一方通行「あァン?フロニャルドだァ?」 (162)
禁書×DOG DAYSのクロスです。
一方通行さんがシンクの召喚に巻き込まれてフロニャルドに来てしまいます。
ご都合主義、キャラ崩壊はあるかも。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391498328
また面白そうなものを期待
どうせ一方通行が無双するんでしょ?
スレ立てたはいいんですが、投下は17時半です。申し訳ない。
更新は早いので(大学授業もうほぼ無いため)
遅くても一日一回は更新します。
>>1です
投下します!
フロニャルド ココアナ平野
レオン「ゴドウィン、進軍は順調か?」
ゴドウィン「はっ。閣下。生憎の雨ですが明日の昼には問題なく
全体が目標の砦に到着するかと」
ゴド(以下略)「明日の砦攻めに備え、休息を十分に取らせております」
レオン「明日もまた、ビスコッティのミル姫に敗戦の屈辱を与えてやるとするか」フハハハハ
甲高い女王の笑い声が響いていた。
ビスコッティ共和国 フィリアンノ城
ロラン「やはりガレットは砦を攻めてくるのですね」
エクレ「ガレットの連中、本気でこの城まで進行してくる気でしょうか」
老人A「ガレット獅子団のレオンミシェリ閣下は有望な方ではあったがかような無茶をされる方じゃったかのう」
老人B「理由はどうあれ負け戦じゃ」
老人C「せめてダルキアン興がいてくれたらのう」
ロラン「ダルキアン興やユキカゼにもそれぞれ使命がありますれば」
老人C「しかしこのままではこの城まで攻め入られる」
ロラン「それは…」
エクレ「させません!!」
エクレ「民と姫さまのためにもこの戦は我々が!」
リコ「エクレ!今はその姫様の御前でありますよ?」
エクレ「…失礼しました」
ミルヒ「ありがとうみんな…我がビスコッティの劣勢状況、よくわかりました」
ミルヒ「最後の切り札を使います!」
ミルヒ「我が国に勇者を召喚しましょう」
日本 とある学校
シンク「」ダダダダダーーー
先生「イズミ、どうした早退か?」
シンク「すみません!飛行機の時間がありまして!」ダダッダーーー
先生「そうか、気をつけてな!」
シンク「はいっ!」
――――――――――
―――――――
――――
シンク「日本はいい国だと思う。平和だし便利だし」
シンク「でも、思いっきり体を動かして遊べる場所が少ない…少しだけ窮屈で退屈」
シンク「どこか近場にあればいいのに…おもいっきり暴れられる場所」
日本 学園都市
アレイ☆「そうほいほい学園都市から出られると困るのだが…」ブクブク
一方「うるせェ…俺は行くっつったら行くンだよ」
アレイ☆「仕方がない。では、期限は一日だ」
一方「あァ?無理に決まってンだろォが」
アレイ☆「問題ない。テレポーターを準備している」
一方「距離的に無理があンだろォ」
アレイ☆「ふふ。紹介しよう。第六位のテレポーターだ」
??「ボクの出番なん?☆君人使い荒いわ~」スタスタ
一方「こいつが第六位だァ?頭のネジ緩ンでンじゃねェか?」
??「アルビノ系美少女に言葉責めされるやなんて~もっと言ってえ」クネクネ
一方「」
アレイ☆「では一方通行をとある街まで送ってくれ」
??「心配いらへんよ?僕は地球の裏側にでもテレポートできるんやから」
一方「大した能力だなァ」
アレイ☆「では、頼む」
??「じゃあ行くで?」
一方「あァ」ビュン
アレイ☆「まったく彼のコーヒー好きには呆れる。
限定の豆が入荷されたからといってわざわざ遠くの店まで仕入れに行くなんてね」
――――――――――――
――――――――
――――
日本 とある街
シンク「空港はこの近くかな…」スタスタ
一方「いいねいいねェ最ッッッ高だねェェェェ!!」
アリガトウゴザイマシター
一方「これで新しい配分を考えてェ…くかきけこかかきくけききこくけきこきかかかーーー」
シンク「怖っ!?あの笑い方怖っ!!」
一方(ン…なンだこの犬ゥ)
タツマキ「…ワン」
犬が加えていた小刀を地面に突き立てた瞬間、魔法陣のようなものが発動する――
シンク「えぇええええええぇ!?」
一方「あァァン!?なンだこりゃあああ!」
――――――――――――
――――――――
――――
――
??「あのさぁ、☆くん?」
アレイ☆「なんだ?もう終わったのか?」
??「一方通行が消えてしまってん」
アレイ☆「ど、どういうことだっ!」
??「なんかごっつい魔法陣みたいなのに吸い込まれて消えてしまったんや~」
アレイ☆(魔術師かっ!?)
アレイ☆「プランがぁぁぁぁぁーーーー!」ドンドンドン
??「ちょぉ☆君!そんな頭ぶつけたらビーカー割れてまうで!」
ドンドン ピキピキ
その日、学園都市統括理事長は誰に惜しまれることなく絶命したという。
――――――――――――
――――――――
――――
――
フロニャルド 召喚の祭壇みたいな場所
ミルヒ「…!!」
ミルヒ「召喚に成功したのですねっ!!」
少女が空を見上げると、光の玉が空から舞い降りてくる場面だった。
憧れの勇者と出会うまで5秒。
シンク「わぁぁぁあああああ!!」
タツマキ「ワゥ!」
一方「…あァァァァ」ビューーーーーン(一方通行落下の音)
シンク「あぁ…痛っててててて」
ミルヒ「わぁ…!!」
姫の前には、あこがれの勇者
シンク(女の子…!てゆうか耳?尻尾?)
勇者の前には、美しいお姫様。
一方「あァァァァァ!」
少年の前には、落下中の景色。
ミルヒ「はじめまして。召喚に応えてくださった勇者様ですね?」
ミルヒ「わたし、勇者様を召喚させていただきました、ここビスコッティ共和国の領主を努めさせていただいてます
ミルヒオーレ・F(フィリアンノ)・ビスコッティと申します」
シンク「えと、シンクイズミと申します」
ミルヒ「勇者シンク様ですよね!存じ上げております」
シンク「あの、ええと…」
ミルヒ「わたくしたちの話を聞いた上で、お力を貸していただくことは可能でしょうか?」
シンク「と、とりあえず話を聞かせてくれたら嬉しいです」
ミルヒ「…はい」
ミルヒ「いけないっ!もうはじまっちゃってる!」
シンク「??」
ミルヒ「詳しい話は移動しながらでもよろしいでしょうか?」
シンク「あ、はい!」スタスタ
その日その時その瞬間
小国を収めるお姫様とビスコッティを守る勇者は、それはそれは幻想的な出会いを果たしたという。
一方、お呼びでない悪党面は誰に見られることなく茂みの中で買ったばかりの豆をまき散らしたらしい。
第六位って肉体再生だかメタモルフォーゼだかじゃなかったっけ?
能力だけ明かされてた気がする
虐殺の男をどうして呼び出したんだ姫様…
肉体変化だとか青ピだとかは全部ネタだから
ただの予測とか妄想とかだぞ
シンク「鳥…?」
ミルヒ「セルクルをご覧になるのは初めてですか?」
少女は少年の倍以上はあるかという鳥にまたがりながら、不思議そうに問う。
シンク「すみません、地元にはいなかったもので」
ミルヒ「わたしのセルクル、ハーランです。整理券をお取りください、発車しまーす」
シンク「え、ええ」
ミルヒ「隣国ガレットと我が国ビスコッティはたびたび戦を行っているのですが
ミルヒ「ここのところはずっと敗戦が続いていて」
ミルヒ「今日の戦では、わたしたちの城を落とす勢いです…」
ミルヒ「ガレット獅子団の領主、レオンミシェリ閣下と渡り合える騎士がいま我が国にはいなくって…」
ミルヒ「ですから勇者様!力を貸してください!」
シンク「ですからお姫様!僕は戦士とか勇者じゃなくて…」
シンク「その辺の中学生なんですけど…」
期待の眼差しを向けるお姫様に、少年はバツの悪そうな表情で告げる。
期待に答えたくはあっても、やはり少年はそのへんの中学生でしかない。
近くの森では、こぼれた豆をかき集めている魔神級の少年もいるのだが、それは別の話だ。
ミルヒ「そんなご謙遜を!勇者様のお力は存じ上げております!」
シンク(勘違いですよ…――)
実況
??「さぁ!本日も絶好調で暑い戦が進行しております!」
??「実況は、これよりわたくしフランボワーズ・シャルレーが」
フラン「そして、解説にはバナード将軍と」
バナード「どうも」
フラン「レオンミシェリ姫の御側役、ビオレさんに来て頂いております!」
ビオレ「こんにちは」フリフリ
フラン「さぁ!いよいよガレット獅子団の進軍がはじまっております!」
フラン「歴戦の獅子団もさすがに苦戦していますねー」
バナード「ビスコッティ側も、ここを抜けられるとあとがありませんからね」
フラン「ガレット獅子団のレオンミシェリ閣下はまだ出陣されていませんが、ビスコッティ側に腕の立つ者が現れ次第
すぐにかけつけるとのことです」
バナード「それは頼もしいですね」
城 物見櫓
リコ「わぁぁぁぁ!これはちょっとやばいでありますよ?」
実況
フラン「攻め寄せるガレットの騎士たちを、ビスコッティの若き親衛隊長、エクレールがなぎ倒していきます!」
第六位は原作でニセモノが出てきただけだ
エクレside
少女エクレールは、本陣に攻め入らんとする敵の雑兵をバッサバッサとなぎ倒していた。
エクレ(ここはわたしが死守する!)
