やよい「伊織ちゃんの変化球バイブル」 (28)


やよい「いっくよー」ポーン

伊織「ふふっ、いい感じよ、やよい!」バシッ

春香「……いいなぁ、キャッチボール。私も千早ちゃんを誘ってみようかな」

伊織「千早は苦手そうね、キャッチボール」

春香「だよね」


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伊織「いくわよー」

やよい「うん、いいよー!」

伊織「それっ」シュパッ

 ――――スライダー。

バシィッ!!

やよい「……はひ」


伊織「ご、ごめんなさい! やよい、大丈夫!?」

春香「やよいっ」

やよい「い、痛いれす……」

春香「手が真っ赤に……伊織、プロデューサーさん呼んで!」

伊織「え、ええ!」


 ――

P「伊織がスライダーを投げただって!?」

春香「すっごい豪速球です……」

P「そんなバカなことがあるわけ……」

伊織「……どうしよう、やよいの手が」

P「……やよいなら大丈夫だよ、骨も折れてないし」

伊織「そう…………」


春香「ねえ伊織、あんまり気を落とさないほうが」

伊織「……でも」

P「そうだ、伊織」

伊織「なによ」

P「俺さ、高校の時野球やってたんだ。県大会とかはすぐ負けてたけど」


伊織「野球の話はやめ――」

P「キャッチャーだったんだ。だからさ、バッテリーを組もう」

伊織「はぁ!?」

春香「そ、それってプロデューサーさんが、伊織のボールを受けるってことですか」

P「ああ。俺だったら大丈夫。今も鍛えてるし、普通に取れるよ」

伊織「……やれ、って言うの?」


P「俺達はもしかしたら、伊織の素晴らしい才能に気づいたのかもしれない」

伊織「……才能」

P「それを掘り起こさないのは、勿体無いだろう」

伊織「……やってやるわよ、それが私のスキルになるのなら」

P「よし。……プレイボールだ」

春香「そ、それじゃあさっきの河川敷に戻りましょう!」

 ◇


 グラウンド。プロデューサーさんが先にキャッチャーマスクをかぶりました。
 私――天海春香はひとり、ベンチからその様子を眺めていました。

 小鳥さんは一緒に来て、審判役としてプロデューサーさんの後ろに立ちながら、拡声器を持っています。

P「さあ、来い」

『ピッチャー、秋月に代わり……水瀬』

春香「小鳥さん、何をしてるんですか……?」

『ピッチャー、水瀬。背番号15』

 伊織が765エンジェルスのユニフォームを身にまとって、グラウンドにあがります。


『まるでロードショウのサイクルから抜け出せないWeekday~♪』

春香「と、登場曲……」

 プライヴェイト・ロードショウが流れだして、伊織がロージンバッグをマウンドに置きました。

伊織「……」フッ

 フォームはワインドアップ。大きく振りかぶって、第一球。

バシーン

P「……おおう」


伊織「……どう?」

P「ストレート。結構早かったな……音無さん、いまスピードどんぐらい出てました?」

小鳥「145kmですね」

伊織「……自分の中で、感覚的にいろんなボールを投げられるかもしれないわね」

P「そっか。そんじゃあ次、チェンジアップ」

 チェンジアップも投げられるのかなぁ、伊織。


バシーン!

小鳥「139km!」

P「次!」

 ――ツーシーム。

バッシーッ

小鳥「140km!」


P「よし、少し縦にいってみろ!」

伊織「っ……!」

バッシーン

小鳥「145kmでました!」

P「伊織……球種がこんなに多いとは……」

伊織「私、どうしたのかしら……?」


春香「すごい、あんなに速い球をポンポンと……」

 その時、私の斜め後ろの方向から「10年に1人の逸材だ」と言う声が聞こえてきました。

春香「だ、誰ですかっ!?」バッ

??「やあ、キミもアイドルだよね。知っているよ」

春香「あ、あなたは……!」


伊織「……っ!」ブンッ

バシイッ

P「ふう……音無さん、スピードいくつでした?」

小鳥「なっ――」

P「……音無さん? どうし――!?」

小鳥「……あなたは――!」


伊織「な、なによ」

P「……」

伊織「後ろに誰か居るの? って……!」クルッ

??「やあ、水瀬伊織さん」

伊織「あなたは……! この国の野球界を牽引してきた名選手名監督、ホームラン記録を長年持っていた……」

P・小鳥・伊織「O氏……!」


O氏「いやはや、少し散歩をしていたつもりが……すっかりキミのボールに惚れ込んでしまった」

伊織「あっ……あのっ……」

O氏「私の球団に来ないか? 水瀬伊織さん」

P「あの、O氏……それは伊織をプロ野球選手にする、ということですか?」

O氏「あなたは……彼女のプロデューサー、かな?」

小鳥「伊織ちゃんとプロデューサーさんの関係を一瞬で見抜いた! さすが4番打者!」


P「お願いします、彼女はアイドルなんです。勝手に野球選手にするわけにはいかない」

O氏「そうか……それは困ったな。私も彼女を野球の道で開花させてあげたい」

伊織「……あの」

O氏「水瀬さんはどう考えているのかな」

伊織「私、は……まだ、考えられないです」

伏せられてないんだよなあ


O氏「……早いうちに、結論を出して欲しい」

伊織「必要とされているのは、嬉しいですが……」

春香「お願いしますっ!」ザッ

伊織「春香!」

春香「伊織はトップアイドルになれる素質があるんです……だからっ」

O氏「……」


伊織「……私は、竜宮小町のリーダーだから」ビュンッ

P「うお!?」バシッ

小鳥「スローカーブ!」

O氏「……やはり、すごい球だ」

伊織「だから……どうしても、っておっしゃるのなら」


O氏「……」

伊織「私はトップアイドルになって、なおかつMVP投手にもなります!」

P「伊織……」

春香「すごい……私には真似できないよ」

小鳥「伊織、ちゃん……」

O氏「その言葉は……Yesと受け取っていいのかな」


伊織「ええ、その代わりO氏」

O氏「……」

伊織「私を――最多勝投手にしなさいよ!」

O氏「……キミは面白い」

P「伊織なら、きっと両立出来る……俺は全力でサポートしていくぞ!」

伊織「ええ、夢は最多勝利とトップアイドル! お願いね!」


 ――
 ――――

P「……っはぁ……間に合った」

やよい「プロデューサー! こっちです、こっち!」

P「よ、ようやよい、春香。間に合ってよかったよ」

春香「良くないですよ! ホークスの練習はとっくに終わってるんですから!」

P「すまない、レッスンが長引いて……」


春香「さすがに今日は予告先発と変えてくるかなぁ」

『福岡ソフトバンクホークスの先発は……水瀬』

オオオオオオオ!!

やよい「そ、そのまま伊織ちゃん!?」

P「アイツ……大丈夫なのか……」


 そして流れる登場曲、プライヴェイト・ロードショウ。
 私とやよいとプロデューサーさんは、伊織の表情がよく見える内野席から――記録のかかったこの試合を観戦します。

P「今日勝てば伊織は……」

やよい「25勝0敗になって、マーくんを抜くんですよー!」

P「頼む……伊織、頑張ってくれ」

春香「伊織の巧みなボールづかいなら、きっと勝てますよ! 一緒に応援しましょう!」

P「おう!」

 さあ、ガツガツ行きましょう!


 伊織は投手向きだと思います。
 お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。

おつとつ

おつー

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