彼女は他人を迎合することに長けた性分であるらしい。ある意味器用ではあるが、奴隷精神が染み着いているともいえる。
女子生徒は困惑していて、何か喋ろうとする度に口ごもり、沈黙する。この繰り返しが何度か行われた。私達の間にある停滞した空気がクラス内で目立ち始めたことを皮切りに、痺れを切らした私は彼女を尋問することに決めた。
「あなた、名前は?」
「ゆ、由比ヶ浜、結衣です」
「そう・・・では由比ヶ浜さん」
「はいッ」
由比ヶ浜さんは背筋を伸ばして居直った。その時彼女の豊満な胸部が揺れ動き、クラスにいた男子生徒の視線が集中したのを私は見逃さなかった。忌々しい。
「まず私と比企谷君が付き合っていると勘違いした理由を教えてもらえないかしら」
「か、勘違い?じゃあ付き合ってないの?」
「質問に質問で返さないで」
「ひっ」
比企谷君を詰る時と同じ調子で睨むと、由比ヶ浜さんは萎縮して肩をすくめた。他所から見れば、私が彼女を虐めているような構図で、私にとって不本意である。が、話が続かないので致し方ない。
「それで?」
「あの、よくうちのクラスに来て彩ちゃんと一緒にヒッキーと絡んでるじゃん?ヒッキー、雪ノ下さんといるとよく笑うし、付き合ってるのかあ・・・なんて」
由比ヶ浜さんの声は尻すぼみに小さくなっていく。私は首を傾げた。由比ヶ浜さんの供述には疑問符を禁じえない。条件を整理すれば彩ちゃんとはおそらく戸塚さんのことであろうことは理解できた。だが教室で談笑しただけで交際しているかとは飛躍が過ぎるのではなかろうか。
面白い
「由比ヶ浜さんは付き合っている男性としか話をしないのかしら?」
「そんなことないけど」
「私もそうよ。話くらい誰とでもするわ。私の身近に比企谷くんがいることは否定しないけれど、男女交際はあり得ないわね。そもそも人でないかもしれないもの」
ばっさりと切り捨てると、由比ヶ浜さんの愛想でメイクされた顔が綻んだ。その微笑は、私に悪意とは対極にあるものを彷彿させた。私は彼女の厚化粧の下に興味が湧いた。
「それに比企谷君も、彼は私といなくても笑っているわ。むしろ一人の時ほど生き生きとする、とても気持ち悪い生態をしているの」
「あ、それ分かる。ヒッキーってクラスだと、彩ちゃんがいない時は大体寝てるフリしてるんだ。でもたまに本読みながらニヤニヤしてるの。超キモいよね」
どうやら比企谷君は私が熱心に止めるよう叱り続けたにも関わらず、そのまま悪癖を晒していたらしい。次からは公害で訴えたら負けると言い聞かせよう。
その後由比ヶ浜さんとは異様な話題で盛り上がった。彼女の友人らしき人だかりも、いつの間にやら消えていた。なんだったのだろうか
「趣味が幼稚」
「胸ばっか見てる」
「自分に甘過ぎる」
「考え方がクズだよね」
「少し妹さんに依存しすぎな気がするわ」
「彩ちゃんのことも好きすぎだよね」
私の口から出る比企谷君の人となりは、赤の他人が聞けばすぐさま受話器に手を伸ばすほどのものであった。だが由比ヶ浜さんはそんなくだらない話を手叩しながら喜んでくれる。お返しとばかりに彼女は私の知らない比企谷君の一面を教えてくれた。
やがて私は彼女の同意を得ることに快感を覚えた。論を立てれば敵を呼び、策を講じても抜け穴から攻めてきた今までの相手とはまるで違う。由比ヶ浜結衣の持つ純真に、私は惹かれ始めたのだ。
○
「そろそろ戻るね。ゆきのん、テスト頑張って」
「ゆきのんってあなたね・・・」
「ん?」
由比ヶ浜さんは顔を近付けて喋る。彼女なりのスキンシップであるのだが、こればかりは人目につくので遠慮したかった。私は際限無くふれあいを求める由比ヶ浜さんを手で制した。
「そういえば、由比ヶ浜さんはどうして今日比企谷君の事を聞きに来たのかしら?」