見渡すと、大勢の雑兵がいっきに突っ込んで来ていた。
一人ひとりを相手にしていたのではきりがない――そう判断した少女は、両手に持った双剣を前後に構える。
その瞬間、青い光のオーラが少女を包み、背後に紋章が現れる。
フロニャルドの大気に眠るフロニャ力を変換した力――輝力を用いた紋章術である。
エクレールは紋章術を斬撃として放つ紋章剣を得意としていた。
エクレ「おりゃあああああああああああああっっ!」ブン
少女が青いオーラを纏った双剣を一気に振る。
途端、青いオーラは大きな斬撃へと変わり、走り寄る雑兵を一気に蹴散らした。
しかし、大気中のフロニャ力のおかげで、人々が傷つくことはない。
ダメージを負った人々は、けものだまと呼ばれる一時的に力を失った状態に陥る。
フロニャルドにおける戦とは、いわばスポーツのようなものなのだ。
エクレ「フン…拙いな」
実況フラン『おおっと!これはっ!』
エクレ「しまった!」
大勢の雑兵をなぎ倒した瞬間、岩場の影から第二陣が姿を見せる。
予想外の展開に、少女は唇を噛む。
紋章術は発動前後の隙と披露が大きく、多用できる技ではない。
敵はエクレールが紋章術を使うと見て、発動後の機会を伺っていたのだ。
エクレ「兄上っ!!」
少女が叫びながら振り返りると、兄と呼ばれた青年、ロラン騎士団長が槍を構えた。
すると、大地から湧き出た緑のオーラが青年を包む。
ロラン「うおぉぉぉぉぉおおおおっ!」
青年の力強い一振りから紋章の斬撃が繰り出される。
さすがに敵も予想外だったらしく、ここで攻め入る雑兵は掃討された。
実況
フラン『いや~今のは惜しかったですね』
バナード『惜しかった方々にはボーナスが出ますよ』
フラン『だ、そうです!前線の皆さん!ボーナスだそうですよ!』
ビオレ『よかったですね~』
戦場を一望にできる高台に、勇者とお姫様。
シンク「これが…戦?」
ミルヒ「はい!戦場をご覧になるのははじめてですか?」
シンク「ええと、この戦で人が死んだり怪我したりは?」
ミルヒ「とんでもないっ!戦は大陸全土に敷かれたルールに則って正々堂々行うものですから」
ミルヒ「怪我や事故がないように務めるのは戦開催者の義務です」
ミルヒ「もちろん、国と国との抗争の一手段ですから、熱くなってしまうことも時にはありますが」
ミルヒ「でもフロニャルドの戦は国民が健康的に安全にスポーツを楽しむ行事でもあるんです」
突然少女が童貞の手を取る。あざとい。
ミルヒ「敗戦が続いて、我々ビスコッティの民は寂しい思いをしています」
ミルヒ「なによりみんながとてもしょんぼりします」
シンク「姫様!僕は姫様の召喚に応え、みんなをしょんぼりさせないように戦います!」
ミルヒ「はい///是非」パァァァァ
少年が異世界のお姫様にいいところを見せている時。
一方「なンだなンだよなンえすかァァ!!」
一方「一体どォなってる!」
悪人は一瞬の混沌とした出来事を振り返って混乱していた。
一方「ここはどこだ」
一方「新しい豆を調達して店から出てみれば、いきなり犬に――」
一方「あの犬ゥゥ!」
一方「愉快なオブジェにしてるぜこらァァ!!」ドドドーーー
悪人を異世界に連れ込んだ犬を探しまわっていた。
城 物見櫓
リコ「あっ!姫様だ!勇者様を連れて帰ってきたであります!」
老人達「おおおおおお!!」
実況フラン『いま!大変なニュースが入りました!勇者召喚です!ビスコッティが勇者召喚を使いました!!』
フラン『さぁ!ビスコッティの勇者はどんな勇者だ?』
レオン「勇者だと!?」
リコ「わあああぁぁ!」パアァァ
ロラン「なに!?勇者殿が!?」
エクレ「ほんとにっ!?」
城 物見櫓
ミルヒ「リコ、ただいまです」
リコ「おかえりであります!勇者様は来てくれたんでありますね!!」
ミルヒ「はい!タツマキ、大儀でした!」
タツマキ「ワゥ!(…あれ?もう一人白い余計なもんがくっついてきやがったんだけど…)」
ミルヒ「わたしたちの素敵な勇者様です」
少女は戦場に向き直る。
その手にはメガホンが握られていた。
キーーーン
ミルヒ『ビスコッティの皆さん…ガレット獅子団領の皆さん』
ミルヒ『今日まで我がビスコッティは敗戦に悔しんで来ましたが、そんな残念展開は今をもっておしまいです』
ミルヒ『ビスコッティに勇気と勝利をもたらす素敵な勇者様が来てくださいましたから』
ミルヒオーレ姫が思わせぶりに視線を移すと、騎士たちも合わせてその視線の先を追う。
そこには戦場に背を向ける勇者のたくましい後ろ姿。
青いハチマキに白いマント。金色の髪はさながら太陽の光のようであった。
右手には斉天大聖が持っていたような如意棒。
背中を丸め、尻を突き出した非常に間抜けな体勢である。
リコ「あ…あれが…?」
エクレ「素敵な勇者…?」
ミルヒ『華麗に素敵に戦場にご登場いただきましょう!』
シンクの周囲から激しく打ち上げ花火が上がる。
勇者の登場場面として相応しい演出である。
シンク(ベッキーのお弁当食べてから…お腹の調子が)ゴロゴロゴロ
シンクの幼馴染レベッカの作るお弁当は消化器官の天敵のようだ。
しかし、そこは勇者。
みなの希望の眼差しをその背中に受け止めているのだ、気丈に格好良く振る舞わなければならない。
でなければ、それこそ姫の信頼が失われるというもの。
少年の燃える瞳が決意を物語っていた。
右手に持った如意棒を空高く放る。
如意棒を追うようにして、自身も空高く飛ぶ。
一般人には到底真似できないこのアクロバティックな一連の動きは、
アスレチックを趣味とするこの少年にはお手のものである。
空中で三回転をきめ、着地。
伸ばした右手に吸い込まれるように如意棒が収まる。
惚れ惚れするシンクの身のこなしに、皆の視線は釘付けになっていた。
ここで一声上げれば拍手喝采である。
しかし、ビスコッティに勇気と勝利をもたらす勇者にそんな余裕はなかった。
シンク「身が…出る」
スクリーンいっぱいに映しだされたたくましい勇者の顔は、消え入りそうな声で一言だけ告げた。
期待してる
悪人は妙な放送に耳を傾けていた。
『さぁ!本日も絶好調で暑い戦が進行しております!』
戦…地球人である一方通行にとって、それは歴史の知識でしかない。
一方「俺は過去の世界に来ちまったのかァ?」
そうつぶやくも、その仮説は目の前の景色を見た瞬間に崩れ落ちる。
一方「過去の世界に浮いた島はねェよな」ウン
悪人面の少年の眼前に広がるのは、幻想的な風景
雲のかかった幾つもの浮遊した島々。
虹の架かった島まである。
そして大きな大陸からは花火が上がり、謎の放送が聞こえてくる。
なンだこりゃァァァァァァァァァァァ!と叫んでも、答えてくれる人はひとりとしていない。
一方「冗談だろォ…なんつーメルヘンな世界だ」
少年がこの世界に辿り着き、彷徨ってもう二時間あまりになる。
そろそろ戸惑うのは終わりにしなければならない。
一方「コーヒー飲みてェ…お湯お湯」
図太い神経も学園都市第一位。
実況 side
突然の予想外の出来事に、沸き起こっていた戦場はシンと静まり返っている。
出来事の発端となったビスコッティの勇者は、腹を抑えウンウン唸っている。
こめかみから冷や汗を流しているのは実況のフラン。
バナード「おい、おい」
解説のバナードが実況を促す。
ハッとして我に返ったフラン。
どんな状況においても実況が場を盛り上げなければならない。
フラン『ゆ、勇者降臨ーーーーーー!!』パフパフ
ありたっけの声を上げる。
バナード『いやーあれがビスコッティの勇者ですか』
ビオレ『さっきの身のこなし。期待できそうですね~』
フラン『彗星の如く現れた勇者シンク!!どんな活躍を見せてくれるのか~~ッ!!』
一拍遅れて会場が盛り上がる。
自分が場を凍りつかせた責任を感じ、勇者は顔からダラダラと汗をかいていた。
シンク(まずい…姫様の期待に…!!)
腹の痛みを我慢し、如意棒を支えにユラユラと立ち上がる。
事情を知っている者から見れば、その気丈な振る舞いは真の勇者といって過言でない。
そして、爽やかな面持ちで一声――
シンク「姫様からの召喚に預かり、勇者シンク、ただいま見参!!!」
Woooooooooo!!
