篠ノ之束の憂鬱(3)
「もうみんな、バカばっかり。束さん困っちゃうよ」
地球生まれの宇宙人。
世を拗ねた甘えではなく、文字通りに篠ノ之束の思考とスペックは世間とかけ離れていた。
誰も同じレベルで会話できる人がいないほどに。
「別にバカと会話しなくても、ちーちゃんと箒ちゃんといっくんがいるから寂しくないもんねえ」
そう、強がってみてもやはり寂しいものは寂しい。
そんな束に転機をもたらしたのは、まだ小学生の一夏だった。
束「いっくん、なにしてるの?」
一夏「ガンダム見る。団から借りてきたんだ」
一夏のクラスでガンダムが流行っていた時だった。
束「へえ、束さんはガンダムみたことないんだ。いっくんと一緒に見ようっと」
一夏はあからさまに嫌な顔をしたが、束はにこにこ笑っている。
この姉の友人には叶わないことを、一夏は今までの短い人生で悟っていた。
諦めて二人並んで座って、ガンダムを見た。
逆襲のシャア。
これが束の人生を変えることになる。
人類が宇宙に進出することでのニュータイプへの覚醒。
そして、魂を重力に引かれた人類を強制的に宇宙にあげるためのアクシズ落とし。
束「おおう」
地球生まれの宇宙人たる束には天啓だった。
まわりがみんなバカばっかなのは魂が重力に引かれているからなんだ。
確かに、束の思考も魂も重力などものともせず、ぶっ飛んでいる。
束「束さん、アクシズ落としちゃうぞ~」
ぶっ飛んだ魂はジオンもネオジオンもすっ飛ばして、アクシズ落としを選択する。
一夏は、またこの人は変なこと言ってと思ったが、完全に本気なことは全世界で篠ノ之束しか知らなかった。
まだ。
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