「うあ、忘れてた。あのね、なんか朝教室に入ったら、ヒッキーが優美子と超仲良くなってたの。それで皆でゆきのんに聞いてみようって・・・て皆いないしッ。私置いてかれちゃった?」
由比ヶ浜さんの声は驚愕で音量が大まで絞られていた。勉学に集中していた四方の級友から威圧されて小動物のように縮こまる。私は別の思惑が頭をいっぱいにしていた。
「優美子って、三浦さんよね?」
「うん、ゆきのん仲良かったよね」
「前はね」
その日私はテストで史上最低点を叩き出した。名前を書き忘れたからだ。
動揺しすぎww
あまりのショックに昼食は喉を通らなかった。午後の部活の為に着替えを用意していると、鞄の隙間から例の解答用紙が顔を覗かせる。
私は苦悶の種を拳大まで丸めてゴミ箱に投げ入れた。教室から飛び出して部室に向かうと、廊下で比企谷君と三浦さんが一緒にいるのを見た。私は意味もわからず、柱に隠れた。
「一体どういうことなの?」
○
三浦さんは私と同い年で、二年生になってからは比企谷君、戸塚さん、由比ヶ浜さんと同じクラスに所属していた。退部する前は歯に着せぬ物言いで、私以外のテニス部連中からは敬遠されていたようである。しかし彼女は己の居場所を無理矢理作る天性のカリスマを生まれ持っていた。舌鋒の鋭さこそ私に劣るものの、反旗を許さない性格が噛み合って、おいそれと彼女を無下に出来ない環境を作り出したのだ。当時の私は強くあろうとする彼女に好感を抱いていた。が、彼女は私を目の上のたんこぶとして
疎んでいたらしい。
私達が一年生の初夏。三年生が引退されてからのテニス部の実態は見るに耐えない惨状であった。コートは無人、部室に入り浸り、部費で購入した菓子をつまみ、どこからか引っ張ってきた配線は携帯電話の充電器で蛸足にされていた。当時の私は比企谷君の安い挑発を買い占めたことが災いして、テニス部の現状を打破させることになっていた。協力者は戸塚さんと三浦さんである。
「つーか、なんであーしがこんなダルいことしなきゃなんないわけ。みんな今の方が楽しいからそうしてるんでしょ?ならこのままでいいじゃん。あーし隼人待ってる間暇だから入部しただけだし、思い入れとかなーい」
「でも、このままじゃテニス部が問題になっちゃうよ。最悪廃部かも」
戸塚さんは青ざめた顔を見せる。三浦さんは我関せずといった具合で戸塚さんの頭に頬杖をついた。
「なるのは女テニだけで、あんたは関係ないでしょ」
「そうだけどさあ」
「二人とも、少し黙って」
私はテニス部改善の初手として、校門の影で姦ましく待機していた。狙いは部室の鍵である。
僕は熊本県熊本市に住んでいます。
だから、千葉県についてはよく知りませんが千葉県を題材にしたライトノベルは内容が少しあれだと思うのでこういったものの二次創作は書かないでいただきたい。
そして今ある二次創作も全てなくしていただきたい。
ということで俺ガイル、俺妹等のSSを今すぐ終了してください。
ご協力、よろしくお願いします。
ところどころ日本語おかしくて読み止まっちゃうけど、この手の芸風は難しいから仕方無いよなぁ
続きはよ~
今更だけど>>44のネタバレってどれの事?
全四章?
明石さんは三浦?
第n次玩具流行?
もしかして全部?
続きはよ
マダー?
まってる
改行なかったら本を読む読まない関係なく見にくいってのはあると思うな
紙の媒体じゃないんだから
改行なくてもいいよ面白いから
まだー?
漢字が難しくて読めないから全部平仮名にしろって言ってるようなもん
追いついた!
横書きでの地の文を読むのに慣れてないから少し読みにくいと感じたけど面白いから続き読んじゃうな
待ってるよー
まだー?
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