ドッと戦場が湧き上がる。
人の温かみを感じた勇者であった。
一方お姫様は…
ミルヒ「あれが我が国の勇者様なのです!」パァァァ
さっきのアレはなかったことにしたらしい。
リコ「なんかイメージと違うであります…」ドンヨリ
エクレ「あれが…頼りになりそうもないな…」ドンヨリ
ロラン「なぁに!能ある鷹は爪を隠す。心配あるまい」ウンウン
実況フラン『ビスコッティの切り札勇者召喚!その勇者が今、我々の前に現れました』
バナード『わたしも実際に見るのは初めてです』
リコ「でも姫様、勇者様はこっちの戦の作法とか知らないんでありますよね?大丈夫なんでしょうか…」
ミルヒ「大丈夫です。ちゃんとお教えしましたし、今ロランが確認をしてくれています」
ロラン「うん。ルールもルートもしっかり覚えてくれているようだね」
シンク「はい。姫様が教えて下さいました」
ロラン「うん。勇者様は姫さまに召喚されて、会ったときどう思った?」
シンク「可愛くて優しそうな、素敵な姫様だなって思いました」イイカオ
騎士団長は満足したように勇者の肩に手を置く。
ロラン「すばらしい!」ニカッ
はるか前方から、けたたましい雄叫び。
目を凝らせば、また多くの騎士たちが砦をおとさんと詰め寄ってきていた。
ロラン「では勇者殿、前に進んで先陣のエクレールと合流を!」
シンク「はい!」
シンク「シンク・イズミ。行きます!」
決意を声にし、地面を蹴る。
向かってくる大軍を前に単騎で乗り込むその後姿は、さきほどまで糞放ろうとしていた男とは別人のようで、まさに勇敢そのものであった。
ロラン「さきほどは少し頼りないと思ってしまったが…やはり期待できそうだな」
如意棒を構え軽やかに駆ける勇者に、先行した三騎の騎士が襲い掛かる。
客観的に見れば不利なその場面にも、勇者シンクは笑みを絶やさない。
向かい合う勢力の距離が縮まったところで、シンクは空高く飛ぶ。
雑兵A「なにっ!?」
驚き見上げた時には、中央の雑兵の顔に如意棒がめり込んでいた。
そのまま棒を振り回し、あっという間に三騎を撃退した。
そのまま勢いを落とすことなく、流れるような動作で敵を圧倒していく。
まさに敵なしと思わせるほどの活躍ぶりである。
前方に、緑髪の少女の姿。
ガレットの騎士たちと戦っているところから見るに、ビスコッティ側(ミカタ)であると推測される少女。
シンク(あの子がロラン騎士団長の言ってたエクレール?)
シンク「おっす!勇者として呼んでもらいました、シンク・イズミです!」
エクレ「…エクレール。騎士団の親衛隊長だ」ムスッ
心なしか、想定していた反応と違う。
勇者ともてはやされるこの少年は、いままで大歓迎大歓迎といったもてなしばかりされていたのだ。
エクレールのようなあまり歓迎されていない対応は初めてのことであった。
シンク「エクレール!さっきのビームみたいな奴って何!?」
エクレ「ビーム?紋章術のことか?」
シンク「紋章砲の扱いはエクレールが上手だから、教えてもらえって姫さまが」
――――――――――――――
――――――――――
――――――
―――
この後、勇者はエクレールと共闘し、紋章砲を覚え、ビスコッティを勝利に導くのだが…
あくまでこの物語の主人公は極悪人であるため割愛するとしよう。
フラン『戦終了おおおおおおおおお!』
実況の掛け声とともに、戦の終了を知らせる花火が空に上る。
フラン『久しぶりのビスコッティ軍防衛勝利という形で終わりました』
フラン『さて、このあとビスコッティ軍のロラン隊長をお呼びして今回の戦について聞かせていただきたいと思いますが…』
バナード『ロラン殿、いかがかな?』
ロラン『はい』
フラン『できればこの戦で華々しいデビューを飾られた勇者殿についてお聞きしたいのですが…』
ロラン『あ…ああーゆ、勇者殿については今後おいおい明かしていくということで…』
フラン『なるほど。まだ謎だということですね!』
フラン『ではその分、隊長からじっくりお話を伺うとしましょう』
エクレ「ナイス判断です…兄上」
エクレールがため息をつきながら視線をずらす。
そこには精魂尽き果てたて四つん這いになって唸っている勇者の姿があった。
実はこの勇者、元の世界に帰ることができないと聞いたばかりなのである。
シンク「ボクは帰れない…」ドンヨリ
エクレ(この様子じゃ…表に出せません)
――――――――――
―――――――
――――
――
場面変わって、ここはとある路上。
道脇に置かれた箱の上に、勇者と親衛隊長が座っている。
さきほどから、大活躍だったな、便秘か?などと賛辞と罵倒の両方を浴びせられている勇者の表情は暗い。
しかし勇者の落胆ぶりの原因はそれられでなく、勇者が元いた世界に帰れないという現実のほうである。
シンク「そうだよな~異世界だもんな~」
勇者は携帯電話の待受の圏外表示を見てつぶやく。
エクレ「まったく!覚悟もないのに召喚に応じたりするからだ。下痢勇者」
シンク「覚悟!?覚悟も何もこのわんこが!!っていうかその呼び方やめて」
エクレ「知るか!わたしに言うな下痢野郎!」
シンク「あの、やめて欲しいのは下痢の方であって…」
エクレ「ふん…まぁ貴様を戻る方法は学院組が調査中だ」
学院
リコ「疲れたでありまーす」グテーン
モブ「主席!勇者様の帰る方法を探さなくて良いのですか?」
リコ「そう固いこと言わないで、休んだらどうでありますか?お菓子もありますし」
モブ「ではお言葉に甘てて…」
シンク「だといいけど…」
エクレ「とまあとりあえず、阿呆といえど貴様は賓客扱いだ。ここでの暮らしに不自由はさせるまい」
そう言って、少女は懐から巾着袋を取り出す。
勇者にとって不幸なのは、すぐそばに白い極悪人がいたということだろう。
エクレ「ひとまずはこれを受け取っておけ」チャリ
シンク「これお金?さすがにお金は…」ヒラヒラ
遠慮深い日本人である勇者は、両手を振って受け取ろうとはしない。
エクレ「戦場での活躍の報酬金だ。受け取りを拒否などすれば財務の担当が青ざめる」
シンク「で、でも…」
一方「じゃあその金俺が代わりに貰ってやるよォ」
道を歩いてきた少年が会話を耳に挟んだらしく、歩み寄ってきた。
瞬間、勇者の傍らに控えていた犬がすごい勢いで走り去る。
タツマキ(アイツやべぇよ…)
エクレ「はぁ?」
少女はムッとして声のした方を見上げる。
そこには耳も尻尾もない、勇者と同じ地球人の姿があった。
エクレ(こいつ…!)
シンク「き、君は!」
勇者はこの少年を覚えている。
勇者の地球人生において、最期に見た人間だったからである。
シンク「君もフロニャルドに!?」
勇者が問いかけるが、少年は答えない。
代わりに巾着袋をひったくられた。
一方「おいおい、そンな棒きれでなにかする気なのかァ?」
一方「そンなンでどうこうできると思ってンなら抱きしめたくなるほど哀れだなァ」
エクレ「ふん!貴様!これはビスコッティが有する宝剣、神剣パラディオンだぞ?」
エクレ「何も知らんと見えるな…」
少女がしたり顔で微笑む。
よせばいいのに対抗意識を燃やしたひったくりは、勇者の持つ“棒きれ”に指で触れる。
すると、神剣パラディオンにヒビが入り、一気に真っ二つに折れて消滅してしまった。
一方「やっぱただの棒きれじゃねェか」
つまらなそうにつぶやくと、ひったくりは巾着袋を持って去ってしまった。
エクレ「う…うそっ…」
シンク「なんだ今の力…!?」
あまりの事態に腰を抜かした二人は、しばらくその場を動けなかったという。
おお、確か支部にもあるっけコレ?
>>50 支部?
ピクシブのことだろ
あるかしらねえけど
>>52 なるほどです。
投下ー
ビスコッティ 城下 商店街
戦の終了、ビスコッティの勝利で賑わう商店街を、一人の悪魔が歩いていた。
悪魔の右手には『親切なお兄さンから貰った』巾着袋が握られている。
この悪魔――一方通行は、学園都市において最強を誇った人間である。
それゆえ、学園都市における彼の日常は、最強を倒したいと野心を抱く馬鹿なスキルアウト、能力者と隣合わせ。
家に帰れば、一方通行への挑戦のつもりか馬鹿なスキルアウト共によって部屋は荒らされていた。
だからこそ、この悪魔は今微笑んでいる。
ここまで来る途中に捕まえた半人半犬のような生物から、ここは異世界だということを聞かされたからだ。
もう、あのいまいましい実験都市に戻ることなく、静かに暮らすことができる。
ここにいれば追手も来ない。
一方「くかきけこかかきくけききこくけきこきかかかーーー」
モブA「ひぃぃぃ!!」
モブ(怖っ!!なにあれ)
あくまで少年は笑っている。
ふと辺りを見渡すと、小洒落た喫茶店が目に入った。
『喫茶ビスコッティ』
一方「…」ニタァ
悪魔は瞬時に入店を決めた。
商店街 『喫茶フロニャルド』
マスター「はぁ…今日も客が来ない…この店も潮時か…」グテー
このマスターが一人で経営する喫茶フロニャルドは、売れない喫茶店である。
とはいっても、はじめは売れ行きのいい店だった。
一年前、『喫茶ビスコッティ』ができるまでは。
一年前のその日、隣に喫茶店が出来た時から嫌な予感がしていた。
不安を拭おうと、マスターは一人でその店に入ってみることにした。
一口紅茶を飲んだだけで、負けを悟った。
お茶と団子しか出せないマスターの店とは違い、ビスコッティは紅茶やケーキのたぐいを提供しており
あっという間に若い女性を中心とする客層に大人気となった。
月刊フロニャルドにも特集され、となりには追い風が吹き続けた。
この喫茶フロニャルドは、マスターにとって遥か昔に失った妻との思い出の店でもある。
もう一度、明日こそ…そう思っていたのに。
マスター「ちくしょう…」ポタポタ
ガチャ カランカラン
マスター「え、お、お客さん?」ゴシゴシ
視界がにじみ、姿が見えないので慌てて目をこする。拭った目で見ると、一風変わった客だった。
マスター(耳と尻尾がない…)
マスター「もしかして、お客さんが噂の勇者さまなのかい?」
??「俺が勇者?なンの冗談だ」
どうやらちがったらしい…
しかし、あくまで客と店主、踏み込んだ事情をいきなり聞いてはいけない。
??「ここ、客が全然来ねェンだろ?」
マスター「…」
??「隣のビスケットで聞いた」
マスター(ビスコッティのことかな…?)
