P「Apical Dominance」 (19)

同僚の秋月律子は、自分の企画した竜宮小町というアイドルユニットの為に日夜駆け回っている。

残りのアイドルの世話を全て俺に一任して。

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初めの頃は、本人が初めて一から企画したと張り切っていたので、俺も応援をしていた。

しかし、次第に律子は竜宮小町の三人に本腰をいれ始め、残りの九人全員が俺の担当になっていった。

律子は朝早く竜宮小町のメンバーを連れてレッスンに行き、夜遅く打ち合わせを終えて事務所に帰ってくる。
俺は残りの奴らの送迎や、資料の収集などで休む暇も無かった。

俺がデスクに向かい四苦八苦している中、律子はやり切った顔をして、音無さんと笑顔で会話している。


頭がチクリと痛む。

ボードを眺めると、向こうの予定は金曜日のミュージックターミナルの後から、ビッシリ詰まっている。

反面こちらは疎密にオーディションや地方の営業が入っているだけ。
九人の面倒を見ながら、営業に駆け回ることは俺には不可能だった。

それを見て、あいつはこう言った。

律子「やっぱり仕事がないとモチベーションの維持とかもあると思いますし••••••」

俺はそれを聞いてどんな顔をしていただろう。いつものように、作り笑顔を浮かべていれたかな。

自分でもわからない。

ただ無心に、さながら意思の無い人形のようにただそこに佇んでいただろうか。

頭が痛む。

P「そうだな。それは大変だなぁ」



律子「他人事じゃないですよ本当に。プロデューサーがしっかりしないと駄目じゃないですか」



呆れ顔で、嘆声を漏らす律子。
頭がズキリと痛んだ。



P「なぁ律子。頂芽優勢って言葉知ってるか?」

ポツリと溢した。

律子「頂芽優勢?」



P「頂芽優勢っていうのは、植物の頂芽と側芽が共存する為に、側芽の成長が抑えられること。
それにはオーキシンという植物ホルモンが関係しているんだ」




律子「へぇ。でもそれが何か?」

P「今十二の芽の中で三つの頂芽がある。
じゃあ側芽の九つはどうすれば成長出来るでしょうか?」



律子「プロデューサーさん••••••?」



P「それは頂芽を刈り取ればいいんだ。そうすれば頂芽が無くなり、側芽は成長できる」



返事は無い。

P「竜宮小町は頂芽なんだ。残り物は側芽。
竜宮小町が無くなれば、残ったアイドル達はお前達にとって変わって成長することができる」



律子「プロデューサーさん、目が怖いですよ••••••?」



P「フフ」


小さく嗤う。目の焦点が合わない。視界がボヤけて見えた。



律子「プロデューサーさん!」



肩を強く掴まれる。爪が肉に食い込んだ。

その指は僅かに震えているのがわかる。








P「なーんて、中々の演技だっただろ?」









律子の顔に安堵の表情が浮かぶ。



律子「え、演技だったんですね••••••。
びっくりさせないで下さいよ!プロデューサー、見たことない顔してましたもん」



P「ハハハ。おちょくって悪かったな」


このP発狂して飛び降りるんじゃねえか?
いやもう発狂してるか(震え声)

P「今日は遅いし俺は帰るな」




律子「あ、お疲れ様です。明日は仕事とってきてくださいねー!」




返事をせずいそいそと入り口へ向かう。
扉を開けると、空は真暗であった。

階段を駆け下り、一人喚声をあげる。




次に笑いが込み上げてきた。
可笑しい。なんて可笑しいんだろう。




頭がキリキリと痛む。




爪を立て頭を掻きむしる。頭皮が裂けて、血が流れ出てもその手はとまることはなかった。

すくと立ち上がり事務所へ引き返す。




風は冷たい。



心に染み入るような鋭い刃物のような風だった。

アニメ序盤みてて十分で書いた


素人なのに序盤で竜宮以外のプロデュースを全部任されてやり通すPは人間の鑑

そう考えると半端じゃないブラック企業だな765って…

酷い話やで…

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