マスター「まぁね…隣ができてからピッタリで」
愚痴っぽかったかな?と、少し後悔する。
マスター「何飲む?といっても緑茶しか出せないんだけどね…」
そう言って力なく笑う。
客足が止まってからというもの、仕入れすら満足にできない経営状況なのだ。
手慣れた手つきで緑茶を入れ、目の前の少年に出す。
マスター「隣に比べたら…ね。お代はいいよ、今日で閉めるつもりだから」遠い目
少年から顔を背けたのは、やはり店を閉めることに納得していないからなのだろう。
そして、そんな自分が情けなかったから―――。
少年は何も答えず、だまってお茶をすする。
飲み方はお世辞にも品があるとはいえないが、マスターは久しぶりの客に自分の入れたお茶を飲んでもらえることが嬉しかった。
この子が最後の客――悪くない。
??「悪くねェ…うまい」
少年は飲み終えた湯のみをゆっくり置き、顔を伏せたまま告げる。
マスター「!!」
情けない…まだ美味しいと言ってくれる客がいるのに…なのに…
マスターの頬を涙が伝う。
マスター「ごめんね…もう店…閉めなきゃいけないから」
??「こんなにうめェ茶を出せるのに…なンで閉めなきゃなンねェンだ?」
??「客は来ねェはずなのに、店ン中は随分綺麗にしてあった」
??「…まだ諦めきれてねェンだろ?」
自分より数回りも年下の少年が、自分の本心を浮き彫りにした。
次から次へと涙がこぼれ落ちてくる。
少年が顔を伏せてくれているのがありがたかった。
??「俺は先に隣に行ってきたけどよォ…こっちの方が断然うまかったぜェ」
自惚れかも知れないが、この少年はお世辞を言っていない…そう思った。
??「うまい茶を出してェって思いが詰まってンだろォなァ…」
??「決めたぜ」
少年が顔を上げる。
同時にマスターも涙を拭く。
??「この店は俺が貰う」
マスター「」
突如、少年の口から予想だにしない一言が発せられた。
どこまで行こうと彼は悪党である。
――――――――
―――――
――
ここはとある路上
エクレ「お前、さっきのやつを知った風だったな」
シンク「うん…実は…」
勇者は話す。
自分の召喚の経緯と、あの少年について。
エクレ「つまり…あの男は貴様の勇者召喚に巻き込まれた…」
シンク「うん…多分そうなるんじゃないかな」
エクレ「これは…」
シンク「どうしたの?」
少女は難しそうに頭を抱える。
エクレ「あれは歴とした召喚の儀だ。つまり…あの男も…ビスコッティの勇者ということになる」
シンク「えええええ!?」
エクレ「それだけ召喚の儀は厳格なものなんだ…姫様にも報告しておかなければなるまい」
シンク「あいつが勇者!?極悪人の間違いだろ!?」
勇者の脳裏には、さきほどの騒動の場面がよぎる。
エクレ「わたしたちが騒ぎ立てたところで意味はない。姫様に報告するときに口添えくらいはするがな」
シンク「すぐに捕まえたほうがいいと思うけど…」
エクレ「ともあれまずはリコのところへ行ってみよう。お前の帰る方法がわかったかもしれんぞ」
シンク「うん!」
――――――――――
――――――
―――
ここは、喫茶フロニャルド
マスター「これなら…いけるかもしれないっ!」
先ほどの立ち位置とは逆。
少年はカウンターの内側に立ち、マスターは席に座って、少年の淹れたコーヒーを飲んでいる。
マスター「これ…なんと言ったかな?」ズズッ
??「コーヒーってンだ。マスターよォくわかってンじゃねェか」
自分の入れたコーヒーを褒められ、少年はだいぶごきげんである。
??「しっかしよォ…この世界にはコーヒーもねェのか…」
マスター「こんなに美味しい飲み物…わたしは初めて飲んだよ」
??「コーヒー飲まずにその歳まで生きてンのか…マスター」スゲェ
マスター「もしよかったら…わたしをここで雇ってくれないか!!」ガタッ
??「なに言ってやンだよ…」
少年は話しにならないといった表情をする。
それでも、マスターはたったひとつの希望を捨てるわけにはいかなかった。
マスター「なんでもする!そうだ、まずは皿洗いでいい!君の開く喫茶店で一緒に夢を見たいんだ!」
??「皿洗いだァ…ふざけンじゃねェぞ」
マスター「…」
マスターの拳が固く握られる。
??「オマエはここのマスターだろォ?」
マスター「!!」
??「一緒に世界一の店にしよォぜ」
マスター「マスター!!」パァァァ
??「マスター…いい響きじゃねェか…最ッッ高だねェェェ!」
??「まずはマスターを一人前のバリスタにしてやンよォ!」
マスター「おねがいしますっ!」
ビスコッティ共和国城下町。ここに今日新たな喫茶店が誕生した。
従業員二人が互いにマスターと呼び合う不思議な喫茶店は、あっという間に大繁盛――するのだろうか。
ビスコッティ国立研究学院
リコ「申ーーーッッし訳ないであります!このリコッタ・エルマール、勇者様がご帰還できる方法を懸命に探していたでありますが!!」
この学院の主席研究員、13歳の少女リコッタ・エルマールが頭を深々と下げる。
勇者を元の世界に探す方法を探していたらしいのだが、未だ成果なしのようだ。
研究員「…」ジトー
リコ「力及ばず…未だどうにもこうにも…」
エクレ「いや、落ち着けリコ」
エクレ「わたしも下痢もそんなにすぐ見つかるとは思ってない」
シンク「えええええ!?色んな意味でええええ!?」
リコ「ですがぁー…」
シンク「え、あ、うん、そ、そうだよ」
リコ「ほ、ほんとうでありますか?」
エクレ「期限についてなにか言っていたのか?いつまでだ?」
シンク「…あと16日かな」
リコ「16日!?それなら希望が湧いてきたでありますぅぅ!」
不安な表情ばかりしていたリコは、残りの期限を聞くと明るい表情を見せた。
シンク「ずっと頑張って疲れたでしょ?ちょっと休憩しない?」
エクレ「そうだな。姫様のコンサートまで随分時間がある。城下に喫茶店があったよな。前から気になってたんだ」
リコ「あ!それって月刊フロニャルドにも特集された喫茶ビスコッティのことでありますか?」
エクレ「そうそうそこだ。行ってみないか?」
リコ「了解であります!勇者様も!」
シンク「ああ、うん!」
喫茶フロニャルド
一方「…」ズズッ
マスターの入れたコーヒーを少年が味見する。
これで今日のは12杯目になる。
マスターがおそるおそる見守る中、少年は前回と同じ注意をする。
一方「全然ダメだ…たしかに隣のビスケットのどの飲み物よりうめェ」
マスター(それならいいんじゃ…)
一方「だがそれは豆の質がいいからにすぎねェ」
一方「俺達の目指す場所は世界一だ」
一方「これじゃ話になンねェ!」
そう言いつつも決してコーヒーを残さない。
マスターは少年のコーヒーを愛する気持ち、そしてコーヒーへの真摯な態度に震えていた。
一方「俺のと飲み比べてみろォ…」
少年は思わずこちらが見惚れてしまうような手さばきでコーヒーを完成させる。
マスター「…!!」ズズッ
マスターにも一口で違いがわかった。
一方「どォだ?違いがわかるかァ?」
マスター「ええ。マスターのはコクがあって、にもかかわらず後味があっさりしていました」
マスター「しかも味に深みがあって、一口で引きこまれてしまって…」
一方「まァでもマスターも大したもンだ。一日で飲めるレベルには達してるンだからなァ…」
一方「これも食ってみろォ」
少年は、ガラスケースの中からシフォンケーキを取り出す。
マスターにコーヒーの指南をしながら、片手間に彼が作った作品だ。
熱も引き、ちょうどいい温度まで下がっている。
せっかく入れてもらったコーヒーをすすり、ケーキを口に運ぶ。
マスター「!!」
一方「どォやら気づいたみてェだな…」
マスター「マスターのコーヒーの後味は…一緒に口にするデザートの甘みをより際だたせるため…!!」
マスター「コーヒーもデザートも一緒に楽しむ…まさに喫茶店のコーヒー」
一方(ほォ…なかなか筋がいい)
一方「どォだ…だが、マスターにもこの境地にたどり着いてもらう」
マスター「!!」
この少年についていくのは大変だ…苦笑を浮かべるマスターの表情は晴れやかだった。
一方「最初の経営費だ」ゴト
少年はおもむろに巾着袋を取り出す。
一方「この金で買い出しを行う」
マスター「随分な大金…戦で華々しい活躍をした時の報酬と同じくらい入ってるんじゃないですか?」
一方「拾った」
マスター「ええっ!?」
一方「来る者拒まず、去る者追いつめる。俺のポリシーだァ」
マスター(拾った金が来る者って…)
マスター「でもこの世界にコーヒー豆はもう…」
一方「心配ねェ…200年分くらいはある」ドサッ
一方「それに栽培もできンだぜェ?」
マスター「さすがです!」
一方「とりあえず買い出しと…しに行ってくる」
マスター「なにしに!?大事な部分が聞こえませんでしたけど!」
一方「とにかく行ってくる。開店準備よろしくゥゥ」カランカラン
―――――――――――――
―――――――――
―――――
――
一方「牛乳に砂糖…茶葉に小麦粉…卵…etc」
一方「こンなもンかァ…」
――――――
――――
――
喫茶ビスコッティ前
一方「このままじゃウチに客が来ねェからよォ…おおっと風が強ェ」
『OPEN』クルッ
『CLOSED』
一方「風は止ンだ見てェだなァ」スタスタ
―――――――――――――
―――――――――
―――――
――
喫茶フロニャルド
一方「今帰った…」
一方「なンだなンだよなンですかァァー!そのエプロンはよォ!」
一方「気合入ってンじゃねェか」
マスター「へへっ。雰囲気に合うでしょ?…マスターの分も用意しておきましたよ」
一方(悪くねェ…)ニヤッ
一方「喫茶フロニャルド…ねェ」
一方「名前変えよォぜ」
マスター「そうですね…今日からこの店は生まれ変わる。景気付けには…それがいいですね!」
マスター(いいよな…わかるよな…)
一方「おォだな…あァ…これしかねェ」ガリガリ
少年は、なにやら板に新しい名前を彫っているらしい。
こういうとき、相談なしに勝手に決めるのがこの少年らしい。
付き合って間もないが、マスターは微笑ましく思った。
しかし、甘かった。
少年の掘った新しい看板を見た瞬間、マスターは絶句する。
一方「コーヒー専門店 悪党」
マスター「え?なにそれ?」
一方「興味惹く名前だろォ?」
マスター「確かに引く…」
一方「俺が甘党だってこともかかってンだ」
マスター「いや、全然わかんない」
この日、喫茶店フロニャルドは名前を悪党と改め、隣の喫茶店の尊い犠牲の上、城下町にオープンした。
>>48と>>49の間に以下の文章が入ります。抜けてました。
一方「店構えンのに資金がいるとこだったンだァ」
シンク「ちょっと君!いきなりなにするんだ!」
一方「いつか返してやるよォ」
エクレ「貴様っ!!」
シンク「エクレ、下がって」
勇者は如意棒を展開し、構える。
この世界の勇者である以上、この世界での横行は見過ごせない。
シンク「いまなら見なかったことにするよ?」
真剣な顔で勇者はひったくりに告げる。
勇者にとってそれは最後通牒だったのだ。
しかし、勇者は知らなかった。
フロニャルドという世界において唯一の脅威である、魔物
目の前のひったくりがその魔物ですら話しにならないほどの絶対的な存在であるということを。
その相手に向かって、ただの人間が棒きれを構えているということの意味を。
一方さんがいい人すぎて誰これ
何これ面白い
面白いわ
一方通行がいい感じのボケかましててワロタwww
荒らし来るかもだけど頑張って
ってか一方さん犬に復讐するんじゃ…
乙
コーヒーで世界を
救うんですね
わかります
屋さンを思い出すまろみだ…
乙
一方通行がコーヒーに執着していると何かほのぼのする
ここは、ビスコッティ共和国城下町
異世界から迷い込んだ勇者と親衛隊長、学院の首席という豪華な面子が
喫茶店目を目指し歩いていた。
リコ「たしかこの辺であります…」
月刊フロニャルドを片手に、道の前方を指して示したのは首席。
エクレ「あれが噂に名高いビスコッティね…名前にひねりがないのはなんか残念だが」
常に辛口なこのツンデレは親衛隊長。
発言がないのが下痢の勇者である。
シンク「もうおさまったからっ!!」
喫茶ビスコッティの門前まで来て、少女リコッタが暗い面持ちで振り返る。
エクレ「なんだよリコ、早く入ろう」
リコ「それが…閉まっているのであります」
そう、何故か閉まっていた。
エクレ「月刊フロニャルドの記事によると…今日は営業日のはずだが…」
実際目に見て閉まっている以上は仕方がない。
エクレ「他の店に行くか」
シンク「どこかあてはあるの?」
エクレ「…」
リコ「コーヒー専門店…あ、悪党でありますか?」
エクレ「なに言って…隣…これも喫茶店なのか?」
リコ「リニューアルオープンってでかでかと書かれているので新しいお店なのでありますかね?」
エクレ「でも悪党って…それにコーヒーってなんだ?」
リコ「さぁ…」
シンク「そっか…この世界にはコーヒーがないのか…」
エクレ「貴様知っているのか?」
シンク「ああ、うん。ちょっと苦い大人の飲み物って感じかな?」
エクレ「それはちょっと興味あるな」
リコ「でもこの世界にない飲み物がなぜ…」
シンク「こんにちはー」ガチャ
エクレ「邪魔をする」カランカラン
リコ「ま、待ってくださいでありまーす」タッタッタ
三人が中へ足を踏み入れると、そこには癒しの空間が広がっていた。
リコ「うわぁぁ…お洒落でありまーす」パァァ
エクレ「ぅぁぁー」パァァ
シンク「いい感じのお店だね」
思い思いの感想を口にする三人は
入店した瞬間にこのお店を気に入り始めていた。
リコ「こんなお店が眠っていたなんて…不覚なのでありますぅ」
そろそろ席につこうと、カウンターの方へ向き直る。
勇者と親衛隊長の声が重なった。
「「うげっ」」
リコ「?」
マスター「い、いらっしゃいませ」
一方「おォ、客か」
客用のカウンター席に座っているこの少年、さきほど勇者のお金を盗みとったばかりなのだ。
気性の荒いエクレールが少年に歩み寄る。
エクレ「貴様っ!」
しかし少年はまったく少女の目を見ずに、げんなりとした様子でさっさとカウンターに引っ込んでしまった。
エクレ「――ッ!!」
リコ「どうしたんでありますか?エクレ」
何がどうなってるかわからないと言った様子の首席が少女の元へ歩み寄る。
代わりに答えたのは勇者だった。
シンク「ああ、ちょっとここに来る前に一騒動あってね」
勇者が何も知らない少女に事情を説明している間にも、エクレールは抗議の声を休めない。
コポコポコポコポ
エクレ「貴様っ!聞いているのk――
いつもの癖でテーブルを叩こうとした瞬間、少年は少女にコーヒーを差し出す。
一方「オマエは客。俺はマスター」コトッ
一方「店に入った時から俺はもうォ俺じゃねェ。喫茶店のマスターだァ」
流れるように言い訳をする少年を前に、騎士団長はあろうことか納得してしまった。
エクレ「なんというプロ意識…すまん、わたしが悪かった」
少女は悪びれた様子で、試飲用カップに注がれたコーヒーを啜った。
エクレ「…美味しい」
一方「だろォ?」
エクレ「このプロ根性が…ここまでの味を引き出すのか…」
少女が見当違いの納得をする一方
一方(チョロいな…)ニタァ
悪魔はほくそ笑んでいた。
エクレ「これがコーヒーというものか?」
一方「まァ間違っちゃいねェが、厳密にはカフェ・オ・レだァ」
エクレ「何が違うんだ?」
一方「コーヒーにミルクを半々で入れる。あと砂糖も少しな」
エクレ「うん…この味気に入ったぞ」
一方「ふン」
口は濁すが、少年の口元は緩んでいる。
リコ(怖いのであります)
にやけてるだけなンですけどォ?
リコ「わたしも飲んでみたいのでありまーす!」トコトコ
一方「おォガキ…ちょっと待ってろ」コポコポコポ
リコ「むむ!ガキとは失礼であります!こうみえてもわたしは1――
一方「うるせェ…」コトッ
リコ「なんて失礼な接客態度!…!!」
リコ「ん?…エクレのとだいぶ色が違うでありますが?」
一方「そいつはココアだァ」
リコ「ココア…でありますか?」
エクレ「それはなんなんだ?」
一方「まァガキの飲みもンだ」
リコ「失礼がすぎるのであります……!!」ズズッ
リコ「…でも美味しいのでありま~す」ホワホワ
エクレ「ああ!こんなに美味しい店があったなんてな!」
リコ「いくらいいお店だからといって…盗みはだめなのであります」
エクレ「はっ…忘れてた」
一方「チッ…」
エクレ「あああああ!今舌打ちした!」
エクレ「勇者!オマエもなんか言ってやれ!」
シンク「あ、ああ、うん!」
真っ先に抗議したエクレールが丸め込まれたため、勇者は居場所を失っていた。
一方「まァ確かに俺も少しは悪かったと思ってる」コポコポコポ
エクレ「少しだとっ!?」
一方「ほら、飲め」コト
シンク「あ、ありがとう!」
エクレ「話の腰を折るなあああ!」チョップ
一方「痛ェだろ」スリスリ
悪魔は敢えて反射をとく。
一方「でもよォく考えてみろォ」
エクレ「な、なにをだ」
一方「俺はオマエらの姫?だがなンだかに事故で連れて来られたンだぜェ?」
エクレ「姫様と呼べ!様を忘れるな馬鹿者!」
シンク「お、美味しい!」パァァァ
リコ「これ!これはなんなのでありますか?」
一方「あァ、こいつにはカフェ・ラテだ」
リコ「ほぉぉ!それはどう違うのですか?」
エクレ「うるさいっ!」チョップ
リコ「…はぅ」
シンク「…いてて」
一方「まァなンだ…事故で連れて来られてはい帰れませンだぜェ?」
一方(むしろ嬉しいけど)
エクレ「…」
確かに、と少女は思ってしまった。
自分だったら――もしもここじゃない、別の世界に、誰かの間違いで連れて行かれて――
誰も知らない世界にひとりぼっちで――。
一方「それで金もねェ…俺は勇者じゃねェからなァ。ここで稼ぐには戦に出なきゃなンねェンだろ?」
リコ「別にお店を経営したりと、戦ではなくても――
一方「俺には戦う力もねェ。初期費用の問題がなァ」
一方(大嘘だけど)
リコ「…」
シンク(ええ!?さっき宝剣へし折ったじゃん!それはスルーしていいの!?)
この少年は、自分と対して年も変わらないのに…
孤独な世界位でたった一人。
それでも人に喜んでもらうために喫茶店を――
エクレ「わたしが悪かった!!」ペコッ
一方「あァ?」
エクレ「勇者、このことはもう騒ぎ立てるな。オマエの報酬ならわたしから姫さまに頼む」
エクレ「間違いで連れてきてしまったことは、親衛隊長としてわたしが詫びよう」
エクレ「きっと姫さまが何とかしてくださる!ここでの生活は、我々が全面的に面倒を見よう!」
エクレ「それで…いいか?」
一方(おいおい…なンだこれチョロすぎンだろォ)
一方「いやァ…気にすンな。初期費用だけあればもォ大丈夫だ」
一方「これから大繁盛するからよォ」
親衛隊長は少し不安そうな顔をするが、この店なら大丈夫だとも思った。
エクレ「確かにそうだな。よし!いい店があると皆に知らせておこう」
一方「あァ…それで十分だ」
シンク「えと、ごちそうさま!また来てもいいかな?」
一方「あァ。迷惑かけたな」
シンク「ボクの召喚に巻き込まれたんだからおあいこだよ」ガタッ
一方(えェ…確実に俺が悪くねェ?)
リコ「誤解して悪かったのであります!また来るのであります!」ガタッ
一方(多分誤解じゃねェと思う)
エクレ「じゃあ行くか、そろそろ時間もなくなる」ガタッ
マスター「なんていうか…すごかったですね」
一方「あ…あァ」
その後少年は、十分間もの間罪悪感で苦しんだという。
コーヒー専門店 悪党 繁盛の予感
面白い組み合わせだわww
期待
エクレのチョロさに草生えた
ビスコッティ共和国 城の近く
そこには、ガレット獅子団領レオンミシェリ閣下の弟、ガウル殿下とそのとりまきが潜んでいた。
ガウル「姉上が負けたってこたぁ…勇者ってのはやっぱ強えんかなぁ?」
城を見下ろしながら、少年が面白そうにつぶやく。
ノワール「そのようです。スタイルは計装戦士型。ガウ様と同じです」
答えるのはガウルの直属親衛隊のセンターを務める少女、ノワール。
ガウル「おもしれえ。姉上の仇ってわけでもねぇが、いっちょ遊んでやるとすっか」
―――――――――
――――――
―――
勇者シンクが城の風呂から上がった瞬間、表から姫さまの悲鳴がこだまする。
シンク「姫さまっ!」
勇者は髪もかわさずに服を羽織ると、そのまま表へ駆け出す。
シンクが表を見回すと、屋根の上に人影が見えた。
目を凝らせば、一人の少年と、三人の少女の姿。
うち一人の少女は、ミルヒオーレ姫を抱えていた。
突然、少女の一人が大きな声を上げる。
ベール「我ら、ガレット獅子団領!」
ジョーヌ「ガウ様直属親衛隊ジェノワーズ」
勇者は知る由もないが、屋根の上には他にも数人が張りこんでおり
勇者とジェノワーズにカメラを回していた。
はたまたこれも勇者には知る由もないが、その映像はビスコッティ中の空に浮かぶ球体のスクリーンに映し出されており
多くの国民が固唾を呑んで見守っていたのである。
??「なンだこありゃァ?」
例えばこんな風に。
ノワール「ビスコッティの姫は頂いた」
姫を担ぎ、つぶやくようにそう告げたのはノワール。
ジョーヌ「うちらはミオン砦で待ってるからなーっ!」
訛ったしゃべり方で大きく手を振るこの少女はジョーヌ。
ベール「姫様のコンサートまであと一刻半。無事助けに来られます?」
おっとりしたしゃべり方をするこの少女がベールである。
直後、ノワールの腕の中に捉えられたミルヒオーレ姫の呻く姿がスクリーンに映し出される。
勇者はいきり立っていた。
もっと自分が注意していれば――。
ノワール「つまり大陸協定に則り、要人誘拐奪還戦を開催させていただきたく思います」
ノワール「こちらの兵力は200。ガウル様直属精鋭部隊」
ベール「ガウル様は勇者様との一騎打ちをご所望です」
ジョーヌ「勇者様が断ったら、姫様がどうなるか…」
シンク「受けて立つに決まってる!」
即座にそう答えるのは勇者シンク。
便秘を解消した少年の顔は、昼間のそれとは打って変わって引き締まっていた。
その表情からは、怒りにも取れる感情が伝わってくる。
シンク「僕は姫さまに呼んでもらった…ビスコッティの勇者シンクだっ!!」
シンク「どこの誰とだって戦ってやる!」
城下路上
ノワール『ビスコッティの姫は頂いた』
一方「おい、なにが起きてンだァ?」
スクリーンを見上げたまま、こちらに見向きもしない少年が問う。
マスター「今日は戦の勝利イベント、ミルヒオーレ姫のコンサートが開かれるんですよ」
マスター「負けたガレットの連中が報復にイベントを潰そうとしてるんじゃないですかね?」
一方「なるほどなァ…陰湿な真似しやがる」
言葉とは裏腹に、少年の横顔は興味がなさそうに告げた。
一方「いや待てよ…ァァァァあああああああっ!」
突然の奇声に周囲が驚くが、マスターだけは別である。
一日行動を共にして、この少年の破天荒で自由すぎる性格に慣れ始めていたからだ。
マスター「一体どうしたんです?」
一方「コンサートって…人いっぱい来ンだろォ?」
マスター「ええ、ビスコッティの殆どの国民が参加するんじゃないでしょうか」
答えて、なんとなく少年の意図するところがつかめてきた。
一方「ってことはよォ…宣伝のチャンスだろォ?この機会を逃すわけにはいかねェよな?」
マスター「コンサートで宣伝はちょっと無理があるんじゃ…」
一方「いいかマスター」
マスター「?」
一方「人が想像できることは、必ず人が実現できる」
一方「ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ先生のありがたい言葉だァ」
マスター「え?だからなに?」
一方「ここで宣伝しなくてどこで宣伝すンだよ」
マスター「それは確かに…でも今日騎士の人が…」
一方「あいつのお友達なンてたかが知れてンだろォ」
一方「初期費用が尽きたら、俺達は終わりなンだぜェ?」
マスター「ああ、マスターが盗んできたっていう?」
一方「うるせェ!」
一方「だが事実あれがウチの全財産」
マスター「確かに!…ここで宣伝できたら!」
一方「だろォ?俺がお姫様に直接頼ンでくる」
マスター「ちょお何言ってんの?無理に決まってるでしょ!まず会えませんよ!」
この少年は自分を一体なんだと思っているのだろうか。
そう突っ込まずに入られない時が、この少年といるとかならず訪れる。
一方「人が想像できr――
マスター「なんでもそれで解決するのやめましょうよ」
一方「まァ宣伝云々はなしにしても…あの状況はマズイよなァ」
マスター「確かに。コンサートそのものの開催が危ぶまれてきましたね」
なんとなくスクリーンの方を見上げると、なんとなくいい場面だった。
シンク『受けて立つに決まってる!』
シンク『僕は姫さまに呼んでもらった…ビスコッティの勇者シンクだっ!!』
シンク『どこの誰とだって戦ってやる!』
一方「邪魔なのは猫だな」
マスター「ガレット獅子団領のことですか?」
一方「あいつ頼りねェしな、便秘くン」
一方「マスター、戸締まり頼むぜ。俺はちょっと出張サービスだァ」
マスター「え!?ちょっ――
破天荒な悪魔は、店内から色々と持って闇の中へ消えてしまった。
コーヒー専門店 悪党 ひっそりと営業終了。
夕闇の城のなかから、必死の形相で駆けて来る男がいた。
今作、なぜか不名誉な役回りばかり押し付けられる健気な元主人公、勇者シンクである。
囚われの姫を助けるという王子様イベントに、こっそりボルテージが上がっていた。
少年が何気なく横を見ると、ちょうどいいタイミングで戦友エクレールがこちらに向かって走ってきているのが見えた。
シンク「エクレ!ちょうどよかった!聞いてくれ、姫様が大変なんだ!」
勇者の呼びかけに、少女は何も答えない。
何も答えずにこちらへ走ってくる。
距離がつまり確認できた表情は、心なしか鬼のようであった。
エクレ「こんのぉぉぉっ!ど阿呆がぁぁああああ!」
少女からのご褒美、つまるところ飛び蹴りである。
シンク「ぐはっ!」
ほっぺに蹴りを食らった勇者は、情けない声を上げ、情けなく吹っ飛び、情けなくへたり込んだ。
シンク「痛いよなにするの!」
少年の抗議にも、少女は耳をかさない。
エクレ「それはこっちのセリフだ!このど阿呆!」
エクレ「勝手に宣戦布告を受けてどういうつもりだぁ!」
シンク「………はい?」
なにがなんだかわからない勇者であった。
ここは、ミルヒオーレ姫のコンサート開催予定ホールである。
エクレールの兄である騎士団長のロランと、ミルヒの御側役アメリタがいるのはホール裏。
ロラン「すまない、アメリタ。わたしが勇者殿に宣戦布告について説明していなかった」
ロランが悪びれた様子で告げる。
アメリタ「そうでしたか…」
対するミルヒの専属秘書、アメリタの表情は暗いものであった。
ロラン「まぁその…大丈夫だ。姫様は我々が取り返す」
アメリタ「でも間に合うでしょうか?」
秘書が心配しているのは、戦勝イベントであるミルヒのコンサートのことだ。
このコンサートが中止になって一番ショックを受けるのは、他でもないミルヒオーレ自身なのだ。
そしてミルヒだけでなく、このコンサートは国中の楽しみでもある。
ロラン「だ、大丈夫だ!勇者殿とエクレールがもう走っているし、わたしも兵を整えて急いで出る」
??「それじゃァ安心できねェンじゃねェかァ?」
舞台裏に向かって、カツカツと足音が響いてくる。
二人が目を向けると、白髪初老の…白髪の少年がこちらに歩み寄ってきていた。
ロラン「君は…?」
??「ただのコーヒー屋のマスターだァ」
ロラン(コーヒー…?え?なんだって?)
アメリタ(白っ!目ぇ赤っ!)
ロラン「一体なんだい?」
??「オマエらは姫を早く取り戻して、コンサートに間に合わせなきゃなンねェンだろ?」
ロラン「ああそうだ。今日のコンサートを中止させるわけにはいかない」
??「無理だと思うぜェ…聞いた話ではミオン砦?までは結構距離があるらしィじゃねェか」
??「往復するだけでも時間がかかンのにその上敵は精鋭200」
??「向かったのは勇者と、あと取り巻きだろォ?」
ロラン「…」
??「さらにそいつらを倒したところで、敵の大将は一騎打ちをしたがってる」
??「勇者が勝つとも限らねェ…」
ロラン「それはっ…!」
騎士団長がすぐに反論できなかったのは、ガウルの実力もよく知っているからなのだろう。
そこに、コーヒー屋の付け入る隙がある。
突然、コーヒー屋は右手の指を五本立てる。
??「オレの戦闘力は5だ」
ロラン「…それはどんな基準で導き出された数字なんだい?」
??「武器を持った一人の兵士を100として導き出した数字だァ」
ちなみに勇者シンクは百倍の約10000である。
ロラン「弱っ…流れで君が助けてくれるのかと思ったのだが…」
??「だが俺の知り合いには…そォだな約一兆の戦闘力を持ったバケモンがいる」
??「多分俺が一声かければ戦ってくれンだろォなァ」
??「うちのお得意様だしィ」
ロラン「!!」
??「アイツならコンサート開始までに余裕で姫を連れ帰ることができるぜェ?」
ロラン「しかし…」
アメリタ「どうしてそのようなことを?」
??「もっともな疑問だなァ…姫様の歌が聞きたい、それじゃ駄目なのか?」
??(また嘘が口から出ちまったァ)
その言葉が決定打となった。
悪党の下卑いた笑みにも秘書は気づかない。
アメリタ「お願い致します!どうか姫様を」
??「やるのは俺じゃねェって言ったろ」
そう言い残し、少年は去っていった。
ロラン「一体何者なんだ彼は…あとその知り合いの方は…」
アメリタ「彼の言葉を信用したわけではありませんが、保険をいくつもかけておくに越したことはありません」
アメリタ「なにより今日のイベントが大切ですから」
ロラン「では、わたしも兵を整え向かうとしよう!」
そう意気込む彼らの元へ、走ってくる犬が一匹。
ロラン「おまえは…ホムラ!」
犬の首には、ひと巻きの巻物が括りつけられていた。
夜の荒野を、三羽のセルクルが駆けていた。
それとは別に後方から白い悪魔が低空飛行で飛んできているのだが、そこは関係ないので割愛するとしよう。
セルクルはそれぞれ背中に、騎士団長、首席、勇者を乗せて走っている。
鳥小屋で休んでいたところを叩き起こされた三羽、とくに男を乗せているセルクルは非常に不機嫌である。
他の二羽は、最初こそ機嫌が悪かったものの、いまではすっかりご機嫌になっていた。
やや前方を走るエクレールがまず口を開く。
エクレ「宣戦布告を受ければ、公式の戦と認められることになる!」
エクレ「普段の戦闘ならいざしらず、よりによって姫様をあまつさえこんなタイミングで!!
エクレ「コンサートの姫さまの出番まであと一刻半しかないんだぞ!?」
エクレ「ったく聞いてるのか勇者!」
少女の口調からは、怒りの感情が見て取れる。
シンク「聞いてる…聞いてるようわぁ」
対する勇者はセルクルにうまく乗れず、振り落とされそうになるのを必死で耐えていた。
セルクル(チッ…しつけぇじゃねぇの!)
シンク(この鳥今舌打ちしなかった!?)
エクレ「だいたい貴様はなぜセルクルにもマトモに乗れんのだ!」
後方を走る遅れ気味の勇者に、少女は呆れ半ばで問う。
シンク「そんな事言われてもー!」
リコ「エクレ…あんまり怒ると血管切れるでありますよ?」
エクレ「…フン!」
少女は再び視線を前に戻す。
今は姫さま奪還に集中しなければ!
そう決意を改め、手綱を固く握った。
タズナ(超苦しいんじゃが…)
約一兆の戦闘力を誇る知り合い…一体何者なんだ
シンク「エクレールリコッタ、ごめん!」
勇者は顔を伏せたままつぶやく。
シンク「でも、黙ってられなかった!」
シンク「大丈夫!姫様は絶対助けるし、コンサートにも!絶対間に合わせる!」
顔を上げて自分の決意を宣言する。
その表情には固い決意が現れており、有無を言わさぬ迫力があった。
しかし勇者のその表情は、わずか一瞬で崩れ落ちる。
前を走っていた二羽のセルクル、それにまたがる二人の背中が見当たらないのである。
夜の荒野で一人、キメ顔で何か言ってる少年の姿がそこにはあった。
目を伏せた勇者が事態の原因に気づく。
勇者のまたがるセルクルだけが、なぜか歩みを止めていた。
格好良く決めた手前、勇者は羞恥でのたうち回る。
シンク「ちょっと何やってんの!!早く行かないと姫さまがっ!」
勇者が手綱を引いても、尻を叩いても、セルクルは一歩も動こうとしない。
少年は知る由もなが、この事態は後方からものすごい速さで追い付いてきた白い悪魔が原因なのである。
とにかく事態を打破しようとした勇者が後ろに振り返ろうとした瞬間―――
背後から近づいてきた何かによって、彼の意識は刈り取られた。
白い悪魔…一体何方通行なんだ…
ことの一部始終を見ていたその辺の石ころは、後に我々にこう語った。
あれはまるで衣服に飢えた…冬の日の追い剥ぎのような顔をしていました、と。
期待
おい何やってんだ白い悪魔www
起き抜けに少し
二羽のセルクルが荒野を駆け抜けていくのを、崖の上から見下ろす人物がいた。
ビスコッティ自由騎士、隠密隊頭領――ブリオッシュ・ダルキアンである。
ちなみにここより150mほど後ろに、全裸に靴下で眠っている勇者がいるのだが、これも割愛するとしよう。
??「お館さま~なにかおもしろいものでもございましたか?」
ダルキアン「おー、ユキカゼ」
ユキカゼと呼ばれた少女が、ダルキアンの隣に並び崖を見下ろす。
一羽遅れて走るセルクルの姿があった。
ダルキアン「どうやら、戦のようでござるよ」
勇者装束の人影がまたがるセルクルの顔が恐怖に引きつっているようにみえるのは、鳥類の顔を見分けられない人間が故の勘違いだろう。
ここは今宵の決戦の舞台、ミオン砦。
敵の登場を今か今かと待ち受ける精鋭200名が、武器を片手に待ち構えていた。
砦の中では、首謀者ガウルと部下のゴドウィンが対面していた。
ゴド「いやぁ~ガウル殿下直々にご指名いただけるとは光栄にございます」
ぎゃははははは、と、快活にガウルが笑う。
ガウル「お前も今日の様子じゃ暴れ足りないだろうと思ってよ」
今日――とは、当然ながら昼間の戦のことである。
ゴド「いやぁ全く。砦攻めも悪くはありませんが自分はやはり夜戦が得意でございますので」
ゴドウィンはガウルの機嫌を取るように、アナゴさんのような声で仰々しく告げる。
ガウル「うん!がっつり暴れてくれや」
ゴド「そういえばミルヒオーレ姫は…?」
思い出したようにゴドウィンが問う。
ガウル「ああ、ルージュに任せてある。接待体勢は万全さぁ」
ゴド「なるほどぉ」
ガウル「あとはまぁ、ちょいと俺の方でも思うところがあってな…」
再び場面はミオン砦外。
兵士たちが迎える中、一羽のセルクルが走ってきていた。
背にまたがるのは、親衛隊長のエクレール。
愛用の双剣を構え、臨戦体勢に入っていた。
一緒に来たリコッタは砲撃手であるため、白兵戦のエクレールとはあらかじめ別れてある。
エクレ「あんの勇者…精鋭を前にしてビビって逃げやがったのか…!」
不可抗力であるのに、少女の勇者への評価は現在進行形で下落中である。
エクレ(本当は応援を待ちたいが、コンサートまで時間がない)
エクレ「ここは私一人で…!」
エクレ「うおあああああああああああああああああ!」
駆けてくる敵将がたったひとりだとわかった瞬間、敵兵の表情が緩む。
『弓部隊!敵を射よ!』
合図とともに敵兵が弓を引くが、その矢が射られることはなかった。
単騎駆してくる少女の背後から、無数の光の雨が降り注いできていたからである。
降り注ぐ光の花火は、後方支援のリコッタが放ったもので、群がる敵の精鋭をどんどん蹴散らしていく。
敵を食い尽くしていく花火がエクレールに当たらないのは、ご都合主義の賜物といえるだろう。
少し離れた場所で、双眼鏡を片手にダルキアンとユキカゼが観戦していた。
ダルキアン「花火とは…これはすごい!暗がりで誰が誰やわからぬが、若い騎士たちが頑張っているようでござる」
ちなみにすぐそばでは、悪魔のまたがるセルクルが暴走しているのだが、それも割愛するとしよう。
ユキカゼ「ですがお館さま、ビスコッティとガレットの戦のようですから…我々も加勢するべきなのでは?」
ダルキアン「若者同士、楽しく戦をしているのでござろう。大人が邪魔をするのも無粋でござるよ」
ダル(略)「ここでゆっくり観戦するお!ユキカゼ氏も飲む?」
観戦を決めこんだダルキアンは、酒を片手に腰を据えてしまった。
ユキカゼ「お館さま~ホムラが帰って参りましたよ!」
ダルキアン「おぉ、しっかり伝令を完遂してくれたようにござるな」
よく見ると、ホムラの首に新たな巻物が括りつけられていた。
ダルキアン「ふむふむ…」
後方支援がやむと立場は逆転し、エクレールは敵に囲まれてしまっていた。
エクレ(花火が飛んでこないということは…リコのやつ捕まったか)
エクレ(いや…むしろよくここまで粘ってくれた)
エクレ(くっやはり数が多い…)
迫る槍を、剣を交わし、迎え撃っていると、いつのまにか壁際に追い込まれていた。
そこで、敵の背後から大きな笑い声が響く
笑い声を上げたのはガウルの部下、ゴドウィンである。
ゴドウィン「親衛隊長…恐るるに足らず」
ゴドウィン「勇者は啖呵を切っておきながら逃げ出したと見える」
エクレ「違う!あいつは…」
エクレ「便秘をこじらせてな…貴様らの相手など、この私一人で十分というもの」
ゴドウィン「便秘?ぐははははははは」
ゴドウィン「ガウル殿下のご指名だったのだが…これはどうしたものか」
突如、ゴドウィンの背後から大剣が飛来してきた。
突然のことに反応が遅れたゴドウィンは、ギリギリのところで自身の剣で弾く。
ゴドウィン「何奴…!?」
エクレ「この刀は!」
??「遠間より失礼つかまつった」
??「うむ…ひさしぶりでござるな、エクレール」
??「しばらく見ないうちに、大きくなった」
エクレ「ああああ!ダルキアン興!!」
少女が憧れの眼差しを向ける彼女はビスコッティの自由騎士、ブリオッシュ・ダルキアンである。
ゴドウィン「ダァァルキアンだとぉ!?」
ダルキアン「いかにも」
言いながら、女は被っていた笠を外す。
ダルキアン「そこの斤将軍には、お初にお目にかかる」
ダルキアン「ビスコッティ自由騎士、隠密隊が頭領。ブリオッシュ・ダルキアン」
ダルキアン「ビスコッティ騎士団、ロラン騎士団長の要請により助太刀に参った」
ダルキアン「押しかけ助っ人の推参にござる」
ダルキアン「いざ尋常に――
ダルキアン卿の背後から、ユキカゼによる無数の花火が打ち上がる。
ダルキアン「勝負するでござるよ」
一方、またしても茂みに縁のある少年は、地面をのたうちまわっていた。
何故か自分に怯えた巨大鶏が暴走してこの茂みに突っ込んできたのである。
突然のことにこっそりビビった少年は演算に失敗。
体中についた草木を払いながら、どこともしれぬ道を歩いていた。
一方、元凶のセルクルは少年を振り落とすと一目散にかけていった。
一方「おいおい…どこだここはァ」
突如、南の空に打ち上げ花火が登る。
ここから2kmといった距離である。
一方「どォやらあそこみてェだな」
一方「コーヒー屋さンの突撃アポなし出張」
一方「サービスの一方通行だァァァ」
叫びながら、さながらアンパンのような姿勢で飛び立つ。
自身に働く重力の向きを前へと変換させるこの移動方は、彼のお気に入りである。
輝く瞳は、まさにヒーローに憧れる少年のそれであった。
一方(この世界にきてから動物とはイヤな思いでしかねェな)
一方(あの鳥ィ…次に会ったら丸焼きにしてやる)
考えていることは下衆だったのだが。
場面は戻り、ここはミオン砦。
強襲したダルキアンとユキカゼによって、砦の精鋭は圧倒されるばかりであった。
エクレ「ダルキアン卿!わたしは中へ突入します!姫様をお助けに!」
ダルキアン「おー!ここは拙者とユキカゼに任せるでござるよ」
エクレと話しながらも攻撃の手を緩めない。
ビスコッティ最強騎士の俗称は伊達ではない戦いぶりだった。
次回からこの酉なのでよろしくおねがいします
乙
乙
>>128
アンパンじゃなくてアンパンマンですね…
やはり眠い時に書いていた書き溜めはいくら見なおしても穴だらけ。レスありがとうございます
乙!
なんか凄腕ハカーがいた気もするけど、きのせいだよね!
>>133
想像したら笑った
乙
おっつー
まだかな
今日夜中、もしくは明日。最悪明後日には更新します。
おけ
私まーつーわー
いつまでもまーつーわー
とある女性が、ミオン砦へ向かうべく戦の準備をしていた。
ガレット獅子団領とトップに君臨するレオンミシェリ・ガレット・デ・ロワである。
レオン「あの馬鹿野郎…勝手に戦など仕掛けよってからに…」
レオンの表情はすぐれない。
ビオレ「ルージュがちゃんとそばにいたはずなんですが…」
そばに控えていた少女がつぶやく。
レオン「国家と領主の計略をガキの遊びで見出されてたまるかっ!」ギリギリ
場面は変わり、ここはミオン砦の奥。
単騎で突破してきた親衛隊長エクレールの足が止まる。
エクレ「やはり…お前ら三馬鹿が出てくるか」
ベール「だ、誰が馬鹿ですか!」
ノワール「馬鹿っていうほうが馬鹿なの」
ジョーヌ「そーやそーや!ばーかばーか!」
エクレ「貴様らの相手はいろんな意味で頭が痛いが…」
突如、三人の中央に立つ少女が短剣を掲げる。
ノワール「ここは同じ親衛隊同士…このノワール・ヴィノカカオが」
習って、隣の少女も装飾の施された弓を構える。
ベール「同じく、ベール・ファーブルトン。エクレちゃん、正々堂々勝負です」パチ
ジョーヌ「まぁ三対一やけどな!ジョーヌ・クラフティ、がんばるよー!」
最後の少女が自身と同じくらいの巨大な戦斧を掲げたところで、エクレールも双剣を構え、気合を入れなおす。
エクレ「同じくビスコッティ親衛隊長、エクレール・マルティノッジ!切り抜けて、進ませてもらう!」
そう叫ぶやいなや、エクレールの背後に紋章が浮かび上がる。
戦闘開始の合図であった。
開始早々、一番元気のあるジョーヌが、エクレールめがけて巨大な斧を振り下ろす。
横に跳んで交わすも、紋章術で強化されたその一撃は、砦の外壁を大きく削った。
息をつく暇もなく、空に跳び上がったノワールから幾つものナイフが飛来してくる。
八方に飛び散るそれらを器用に交わしている途中で、次はジョーヌの放った矢がエクレールを襲う。
ナイフに気を取られていたエクレールは、体勢の悪さから避けるのは無理だと判断した。
クロスし、前に構えた双剣に紋章術をまとった矢がぶつかる。
エクレ「くっ…」
エクレ(やはり三対一では分が悪すぎるか…)
ギリギリのところで矢の起動をそらす事に成功するも、エクレールは既に消耗しかけていた。
ガウル「おい、ちょっと待ってもらおうか」
砦の上から聞こえたその声のもとに全員が目を向ける。
ガウル「お前は確か…ビスコッティの親衛隊長か」
ガウル「勇者はどうした。まさか逃げ出したってんじゃねえよな…」
途端、エクレールの表情が曇る。
ガウル「おいおい…一国の姫が攫われたってのに…随分薄情なやつだな」
エクレ「あいつは…少々腹痛をこじらせていまして」
ガウル「姉上を倒したってんで少々期待してたが…まさかその程度の―――
急にガウルの声が止む。
エクレ「!?」
見上げれば、ガウルが目を丸くして絶句していた。
四人はガウルの視線を追い、自分たちの背後を振り向く。
メキメキメキメキ…
すると、優に10mを越そうという砦の外壁に大きなヒビが入っていた。
ガウル「なに…何が起こってやがる!?」
エクレ「あれは…なんだ…」
紋章術を纏った親衛隊ジョーヌの巨大な斧の一撃でも、貫通することすら出来なかった巨大な外壁に大きな亀裂が
さらに、その亀裂はどんどん外壁を侵食している。
三馬鹿「」
エクレ「まさか魔物が…」
ガウル「魔物がこんなところまで攻め寄せてくるわけが…」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオン
聞いたこともないような轟音が鳴り響く。
亀裂の入った外壁が崩れ落ちた音である。
亀裂は新たな亀裂を呼び、流れるようにして砦を囲む外壁が全て崩れ落ちた。
目を塞ぎ、耳鳴りが収まるまで1分ほど。
おそるおそる顔を上げた少女たちの目に飛び込んできたのは、空に浮いた人影だった。
勇者装束のマントをはためかせ、こちらをゴミでも見るかのように見下ろしているその人物の顔は
変な覆面に覆われいて視認することができない。
ガウル「だ…誰だ!」
??「ゆ、勇者シンクだァァァ!」
三馬鹿「嘘つけえええええええ!」
ユキカゼ「大変でございます!敵増援が参ります!」
ガウルの腹心、ゴドウィンと渡り合っていたダルキアンの耳に、ユキカゼからの知らせが入る。
ダルキアン「数は?」
ユキカゼ「それが…」
ユキカゼは背後で双眼鏡を覗くリコッタに視線を仰ぐ。
リコッタ「一人!ガレットのレオ姫が…一騎駆で向かってきているのであります!」
知らせを聞いたゴドウィンの表情が明るいものとなった。
ガレット獅子団領最強の騎士、領主レオンが自らやってきたのだ。
ダルキアン「これはレオ姫、ご無沙汰でござる」
レオン「久しいのうダルキアン、じゃが姫はやめい。今は領主じゃ」
ダルキアン「これは失礼を」
ゴドウィン「か、閣下…」
レオン「そこをどけ、ゴドウィン。わしはガウルに話がある」
戦場を抜け、先へ進もうとするレオンを、ダルキアンが恭しく頭を下げ止めた。
ダルキアン「申し訳ございませぬ。ここは戦場。そして拙者は若者たちの殿(シンガリ)を務めておりますれば」
言葉の意味を察したレオンの表情が険しいものとなる。
レオン「押し通れ…と?」
ダルキアン「御意」
ガウル「わしを以前のわしと思うな…もはや貴様が相手でも引けを取らぬ!」
両者が武器を構え、踏みだそうとした瞬間、轟音とともに砦の外壁が崩れ落ちた。
ゴドウィン「な…なんだこれは…!?」
面白いからもっと続けてくれ~
やっと来たか…!
待ち侘びたぞ>>1よ!!
みんな…すまない…まちがえて保存せずにメモ帳を閉じたせいで書き溜めが…
きっと明日また投下します泣
ドンマイ
気長に待ってます
乙、続き待ってるぜ!
まだかなー
続きはよ
待ってるで
_, -‐''''"´´ ̄ ̄ ̄ ̄``゙゙゙゙''''ー-、、
/ ー-、
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来ないのかな・・・
まだかな
続けよ!
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面白いですね~
くっそww
かわいそすぎんだろww